JP6178315B2 - 生体適合性材料 - Google Patents

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Description

本発明は、生体適合性材料に関し、特にモノマーおよびポリマーならびに、これらから形成される物品に関する。本発明の材料は、デバイスの表面をコーティングするか、たとえばタンパク質の吸着が問題になるなど、改善された生体適合性が必要条件であるバルク材からデバイスを形成することのどちらにも、有用である。これらの材料は、コンタクトレンズなどの眼科用デバイスの製造時に特に有用である。
タンパク質含有流体または生物流体と接触して使用されることになるデバイスの製造に用いられる材料は、許容可能な化学的特性、物理的特性、機械的特性ならびに、タンパク質含有流体または生物流体との適合性を基準に選択される。しかしながら、これらの特性を同時に最適化するのは困難なことが多いため、妥協点を見出さなければならず、これは性能の点で次善の結果となることが多い。使用時に生物流体と接触することになるコンタクトレンズや眼内レンズの製造が、一例である。特に、コンタクトレンズは、涙の成分と接触することになる。涙の成分がコンタクトレンズに吸着するとレンズに膜が張るが、これが問題になるのである。
これらの問題が生じるのを避けるために、このようなデバイスの大半をコーティングするか形成することのどちらにでも使用してタンパク質の吸着を阻止できる生体適合性材料を提供することに着目されてきた。生体適合性材料は、劣化したり悪化したりすることなく、再現可能な形で製造でき、表面にコーティングでき、あるいは、好適な形態にプレスできるもので、かつ、これらが使用される特定の用途に求められる必要な機械的特性と透過性の特性を備え、たとえば透過性や機械的特性または表面特性の悪化を伴うことなく滅菌可能で、生物環境によって破損または劣化せず、発がん性でもないものでなければならない。このような材料は、不要な生物学的応答を引き起こさないことが重要である。
生体適合性材料が特に重要な領域は、眼用デバイス、特に眼科用レンズ、特にコンタクトレンズの製造である。これは、異なる特性のバランスが求められる状況の重要な例である。
歴史的に、初期のコンタクトレンズは、剛性で角膜にほとんど酸素を通さないポリメチルメタクリレートで形成されていた。後になって、気体透過性の改善されたシリコンを採用したレンズが作製された。シリコン材料は性質が疎水性であり、それはこれらのレンズが涙液の成分で簡単に汚れ、場合によっては眼に貼り付きやすくなることを意味していた。さらに、このようなシリコンで作られるレンズは、酸素透過性は高いが、材料の含水率が低く、それは装着者にとって快適ではなくなり得ることを意味していた。よって、その後、一層快適なレンズを開発するためのヒドロゲル系へと焦点が移った。ヒドロゲル系とは、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ビニルピロリドン、メタクリル酸またはこれらの組み合わせを含むもののことである。このようなヒドロゲル系は、剛性で気体透過可能なもとのシリコンレンズより含水率がかなり高く、一層よく適合し、通常は汚れたり装用中の脱水が起こったりしにくいため、装用者にとって一層快適である。しかしながら、これらの材料の酸素透過性はシリコンの場合ほど高くはなく、これが角膜損傷の危険を高める場合がある。この点に関して、これらのレンズの酸素透過性は、日常の使用には適しているとみなせることがあるが、長時間装用するにはあまり適していない。
このため、より最近の研究では、シリコン材料に関連する酸素透過性と、ヒドロゲル系に関連する含水率および親水性(ならびに、快適さ)とのバランスに焦点が当てられている。これは、シリコンヒドロゲルとして知られるクラスの材料の開発につながっている。この材料では、誘導されたポリマーを半透明または不透明にしかねない相分離を伴うことなく、疎水性のシリコンモノマーと親水性の材料とを組み合わせている。しかしながら、コンタクトレンズは眼の表面に接することになるため、コンタクトレンズの作製に用いられるシリコンヒドロゲルが不要な生物学的応答を何ら引き起こさないことも、最も重要である。シリコン材料は、本質的に疎水性であるため、これは特に大きな課題となっている。なぜなら、疎水性が原因で眼の涙液が途切れ、表面が汚れる場合があるからである。これらはどちらも、不快感につながりかねない。よって、生体適合性と、気体透過性、特に酸素透過性が高く、かつ、適切に濡れる表面を提供することとがバランスする生体適合性材料に需要がある。
上述したように、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびN−ビニルピロリドンなどの重合可能なビニル成分が、眼科用レンズの製造に用いられており、このようなビニル系とコモノマーとを共重合して、特性が改善されたレンズ材料を製造するのに、多くの努力がなされてきた。特に、生体適合性ポリマーの形成には、2−(メタクリロイルオキシエチル)−2’(トリメチルアンモニウムエチル)ホスフェート、内塩(MPC、ヒドロキシエチルメタクリレート−ホスホリルコリン、HEMA−PC)が用いられている。これらの材料は、双性イオンのホスホリルコリン(PC)基を含有し、これらの材料の生体適合性は、このPC基が、あらゆる生きた細胞の外側の膜の主成分であるホスファチジルコリンやスフィンゴミエリンなどのリン脂質の双性イオン構造を模しているという事実に由来する。MPCを取り入れたコンタクトレンズ材料は、装用時の脱水が低減され、涙液成分の堆積も低減されることをはじめとして、利点のある特性を持つことが示されている。より一般的には、双性イオン基を含有するポリマーは、タンパク質の堆積、血液の活性化、炎症反応、細菌の付着を減らし、生物膜形成を阻害することで生体適合性を改善することが示されている。
MPCの欠点のひとつに、溶解性が非常に限られた固体だということがある。これは、レンズ調製物における成分としてのMPCの利用に制約となる。
さらに、MPCは、他のメタクリレート化合物と反応してコポリマー系およびターポリマー系を形成することが示されているが、他のビニル系との反応は簡単なものではなかった。これは、MPCが他のコモノマーに不溶であることに加えて、メタクリレート基とビニル基の相対的な反応速度が合わない結果である。この点に関して、ビニルモノマーとメタクリレートモノマーとの混合物が重合すると、ほとんどがメタクリレート成分またはビニル成分のどちらかを含むポリマー誘導体の混合物になることがわかっている。
新たな生体適合性材料に対する需要がある。特に生体適合性ポリマー、特に、ビニルコモノマーから誘導される残基をさらに含む生体適合性ポリマーの合成に適した生体適合性を与える材料に対する需要がある。また、デバイスの製造時に有用な生体適合性コポリマー、特に、たとえばコンタクトレンズといった眼用デバイスなど、タンパク質含有溶液や生物流体と接する生体適合性コポリマーの合成に適したビニルモノマーに対する溶解性が改善されたおよび/またはビニルモノマーに匹敵する反応速度が改善された生体適合性モノマーに対する需要がある。
眼用デバイスおよびコンタクトレンズの分野では、具体的に、このようなデバイスに形成されたときに、高い気体透過性と濡れやすい表面の両方を呈する生体適合性材料に対する需要もある。
モノマー
本発明は、末端ビニル基と双性イオン基の両方を含むエチレン的に不飽和なモノマーを提供する。
本発明のさまざまな実施形態を、本明細書にて説明する。各実施形態に示される特徴を、他の特定の特徴と組み合わせて別の実施形態を提供してもよいことは、認識できよう。
この点に関して、第1の態様では、本発明は、以下の式(I)で表されるモノマーを提供する。
(式中、
Wは、(CR1 2nであり;
Xは、O、SまたはNR2であり;
Yは、リンカー基であり;
Zは、双性イオン基であり;
1は各々独立に、H、ハロゲン、C14アルキルまたはC14ハロアルキルから選択され;
2は、HまたはC14アルキルであり;
nは、0から6の整数であり;
mは、0から6の整数である。)
好都合なことに、本発明のモノマーは、改善された生体適合性を提供するための双性イオンの官能性と、ビニル基との両方を含む。ビニル基の存在と性質は、モノマーを共重合に用いる場合、ある範囲のコモノマー、特に、コンタクトレンズなどの眼用デバイスの製造に有用であることがすでに知られているN−ビニルピロリドンおよびN−ビニルカルバメートなどのビニルコモノマーが、よりよく適合した反応性を有する好適なコリアクタントとなることを意味する。コモノマー系に対する溶解性が増大した本発明のモノマーは、シロキサンコモノマーを含むこのようなコモノマー系と共重合させて、眼用デバイス、特に眼科用レンズ、特にコンタクトレンズの作製に特に有用なポリマーを形成することが可能である。これは、溶解性が極めて限られることが知られている、一般に用いられている材料であるMPCと比較して、特に好都合である。
nの値は、0、1、2、3、4、5または6であればよい。好ましい実施形態では、nは0である。別の実施形態では、nは1である。さらに別の実施形態では、nは2である。nが0である場合、ビニル基がヘテロ原子に隣接するが、これはヘテロ原子上の唯一の電子対が、モノマーの反応性を高める作用を有するビニル基の電子と相互作用できることを意味する。
一実施形態では、R1は、水素である。別の実施形態では、R1は、C14アルキル、特にエチルまたはメチル、特にメチルである。別の実施形態では、R1は、ハロゲン、特にフッ素であってもよい。別の実施形態では、R1は、アルキル基の1つまたは2つ以上の水素原子が、ハロゲン、特にフッ素で置換されている、C14ハロアルキル基であってもよい。C14ハロアルキル基の一例が、CF3である。R1基は各々、同一であっても異なっていてもよい。一実施形態では、R1基は、異なっている。一実施形態では、R1基は、同一である。たとえば、nが1である場合、炭素原子に結合した2つのR1基は各々、同一であっても異なっていてもよい。同様に、nが2である場合、4つのR1基は各々、同一であっても異なっていてもよい。同様に、nが1かつmが1である場合、4つのR1基は各々、同一であっても異なっていてもよい。
一実施形態では、XはOである。別の実施形態では、XはSである。さらに別の実施形態では、XはNR2である。一実施形態では、R2は、水素である。一実施形態では、R2は、C14アルキル、特にエチルまたはメチル、特にメチルである。
Yは、式(I)のモノマーにおけるヘテロ原子Xと(CR1 2mZ基との結合を形成するリンカー基である。基Yの性質は特に限定されず、好ましい実施形態では、Yは、C110アルキレン、C210アルケニレン、C210アルキニレン、C310シクロアルキレン、C310シクロアルケニレン、C110ヘテロアルキレン、C210ヘテロアルケニレン、C210ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)O−、−C(O)S−、−C(O)N(RM)−、−C(S)−、−C(S)O−、−C(S)S−、−C(S)N(RM)−(ここで、RMは、水素またはC14アルキルである)からなる群から選択される。アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロアルケニレン基、ヘテロアルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基は、1つまたは2つ以上のRN(ここで、RNは各々独立に、−H、−OH、−CN、−NO2、−CF3、−OCF3、−CO2H、−NH2、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、−O(C1〜C10アルキル)、−O(C2〜C10アルケニル)、−O(C2〜C10アルキニル)、ハロゲン、−C(O)H、−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−C(O)−O(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)、−N(C1〜C10アルキル)2、−C(O)−NH(C1〜C10アルキル)、−C(O)−N(C1〜C10アルキル)2、−NH−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−NH−(C1〜C10アルキル)−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−(C0〜C10)−SH、−S(O)−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−NH2、−S(O)2−NH−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−N(C1〜C10アルキル)2、=Oからなる群から選択される)で任意に置換されていてもよい。
一実施形態では、Yは、1つまたは2つ以上のRNで任意に置換された、C110アルキレン、C210アルケニレンまたはC210アルキニレンである。さらに別の実施形態では、Yは、1つまたは2つ以上のRNで任意に置換された、C16アルキレン、C26アルケニレンまたはC26アルキニレンである。さらに別の実施形態では、Yは、C110アルキレンであり、一例では、1つまたは2つ以上のRNで任意に置換された、C16アルキレンである。
別の実施形態では、Yは、−C(=V)A−(式中、Vは、SまたはOであり、Aは、NRM、OまたはSから選択される(ここで、RMは、HまたはC14アルキルである))である。特に、一実施形態では、本発明は、式(IB)のモノマーを提供する。
(式中、W、X、Z、R1、R2、n、mは、式(I)に関連して先に定義したとおりであり、Vは、SまたはOであり、Aは、NRM、O、Sから選択される)。本発明のモノマーが式(IB)を有する場合、式(I)で定義したようなYが−C(O)O−であるように、好ましくは、VはOであり、AはOである。
XがNR2から選択される式(I)の化合物では、これらが結合するR2、Y、N原子は一緒になって、1つまたは2つ以上のRN(特に、RNはOである)で任意に置換された、5員環から7員環の複素環を形成してもよい。特に、これらが結合するR2、Y、N原子は一緒になって、1つまたは2つ以上のRN(特に、RNはOである)で任意に置換された、5員環の複素環を形成してもよい。
一実施形態では、このモノマーは、式(IA)を有する。
(式中、W、R1、Zは、先に定義したとおりである)。一実施形態では、モノマーは、nが0である式(IA)を有するため、基Wは存在しない。一実施形態では、モノマーは、すべてのR1がHであり、mは2である、式(IA)を有する。
別の実施形態では、モノマーは、式(IAA)を有する。
(式中、W、R1、m、Zは、先に定義したとおりであり、Kは、C110アルキレン、C210アルケニレン、C210アルキニレン、C310シクロアルキレン、C310シクロアルケニレン、C110ヘテロアルキレン、C210ヘテロアルケニレン、C210ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)O−、−C(O)S−、−C(O)N(RM)−、−C(S)−、−C(S)O−、−C(S)S−、−C(S)N(RM)−(ここで、RMは、水素またはC14アルキルである)からなる群から選択される)。アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロアルケニレン基、ヘテロアルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基は、1つまたは2つ以上のRN(ここで、RNは各々独立に、−H、−OH、−CN、−NO2、−CF3、−OCF3、−CO2H、−NH2、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、−O(C1〜C10アルキル)、−O(C2〜C10アルケニル)、−O(C2〜C10アルキニル)、ハロゲン、−C(O)H、−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−C(O)−O(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)、−N(C1〜C10アルキル)2、−C(O)−NH(C1〜C10アルキル)、−C(O)−N(C1〜C10アルキル)2、−NH−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−NH−(C1〜C10アルキル)−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−(C0〜C10)−SH、−S(O)−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−NH2、−S(O)2−NH−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−N(C1〜C10アルキル)2、=Oからなる群から選択される)で任意に置換されていてもよい。
式(I)の化合物では、mの値は、0、1、2、3、4、5または6であればよい。一実施形態では、mは0である。特に、好ましくは、Yが−C(O)−、−C(S)−、−C(O)O−、−C(O)S−、−C(O)N(RM)−、−C(S)−または−C(S)N(RM)−以外の先に定義したとおりの基である場合、mは0である。別の実施形態では、特に、Yが−C(O)−、−C(S)−、−C(O)O−、−C(O)S−、−C(O)N(RM)−、−C(S)−または−C(S)N(RM)−である場合に、mは、1または2である。
Zは、双性イオン基である。双性イオン基とは、基の総電荷がゼロになるように基の異なる原子に正の電荷と負の電荷の両方があるイオン基である。結果として、双性イオン基は、極性が高く、水に対する自然な親和性を持つ。あらゆる生きた細胞の外側の膜の主成分である、ホスファチジルコリンおよびスフィンゴミエリンなどのリン脂質は、双性イオン構造を有する。よって、本発明のモノマーが双性イオン基を有するがゆえに、これを使用して、リン脂質の双性イオン構造を模すポリマーを製造可能である。これによって、本発明のモノマーを使用して生み出せることがあるポリマーの生体適合性が、改善される。
一実施形態では、Zは、式(IIA)、(IIB)、(IIC)、(IID)、(IIE)からなる群から選択される双性イオン基である。
一実施形態では、Zは、式(IIB)の双性イオン基である。
基(IIA)は、以下の式を有する。
(式中、R3およびR3Aは各々独立に、水素およびC14アルキルから選択され、aは、2から4の整数である。)
一実施形態では、両方のR3基が同一である。特に、両方のR3基は、C14アルキルであってもよく、一実施形態では、メチルであってもよい。
一実施形態では、両方のR3A基が同一である。特に、両方のR3A基は、水素であってもよい。
一実施形態では、aは、2または3である。さらに別の実施形態では、aは3である。
Zが式(IIA)の基である式(I)のモノマーの一実施形態では、mは、1または2である。
基(IIB)は、以下の式を有する。
(式中、R4およびR4Aは各々独立に、水素およびC14アルキルから選択され、bは、1から4の整数である。)
一実施形態では、すべてのR4基が同一である。特に、すべてのR4基は、C14アルキルであってもよく、一実施形態では、メチルであってもよい。一実施形態では、少なくとも1つのR4基が、C14アルキルである。
一実施形態では、R4A基が同一である。特に、R4A基は、水素であってもよい。
一実施形態では、bは、2または3である。さらに別の実施形態では、bは3である。好ましくは、bは2である。
Zが式(IIB)の基である式(I)のモノマーの一実施形態では、mは、1または2である。
一実施形態では、Zは、式(IIB)の基(式中、すべてのR4基がメチル基であり、bは2である)である。この実施形態では、Zは、ホスホリルコリン(PC)基である。PC基は、あらゆる生きた細胞の膜を形成するリン脂質で、自然に生じる。このため、リン脂質の双性イオンの特性を模することを視野に入れると、ZがPC基であるのは特に好都合である。
基(IIC)は、以下の式を有する。
(式中、R5およびR5Cは各々独立に、水素およびC14アルキルから選択され;R5Aは、水素または基−C(O)B15B(式中、R5Bは、水素またはメチルであり、B1は、結合、C110アルキレン、C210アルケニレン、C210アルキニレン、C310シクロアルキレン、C310シクロアルケニレン、C110ヘテロアルキレン、C210ヘテロアルケニレン、C210ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレンからなる群から選択される(ここで、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロアルケニレン基、ヘテロアルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基は、先に定義したような1つまたは2つ以上のRNで任意に置換されていてもよい))であり、cは、1から4の整数であり、ここで、ZがO原子またはN原子に直接結合している場合、zは0であり、それ以外の場合、zは1である。)
一実施形態では、R5基が同一である。特に、R5基は、C14アルキルであってもよく、一実施形態では、メチルであってもよい。一実施形態では、少なくとも1つのR5基が、C14アルキルである。
一実施形態では、両方のR5C基が同一である。特に、R5C基は、水素であってもよい。
一実施形態では、cは、2または3である。さらに別の実施形態では、cは3である。
基(IID)は、以下の式で表される。
(式中、R6およびR6Cは各々独立に、水素およびC14アルキルから選択され;R6Aは、水素または基−C(O)B26B(式中、R6Bは、水素またはメチルであり、B2は、結合、C110アルキレン、C210アルケニレン、C210アルキニレン、C310シクロアルキレン、C310シクロアルケニレン、C110ヘテロアルキレン、C210ヘテロアルケニレン、C210ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレンからなる群から選択される(ここで、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロアルケニレン基、ヘテロアルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基は、先に定義したような1つまたは2つ以上のRNで任意に置換されていてもよい))であり、dは、1から4の整数であり、ここで、ZがO原子またはN原子に直接結合している場合、zは0であり、それ以外の場合、zは1である。)
一実施形態では、R6基が同一である。特に、R6基は、C14アルキルであってもよく、一実施形態では、メチルであってもよい。一実施形態では、少なくとも1つのR6基が、C14アルキルである。
一実施形態では、両方のR6C基が同一である。特に、R6C基は、水素であってもよい。
一実施形態では、dは、1または2である。さらに別の実施形態では、dは2である。
基(IIE)は、以下の式を有する。
(式中、R7およびR7Cは各々独立に、水素およびC14アルキルから選択され;R7Aは、水素または基−C(O)B27B(式中、R7Bは、水素またはメチルであり、B2は、結合、C110アルキレン、C210アルケニレン、C210アルキニレン、C310シクロアルキレン、C310シクロアルケニレン、C110ヘテロアルキレン、C210ヘテロアルケニレン、C210ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレンからなる群から選択される(ここで、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロアルケニレン基、ヘテロアルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基は、先に定義したような1つまたは2つ以上のRNで任意に置換されていてもよい))であり、eは、1から4の整数であり、ここで、ZがO原子またはN原子に直接結合している場合、zは0であり、それ以外の場合、zは1である。)
一実施形態では、R7基が同一である。特に、R7基は、C14アルキルであってもよく、一実施形態では、メチルであってもよい。一実施形態では、少なくとも1つのR7基が、C14アルキルである。
一実施形態では、両方のR7C基が同一である。特に、R7C基は、水素であってもよい。
一実施形態では、eは、1または2である。さらに別の実施形態では、eは2である。
さらに、双性イオン基は、式(IIF)、(IIG)、(IIH)のものである。これらの基は、物理吸着によって表面に結合できるアルキル基またはフルオロアルキル基を含有する。
基(IIF)は、以下の式を有する。
(式中、R8およびR8Cは各々独立に、水素およびC14アルキルから選択され;R8Aは、基−C(O)B38B(式中、R8Bは、水素またはメチルであり、B3は、結合、C110アルキレン、C210アルケニレン、C210アルキニレン、C310シクロアルキレン、C310シクロアルケニレン、C110ヘテロアルキレン、C210ヘテロアルケニレン、C210ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレンからなる群から選択される(ここで、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロアルケニレン基、ヘテロアルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基は、先に定義したような1つまたは2つ以上のRNで任意に置換されていてもよい))であり、
fは、1から4の整数であり、ここで、ZがO原子またはN原子に直接結合している場合、zは0であり、それ以外の場合、zは1である。)
一実施形態では、R8A基が同一である。特に、R8A基は、C14アルキルであってもよく、一実施形態では、メチルであってもよい。一実施形態では、少なくとも1つのR8A基が、C14アルキルである。
一実施形態では、両方のR8が同一である。特に、R8基は、水素であってもよい。
一実施形態では、R8B基は各々、水素である。
一実施形態では、R8Aは、基−C(O)B38B(式中、B3は、式−[(CR8D 2aaO]bb−の基(ここで、基−(CR8D 2)−は、同一であるか異なっており、それぞれの基−(CR8D 2)−において、基R8Dは、同一であるか異なっており、それぞれの基R8Dは、水素、フッ素またはC14アルキルまたはフルオロアルキルであり、aaは、2から6、好ましくは3または4であり、bbは、1から12、好ましくは1から6である)である)である。すべての基R8Dが水素であり、すべての基−[(CR8D 2aaO]−においてaaが2である実施形態では、式(IIF)のモノマーの残基は、疎水性表面との間で強い二次価電子相互作用を生むことができない。このようなモノマーの残基を本発明のポリマーに含んでもよいとはいえ、当該相互作用が、ポリマーを表面に結合するものである場合、通常は、強い二次価電子相互作用を生むことのできるモノマーの残基を含むことも必要である。ddが2よりも大きい基を有するモノマーを用いて、強い二次価電子相互作用を提供することができる。この点に関して、B3が式−[(CR8D 2aaO]bb−の基である場合、aaは、約50以下、約70以下、約90mol%以下の残基−[(CR8D 2aaO]bb−において、2であると好都合である。
基(IIG)は、以下の式を有する。
(式中、R9およびR9Cは各々独立に、水素およびC14アルキルから選択され;R9Aは、基−C(O)B49B(式中、R9Bは、水素またはメチルであり、B4は、結合、C110アルキレン、C210アルケニレン、C210アルキニレン、C310シクロアルキレン、C310シクロアルケニレン、C110ヘテロアルキレン、C210ヘテロアルケニレン、C210ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレンからなる群から選択される(ここで、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロアルケニレン基、ヘテロアルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基は、先に定義したような1つまたは2つ以上のRNで任意に置換されていてもよい))であり、
gは、1から4の整数であり、ここで、ZがO原子またはN原子に直接結合している場合、zは0であり、それ以外の場合、zは1である。)
一実施形態では、R9A基が同一である。特に、R9A基は、C14アルキルであってもよく、一実施形態では、メチルであってもよい。一実施形態では、少なくとも1つのR9A基が、C14アルキルである。
一実施形態では、両方のR9が同一である。特に、R9基は、水素であってもよい。
一実施形態では、R9B基は各々、水素である。
一実施形態では、R9Aは、基−C(O)B49B(式中、B4は、式−[(CR9D 2ccO]dd−の基(ここで、基−(CR9D 2)−は、同一であるか異なっており、それぞれの基−(CR9D 2)−において、基R9Dは、同一であるか異なっており、それぞれの基R9Dは、水素、フッ素またはC14アルキルまたはフルオロアルキルであり、ccは、2から6、好ましくは3または4であり、ddは、1から12、好ましくは1から6である)である)である。すべての基R9Dが水素であり、すべての基−[(CR9D 2ccO]−においてccが2である実施形態では、式(IIG)のモノマーの残基は、疎水性表面との間で強い二次価電子相互作用を生むことができない。このようなモノマーの残基を本発明のポリマーに含んでもよいとはいえ、当該相互作用が、ポリマーを表面に結合するものである場合、通常は、強い二次価電子相互作用を生むことのできるモノマーの残基を含むことも必要である。ccが2よりも大きい基を有するモノマーを用いて、強い二次価電子相互作用を提供することができる。この点に関して、B4が式−[(CR9D 2ccO]dd−の基である場合、ccは、約50以下、約70以下、約90mol%以下の残基−[(CR9D 2ccO]dd−において、2であると好都合である。
基(IIH)は、以下の式を有する。
(式中、R10およびR10Cは各々独立に、水素およびC14アルキルから選択され;R10Aは、基−C(O)B510B(式中、R10Bは、水素またはメチルであり、B5は、結合、C110アルキレン、C210アルケニレン、C210アルキニレン、C310シクロアルキレン、C310シクロアルケニレン、C110ヘテロアルキレン、C210ヘテロアルケニレン、C210ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレンからなる群から選択される(ここで、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロアルケニレン基、ヘテロアルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基は、先に定義したような1つまたは2つ以上のRNで任意に置換されていてもよい))であり、
hは、1から4の整数であり、ここで、ZがO原子またはN原子に直接結合している場合、zは0であり、それ以外の場合、zは1である。)
一実施形態では、R10A基が同一である。特に、R10A基は、C14アルキルであってもよく、一実施形態では、メチルであってもよい。一実施形態では、少なくとも1つのR10A基が、C14アルキルである。
一実施形態では、両方のR10が同一である。特に、R10基は、水素であってもよい。
一実施形態では、R10B基は各々、水素である。
一実施形態では、R10Aは、基−C(O)B510B(式中、B5は、式−[(CR10D 2eeO]ff−の基(ここで、基−(CR10D 2)−は、同一であるか異なっており、それぞれの基−(CR10D 2)−において、基R10Dは、同一であるか異なっており、それぞれの基R10Dは、水素、フッ素またはC14アルキルまたはフルオロアルキルであり、eeは、2から6、好ましくは3または4であり、ffは、1から12、好ましくは1から6である)である)である。すべての基R10Dが水素であり、すべての基−[(CR10D 2eeO]−においてeeが2である実施形態では、式(IIH)のモノマーの残基は、疎水性表面との間で強い二次価電子相互作用を生むことができない。このようなモノマーの残基を本発明のポリマーに含んでもよいとはいえ、当該相互作用が、ポリマーを表面に結合するものである場合、通常は、強い二次価電子相互作用を生むことのできるモノマーの残基を含むことも必要である。eeが2よりも大きい基を有するモノマーを用いて、強い二次価電子相互作用を提供することができる。この点に関して、B5が式−[(CR10d 2eeO]ff−の基である場合、eeは、約50以下、約70以下、約90mol%以下の残基−[(CR10D 2eeO]ff−において、2であると好都合である。
式(I)のモノマーの例
一実施形態では、本発明は、式(IB)を有する式(I)のモノマーを提供する。
(式中、W、X、Z、A、R1、R2、n、mは、式(I)に関連して先に定義したとおりである)。
一実施形態では、本発明は、XがOである、特にAがOである、特にAがOであり、Zが式IIBの基である、特にAがOであり、nが0であり、Zが式IIBの基である、特にAがOであり、nが0であり、Zが式IIBの基であり、R4は各々メチルであり、bは2である、式(IB)のモノマーを提供する。
一実施形態では、本発明は、XがNR2である、特にAがOである、特にAがOであり、Zが式IIBの基である、特にAがOであり、nが0であり、Zが式IIBの基である、特にAがOであり、nが0であり、Zが式IIBの基であり、R4は各々メチルであり、bは2である、式(IB)のモノマーを提供する。
一実施形態では、本発明は、XがOかつAがNRMである、特にZが式IIBの基である、特にZが式IIBの基であり、nが0である、特にnが0であり、Zが式IIBの基であり、R4は各々メチルであり、bは2である、式(IB)のモノマーを提供する。
一実施形態では、本発明は、XがNR2である、特にAがOである、特にAがOであり、かつ、Zが式IIBの基である、特にAがOであり、nが0であり、Zが式IIBの基である、特にAがOであり、nが0であり、Zが式IIBの基であり、R4は各々メチルであり、bは2である、式(IB)のモノマーを提供する。
一実施形態では、本発明は、XがNR2であり、AがNRMである、特にZが式IIBの基である、特にnが0であり、Zが式IIBの基である、特にnが0であり、Zが式IIBの基であり、R4は各々メチルであり、bは2である、式(IB)のモノマーを提供する。
一実施形態では、本発明は、式(IC)のモノマーを提供する。
(式中、W、X、Y、R1、R2、R4、R4A、m、n、bは、先に定義したとおりである。)
一実施形態では、本発明は、XがOである、式(IC)のモノマーを提供する。
一実施形態では、本発明は、XがNR2である、式(IC)のモノマーを提供する。
一実施形態では、本発明は、XがNR2であり、nが0であり、特にmが2である、特にmが2であり、Y、R2、これらが結合するN原子が一緒になって、5から7員環の複素環、好ましくは5員環の複素環を形成する、式(IC)のモノマーを提供する。
一実施形態では、本発明は、XがNR2、nが0、mが2、Y、R2、これらが結合するN原子が一緒になって5員環の複素環を形成し、R4は各々メチルであり、bは2である、式(IC)のモノマーを提供する。
一実施形態では、本発明は、式(ID)のモノマーを提供する。
(式中、W、R4、R4A、bは、先に定義したとおりである。)
一実施形態では、本発明は、式(IE)のモノマーを提供する。
(式中、W、R4、R4A、bは、先に定義したとおりである。)

製造方法
本発明のモノマーは、既知の反応を用いる従来の技術によって、調製できる。
一般に、モノマーを合成できる経路には、3通りある。具体的には、次のとおりである。
(i)求核性の双性イオン誘導体と反応性のビニル誘導体との反応
(ii)求核性のビニル化合物と反応性の双性イオン誘導体との反応または
(iii)求核性のビニル化合物とホスホランとの反応後、トリアルキルアミンで開環。
化学基
<ハロ>
「ハロゲン」(または「ハロ」)という用語は、本明細書では、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素をいうのに用いられる。
<カルボニルおよびカルボキシ>
「カルボニル」という用語は、本明細書では、二重結合で酸素原子と結合した炭素ならびに、その互変異性形態をいうのに用いられる。カルボニル基は、−C(O)−と表記することもできる。カルボニルを含む部分の例として、アルデヒド−C(O)H、ケトン−C(O)−(C1〜C10アルキル)−、カルボン酸−CO2Hおよびアミド−C(O)NH2、−C(O)−NH(C1〜C10アルキル)、−C(O)−N(C1〜C10アルキル)2、−NH−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)−C(O)−(C1〜C10アルキル)、エステル−C(O)−O(C1〜C10アルキル)があげられるが、これらに限定されるものではない。
<チオカルボニルおよびチオカルボキシ>
「チオカルボニル」および「チオカルボキシ」という用語は、本明細書では、二重結合を介して硫黄原子と結合した炭素ならびに、その互変異性形態をいうのに用いられる。
<アルキル、アルケニル、シクロアルキルなど>
「アルキル」という用語は、本明細書では、一価で直鎖または分枝鎖の飽和非環式ヒドロカルビル基をいうのに用いられる。一実施形態では、アルキルは、C110アルキルであり、もうひとつの実施形態ではC16アルキルであり、もうひとつの実施形態ではC14アルキル(たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基またはi−、n−、sec−またはt−ブチル基)である。
「シクロアルキル」という用語は、本明細書では、一価の飽和環式ヒドロカルビル基をいうのに用いられる。一実施形態では、シクロアルキルは、C310シクロアルキルであり、もうひとつの実施形態ではC36シクロアルキル(たとえば、シクロペンチルおよびシクロヘキシル)である。
「アルケニル」という用語は、本明細書では、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有し、一実施形態では、炭素−炭素三重結合を含まない、一価で直鎖または分枝鎖の不飽和非環式ヒドロカルビル基をいうのに用いられる。一実施形態では、アルケニルは、C210アルケニルであり、もうひとつの実施形態ではC26アルケニルであり、もうひとつの実施形態ではC24アルケニルである。
「シクロアルケニル」という用語は、本明細書では、一価の不飽和環式ヒドロカルビル基をいうのに用いられる。一実施形態では、シクロアルケニルは、C310シクロアルキルであり、もうひとつの実施形態ではC36シクロアルキル(たとえば、シクロペンテニルおよびシクロヘキセニル)である。
「アルキニル」という用語は、本明細書では、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する、一価で直鎖または分枝鎖の不飽和非環式ヒドロカルビル基をいうのに用いられる。一実施形態では、アルキニルは、C210アルキニルであり、もうひとつの実施形態ではC26アルキニルであり、もうひとつの実施形態ではC24アルキニルである。
<ヘテロアルキル、ヘテロシクリルなど>
「ヘテロアルキル」という用語は、本明細書では、最大で3つの炭素原子、一実施形態では最大で2つの炭素原子、もうひとつの実施形態では1つの炭素原子が、各々独立に、O、S(O)qまたはNで置換された(ただし、アルキル炭素原子が少なくとも1つ残る)一価のアルキル基をいうのに用いられる。ヘテロアルキル基は、C結合したものであってもヘテロ結合したものであってもよい。すなわち、分子の残りと炭素原子を介して結合していてもよいし、O、S(O)qまたはN(式中、qは独立に、0、1または2である)を介して結合していてもよい。
「ヘテロシクリル」または「複素環」という用語は、本明細書では、最大で3つの炭素原子、一実施形態では最大で2つの炭素原子、もうひとつの実施形態では1つの炭素原子が、各々独立に、O、S(O)qまたはNで置換された(ただし、シクロアルキル炭素原子が少なくとも1つ残る)一価のシクロアルキル基または二価のシクロアルキレン基をいうのに用いられる。
ヘテロシクリル基の例として、オキシラニル、チアラニル、アジリジニル、オキセタニル、チアタニル、アゼチジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジニル、1,4−ジオキサニル、1,4−オキサチアニル、モルホリニル、1,4−ジチアニル、ピペラジニル、1,4−アザチアニル、オキセパニル、チエパニル、アゼパニル、1,4−ジオキセパニル、1,4−オキサチエパニル、1,4−オキサアゼパニル、1,4−ジチエパニル、1,4−チエアゼパニル、1,4−ジアゼパニルがあげられる。他の例としては、環状イミド、環状無水物、チアゾリジンジオンがあげられる。ヘテロシクリル基は、C結合したものであってもN結合したものであってもよい。すなわち、分子の残りと炭素原子を介して結合していてもよいし、窒素原子を介して結合していてもよい。
<アリールなど>
「アリール」という用語は、本明細書では、フェニルまたはナフチル(たとえば、1−ナフチルまたは2−ナフチル)などの一価の芳香族環式ヒドロカルビル基をいうのに用いられる。一般に、アリール基は、単環の縮合環芳香族基であっても多環の縮合環芳香族基であってもよい。好ましいアリール基は、C6〜C14アリールである。
アリール基の他の例は、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、as−インダセン、s−インダセン、インデン、ナフタレン、オバレン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントロン、ルビセンから誘導される一価のラジカルである。
<ヘテロアリールなど>
「ヘテロアリール」という用語は、本明細書では、O、S、N、NRN(ここで、RNは、好ましくはH、アルキル(たとえば、C16アルキル)またはシクロアルキル(たとえば、C36シクロアルキル)である)から独立に選択される1つまたは2つ以上のヘテロ原子をさらに含む一価の芳香族複素環、環式ヒドロカルビル基をいうのに用いられる。
一般に、ヘテロアリール基は、単環の縮合環芳香族複素環基であってもよいし、多環(たとえば、二環)の縮合環芳香族複素環基であってもよい。一実施形態では、ヘテロアリール基は、5〜13個の環員(好ましくは、5〜10員)と、O、S、N、NRNから独立に選択される1、2、3または4環のヘテロ原子とを含む。一実施形態では、ヘテロアリール基は、5員、6員、9員または10員で、たとえば、5員環の単環、6員環の単環、9員環の縮合環二環または10員環の縮合環二環である。
単環の芳香族複素環基は、5〜6個の環員を含む芳香族複素環基と、O、S、NまたはNRNから選択される1、2、3または4つのヘテロ原子とを含む。
一実施形態では、5員環の単環ヘテロアリール基は、−NRN−基、−O−原子または−S−原子である1個の環員を含み、任意に、=N−原子である1〜3個の環員(たとえば、1または2個の環員)を含む(5個の環員の残りは炭素原子である)。
5員環の単環ヘテロアリール基は、ピロリル、フラニル、チオフェニル、ピラゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、1,2,3トリアゾリル、1,2,4トリアゾリル、1,2,3オキサジアゾリル、1,2,4オキサジアゾリル、1,2,5オキサジアゾリル、1,3,4オキサジアゾリル、1,3,4チアジアゾリル、テトラゾリルである。
6員環の単環ヘテロアリール基の例は、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,3,5トリアジニル、1,2,4トリアジニル、1,2,3トリアジニルである。
一実施形態では、6員環の単環ヘテロアリール基は、=N−原子である1個または2個の環員を含む(この場合、6個の環員の残りは炭素原子である)。
二環の芳香族複素環基は、9〜13個の環員と、O、S、NまたはNRNから選択される1、2、3、4またはそれより多くのヘテロ原子とを含む縮合環芳香族複素環基を含む。
一実施形態では、9員環の二環ヘテロアリール基は、−NRN−基、−O−原子または−S−原子である1個の環員と、任意に、=N−原子である1〜3個の環員(たとえば、1個または2個の環員)とを含む(この場合、9個の環員の残りは炭素原子である)。
9員環の縮合環二環ヘテロアリール基の例は、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ピロロ[2,3−b]ピリジニル、ピロロ[2,3−c]ピリジニル、ピロロ[3,2−c]ピリジニル、ピロロ[3,2−b]ピリジニル、イミダゾ[4,5−b]ピリジニル、イミダゾ[4,5−c]ピリジニル、ピラゾロ[4,3−d]ピリジニル、ピラゾロ[4,3−c]ピリジニル、ピラゾロ[3,4−c]ピリジニル、ピラゾロ[3,4−b]ピリジニル、イソインドリル、インダゾリル、プリニル、インドリニニル、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、イミダゾ[1,5−a]ピリジニル、ピラゾロ[1,2−a]ピリジニル、ピロロ[1,2−b]ピリダジニルおよびイミダゾ[1,2−c]ピリミジニルである。
一実施形態では、10員環の二環ヘテロアリール基は、=N−原子である1〜3個の環員を含む(この場合、10個の環員の残りは炭素原子である)。
10員環の縮合環二環ヘテロアリール基の例は、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、1,6−ナフジリジニル、1,7−ナフジリジニル、1,8−ナフジリジニル、1,5−ナフジリジニル、2,6−ナフジリジニル、2,7−ナフジリジニル、ピリド[3,2−d]ピリミジニル、ピリド[4,3−d]ピリミジニル、ピリド[3,4−d]ピリミジニル、ピリド[2,3−d]ピリミジニル、ピリド[2,3−b]ピラジニル、ピリド[3,4−b]ピラジニル、ピリミド[5,4−d]ピリミジニル、ピラジノ[2,3−b]ピラジニル、ピリミド[4,5−d]ピリミジニルである。
いくつかの実施形態では、ヘテロシクリル基は、アリールまたはヘテロアリール基に縮合され、5〜13員を含む二環系を形成してもよい。このような基の例として、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロインドリル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニルまたは2,3−ジヒドロ−ピロリル−[2,3−b]ピリジンがあげられる。
<アルコキシ>
「アルコキシ」および「アルキルオキシ」という用語は、本明細書では、アルキルが上述したようなものである、−O−アルキル基をいうのに用いられる。例示的なアルコキシ基としては、メトキシ(−OCH3)およびエトキシ(−OC25)があげられる。
<アルキレン>
「アルキレン」という用語は、本明細書では、アルキルが先に定義したとおりである、二価の−アルキル−基をいうのに用いられる。例示的なアルキレン基としては、−CH2−、−(CH22−および−C(CH3)HCH2−があげられる。
<アルケニレン>
「アルケニレン」という用語は、本明細書では、アルケニルが先に定義したとおりである、二価の−アルケニル−基をいうのに用いられる。例示的なアルケニレン基としては、−CH=CH−、−CH=CHCH2−、−CH2CH=CH−があげられる。
<アルキニレン>
「アルキニレン」という用語は、本明細書では、−アルキニル−が、鎖中に2から12個、便利には2から6個の炭素原子と1つの炭素−炭素三重結合とを有する、直鎖または分枝鎖の鎖式炭化水素基を示す、二価の−アルキニル−基をいうのに用いられる。例示的なアルキニレン基としては、エチニルおよびプロパルギルがあげられる。
<アリーレン>
「アリーレン」という用語は、本明細書では、アリールが上述したようなものであり、2つ以上の他の基に結合した、二価の−アリール−基をいうのに用いられる。アリーレン基の例として、フェニレンがあげられる。
「フェニレン」とは、−フェニル−基を意味する。例示的な基は、1,3−フェニレンおよび1,4−フェニレンである。
<ヘテロアリーレン>
「ヘテロアリーレン」という用語は、本明細書では、ヘテロアリールが上述したようなものであり、2つ以上の他の基に結合した、−ヘテロアリール−基をいうのに用いられる。例示的な基としては、2,5−フリル、2,5−チエニル、2,4−チアゾリル、2,5−チアゾリル、2,6−ピリジルがあげられる。
本明細書で使用する場合、「求核性」という用語は、その従来の意味を持ち、電子対を供与することで別の種(求電子剤)との結合を形成する基を含む誘導体をいう。
「ビニル化合物」という用語は、末端−CH=CH2基を含む化合物をいう。
求核基の例としては、アルコール、過酸化物、アルコキシドアニオン、カルボキシレートアニオン、アンモニア、アミン、アジド、亜硝酸塩、チオール、(RSH)、チオレートアニオン(RS-)、チオールカルボン酸(RC(O)−S-)のアニオン、ジチオカーボネート(RO−C(S)−S-)およびジチオカルバメート(R2N−C(S)−S-)のアニオンがあげられる。
上述した一般的な反応(i)では、反応性のビニル誘導体が、求核性の双性イオンまたは双性イオン前駆物質誘導体と反応する求電子基を含むことになる。このため、反応性のビニル誘導体は、一般式C=C−W−X−E(式中、WおよびXは、式(I)で定義したとおりであり、Eは求電子基である)で説明できる。当業者であれば、反応性のビニル誘導体として使用できる場合がある好適な試薬に馴染んでいくであろう。好適な反応性のビニル誘導体の例として、ビニルクロロフォルメートおよびビニルイソシアネートがあげられる。
一実施形態では、反応性のビニル誘導体は、N−ビニルラクタム誘導体である。N−ビニルラクタムは、コンタクトレンズの調製に有用な特性を有する。たとえば、N−ビニルピロリドンは、コンタクトレンズの製造に一般に用いられる化合物である。このため、この化合物と反応する生体適合性コモノマーを提供すると好都合である。
この反応性のビニル誘導体を、一般に構造A1−(CR1m−Z(式中、A1は、N、O、Sから選択されるヘテロ原子を含む求核性基である)を有するものとして示すことのできる双性イオンまたは双性イオン前駆物質の求核性の誘導体と反応させる。たとえば、A1は、アルコール、過酸化物、アルコキシドアニオン、カルボキシレートアニオン、アンモニア、アミン、アジド、亜硝酸塩、チオール(RSH)、チオレートアニオン(RS-)、チオールカルボン酸(RC(O)−S-)のアニオン、ジチオカーボネート(RO−C(S)−S-)およびジチオカルバメート(R2N−C(S)−S-)のアニオンからなる群から選択されるものであってもよい。
双性イオンの好適な求核性の誘導体の例として、ヒドロキシエチルホスホリルコリンおよびアミノエチルホスホリルコリンがあげられるが、これらに限定されるものではない。
双性イオン前駆物質の好適な求核性の誘導体の例として、エチレングリコールまたはそのモノ保護誘導体およびアミノエタノールがあげられるが、これらに限定されるものではない。
上述したように、一実施形態では、双性イオン基Zは式(IIB)の基であり、特に、ホスホリルコリン基である。PC基をモノマーに加えるための合成経路は、従来技術において知られている。たとえば、Chabrierらが、ヒドロキシル置換開始材料とハロホスホランとを反応させた後、トリアルキルアミンで開環することを伴う二段反応を、FR−A−2270887およびBul. Soc. Chim de France (1974) 667-671にて説明している。HEMA−PCを生成するための類似の二段反応が、Nakayaらによって、JP−A−58−154591およびMakromol. Chem, Rapid Commun., 1982, 3, 457に説明された。EP−A−0730 599には、より最近の合成経路が説明されている。
式(IB)のモノマーは、上記の反応(i)(式中、使用される反応性のビニル誘導体は、以下の式(IIIA)を有する)を用いて合成されてもよい。
(式中、W、X、R1は、先に定義したとおりであり、Lは、カルボニル基と一緒になって、双性イオンまたは双性イオン前駆物質の求核性の誘導体と反応する求電子基を形成する脱離基である)。当業者であれば、好適な脱離基に馴染んでいくであろう。好適な脱離基の例として、ハロゲン、アミン部分、アルコキシ、アリルチオ、トリフレート、メシレート、トシレート、フルオロスルホネートがあげられる。
あるいは、式(IB)のXがNである場合、ビニルイソシアネートすなわち式(IIIB)の化合物あるいは、ビニルイソチオシアネートすなわち式(IIIC)の化合物を、反応性のビニル誘導体として利用できることがある。
上述した一般的な反応(ii)を参照すると、求核性のビニル化合物は、求核性基とビニル基の両方を含むものである。これは、一般構造C=C−W−X−Y−(CR1m−Nuc(式中、「Nuc」は求核性基である)を有する。好適な求核性基の例として、−OH、−NH2、NHR、SHならびに、カルボキシレートアニオンをはじめとする好適なアニオンがあげられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態では、求核性のビニル化合物は、N−ビニルラクタム誘導体であり、特に、N−ビニルピロリドンの誘導体である。N−ビニルラクタム誘導体は、N−ビニルラクタムと塩基とを反応させて、環の3位(カルボニル基の隣り)にアニオンを形成した後、このアニオンを、たとえば、ヨードエタノールと順次反応させて3−ヒドロキシエチル置換ラクタムを形成することで、生成してもよい。
一実施形態では、求核性のビニル誘導体は、以下の式を有するモノであってもよい。
この求核性のビニル化合物を、一般式Z−L(式中、Lは、反応スキーム(i)との関連で先に定義したような脱離基である)を有する反応性の双性イオン誘導体と反応させる。好適な反応性の双性イオン誘導体の例として、トシル−、メシル−、フルオロスルホネート−、トリフレート−、イミダゾールカルボニルオキシ−、ハロ、アンモニウムアルキル、エポキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルキルチオカルボニルおよびアルキルカルボニルオキシカルボニルアルキルからなる群から選択される脱離基を有するものがあげられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の一実施形態では、本発明のモノマーにおける双性イオン基は、式(IIB)の基であり、具体的には、ホスホリルコリンタイプの基である。
あるいは、式(IA)(式中、Zは式(IIB)の基である)のモノマーは、反応(iii)(この反応では、反応スキーム(ii)との関連で上述したものなどの求核性のビニル化合物をホスホランと反応させた後、トリアルキルアミンで開環させる)によって形成されるものであってもよい。
式(IC)(式中、bは2である)のモノマーは、以下の式(V)の求核性のビニル誘導体をホスホラン試薬(VIA)または(VIB)と反応させることで合成されてもよい。
(式中、R4Aは各々独立に、HおよびC14アルキルからなる群から選択され、L’は、脱離基である)。当業者であれば、好適な脱離基に馴染んでいくであろう。好適な脱離基の例として、ハロゲン、アミン部分、アルコキシ、アリルチオ、トリフレート、メシレート、トシレート、フルオロスルホネートがあげられる。
ホスホラン試薬(VIA)との反応は、式(VII)の中間化合物を形成する。
次いで、これをトリアルキルアミン試薬N(R43(ここで、R4は各々独立に、水素またはC14アルキルである)と反応させて、式(IC)の化合物を生成することができる。
式(VIA)および(VIB)のホスホラン試薬は市販されており、ホスホラン試薬を合成するための方法も、従来技術において知られている(N. Thung, M Chassignol, U. Asseline and P. Chalvier, Bull. Soc. Chim. Fr. 1981 (Part 2) 51)。当業者であれば、ホスホラン試薬に代えて好適な置換リン化合物を使用してもよいという事実にも、馴染んでいくであろう。一実施形態では、ホスホラン試薬(VI)において、R4Aは各々、水素である。一実施形態では、ホスホラン試薬は、エチレンクロロホスフェート(ECP)(CAS 6609−64−9、2−クロロ−1,3,2−ジオキサホスホラン−2−オキシド)である。副反応を回避するには、ホスホラン試薬中の不純物の存在を最小限にすると好都合であり、これは、31P NMRでモニター可能である。
トリアルキルアミン試薬は、市販されている。好適なトリアルキルアミン試薬の例として、トリメチルアミンおよびトリエチルアミンがあげられる。一実施形態では、トリアルキルアミン試薬は、トリメチルアミンである、すなわち、R4は各々メチルである。
一実施形態では、式(V)の化合物と、ホスホラン試薬(VIA)および(VIB)とが可溶であるが、酸スカベンジャーが不溶である第1の好適な溶媒中で、第1の工程を行ってもよい。第2の工程については、ニトリル、特に、C16カルボン酸のニトリル誘導体、好ましくはアセトニトリルを、都合よく使用してもよいし、ニトリル溶媒を第1の工程と第2の工程の両方に使用してもよい。
ポリマー
本発明のモノマーは、生体適合性コーティングに使用できる生体適合性ポリマーの製造ならびに、バルク材およびデバイスの形成に有用である。よって、別の態様では、本発明は、本明細書にて定義するような式(I)のモノマーと、1種類または2種類以上のコモノマーとを共重合することで誘導される、ポリマーを提供する。
本発明のポリマーは生体適合性であり、好都合なことに、気体透過性、特に酸素透過性が高く、なおかつ含水率も高い物品の製造に利用できる。
本発明のポリマーは、従来の重合反応、たとえば熱重合または光化学的重合によって製造されてもよい。熱重合の場合、40から100℃、一般に50から80℃の範囲の温度を用いればよい。光化学的重合の場合、γ線、UV光線、可視光線またはマイクロ波放射線などの光放射を用いてもよい。一般に、波長200から400nmのUV放射を使用する。
重合は通常、反応媒体中で行われる。この反応媒体は、たとえば、モノマー中に存在する基が使用する重合条件下で反応しない溶液または溶媒を用いた分散液であり、たとえば、水、アルコール(エタノール、メタノール、グリコールなど)、さらにはカルボン酸アミド(ジメチルホルムアミドなど)、双極性の非プロトン溶媒(ジメチルスルホキシドまたはメチルエチルケトンなど)、ケトン(たとえばアセトンまたはシクロヘキサノン)、炭化水素(たとえばトルエン)、エーテル(たとえばTHF)、ジメトキシエタンまたはジオキサン、ハロゲン化炭化水素(たとえばトリクロロエタン)ならびに、好適な溶媒の混合物(水とアルコールの混合物、たとえば水/エタノールまたは水/メタノール混合物など)である。これらの溶媒の任意の混合物を使用してもよい。あるいは、溶媒の非存在下またはコモノマーが溶媒として作用するような状況で、重合を行ってもよい。
この重合は、ベンゾイルペルオキシド、2,2’−アゾ−ビス(2−メチルプロピオニトリル)またはベンゾインメチルエーテルなどの1種類または2種類以上の重合開始剤の存在下にて行ってもよい。使用できる他の重合開始剤が、"Polymer Handbook", 3rd Edition, Ed. J. Brandrup and E.H. Immergut, Pub. Wiley-Interscience, New York 1989に開示されている。
通常、共重合は、たとえば窒素またはアルゴンの不活性雰囲気下にて、0.1から72時間、一実施形態では0.1から1時間、別の実施形態では8から48時間、たとえば16から24時間行われる。
ポリマーは通常、透析、非溶媒(たとえば、ジエチルエーテルまたはアセトン)中での沈殿または限外濾過によって、精製される。得られるポリマーは通常、真空下で、たとえば5から72時間乾燥され、分子量が10,000から1000万、一例では20,000から100万、別の例では50,000から750,000、また別の例では50,000から500,000である。
目的が生体適合性のコーティングを提供することで、架橋を生成できるコモノマーがモノマー混合物に存在する場合、重合時に架橋が起こらないように重合条件を設定する。たとえば、光放射は、光放射への曝露によって架橋を形成するコモノマーを含有するポリマーの調製には使用されないであろう。
本発明のモノマーが共重合されるコモノマー系の厳密な性質は、製造されるポリマーの意図した用途に左右されることになる。
好都合なことに、このポリマーが、コンタクトレンズなどの眼用デバイスの形成用である場合、本発明のモノマーを、シロキサン基含有モノマーまたはマクロマーを含むコモノマー系と反応させる。
シロキサン基含有成分は、一般構造−[Si(R)2O]−(ここで、Rは、水素またはC110アルキレン、C210アルケニレン、C210アルキニレン、C310シクロアルキレン、C310シクロアルケニレン、C110ヘテロアルキレン、C210ヘテロアルケニレン、C210ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン基である)を有する残基を含むものである。好ましくは、RはC110アルキレン基であり、好ましくはC1アルキレン基である。好ましくは、Siおよび結合したOが、シロキサン基含有モノマーまたはマクロマー中に、シロキサン基含有モノマーまたはマクロマーの総分子量の20重量パーセントを上回る量で存在し、一層好ましくは、30重量パーセントを上回る量で存在する。
有用なシロキサン基含有モノマーまたはマクロマーは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルラクタム、N−ビニルアミド、スチリル官能基などの重合可能な官能基を含んでもよい。共溶媒系に含まれてもよいシロキサン基含有成分の例は、米国特許第3,808,178号、同第4,120,570号、同第4,136,250号、同第4,153,641号、同第4,740,533号、同第5,034,461号、同第5,070,215およびEP 080539に記載されている。本明細書にて引用する特許については、その全体を本明細書に援用する。
本発明の一実施形態では、シロキサン基含有モノマーは、以下の式Xで表されるポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマーであってもよい。
(式中、Tは、Hまたは低級アルキルを示し、特定の実施形態では、Hまたはメチルを示し、Qは、OまたはNR14を示し、R14は各々独立に、水素またはメチルを示し、R11、R12、R13は各々独立に、低級アルキルラジカルまたはフェニルラジカルを示し、jは1または3から10である。)これらのポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマーの例として、メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、ペンタメチルジシロキサニルメチルメタクリレート、メチルジ(トリメチルシロキシ)メタクリルオキシメチルシランがあげられる。
共溶媒系の一部を形成できることがある別のクラスのシロキサン基含有成分に、以下の式XIで表されるポリ(オルガノシロキサン)プレポリマーがある。
(式中、A’は各々独立に、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミドなどの活性化不飽和基あるいは、アルキル基またはアリール基(ただし、少なくとも1つのA’が、ラジカル重合できる活性化不飽和基を含む)を示し、R16、R17、R18、R19は各々独立に、炭素原子間のエーテル結合を有してもよい1から18個の炭素原子を有する、一価の炭化水素ラジカルまたはハロゲン置換された一価の炭化水素ラジカルからなる群から選択され、R15は、1から22個の炭素原子を有する二価の炭化水素ラジカルを示し、n’は、0または1以上の整数であり、一実施形態では、n’は、5から400、もうひとつの実施形態では、n’は、10から300である。)ひとつの具体例が、α,ω−ビスメタクリルオキシプロピルポリ−ジメチルシロキサンである。もうひとつの例が、mPDMS(モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−ブチル末端ポリジメチルシロキサン)である。
もうひとつの有用なクラスのシロキサン基含有成分としては、以下の式XIIのシリコン含有ビニルカーボネートまたはビニルカルバメートモノマーを含む。
(式中、X’は、O、SまたはNHを示し、RSiは、シリコン含有有機ラジカルを示し、Tは、水素または低級アルキルを示し、特定の実施形態では、Hまたはメチルを示し、tは、1、2、3または4であり、q’は、0または1である。)好適なシリコン含有有機ラジカルRSiは、以下の式を含む。
(式中、R20は、以下の構造式を示し、
(式中、p’は、1から6であるか、1から6個の炭素原子を有するアルキルラジカルまたはフルオロアルキルラジカルであり、r’は、1から200であり、t’は、1、2、3または4であり、sは、0、1、2、3、4または5である。))
シロキサン基含有ビニルカーボネートまたはビニルカルバメートモノマーとしては、具体的には、1,3−ビス[4−(ビニルオキシカルボニルオキシ)ブト−1−イル]テトラメチル−iシロキサン3−(ビニルオキシカルボニルチオ)プロピル−[トリス(トリメチルシロキシシラン];3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバメート;3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート;トリメチルシリルエチルビニルカーボネート;トリメチルシリルメチルビニルカーボネートおよび
があげられる。
もうひとつのクラスのシリコン含有成分としては、以下の式の化合物があげられる。
(*D*L*D*G)aa*D*D*E1
E(*D*G*D*L)aa*D*G*D*E1または
E(*D*L*D*G)aa*D*L*D*E1(式XIII〜XV)
(式中、
Dは、6から30個の炭素原子を有する、アルキルジラジカル、アルキルシクロアルキルジラジカル、シクロアルキルジラジカル、アリールジラジカルまたはアルキルアリールジラジカルを示し、
Gは、1から40個の炭素原子を有する、アルキルジラジカル、シクロアルキルジラジカル、アルキルシクロアルキルジラジカル、アリールジラジカルまたはアルキルアリールジラジカルを示し、これは、主鎖に、エーテル、チオまたはアミン結合を含んでもよく、
*は、エタンまたはウレイド結合を示し、
aaは、少なくとも1の整数であり、
Lは、式XVIの二価のポリマーラジカルを示し、
式中、R21は独立に、炭素原子間のエーテル結合を含有してもよい、1から10個の炭素原子を有するアルキルまたはフロオロ置換アルキル基を示し、rは、少なくとも1であり、pは、部分重量400から10,000を与え、EおよびE1は各々独立に、以下の式XVIIで表される重合可能な不飽和有機ラジカルを示し、
式中、R22は、水素またはメチルであり、R23は、水素、1から6個の炭素原子を有するアルキルラジカルあるいは、−CO−V’−R25ラジカル(式中、V’は、−O−、−S−または−NH−であり、R24は、水素または1から6個の炭素原子を有するアルキルラジカルである)であり、R24は、1から12個の炭素原子を有する二価のラジカルであり、Y’は、−CO−または−OCO−を示し、W’は、−O−または−NH−を示し、Arは、6から10個の炭素原子を有する芳香族ラジカルを示し、a’は、0から6であり、b’は、0または1であり、c’は、0または1であり、d’は、0または1である。)
好ましいシリコン含有成分は、以下の式XVIIIで表される。
式中、R26は、イソホロンジイソシアネートのジラジカルなど、イソシアネート基の除去後のジイソシアネートのジラジカルである。もうひとつの好ましいシリコン含有マクロマーは、フルオロエーテル、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン、イソホロンジイソシアネート、イソシアナトエチルメタクリレートの反応によって形成される式XIXの化合物(x+yは、10から30の範囲の数である)である。
本発明の別の実施形態では、シロキサン基含有モノマーは、式(A)または(B)の材料であってもよい。
(T1−Y1k−G1(Y2−Z)l (A)
[(T1k−Y3(Z)uv−G1−R24 (B)
(式中、
1は、重合可能な基であり、
1およびY2は各々独立に、結合、C112アルキレン、C212アルケニレン、C212アルキニレン、C312シクロアルキレン、C312シクロアルケニレン、C212ヘテロアルケニレン、C212ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、−C(O)−C112アルキレン、−C(S)−C112アルキレン、−C(O)O−C112アルキレン、−C(O)S−C112アルキレン、−C(O)N(RM)−C112アルキレン、−C(S)−C112アルキレン、−C(S)O−C112アルキレン、−C(S)S−C112アルキレン、−C(S)N(RM)−C112アルキレン、−(CH2qq(OCH2CH2rr−、−(CH2CH2O)rr(CH2qq−(ここで、RMは、水素またはC14アルキルであり、qqは、1から10の整数であり、rrは、1から10の整数である)からなる群から選択されるリンカー基であり、ここで、C112アルキレン基の1個または2個以上の炭素原子は、任意に、SおよびOからなる群から選択されるヘテロ原子で置換されていてもよく、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロアルケニレン基、ヘテロアルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基は、1つまたは2つ以上のRNで任意に置換されていてもよく(ここで、RNは各々独立に、−H、−OH、−CN、−NO2、−CF3、−OCF3、−CO2H、−NH2、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、−O(C1〜C10アルキル)、−O(C2〜C10アルケニル)、−O(C2〜C10アルキニル)、ハロゲン、−C(O)H、−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−C(O)−O(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)、−N(C1〜C10アルキル)2、−C(O)−NH(C1〜C10アルキル)、−C(O)−N(C1〜C10アルキル)2、−NH−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−NH−(C1〜C10アルキル)−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−(C0〜C10)−SH、−S(O)−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−NH2、−S(O)2−NH−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−N(C1〜C10アルキル)2、=Oからなる群から選択される)、
3は、リンカー基であり、
24は、1つまたは2つ以上のRNで任意に置換されていてもよいC112アルキル基であり、
1は、シロキサン基含有成分であり、
Zは、双性イオン基であり、
kは、1から10の整数であり、
lは、1から3の整数であり、
uは、1から3の整数であり、
vは、1から3の整数である。)
本発明のこのような実施形態では、シロキサン基含有モノマーは、同一分子内に、重合可能な基、シロキサン官能基および双性イオン官能基を含む。このことは、どのような相分離でも分子レベルにできて裸眼には見えなくなるため、好都合である。さらに、分子レベルで官能基を組み合わせると、特定の含水率で想定されるであろうよりも酸素透過性が高い材料を与えることができるようになる。
式(A)および式(B)(および本明細書にて後述する化学式)は、特定の立体化学を示さずに表現してあるが、多数の異性体が可能であることは、当業者であれば理解できよう。この点に関して、本発明は、その範囲内に、表記の化学構造の考えられるあらゆる立体異性体を含む。
重合可能な基T1は、限定されることなく、ポリマーを形成すべく重合条件下で反応できるどのような基であってもよい。本発明の材料からポリマーを形成し、最終的にはコンタクトレンズを形成可能であることを意味するのは、本発明の材料中の重合可能な基の存在である。特定の実施形態では、重合可能な基は、少なくとも1つの炭素−炭素不飽和結合を含む。このような実施形態では、基は、付加重合反応できる。あるいはまたはそれに加えて、ポリマーを形成するよう反応できる基は、縮重合できる多官能化誘導体である。これには、たとえば、ジオール、ジアミン、二酸、これらの誘導体などの材料がある。
一実施形態では、シロキサン基含有モノマーは、式(A)の材料である。別の実施形態では、シロキサン基含有モノマーは、式(B)の材料である。
一実施形態では、重合可能な基T1は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、ビニル基からなる群から選択される基を含む。好適なビニル基の例として、アリル誘導体、N−ビニルラクタム誘導体(適宜置換されたN−ビニルピロリドン誘導体など)、N−およびO−ビニル誘導体があげられる。
一実施形態では、重合可能な基T1は、メタクリレート基またはアクリレート基である。好ましくは、重合可能な基T1は、メタクリレート基である。
上記の式(A)および式(B)に鑑みて、kは、重合可能な材料中に存在する重合可能な基T1の数を規定する整数である。kは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であってもよい。好ましくは、kは、1または2である。
1は、式(A)の重合可能な材料における重合可能な基T1とシロキサン基含有成分G1との結合を形成するリンカー基である。Y2は、式(A)の重合可能な材料におけるシロキサン基含有成分G1と双性イオン基Zとの結合を形成するリンカー基である。Y1およびY2は各々独立に、結合、C112アルキレン、C212アルケニレン、C212アルキニレン、C312シクロアルキレン、C312シクロアルケニレン、C212ヘテロアルケニレン、C212ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、−C(O)−C112アルキレン、−C(S)−C112アルキレン、−C(O)O−C112アルキレン、−C(O)S−C112アルキレン、−C(O)N(RM)−C112アルキレン、−C(S)−C112アルキレン、−C(S)O−C112アルキレン、−C(S)S−C112アルキレン、−C(S)N(RM)−C112アルキレン、−(CH2qq(OCH2CH2rr−、−(CH2CH2O)rr(CH2qq−(ここで、RMは、水素またはC14アルキルであり、qqは、1から10の整数であり、rrは、1から10の整数である)からなる群から選択され、ここで、C112アルキレン基の1個または2個以上の炭素原子は、任意に、SおよびOからなる群から選択されるヘテロ原子で置換されていてもよく、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロアルケニレン基、ヘテロアルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基は、1つまたは2つ以上のRNで任意に置換されていてもよい(ここで、RNは各々独立に、−H、−OH、−CN、−NO2、−CF3、−OCF3、−CO2H、−NH2、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、−O(C1〜C10アルキル)、−O(C2〜C10アルケニル)、−O(C2〜C10アルキニル)、ハロゲン、−C(O)H、−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−C(O)−O(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)、−N(C1〜C10アルキル)2、−C(O)−NH(C1〜C10アルキル)、−C(O)−N(C1〜C10アルキル)2、−NH−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−NH−(C1〜C10アルキル)−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−(C0〜C10)−SH、−S(O)−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−NH2、−S(O)2−NH−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−N(C1〜C10アルキル)2、=Oからなる群から選択される)。Y1およびY2は、同一であっても異なっていてもよい。一実施形態では、Y1およびY2は、同一である。別の実施形態では、Y1およびY2は、異なっている。
一実施形態では、Y1およびY2は各々独立に、C112アルキレン基である。別の実施形態では、Y1は、式−(CH2q(OCH2CH2r−の基であり、Y2は、式−(CH2CH2O)rr(CH2qq−の基(ここで、rrは、1から10の範囲、好ましくは4から6の範囲の整数であり、qqは、1から10の範囲、一実施形態では、2から4の範囲の整数、好ましくは3である)である。
3は、式(B)の重合可能な材料における重合可能な基T1とシロキサン基G1との結合を形成するリンカー基である。本発明のこの実施形態では、双性イオン基Zは、リンカー基Y3上の置換基である。Y3の性質は特に限定されず、好ましい実施形態では、Y3は、結合、C112アルキレン、C212アルケニレン、C212アルキニレン、C312シクロアルキレン、C312シクロアルケニレン、C112ヘテロアルキレン、C212ヘテロアルケニレン、C212ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)O−、−C(O)S−、−C(O)N(RM)−、−C(S)−、−C(S)O−、−C(S)S−、−C(S)N(RM)−(ここで、RMは、水素またはC14アルキルである)からなる群から選択される。アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロアルケニレン基、ヘテロアルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基は、1つまたは2つ以上のRNで任意に置換されていてもよい(ここで、RNは各々独立に、−H、−OH、−CN、−NO2、−CF3、−OCF3、−CO2H、−NH2、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、−O(C1〜C10アルキル)、−O(C2〜C10アルケニル)、−O(C2〜C10アルキニル)、ハロゲン、−C(O)H、−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−C(O)−O(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)、−N(C1〜C10アルキル)2、−C(O)−NH(C1〜C10アルキル)、−C(O)−N(C1〜C10アルキル)2、−NH−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−NH−(C1〜C10アルキル)−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−(C0〜C10)−SH、−S(O)−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−NH2、−S(O)2−NH−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−N(C1〜C10アルキル)2、=Oからなる群から選択される)。リンカー基Y3の置換基としての基Zの位置は、限定されない。この点に関して、基Zは、リンカー基Y3の骨格の一部を形成するどの炭素原子上の置換基であってもよい。
一実施形態では、Y3は、C112アルキレンまたはヘテロアルキレン基であり、特に、式−(CH2qq(OCH2CH2rr−または−(CH2CH2O)rr(CH2qq−(式中、qqは、1から10の整数でありおよびrrは、1から10の整数である)のヘテロアルキレン基である。好ましい実施形態では、Y3は、−(CH23−O−(CH23−である。本発明の好ましい実施形態では、Y3基上のZ基の置換位置は、基−Y3(Z)−が−(CH2CH(Z)CH2)−O−(CH23−であるような位置である。
1は、本実施形態のシロキサン基含有モノマーのシロキサン基含有成分である。上述したように、これは、良好な気体透過性を有する材料を与えるシロキサン基含有モノマーへのシロキサン官能基のインクルージョンである。シロキサン基含有成分の性質は特に限定されず、当業者であれば、好適な成分に馴染んでいくであろう。シロキサン基は、一般構造−[Si(R)2O]−(ここで、Rは各々独立に、水素であるか、あるいは、1つまたは2つ以上のRNで任意に置換された、C112アルキレン、C212アルケニレン、C212アルキニレン、C312シクロアルキレン、C312シクロアルケニレン、C112ヘテロアルキレン、C212ヘテロアルケニレン、C212ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン基(ここで、RNは各々独立に、−H、−OH、−CN、−NO2、−CF3、−OCF3、−CO2H、−NH2、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、−O(C1〜C10アルキル)、−O(C2〜C10アルケニル)、−O(C2〜C10アルキニル)、ハロゲン、−C(O)H、−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−C(O)−O(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)、−N(C1〜C10アルキル)2、−C(O)−NH(C1〜C10アルキル)、−C(O)−N(C1〜C10アルキル)2、−NH−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−NH−(C1〜C10アルキル)−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−(C0〜C10)−SH、−S(O)−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−NH2、−S(O)2−NH−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−N(C1〜C10アルキル)2、=Oからなる群から選択される)から選択される)を有する残基を含むものである。R基は、同一であっても異なっていてもよい。一実施形態では、すべてのR基が同一である。別の実施形態では、R基は、異なっている。好ましくは、RはC112アルキレン基であり、好ましくはC16アルキレン基である。好ましくは、Siおよび結合したOが、シロキサン基中に、シロキサン基含有成分の総分子量の20重量パーセントを上回る量で存在し、一層好ましくは、30重量パーセントを上回る量で存在する。
一実施形態では、シロキサン基含有成分は、以下の式(a)を有する。
(式中、Rは、先に定義したとおりであり、wは、1から500の整数である。)
一実施形態では、シロキサン基含有成分は、以下の式(b)を有する。
(式中、Rは、先に定義したとおりであり、w1およびw2は独立に、1から500の範囲の整数である。)
一実施形態では、シロキサン基含有成分は、以下の式(c)を有する。
(式中、Rは、先に定義したとおりであり、w3、w4、w5は各々独立に、1から500の範囲の整数である。)
一実施形態では、シロキサン基含有成分は、以下の式(d)を有する。
(式中、Rは、先に定義したとおりであり、w6、w7、w8、w9は各々独立に、1から500の範囲の整数である。)
Zは、先に定義したような双性イオン基である。シロキサン基含有モノマーが式(A)を有する場合、Zは、Y2に結合する。シロキサン基含有モノマーが式(B)を有する場合、Zは、リンカー基Y3上の置換基である。
好ましくは、Zは、式(IIB)の基であり、特に、式(IIB)の基である(式中、すべてのR4基がメチル基であり、bは2である)。この実施形態では、双性イオン基は、ホスホリルコリン(PC)基である。
lは、式(A)のシロキサン基含有モノマー中に存在する双性イオン基の数を規定する整数である。lは、1、2または3であってもよい。好ましくは、lは、1または2である。
uは、式(B)のシロキサン基含有モノマー中に存在する双性イオン基の数を規定する整数である。uは、1、2または3であってもよい。好ましくは、uは、1または2である。
vは、式(B)のシロキサン基含有モノマー中に存在する[(T1k−Y3(Z)u]基の数を規定する整数である。uは、1、2または3であってもよい。好ましくは、uは、1または2である。

式(A)の例示的なシロキサン基含有モノマー
一実施形態では、本発明のシロキサン基含有モノマーは、式(AA)を有する。
(式中、「OPC」は、式(IIB)の双性イオン基であり(式中、すべてのR4基はメチルであり、bは2である)、wは、1から500の整数であり、r’およびr’’は、同一であっても異なっていてもよく、各々独立に、0から10の整数、好ましくは4から6の整数である。
したがって、一実施形態では、シロキサン基含有モノマーは、T1がメタクリレート基であり、Y1が(CH2CH2O)r’(CH23であり、G1が式(c)の基であり、wが1から500の整数であり、Y2が(CH23(CH2CH2O)r''であり、Zが式(IIB)の基(式中、すべてのR4基はメチルであり、bは2である)であり、kが1であり、lが1であり、r’およびr’’が、同一であっても異なっていてもよく、各々独立に、0から10の整数、好ましくは4から6の整数である、式(A)の材料である。
本発明の一実施形態では、重合可能な材料は、以下の式(AB)の材料である。
(式中、「OPC」は、式(IIB)の双性イオン基(式中、すべてのR4基はメチルであり、bは2である)であり、wは、0から15である。)
したがって、一実施形態では、シロキサン基含有モノマーは、T1がメタクリレート基であり、Y1が(CH23であり、wが0から15であり、好ましくは2から4であり、Y2が(CH23であり、Zが式(IIB)の基(式中、すべてのR4基はメチルであり、bは2である)であり、kが1であり、lが2である、式(A)の材料である。
式(B)の例示的なシロキサン基含有モノマー
本発明の一実施形態では、本発明の重合可能なモノマーは、以下の式(BB)を有する。
(式中、「OPC」は、式(IIB)の双性イオン基(式中、すべてのR4基はメチルであり、bは2である)である。)
したがって、一実施形態では、シロキサン基含有モノマーは、T1がメタクリレート基であり、Y3が−(CH23−O−(CH23−であり、Zが式(IIB)の基(式中、すべてのR4基はメチルであり、bは2である)であり、Wが式(c)の基であり、R24がメチルであり、uが1であり、vが1である、式(B)の材料である。
本発明の別の実施形態では、シロキサン基含有モノマーは、以下の式(BC)を有する。
(式中、「OPC」は、式(IIB)の双性イオン基(式中、すべてのR4基はメチルであり、bは2である)である。)
したがって、一実施形態では、シロキサン基含有モノマーは、T1がメタクリレート基であり、Y3が−(CH23−O−(CH23−であり、Zが式(IIB)の基(式中、すべてのR4基はメチルであり、bは2である)であり、G1が式(a)の基であり、R24が(CH24CH3であり、uが1であり、vが1である、式(B)の材料である。
一実施形態では、シロキサン基含有モノマーは、以下の式(BD)を有する。
(式中、「OPC」は、式(IIB)の双性イオン基(式中、すべてのR4基はメチルであり、bは2である)であり、wは、1から500の整数である。)
したがって、一実施形態では、シロキサン基含有モノマーは、T1がアクリレート基であり、Y3が−(CH2)−(CH(OZ))−CH2−O−(CH23−であり、Zが式(IIB)の基(式中、すべてのR4基はメチルであり、bは2である)であり、G1が式(a)の基であり、R24がメチルであり、uが1であり、vが2である、式(B)の材料である。
本発明で使用するのに適した他のシリコン含有成分としては、ポリシロキサン含有マクロマー、ポリアルキレンエーテル、ジイソシアネート、ポリフッ素化炭化水素、ポリフッ素化エーテル、多糖類など、WO96/31792に記載されているものがあげられる。米国特許第5,321,108号、同第5,387,662号、同第5,539,016号にはいずれも、末端のジフルオロ置換炭素原子に水素原子が結合した極性のフッ素化グラフトまたは側基を有するポリシロキサンが記載されている。このようなポリシロキサンを、共溶媒系においてシロキサン基含有モノマーとして使用してもよい。
あるいは、シロキサン基含有モノマーは、ヒドロキシル官能化シロキサン基含有モノマーであってもよい。例として、2−メチル−2−ヒドロキシ−3−[3−[1,3,3,3−テトラメチル−1−[トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロポキシ]プロピルエステル((3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシランという名称にすることもできる)、3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、ビス−3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシプロピルポリジメチルシロキサン、3−メタクリルオキシ−2−(2−ヒドロキシエトキシ)プロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、N−2−メタクリルオキシエチル−O−(メチル−ビス−トリメチルシロキシ−3−プロピル)シリルカルバメート、N,N,N’,N’−テトラキス(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−α,ω]−ビス−3−アミノプロピル−ポリジメチルシロキサンならびに、これらの混合物があげられる。
一実施形態では、シロキサン基含有モノマーは、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート、メタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン;モノメタクリルオキシプロピル官能化ポリジメチルシロキサン;モノメタクリルオキシプロピル末端ポリトリフルオロプロピルメチル−シロキサン−対称、2−ヒドロキシ−3−[3−[1,3,3,3−テトラメチル−1−[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロポキシ]プロピルメタクリレート、トリストリメチルシロキシシリルプロピルビニルカルバメートからなる群から選択される。
一実施形態では、本発明のポリマーは、式(I)のモノマー約1から100mol%と、シロキサンモノマーおよび他の希釈剤モノマー約1から約95mol%とを、合計で100%として反応させることで得られる。希釈剤モノマーは、アクリレート、メタクリレート(たとえば、メタクリル酸、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート)、アクリルアミド(たとえば、ジメチルアクリルアミド)、N−ビニルラクタム(たとえば、N−ビニルピロリドン)、N−およびO−ビニル誘導体(たとえば、ヒドロキシエチルビニルカルバメート、ヒドロキシエチルビニルカーボネート)があげられるが、これらに限定されるものではない、ビニル基を含むモノマーであってもよい。
本発明のポリマーでは、式(I)のモノマーは、好ましくは、ポリマー全体に対して約1から100%を占め、あるいは約1から約80%、あるいは約2から約70%、あるいは約3から約60%、あるいは約4から約50%、あるいは約5から約40重量%を占める。
一実施形態では、本発明のモノマーが反応するコモノマー系は、ビニル基を含むコモノマーを含む。一実施形態では、ビニル基を含むコモノマーは、ビニル基がヘテロ原子と直接結合したものである。
好都合なことに、共重合反応を効果的にするには、2種類のコモノマーの反応速度をほぼ同じにしておく必要がある。よって、本発明のモノマーは末端ビニル基を含むため、双性イオン官能性を含む完全に新たなクラスのポリマーを生成することが可能である。なぜなら、これは眼科の用途に有用な反応性の異なるビニル系を、アクリルモノマーを代替するまたはアクリルモノマーと併用するコモノマーとして使用できるようにするからである。これらのポリマー生成物は、溶解性の問題と、メタクリレートとビニル系との反応速度の差がゆえに、MPCなどの現時点で用いられているメタクリレートモノマーを用いて製造することのできないものである。
末端ビニル基が存在する結果、シロキサンモノマーを含むコモノマー系との反応によって本発明のポリマーが得られた場合、双性イオン基およびシロキサン官能基すなわち本発明のポリマーは、眼科用レンズ、特にコンタクトレンズの製造に特に有用である。
このため、別の態様では、本発明は、物品、特に本明細書にて定義するようなポリマーを含む眼用デバイスを提供する。好ましくは、眼用デバイスは、眼科用レンズであり、好ましくはコンタクトレンズである。
眼科用レンズとは、使用時に、眼または涙の流体と密着することになるレンズである。「眼科用レンズ」という用語は、視力矯正用のコンタクトレンズ、眼の色を変えるためのコンタクトレンズ、点眼薬デリバリーデバイス、眼組織保護デバイスを含むことを意図している。
本発明の眼科用レンズは、本発明のモノマーと、これが反応することになるコモノマー系との混合物をレンズモールドキャビティに適量で適用し、重合を開始することによって製造されてもよい。この混合物に、市販の光開始剤をはじめとする開始剤を加えて、重合の開始を助けてもよい。上述したように、重合は、混合物の厳密な性質に応じて、多数の周知の技術によって開始できる。好適な技術の例として、マイクロ波、電子線または紫外線などの放射線の印加があげられる。あるいは、加熱によって重合を開始してもよい。
血流から酸素を受け取る他の組織とは違って、角膜は主に、環境に曝露された角膜表面から酸素を得る。したがって、角膜の健康を維持するために、長時間にわたる眼での装用が想定される眼科用レンズは、十分な酸素を透過できるものでなければならない。角膜への酸素の供給が不適切になると、角膜が膨潤するため、そのことを検出できる。好ましくは、本発明の眼科用レンズの酸素透過性は、角膜の臨床的に有意な膨潤が起こるのを防げるだけの十分なものである。一実施形態では、観察される角膜膨潤の度合いが、少なくとも8時間にわたって約10%以下、少なくとも8時間にわたって約8%以下、少なくとも8時間にわたって約6%以下、少なくとも8時間にわたって約4%以下、少なくとも8時間にわたって約2%以下、少なくとも8時間にわたって約1%以下である。
この点に関して、好ましくは、本発明の眼科用レンズは、長期の装用に適している。好都合なことに、本発明の眼科用レンズは、利用者が、実質的な角膜損傷や不快感を伴うことなく、最大で4日間以上装用でき、一実施形態では、7日間以上、一実施形態では、14日間以上、一実施形態では、30日間以上装用してもよい。
このため、一実施形態では、本発明の物品は、酸素透過性が約20バリア以上、あるいは約30バリア以上、あるいは約40バリア以上、あるいは約50バリア以上、好ましくは約60バリア以上である。
一実施形態では、本発明のポリマーは、平衡含水率が10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上である。一実施形態では、ポリマーの含水率が、約20から約60%の範囲、好ましくは約30から約50%の範囲である。
あるいはまたはそれに加えて、本発明のポリマーは、引張係数(弾性係数E)が約3MPa未満であってもよい。一実施形態では、引張係数は、0.2から約2.5MPaの範囲であり、一例では、約0.3から1.5MPa、好ましくは約0.4から約1MPaの範囲である。
あるいはまたはそれに加えて、本発明の物品は、光透過が約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約99%以上であってもよい。好ましい実施形態では、本発明の物品は、透き通っているおよび/または透明であり、これは物品が眼用デバイスである場合に特に好都合である。
あるいはまたはそれに加えて、本発明の物品は、標準ASTM D 1003に準じて測定すると、散乱する可視光線の%(ヘイズ)が<100%であり、一実施形態では<80%、一実施形態では<60%、一実施形態では<50%である。
一実施形態では、本発明のポリマーは、表面を生体適合性にするのに用いられてもよい。よって、別の態様では、本発明は、表面に本発明のポリマーをコーティングすることを含む、表面を生体適合性にするためのプロセスを提供する。本発明はさらに、本明細書にて定義するようなポリマーがコーティングされた表面を有する物品を提供する。本発明のポリマーは、ポリマー中に存在し、これを表面に結合できる基の性質に応じて、多くの異なる表面のコーティングに使用されてもよい。
通常、ポリマーによる表面のコーティングは、一般にアルコール溶媒、水性溶媒、有機溶媒またはハロゲン化溶媒であるか、これらの混合物である溶媒にポリマーを加えた溶液または分散液を表面にコーティングすることで行われる。好適な溶媒の例として、メタノール、エタノール、ジクロロメタン、フレオンがあげられる。コーティングは、室温で行ってもよいし、それより高めの温度で行ってもよい。通常、コーティングは、5から60℃の範囲の温度で行われる。
表面には、ディップコーティング、スプレーコーティング、ウェブコーティングまたはスピンコーティングなどの既知の技術を用いて、本発明のポリマーをコーティングすればよい。
一実施形態では、ポリマーは、マイクロエマルションなどの微粒分散液の形として、表面にコーティングされる。
コーティング後、本発明のポリマーが架橋可能な基を含む場合、これを架橋反応させてもよい。架橋は、たとえば「Methods in Enzymology, volume 135, Immobilised Enzymes and Cells, part B」, Ed. K. Mosbach, Academic Press Inc., New York, 1987に記載されている既知の方法によって、たとえば熱的に、光放射を使用する、アンモニアなどの反応性の気体を使用する、pHの変更による、二価の添加剤を使用する、あるいは活性化化学を使用するなど、既知の方法で行えばよい。架橋を熱的にまたは気体処理によって行う場合、この処理は、乾燥コーティングでなされてもよい。あるいは、pHを変更する必要がある場合や、添加剤を含む必要がある場合であれば、コーティングを除去しない溶液状のコーティング済み材料で処理を行ってもよい。いくつかの実施形態では、架橋は、水和したコーティングを用いて行ってもよい。これだと、架橋反応が容易になる。
本発明のポリマーを用いて、人体または動物の体用のインプラントまたは人工装具を構成する材料として使用可能な材料の表面をコーティングしてもよい。特に、これらのインプラントまたは人工装具が、血液と物理的に直接接する場合で、生体適合性および血液適合性が求められる場合には、なおさらである。また、これらのポリマーは、たとえば心肺装置や人工腎臓など体外ベースで血液など体内の流体と接触することになる膜や他のデバイスを構成する際にも使用できる。
また、本発明のポリマーを使用して、たとえば分離膜や、プロセス機器および配管などの処理用途に用いられる材料をコーティングしてもよい。特に、本発明のポリマーを使用して、タンパク質、多糖、脂肪、全細胞などの複雑な生物溶液と膜とが直接接触するバイオリアクターおよび発酵系における生物濾過膜の表面特性を変更してもよい。本発明のポリマーは、プロセス溶液の成分による膜の汚れを減らすのに役立つこともある。
本発明のポリマーを用いて、最終デバイスの構成用コートに使用する材料の表面をコーティングする場合、最終デバイスを製造する前に、コーティング後の表面が損なわれず、処理の有効性が落ちないよう、予防的な工程を経ることが必要な場合がある。
本発明のポリマーは、最終インプラント、人工装具、膜、カテーテル、コンタクトレンズ、眼内レンズなどのデバイスなどに使用して、その物品に生体適合性を持たせることもできる。
このため、別の態様では、本発明は、本発明のポリマーのコーティングが施された表面を含む物品を提供する。
一実施形態では、この物品は眼用デバイスであり、特に眼科用レンズ、特にコンタクトレンズである。
本発明のいくつかの例示的な実施形態について、以下に列挙した項で説明する。
1.以下の式(I)のモノマー。
(式中、
Wは、(CR1 2nであり、
Xは、O、SまたはNR2であり、
Yは、リンカー基であり、
Zは、双性イオン基であり、
1は各々独立に、H、ハロゲンまたはC14アルキルから選択され、
2は、HまたはC14アルキルであり、
nは、0から6の整数であり、
mは、0から6の整数である。)
2.Yは、C110アルキレン、C210アルケニレン、C210アルキニレン、C310シクロアルキレン、C310シクロアルケニレン、C110ヘテロアルキレン、C210ヘテロアルケニレン、C210ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)O−、−C(O)S−、−C(O)N(RM)−、−C(S)−、−C(S)O−、−C(S)S−、−C(S)N(RM)−(ここで、RMは水素またはC14アルキルであり、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロアルケニレン基、ヘテロアルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基は、1つまたは2つ以上のRNで任意に置換されていてもよい(ここで、RNは各々独立に、−H、−OH、−CN、−NO2、−CF3、−OCF3、−CO2H、−NH2、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、−O(C1〜C10アルキル)、−O(C2〜C10アルケニル)、−O(C2〜C10アルキニル)、ハロゲン、−C(O)H、−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−C(O)−O(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)、−N(C1〜C10アルキル)2、−C(O)−NH(C1〜C10アルキル)、−C(O)−N(C1〜C10アルキル)2、−NH−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−NH−(C1〜C10アルキル)−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−(C0〜C10)−SH、−S(O)−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−NH2、−S(O)2−NH−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−N(C1〜C10アルキル)2、=Oからなる群から選択される))からなる群から選択される、第1項に記載のモノマー。
3.XはOである、第1項に記載のモノマー。
4.XはNR2である、第1項に記載のモノマー
5.これらが結合するR2、Y、N原子は一緒になって、5員環から7員環の複素環を形成し、ここで、複素環は、1つまたは2つ以上のRNで任意に置換されていてもよく、RNは各々独立に、−H、−OH、−CN、−NO2、−CF3、−OCF3、−CO2H、−NH2、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、−O(C1〜C10アルキル)、−O(C2〜C10アルケニル)、−O(C2〜C10アルキニル)、ハロゲン、−C(O)H、−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−C(O)−O(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)、−N(C1〜C10アルキル)2、−C(O)−NH(C1〜C10アルキル)、−C(O)−N(C1〜C10アルキル)2、−NH−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−NH−(C1〜C10アルキル)−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−(C0〜C10)−SH、−S(O)−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−NH2、−S(O)2−NH−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−N(C1〜C10アルキル)2、=Oからなる群から選択される、第4項に記載のモノマー。
6.これらが結合するR2、Y、N原子は一緒になって、5員環の複素環を形成する、第5項に記載のモノマー。
7.5員環の複素環は、=Oで置換される、第6項に記載のモノマー。
8.以下の式(IA)を有する、第7項に記載のモノマー。
(式中、W、R1、R2およびZは、式(I)で定義したとおりである。)
9.nは0である、第8項に記載のモノマー。
10.Yは、−C(O)O−であり、mは、1から4である、第1項から第4項のいずれか1項に記載のモノマー。
11.mは2である、第10項に記載のモノマー。
12.mは0である、第1項から第8項のいずれか1項に記載のモノマー。
13.Zは、(IIA)、(IIB)、(IIC)、(IID)、(IIE)からなる群から選択される双性イオン基であり、ここで、基(IIA)は、以下の式を有し、
(式中、R3およびR3Aは各々独立に、水素およびC14アルキルから選択され、aは、2から4の整数である)
基(IIB)は、以下の式を有し、
(式中、R4およびR4Aは各々独立に、水素およびC14アルキルから選択され、bは、1から4の整数である)
基(IIC)は、以下の式を有し、
(式中、R5およびR5Cは各々独立に、水素およびC14アルキルから選択され、R5Aは、水素または基−C(O)B15Bであり(ここで、R5Bは、水素またはメチルであり、B1は、結合、C110アルキレン、C210アルケニレン、C210アルキニレン、C310シクロアルキレン、C310シクロアルケニレン、C110ヘテロアルキレン、C210ヘテロアルケニレン、C210ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、−C(O)RM−、−C(O)ORM−(ここで、RMは、C110アルキレン、C210アルケニレン、C210アルキニレンからなる群から選択され、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロアルケニレン基、ヘテロアルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基は、1つまたは2つ以上のRNで任意に置換されていてもよい(ここで、RNは各々独立に、−H、−OH、−CN、−NO2、−CF3、−OCF3、−CO2H、−NH2、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、−O(C1〜C10アルキル)、−O(C2〜C10アルケニル)、−O(C2〜C10アルキニル)、ハロゲン、−C(O)H、−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−C(O)−O(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)、−N(C1〜C10アルキル)2、−C(O)−NH(C1〜C10アルキル)、−C(O)−N(C1〜C10アルキル)2、−NH−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−NH−(C1〜C10アルキル)−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−(C0〜C10)−SH、−S(O)−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−NH2、−S(O)2−NH−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−N(C1〜C10アルキル)2、=Oからなる群から選択される))からなる群から選択される)、cは、1から4の整数であり、ここで、ZがO原子またはN原子に直接結合している場合、zは0であり、それ以外の場合、zは1である)
基(IID)は、以下の式を有し、
(式中、R6およびR6Cは各々独立に、水素およびC14アルキルから選択され;R6Aは、水素または基−C(O)B26Bであり(ここで、R6Bは、水素またはメチルであり、B2は、結合、C110アルキレン、C210アルケニレン、C210アルキニレン、C310シクロアルキレン、C310シクロアルケニレン、C110ヘテロアルキレン、C210ヘテロアルケニレン、C210ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、−C(O)RM−、−C(O)ORM−(ここで、RMは、C110アルキレン、C210アルケニレン、C210アルキニレンからなる群から選択され、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロアルケニレン基、ヘテロアルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基は、1つまたは2つ以上のRNで任意に置換されていてもよい(ここで、RNは各々独立に、−H、−OH、−CN、−NO2、−CF3、−OCF3、−CO2H、−NH2、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、−O(C1〜C10アルキル)、−O(C2〜C10アルケニル)、−O(C2〜C10アルキニル)、ハロゲン、−C(O)H、−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−C(O)−O(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)、−N(C1〜C10アルキル)2、−C(O)−NH(C1〜C10アルキル)、−C(O)−N(C1〜C10アルキル)2、−NH−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−NH−(C1〜C10アルキル)−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−(C0〜C10)−SH、−S(O)−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−NH2、−S(O)2−NH−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−N(C1〜C10アルキル)2、=Oからなる群から選択される))からなる群から選択される)、dは、1から4の整数であり、ここで、ZがO原子またはN原子に直接結合している場合、zは0であり、それ以外の場合、zは1である)
基(IIE)は、以下の式を有する、
(式中、R7およびR7Cは各々独立に、水素およびC14アルキルから選択され;R7Aは、水素または基−C(O)B27Bであり(ここで、R7Bは、水素またはメチルであり、B2は、結合、C110アルキレン、C210アルケニレン、C210アルキニレン、C310シクロアルキレン、C310シクロアルケニレン、C110ヘテロアルキレン、C210ヘテロアルケニレン、C210ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、−C(O)RM−、−C(O)ORM−(ここで、RMは、C110アルキレン、C210アルケニレン、C210アルキニレンからなる群から選択され、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロアルケニレン基、ヘテロアルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基は、1つまたは2つ以上のRNで任意に置換されていてもよい(ここで、RNは各々独立に、−H、−OH、−CN、−NO2、−CF3、−OCF3、−CO2H、−NH2、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、−O(C1〜C10アルキル)、−O(C2〜C10アルケニル)、−O(C2〜C10アルキニル)、ハロゲン、−C(O)H、−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−C(O)−O(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)、−N(C1〜C10アルキル)2、−C(O)−NH(C1〜C10アルキル)、−C(O)−N(C1〜C10アルキル)2、−NH−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−NH−(C1〜C10アルキル)−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−(C0〜C10)−SH、−S(O)−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−NH2、−S(O)2−NH−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−N(C1〜C10アルキル)2、=Oからなる群から選択される))からなる群から選択される)、eは、1から4の整数であり、ここで、ZがO原子またはN原子に直接結合している場合、zは0であり、それ以外の場合、zは1である)前述の項のいずれかに記載のモノマー。
14.Zは、基(IIB)である、前述の項のいずれかに記載のモノマー。
15.R4はメチルであり、bは2である、第14項に記載のモノマー。
16.nは、0または1である、前述の項のいずれかに記載のモノマー。
17.nは0である、第16項に記載のモノマー。
18.nは0であり、XはNR2であり、Y、R2およびこれらが結合するN原子は一緒になって、=Oで置換される5員環の複素環を形成し、xは2であり、Zは、式(IIB)の基(式中、R4は各々メチルであり、bは2である)である、第1項に記載のモノマー。
19.式(IB)の第1項に記載のモノマー。
(式中、W、X、Z、R1、R2、n、mは、第1項の式(I)との関連で定義したとおりであり、Vは、SまたはOであり、Aは、NRM、O、Sから選択される(ここで、RMは、水素またはC14アルキルである)。)
20.式(IC)の第1項に記載のモノマー。
(式中、W、X、Y、R1、R2、m、nは、第1項で定義したとおりであり、R4およびR4Aは各々独立に、水素およびC14アルキルから選択され、bは、1から4の整数である。)
21.式(ID)の項に記載のモノマー。
(式中、Wは、式(I)との関連で定義したとおりであり、R4およびR4Aは各々独立に、水素およびC14アルキルから選択され、bは、1から4の整数である。)
22.式(IE)を有する、第1項に記載のモノマー。
(式中、Wは、式(I)との関連で定義したとおりであり、R4およびR4Aは各々独立に、水素およびC14アルキルから選択され、bは、1から4の整数である。)
23.前述の項のいずれかに定義されたようなモノマーとコモノマー系とを反応させることによって得られる、ポリマー。
24.コモノマー系は、シロキサン基含有モノマーまたはマクロマーを含む、第23項に記載のポリマー。
25.シロキサン基含有モノマーは、式(A)または(B)の材料である、第24項に記載のポリマー。
(T1−Y1k−G1(Y2−Z)l (A)
[(T1k−Y3(Z)uv−G1−R24 (B)
(式中、
1は、重合可能な基であり、
1およびY2は各々独立に、結合、C112アルキレン、C212アルケニレン、C212アルキニレン、C312シクロアルキレン、C312シクロアルケニレン、C212ヘテロアルケニレン、C212ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、−C(O)−C112アルキレン、−C(S)−C112アルキレン、−C(O)O−C112アルキレン、−C(O)S−C112アルキレン、−C(O)N(RM)−C112アルキレン、−C(S)−C112アルキレン、−C(S)O−C112アルキレン、−C(S)S−C112アルキレン、−C(S)N(RM)−C112アルキレン、−(CH2qq(OCH2CH2rr−、−(CH2CH2O)rr(CH2qq−(ここで、RMは、水素またはC14アルキルであり、qqは、1から10の整数であり、rrは、1から10の整数である)からなる群から選択されるリンカー基であり、ここで、C112アルキレン基の1個または2個以上の炭素原子は、任意に、SおよびOからなる群から選択されるヘテロ原子で置換されていてもよく、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロアルケニレン基、ヘテロアルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基は、1つまたは2つ以上のRNで任意に置換されていてもよく(ここで、RNは各々独立に、−H、−OH、−CN、−NO2、−CF3、−OCF3、−CO2H、−NH2、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、−O(C1〜C10アルキル)、−O(C2〜C10アルケニル)、−O(C2〜C10アルキニル)、ハロゲン、−C(O)H、−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−C(O)−O(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)、−N(C1〜C10アルキル)2、−C(O)−NH(C1〜C10アルキル)、−C(O)−N(C1〜C10アルキル)2、−NH−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH(C1〜C10アルキル)−C(O)−(C1〜C10アルキル)、−NH−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−NH−(C1〜C10アルキル)−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−(C0〜C10)−SH、−S(O)−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−NH2、−S(O)2−NH−(C1〜C10アルキル)、−S(O)2−N(C1〜C10アルキル)2、=Oからなる群から選択される)、
3は、リンカー基であり、
24は、1つまたは2つ以上のRNで任意に置換されていてもよいC112アルキル基であり、
1は、シロキサン基含有成分であり、
Zは、双性イオン基であり、
kは、1から10の整数であり、
lは、1から3の整数であり、
uは、1から3の整数であり、
vは、1から3の整数である。)
26.コモノマー系は、ビニル基を含むモノマーを含む、第24項または第25項に記載のポリマー。
27.酸素透過性が約30バリア以上である、第24項から第26項のいずれか1項に記載のポリマー。
28.平衡含水率が30から50%の範囲である、第24項から第27項のいずれか1項に記載のポリマー。
29.モジュラスが3MPa未満である、第24項から第28項のいずれか1項に記載のポリマー。
30.第24項から第29項のいずれか1項に規定されるようなポリマーを含む、物品。
31.眼科用レンズである、第30項に記載の物品。
32.コンタクトレンズである、第31項に記載の物品。
33.第24項から第29項のいずれか1項に規定されるようなポリマーがコーティングされた表面を有する、物品。
34.コンタクトレンズである、第33項に記載の物品。
35.第24項から第29項のいずれか1項に規定されるようなポリマーを、物品の表面に適用することを含む、表面を有する物品にコーティングを施す方法。
測定方法
<引張係数>
TA-XT2 Texture Analyserを使用してレンズ材料のヤング係数を求めた後、応力−ひずみ曲線の最初の直線部分に対する接線を描き、引張応力を対応のひずみで割って、値を得た。測定については、調製物から作製して、10mm×50mmの試料に切った厚さ500μmのフィルムで行った。
<平衡含水率>
本発明に従って作製したヒドロゲル試作レンズの平衡含水率(EWC)を、重量による手段で求めた。まず、室温にて一晩、水中においた平衡後のレンズの湿重量を測定した。次に、これらのレンズを、一定の重量まで70℃のオーブンで乾燥させ、これを乾燥重量とした。その後、以下のようにしてレンズのEWCを計算した。
EWC(wt%)=[(湿重量−乾燥重量)/湿重量]×100
<酸素透過性>
本発明の方法に従って作製した試作レンズの酸素透過性(単位はバリア)を、ISO 9913−1:1996(E)に概要が説明されているポーラログラフ法によって求めた。
==関連出願へのクロスリファレンス==
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づいて、2011年9月1日にファイルされた米国仮特許出願第61/530,120号および2011年11月10日にファイルされた米国仮特許出願第61/558,066号ならびに、米国特許法第119条(a)に基づいて、2011年9月1日にファイルされた英国出願第1115107.3号および2011年11月10日にファイルされた英国出願第1119365.3号(これらの開示内容全体を本明細書に援用する)の優先権の利益を主張する。
発明の実施の形態
以下の実施例では、式(I)のモノマーの合成について説明する。これらの実施例は、本発明を例示することを想定したものであり、それを限定するものとはみなされない。
[実施例1]
2−(3−オキシエチル−1−ビニルピロリジン−2−オン)−2’−(トリメチルアンモニウム)−エチルホスフェート、内塩(HEVP−PC)の調製
実施例1で行った反応を、以下のスキーム1に簡単にまとめておく。
スキーム1
(i)(2−ヨードエトキシ)−tert−ブチルジメチルシランの調製
2−ヨードエタノール(17.2g;100mmol)およびイミダゾール(8.17g;120mmol)をジクロロメタン(100mL)に入れた攪拌溶液に、反応温度が30℃より高くならないような速度で、tert−ブチルジメチルシリルクロリド(15.83g;105mmol)を加えた。添加終了時、この溶液を17時間攪拌したままにした後、水(2×50mL)およびブライン(50mL)で洗浄し、MgSO4で脱水した。溶媒を蒸発させたところ、標的化合物(28.0g;97.8mmol;98%)が無色の液体として得られた。
1 (ii)3−[2−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)−エチル ]−1−ビ
ニルピロリジン−2−オン(TBSE−VP)の調製
ジイソプロピルアミン(0.46mL;3.3mmol;1.1当量)を乾燥テトラヒドロフラン(20mL)に入れた攪拌氷冷溶液に、n−ブチルリチウム(1.32mL;3.3mmol;1.1当量)の2.5Mの溶液を、アルゴン中にて、滴下して加えた。添加終了時、この溶液を、10分間攪拌したままにした後、約−80から−70℃まで冷却した。1−ビニルピロリジン−2−オン(0.32mL;3.0mmol)を滴下して加え、この溶液を、20分間攪拌したままにした。ヘキサメチルホスホルアミド(0.57mL;3.3mmol;1.1当量)を加え、この溶液を、さらに20分間攪拌したままにした。この溶液に、(2−ヨードエトキシ)−tert−ブチルジメチルシラン(859mg;3.0mmol)を滴下して加え、溶液を約−80から−70℃で17時間、攪拌したままにした。反応混合物を周囲温度まで温め、NH4Cl(15mL)の飽和水溶液でクエンチした。水性相をジエチルエーテルで抽出(2×15mL)し、合わせた有機抽出物をMgSO4で脱水して、減圧下で濃縮した。カラムクロマトグラフィ(酢酸エチル/石油エーテル(沸点40〜60℃)=1:9)によって、副生物である3,3−ビス−[2−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)−エチル]−1−ビニルピロリジン−2−オン([TBSE]2−VP)(49mg;0.115mmol;4%)が無色の液体として得られた。酢酸エチル/石油エーテル(沸点40〜60℃)(1:4)でさらに溶出すると、標的化合物3−[2−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)−エチル]−1−ビニルピロリジン−2−オン(TBSE−VP)(621mg;2.30mmol;77%)が無色の液体として得られた。
(iii)3−(2−ヒドロキシエチル)−1−ビニルピロリジン−2−オン(HE−VP)の調製
3−[2−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)−エチル]−1−ビニルピロリジン−2−オン(TBSE−VP)(269mg;1.0mmol)を乾燥テトラヒドロフラン(10mL)に入れた攪拌氷冷溶液に、テトラブチルアンモニウムフルオリド(2.0mL;2.0mmol;2.0当量)の1.0Mの溶液を、アルゴン中にて、滴下して加えた。添加終了時、反応混合物を0℃で5分間、攪拌したままにして、5分間かけて周囲温度まで温め、さらに40分間、攪拌したままにした。反応混合物を水(5mL)と酢酸エチル(10mL)とに分け、水性相を酢酸エチルで抽出(3×5mL)した。合わせた有機抽出物をMgSO4で脱水して、減圧下で濃縮した。カラムクロマトグラフィ(酢酸エチル)によって、標的化合物(135mg;0.87mmol;87%)が淡い黄色の液体として得られた。
2 (iv)2−(3−オキシエチル−1−ビニルピロリジン−2−オン)−2 ’−(トリ
メチルアンモニウム)−エチルホスフェート、内塩(HEVP−PC)の調製
2−クロロ−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホラン(4.58g;32.1mmol;1.04当量)をアセトニトリル(3g)に入れて、攪拌してチルド冷却した(−10℃)溶液に、3−(2−ヒドロキシエチル)−1−ビニルピロリジン−2−オン(4.80g;30.9mmol)およびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(1.98g;17.1mmol;0.55当量)をアセトニトリル(7g)に入れた溶液を、滴下して加えた。添加終了時、反応混合物を15分間攪拌したままにして、アルゴン中にて濾過し、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンジヒドロクロリド沈殿物を乾燥アセトニトリル(7g)で洗浄したところ、2−(3−オキシエチル−1−ビニルピロリジン−2−オン)−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホランをアセトニトリルに入れた溶液を含む濾液が得られた。
攪拌してチルド冷却したホスホラン溶液に、4−メトキシフェノール(4mg;0.029mmol)、アセトニトリル(30g)、トリメチルアミン(3.7g;62.6mmol;2.02当量)を加え、反応混合物を閉じた系(バルーンを付けた水凝縮器)にて70℃で19時間、加熱した。反応混合物を真空下にて濃縮(アセトニトリル約10から20mL、過剰なトリメチルアミンを除去)し、生成物を5℃で自然に溶液から析出させ、自然に周囲温度まで温めた。
この結晶生成物をアルゴン中にて濾過し、アセトニトリル(6mL)と酢酸エチル(3×6mL)で順次洗浄し、周囲温度にてin vacuoで乾燥させて、標的化合物(2.83g;8.83mmol;29%)と残留アセトニトリル(0.12g;2.94mmol)を含む白色粉末2.95gを得た。
[実施例2]
2−(トリメチルアンモニウム)エチル−2−(ビニルオキシカルボニルアミノ)エチルホスフェート、内塩(HEVC−PC)の調製
実施例2で行った反応を、以下のスキーム2にまとめておく。
スキーム2
2−クロロ−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホラン(5.00g;35.1mmol)をアセトニトリル(3g)に入れて、攪拌してチルド冷却した(−10℃)溶液に、N−ヒドロキシエチル−O−ビニルカルバメート(HEVC)(4.60g;35.1mmol)およびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(2.24g;19.3mmol;0.55当量)をアセトニトリル(7.5g)に入れた溶液を、滴下して加えた。添加終了時、反応混合物を1時間攪拌したままにして、アルゴン中にて濾過し、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンジヒドロクロリド沈殿物を乾燥アセトニトリル(8g)で洗浄して、2−(N−オキシエチル−O−ビニルカルバメート)−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホランのアセトニトリル溶液を含む濾液を得た。
攪拌してチルド冷却したホスホラン溶液に、4−メトキシフェノール(20mg;0.161mmol)、アセトニトリル(35g)、トリメチルアミン(3.67g;61.4mmol;1.75当量)を加え、反応混合物を閉じた系(バルーンを付けた水凝縮器)にて70℃で17時間、加熱した。反応混合物を真空下にて濃縮(アセトニトリル約10mL、過剰なトリメチルアミンを除去)し、生成物を−25℃前後で溶液から自然に析出させた。
この結晶化生成物をすみやかに濾過し、周囲温度にてin vacuoで乾燥させて、標的化合物(1.08g;3.65mmol;10%)をオフホワイトの固体として得た。
[実施例3]
2−(トリメチルアンモニウム)エチル−2−(ビニルアミノカルボニルオキシ)エチルホスフェート、内塩(VAC−PC)の調製
実施例3で行った反応を、以下のスキーム3にまとめておく。
スキーム3
トリス(2−(2−メトキシエトキシ)エチル)アミン(0.04g、0.1mmol)を含むジメチルスルホキシド(1.2g)中の懸濁液としてのヒドロキシエチルホスホリルコリン(0.11g、0.4mmol)を、窒素中にて攪拌しつつ、ビニルイソシアネート(0.04g、0.6mmol)を15分間かけて少しずつ加えた。この混合物を室温にて3日間攪拌した後、溶液を窒素下にてMEK(30g)に加え、30分間各版した。分離した白色の固体を濾過により回収し、MEKで洗浄し、真空下で乾燥させた(0.09g、0.3mmol、63%)。
1H-NMR (400 MHz) (d6DMSO): δ = 6.55 (1H, m), 4.52 (1H, d), 4.15 (1H, d), 4.10 (2H, m), 4.02 (2H, m), 3.78 (2H, m), 3.52 (2H, m) and 3.15 (9H, s) ppm, 13C-NMR (100 MHz) (d6DMSO): δ = 157.2, 130.9, 92.9, 65.5, 62.3, 62.3, 58.2 and 53.1 ppm, 31P-NMR (162 MHz) (d6DMSO): δ = -0.12 ppm.
[実施例4]
以下の基本手順で、ポリマー系を形成した。
表1に示すモノマー成分を混合し、アルゴンを用いて脱気し、1時間で70℃まで加熱して、モノマー原料由来の架橋ポリマー系を得た。
[実施例5]
本実施例では、重合可能な材料を調製するための基本手順と、これに対応するコンタクトレンズについて説明する(表2)。特に明記しないかぎり、材料はいずれも、入手したときのまま使用した。
モノマー、架橋剤(EGDMA)、開始剤(PD16)を含む重合可能な系の各成分を秤量し、ガラスバイアルに入れた。バイアルをキャップで封止した後、すべての成分が完全に溶解するまで、室温にてローラーミキサーに置いた。溶解後、混合物を0.45ミクロンのフィルターで濾過し、乾燥アルゴン気体を調製物に静かに通すことで、溶液から酸素を除去した。
ポリプロピレン製のコンタクトレンズ型を、Decon 90の20%水溶液ですすいだ後、70℃にて30分間オーブン中にて乾燥させて、清浄した。メス型に調製物を充填し、オス型をメス型に足した。次に、これらの型を、70℃まで予熱したオーブンに1時間入れておいた。
冷却後、型を一晩、純水に浸漬し、レンズを離型した。
[実施例6]
モノマーを以下の表3に列挙したような他の成分と混合し、表2に示す方法に従って、コンタクトレンズの作製に使用した。成分の略記とこれに対応する完全な名称を、表4にあげておく。
[実施例7]
特定の試作レンズの平衡含水率(EWC)を、重量による手段で求めた。まず、室温にて一晩、水中においた平衡後のレンズの湿重量を測定した。次に、レンズを、一定の重量まで70℃のオーブンで乾燥させ、これを乾燥重量とした。その後、以下のようにしてレンズの含水率を計算した。
EWC(wt%)=[(湿重量−乾燥重量)/湿重量]×100
実施例6におけるポリマーのうち、いくつかのもののEWCを、表3にあげておく。

Claims (18)

  1. 以下の式(I)のモノマー。
    (式中、
    Wは、(CR であり、
    Zは、(IIA)、(IIB)、(IIC)、(IID)、(IIE)からなる群から選択される双性イオン基であり、ここで、基(IIA)は、以下の式を有し、
    (式中、RおよびR3Aは各々独立に、水素およびC1〜4アルキルから選択され、aは、2から4の整数である)
    基(IIB)は、以下の式を有し、
    (式中、RおよびR4Aは各々独立に、水素およびC1〜4アルキルから選択され、bは、1から4の整数である)
    基(IIC)は、以下の式を有し、
    (式中、RおよびR5Cは各々独立に、水素およびC1〜4アルキルから選択され、R5Aは、水素または基−C(O)B5Bであり(ここで、R5Bは、水素またはメチルであり、Bは、直接結合、C1〜10アルキレン、C2〜10アルケニレン、C2〜10アルキニレン、C3〜10シクロアルキレン、C3〜10シクロアルケニレン、C1〜10ヘテロアルキレン、C2〜10ヘテロアルケニレン、C2〜10ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、−C(O)R−、−C(O)OR−(ここで、Rは、C1〜10アルキレン、C2〜10アルケニレン、C2〜10アルキニレンからなる群から選択され、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロアルケニレン基、ヘテロアルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基は、1つまたは2つ以上のRで任意に置換されていてもよい(ここで、Rは各々独立に、−H、−OH、−CN、−NO、−CF、−OCF、−COH、−NH、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、C〜C10アルキニル、−O(C〜C10アルキル)、−O(C〜C10アルケニル)、−O(C〜C10アルキニル)、ハロゲン、−C(O)H、−C(O)−(C〜C10アルキル)、−C(O)−O(C〜C10アルキル)、−NH(C〜C10アルキル)、−N(C〜C10アルキル)、−C(O)−NH(C〜C10アルキル)、−C(O)−N(C〜C10アルキル)、−NH−C(O)−(C〜C10アルキル)、−NH(C〜C10アルキル)−C(O)−(C〜C10アルキル)、−NH−S(O)−(C〜C10アルキル)、−NH−(C〜C10アルキル)−S(O)−(C〜C10アルキル)、−(C〜C10)−SH、−S(O)−(C〜C10アルキル)、−S(O)−(C〜C10アルキル)、−S(O)−NH、−S(O)−NH−(C〜C10アルキル)、−S(O)−N(C〜C10アルキル)、=Oからなる群から選択される))からなる群から選択される)、cは、1から4の整数であり、ここで、ZがO原子またはN原子に直接結合している場合、zは0であり、それ以外の場合、zは1である)
    基(IID)は、以下の式を有し、
    (式中、RおよびR6Cは各々独立に、水素およびC1〜4アルキルから選択され;R6Aは、水素または基−C(O)B6Bであり(ここで、R6Bは、水素またはメチルであり、Bは、直接結合、C1〜10アルキレン、C2〜10アルケニレン、C2〜10アルキニレン、C3〜10シクロアルキレン、C3〜10シクロアルケニレン、C1〜10ヘテロアルキレン、C2〜10ヘテロアルケニレン、C2〜10ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、−C(O)R−、−C(O)OR−(ここで、Rは、C1〜10アルキレン、C2〜10アルケニレン、C2〜10アルキニレンからなる群から選択され、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロアルケニレン基、ヘテロアルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基は、1つまたは2つ以上のRで任意に置換されていてもよい(ここで、Rは各々独立に、−H、−OH、−CN、−NO、−CF、−OCF、−COH、−NH、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、C〜C10アルキニル、−O(C〜C10アルキル)、−O(C〜C10アルケニル)、−O(C〜C10アルキニル)、ハロゲン、−C(O)H、−C(O)−(C〜C10アルキル)、−C(O)−O(C〜C10アルキル)、−NH(C〜C10アルキル)、−N(C〜C10アルキル)、−C(O)−NH(C〜C10アルキル)、−C(O)−N(C〜C10アルキル)、−NH−C(O)−(C〜C10アルキル)、−NH(C〜C10アルキル)−C(O)−(C〜C10アルキル)、−NH−S(O)−(C〜C10アルキル)、−NH−(C〜C10アルキル)−S(O)−(C〜C10アルキル)、−(C〜C10)−SH、−S(O)−(C〜C10アルキル)、−S(O)−(C〜C10アルキル)、−S(O)−NH、−S(O)−NH−(C〜C10アルキル)、−S(O)−N(C〜C10アルキル)、=Oからなる群から選択される))からなる群から選択される)、dは、1から4の整数であり、ここで、ZがO原子またはN原子に直接結合している場合、zは0であり、それ以外の場合、zは1である)
    基(IIE)は、以下の式を有する、
    (式中、RおよびR7Cは各々独立に、水素およびC1〜4アルキルから選択され;R7Aは、水素または基−C(O)B7Bであり(ここで、R7Bは、水素またはメチルであり、Bは、直接結合、C1〜10アルキレン、C2〜10アルケニレン、C2〜10アルキニレン、C3〜10シクロアルキレン、C3〜10シクロアルケニレン、C1〜10ヘテロアルキレン、C2〜10ヘテロアルケニレン、C2〜10ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、−C(O)R−、−C(O)OR−(ここで、Rは、C1〜10アルキレン、C2〜10アルケニレン、C2〜10アルキニレンからなる群から選択され、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロアルケニレン基、ヘテロアルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基は、1つまたは2つ以上のRで任意に置換されていてもよい(ここで、Rは各々独立に、−H、−OH、−CN、−NO、−CF、−OCF、−COH、−NH、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、C〜C10アルキニル、−O(C〜C10アルキル)、−O(C〜C10アルケニル)、−O(C〜C10アルキニル)、ハロゲン、−C(O)H、−C(O)−(C〜C10アルキル)、−C(O)−O(C〜C10アルキル)、−NH(C〜C10アルキル)、−N(C〜C10アルキル)、−C(O)−NH(C〜C10アルキル)、−C(O)−N(C〜C10アルキル)、−NH−C(O)−(C〜C10アルキル)、−NH(C〜C10アルキル)−C(O)−(C〜C10アルキル)、−NH−S(O)−(C〜C10アルキル)、−NH−(C〜C10アルキル)−S(O)−(C〜C10アルキル)、−(C〜C10)−SH、−S(O)−(C〜C10アルキル)、−S(O)−(C〜C10アルキル)、−S(O)−NH、−S(O)−NH−(C〜C10アルキル)、−S(O)−N(C〜C10アルキル)、=Oからなる群から選択される))からなる群から選択される)、eは、1から4の整数であり、ここで、ZがO原子またはN原子に直接結合している場合、zは0であり、それ以外の場合、zは1である)
    は各々独立に、H、ハロゲンまたはC1〜4アルキルから選択され、
    かつ、
    i)Xは、NRであり、
    これらが結合するR、Y、N原子は一緒になって、5員環から7員環の複素環を形成し、ここで、前記複素環は、1つまたは2つ以上のRで任意に置換されていてもよく、Rは各々独立に、−H、−OH、−CN、−NO、−CF、−OCF、−COH、−NH、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、C〜C10アルキニル、−O(C〜C10アルキル)、−O(C〜C10アルケニル)、−O(C〜C10アルキニル)、ハロゲン、−C(O)H、−C(O)−(C〜C10アルキル)、−C(O)−O(C〜C10アルキル)、−NH(C〜C10アルキル)、−N(C〜C10アルキル)、−C(O)−NH(C〜C10アルキル)、−C(O)−N(C〜C10アルキル)、−NH−C(O)−(C〜C10アルキル)、−NH(C〜C10アルキル)−C(O)−(C〜C10アルキル)、−NH−S(O)−(C〜C10アルキル)、−NH−(C〜C10アルキル)−S(O)−(C〜C10アルキル)、−(C〜C10)−SH、−S(O)−(C〜C10アルキル)、−S(O)−(C〜C10アルキル)、−S(O)−NH、−S(O)−NH−(C〜C10アルキル)、−S(O)−N(C〜C10アルキル)、=Oからなる群から選択され、
    mは、0から6の整数であり、
    nは、0から6の整数である。)
    または、
    ii)Xは、NRであり、
    は、HまたはC1〜4アルキルであり、
    Yは、−C(O)O−であり、
    mは、1から4の整数であり、
    nは、0である。)
    または、
    iii)Xは、Oであり、
    Yは、−C(=V)A−(式中、Vは、SまたはOであり、Aは、NR、OまたはSから選択される(ここで、Rは、HまたはC1〜4アルキルである)
    mは、0から6の整数であり、
    nは、0である。)
  2. Xは、NRであり、これらが結合するR、Y、N原子は一緒になって、5員環から7員環の複素環を形成し、ここで、前記複素環は、1つまたは2つ以上のRで任意に置換されていてもよく、Rは各々独立に、−H、−OH、−CN、−NO、−CF、−OCF、−COH、−NH、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、C〜C10アルキニル、−O(C〜C10アルキル)、−O(C〜C10アルケニル)、−O(C〜C10アルキニル)、ハロゲン、−C(O)H、−C(O)−(C〜C10アルキル)、−C(O)−O(C〜C10アルキル)、−NH(C〜C10アルキル)、−N(C〜C10アルキル)、−C(O)−NH(C〜C10アルキル)、−C(O)−N(C〜C10アルキル)、−NH−C(O)−(C〜C10アルキル)、−NH(C〜C10アルキル)−C(O)−(C〜C10アルキル)、−NH−S(O)−(C〜C10アルキル)、−NH−(C〜C10アルキル)−S(O)−(C〜C10アルキル)、−(C〜C10)−SH、−S(O)−(C〜C10アルキル)、−S(O)−(C〜C10アルキル)、−S(O)−NH、−S(O)−NH−(C〜C10アルキル)、−S(O)−N(C〜C10アルキル)、=Oからなる群から選択され、mは、0から6の整数であり、nは、0から6の整数である、請求項1に記載のモノマー。
  3. 前記複素環は5員環の複素環である、請求項2に記載のモノマー。
  4. 前記5員環の複素環は、=Oで置換される、請求項3に記載のモノマー。
  5. 以下の式(IA)を有する、請求項4に記載のモノマー。
    (式中、W、R、RおよびZは、式(I)で定義したとおりである。)
  6. nは0である、請求項5に記載のモノマー。
  7. XはNRであり
    は、HまたはC1〜4アルキルであり、
    Yは、−C(O)O−であり、
    mは、1から4の整数であり、nは、0である、請求項1に記載のモノマー。
  8. Xは、Oであり、
    Yは、−C(=V)A−(式中、Vは、SまたはOであり、Aは、NR、OまたはSから選択され(ここで、Rは、HまたはC1〜4アルキルである))、
    mは、0から6の整数であり、
    nは、0である、請求項1に記載のモノマー。
  9. Zは基(IIB)である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のモノマー。
  10. はメチルであり、bは2である、請求項9に記載のモノマー。
  11. 式(ID)を有する、請求項5に記載のモノマー。
    (式中、Wは、式(I)との関連で定義したとおりであり、RおよびR4Aは各々独立に、水素およびC1〜4アルキルから選択され、bは、1から4の整数である。)
  12. 式(IE)を有する、請求項5に記載のモノマー。
    (式中、Wは、式(I)との関連で定義したとおりであり、RおよびR4Aは各々独立に、水素およびC1〜4アルキルから選択され、bは、1から4の整数である。)
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に定義されたモノマーと、シロキサン基含有モノマーまたはマクロマーを含むコモノマーとを反応させることによって得られる、ポリマーの製造方法。
  14. 前記シロキサン基含有モノマーは、式(A)または(B)の材料である、請求項13に記載のポリマーの製造方法。
    (T−Y−G(Y−Z) (A)
    [(T−Y(Z)−G−R24 (B)
    (式中、
    は、重合可能な基であり、
    およびYは各々独立に、直接結合、C1〜12アルキレン、C2〜12アルケニレン、C2〜12アルキニレン、C3〜12シクロアルキレン、C3〜12シクロアルケニレン、C2〜12ヘテロアルケニレン、C2〜12ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、−C(O)−C1〜12アルキレン、−C(S)−C1〜12アルキレン、−C(O)O−C1〜12アルキレン、−C(O)S−C1〜12アルキレン、−C(O)N(R)−C1〜12アルキレン、−C(S)−C1〜12アルキレン、−C(S)O−C1〜12アルキレン、−C(S)S−C1〜12アルキレン、−C(S)N(R)−C1〜12アルキレン、−(CHqq(OCHCHrr−、−(CHCHO)rr(CHqq−(ここで、Rは、水素またはC1〜4アルキルであり、qqは、1から10の整数であり、rrは、1から10の整数である)からなる群から選択されるリンカー基であり、ここで、C1〜12アルキレン基の1個または2個以上の炭素原子は、任意に、SおよびOからなる群から選択されるヘテロ原子で置換されていてもよく、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロアルケニレン基、ヘテロアルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基は、1つまたは2つ以上のRで任意に置換されていてもよく(ここで、Rは各々独立に、−H、−OH、−CN、−NO、−CF、−OCF、−COH、−NH、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、C〜C10アルキニル、−O(C〜C10アルキル)、−O(C〜C10アルケニル)、−O(C〜C10アルキニル)、ハロゲン、−C(O)H、−C(O)−(C〜C10アルキル)、−C(O)−O(C〜C10アルキル)、−NH(C〜C10アルキル)、−N(C〜C10アルキル)、−C(O)−NH(C〜C10アルキル)、−C(O)−N(C〜C10アルキル)、−NH−C(O)−(C〜C10アルキル)、−NH(C〜C10アルキル)−C(O)−(C〜C10アルキル)、−NH−S(O)−(C〜C10アルキル)、−NH−(C〜C10アルキル)−S(O)−(C〜C10アルキル)、−(C〜C10)−SH、−S(O)−(C〜C10アルキル)、−S(O)−(C〜C10アルキル)、−S(O)−NH、−S(O)−NH−(C〜C10アルキル)、−S(O)−N(C〜C10アルキル)、=Oからなる群から選択される)、
    は、リンカー基であり、
    24は、1つまたは2つ以上のRで任意に置換されていてもよいC1〜12アルキル基であり、
    は、シロキサン基含有成分であり、
    Zは、双性イオン基であり、
    kは、1から10の整数であり、
    lは、1から3の整数であり、
    uは、1から3の整数であり、
    vは、1から3の整数である。)
  15. 酸素透過性が30バリア以上である、または平衡含水率が30から50%の範囲である、またはモジュラス(引っ張り係数)が3MPa未満である、請求項13または14に記載のポリマーの製造方法。
    (なお、前記平衡含水率は、次のように定義する。
    まず、室温にて一晩、水中においた平衡後のレンズの湿重量を測定し、次に、これらのレンズを、一定の重量まで70℃のオーブンで乾燥させ、これを乾燥重量とした場合、
    平衡含水率(EWC)(wt%)=[(湿重量−乾燥重量)/湿重量]×100)
  16. 請求項13〜15のいずれか1項に記載のポリマーを含む、コンタクトレンズの製造方法。
  17. 請求項13〜15のいずれか1項に記載のポリマーがコーティングされた表面を有する、コンタクトレンズの製造方法。
  18. 請求項13〜15のいずれか1項に記載のポリマーを、物品の表面に適用することを含む、表面を有する物品にコーティングを施す方法。
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