JP6173253B2 - Varによるチタン鋳塊の製造方法 - Google Patents
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Description
真空雰囲気中や不活性ガス雰囲気中で消耗電極の溶解を行う真空アーク溶解法では、まず、チタンの原料となるスポンジチタンをプレスしてコンパクト材を製作し、複数のコンパクト材を繋げて消耗電極を形成する。そして、この消耗電極を溶解炉(鋳型内)にセットして、消耗電極と鋳型内との間にアークを発生させて当該消耗電極を溶解して冷却することにより、チタン鋳塊を製造している。
消耗電極式真空アーク溶解炉は、溶解原料となる素材から作製された消耗電極を、真空または不活性ガス雰囲気とした炉内にて、外側から水冷した銅モールド中に吊り下げて電極を負、モールドを正とした直流電流により、電極下端とモールドの底との間にアークを発生させて、アークの熱で溶けた電極から落ちた溶湯のプールと、電極との間にアークを安定させる。電極は下端から順次溶解されて、溶解のプールが下方から凝固されてインゴットを形成する。
さて、溶湯と電極の間でアークが発生している局部では、アークの高熱によって発生する金属蒸気や消耗電極から放出される各種ガス成分の分子等によって、電極径の範囲内の特に電極中心付近では安定した状態でアークが発生している。
サイドアークが発生すると、水冷銅るつぼに直接アークが照射され、高温になるため、水冷されている銅るつぼであっても溶損する可能性がある。水冷銅るつぼが溶損した場合、冷却水がるつぼ内に流入し、溶融チタンと冷却水が接触する。溶融チタンと冷却水が接触すると、水蒸気爆発が発生する可能性がある。また、溶融チタンが冷却水中の酸素と反応し、るつぼ内に水素が残存することになる。るつぼ内に高濃度の水素が残存した状態で、るつぼが開放されると、大気中の酸素と水素が反応し、水素爆発が発生する恐れがある。従って、サイドアークは、安全上絶対に回避されるべき現象である。
特許文献1は、純チタン管の中にスポンジチタンと合金成分を混入したブリケットを複数個作製し、純チタン管部分を溶接して製造した電極に関する技術を開示している。詳しくは、低融点金属を含むチタン合金用電極をVAR溶解する際に、従来の方法で溶解すると、電極の外周部に存在する低融点金属部が先行して溶融し、電極外周部からアークが発
生し、サイドアークが発生し易くなる。その他、電極溶接時に低融点金属部分が溶け落ち、歩留低下や溶接作業性困難、インゴットの成分偏析を促進させるなどの問題がある。そこで、純チタン管の中にスポンジチタンと合金成分を混入したブリケットを複数個作製し、純チタン管部分を溶接して製造した電極を活用するものとしている。これにより、電極外周部が先行溶融することなく、サイドアークの発生が抑制でき、また、電極溶接時の歩留改善、作業性改善、インゴット偏析低減が達成される。この技術によれば、VAR溶解中のサイドアーク防止、低融点金属の電極溶接時の歩留改善、電極溶接の作業性改善、インゴットの成分偏析低減などが可能となるとされている。
すなわち、特許文献1の技術を用いて真空アーク溶解を行った場合、純チタン管に比べて、スポンジチタンおよび合金成分部に間隙が存在し、通電率が悪いため、電極外周部が先行して溶融を開始する可能性がある。その場合、サイドアークが発生する恐れがある。また、純チタン管内に装入するスポンジチタンの成分によっては、電極下部から銅るつぼ内壁に向けてサイドアークが発生する可能性があるが、特許文献1は、このような現象を抑制する技術を開示するものとはなっていない。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、るつぼ溶損トラブルの原因となるサイドアークの防止しつつ、健全なチタン鋳塊を製造することができるVARによるチタン鋳塊の製造方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、チタン原料を含有する消耗電極と鋳型との間にアークを発生させて前記消耗電極を溶解するアーク溶解処理を行うことによってチタン鋳塊を製造するチタン鋳塊の製造方法において、前記チタン原料中にはスクラップチタンが15質量%以上含まれる条件において、前記チタン原料中に含有されるMg量を65質量ppm以上、Cl量を190質量ppm以上として、アーク溶解処理を行うことによってチタン鋳塊を製造することを特徴とする。
好ましくは、前記チタン原料には、スポンジチタンとスクラップチタンとが含まれ、前記スポンジチタンの一部とスクラップチタンとをサイドチャージにより鋳型内に供給するとよい。
また、本発明に係るVARによるチタン鋳塊の製造方法の最も好ましい形態は、チタン原料を含有する消耗電極と鋳型との間にアークを発生させて前記消耗電極を溶解するアーク溶解処理を行うことによってチタン鋳塊を製造するチタン鋳塊の製造方法において、前記チタン原料中にはスクラップチタンが20質量%以上含まれる条件において、サイドアークの発生を抑制すべく、前記チタン原料中に含有されるMg量を65質量ppm以上、Cl量を190質量ppm以上として、アーク溶解処理を行うことによってチタン鋳塊を製造することを特徴とする。
例えば、以下の説明において、鋳型2内に原料を供給する供給装置6を備えた真空アーク溶解装置1を用いたチタン鋳塊12の製造方法についての説明を行うが、それに限定されず、供給装置6を備えていない真空アーク溶解装置を用いたチタン鋳塊12の製造方法にも、本発明の技術を適用することは可能である。
図1を用いて、まず、真空アーク溶解装置1、及びこの装置を用いたチタン鋳塊12の製造方法について説明する。
真空アーク溶解装置1は、鋳型2内を真空雰囲気状態又は不活性ガスの雰囲気状態にして、鋳型2内にセットされた消耗電極3をアーク放電によって溶解するVAR装置(Vacuum Arc Remelting装置)であって、鋳型2と、この鋳型2内にセットされる消耗電極3を取り付ける電極支持体4と、鋳型2内に原料を供給する供給装置6とを備えている。
電極支持体4は昇降自在になっていると共に、当該電極支持体4(消耗電極3)と鋳型2との間に所定の電圧が印加されるようになっている。
このような真空アーク溶解装置1では、電極支持体4に消耗電極3を取り付け、電極支持体4と鋳型2との間に電圧を印加することにより、消耗電極3と鋳型2との間でアーク放電を発生させてアークによって消耗電極3を溶解するアーク溶解処理(VAR溶解という)を行う。
さて、本発明では、真空アーク溶解装置1によるVAR溶解を複数回行うことによって、チタン鋳塊12を製造する。なお、この実施形態では、2回のVAR溶解を行うこととしており、2回目のVAR溶解は、複数回での鋳造における「最終回」に対応している。
イドチャージを行わずに溶解を行う。なお、2回目のVAR溶解では、サイドチャージを行わない真空アーク溶解装置、すなわち1回目のVAR溶解に用いられる真空アーク溶解装置1とは異なるVAR装置を用いる。
1次鋳塊11(溶湯)と消耗電極3の間でアークが発生している局部では、アークの高熱によって発生する金属蒸気や消耗電極3から放出される各種ガス成分の分子等によって、電極径の範囲内の特に電極中心付近では安定した状態でアークが発生している。
このサイドアークは、消耗電極3とチャージ原料10を含めたチタン原料9中に含有されるMg量、及びCl量が少なくなるときに発生する傾向があることを、本願発明者は知見している。なお、このチタン原料9中に含有されるMg量、及びCl量は、クロール法でスポンジチタンを製造する工程において、不可避的に残存する成分である。
上記サイドアークが発生する傾向は、1回目のVAR溶解を行う時に使用するチタン原料9全体に含有されているMg量、及びCl量の割合(質量の割合)によって大きく異なる。そこで、本願発明者らは、様々な知見により、チタン原料9内に含まれるスクラップチタンの含有率、及び、チタン原料9全体に含有されているMg量、及びCl量を規定することで、鋳型2の溶損トラブルの原因となるサイドアークの防止しつつ、健全なチタン鋳塊12を製造することができるVARによるチタン鋳塊12の製造方法を発明した。
本実施形態のVARによるチタン鋳塊12の製造方法は、消耗電極3と鋳型2との間にアークを発生させて消耗電極3を溶解するVAR溶解処理を行うことによってチタン鋳塊12を製造する際に、チタン原料9中に含まれるスクラップチタンの量の比と、そのチタン原料9中に含有されるMg量及びCl量を規定したものを、1回目のVAR溶解を行う時に使用する製造方法である。
好ましくは、チタン原料9中に含有されるMg量を100質量ppm以上、Cl量を295質量ppm以上とするとよい。
まず、チタン原料9中にはスクラップチタンが20質量%以上含まれるようにしておく。具体的には、サイドチャージにて供給されるチャージ原料10に含まれるスクラップチタンの質量を調整し、チタン原料9(消耗電極3のスポンジチタン+サイドチャージのスポンジチタン+サイドチャージのスクラップチタン)に対するスクラップチタンの量が15質量%以上となるように、ホッパ7内にスクラップチタンをチャージ原料10として装入しておく。
含まれるスポンジチタンの質量を調整したり、MgやClを高濃度で含有するスポンジチタンを選択し、消耗電極3やサイドチャージの原料とする。
そして、図1に示すように、真空アーク溶解装置1に備えられた電極支持体4にスポンジチタンで構成された消耗電極3を取り付ける。取り付けた電極支持体4と鋳型2との間に電圧を印加することにより、消耗電極3と鋳型2との間でアーク放電を発生させてアークによって消耗電極3を溶解するVAR溶解を行う。
1回目のVAR溶解によって製造された1次鋳塊11を、上下反転させて消耗電極3として鋳型2内にセットし、鋳型2内を真空雰囲気下にしてサイドチャージを行わずに溶解を行う。そして、溶解した溶湯を鋳型2の冷却装置によって冷却して、チタン鋳塊12(チタンインゴット)を製造する。
[実験例]
次に、本発明のVARによるチタン鋳塊12の製造方法の実験例について、説明する。
図2に示すように、本実験例では、一般的な真空アーク溶解装置(サイドチャージなし)を用いてチタン鋳塊12の製造を行った際のサイドアーク発生の有無と、サイドチャージしながらVAR溶解を行う真空アーク溶解装置1を用いてチタン鋳塊12の製造を行った際のサイドアーク発生の有無を調べた。
図2中のNo,1においては、消耗電極3中に含有されるClの配合量が270質量ppm、Mgの配合量が90質量ppm、つまりチタン原料9(トータル原料)中に含有されるClの配合量が270質量ppm、Mgの配合量が90質量ppmである。
一方、図2中のNo,2においては、消耗電極3中に含有されるClの配合量が290質量ppm、Mgの配合量が100質量ppm、つまりチタン原料9(トータル原料)中に含有されるClの配合量が290質量ppm、Mgの配合量が100質量ppmである。
以降、図2中のNo,3〜No,22も、図2中のNo,2と同様に、サイドアークが発生しないことが分かる。
次に、図2中のNo,26においては、チタン原料9全体に対する消耗電極3の原料割合は30%(質量%,以降同じ)であり、その消耗電極3中に含有されるClの配合量が812質量ppm、Mgの配合量が301質量ppmである。
まとめると、チタン原料9(トータル原料)全体に含有されるClの配合量が270質量ppm、Mgの配合量が100質量ppmである。
また、図2中のNo,29においては、チタン原料9全体に対する消耗電極3の原料割合は43.2%であり、その消耗電極3中に含有されるClの配合量が416.7質量ppm、Mgの配合量が138.9質量ppmである。
まとめると、チタン原料9(トータル原料)全体に含有されるClの配合量が180質量ppm、Mgの配合量が60質量ppmである。
一方、図2中のNo,23においては、チタン原料9全体に対する消耗電極3の原料割合は30%であり、その消耗電極3中に含有されるClの配合量が899.9質量ppm、Mgの配合量が273.3質量ppmである。
そして、サイドチャージの原料について、チタン原料9全体に対するチャージ原料10の割合は70%である。また、チタン原料9全体に対するスポンジチタンの割合が20%であり、スクラップチタンの割合は50%である。そのチタン原料9全体に含有されるClの配合量が43質量ppm、Mgの配合量が26質量ppmである。
このチタン原料9(No,23)の場合、サイドアークが発生しないことが分かる。
また、図2中のNo,28においては、チタン原料9全体に対する消耗電極3の原料割合は30%であり、その消耗電極3中に含有されるClの配合量が847.4質量ppm、Mgの配合量が223.3質量ppmである。
まとめると、チタン原料9(トータル原料)全体に含有されるClの配合量が290質量ppm、Mgの配合量が100質量ppmである。
以降、図2中のNo,24、No,25、No,27、No,30〜No,48も、図2中のNo,23及びNo,28と同様に、サイドアークが発生しないことが分かる。
図3は、図2の実験結果をグラフにまとめたものであり、Mgの配合量が100質量ppm及びClの配合量が290質量ppm付近において、サイドアークが発生すると予測とされることが分かり、Mgの配合量が65質量ppm及びClの配合量が180質量ppm付近において、サイドアークが発生することが分かる。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
また、本実施形態の製造方法は、水冷銅るつぼ内の雰囲気が真空時の場合でも、不活性ガス雰囲気(例えば、Ar,Heなど)の場合でも、同様に適用可能である。
また、上記した実施形態では、サイドチャージ式のVAR溶解法を例示して、説明を行ったが、この方法には限定されない。本発明は、サイドチャージを行わないVAR溶解法であっても適用可能であり、効果的にサイドアークの発生を抑制できる。
2 鋳型
3 消耗電極
4 電極支持体
5 開口
6 供給装置
7 ホッパ
8 搬送シュート
9 チタン原料
10 チャージ原料
11 1次鋳塊
12 チタン鋳塊
Claims (3)
- チタン原料を含有する消耗電極と鋳型との間にアークを発生させて前記消耗電極を溶解するアーク溶解処理を行うことによってチタン鋳塊を製造するチタン鋳塊の製造方法において、
前記チタン原料中にはスクラップチタンが20質量%以上含まれる条件において、サイドアークの発生を抑制すべく、前記チタン原料中に含有されるMg量を65質量ppm以上、Cl量を190質量ppm以上として、アーク溶解処理を行うことによってチタン鋳塊を製造する
ことを特徴とするチタン鋳塊の製造方法。 - 前記チタン原料中に含有されるMg量を100質量ppm以上、Cl量を295質量ppm以上として、アーク溶解処理を行うことによってチタン鋳塊を製造することを特徴とする請求項1に記載のチタン鋳塊の製造方法。
- 前記チタン原料には、スポンジチタンとスクラップチタンとが含まれ、
前記スポンジチタンの一部とスクラップチタンとをサイドチャージにより鋳型内に供給することを特徴とする請求項1又は2に記載のチタン鋳塊の製造方法。
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