以下に添付図面を参照して、この発明に係る有価媒体処理装置、有価媒体処理システム及び有価媒体処理方法の好適な実施例を詳細に説明する。本実施形態では、有価媒体処理装置を銀行の支店に設置して、損傷貨幣の入金処理を行う場合を例に説明する。なお、損傷貨幣として硬貨を受け付ける場合も、損傷した紙幣(損傷券)を受け付ける場合と同様に処理を行うことができるので、以下では損傷券を受け付ける場合を例に説明することとする。
まず、本実施形態で有価媒体処理装置による処理対象とされる損傷券と損券の違いについて説明する。銀行では入出金に係る貨幣処理を補助するための貨幣処理装置が利用されており、市場での流通に適さない紙幣が損券として処理されている。具体的には、紙幣としての外形を留めており、貨幣処理装置による識別処理の結果から真の紙幣であることは明らかであるが、傷みの程度から市場流通には適さないと判定された紙幣が損券として処理される。
これに対して、貨幣処理装置で紙幣であると認識することができず、真の紙幣であるか否かの鑑定を行う必要がある紙幣は、損傷券として処理される。例えば、一部が欠損して紙幣としての外形を留めていない紙幣は損傷券として処理される。また、例えば、3片以上に細かく分割された紙幣については、残存面積によって価値が変動するので、価値を判定するための鑑定処理を必要とする損傷券として処理される。また、紙幣に油や糊等の異物が付着して貨幣処理装置に投入できない場合や搬送できない場合にも損傷券として処理される。どのような紙幣を損傷券として受け付けるかについては、例えば、銀行の運用に応じて定められている。
破れたり燃えたりして一部が欠損した紙幣、シュレッダー等でバラバラになった紙幣、紙幣であるか否かを判断することが困難なほど汚れた紙幣、油や糊等が付着した紙幣等、一般に利用されている貨幣処理装置では受付不可能である様々な紙幣が損傷券として処理されるが、以下では、一部が欠損した損傷券を例に説明を行うこととする。
次に、有価媒体処理装置で行われる損傷券処理について説明する。図1は、有価媒体処理装置1を利用して行われる損傷券の処理内容を説明する模式図である。図1(a)は、銀行の窓口係が窓口で受け付けた損傷券100を有価媒体処理装置1に入金する際に行われる処理を示している。また、図1(b)は、同図(a)で有価媒体処理装置1に入金された損傷券100の真偽判定を行う際に表示される画面例を示している。図1(c)は、真偽判定を完了した際に表示される画面例を示している。
銀行の窓口で、顧客から、一部が欠損した損傷券100を正常貨幣と引き換える依頼がなされると、この依頼を受けた窓口係は、損傷券100を有価媒体処理装置1に投入する(図1(a)A−1)。有価媒体処理装置1では、投入された損傷券100を撮像した画像と、損傷券100の券種や価値の判定を補助するための情報とが表示されるので、窓口係は、表示された情報に基づいて損傷券100の券種や価値等の情報を入力する(A−2)。
紙幣の券種とは紙幣の金種及び新旧に関する種類のことをいい、具体的には、例えば、日本の紙幣では、紙幣の発行時期(A券〜E券)及び金種を組み合わせて「E一万円券」というように券種を入力する。
また、紙幣の価値について具体的に説明すると、欠損のない正券の価値は、この紙幣の金種と等価となる。一方、その一部が破れて欠損している損券(長方形の紙幣の形が維持されていないとか穴が開いているような紙幣)については、欠損の程度により価値が金種と等価ではなくなるため、その価値を入力する。一部が破れて欠損している紙幣の価値判断基準は、例えば中央銀行(日本国の場合は日本銀行)によって規定されている。
有価媒体処理装置1は、損傷券100が投入されると、この損傷券100の全体を撮像した全体画像101を取得して記憶部に保存する(A−3)。また、有価媒体処理装置1は、窓口係によって入力された損傷券100の券種に基づいて、この券種の真偽判定に利用する部分画像102を取得して記憶部に保存する(A−4)。1枚の損傷券100から、表面及び裏面の2枚の全体画像101と、券種に応じた複数枚の部分画像102とが取得されて記憶部に保存される。
全体画像101は、例えば75〜100dpiの低解像度の画像として保存される。低解像度画像とすることにより、記憶部におけるデータ容量を削減することができる。また、全体画像101がプリンタで印刷された場合に、真の紙幣でないことを容易に認識できる粗い画像とすることで画像の悪用を防止することができる。
部分画像102は、例えば200〜240dpiの高解像度の画像として保存される。部分画像102は損傷券100の真偽判定に利用されるため、部分画像102に表れる特徴を容易に目視確認できるように高解像度画像とするが、紙幣の一部の領域のみを撮像した画像であるためプリンタで印刷されたとしても悪用されることがない。
損傷券100上で部分画像102とする領域は、予め券種毎に設定されている。具体的には、その券種で利用されている偽造防止技術に基づいて、真偽判定に利用できる部分領域が予め設定されており、この部分領域を撮像した画像を部分画像102とする。例えば、日本の一万円札では、透かしと呼ばれるすき入れパターンの他、マイクロ文字、パールインキ、ホログラム、潜像模様、特殊発光インキ等の偽造防止技術が利用されている。これらは、紙幣の券種毎に表面及び裏面の所定領域で利用されているので、損傷券100の券種を特定した後、表面及び裏面の所定領域を撮像した高解像度画像を部分画像102として保存する。なお、部分画像102は、偽造防止技術が施された各部分領域の特徴に基づいて、その特徴が目視確認できるように撮像される。
例えば、裸眼での目視が難しいほど小さい文字で印刷されたマイクロ文字では、文字を容易に目視確認できる解像度で撮像した反射画像が部分画像102として保存される。また、すき入れパターンでは、すき入れがあることを目視確認できるように反射画像及び透過画像が部分画像102として保存される。2枚の画像を1組の部分画像102とすることにより、反射画像では透かしにされた図柄を確認できず透過画像で透かしにされた図柄を確認できれば真の紙幣であると判定し、反射画像及び透過画像の両方で透かしにされた図柄を確認できる場合又は両方で図柄を確認できない場合には偽造であると判定することができる。
紫外光等の所定波長域の光を照射すると発光する特殊発光インキでは、特殊発光インキが利用されていることを目視確認できるように、発光していない状態で撮像した画像と、紫外光等を照射して発光した状態で撮像した画像とが1組の部分画像102として保存される。紫外光等の所定条件下でのみインキによる図柄の存在を確認できれば真の紙幣であると判定し、条件によらずインキによる図柄を確認できる場合又は条件によらず図柄を確認できない場合には偽造であると判定することができる。
紙幣を傾けると模様が浮かび上がる潜像画像及びパールインキでは、撮像条件を変えて、模様を目視確認できない状態で撮像した画像と、模様を目視確認できる状態で撮像した画像とが1組の部分画像102として保存される。同様に、紙幣を傾けると色や模様が変化するホログラムでは、撮像条件を変えて、所定の色及び模様を撮像した画像と、該画像とは異なる色及び/又は模様を撮像した画像とが1組の部分画像102として保存される。これらについても、撮像条件を変えて得られた画像の違いから真偽を判定することができる。なお、潜像画像、パールインキ、ホログラムの部分画像102は、例えば、装置内で撮像に利用するラインセンサ等のセンサ位置を固定して光源の位置を変更したり、光源の位置を固定してセンサの位置を変更したりすることにより撮像される。
このように、損傷券100の券種に基づいて、所定の部分領域毎に、この領域での特徴を目視確認できるように撮像された画像が部分画像102として保存される。部分画像102の撮像条件は、その特徴に応じて予め設定されており、1つの部分領域で1枚の部分画像102が撮像される場合の他、反射画像と透過画像、撮像条件を変更した複数画像等、1つの部分領域から複数枚の部分画像102が取得される場合もある。
低解像度の全体画像101は、損傷券100を可視光下で撮像した反射画像から取得される。例えば、可視光下で、損傷券100の全体を高解像度で撮像して、得られた高解像度画像から、必要に応じて、真偽判定に利用する所定領域を部分画像102として切り出すと共に、高解像度画像を低解像度画像に変換したものを全体画像101とする。
高解像度の部分画像102は、損傷券100の券種で利用される偽造防止技術によって、透過画像である場合や、所定の波長域の光を照射して得られる赤外光画像や紫外光画像の場合もある。例えば、損傷券100がラインセンサの位置を通過する間に、複数の光源のうち点灯する光源を高速に切り換える交番点灯制御を行うことにより、反射画像、透過画像、赤外光画像、紫外光画像等の複数画像を取得する。また、ラインセンサが複数ある場合には、ラインセンサ毎に、種類の異なる画像を取得してもよい。また、撮像時には、特徴部として必要な部分領域のみを撮像して部分画像102としてもよいし、損傷券100全体を撮像した後、必要な部分領域を切り出して部分画像102としてもよい。また、位置が固定されているラインセンサによる撮像位置を損傷券100が往復するように搬送して複数種類の画像を撮像する態様であっても構わない。装置内で、搬送される損傷券100の画像を取得する方法は、従来の紙幣処理装置で利用されている技術を利用することができるので詳細な説明は省略する。
こうして、図1(a)に示すように取得された低解像度の全体画像101及び高解像度の部分画像102は、管理番号等によって互いに管理付けられた状態で、有価媒体処理装置1内部又は有価媒体処理装置1に接続されたサーバに保存される。
そして、所定のタイミングで、有価媒体処理装置1に入金された損傷券100の真偽判定が行われる。具体的には、銀行での入金処理の受付を締め切った後に、窓口係による業務を管理する上位者が、上位者端末上で、窓口係によって当日入金された損傷券100の真偽判定を行う。
ただし、窓口係が入金処理時に損傷券100の券種等を入力した後、すなわち図1(a)に示す処理完了の直後に、上位者が損傷券100の真偽判定を行って入金処理を承認してから、窓口係が入金処理を完了する態様であってもよい。有価媒体処理装置1内で全体画像101及び部分画像102を取得した後であれば、真偽判定を行うタイミングは特に限定されず、銀行毎の運用に応じて設定される。
なお、例えば、窓口係による損傷券100の入金処理が完了した段階で、損傷券100と引き換えに、この損傷券100の価値に相当する正常貨幣が顧客に支払われる。顧客に支払われる正常貨幣は、有価媒体処理装置1内に収納されている出金用の紙幣が繰り出される態様であってもよいし、別の貨幣処理装置から出金された紙幣であっても構わない。有価媒体処理装置1又は別の貨幣処理装置による出金処理は、従来技術を利用して行うことができるので詳細な説明は省略して、以下では、損傷券100の真偽判定の詳細について説明する。
図1(b)は、上位者が、上位者端末を利用して、損傷券100の真偽判定を行う際に表示される画面例を示す図である。このように、画面上で上側に損傷券100から取得された全体画像101及び部分画像102が表示される。また、その下側に、この券種の真の紙幣全体の全体サンプル画像201と、真の紙幣で部分画像102に対応する領域を撮像した際に得られる部分サンプル画像202とが表示される。また、画面上の全体画像101には、部分画像102及び部分サンプル画像202が、損傷券100のどの領域であるかを示す枠103が表示される。なお、全体画像101及び部分画像102は、これらが保存された有価媒体処理装置1又はサーバから読み出されて上位者端末上に表示される。
画面上部には、損傷券100又は損傷券100を含む入金処理に割り当てられた管理場号が表示され、その右側には損傷券100の画像を手動切換可能な矢印ボタンが表示される。画面下部には、損傷券100の表面画像及び裏面画像を手動切換可能なボタンが表示される。また、画面右側には、この損傷券100で撮像された部分画像102の枚数情報が表示されると共に、表示する部分画像102を手動切換可能なボタンが表示される。図1(b)の例は、この損傷券100では表面及び裏面の合計12箇所で部分画像102が取得され、これらのうちNo.1の部分画像102が判定対象画像として表示されていることを示している。
上位者は、画面上で、損傷券100から取得された部分画像102と、真の紙幣で観察されるべき部分サンプル画像202とを目視確認して、両者が一致するか否かを判定し、一致すれば一致ボタンを押し、一致しなければ不一致ボタンを押す。判定入力がなされると、画面上の表示が自動的に切り換えられて、上位者が次に確認すべき部分画像102と、この部分画像102に対応する部分サンプル画像202とが表示される。
こうして、上位者が、画面上に順次表示される部分画像102及び部分サンプル画像202を目視確認して、両者が一致するか否かを判定入力する処理を終えると、図1(c)に示すように、損傷券100の真偽判定結果を示す画面が表示される。図1(c)左図は、全ての部分画像102の判定結果が、損傷券100が真券であると判定された場合の画面例である。また、図1(c)右図は、12箇所で取得された部分画像102のうち、1箇所の部分画像102で偽券であると判定された場合の画面例である。
上位者は、画面に表示された真偽判定結果を確認すると、画面上の完了ボタンを押して真偽判定処理を完了する。なお、損傷券100を偽券と判定した部分画像102がある場合には、戻るボタンを押せば、不一致と判定した部分画像102及び部分サンプル画像202の表示画面に戻って、再確認できるようになっている。そして、再確認の結果に応じて、判定結果を修正することもできる。
有価媒体処理装置1で行う真偽判定は、目視確認による判定である上に、破れや汚れ等のある損傷券100の判定であるため、判定を誤る可能性もある。これを考慮して、常に、全ての部分画像102が判定される。例えば、全ての判定を終えたときに、12箇所のうち1箇所だけで不一致と判定していた場合には、この1箇所を再確認することにより、真偽判定をより正確なものとすることができる。
ただし、真偽判定の方法は設定により変更できるようになっている。具体的には、真偽判定を進めるうちに、1箇所でも、部分画像102と部分サンプル画像202とが不一致とされた場合には、残りの部分画像102を確認することなく、真偽判定を終了する設定とすることもできる。
例えば、窓口での業務時間内に窓口係による入金処理を承認するために真偽判定を行う場合には、時間を優先して、1箇所で不一致と判定されれば真偽判定を終了するように設定し、窓口業務完了後に真偽判定を行う場合には、判定精度を優先して全ての箇所で真偽判定を行うように設定する。
なお、低解像度の全体画像101、高解像度の部分画像102、各部分画像102での判定結果、損傷券100の真偽判定結果等の情報は、管理番号によって互いに関連付けられた状態で、有価媒体処理装置1又はサーバに保存される。
次に、有価媒体処理装置1を含むシステムの構成例について説明する。図2は、銀行の本部52及び支店51との間で構築される貨幣処理システムの構成例を示すブロック図である。
本部52内では、支店51から損傷券100の現物が移送されてきた後、支店51から損傷券100の全体画像101及び部分画像102等のデータを受信して管理するための本部サーバ56と、本部サーバ56に接続された本部端末54と、損傷券100に関するデータを本部端末54に入力するためのバーコードリーダ53とが設置されている。なお、損傷券100の移送の詳細については後述する。
支店51内では、各窓口係が担当する窓口で利用する窓口端末9と、上位者が利用する上位者端末8と、損傷券100を支店51から本部52へ移送する際に利用されるバーコードプリンタ7と、窓口後方で窓口係による業務を支援するための貨幣処理システム5と、支店51内での各種データを管理すると共に本部52との間でネットワーク50を介したデータの送受信を実現するための支店サーバ6とが通信可能に接続されている。貨幣処理システム5は日本で出納機と呼ばれる装置で、本実施形態で説明する有価媒体処理装置1の他に、紙幣及び紙幣束の入出金を行うための紙幣処理装置2と、硬貨及び包装硬貨の入出金を行うための硬貨処理装置3と、小切手や手形等を処理するための小切手・手形処理装置4とを含んでいる。
本部端末54、本部サーバ56、支店サーバ6及び上位者端末8については、従来のコンピュータ装置を利用して構成されるが、その機能及び動作については後述する。貨幣処理システム5とこれを構成する各装置2〜4は出納機として知られており、貨幣処理システム5を利用するための窓口端末9を含め、各部の機能及び動作については従来技術を利用することができるので詳細な説明は省略し、以下では、本実施形態における特徴部分について説明を続けることとする。
図3は、図1に示した損傷券100の処理を実現する有価媒体処理システムの構成例を示すブロック図である。図1に示す損傷券100の処理は、互いにデータ通信可能に接続された有価媒体処理装置1、支店サーバ6及び上位者端末8を利用して行われる。
有価媒体処理装置1は、各部の動作を制御する制御部10と、制御部10で利用される情報や制御部10によって取得された全体画像101及び部分画像102等が保存される記憶部20と、損傷券100を含む有価媒体の搬送及び収納を行う紙葉類搬送収納部30と、制御部10への指示操作及び制御部10による各種情報の表示に利用される操作表示部40とを有している。
制御部10は、損傷券100の全体画像101及び部分画像102を取得するための画像取得部11と、紙幣の券種等を識別するための紙幣識別部12と、画像取得部11で取得した画像に係る画像処理を行うための画像処理部13と、損傷券100に関する各種のデータを管理するためのデータ管理部14とを有している。
画像取得部11は、ラインセンサ等を有し、有価媒体処理装置1の投入口から投入されて紙葉類搬送収納部30によって搬送される損傷券100の高解像度画像を取得する機能を有する。具体的には、部分画像102の種類に応じて各種画像を取得する機能を有している。例えば、赤外光や紫外光等、所定波長の光を照射して、反射画像及び透過画像を取得する。
損傷券100にすき入れが含まれる場合には、反射画像及び透過画像の部分画像102が取得される。また、損傷券100に、潜像画像、パールインキ、ホログラム等が含まれる場合には、これらを確認可能な画像が取得される。具体的には、位置が固定されたラインセンサに対して、異なる2つの方向から排他的に光を照射して損傷券100を撮像することにより、所定の色や模様が表れる画像と、これとは異なる色や模様が表れる画像とを取得する。例えば、パールインキによる模様や潜像画像が観察される画像と、観察されない画像とを撮像して部分画像102とする。同様に、ホログラムにより、ある模様が観察される画像と、これとは異なる模様が観察される画像とを撮像して部分画像102とする。
紙幣識別部12は、画像取得部11で取得した画像から特徴を抽出して紙幣の券種を識別する機能を有する。本実施形態では、窓口係が損傷券100の券種を入力する例を示すが、損傷券100の券種情報の取得方法がこれに限定されるものではなく、紙幣識別部12による損傷券100の券種識別が可能である場合には、紙幣識別部12による識別結果を利用してもよい。
画像処理部13は、画像取得部11によって取得された損傷券100の高解像度画像から、所定領域の部分画像102を切り出したり、解像度を変換して低解像度の全体画像101を生成したりする機能を有する。
データ管理部14は、損傷券100から取得された低解像度の全体画像101及び高解像度の部分画像102と、損傷券100について入力された券種や価値等の各種情報とを管理番号により関連付けて管理する機能を有する。
記憶部20は、半導体メモリやハードディスクによって構成される記憶装置で、内部に、特徴画像取得条件21と、損傷券管理データ22とが保存される。損傷券管理データ22には、損傷券100の全体画像101及び部分画像102を含む画像データ22aと、損傷券100の券種や価値等の情報を含む損傷券データ22bとが含まれる。
特徴画像取得条件21には、券種毎に、損傷券100から全体画像101及び部分画像102を取得するための各種条件に関する情報が含まれる。例えば、特徴画像取得条件21に含まれる撮像条件に基づいて画像取得部11による損傷券100の撮像が行われる。また、特徴画像取得条件21には、券種別に、どの領域を部分画像102として切り出すかを示す特徴部の位置情報が含まれており、この情報に基づいて、撮像された各画像から各部分画像102が切り出される。例えば、すき入れであれば、撮像条件に基づいてすき入れの領域を含む反射画像及び透過画像が撮像されて、各画像からすき入れに対応する部分領域が部分画像102として切り出される。また、例えば、潜像画像であれば、撮像条件に基づいて潜像が写り込む条件と潜像が写り込まない条件で撮像が行われて、各画像から潜像画像に対応する部分領域が部分画像102として切り出される。
紙葉類搬送収納部30は、有価媒体処理装置1の投入口に投入された損傷券100を撮像するための搬送、損傷券100を所定収納部に収納するための搬送、収納部に収納された損傷券100を投出口から投出するための搬送等を行う。また、紙葉類搬送収納部30は、一時保留部31及び紙幣収納部32を有する。投入口から投入された損傷券100は、画像取得部11により撮像された後、一時保留部31に一時保留される。そして、損傷券100の券種や価値等の損傷券データが入力されて入金処理が完了すると、一時保留部31に収納された損傷券100が繰り出されて、所定の紙幣収納部32に収納される。なお、損傷券100は、損傷度合いによって、専用のキャリアシートを利用して装置内に投入される。キャリアシートは一部が接合された透明な2枚のシートによって形成されており、これらのシートの間に損傷券100を挟んだ状態で、このキャリアシートを装置に投入することにより、正常な紙幣と同様に損傷券100を搬送することができる。
操作表示部40は、タッチパネル式の液晶表示装置等から成り、各種の情報入力及び画面上への情報表示を行う機能を有する。窓口係が有価媒体処理装置1に損傷券100を投入すると、損傷券100を撮像した画像と、損傷券100の券種及び価値を判定するための補助情報とが操作表示部40に表示される。窓口係は、操作表示部40に表示された情報に基づいて、損傷券100の券種や価値等を入力することができる。
有価媒体処理装置1での損傷券100の入金処理が完了すると、全体画像101及び部分画像102を含む画像データ22aと、券種及び価値を含む損傷券データ22bとが、支店サーバ6に送信される。
支店サーバ6では、真偽判定用データベース121と、損傷券管理データベース122とが管理されている。真偽判定用データベース121では、各券種別に、真の紙幣から取得される全体サンプル画像201及び部分サンプル画像202が管理されている。
また、損傷券管理データベース122では、有価媒体処理装置1から受信したデータを蓄積した画像データ122a及び損傷券データ122bと、上位者端末8で行われた真偽判定結果が登録された真偽判定データ122cとが管理されている。
図4は、画像データ122a及び損傷券データ122bとして管理されるデータの種類を示す図である。画像データ122a及び損傷券データ122bは、管理番号によって関連付けて管理されている。
損傷券データ122bには、有価媒体処理装置1で入力された券種情報及び価値情報と、上位者端末8で入力された損傷券100の真偽判定結果と、処理履歴とが含まれる。処理履歴としては、例えば、有価媒体処理装置1を利用して損傷券100の処理を行った窓口係の識別情報(窓口係ID)及び処理が行われた日付と、上位者端末8を利用して損傷券100の真偽判定を行った上位者の識別情報(上位者ID)及び処理が行われた日付とが保存される。有価媒体処理装置1では、装置の利用開始時に利用者認証が行われるようになっており、この認証で得られた情報から窓口係の識別情報が取得される。また、上位者端末8は各上位者に個別に割り当てられているので、支店サーバ6と上位者端末8との間で行われる通信時に、上位者端末8を特定することにより上位者の識別情報を取得する。
画像データ122aには、低解像度の全体画像101と、高解像度の部分画像102とが含まれる。低解像度の全体画像101は、例えば、可視光による反射画像である。また、高解像の部分画像102は、券種別に設定された特徴部を撮像した画像で、紫外光や赤外光等の所定波長の光を照射して撮像した反射画像及び透過画像の他、光源又は撮像センサの位置を変更して撮像した反射画像及び透過画像が含まれる。
上位者端末8は、コンピュータ装置によって構成され、制御部110及び操作表示部140を有している。上位者端末8で損傷券100の真偽判定を行う際には、制御部110と支店サーバ6との間でデータ通信が行われ、損傷券管理データベース122で管理されている全体画像101と、この全体画像101に関連付けて保存されている全ての部分画像102とを操作表示部140に表示することができる。また、同様に、制御部110は、支店サーバ6の真偽判定用データベース121で管理されている全体サンプル画像201と、この全体サンプル画像201に関連付けて保存されている全ての部分サンプル画像202とを操作表示部140に表示することができる。このとき、制御部110は、部分画像102と部分サンプル画像202との対応を認識して、対応する部分画像102及び部分サンプル画像202を並べて表示する。また、上位者端末8では、操作表示部140により、部分画像102と部分サンプル画像202とが一致するか否かを示す判定結果を入力することができる。以上の機能により、上位者は、上位者端末8を利用して、図1(b)及び(c)を参照しながら説明したように、目視確認による損傷券100の真偽判定を行うことができる。
上位者端末8で真偽判定が行われると、各部分画像102について判定された各判定結果が上位者端末8から支店サーバ6に送信されて真偽判定データ122cに登録される。また、損傷券100の真偽を判定した判定結果は、損傷券データ122bにも登録される。損傷券100に関する券種、価値、真偽判定結果を必要とする場合には損傷券データ122bが参照され、各部分画像102について個別に判定された判定結果を確認したい場合には真偽判定データ122cが参照される。
上位者端末8は、上位者が行う真偽判定を補助する機能を有しており、設定により、この補助機能を利用できるようになっている。補助機能を利用する設定では、上位者端末8の制御部110が、損傷券100から取得された部分画像102と、これに対応する部分サンプル画像202との間で、パターンマッチング技術等を利用した画像照合処理を実行する。そして、両画像の一致度を画面上に表示する。
図5は、補助機能を利用する設定で真偽判定を行う際の画面例を示す図である。有価媒体処理装置1では、透かしとして知られるすき入れのある領域では、すき入れがあることを目視確認できるように、透過画像及び反射画像が取得される。そして、図5に示すように、すき入れが含まれる領域103の真偽判定時には、画面上側に損傷券100から取得された透過画像102a及び反射画像102bが表示され、その下に、対応する部分サンプル画像である透過画像202a及び反射画像202bが表示される。このとき、対応する上下の画像が一致するか否かを判定するための補助情報として、両画像の間に一致度を示す情報203が表示される。上位者は、上下の画像を目視確認する際に、その間に表示された補助情報を参考にすることができる。
なお、損傷券100全体を撮像した低解像度の全体画像101と、真偽判定に利用する特徴部を撮像した高解像度の部分画像102とを保存する態様を示したが、画像の保存方法がこれに限定されるものではない。例えば、図6に示すように、低解像度の全体画像101に、高解像度の部分画像102を合成した1枚の画像301として保存しても構わない。この場合、上位者端末8で真偽判定を行う際には、この合成画像301から、部分画像102に対応する部分領域を拡大して表示すればよい。
また、上位者端末8で真偽判定を行う際の画面表示についても、図1及び図5に示すように、全体画像101と、部分画像102とを表示する態様に限定されるものではない。例えば、上位者端末8では、全体画像101及び全体サンプル画像201を表示せず、部分画像102及び部分サンプル画像202のみを表示する態様であってもよい。
また、上位者端末8では、損傷券100の全体画像101に代えて、図7に示す画像401を表示する態様であっても構わない。図7に示す画像401は、部分画像102を取得した領域のみを残して、他の領域を単色で塗り潰した画像であるため、確認すべき部分画像102の位置及び内容を容易に認識することができる。なお、上位者端末8への表示だけではなく、支店サーバ6に保存する画像を、図7に示す画像401とすれば、部分画像102以外の領域では元画像の画素情報が不要となるので、画像の保存に必要なデータ容量を削減することができる。また、図6及び図7に示す画像では複数の部分画像102が1枚の画像にまとめられるので、複数の部分画像102を関連付けて保存する必要がなく画像の管理が容易となる。
次に、支店51と本部52とを含む貨幣処理システムで行われる損傷券100の処理の流れについて説明する。図8は、支店51及び本部52で行われる処理の概要を説明するための図である。なお、図8では、全体画像101及び部分画像102を含む画像データに係る処理と、損傷券100の現物について行われる処理とを示している。
まず、窓口係が、損傷券100の現物を有価媒体処理装置1に投入して処理を開始する(ステップS11)。有価媒体処理装置1では、画像取得部11によって損傷券100が撮像されて、撮像された画像から画像処理部13による特徴部の切り出しや解像度変換が行われて、全体画像101及び部分画像102が取得される(ステップS12)。全体画像101及び部分画像102は、画像データ22aとして記憶部20に保存される。
損傷券100が一時保留部31に保管された状態で、損傷券画像等の情報が操作表示部40に表示されると、これを確認した窓口係は、操作表示部40を操作して損傷券100の券種や価値等の損傷券データを入力する(ステップS13)。入力された損傷券データ22bは、損傷券管理データ22として記憶部20に保存される。窓口係が、必要なデータを入力して、損傷券100の入金処理を完了すると、一時保留部31に保存されていた損傷券100が繰り出されて、この損傷券100に割り当てられた所定の紙幣収納部32に収納される(ステップS14)。
有価媒体処理装置1での損傷券入金処理が完了すると、記憶部20に保存された画像データ22aが支店サーバ6へ送信されて(ステップS15)、損傷券管理データベース122の画像データ122aに登録される(ステップS20)。また、損傷券データ22bについても、同様に、有価媒体処理装置1から支店サーバ6へ送信されて、損傷券管理データベース122の損傷券データ122bに登録される。
損傷券100の入金処理完了後、上位者端末8では、損傷券100の真偽判定処理が開始される。まず、上位者端末8の制御部110が、支店サーバ6から、損傷券管理データベース122に登録された損傷券100の全体画像101及び部分画像102と、真偽判定用データベース121に登録されている損傷券100に対応する全体サンプル画像201及び部分サンプル画像202とを受信して、操作表示部140に表示する(ステップS31)。上位者は、操作表示部140に表示された部分画像102及び部分サンプル画像202を比較して両者が一致するか否かを判定する処理を行う(ステップS32)。上位者による各部分画像102の判定処理の結果は、上位者端末8から支店サーバ6に送信されて、損傷券管理データベース122の真偽判定データ122cに登録される。また、各部分画像102の判定結果に基づく損傷券100の真偽判定結果は、支店サーバ6の損傷券データ122bにも登録される。
上位者によって、損傷券100が真券であると判定された後、さらに損傷券100の価値等についての確認作業が行われて、損傷券入金処理に対する上位者の承認処理が完了する。一方、損傷券100が偽券であると判定された場合には、損傷券100の現物や、窓口係によって入力された券種等を確認して、必要に応じて修正する処理が行われ、改めて上位者による承認が行われることになる。
そして、上位者によって承認された損傷券100の現物は、所定のタイミングで、有価媒体処理装置1から回収されて(ステップS41)、本部52へ移送される。このとき、バーコードプリンタ7で、回収される損傷券100を特定する管理番号が含まれるバーコードが印刷される(ステップS42)。
支店51で回収された損傷券100の現物は、バーコードプリンタ7で印刷されたバーコードと共に、支店51から本部52へ移送されて、本部52での受付処理が開始される。本部52では、損傷券100を受け付ける際に、バーコードリーダ53によって、損傷券100と共に持ち込まれたバーコードが読み取られて、このバーコードに含まれる管理番号等の情報が本部端末54へ入力される(ステップS51)。その後、本部52では、損傷券100を確認して、その価値に相当する市場流通可能な紙幣への交換等、損傷券現物に関する処理が行われる(ステップS52)。このとき、本部52では、バーコードから読み取った管理番号を利用して、損傷券100の券種や価値が登録された損傷券データ122b等を支店サーバ6から受信して利用することもできる。こうして、本部52での損傷券現物の処理が完了する。
損傷券100の現物が処理される一方で、本部サーバ56では、バーコードから読み取った管理番号を利用して、損傷券100の全体画像101及び部分画像102を受信する処理が開始される。まず、本部サーバ56が、支店サーバ6へ向けて、管理番号と共に、損傷券100に関連する画像データを要求する信号を送信する(ステップS61)。
管理番号及び画像要求信号を受信した支店サーバ6は、受信した管理番号に基づいて、損傷券管理データベース122から、画像データ122aとして管理する全体画像101及び部分画像102を読み出して(ステップS62)、本部サーバ56へ送信する(ステップS63)。
本部サーバ56は、支店サーバ6から受信した全体画像101及び部分画像102を内部に保存すると共に(ステップS64)、保存した画像が正常であるか否かを検証する(ステップS65)。検証の結果、保存した画像データが破損している場合には、本部サーバ56は、支店サーバ6に対して、破損している画像の再送信を要求する。そして、全ての画像が正常に保存できたことが検証されるまで、この処理(ステップS61〜S65)が繰り返される。
本部サーバ56に保存した全体画像101及び部分画像102のデータに問題がないことが検証されると、本部サーバ56は、支店サーバ6へ向けて完了通知信号を送信する(ステップS66)。
支店サーバ6は、本部サーバ56からの完了通知信号により、損傷券100に関する全ての画像が本部サーバ56に正常に保存されたことを認識すると、損傷券管理データベース122の画像データ122aから、本部サーバ56に移動した全ての画像を削除する(ステップS70)。なお、全体画像101及び部分画像102と同様に、損傷券データ122b及び真偽判定データ122cについても、支店サーバ6から本部サーバ56への移動が行われる。
このように、損傷券100を管理する管理番号を含むバーコードを印刷して、損傷券100の現物と共に移送することで、損傷券100に係る処理を容易かつ確実に行うことができる。また、損傷券100の移送に伴い、関連する全体画像101及び部分画像102等のデータを支店51から本部52へ移動することで、損傷券100の現物を管理する場所に関連するデータが保存された状態とすることができる。同じデータが複数の場所に保存されることがないので、システム全体でのデータ容量を削減できる。また、データを移動する際には、移動先の本部サーバ56で正常にデータが保存されたことが確認されてから、移動元の支店サーバ6でデータ削除を行うので、通信障害等によりデータが失われることがない。
損傷券100の画像は紙幣を撮像した画像であるためセキュリティを考慮した取り扱いをすることが望ましい。このため、例えば、有価媒体処理装置1で損傷券100を撮像して画像を取得した直後から、各画像データの暗号化を行って、各装置間では、暗号化データを送受信する態様であってもよい。例えば、支店51で部分画像102を参照して真偽判定を行う上位者、本部52で損傷券100の処理を担当する担当者等、一定の権限を有する者だけに暗号化された画像データを複合化するためのキーデータを付与して、画像の内容を閲覧確認できるようにすれば、画像データに係るセキュリティを確保することができる。
なお、本実施形態では、有価媒体処理装置1で取得した部分画像102と真の紙幣で取得される部分サンプル画像202とを上位者端末8に表示して損傷券100の真偽判定を行う態様を示したが、真偽判定を行う端末が上位者端末8に限定されるものではない。例えば、有価媒体処理装置1の操作表示部40を利用して真偽判定を行う態様であってもよいし、支店サーバ6を利用して真偽判定を行う態様であっても構わない。有価媒体処理装置1を利用して真偽判定を行う場合には、記憶部20の損傷券管理データ22に画像データ22aとして保存された全体画像101及び部分画像102を利用すればよい。また、全体サンプル画像201及び部分サンプル画像202を含む真偽判定用データベース121についても、支店サーバ6で管理する態様に限らず、上位者端末8又は有価媒体処理装置1内で管理する態様であっても構わない。例えば、真偽判定用データベース121を有価媒体処理装置1内で管理すれば、損傷券100の撮像から真偽判定までの処理全てを有価媒体処理装置1単体で行うことも可能となる。
上述してきたように、本実施形態に係る有価媒体処理装置1によれば、紙幣の真偽判定に利用可能な特徴部を損傷券100で高解像度に撮像した部分画像102と、これに対応する部分サンプル画像202とが端末上に表示されるので、両画像を比較して一致するか否かを目視確認することにより、損傷券100の真偽を短時間で容易かつ正確に判定することができる。
また、有価媒体処理装置1では、損傷券100の券種に基づいて、この券種で真偽判定に利用可能な特徴部が、自動的に、高解像度画像で取得されて保存されるので、取得された特徴部を順に確認することで損傷券100の真偽を正確かつ迅速に判定することができる。
また、窓口係が損傷券100の有価媒体処理装置1に損傷券100を投入する際に券種や真偽を確認して、その後に上位者が真偽判定を行うので、複数人による判定を経て、損傷券100の真偽判定を確実なものとすることができる。
また、真偽判定に利用可能な特徴部のみを高解像度画像で保存するので、全体を高解像度画像で保存する場合に比べて、データ容量を削減することができる。損傷券100の現物の移動に伴って画像も移動させるので損傷券が管理されている場所のみに画像を保存してシステム全体でのデータ容量を削減することができる。また、画像データを移動する際には、移動先に画像が正常に保存されたことを確認した後に、移動元の画像を削除するので、通信障害等による画像の消失を回避することができる。