JP6175358B2 - 重合性基を有するクマリン化合物 - Google Patents
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一方、クマリン(2H−1−ベンゾピラン−2−オン)は、無蛍光性であるが、7位にアミノ基やヒドロキシ基等の電子供与性置換基を導入することにより強い蛍光を発するようになる。このため、7−アミノクマリン誘導体は480〜500nm近辺の蛍光を発する色素として使用され、中でもクマリン6(下式(2a))やクマリン7(下式(2b))は強い蛍光強度を有することから蛍光試薬として使用されてきた。
従って、本発明の目的は、加水分解安定性に優れ、スチレン化合物との共重合成に優れ、水分散性が良好であり、診断用マーカーとして有用な新規のクマリン化合物を提供することにある。
即ち本発明は、下記一般式(1)で表されるクマリン化合物を提供するものである。
また、本発明は、前記重合物を含有する診断用マーカーを提供するものである。
先ず、本発明の前記一般式(1)で表される新規クマリン化合物について説明する。
前記一般式(1)において、R1及びR2はそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基又はクマリン骨格の6位及び8位の炭素と結合して環状構造を形成するプロピレン基を表わす。炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、sec−ペンチル基、t−ペンチル基、イソペンチル基等が挙げられる。本発明において、プロピレン基とは1,3−プロパンジイル基をいう。また、クマリン骨格の6位及び8位の炭素と結合して環状構造を形成するプロピレン基とは、例えば、R1及びR2がそのような基である場合、下記一般式(1a)で表される化合物となる基をいう。
前記一般式(1)で表されるクマリン化合物は、下記の反応式で示すように下記一般式(2)で表わされるクマリン化合物を濃硫酸や発煙硫酸でスルホン化して、下記一般式(3)で表わされるスルホン酸化合物とし、このスルホン酸化合物が有するスルホン酸基を塩化チオニル、3塩化リン等でスルホン酸クロライド基に変換して下記一般式(4)で表わされる化合物とし、下記一般式(4)で表わされる化合物と下記一般式(5)で表わされるアミン化合物とを反応させることにより得ることができる。
本発明のクマリン化合物とラジカル重合可能な他のラジカル重合性化合物としては、例えば、スチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等のビニル芳香族類;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアルデヒド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等の不飽和カルボン酸誘導体類;N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル化合物類、アリルアルコール、アリルメチルエーテル、アリルエチルエーテル、アリルメチルケトン、アリル酢酸、アリルフェノール等のアリル化合物類;N−メチロールアクリルアミド、N−エチロールアクリルアミド、N−プロパノールアクリルアミド、N−メチロールマレインアミド酸、N−メチロールマレインアミド酸エステル、N−メチロールマレイミド、N−エチロールマレイミド等のN−置換不飽和アミド類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;ジビニルシクロヘキサン等の多官能ビニル化合物類等が挙げられ、共重合性に優れている点から、特に、ビニル芳香族類が好ましい。
撹拌装置及び温度計を備えたガラス製反応容器に、770gの30%発煙硫酸を仕込み、25℃で撹拌しながら、35gのクマリン6(100mmol)を3分割し、15分ごとに、添加した。すべてのクマリン6を添加した後、更に25℃で3時間撹拌することにより反応を完結させた。
撹拌装置及び温度計を備えたガラス製反応容器に、1kgの蒸留水を仕込み、撹拌しながら、先の反応液を5〜10℃で滴下した。反応液を滴下終了後、20%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、エチルエーテルで抽出し、抽出液を減圧し乾燥することにより28gの中間体A(収率65%)を得た。中間体Aは、前記一般式(3)において、R1及びR2がエチル基、R3が水素原子、及びXがイオウ原子である化合物である。
撹拌装置及び温度計を備えたガラス製反応容器に、4.3gの中間体A(10mmol)、12gの塩化チオニル(100mmol)及び溶媒として100gのピリジンを仕込み、25℃で4時間撹拌して反応させた後、60℃で減圧してピリジン及び未反応の塩化チオニルを除いた。前記反応容器に、溶媒として100gのピリジンを仕込み、容器内の固形物を溶解、分散させた後、4.8gの4−アミノスチレン(40mmol)を添加し、25℃で2時間撹拌して反応させた。前記反応容器に水とエチルエーテルを仕込み、エチルエーテル抽出を行い、エチルエーテルを減圧除去した後、減圧乾燥を行うことにより、3.8gの本発明のクマリン化合物A1を得た(収率72%)。化合物A1は、前記一般式(1)において、R1及びR2がエチル基、R3及びR4が水素原子、R5が直接結合、並びにXがイオウ原子の化合物である。化合物A1の同定は、1H-NMR及び光吸収特性(λmax、及びλmaxにおけるε)]を測定することにより行った。これらの同定結果を下記に示す。
<同定結果>
1H NMR(DMF-d7):9.02(S,1H), 8.61(S,1H), 8.06(d,1H), 7.83(d,1H), 7.78(d,1H), 7.32(d,2H), 7.09(d,2H), 7.02(S,1H), 6.85(d,1H), 6.67(S,1H), 6.60-6.54(m,1H), 5.66(d,1H), 5.13(d,1H), 3.50(q,4H), 1.15(t,6H)
λmax=475 nm, ε=6.31 X 104
実施例1において、4−アミノスチレンの代わりに、4−ビニルベンジルアミンを使用した以外は同様の操作を行い、4.2gの本発明のクマリン化合物A2を得た(収率77%)。化合物A2は、前記一般式(1)において、R1及びR2がエチル基、R3及びR4が水素原子、及びR5がメチレン基、Xがイオウ原子の化合物である。
<同定結果>
1H NMR(DMF-d7):9.06(S,1H), 8.56(S,1H), 8.21(br,1H), 8.08(d,1H), 7.88(d,1H), 7.81(d,1H), 7.33(d,2H), 7.20(d,2H), 6.88(d,1H), 6.70(s,1H), 6.67-6.60(m,1H), 5.74(d,1H), 5.18(d,1H), 4.03(S,2H), 3.52(q,4H), 1.17(t,6H)
λmax = 476 nm, ε = 5.94 X 104
撹拌装置及び温度計を備えたガラス製反応容器に、4.3gの中間体A(10mmol)、12gの塩化チオニル(100mmol)及び溶媒として100gのピリジンを仕込み、25℃で4時間撹拌して反応させた後、60℃で減圧してピリジン及び未反応の塩化チオニルを除いた。反応容器に、溶媒として100gのピリジンを仕込み、容器内の固形物を溶解、分散させた後、6.8gの25%アンモニア水溶液(100mmol)を添加し、25℃で2時間撹拌して反応させた。反応容器に水とエチルエーテルを仕込み、エチルエーテル抽出を行い、エチルエーテルを減圧除去した後、減圧乾燥を行うことにより、中間体Bを得た。
中間体Bは、前記一般式(4)において、R1及びR2がエチル基、R3が水素原子、Xが硫黄原子であり、塩素原子がアミノ基で置換された化合物である。
撹拌装置及び温度計を備えたガラス製反応容器に、中間体B、1.8gのアクリル酸クロライド(2mmol)、及び溶媒として100gのピリジンを仕込み、25℃で4時間撹拌して反応させた後、水とエチルエーテルを仕込み、エチルエーテル抽出を行い、エチルエーテルを減圧除去した後、減圧乾燥を行うことにより、4.1gの比較例のクマリン化合物B1を得た(収率82%)。化合物B1は下記の構造を有する化合物である。
撹拌装置及び温度計を備えたガラス製反応容器に、4.3gの中間体A(1mmol)、12gの塩化チオニル(100mmol)及び溶媒として100gのピリジンを仕込み、25℃で4時間撹拌して反応させた後、60℃で減圧してピリジン及び未反応の塩化チオニルを除いた。反応容器に、溶媒として100gのピリジンを仕込み、容器内の固形物を溶解、分散させた後、6.8gのジアリルアミン(2mmol)を添加し、25℃で2時間撹拌して反応させた。反応容器に水とエチルエーテルを仕込み、エチルエーテル抽出を行い、エチルエーテルを減圧除去した後、減圧乾燥を行うことにより、4.2gの比較例のクマリン化合物B2を得た(収率82%)。化合物B2は下記の構造を有する化合物である。
化合物A1、A2、B1及びB2について、62.5容量%イソプロパノール水溶液の1%溶液を調製し、0.01mol/Lの塩酸水溶液又は0.01mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を使用し、pH6.5〜7.5に調整した。この溶液をスクリュー栓付ガラス容器に入れて25℃で7日間保存後し、pHを測定した。pHが低いほど、化合物の加水分解安定性が低いことになる。
0.02gの化合物A1、A2、B1又はB、2、2gのスチレン及び15mgのN,N−アゾビスイソブチロニトリルを、15gのトルエンに溶解し、窒素バブリングを30分間行った。次いで、封をして、これを60℃の湯浴中で24時間震蕩することにより重合させた。この重合物溶液を200gのメタノールに滴下して析出した重合物を除去し、メタノールに溶解する未反応のクマリン化合物を液体クロマトグラフィーにより定量することにより、化合物A1、A2、B1及びB2の反応率を求めた。結果を〔表1〕に示す。
特許文献1の実施例に準拠し下記のマクロモノマーC1及びC2を合成した。また、下記のPBS溶液、ピーナツレクチン溶液及び水溶性カルボジイミド溶液を用意した。
リン酸緩衝食塩水(シグマアルドリッチジャパン社製。商品名:Dulbecco's Phosphate Buffered Saline D8537)
・ピーナツレクチン溶液:
PBS溶液にピーナツレクチンが0.1質量%となるよう溶解させたもの
・水溶性カルボジイミド溶液
0.05M−KH2PO4水溶液に1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)
カルボジイミドが1質量%となるよう溶解させたもの
N,N−アゾビスイソブチロニトリル15mg、イオン交換水5g、エタノール10g、マクロモノマーC1を0.75g、マクロモノマーC2を0.25g、スチレン1g、N,N−アゾビスイソブチロニトリル15mg及び〔表2〕に示す量のクマリン化合物を、試験管に仕込みに溶解して、窒素で30分間バブリングした後に封をした。これを60℃の湯浴中で24時間震蕩することにより反応させ、微粒子を生成させた。遠心分離によって微粒子を分離した後、凍結乾燥させて微粒子を得た。
得られた微粒子10mgを、0.05M−KH2PO4水溶液800mgに分散させ、前記水溶性カルボジイミド溶液200mgを加えて4℃で30分間震蕩した。これを遠心分離(6000rpm,10分間)で上澄みを除去した後、前記ピーナッツレクチン溶液1gを加えて攪拌して微粒子を再分散させ、4℃で24時間震蕩させることにより、微粒子の表面にピーナッツレクチンを結合させた。その後、遠心分離と前記PBS溶液への再分散を3回繰り返して未反応のピーナッツレクチンを除去して診断用マーカーを得た。
Claims (4)
- 請求項1に記載のクマリン化合物と他のラジカル重合性化合物との重合物。
- 前記他のラジカル重合性化合物が、生体の特定部位や特定細胞に、特異的な結合性や相互作用を有する基を有するラジカル重合性化合物である、請求項2に記載の重合物。
- 請求項3に記載の重合物を含有する診断用マーカー。
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