以下、本発明の実施形態について添付図面に基づいて説明する。
実施形態1の観覧車は、支持体1と、回転輪2と、第一駆動装置3と、第二駆動装置5と、動力切替部とを備えている。回転輪2は、支持体1に軸支されており、第一駆動装置3又は第二駆動装置5により回転駆動する。第一駆動装置3はモータを駆動源とする。回転輪2には複数のキャビン21が設けられている。
観覧車には、乗降場90が設けられている。乗降場90は、キャビン21に人が乗降するための場所である。乗降場90は、観覧車の設置面91に設けられている。乗降場90は、キャビン21の移動軌跡に沿って設けられている。
なお、以下の説明において、方向の定義は、観覧車を正面から見た状態(図1)に基づいて決定される。具体的には、図1における紙面の奥手前方向が前後方向として定義され、回転輪2の直径方向のうち水平方向が左右方向として定義される。
支持体1は、設置面91に立設されている。支持体1は、図2に示すように、前後方向に対向配置された一対の脚部11を備えている。各脚部11は、複数の骨組体12を組み立てることで構成されている。各脚部11は、例えば、設置面91の3箇所に立設された骨組体12が、上端で1箇所に集束されるようにして構成されている。また、各脚部11には、図1に示すように、台部13が設けられている。台部13は、左右方向に対向する骨組体12に架設された架橋部に設けられている。台部13は、地面から一定の高さ位置(例えば、地面から4〜5m)に設けられている。台部13は、第一駆動装置3および第二駆動装置5のメンテナンスや操作等を行なう時の足場として使用される。
脚部11の上端には、軸部14が設けられている。軸部14は、図2に示すように、前後方向に対向配置された脚部11に架設されている。軸部14は、軸方向が前後方向に平行となった水平軸である。軸部14には、回転輪2が取り付けられる。
なお、支持体1としては、本実施形態のように、骨組体12を組み立てた脚部11であってもよいし、ビルや建物などの構造物により構成されていてもよい。つまり、支持体1は本実施形態のものに限定されない。
回転輪2は、図1に示すように、正面視円形をしている。回転輪2は、支持体1に軸部14を介して軸支されており、これにより回転自在となっている。回転輪2には、径方向の外側の端部にキャビン21が設けられている。キャビン21は、回転輪2の周方向の全長に亙って複数設けられている。
キャビン21の上端には、回動軸22が設けられている。回動軸22は、回転輪2の径方向の外側の端部に設けられている。キャビン21は、回動軸22に回動自在に吊り下げられており、これにより、回転輪2が回転してどの位置に移動しても、常時、鉛直姿勢を保つようになっている。
回転輪2には、周軌条27が設けられている。周軌条27は、軸部14を中心とした円環状に形成されている。周軌条27が周方向に移動すると、回転輪2は、それに追従して軸部14廻りに回転するようになっている。周軌条27は、回転輪2の前側と後側との両方に設けられている。
周軌条27は、図3,6等に示すように、第一駆動装置3及び第二駆動装置5に接続されている。この第一駆動装置3と第二駆動装置5とは、周軌条27を周方向に移動させることで、回転輪2を回転駆動させることができる。
第一駆動装置3は、図1に示すように、正面視で骨組体12と周軌条27とが重なる位置に設けられている。第一駆動装置3は、正面視において、前側の周軌条27と前側の脚部11の骨組体12とが重なる箇所(左右2箇所)と、後側の周軌条27と後側の脚部11の骨組体12とが重なる箇所(左右2箇所)とに設けられている。第一駆動装置3は、骨組体12に固定されている。
第一駆動装置3は、図3に示すように、骨組体12に固設されたフレーム部31と、フレーム部31に回転自在に設けられた駆動輪44と、駆動輪44を回転駆動させる動力部45(図4等)とを備えている。第一駆動装置3は、駆動輪44によって周軌条27を径方向の内外方向から挟持し、周軌条27を周方向に移動させることで、回転輪2を回転させる。
フレーム部31は、図3に示すように、固定フレーム32と、固定フレーム32に軸支されたベースフレーム33と、ベースフレーム33の上側に設けられた上台座部34と、ベースフレーム33の下側に設けられた下台座部35とを備えている。
固定フレーム32は、骨組体12に溶接等により固定されている。固定フレーム32には、図4に示すように、一対の支持部材321が前後方向に対向するよう設けられている。この対向する支持部材321間には、回転軸37が架設されている。回転軸37は、軸芯が前後方向に平行となった水平軸である。この回転軸37には、ベースフレーム33が回動自在に軸支されている。
ベースフレーム33には、図3に示すように、主フレーム38と、回動アーム39と、第1の可変機構41とが設けられている。主フレーム38は、回転軸37に連結されており、これにより、固定フレーム32に対して上下方向に回動自在となっている。回動アーム39は、主フレーム38から下方に向かって延出している(つまり、主フレーム38と回動アーム39とは相互に固定されている)。主フレーム38と回動アーム39とで、正面視逆L字状をしている。回動アーム39の先端と骨組体12との間には、付勢体40が架設されている。この付勢体40は、例えば、コイルばね等の弾性体により構成される。付勢体40は、回動アーム39を骨組体12から離れる方向に付勢し、これにより、主フレーム38を上方側に付勢するようになっている。第一駆動装置3は、この付勢体40でベースフレーム33を上方に付勢することで、ベースフレーム33が自重で下方に回動して、上側の駆動輪44のみに負荷が掛かりすぎるのを防ぐことができる。
第1の可変機構41は、主フレーム38に設けられている。この第1の可変機構41は、駆動輪44と周軌条27との間の距離を変更するための機構である。第1の可変機構41は、駆動輪44と周軌条27との間の距離を変更することで、周軌条27に対し、駆動輪44を接離自在とさせる。具体的に、ベースフレーム33には、第1の可変機構41として、上車輪用可変機構42と、下車輪用可変機構43とが設けられている。
上車輪用可変機構42は、上支承部421と、上保持部422とを備えている。上支承部421は、主フレーム38の上面に取り付けられている。また、上支承部421は、主フレーム38の固定フレーム32側の端部に設けられている。上支承部421は、主フレーム38の上面から上方に向かって突出している。上支承部421は、上台座部34を軸支し、これにより上台座部34を上下方向に回動自在とさせる。
上保持部422は、回動自在に軸支された上台座部34を任意の回動位置で固定する。上保持部422は、上方に向かって突出した軸状のねじ部423により構成されている。ねじ部423は、主フレーム38において、上支承部421とは反対側の端部に設けられている。ねじ部423は、軸方向の全長に亙って雄ねじが設けられている。ねじ部423には、複数のナットが螺合されている。これにより、ねじ部423は、長手方向の任意の位置で、上台座部34の回動側の端部を固定することができる。
下車輪用可変機構43は、下支承部431と、下保持部432とを備えている。下車輪用可変機構43は、上車輪用可変機構42とは上下が反転しただけで同じ構造であるため、説明を省略する。
上台座部34は、ベースフレーム33の上支承部421に回動自在に連結されている。上台座部34には、図5に示すように、駆動輪44を軸受けする軸受部341が設けられている。この軸受部341は、軸方向が前後方向に平行となっている。軸受部341は、駆動輪44の駆動軸441を回動自在に支持する。また、上台座部34には、動力部45としての減速機46とモータ47とが取り付けられる。
下台座部35は、ベースフレーム33の下支承部431に回動自在に連結されている。下台座部35は、上台座部34とは上下が反転しただけで同じ構造であるため、説明を省略する。
駆動輪44には、駆動軸441が設けられている。駆動軸441は、前後方向に平行な水平軸である。駆動輪44は、上台座部34と、下台座部35とにそれぞれ回転自在に軸支されている。上台座部34に設けられた駆動輪44は、上台座部34を下方側に回動することで、周軌条27の内周面に圧接し、この状態のまま上保持部422により固定される。下台座部35に設けられた駆動輪44は、下台座部35を上方側に回動することで、周軌条27の外周面に圧接し、この状態のまま下保持部432により固定される。言い換えると、駆動輪44は、周軌条27を内外方向の両側から挟持するようにして配置される。
動力部45は、減速機46と、モータ47とを備えている。動力部45は、上台座部34と、下台座部35とにそれぞれ取り付けられている。つまり、上台座部34の駆動輪44の駆動源と、下台座部35の駆動輪44の駆動源とは、独立した別の駆動源となっている。
モータ47は、入力されたエネルギーを回転力に変換するアクチュエータである。モータ47としては、例えば、電動モータや、油圧モータ等が挙げられる。また、動力部45は、減速機46とモータ47とが一体となった減速機付きモータであってもよい。また、上台座部34に設けられたモータ47と、下台座部35に設けられたモータ47とは、相互に逆方向に回転するようになっている。
モータ47が回転駆動すると、その動力は、減速機46を介して駆動軸441に入力される。回転力が入力された駆動軸441は、駆動輪44を回転させる。すると、駆動輪44に圧接した周軌条27は、回転輪2の軸部14廻りに沿って移動する。周軌条27が軸部14廻り(周方向)に移動すると、それに追従して回転輪2が軸部14廻りに回転する。
本実施形態の観覧車には、第一駆動装置3とは別に、第二駆動装置5が設けられている。第二駆動装置5は、第一駆動装置3が故障した場合等に、回転輪2を手動または小型のロータリアクチュエータ(小型の回転力出力装置)等で回転させることができ、これにより、キャビン21を順次、乗降場90にまで移動させることができる。
第二駆動装置5は、図1に示すように、脚部11の骨組体12に固設されている。第二駆動装置5は、正面視で骨組体12と周軌条27とが重なる2箇所のうちの1箇所に設けられている。また、第二駆動装置5は、前側の周軌条27に対応する箇所と、後側の周軌条27に対応する箇所とにそれぞれ設けられている。
第二駆動装置5は、脚部11の台部13から操作可能な位置に設けられている。第二駆動装置5は、この台部13の高さに合わせて配置される。なお、台部13は、上述したように、地面から一定の高さに設けられている。このため、万が一、津波や洪水などにより水位が上がり、地面よりも水面が高くなった場合であっても、作業者は第二駆動装置5を操作することができる。
第二駆動装置5は、図6に示すように、装置フレーム51と、回転体64と、ウォームギア機構部65と、動力入力部68とを備えている。第二駆動装置5は、動力入力部68に手動操作等で動力を入力することで、回転体64を回転させることができる。第二駆動装置5は、駆動力に電力を用いない機械式の駆動装置である。
装置フレーム51は、固定部52と、固定部52に軸支された基台部53と、基台部53の上側に設けられた上回転体支持部54と、基台部53の下側に設けられた下回転体支持部55とを備えている。
固定部52は、骨組体12に溶接等により固定されている。固定部52には、一対の支持部材521が前後方向に対向するよう設けられている。この対向する支持部材521間には、回転軸57が架設されている。回転軸57は、軸芯が前後方向に平行となった水平軸である。この回転軸57には、基台部53が回動自在に軸支されている。
基台部53には、主フレーム58と、回動アーム59と、第2の可変機構61とが設けられている。主フレーム58は、回転軸57に連結されており、これにより、固定部52に対して上下方向に回動自在となっている。回動アーム59は、主フレーム58から下方に向かって延出している(つまり、主フレーム58と回動アーム59とは相互に固定されている)。主フレーム58と回動アーム59とで、正面視逆L字状をしている。回動アーム59の先端と骨組体12との間には、付勢体60が架設されている。この付勢体60は、例えば、コイルばね等の弾性体により構成される。付勢体60は、回動アーム59を骨組体12から離れる方向に付勢し、これにより、主フレーム58を上方側に付勢するようになっている。第二駆動装置5は、この付勢体60で基台部53を上方に付勢することで、基台部53が自重で下方に回動して、上側の回転体64のみに負荷が掛かりすぎるのを防ぐことができる。
第2の可変機構61は、主フレーム58に設けられている。この第2の可変機構61は、回転体64と周軌条27との間の距離を変更するための機構である。第2の可変機構61は、回転体64と周軌条27との間の距離を変更することで、周軌条27に対し、回転体64を接離自在とさせる。
この第2の可変機構61と、第一駆動装置3の第1の可変機構41とで、動力切替部を構成する。動力切替部は、回転輪2の第一駆動装置3による駆動と、第二駆動装置5による駆動とを切り替える。動力切替部の具体的な操作方法は、後述する。
基台部53には、第2の可変機構61として、上側可変機構62と、下側可変機構63とが設けられている。
上側可変機構62は、上支持部621と、上保持部622とを備えている。上支持部621は、主フレーム58の上面に取り付けられている。また、上支持部621は、主フレーム58の固定部52側の端部に設けられている。上支持部621は、主フレーム58の上面から上方に向かって突出している。上支持部621は、上回転体支持部54を軸支し、これにより上回転体支持部54を上下方向に回動自在とさせる。
上保持部622は、回動自在に軸支された上回転体支持部54を任意の回動位置で固定する。上保持部622は、上方に向かって突出した軸状のねじ部623により構成されている。ねじ部623は、主フレーム58において、上支持部621とは反対側の端部に設けられている。ねじ部623は、軸方向の全長に亙って雄ねじが設けられている。ねじ部623には、複数のナットが螺合されている。これにより、ねじ部623は、長手方向の任意の位置で、上回転体支持部54の回動側の端部を固定することができる。
下側可変機構63は、下支持部631と、下保持部632とを備えている。下側可変機構63は、上側可変機構62とは上下が反転しただけで同じ構造であるため、説明を省略する。
上回転体支持部54は、基台部53の上支持部621に回動自在に連結されている。上回転体支持部54には、図7に示すように、回転体64を軸受けする軸受部541が設けられている。この軸受部541は、軸方向が前後方向に平行となっている。軸受部541は、回転体64の駆動軸642を回動自在に支持する。
下回転体支持部55は、基台部53の下支持部631に回動自在に連結されている。下回転体支持部55には、回転体64を軸受けする軸受部551が設けられている。この軸受部551は、軸方向が前後方向に平行となっている。軸受部551は、回転体64の駆動軸642を回動自在に支持する。
回転体64は、駆動タイヤ641と、駆動軸642とを備えている。駆動軸642は、駆動タイヤ641に連結されている。駆動軸642は、軸芯が前後方向に平行な水平軸により構成されている。第二駆動装置5には、回転体64が上下方向に一対設けられている。上回転体支持部54は、上側の回転体64を軸支する。また、下回転体支持部55は、下側の回転体64を軸支する。
上側の回転体64は、上回転体支持部54を下方側に回動することで、周軌条27の内周面に圧接し、この状態のまま上保持部622により固定される。下側に設けられた回転体64は、下回転体支持部55を上方側に回動することで、周軌条27の外周面に圧接し、この状態のまま下保持部632により固定される。言い換えると、回転体64は、周軌条27を内外方向の両側から挟持するようにして配置される。
下側の回転体64の駆動軸642には、ウォームギア機構部65が連結されている。下側の回転体64は、ウォームギア機構部65から入力された回転力により、回転駆動するように構成されている。
ウォームギア機構部65は、図8に示すように、ウォームホイール66と、ウォーム67とを備えている。ウォームホイール66は、円盤状のホイールの外周に沿って歯が刻設されたはす歯歯車により構成される。ウォームホイール66は、回転体64の駆動軸642に連結されている。より詳しく説明すると、ウォームホイール66の中心軸は、駆動軸642の軸芯と同芯となっている。
ウォーム67は、円柱状のねじ歯車により構成される。ウォーム67は、ウォームホイール66に噛合し、これにより、ウォームホイール66を従動させる。ウォーム67は、動力入力部68に連結されている。つまり、ウォーム67は、動力入力部68に入力された回転動力によって、軸廻りに回転するようになっている。
動力入力部68は、ウォームギア機構部65に回転動力を入力するために設けられている。動力入力部68は、ハンドル69と、工具係合部75とを備えている。ハンドル69は、手動によって回転動力をウォームギア機構部65に入力するために設けられている。ハンドル69は、円環状に形成されている、ハンドル69の中心軸は、ウォーム67の軸芯と同芯となっている。
工具係合部75は、小型のロータリアクチュエータの回転出力軸に着脱自在に係合される。工具係合部は、例えば、六角形状や正方形状の孔により形成された嵌合孔によって構成される。嵌合孔の中心は、ウォーム67の軸芯上に位置している。ロータリアクチュエータの回転出力軸が、嵌合孔に挿入されると、ロータリアクチュエータの回転出力軸は、嵌合孔に対して回転方向に係合される。
なお、小型のロータリアクチュエータの駆動源は、例えば、電動であってもよいし、空気圧により駆動するものであってもよい。また、小型のロータリアクチュエータとしては、操作しやすいように、ハンディタイプのロータリアクチュエータであることが好ましい。
また、回転体64の駆動軸642において、駆動タイヤ641とは反対側の端部には、主動輪70が連結固定されている。主動輪70は、例えば、プーリや歯車等の動力伝達用の部材により構成される。主動輪70は、駆動軸642を介してウォームホイール66と連結されており、ウォームホイール66と連動して回転する。
上側の回転体64の駆動軸642には、図7に示すように、従動輪71が連結固定されている。従動輪71は、例えば、プーリや歯車等の動力伝達用の部材により構成される。従動輪71は、上側の回転体64の駆動軸642と同芯となっている。これにより、従動輪71が回転すると、上側の回転体64は回転駆動する。
主動輪70と従動輪71との間には、無端状の動力伝達体72が架設されている。動力伝達体72は、例えば、タイミングベルトや、チェーン等により構成される。動力伝達体72は、例えば、たすきがけ状(クロス状)に架設される。これにより、従動輪71は、主動輪70が回転すると、動力伝達体72を介して、主動輪70とは反対方向に回転する。
作業者がハンドル69を回転させると、ハンドル69は、ウォームギア機構部65に動力を入力する。具体的に言うと、ハンドル69は、ウォーム67に軸廻りの回転力を入力する。回転力が入力されたウォーム67は、ウォームホイール66を従動させ、これにより、下側の回転体64の駆動軸642に軸廻りの回転力を入力する。軸廻りの回転力が入力された駆動軸642は、駆動タイヤ641を回転させると共に、主動輪70を回転させる。
主動輪70は、動力伝達体72を介して従動輪71を回転させる。回転力が入力された従動輪71は、上側の回転体64の駆動軸642を介して、駆動タイヤ641を回転させる。
駆動タイヤ641は、回転輪2の周軌条27に内外方向から圧接している。このため、駆動タイヤ641が回転すると、周軌条27が周方向に移動する。周軌条27が周方向に移動すると、これに追従して、回転輪2が軸部14廻りに回転駆動する。
このような構成の観覧車において、第二駆動装置5は、例えば、次のようにして使用される。
観覧車の通常運転時においては、回転輪2は第一駆動装置3によって回転する。このとき、第二駆動装置5の回転体64の駆動タイヤ641は、周軌条27とは離間している(図6参照)。第一駆動装置3がなんらかの事情(例えば、故障等)で駆動不能となった場合、作業者は、動力切替部によって、第一駆動装置3による駆動から第二駆動装置5による駆動に切り替える作業を行なう(図9参照)。
作業者は、第二駆動装置5の第2の可変機構61を操作して、周軌条27と離間している回転体64を、周軌条27に圧接させる。次いで作業者は、第一駆動装置3の第1の可変機構41を操作して、周軌条27に圧接した駆動輪44を、周軌条27から離間させる。
次に、作業者は、動力入力部68を回転操作して、回転輪2を回転させる。すると、回転輪2は、ゆっくりと回転してゆき、キャビン21が順次、乗降場90に帰着する。これにより、乗降場90に帰着したキャビン21から搭乗者を降車させることができる。
ところで、キャビン21から搭乗者を降車させてゆくと、乗降場90を通過したキャビン21は、搭乗者が載るキャビン21よりも重量が小となる。このため、搭乗者を順次降車させてゆくと、正面視において、回転輪2は、右側と左側との重量が偏ることによってバランスできずに、重量が重い側に向かって(つまり、正回転方向に向かって)回転しようとする。このとき、回転輪2には正回転方向に向かって回転力が働くため、動力入力部68で必要な操作力は軽減される。
一方、第二駆動装置5の回転体64は、回転輪2に正回転方向に向かって回転力が働くことで、正回転方向に過度な回転力を受ける。このとき、回転体64の駆動軸642は正回転方向に力を受けるが、本実施形態の第二駆動装置5は、回転体64と動力入力部68との間にウォームギア機構部65を介在しているため、ウォームギア機構部65の出力側からの力の入力に対してロックさせることができる。すなわち、第二駆動装置5は、ウォームギア機構部65のセルフロックの効果を利用することにより、出力側からの入力を入力側に伝達不能とすることができる。
このウォームギア機構部65におけるセルフロック機能を発揮するには、ウォームギア機構部65の減速比を、例えば、およそ1/50,1/60にし、すなわち、およそ1/50以上(1/50,1/60,1/70・・・、つまり(駆動側回転速度)/(従動側回転速度)が50以上)とすることが好ましい。
このように本実施形態のウォームギア機構部65は、セルフロックの効果が発生する減速比に設定されているため、回転輪2側からの回転力を動力入力部68に伝達不能とすることができる。この結果、作業者は安全に、第二駆動装置5を手動操作することができる。
その上、本実施形態の第二駆動装置5は、ウォームギア機構部65が、セルフロックの効果を発揮するため、第二駆動装置5を回転輪2のブレーキ装置として使用することも可能である。これにより、例えば、回転輪2に設けられた航空灯を最上部に位置させ、この状態で回転輪2を固定しておくことも容易にできる。
なお、第二駆動装置5を、ブレーキ装置として兼用することも可能であるが、従来用いられるブレーキ装置に追加的に用いることもできる。これにより、回転輪2に対してより大きな制動力を発揮することができる。
以上説明したように、本実施形態の観覧車は、回転輪2と第一駆動装置3とを備えている。回転輪2は、支持体1に軸支されており、複数のキャビン21が設けられている。第一駆動装置3は、モータ47を駆動源としており、回転輪2を回転させるものである。また、観覧車は、回転輪2に設けられた周軌条27と、周軌条27を周方向に移動させることで回転輪を回転させる第二駆動装置5と、第一駆動装置3による駆動と第二駆動装置5による駆動とを切り替える動力切替部とを具備している。第二駆動装置5は、回転体64と、ウォームギア機構部65と、動力入力部68とを備えている。回転体64は、装置フレーム51に回転可能に軸支されており、また、周軌条27に圧接される。ウォームギア機構部65は、この回転体64を回転させる。動力入力部68は、このウォームギア機構部65に回転動力を入力するために設けられている。このウォームギア機構部65は、回転体64に連結されたウォームホイール66と、ウォームホイール66に噛合し動力入力部68に連結されたウォーム67とを有している。
このため、本実施形態の観覧車によれば、モータ47が故障等して駆動しなくなった場合であっても、回転輪2を手動等で回転駆動させることができ、キャビン21内に搭乗した搭乗者を乗降場90に帰着させることができる。また、本実施形態の第二駆動装置5は、電力により駆動しない機械式の駆動装置であるため、停電等の電力の供給を受けられない状況下でも回転輪2を駆動させることができる。
また、本実施形態の第二駆動装置5によれば、ウォームギア機構部65の減速比を大きくすることで、それほど力を要さずに、回転輪2を回転させることができる。また、キャビン21に搭乗する人による回転輪の重量の偏りや、風力等により回転輪2に回転力が掛かった場合であっても、ウォームギア機構部65のセルフロック機能により、回転輪2側から入力された動力をロックすることができる。これにより、動力入力部68への動力の入力を超えた回転輪2の回転を防ぐことができる。また、本実施形態の第二駆動装置5は、このセルフロックの効果を利用することで、第二駆動装置5をブレーキ装置として使用することもできる。
また、本実施形態の動力入力部28は、回転動力を手動により入力するためのハンドル69を有している。
このように、本実施形態の観覧車によれば、手動によって、回転輪2を回すことができるので、非常時においても、より確実に回転輪2を回して、キャビン21から搭乗者を降車させることができる。
また、本実施形態の第一駆動装置3は、周軌条27に圧接して当該周軌条27を周方向に移動させ、これにより回転輪2を回転させる駆動輪44を備えている。動力切替部は、第1の可変機構41と、第2の可変機構61とを備えている。第1の可変機構41は、この駆動輪44と周軌条27との間の距離を接離自在に変更する。また、第2の可変機構61は、この回転体64と周軌条27との間の距離を接離自在に変更する。
このため、第一駆動装置3が故障等したことで駆動輪44が回転不能となった場合であっても、駆動輪44と周軌条27との圧接状態を簡単に解除することができる。また、第二駆動装置5を使用する際に、簡単に、回転体64を周軌条27に圧接させることができる。
また、本実施形態の観覧車は、支持体1が地面に立設されたものである。この支持体1には、地面から一定の高さ位置に台部13が設けられている。第二駆動装置5は、この台部13から操作可能な位置に設けられている。
このように本実施形態の観覧車によれば、第二駆動装置5を一定の高さ以上に配置することができるため、例えば、洪水や津波が生じた場合などのように、地面よりも水面が高くなっても、作業者は第二駆動装置5を操作することができる。
なお、本実施形態の第二駆動装置5は、図7に示すように、ウォームギア機構部65からの動力が、下側の回転体64に伝導すると共に、動力伝達体72を介して、上側の回転体64に伝達し、上下両側の回転体64によって回転輪2を駆動していた。この点について、例えば、動力伝達体72を設けず、上側の回転体64を回転自在とすると共に、下側の回転体64だけに動力を伝達して、回転輪2を駆動するようにしてもよい。
また、動力入力部は、ハンドルだけを備えたものであってもよい。つまり、動力入力部における工具係合部75は設けられていなくてもよい。
次に、実施形態2について図10〜14に基づいて説明する。なお、本実施形態は、実施形態1と大部分において同じであるため、同じ部分においては同符号を付して説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
実施形態2の観覧車は、実施形態1の観覧車よりも小さい小型の観覧車である。本実施形態の観覧車は、実施形態1の観覧車と同様、回転輪2と、第一駆動装置3とを備えている。またこの観覧車には、第一駆動装置3とは別に第二駆動装置5が設けられている。また、観覧車は、第一駆動装置3による駆動と第二駆動装置5による駆動とを切り替える動力切替部を備えている。
実施形態2の観覧車と、実施形態1の観覧車との異なる点の一つは、第一駆動装置3と第二駆動装置5との配置位置である。本実施形態の観覧車は、回転輪2の最下端に対応する箇所に、第一駆動装置3と第二駆動装置5とが設けられている。第一駆動装置3及び第二駆動装置5は、図11に示すように、前側の周軌条27に対応する箇所と、後側の周軌条27に対応する箇所とに設けられている。
第一駆動装置3は、図12に示すように、周軌条27の径方向の内側に設けられている。すなわち、第一駆動装置3の駆動輪44は、周軌条27の内周面に圧接している。これにより、駆動輪44が回転すると、回転輪2が回転するようになっている。
第二駆動装置5は、周軌条27の径方向の外側に設けられている。すなわち、第二駆動装置5の回転体64は、周軌条27の外周面に圧接している。これにより、回転体64が回転すると、回転輪2が回転するようになっている。
第一駆動装置3の駆動輪44は、周軌条27の内周面に圧接している。また、第二駆動装置5の回転体64は、周軌条27の外周面に圧接している。つまり、周軌条27は、駆動輪44と回転体64とで、内外方向から挟持されている。
第一駆動装置3は、実施形態1と同様、第1の可変機構41を備えている。また、第二駆動装置5は、第2の可変機構61を備えている。なお、この第1の可変機構41と第2の可変機構61とは、動力切替部としてではなく、周軌条27に対する回転体64と駆動輪44との圧接力を調整するために設けられている。
第二駆動装置5は、図13に示すように、回転体64と、ウォームギア機構部65と、動力入力部68とを備えている。また、第二駆動装置5は、ウォームギア機構部65を回転体64から切り離すクラッチ機構部8を備えている。クラッチ機構部8は、回転体64とウォームギア機構部65のウォームホイール66との間に設けられている。本実施形態の観覧車は、動力切替部として、クラッチ機構部8を備えている。
回転体64には、駆動軸642として、一次側駆動軸73と、二次側駆動軸74とが設けられている。一次側駆動軸73は、ウォームギア機構部65に連結されている。二次側駆動軸74は、駆動タイヤ641に連結されている。
クラッチ機構部8は、一次側駆動軸73と、二次側駆動軸74とを接離自在に連結する。クラッチ機構部8は、一次側連結部81と、二次側連結部82と、ハンドル部83とを備えている。一次側連結部81は、駆動軸642の軸方向(つまり、前後方向)に沿ってスライド自在となっている。ハンドル部83は、一次側連結部81に連結されている。ハンドル部83は、一次側連結部81を、駆動軸642の軸方向に沿ってスライド自在に移動させる。
一次側連結部81には、一次側駆動軸73が連結されている。一次側連結部81と一次側駆動軸73とは、軸方向にスライド移動自在となり、且つ、軸廻りには移動不能となるよう連結されている。また、二次側連結部82には、二次側駆動軸74が連結される。
ハンドル部83を前後方向に切り替え操作すると、一次側連結部81と二次側連結部82とを、連結したり切り離したりすることができる。より具体的に言うと、ハンドル部83を後方に向かって移動させると、一次側連結部81と二次側連結部82とを離すことができる。また、ハンドル部83を前方に向かって移動させると、一次側連結部81と二次側連結部82とを連結させることができる。
観覧車の通常運転時には、ハンドル部83を後方側に位置させる。これにより、一次側駆動軸73と二次側駆動軸74とが切り離される。従って、回転輪2が第一駆動装置3により回転しても、二次側駆動軸74と駆動タイヤ641とが回転するだけで、ウォームギア機構部65には動力が伝わらない。このため、本実施形態の第二駆動装置5によれば、通常運転時には、駆動タイヤ641にセルフロック機能を働かせないようにできる。
第二駆動装置5を使用する場合、ハンドル部83を前方側に位置させる。これにより、一次側駆動軸73と二次側駆動軸74とが連結される。この状態で、動力入力部68のハンドル69を回転操作すると、その動力は、ウォームギア機構部65を介して駆動軸642に入力され、駆動タイヤ641を回転させる。これにより、第二駆動装置5は、回転輪2を回転させることができる。この場合、回転輪2側から駆動軸に対して回転力が働いた場合には、ウォームギアのセルフロック機能を働かせることができる。
以上説明したように、本実施形態の観覧車は、動力切替部を有している。動力切替部は、回転体64とウォームホイール66との間に設けられたクラッチ機構部8を有している。
このため、本実施形態の観覧車によれば、クラッチ機構部8を操作するだけで、簡単に、第二駆動装置5におけるセルフロック機能を働かせることができる。また、回転輪2の駆動を、第二駆動装置5による駆動に簡単に切り替えることができる。
なお、本実施形態の観覧車は、第一駆動装置3の駆動輪44が常に周軌条27に圧接したものであるが、第二駆動装置5を使用する際には、モータ47のブレーキを開放すればよい。従って、本実施形態のモータ47には、ブレーキ開放機能付きのモータ47を用いることが好ましい。また、ブレーキ開放機能付きのモータ47を用いるのではなく、第二駆動装置5の使用時に、モータ47の動力を駆動軸から切り離すことができるような構造にしてもよい。
また、本実施形態の観覧車は、第二駆動装置5にクラッチ部を設けて、第一駆動装置3と第二駆動装置5との切り替えを行なうものであったが、実施形態1と同様、第1の可変機構41と第2の可変機構61とを用いて、第一駆動装置3と第二駆動装置5とを切り替えてもよい。
以上、実施形態1,2の観覧車を説明したが、本発明の観覧車は、実施形態1,2にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。