JP6176208B2 - 高強度オーステナイト系ステンレス厚鋼板の製造方法 - Google Patents

高強度オーステナイト系ステンレス厚鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋼構造物部材、特に水門やダム等のレール材などの耐食性(耐孔食性)と高強度・硬度(高強度等)が必要な部材に適用可能な耐孔食性に優れた高強度オーステナイト系ステンレス厚鋼板の製造方法に関する。
ステンレス鋼は、その金属組織から、SUS410(13Cr)に代表されるマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS430(18Cr)に代表されるフェライト系ステンレス鋼、SUS304(18Cr−8Ni)に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼、SUS630(17Cr−4Ni−4Cu−Nb)に代表される析出硬化型ステンレス鋼などに大別される。
このような各種ステンレス鋼の中で、オーステナイト系ステンレス鋼は、一般的な腐食環境での耐食性、特に耐孔食性に優れる。そして、耐食性、特に耐孔食性の観点から、オーステナイト系ステンレス鋼の中でも、SUS304(18Cr−8Ni)やSUS316(18Cr−10Ni−2Mo)が多く使用される。
ところで、Moは高価な金属元素であることから、耐孔食性を厳しく要求されない環境では、SUS304が用いられることが多い。SUS304の中には、耐孔食性や強度をより向上させるために、N量を高めたSUS304N1(18Cr−8Ni−0.15N)やSUS304N2(18Cr−8Ni−0.25N−0.1Nb)などの種類がある。
本発明が想定する水門等の用途で使用される部品には、耐孔食性と高強度が求められる。そこで、この用途で使用される部品の素材となる鋼板は、SUS304N2に対して、強度を高めるために圧延を行った後に、耐孔食性を高めるために溶体化処理(処理温度は1150℃程度)を行って製造される。
しかしながら、SUS304N2はN含有量が高い素材であることから、熱間加工性に劣る。そのため、SUS304N2を用いる技術は、表面割れなどが生じやすいため製造性が悪く、製造時の歩留りが非常に低いという課題がある。
上記の通り、SUS304N2等のオーステナイト系ステンレス鋼においては、組織の均一化と炭化物や金属間化合物などの固溶による耐食性の向上を目的とした溶体化処理が施される。しかし、このような溶体化処理を施してなる素材は強度が低い傾向にあるという問題がある。その対策として、加工熱処理(TMCP)を適用する技術が提案されている。
特許文献1には、主成分として、質量%で、C:0.03%以下、Cr:16〜20%、Ni:7〜15%、N:0.08%以下、Mo:3.0%以下を含む鋼素材を、1150℃〜1300℃の条件で熱処理し、熱処理後の鋼素材を、900〜950℃の範囲の累積圧下率が20〜45%の条件で圧延するオーステナイト系ステンレス鋼厚板の製造方法が開示されている。
特許文献2には、主成分として、質量%で、C:0.05%以下、N:0.15〜0.30%、Ni:7〜11%、Cr:18〜20%、Nb:0.01〜0.25%を含む鋼素材を加工熱処理する高強度オーステナイト系ステンレス鋼圧延材の製造方法が開示されている。
特許文献3には、主成分として、質量%で、C:0.040%以下、Cr:16〜20%、Ni:7〜15%、N:0.25%以下、Ti:0.003〜0.020%を含む鋼素材を1150〜1300℃に加熱し、加熱後の鋼素材を、900〜700℃の温度域での累積圧下率が5〜30%の条件で圧延し、圧延後の熱延板を放冷する高強度オーステナイトステンレス鋼板の製造方法が開示されている。
特許文献4には、式F1=S+((P+Sn)/2)+((As+Zn+Pb+Sb)/5)、式F2=Nb+Ta+Zr+Hf+2Ti+(V/10)が0.05≦F2≦1.7−9×F1を満足、特許文献5には、式P1=S+((P+Sn)/2)+((As+Zn+Pb+Sb)/5)、式P2=Nb+2(V+Ti)が0.2≦P2≦1.7−10×P1を満足することを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼が開示されている。なお、上記特許文献4、5に記載の式における元素記号は各元素の含有量を意味する。
特許文献6には、質量%で、Si:0.03〜3.0%、Al:0.01%以下、O:0.001〜0.005%を含有する高強度準安定オーステナイト系ステンレス鋼が開示されている。
特許文献7〜9には、オーステナイト系ステンレス鋼を熱間圧延で高強度化する製造方法が開示されている。
特開平8−73936号公報 特開平9−49015号公報 特開平8−104920号公報 特表2009−44802号公報 特表2009−44796号公報 特開2001−262281号公報 特開昭60−197817号公報 特開昭60−26619号公報 特開昭61−272317号公報
特許文献1では、高強度を得るためにオーステナイト系ステンレス鋼厚板に加工熱処理を適用している。特許文献1では、C含有量が0.03%以下、N含有量が0.08%以下と低く、固溶Cや固溶Nによる強度上昇が十分とはいえない。また、特許文献1では、圧延終了温度が900℃以上であるために、ある程度の転位強化効果は得られるが、その効果はまだ不十分である。
特許文献2では、N含有量が0.15〜0.30%であるオーステナイト系ステンレス鋼を、さらに加工熱処理している。このため、特許文献2では、固溶Nによる固溶強化と加工熱処理による転位強度によって強度上昇が見込める。しかし、Nb含有量が0.01〜0.25%であるため、後述するように耐孔食性に劣るという問題がある。
特許文献3では、高強度化のために、N含有量が0.25%以下であるオーステナイトステンレス鋼板を、900〜700の温度範囲で圧延を終了させる加工熱処理を行っている。しかし、その温度域での累積圧下率が5〜30%と低いため、十分な転位強化効果が得られない問題がある。また、特許文献3では、圧延後に放冷を行っているために、Cr炭化物などの析出物が生成し、耐孔食性の劣化に繋がる。
特許文献4と特許文献5は、耐食性を向上させるために、Cを固定化させることが可能なNb、V、Ti等を一定量以上必要としている。しかし、後述するようにNbCは孔食の起点となり耐孔食性を劣化させるという問題がある。
特許文献6に記載の技術は、バネ等に用いられる線材に関する。特許文献6では、冷間圧延後の強度を上昇させるために準安定なオーステナイト系ステンレスとしている。また、特許文献6は、冷間圧延後の強度がTS(引張強度)で1800MPaと高い。引張強度を含めた多くの特性は他の特性に影響を与え、これらの特性の調和で全体の性質が決まることを考慮すると、TSが1800MPaの鋼と本願発明で想定するTSが700〜900MPa程度の鋼とは、鋼の種類が異なるといえる。
特許文献7と特許文献8は、加工熱処理によって高強度化を達成可能である。しかし、特許文献7、特許文献8に記載の発明では、耐孔食性について考慮されていない。
特許文献9でも、特許文献7及び8と同様に耐孔食性について考慮されていない。さらに、特許文献9では、再結晶域での圧延によって強度を向上させることが検討されているため、特許文献9に記載の技術は、未再結晶域での圧延による転位強化効果を狙ったものではない。
本発明は、通常の大気環境や多少の塩分を含む没水環境などの腐食環境において、優れた耐孔食性と高強度等を確保可能なオーステナイト系ステンレス厚鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、以下の知見を得た。
1.製造性、歩留りに悪影響を与えない程度に、固溶Cと固溶Nによる固溶強化効果が得られるC量含有とN含有量を見極めて、目標の高強度が得られる成分の適正範囲を見出した。
2.従来、Cr炭化物生成によって生じる鋭敏化を抑制するために、Nbを添加して、CをNb炭化物として固定化させて耐食性を向上させることがよく行われている。しかし、Nb炭化物が孔食の起点となることで、耐食性を劣化させることを見出した。そのため、Nb含有量を極力減らし、さらに耐孔食性を向上させるために、製造性とのバランスを考えたN含有量の適正範囲を見出した。
3.高強度化を達成するためには、圧延終了温度を低温化させることが望ましいが、800℃未満まで低温化させると耐孔食性が劣化することを見出した。その耐孔食性劣化メカニズムは詳細には不明であるが、おそらく、歪がある一定以上蓄積されることで、孔食の起点が増えるものと考えられる。
4.上述したように、圧延終了温度の低温化には限界があるので、さらなる高強度化を達成させるために、累積圧下率を30%以上に増加させて、転位強化効果を活用することで目標強度が得られることを見出した。
以上の知見に基づき、さらに検討を重ねた結果、適正な合金成分と適正な加工熱処理条件での圧延とを組み合わせることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
[1]質量%で、C:0.030〜0.080%、Si:0.20〜1.00%、Mn:0.20〜1.30%、P:0.045%以下、S:0.020%以下、Ni:7.00〜10.50%、Cr:18.00〜20.00%、N:0.10〜0.20%、O:0.010%以下、Nb:0.005%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、1100〜1250℃に加熱する加熱工程と、前記加熱工程で加熱された鋼素材を、圧延終了温度が800〜900℃、累積圧下率が30%以上の条件で熱間圧延する熱間圧延工程と、前記熱間圧延工程で得られた熱延板を、冷却停止温度が500℃以下、冷却速度が3℃/s以上の条件で冷却する冷却工程と、を有することを特徴とする高強度オーステナイト系ステンレス厚鋼板の製造方法。
本発明によれば、通常の大気環境や多少の塩分を含む没水環境などの腐食環境において、優れた耐孔食性と高強度等を有するオーステナイト系ステンレス厚鋼板を得ることができ、産業上きわめて有用である。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
鋼素材の成分組成
本発明の製造方法で原料として用いる鋼素材は、質量%で、C:0.030〜0.080%、Si:0.20〜1.00%、Mn:0.20〜1.30%、P:0.045%以下、S:0.020%以下、Ni:7.00〜10.50%、Cr:18.00〜20.00%、N:0.10〜0.20%、O:0.010%以下、Nb:0.005%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。以下、鋼素材の成分組成について説明する。以下の説明において含有量を表す「%」は「質量%」を意味する。なお、鋼素材の成分組成が、製造物である厚鋼板の成分組成となる。
C:0.030〜0.080%
Cは固溶強化効果によって強度を向上させる成分である。C含有量が0.030%未満であると一般構造用鋼として十分な強度が得られない。このため、C含有量は0.030%以上とする。一方、Cは圧延中の熱履歴でCr炭化物として析出し、耐食性を阻害する。このため、C含有量を0.080%以下とする。好ましいC含有量は、0.040〜0.070%である。
Si:0.20〜1.00%
Siは強度確保、脱酸に有効な成分である。この効果を得るためにSi含有量を0.20%以上とする。しかしながら、Si含有量が1.00%を超えると非金属介在物としてSiが残存し、耐孔食性が劣化し、また、熱間加工性も劣化する。そこで、Si含有量は0.20〜1.00%の範囲とする。好ましくは、0.30〜0.70%の範囲とし、さらに好ましくは、0.40〜0.60%の範囲とする。
Mn:0.20〜1.30%
Mnも強度確保、脱酸に有効な成分である。この効果を得るためにMn含有量を0.20%以上とする。しかしながら、Mn含有量が1.30%を超えると、MnSといった非金属介在物が残存し、耐孔食性が著しく劣化し、また熱間加工性も劣化する。そのため、Mn含有量は0.20〜1.30%の範囲とする。好ましくは、0.50〜1.20%の範囲とする。さらに好ましくは、0.70〜1.15%の範囲とする。
P:0.045%以下
Pは不純物元素であり、粒界に偏析し、耐食性を劣化させる元素である。したがって、P含有量は0.045%以下とする。好ましくは、0.030%以下とする。しかし、P含有量を極端に低減することは精錬費用の大幅な上昇につながる。そこで、P含有量は0.010%以上が好ましい。よって、好ましいP含有量は、0.010〜0.045%の範囲である。
S:0.020%以下
SはPと同様で不純物元素である。Sの含有は、MnSといった非金属介在物を析出させて、耐孔食性を劣化させる。したがって、S含有量は0.020%以下とする。好ましくは、0.015%以下とする。しかし、S含有量を極端に低減することは精錬費用の大幅な上昇につながる。そこで、S含有量は0.001%以上が好ましい。よって、好ましいS含有量は、0.001〜0.015%の範囲である。
Ni:7.00〜10.50%
Niはオーステナイト系ステンレス鋼の主要元素であり、耐孔食性を向上させる元素である。Niの含有により、後述するCrによって形成される酸化皮膜(不動態皮膜)の密着性が増し、CrとNiとの複合添加によって耐孔食性が向上する。しかし、Niは高価な元素であるため、耐孔食性能と価格のバランスを考慮して、Ni含有量は、7.00〜10.50%の範囲とする。好ましくは、9.00〜10.00%の範囲である。
Cr:18.00〜20.00%
Crは、金属の表面に保護性の高い酸化皮膜(不動態皮膜)を形成し、耐孔食性を向上させる元素である。しかし、Crは高価な元素であるため、耐孔食性能と価格のバランスを考慮する必要がある。そこで、Cr含有量は18.00〜20.00%の範囲とする。好ましくは、18.50〜19.50%の範囲である。
N:0.10〜0.20%
Nは、Cと同様で固溶強化によって強度を向上させる有効な成分である。また、Nは耐孔食性を向上させるにも有効な成分である。これらの効果を得るために、N含有量を0.10%以上とする。一方、N含有量が0.20%を超えると、熱間加工性を劣化させ、製造性が低下する。このため、N含有量を0.10〜0.20%に限定した。好ましくは、0.13%〜0.18%の範囲である。
O:0.010%以下
Oは、非金属介在物の代表である酸化物を生成し、耐孔食性を劣化させる。このため、O含有量を0.010%以下とする必要がある。しかし、O含有量を極端に低減することは精錬費用の大幅な上昇につながる。そこで、O含有量は0.001%以上が好ましい。また、好ましいO含有量は、0.001〜0.008%の範囲である。
Nb:0.005%以下
Nbは、耐食性を向上させる目的で添加される場合がある。しかし、NbがNb炭化物として析出すると、耐孔食性が劣化する。このため、Nb含有量を極力減らす必要がある。しかしながら、ステンレス鋼はスクラップを原料とすることが多く不可避的にNbを含有してしまう。そこで、Nb含有量を、十分な耐孔食性を確保可能な0.005%以下に限定した。
以上が本発明の基本成分組成で、残部Feおよび不可避的不純物である。
続いて、本発明の製造方法について説明する。以下の説明において、加熱温度、圧延終了温度、冷却停止温度などの温度は厚鋼板の平均温度とする。平均温度は、スラブもしくは厚鋼板の表面温度より、板厚、熱伝導率のパラメータを考慮して、計算により求めたものとする。
本発明の製造方法は、加熱工程と、熱間圧延工程と、冷却工程と、を有する。以下、各工程について説明する。
加熱工程
加熱工程とは、上記成分組成を有する鋼素材を、1100〜1250℃に加熱する工程である。
加熱温度が1100℃未満であると、溶製過程で生成・析出した炭化物や金属間化合物が溶け残り、耐孔食性が劣化する。このため、加熱温度を1100℃以上とした。また、加熱温度が1250℃を超えて加熱を行うと、操業負荷が大きく、また、異常に生成する酸化スケールにより鋼板表面疵や模様が生じる。このため、加熱温度は1100〜1250℃の範囲とした。好ましくは、1150〜1200℃の範囲である。
なお、上記鋼素材の製造方法は特に限定されない。例えば、上述した成分組成を有する鋼を、転炉、電気炉等の溶製手段で常法により溶製し、連続鋳造法または造塊〜分塊法で常法によりスラブ等の鋼素材とする方法が挙げられる。溶製方法、鋳造方法については上記した方法に限定されるものではない。
熱間圧延工程
熱間圧延工程とは、上記加熱工程で加熱された鋼素材を、圧延終了温度が800〜900℃、累積圧下率が30%以上の条件で熱間圧延する工程である。
圧延終了温度が低温になるほど、強度が向上する。一方、圧延終了温度が低すぎると、耐孔食性の劣化が生じる。そこで、圧延終了温度は800〜900℃の範囲とする。
本発明において、約950℃未満の未再結晶域での圧延による転位強化効果は、強度を向上させるために重要である。累積圧下率が30%未満であると、所定の強度が得られないため、本発明では30%以上とした。但し、未再結晶域の低温域では熱間変形抵抗が高いため、累積圧下率を大きくとると操業負荷に繋がる。このため、好ましい累積圧下率は、30〜70%の範囲である。
冷却工程
冷却工程とは、熱間圧延工程で得られた熱延板を、冷却停止温度が500℃以下、冷却速度が3℃/s以上の条件で冷却する工程である。
上記成分組成では、熱延板が500を超え900℃の範囲(析出温度範囲)に長時間保持されると、熱延板にCr炭化物が析出し、熱延板の耐孔食性が劣化する。そこで、冷却停止温度を500℃以下にする必要がある。冷却方法は特に限定されないが、上記析出温度範囲においては水冷などの手法で加速冷却することが望ましい。具体的には、冷却速度を3℃/s以上とすることで、その析出を低減することができる。
厚鋼板
以上の方法で製造された厚鋼板は、強度、硬度、耐孔食性のいずれの点においても優れるため、水門やダム等のレール材等の用途に好ましく用いることができる。本発明において、厚鋼板の厚みは10〜60mmである。
なお、強度を高めることで、硬度を高めることができる。
表1に示す成分組成の鋼を連続鋳造法により板厚180mmのスラブとし、板厚30mmの厚鋼板を製造した。表2に製造条件を示す。
製造した厚鋼板の機械的性質を測定した。引張強度、耐力は、JIS Z2241で定められている4号試験片を圧延方向に直角方向で板厚1/2t位置で2本採取し、その平均値で評価した。なお、tは厚鋼板の厚みを意味する。
引張強度:690MPa以上850MPa以下、耐力:500MPa以上のものを良好とした。
製造した厚鋼板の硬度の測定は、JIS Z2243で定められているブリネル硬さ試験で行った。硬度の測定条件は、圧子直径:10mm、試験力:3ton、試験力保持時間:15秒とした。また、厚鋼板表面から板厚深さ2mmまでを研削した面でブリネル硬さ試験を行った。硬度はHBWで210ポイント以上を良好とした。
耐孔食性は、JIS G0578で定められている、塩化第二鉄腐食試験方法−試験方法(A)で評価した。試験温度は35℃とし、6%塩化第二鉄溶液に連続24時間連続浸漬した後、付着している腐食生成物を除去し、洗浄・乾燥後に質量を測り、この洗浄・乾燥後質量と洗浄・乾燥前質量から得られた腐食減量から腐食速度を算出して、評価を行った。腐食速度が5.0g/m・h以下であれば耐孔食性が優れていると判断した。
引張強度、耐力、ブリネル硬さ(硬度)、塩化第二鉄腐食試験による耐孔食性を達成すれば、高強度、高耐力、高硬度、優れた耐孔食性であり、溶体化処理を行ったSUS304N2を超える性能を有しているといえる。
表3に表1の発明例の鋼No.A1の鋼を表2の種々の製造条件で製造した厚鋼板の機械的性質と腐食試験結果を示す。表4に、表2の発明例のa1条件で、表1の各鋼種から製造した厚鋼板の機械的性質と腐食試験結果を示す。実施例No.1〜6(表3)と実施例No.13〜15(表4)は本発明の目標を満足する機械的性質と耐孔食性を有していた。
Figure 0006176208
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Claims (1)

  1. 質量%で、C:0.030〜0.080%、Si:0.20〜1.00%、Mn:0.20〜1.30%、P:0.045%以下、S:0.020%以下、Ni:7.00〜10.50%、Cr:18.00〜20.00%、N:0.10〜0.20%、O:0.010%以下、Nb:0.005%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、1100〜1250℃に加熱する加熱工程と、
    前記加熱工程で加熱された鋼素材を、圧延終了温度が800〜900℃、未再結晶温度域での累積圧下率が30%以上の条件で熱間圧延する熱間圧延工程と、
    前記熱間圧延工程で得られた熱延板を、冷却停止温度が500℃以下、冷却速度が3℃/s以上の条件で冷却する冷却工程と、を有することを特徴とする、引張強度:690MPa以上850MPa以下、耐力:500MPa以上、硬度がHBWで210ポイント以上、35℃の6%塩化第二鉄溶液に24時間連続浸漬後の腐食速度が5.0g/m ・h以下である高強度オーステナイト系ステンレス厚鋼板の製造方法。
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