JP6176075B2 - 電子写真感光体用保護シート - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真感光体用保護シート(以下、感光体用保護シートともいう)に関する。具体的には、本発明は、電子写真方式のプリンタ、複写機、ファクシミリなどに搭載される電子写真感光体の保護シートであって、感光体の表面に傷をつけにくい電子写真感光体用保護シートに関する。
レーザープリンタ、LEDプリンタ、普通紙複写機などの電子写真装置には、感光体が搭載されており、このような感光体は導電性基体に光導電性物質を含む感光層を備えている。感光体は、所定期間使用すると摩耗等により劣化することが知られており、摩耗した感光体を使用すると画像の低下が生じる。そこで、電子写真装置においては、劣化した感光体を新しい感光体に交換する作業が必要となる。
しかし、感光層の層厚は数十ミクロン程度と薄く、非常に傷付き易い材料から構成されているため、電子写真装置に感光体を搭載する際、または取り換え作業中などにおいて打痕・傷跡・指紋などの損傷を受けることが多い。さらに、近年は、セレン系の無機化合物に替わって、有機系光導電性物質と層形成用有機樹脂とを主成分とする感光層が一般的になってきているため、感光層はより損傷等のダメージを受け易くなっている。このため、感光層が損傷等のダメージを受けないように、使用前の感光体を保護シートで覆うことが提案されている。
例えば、特許文献1には、感光体を被覆する感光体用保護シートが開示されている。ここでは、感光体用保護シートは感光層の露出を回避する働きをする。このように、感光層を保護シートで覆うことで、感光層に傷がついたり、指紋等の汚染物質が付着することを抑制している。
特開2001−183958号公報
上述したように、感光層を保護シートで覆うことにより、感光層の損傷をある程度は抑制することができる。しかしながら、従来の感光体用保護シートを、感光層と接触する状態で積層した場合、輸送時等に振動が与えられることにより、感光層と感光体用保護シートが擦れ、微細な傷が付くという問題があった。
また、従来の感光体用保護シートを、感光層と接触する状態で高温・高湿度環境下に長時間置いた場合、感光層に悪影響を与える場合があり、画像の乱れ等が生じる原因となるため問題となっていた。
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、感光層の上に感光体用保護シートを直接積層した場合であっても、感光層に傷を付けにくい感光体用保護シートを提供することを目的として検討を進めた。
さらに、本発明者らは、高温・高湿度環境下においても、感光層に悪影響を与えることのない感光体用保護シートを提供することを目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、紙基材と、紙基材の少なくとも一方の面にアクリル系樹脂を有する保護シートを形成することにより、感光層に傷を付けることのない感光体用保護シートが得られることを見出した。
通常、感光層の傷付きを抑制することを目的とした場合、保護シートが感光層と接触する面に、柔軟性に富んだ層を形成することが考えられる。しかし、本発明者らは、単に柔軟性に富んだ層を形成するだけでは、感光層の傷付きを抑制することができないことを発見した。そして、驚くべきことに、アクリル系樹脂を含有させることにより、感光層の傷付きが効果的に抑制されることを見出した。さらに、本発明者らは、このような感光体用保護シートは、高温・高湿度環境下においても、感光層に悪影響を与えることがないことも見出し、本発明を完成するに至った。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1]紙基材と、前記紙基材の少なくとも一方の面にアクリル系樹脂を有し、前記アクリル系樹脂の固形分量は、0.1〜20g/m2であることを特徴とする電子写真感光体用保護シート。
[2]前記アクリル系樹脂のガラス転移温度が−50〜5℃であることを特徴とする[1]に記載の電子写真感光体用保護シート。
[3]前記アクリル系樹脂のガラス転移温度が−40〜−5℃であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の電子写真感光体用保護シート。
[4]前記アクリル系樹脂は、エチレン性不飽和カルボン酸含有モノマー由来の繰り返し単位を含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の電子写真感光体用保護シート。
[5]前記アクリル系樹脂は、(a)エチレン性不飽和カルボン酸含有モノマー由来の繰り返し単位と、(b)(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー由来の繰り返し単位を含み、さらに(a)及び(b)のモノマーと共重合可能なモノマー由来の繰り返し単位を含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載の電子写真感光体用保護シート。
[6]前記紙基材は導電填料を含むことを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載の電子写真感光体用保護シート。
[7]前記導電填料はカーボンブラックであることを特徴とする[6]に記載の電子写真感光体用保護シート。
[8]前記カーボンブラックは、紙基材の固形分に対して2〜30質量%含まれることを特徴とする[8]に記載の電子写真感光体用保護シート。
[9]表面電気抵抗が1×108Ω/□以下であることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか1項に記載の電子写真感光体用保護シート。
[10]黒色の分光濃度が1.20以上であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか1項に記載の電子写真感光体用保護シート。
[11]前記保護シートは、積層されるシート状電子写真感光体の合紙として使用されることを特徴とする[1]〜[10]のいずれか1項に記載の電子写真感光体用保護シート。
[12]前記紙基材の片方の面のみにアクリル系樹脂を有することを特徴とする[1]〜[11]のいずれか1項に記載の電子写真感光体用保護シート。
[13]前記アクリル系樹脂は、抄紙機のサイズプレスパートにて塗布されることを特徴とする[1]〜[12]のいずれか1項に記載の電子写真感光体用保護シートの製造方法。
本発明によれば、感光層に傷を付けにくい感光体用保護シートを得ることができる。このような、感光体用保護シートは、感光層上に直接積層した場合であっても、感光層に傷を付けることがない。
また、本発明によれば、感光体用保護シートは、高温・高湿度環境下においても、感光層に悪影響を与えることがない。このため、電子写真装置において、画像等が乱れることを抑制することができる。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸の両方を含む意味で使われる。
(電子写真感光体用保護シート)
本発明は、紙基材と、該紙基材の少なくとも一方の面にアクリル系樹脂を有する電子写真感光体用保護シートに関する。本発明において、アクリル系樹脂の固形分量は、0.1〜20g/m2である。アクリル系樹脂は、紙基材の少なくとも一方に含有されていればよく、好ましくは、紙基材の片方の面のみに含有されていることが好ましい。
なお、ここで、アクリル系樹脂は、紙基材の表面に隣接するように層状に設けられていてもよく、少なくとも一部のアクリル系樹脂が紙基材に含浸されるように設けられていてもよい。
アクリル系樹脂は、紙基材の片方の面のみに含有されていることが好ましい。片面のみにアクリル系樹脂を有する感光体用保護シートは、両面にアクリル系樹脂を有する感光体用保護シートに比べ、断裁品積層体から最上部の一枚を引き出す際の荷重が軽いという特徴を有する。このため、平判の電子写真用感光体との重ね合わせ作業において、感光体用保護シートの重送トラブルを来たさず、良好な作業性を保持できる。
本発明の電子写真感光体用保護シートを適用する電子写真感光体は、円筒状であってもよく、シート状であってもよい。電子写真感光体が円筒状である場合、電子写真感光体用保護シートは円筒状の電子写真感光体の外周を覆うように巻きつけられる。また、電子写真感光体がシート状である場合は、電子写真感光体用保護シートは積層されるシート状電子写真感光体の合紙(間紙)として使用される。
本発明の電子写真感光体用保護シートの表面電気抵抗は、1×108Ω/□以下であることが好ましく、1×107Ω/□以下であることがより好ましく、1×106Ω/□以下であることがさらに好ましい。因みに、表面電気抵抗が1×108Ω/□より高い場合、静電気が生じることで埃が感光体用保護シートに付着しやすい傾向となる。その埃が硬い物質の場合、電子写真用感光体に傷をつけやすい傾向となる。また、電子写真感光体用保護シートは全体として遮光性を有していることが好ましい。
本発明の電子写真感光体用保護シートの黒色の分光濃度は、1.20以上であることが好ましく、1.30以上であることがより好ましく、1.40以上であることがさらに好ましい。すなわち、本発明の電子写真感光体用保護シートを分光濃度計で測定した際の黒濃度は、上記範囲であることが好ましい。黒色の分光濃度を上記範囲とすることにより、電子写真感光体用保護シートの遮光性を十分に高めることができる。分光濃度が1.20より低い場合、電子写真用感光体保護シートは十分に光を遮光しない場合があり、電子写真用感光体の感光特性を損ねるおそれがある。
(アクリル系樹脂)
本発明の電子写真感光体用保護シートでは、アクリル系樹脂の固形分量は、0.1〜20g/m2であればよく、0.2〜18g/m2であることが好ましく、0.3〜15g/m2であることがより好ましく、0.5〜10g/m2であることがよりさらに好ましい。アクリル系樹脂の固形分量を上記範囲内とすることにより、電子写真感光体の感光層と直接重ね合わせた場合であっても、感光層の表面に傷が付くことを防止することができる。なお、上記のアクリル系樹脂の固形分量は、電子写真感光体用保護シートが含有するアクリル系樹脂の合計の固形分量であり、紙基材が両面にアクリル系樹脂を有する場合は、両面に存在するアクリル系樹脂の合計の固形分量が上記範囲内であることが好ましい。
なお、アクリル系樹脂を紙基材の片面にのみ設ける場合は、アクリル系樹脂の固形分量は、0.05〜10g/m2であればよく、0.1〜9g/m2であること好ましく、0.15〜7.5g/m2であることがより好ましく、0.25〜5g/m2であることがよりさらに好ましい。
本発明で用いられるアクリル系樹脂のガラス転移温度は、−50〜5℃であることが好ましく、−45〜0℃であることがより好ましく、−40〜−5℃であることがさらに好ましい。アクリル系樹脂のガラス転移温度を上記範囲内とすることにより、電子写真感光体用保護シートを感光層に直接積層した場合であっても感光層に傷が付くことを効果的に抑制することができる。ガラス転移温度が−50℃以上の場合、感光体用保護シート表面に粘着性が発現することがなく、感光体を汚染することがなく好ましい。また、ガラス転移温度が5℃未満の場合は、傷発生防止効果が十分得ることができる。
本発明でいうアクリル系樹脂は、(a)エチレン性不飽和カルボン酸含有モノマー由来の繰り返し単位を必須成分として含むことが好ましい。さらに、アクリル系樹脂は、(a)エチレン性不飽和カルボン酸含有モノマー由来の繰り返し単位と、(b)(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー由来の繰り返し単位を含み、さらに(a)及び(b)のモノマーと共重合可能なモノマー由来の繰り返し単位を含む共重合体であることが好ましい。
本発明において用いられる(a)エチレン性不飽和カルボン酸含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、モノアルキルマレイン酸、モノアルキルフマル酸、モノアルキルイタコン酸等が挙げられ、これらのうちから少なくとも1種を用いることができる。
また、本発明において用いられる(b)(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられ、これらのうちから少なくとも1種を用いることができる。
本発明において用いられる(a)及び(b)のモノマーと共重合可能なモノマーとしては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリルレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N'−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビニルスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、酸ホスホキシエチル(メタ)アクリレートエタノールアミンハーフ塩、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンスチレン化フェニル硫酸ナトリウム、グリセリンモノアリルエーテルモノスルホコハク酸ナトリウム、2−スルホエチル(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリルアミドステアリン酸ナトリウム、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、(メタ)アクリロオキシアルキルプロペナール、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等が挙げられ、これらのうちから少なくとも1種を用いることができる。
本発明において用いられるアクリル系樹脂は公知の乳化重合法によって得ることができる。例えば、所定の反応容器に上記の各種モノマー類、乳化剤および水を仕込み、ラジカル重合開始剤を加え、攪拌下、加温することにより得られる。
ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、t−ブチルハイドロオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合速度の促進や低温反応を望む場合には、重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸、ホルムアルデヒドスルホオキシレート塩等の還元剤を前記ラジカル重合開始剤と組合せて(レドックス系重合開始剤)用いることができる。
なお、ラジカル重合開始剤の添加率は、モノマー成分100質量部に対して、0.02〜3質量部であることが好ましく、0.05〜1質量部であることがより好ましい。
使用する乳化剤としては、特に限定はなく、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、反応性乳化剤が挙げられる。
アニオン性乳化剤としては、オレイン酸カリウム等の脂肪酸金属塩、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルリン酸エステル等が挙げられる。
ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
反応性乳化剤としては、種々の分子量(EO付加モル数の異なる)のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸アンモニウム、ポリエチレングリコールのモノマレイン酸エステルおよびその誘導体、(メタ)アクリロイルポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル等が挙げられる。
乳化剤の添加率は、モノマー成分100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.2〜5質量部であることがより好ましい。乳化剤の添加率を上記範囲内とすることにより、凝固物を生じることなく、適度な平均粒子径のアクリル系樹脂エマルションが得られる。
本発明において用いられるアクリル系樹脂は上述したように水媒体中で乳化重合法により得られるが、アクリル系樹脂エマルションの固形分濃度を30〜75質量%、好ましくは40〜65質量%として行うことができる。重合反応は単一重合開始の場合では通常40〜95℃、好ましくは60〜90℃程度の反応温度で、1〜10時間、好ましくは4〜8時間程度行えばよい。また、レドックス系重合開始剤の場合では反応温度はより低く、通常5〜90℃、好ましくは20〜70℃である。モノマーの添加方法としては、一括添加法、分割添加法、連続添加法等で、モノマータップ法、モノマープレ乳化タップ法等の方法で行うことができる。好ましくは連続添加法で、モノマープレ乳化タップ法である。
本発明において用いることができるアクリル系樹脂エマルションは、平均粒子径が0.01〜1.0μmであることが好ましい。平均粒子径がこの範囲にあれば水分散性が良好となる。また、平均粒子径を上記範囲内とすることにより、塗工時の機械的安定性を高めることができ、所望の塗工量となるように調節が容易となり、塗工ムラが発生することも抑制することができる。なお、平均粒子径については、乳化剤や重合開始剤の種類および添加量、添加方法、攪拌条件等を適宜設定することにより容易に調整することができる。ここで、エマルションの平均粒子径は光散乱法粒子径分布測定機(HORIBA社製、商品名:LB−550)で測定したものである。
本発明において用いられるアクリル系樹脂はモノマー組成が異なる複数のモノマー成分の個々が重合する過程で一体化してなる樹脂複合体、すなわち、モノマーが異なる複数のモノマー成分を各段で用いた多段の乳化重合により容易に得られるものであり、いわゆるコアシェル型のエマルションであることが好ましい(以下コア部を構成する重合体をコア部、シェル部を構成する重合体をシェル部と略す場合がある)。さらに好ましくは、該コアシェル型のエマルションはそのコア部には低いガラス転移温度(Tg)の樹脂を配置することが可能で、それにより感光層の傷付きを防止する効果が高められる。また、シェル部に高いTgの水溶性樹脂を配置することにより硬度を高くすることが可能になり、感光体汚染防止効果が向上する。このようなコアシェル型のエマルションは以下のようにして容易に得ることができる。
アクリル系樹脂をコアシェル型エマルションとする場合、モノマー組成の異なる複数のモノマー成分を各段で用いた多段の乳化重合工程を経て製造する。ここで、多段の乳化重合とは、第1段階に用いたモノマー成分の80質量%以上、好ましくは90質量%以上が重合してから、新たにモノマー成分を加えて次の段(第2段階以降)の重合を行う重合方法をいう。乳化重合の段数は、特に限定されないが、製造工程を簡略化するためには、2段または3段が好ましい。
なお、本発明でいうガラス転移温度とは、例えば、妹尾学・栗田公夫・矢野彰一郎・澤口孝志著『基礎高分子科学』(共立出版株式会社)に記載されているような非晶領域における高分子鎖のセグメントがミクロブラウン運動を開始する温度で、共重合体の場合は、同書131〜132頁に記載されているFoxの式により計算されるガラス転移温度である。
本発明のアクリル系樹脂は、紙基材の上に塗布されることが好ましく、アクリル系樹脂の塗液には該アクリル系樹脂エマルションの他に、さらにバインダー、顔料などを含んでもよい。また、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、着色剤等の通常用いられている各種助剤が適宜使用できる。
本発明に使用できるバインダーとしては、カゼイン、澱粉、変性澱粉、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子、またはポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、カルボキシメチルセルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の水分散液が使用できる。
本発明に使用できる顔料としてはカオリン、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、シリカ、アルミノ珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、合成マイカ、二酸化チタン、酸化亜鉛などの無機顔料、さらにはポリイソプレン、ポリネオプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン等のポリアルケン類、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、メチルビニルエーテル等のビニル系モノマーの重合体や共重合体類、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂等の各種の密実型、中空型、あるいは貫通孔型粒子等の有機顔料が挙げられ、上記の顔料の1種又は2種以上を使用することができる。
本発明では、アクリル系樹脂は、紙基材の上に塗布されることが好ましい。アクリル系樹脂の塗布方法は、特に限定されるものではないが、例えばブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、ブラシコーター、ツーロール、並びにメータリングブレード式のサイズプレスコーター、ビルブレードコーター、ショートドウェルコーター、ゲートロールコーター等の塗工装置を適宜に用いることができる。中でも、コストや、生産効率の観点からオンマシン方式での塗布が好ましく、サイズプレスコーターでの塗布が感光体用保護シートの表面改質には最も好ましい。すなわち、アクリル系樹脂は、抄紙機のサイズプレスパートにて塗布されることが好ましい。
抄紙機のサイズプレスパートとは、通常、抄紙した紙の表面に機能性を付与するための表面処理をする工程をいう。例えば、表面強度を増強させたり、インキの滲みを抑制するための処理を行うことができる。抄紙機においては、抄紙された紙をドライヤパートである程度乾燥させ、サイズプレスを行う。その後、再度のドライヤパートにて、乾燥処理を行う。
サイズプレスパートにおけるサイズプレス処理方法は、ポンド型サイズプレスと転写型サイズプレスに大別することができる。ポンド型サイズプレスは、抄紙されたシート基材が液溜まりの中を通過する方法であり、この方法ではサイズ液が紙基材の内部に浸透しやすくなる。一方、転写型サイズプレスは、ロール表面に形成された塗液膜がシート基材に転写される方法であり、サイズ液は紙基材の表面に留まることができる。本発明では、いずれのサイズプレスの処理方法を採用することができる。
本発明では、アクリル系樹脂を片面のみ塗工してもよい。この場合、反対面にはカール矯正やその他の機能を付与するために、水若しくは他の材料を塗布することも可能である。なお、アクリル系樹脂を片面のみに塗工する方が、感光体保護シートの積層体から1枚の感光体保護シートを引き出す際の荷重を小さくすることができる。また、平判のシート上に電子写真感光体と重ね合わせる作業においても、感光体保護シートの重送トラブルをきたさず、良好な作業性を保持することができる。
本発明では、上述した処理に加え、平滑化処理を施すことも可能である。例えば、通常のスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトニップカレンダー等の平滑化処理を施すことができる。平滑化処理はオンマシンやオフマシンで適宜施されてもよく、加圧装置の形態、加圧ニップの数、加温等も通常の平滑化処理装置に応じて適宜調節される。
(紙基材)
本発明の電子写真感光体用保護シートの紙基材は、パルプ成分から構成され、紙基材を構成するパルプについては、その製法及び種類等に特に限定はない。例えば、広葉樹及び/又は針葉樹のKPのような化学パルプ、SGP、RGP、BCTMP及びCTMP等の機械パルプ、脱墨パルプのような古紙パルプ、並びにケナフ、竹、藁、麻等のような非木材パルプであってもよく、またポリアミド繊維、ポリエステル繊維等の有機合成繊維、再生繊維、例えばポリノジック繊維並びにガラス繊維、セラミック繊維、カーボン繊維等の無機質繊維も混用することができる。なお、紙基材に用いるパルプとして、ECFパルプ、TCFパルプ等の塩素フリーパルプを用いることもできる。
本発明では、紙基材は導電填料を含むことが好ましい。導電填料の中でも傷付き防止効果、遮光性、コストの面で、カーボンブラックを用いることが特に好ましい。
カーボンブラックの添加率は、乾燥状態のパルプ成分(固形分)100質量%に対して、2〜30質量%であることがより好ましく、2〜20質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることがよりさらに好ましい。カーボンブラックの添加率を上記範囲内とすることにより、紙基材は十分な遮光性に加えて、導電性を備えることができる。また、カーボンブラックの添加率を上記範囲内とすることにより、感光層の傷付きや汚染を抑制することができる。
本発明で用いるカーボンブラックの平均粒子径は、20〜300nmであることが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。カーボンブラックの平均粒子径を上記範囲内とすることにより、紙基材中における分散性を高めることができ、かつ、感光層の傷付きを抑制することができる。
本発明では、必要に応じてその他の填料が配合されていてもよい。填料としては、一般に上質紙に用いられる各種の顔料を用いることができ、例えばカオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、タルク、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト及びスメクタイト等の鉱物質顔料、並びにポリスチレン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂及び塩化ビニリデン系樹脂の微小中空粒子、密実型粒子および貫通孔型粒子などの有機顔料が挙げられる。
本発明では、内添サイズ剤を使用することもできる。内添サイズ剤としては、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸系の中性サイズ剤等のサイズ剤が使用でき、硫酸バンド、カチオン化デンプン等、適当なサイズ剤と定着剤を組み合わせて使用する。
その他、内添バインダーや紙力増強剤を併用することもできる。バインダーとしては、例えば各種デンプン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等の水溶性高分子が挙げられる。また、紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド等が挙げられる。
さらに、本発明では湿潤紙力増強剤も併用可能である。湿潤紙力増強剤としては、例えばポリアミド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド−ポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂等が挙げられる。なお、紙基材の抄紙時に、その紙料中に、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、従来から使用されている各種のアニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留向上剤、濾水性向上剤等の各種抄紙用内添助剤を必要に応じて適宜選択して使用することができる。さらに染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添助剤も必要に応じて適宜添加することができる。
紙基材の抄紙方法については特に限定はなく、例えば抄紙pHが4.5付近で行われる酸性抄紙法、炭酸カルシウム等のアルカリ性填料を主成分として含み、抄紙pH約6の弱酸性から抄紙pH約9の弱アルカリ性で行われる中性抄紙法等の全ての抄紙方法を適用することができ、抄紙機も長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、ヤンキー抄紙機等を適宜使用することができる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<実施例1>
NBKP(CSFフリーネス330ml)60質量部、LBKP(CSFフリーネス330ml)40質量部のパルプスラリーに、内添サイズ剤としてロジン系サイズ剤(商品名:サイズパインN−111−50、荒川化学工業社製)の50質量%品2.0質量部、硫酸バンドの8.0質量%品5.0質量部、両性ポリアクリルアミド系紙力増強剤(商品名:ポリストロン1250、荒川化学工業社製)の20質量%品1.0質量部、カーボンブラック(商品名:OKHA−02、テルナイト社製)の9.5質量%品70質量部を添加して、紙基材用の紙料を調製した。この紙料を長網抄紙機に供して抄紙し、得られた湿紙にアクリル系樹脂(ポリゾールAM−278、ガラス転移温度:−36℃、昭和電工社製)の5質量%水溶液をサイズプレス装置で乾燥後の塗布量が両面で1.5g/m2となるように塗布乾燥して坪量69.0g/m2の感光体用保護シートを得た。
<実施例2>
実施例1と同様の湿紙にアクリル系樹脂(ポリゾールAM−278、ガラス転移温度:−36℃、昭和電工社製)の10質量%水溶液をサイズプレス装置で乾燥後の塗布量が両面で4.0g/m2となるように塗布乾燥した以外は、実施例1と同様にして坪量71.5g/m2の感光体用保護シートを得た。
<実施例3>
実施例1と同様の湿紙にアクリル系樹脂(ポリゾールAM−290、ガラス転移温度:−10℃、昭和電工社製)の5質量%水溶液をサイズプレス装置で乾燥後の塗布量が両面で1.5g/m2となるように塗布乾燥した以外は、実施例1と同様にして坪量69.0g/m2の感光体用保護シートを得た。
<実施例4>
実施例1と同様の湿紙にアクリル系樹脂(ポリゾールAM−290、ガラス転移温度:−10℃、昭和電工社製)の10質量%水溶液をサイズプレス装置で乾燥後の塗布量が両面で4.0g/m2となるように塗布乾燥した以外は、実施例1と同様にして坪量71.5g/m2の感光体用保護シートを得た。
<実施例5>
実施例1と同様の湿紙の片面にアクリル系樹脂(ポリゾールAM−290、ガラス転移温度:−10℃、昭和電工社製)の10質量%水溶液をサイズプレス装置で乾燥後の塗布量が2.0g/m2となるように塗布し、且つ反対面には水を塗布乾燥した以外は、実施例1と同様にして坪量69.5g/m2の感光体用保護シートを得た。
<実施例6>
実施例1と同様の湿紙にアクリル系樹脂(ポリゾールAM−290、ガラス転移温度:−10℃、昭和電工社製)の15質量%水溶液をサイズプレス装置で乾燥後の塗布量が両面で6.0g/m2となるように塗布乾燥した以外は、実施例1と同様にして坪量73.5g/m2の感光体用保護シートを得た。
<実施例7>
実施例1と同様の湿紙にアクリル系樹脂(ポリゾールAM−290、ガラス転移温度:−10℃、昭和電工社製)の20質量%水溶液をサイズプレス装置で乾燥後の塗布量が両面で8.0g/m2となるように塗布乾燥した以外は、実施例1と同様にして坪量75.5g/m2の感光体用保護シートを得た。
<実施例8>
実施例1と同様の湿紙にアクリル系樹脂(ポリゾールAM−2250N、ガラス転移温度:−4℃、昭和電工社製)の5質量%水溶液をサイズプレス装置で乾燥後の塗布量が両面で1.5g/m2となるように塗布乾燥した以外は、実施例1と同様にして坪量69.0g/m2の感光体用保護シートを得た。
<実施例9>
実施例1と同様の湿紙にアクリル系樹脂(ポリゾールAM−2250N、ガラス転移温度:−4℃、昭和電工社製)の10質量%水溶液をサイズプレス装置で乾燥後の塗布量が両面で4.0g/m2となるように塗布乾燥した以外は、実施例1と同様にして坪量71.5g/m2の感光体用保護シートを得た。
<実施例10>
実施例1と同様の湿紙にアクリル系樹脂(ヨドゾールAE−41、ガラス転移温度:5℃、ヘンケルジャパン社製)の5質量%水溶液をサイズプレス装置で乾燥後の塗布量が両面で1.5g/m2となるように塗布乾燥した以外は、実施例1と同様にして坪量69.0g/m2の感光体用保護シートを得た。
<実施例11>
実施例1と同様の湿紙にアクリル系樹脂(ヨドゾールAE−41、ガラス転移温度:5℃、ヘンケルジャパン社製)の10質量%水溶液をサイズプレス装置で乾燥後の塗布量が両面で4.0g/m2となるように塗布乾燥した以外は、実施例1と同様にして坪量71.5g/m2の感光体用保護シートを得た。
<実施例12>
実施例1と同様の湿紙にアクリル系樹脂(ポリゾールAM−290、ガラス転移温度:−10℃、昭和電工社製)の1.5質量%水溶液をサイズプレス装置で乾燥後の塗布量が両面で0.45g/m2となるように塗布乾燥した以外は、実施例1と同様にして坪量68.0g/m2の感光体用保護シートを得た。
<実施例13>
実施例1と同様の湿紙にアクリル系樹脂(ポリゾールAM−290、ガラス転移温度:−10℃、昭和電工社製)の40.0質量%水溶液をサイズプレス装置で乾燥後の塗布量が両面で12.0g/m2となるように塗布乾燥した以外は、実施例1と同様にして坪量79.5g/m2の感光体用保護シートを得た。
<実施例14>
実施例1と同様の湿紙にアクリル系樹脂(ポリゾールAM−290、ガラス転移温度:−10℃、昭和電工社製)の10.0質量%水溶液をバーコーターを用いて片面ずつ塗布を行った。乾燥後の塗布量が両面で1.2g/m2となるようにして坪量68.7g/m2の感光体用保護シートを得た。
<実施例15>
実施例1と同様の湿紙にアクリル系樹脂(ポリゾールAM−290、ガラス転移温度:−10℃、昭和電工社製)の10.0質量%水溶液をバーコーターを用いて片面ずつ塗布を行った。乾燥後の塗布量が両面で0.6g/m2となるようにして坪量68.1g/m2の感光体用保護シートを得た。
<実施例16>
NBKP(CSFフリーネス330ml)60質量部、LBKP(CSFフリーネス330ml)40質量部のパルプスラリーに、内添サイズ剤としてロジン系サイズ剤(商品名:サイズパインN−111−50、荒川化学工業社製)の50質量%品2.0質量部、硫酸バンドの8.0質量%品5.0質量部、両性ポリアクリルアミド系紙力増強剤(商品名:ポリストロン1250、荒川化学工業社製)の20質量%品1.0質量部、カーボンブラック(商品名:OKHA−02、テルナイト社製)の9.5質量%品350質量部を添加して、紙基材用の紙料を調製した。この紙料を長網抄紙機に供して抄紙し、得られた湿紙にアクリル系樹脂(ポリゾールAM−290、ガラス転移温度:−10℃、昭和電工社製)の5質量%水溶液をサイズプレス装置で乾燥後の塗布量が両面で1.5g/m2となるように塗布乾燥して坪量69.0g/m2の感光体用保護シートを得た。
<実施例17>
NBKP(CSFフリーネス330ml)60質量部、LBKP(CSFフリーネス330ml)40質量部のパルプスラリーに、内添サイズ剤としてロジン系サイズ剤(商品名:サイズパインN−111−50、荒川化学工業社製)の50質量%品2.0質量部、硫酸バンドの8.0質量%品5.0質量部、両性ポリアクリルアミド系紙力増強剤(商品名:ポリストロン1250、荒川化学工業社製)の20質量%品1.0質量部、カーボンブラック(商品名:OKHA−02、テルナイト社製)の9.5質量%品10質量部を添加して、紙基材用の紙料を調製した。この紙料を長網抄紙機に供して抄紙し、得られた湿紙にアクリル系樹脂(ポリゾールAM−290、ガラス転移温度:−10℃、昭和電工社製)の5質量%水溶液をサイズプレス装置で乾燥後の塗布量が両面で1.5g/m2となるように塗布乾燥して坪量69.0g/m2の感光体用保護シートを得た。
<比較例1>
NBKP(CSFフリーネス330ml)60質量部、LBKP(CSFフリーネス330ml)40質量部のパルプスラリーに、内添サイズ剤としてロジン系サイズ剤(商品名:サイズパインN−111−50、荒川化学工業社製)の50質量%品2.0質量部、硫酸バンドの8.0質量%品5.0質量部、両性ポリアクリルアミド系紙力増強剤(商品名:ポリストロン1250、荒川化学工業社製)の20質量%品1.0質量部、カーボンブラック(商品名:OKHA−02、テルナイト社製)の9.5質量%品70質量部を添加して、紙基材用の紙料を調製した。この紙料を長網抄紙機に供して抄紙し、得られた湿紙を乾燥させ坪量67.5g/m2の感光体用保護シートを得た。
<比較例2>
実施例1と同様の湿紙にスチレン−ブタジエンラバー(POT8181、ガラス転移温度:2℃、日本ゼオン社製)の10質量%水溶液をサイズプレス装置で乾燥後の塗布量が両面で4.0g/m2となるように塗布乾燥した以外は、実施例1と同様にして坪量71.5g/m2の感光体用保護シートを得た。
<比較例3>
実施例1と同様の湿紙にスチレン−ブタジエンラバー(POT8182、ガラス転移温度:−10℃、日本ゼオン社製)の10質量%水溶液をサイズプレス装置で乾燥後の塗布量が両面で4.0g/m2となるように塗布乾燥した以外は、実施例1と同様にして坪量71.5g/m2の感光体用保護シートを得た。
<比較例4>
実施例1と同様の湿紙にスチレン−ブタジエンラバー(X300B、ガラス転移温度:−13℃、JSR社製)の10質量%水溶液をサイズプレス装置で乾燥後の塗布量が両面で4.0g/m2となるように塗布乾燥した以外は、実施例1と同様にして坪量71.5g/m2の感光体用保護シートを得た。
<比較例5>
実施例12で得られた保護シートの表裏にさらにアクリル系樹脂(ポリゾールAM−290、ガラス転移温度:−10℃、昭和電工社製)をバーコーターにて乾燥後の塗布量が片面5g/m2(両面で10g/m2)となるように塗布・乾燥して、アクリル系樹脂の塗布量が両面で合計22g/m2となるようにして坪量89.5g/m2の感光体用保護シートを得た。
(評価)
実施例及び比較例で得られた感光体用保護シートの、黒色の分光濃度、感光体と擦り合わせた際の傷付き度合いと、高温高湿度下での感光体への影響と、表面電気抵抗と、断裁品積層体から最上部の一枚を引き出す時の荷重と、感光体の汚染を、以下の方法で評価した。その結果を表1に示す。
(黒色の分光濃度測定方法)
X−Rite 939 0°/45°ポータブル分光測色計(エックスライト社製)を用いて黒色の分光濃度を測定した。
(傷付き度合いの評価方法)
保護紙を200mm×100mmにカットし、東洋精機製作所製の「サウザランド・ラブテスタ」のサンプル台に固定した。リコー社製の「感光体ユニット2500」より200mm×50mmの感光体フィルムを採集し、質量が1916gのしゅう動子に巻きつけた。このしゅう動子をサウザランド・ラブテスタにセットし、円弧軌道上を一定速度で20往復させ、感光体用保護シートと感光体フィルムを擦り、下記基準で、感光層の傷付き度合いを目視で評価した。
○: 傷が全くつかなかった
△: 僅かに傷付いた
×: 沢山傷がついた
(高温高湿試験)
リコー社製「感光体ユニット2500」に得られた各感光体用保護シートを感光体に接触するように巻きつけ、50℃90%RH環境下に8時間放置した後、23℃50%RH環境下で24時間調湿した。
それぞれの感光体から感光体用保護シートをはずし、電子写真方式複写機(IPSiO SPC210SF、リコー社製)に装填して、CMYK階調ブロックパターン画像を普通紙にコピーして、下記基準で画像の乱れがないか確認した。
○: 画像のみだれがみられない
△: 画像のみだれがややみられる
×: 画像が大きくみだれている
(表面抵抗値)
アドバンテスト社製 ロレスタ−GPを用いて、感光体用保護シートの表面抵抗値(Ω/□)を23℃・50%RHの環境下で測定した。
(積層体より引き出す荷重)
寸法1000mm×1000mmの200枚積み積層体の1番上を地面と水平に引き出した時の最大荷重を、ばねばかりを用いて測定した。
(感光体の汚染)
「傷つき度合の評価方法」で評価した感光体フィルムにカーボンブラックが付着しているかを目視で評価した。
有:付着あり
無:付着なし
Figure 0006176075
表1からわかるように、実施例1〜17では、感光層の傷付きが抑制されており、傷がついた実施例8〜13においてもその度合いは僅かであった。また、高温高湿下での感光体との接触後も感光体への悪影響をきたさない良好な結果であった。一方、比較例1〜5では、感光層に傷が付いており、傷発生抑制効果が得られていないことがわかる。
なお、実施例1〜4と実施例10及び11を比較するに、アクリル系樹脂のガラス転移温度が低い方が傷発生抑制効果高いことがわかる。また、実施例3〜7と実施例12及び13を比較するに、アクリル系樹脂の固形分量が0.5〜10g/m2の範囲でより好ましい傷発生抑制効果が得られていることがわかる。
また、実施例5と、実施例1〜4、6〜15を比較するに、片面のみの塗工の方が、積層体から1枚引き出す時の荷重が小さくなっており、平判のシート上電子写真感光体と重ね合わせる作業においても、感光体保護シートの重送トラブルを来たさず、良好な作業性を保持していた。
また、実施例1〜15と実施例16及び実施例17を比較するに、カーボンブラック量が、紙基材の乾燥状態のパルプ成分(固形分)に対して、2質量%未満のときは分光濃度が低く、やや遮光性に劣ることわかる。一方、30質量%を超えるのときは十分な遮光性が得られているものの、感光体フィルムと保護シートを擦り合わせた際にカーボンブラックが付着し感光体フィルムの汚染が見られる傾向にある。

Claims (12)

  1. 紙基材と、前記紙基材の少なくとも一方の面にアクリル系樹脂を有し、
    前記アクリル系樹脂の固形分量は、0.1〜20g/m2であり、
    前記アクリル系樹脂のガラス転移温度が−50〜5℃であることを特徴とする電子写真感光体用保護シート。
  2. 前記アクリル系樹脂のガラス転移温度が−40〜−5℃であることを特徴とする請求項に記載の電子写真感光体用保護シート。
  3. 前記アクリル系樹脂は、エチレン性不飽和カルボン酸含有モノマー由来の繰り返し単位を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真感光体用保護シート。
  4. 前記アクリル系樹脂は、(a)エチレン性不飽和カルボン酸含有モノマー由来の繰り返し単位と、(b)(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー由来の繰り返し単位を含み、さらに(a)及び(b)のモノマーと共重合可能なモノマー由来の繰り返し単位を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の電子写真感光体用保護シート。
  5. 前記紙基材は導電填料を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の電子写真感光体用保護シート。
  6. 前記導電填料はカーボンブラックであることを特徴とする請求項に記載の電子写真感光体用保護シート。
  7. 前記カーボンブラックは、紙基材の固形分に対して2〜30質量%含まれることを特徴とする請求項に記載の電子写真感光体用保護シート。
  8. 表面電気抵抗が1×108Ω/□以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の電子写真感光体用保護シート。
  9. 黒色の分光濃度が1.20以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の電子写真感光体用保護シート。
  10. 前記保護シートは、積層されるシート状電子写真感光体の合紙として使用されることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の電子写真感光体用保護シート。
  11. 前記紙基材の片方の面のみにアクリル系樹脂を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の電子写真感光体用保護シート。
  12. 前記アクリル系樹脂は、抄紙機のサイズプレスパートにて塗布されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の電子写真感光体用保護シートの製造方法。
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