JP6174226B1 - 生精肉の保存処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】適度の滅菌を施しつつ精肉の肉汁、旨味、水分を肉自体に保持させた状態で精肉を保存することが可能な精肉の保存処理方法の提供。【解決手段】真空包装した精肉を、60℃を超え65℃以下の温度で加熱し、肉の中心温度が60℃を超えてからさらに1時間〜1時間15分加熱し、加熱終了後、肉が凍結しないように急速冷却し、肉の中心温度を4℃以下とすることにより、適度の滅菌を施しつつ精肉の肉汁、旨味、水分を肉自体に保持させた状態で精肉を保存することが可能となる。【選択図】なし

Description

本発明は、枝肉から筋等を除去した生肉を保存処理する生肉の保存処理方法に関する。
牛、豚、馬、山羊、綿羊、トナカイ、スイギュウ、ヤクなどの肉畜や、ニワトリ、アヒル、七面鳥、ホロホロチョウなどの食鳥は、タンパク質、脂質、無機質、ビタミンなどの栄養素を豊富に含む食肉食材として調理に供されることが知られている。これらの屠肉から枝肉に分離され、さらに筋等を切り除かれた精肉は、生か、あるいは、生を冷凍した冷凍肉として消費者に提供されるが、精肉の表面には少なからず菌が付着しているため、時間の経過とともに菌が繁殖し、鮮度が低下していく。
そこで、これらの精肉を鮮度維持する方法としては、例えば特許文献1に提案されている。特許文献1に提案されている方法は、フィルム包装で生肉が真空包装された包装体に紫外線を照射し、その直後に、上記包装体をフィルム包材の熱収縮および殺菌のために70〜92℃の高温雰囲気内にもたらすというものである。
特開平10−327747号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、紫外線照射によって殺菌されるのは肉の表面のみであり、肉の内側まで殺菌されるものではないため、細菌が残存しているおそれがある。また、紫外線照射後に70〜92℃の高温雰囲気内に置かれることで、肉のタンパク質が凝固してしまい、さらに水分が分離されてしまうため、肉質が硬いものとなる。そのため、この包装体から生肉を取り出した際、包装体内に残った肉汁、旨味成分、水分はそのまま廃棄され、この生肉を加熱すると肉は焼けすぎてパサパサになり、味や食感に欠けるという問題がある。
そこで、本発明においては、適度の滅菌を施しつつ生肉の肉汁、旨味、水分を肉自体に保持させた状態で保存することが可能な生肉の保存処理方法を提供することを目的とする。
本発明の生肉の保存処理方法は、真空包装した生肉を、タンパク質の凝固温度に至ることを確実に避けるように60℃を超え65℃以下の温度で加熱し、肉の中心温度が60℃を超えてからさらに60℃を超え65℃以下の温度条件で1時間〜1時間15分加熱すること、加熱終了後、肉が凍結しないように急速冷却し、肉の中心温度を4℃以下とすることを含むことを特徴とする。
なお、本発明が対象とする生肉は、牛、豚、馬、山羊、綿羊、トナカイ、スイギュウ、ヤクなどの肉畜や、ニワトリ、アヒル、七面鳥、ホロホロチョウなどの食鳥を含み、その他の人の食材として供される食肉であり、枝肉から筋等を切り除いた精肉(生肉)である。本発明の保存処理方法では、好適には1kg〜2kg〜4kg〜数kg〜数十kgの一般消費者が捌くことができない状態の精肉のブロック肉(塊肉)を処理する。
本発明の生肉の保存処理方法では、例えば上記の精肉のブロック肉を真空包装した状態で、低温加熱処理する。すなわち、当該ブロック肉を密封性のある袋に入れて真空包装した状態とし、この真空包装した生肉をスチームまたは湯煎で60℃を超え65℃以下の温度で1時間15分程度加熱する。肉の大きさ、厚さによっては、適宜スチームあるいは湯浴加熱を使い分けて加熱することも可能である。
食肉に付着している細菌でサルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌、カンピロバクター菌、黄色ブドウ球菌などは60℃以下の加熱温度下では死滅しないが、上記の温度条件、加熱時間で細菌付着を有効に防止できることを実験的に確認している。また、加熱時間は1時間〜1時間15分程度が肉汁、旨味成分、肉の柔らかさを効果的に保持し得る。
一方、加熱温度65℃から、肉からは水分が出て肉の繊維が硬化し始め、旨味成分、肉汁も肉から分離して流出する。肉の柔らかさと肉汁、旨味、水分を肉内に閉じ込め得る温度としては60℃を超え65℃以下の温度であるが、機械設定と実際温度との誤差を考慮して60℃を超え63℃以下の温度で加熱するのがより好適である。
また、加熱に際しては、肉の中心温度が60℃を超えてから1時間〜1時間15分程度加熱する。肉の中心温度を測定する芯温度計をセットしておき、加熱による肉の中心温度変化を監視し、加熱開始後、肉の中心温度が60℃を超えてから、さらに60℃を超え65℃以下の温度条件で、1時間〜1時間15分程度の加熱を維持する。
このとき、加熱温度設定時の機械設定を、60℃を超え65℃以下とする。そして、肉の中心温度を測定しながら中心温度が60℃を超えてから1時間〜1時間15分程度加熱する。したがって、加熱により肉の温度は60℃を超え65℃程度の設定温度に向けて緩やかに上昇し、タンパク質の凝固温度に至ることを確実に避けることができ、肉自体に肉汁、旨味成分、水分を保持させる。また、65℃以下の加熱であるため、肉の繊維の凝固作用がなくレア状態の柔らかな仕上がりになる。
そして、加熱終了後、肉が凍結しないように、急速冷却し、肉の中心温度を4℃以下、より好ましくは3℃以下とする。なお、急速冷却は、例えば氷水等で4℃〜0℃程度に冷却する。このとき、肉が凍結しないように注意する。肉が凍結すると肉の細胞膜が破壊され、ドリップが発生してしまうため、肉の食感が変化してしまう。
こうして本発明の保存処理方法により処理した肉を冷蔵保存する。その後、精肉店等では用途に合わせて包丁やスライサーでカットして、食品用パック・パイレス等に盛り付け、ラップで包装し、商品として販売する。本発明の保存処理方法により処理した処理後の肉は、適宜スライス肉、ステーキ肉、焼き肉、切り身肉等に切り分けて使用することができる。
なお、本発明の保存処理方法では、肉は真空状態で密封されているため、多少の肉汁、旨味成分や水分が出るが、包装の中に閉じ込められるため、しっかりとした食味や柔らかくプリッとジューシーな食感が保持される。また、調理する際、滅菌されているため、衛生的に優れる。また、料理加熱する際、中心まで加熱してあるので安心して使用できる。さらに、本発明による処理後の肉は生肉とほとんど遜色ない程度の赤色に発色し、調理後の食卓に供される際にも食欲をそそる見栄えを保つことができる。
本発明の生肉の保存処理方法によれば、適度の滅菌を施しつつ生肉の肉汁、旨味、水分を肉自体に保持させた状態で保存し、生肉の代替品とすることが可能となり、食卓等での加熱調理時に柔らかな食感とジューシー感を保持し、肉特有の赤色の発色保持、肉汁や水分の保持による歩留まりの向上、調理作業の簡素化を図ることが可能となる。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本願発明の技術的範囲が当該実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
機械設定温度を63℃(スチームモード100%)、肉の中心温度を60℃に設定したスチームコンベクション(ニチワ電機株式会社(型式:SCOS-1010RY-R))に真空包装した生肉のブロック肉として鶏もも250g、豚肉2kg、豚肉4kgをそれぞれ投入した。表1は、スチームコンベクション備え付けの芯温度計が60℃になって自動で加熱停止するまでの時間を測定した結果である。
そして、この機械が自動停止したところで一旦肉を取り出し、専用の芯温度計で数箇所芯温を測り、温度ムラがある場合にはさらに加熱を行い、繰り返し芯温度計で数箇所芯温を測り、芯温に温度ムラがないことを確認した。表2は温度ムラがなくなるまでの加熱時間である。その後、肉を0℃の氷水につけ込み、時間を計りながら芯温を測った。表3は0℃の氷水で冷却し、3℃以下になるまでの時間である。
Figure 0006174226
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本発明は生肉をブロック肉(塊肉)のまま60℃を超え65℃以下で低温加熱処理するものであるが、精肉(生肉)は部位や畜種により大きさや重量が幅広く異なる。そのため、中心温度が60℃に達しても温度にムラが出ることがあるが、表2に示すように温度にムラがなくなるまでの時間が最も長かった豚肉2kgで75分(1時間15分)であった。一方、最も時間が短かった鶏もも250gで30分であったが、一概に精肉を30分加熱で細菌が完全に死滅して安全とは言いにくく、特に1kg以上の精肉では中心温度が60℃に達しても温度にムラが出やすいため、ムラをなくすためには1時間〜1時間15分の加熱時間が必要である。
また、加熱終了後の急速冷却においても、精肉が部位や畜種により大きさや重量が幅広く異なるため、表3に示すように一概に冷却時間を設定することができない。そこで、肉が凍結しないという条件で可能な限り早く4℃以下に急速冷却することで、細菌の増殖を防いだ状態で保存するように設定した。
次に、本発明の保存処理方法により処理した精肉の官能試験を行った。
[実施例2]
機械設定温度を63℃、肉の中心温度を60℃に設定したスチームコンベクションに真空包装した牛肉、豚肉、鶏ムネ肉各2kgを投入し、肉の中心温度が60℃を超えてから1時間加熱維持した精肉を、氷水で4℃以下に冷却し、その後冷蔵保存した。なお、肉ごとにそれぞれ別工程で処理している。
使用した機器の詳細は以下の通りである。
(イ)スチームコンベクション ニチワ電機株式会社(型式:SCOS-1010RY-R)
(ロ)真空装置 ニチワ電機株式会社(型式:LYNX42)
(ハ)真空装置 東静電気株式会社(型式:V400)
(ニ)真空包装素材 福助工業株式会社(規格:ナイロンポリ NO22、NO16)
(ホ)真空包装素材 MICS株式会社(規格:トリプルナイロン規格袋NY-5)
(ヘ)芯温計 スチームコンベクション付属装置使用
[評価]
実施例2の保存処理後の精肉を1日冷蔵庫で保冷し、用途ごとにカットし、盛り付けてラップをしたパック商品をモニター10名に実際に調理で使用してもらい、それぞれ旨味、柔らかさ、プリッと感、ジューシー感について下記の表の官能評価を得た。数字は一番良いとの回答数を記載している。なお、比較例として加熱時間を2時間加熱、3時間加熱としたもの、生肉について評価した。
Figure 0006174226
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Figure 0006174226
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評価は旨味、柔らかさ、プリッと感、ジューシー感のいずれについても2時間以上の加熱に比べて1時間加熱分が顕著に良好であった。
[細菌検査]
生の食肉(牛肉、豚肉、鶏肉)を、本発明による生肉の保存処理方法により真空包装、加熱処理、氷水冷却後3日間冷蔵保存した処理精肉について行った細菌検査結果を下記に示す。検査機関は株式会社食品微生物センターである。表中の値はいずれも安全合格基準値1.0×104以内である。
Figure 0006174226
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上記実施例において加熱時間は1時間から1時間15分という比較的短時間であるから、良好な肉の歩留まり率が得られる。例えば、精肉100%とすると、1時間加熱で91%、2時間加熱で83%、3時間加熱で79%の歩留まりとなっており、実質的なコスト低減を図れる。
本発明の生肉の保存処理方法は、例えば消費者へ供給される前の精肉店などにおいて保存処理した状態で冷蔵保存することで生肉の代替品として食肉の流通、加工分野において利用可能である。

Claims (3)

  1. 真空包装した生肉を、タンパク質の凝固温度に至ることを確実に避けるように60℃を超え65℃以下の温度で加熱し、肉の中心温度が60℃を超えてからさらに60℃を超え65℃以下の温度条件で1時間〜1時間15分加熱すること、
    加熱終了後、肉が凍結しないように急速冷却し、肉の中心温度を4℃以下とすること
    を含む生肉の保存処理方法。
  2. 前記生肉は1kg以上のブロック肉である請求項1記載の生肉の保存処理方法。
  3. 前記急速冷却した肉をカットしてラップで包装することを含む請求項1または2に記載の生肉の保存処理方法。
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