JP5792124B2 - チタン鋳塊の製造方法 - Google Patents
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Description
このチタン鋳塊の製造は、真空雰囲気中や不活性ガス雰囲気中で消耗電極の溶解を行う真空アーク溶解装置[VAR(Vacuum Arc Remelting)]が主に用いられており、真空アーク溶解装置(方法)として、特許文献1〜特許文献4に示すものがある。
特許文献2では、セラミックルツボ内において、溶解原料であるTi及びAlを高周波誘導溶解によって溶解させて得た溶湯を鋳型に鋳湯することにより、直径200mm以上のTiAl合金インゴットを製造している。
そこで、鋳肌不良を解決するためには、消耗電極と溶湯間に発生するアークが安定的にる鋳型内(つぼ内壁)を移動するように回転させ、アーク熱でスプラッシュ未溶解部の溶解を促進させることが考えられる。しかしながら、アークの挙動はスターラ攪拌や自然磁場、装置特性などの様々な要因が複雑に絡んでおり、安定的にアーク回転を実現させることは困難であり、確実に鋳肌不良を防止することは難しいのが実情である。
ることを目的とする。
即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、チタンを含有する消耗電極と鋳型との間にアークを発生させて前記消耗電極を溶解するアーク溶解処理を2回行うことによってチタン鋳塊を製造するチタン鋳塊の製造方法において、1回目のアーク溶解処理後の1次鋳塊にClが0.02質量%以上残存するように、1回目のアーク溶解処理時にClを含有する原料をサイドチャージにより供給することを特徴とする。
次式で求められるCl量を含むスポンジチタンを、Clを供給するための前記原料としてサイドチャージにより供給することが好ましい。
本発明の他の技術的手段は、チタンを含有する消耗電極と鋳型との間にアークを発生させて前記消耗電極を溶解するアーク溶解処理を複数回行うことによってチタン鋳塊を製造するチタン鋳塊の製造方法において、最終回のアーク溶解処理における消耗電極の表面に、LiCl、NaCl、MgCl2のうちの1種或いは2種以上を塗布して、最終回のアーク溶解処理を行うことを特徴とする。
チタン鋳塊の製造は、真空アーク溶解装置によりスポンジチタン等から構成された原料を鋳型内(るつぼ内)で溶解し、溶解した溶湯を冷却することによって行う。
図1は、チタン鋳塊の製造方法の手順を示したものである。
図1を用いて、まず、真空アーク溶解装置について説明する。
Arc Remelting装置)であって、鋳型2と、この鋳型2内にセットされる消耗電極3を取り付ける電極支持体4と、鋳型2内に原料を供給する供給装置5とを備えている。
鋳型2には、当該鋳型2を冷却する冷却装置(図示省略)が備えられると共に、消耗電極3と鋳型2との間で発生したアーク放電(単にアークと呼ぶこともある)が当該鋳型2の内壁全体に行き渡るように、アークを磁場によって回転させるアーク誘導装置(図示省略)が設けられている。また、鋳型2の上部には、真空引きした排気を外部に放出したり、不活性ガスを鋳型2内に供給する開口6が設けられている。
2との間に所定の電圧が印加されるようになっている。供給装置5は、例えば、スポンジチタンや再生スクラップ等の原料7(チャージ原料7、又は単に原料7ということもある)を鋳型2内に供給するもので、原料7を貯留するホッパ8と、ホッパ8内の原料7を鋳型2に供給する搬送シュート9とを備えている。この供給装置5により鋳型2内にチャージ原料7を追加装入することを「サイドチャージ」と呼ぶ。
VAR溶解では、図2に示すように、アーク誘導装置によって当該アークを消耗電極3を中心として回転させる。また、VAR溶解中は、鋳型2内を真空状態又は不活性ガスの雰囲気状態にすると共にサイドチャージを行いながら、消耗電極3やホッパ8から供給された原料7を溶解し、溶解した溶湯を鋳型2の冷却装置によって冷却することにより、チタン鋳塊を製造する。
図1に示すように、まず、1回目のVAR溶解(最終回の1つ前)では、不活性ガスの雰囲気下でチャージ原料7を、鋳型2に供給するサイドチャージを行いながら溶解を行う。2回目のVAR溶解(最終回)では、まず、1回目のVAR溶解によって製造された1次鋳塊10を消耗電極3として鋳型2内にセットし、鋳型2内を真空雰囲気下にしてサイドチャージを行わずに溶解を行う。なお、2回目のVAR溶解では、サイドチャージを行わないが、1回目のVAR溶解と2回目のVAR溶解は同じ真空アーク溶解装置1を用いる。
そこで、発明者らは、2回目のVAR溶解(最終回)においてアークが十分に鋳型2に到達して、アーク熱でスプラッシュ未溶解部を溶解させる方法について様々な角度から検証を行った。
図3に示すように、1次鋳塊のCl量(残存Cl量)が0.02質量%未満のとき、歩留が98%と高歩留となるケースがあるものの、歩留にバラツキがあり、歩留が低い場合では91%となる。一方、1次鋳塊のCl量が0.02質量%以上になると、歩留を98%以上とすることができ、高歩留を確実に維持することができる。また、1次鋳塊のCl量が0.02質量%以上の場合、100%に近い高い歩留まり達成できることが分かった。
)後の1次鋳塊10に、Clが0.02質量%以上残存するように、1回目のVAR溶解時にClを含有する原料7を供給することとした。
具体的には、まず、1回目のVAR溶解を行う前に、Clを含有するスポンジチタンや再生スクラップをホッパ8に入れる。そして、1回目のVAR溶解時には、鋳型2内を不活性ガスの雰囲気にした上で、ホッパ8からClを含有するスポンジチタン及び再生スクラップ(チャージ原料7)をサイドチャージにより鋳型2内に供給しつつアーク放電し、当該チャージ原料7及び消耗電極3を溶解することにより、1次鋳塊10にClが0.02質量%以上残存するようにしている。
1次鋳塊のCl濃度が0.02質量%以上にすることによって歩留を向上させることができるが、1次鋳塊のCl濃度が0.10質量%を超えてしまうと、多くのClが製品中に不純物として残ったり、機械的性質が低下する可能性がある。また、1次鋳塊のCl濃度が0.10質量%を超えるサイドチャージを行ってしまうと、真空アーク溶解装置1の排気系統の配管が腐食され易くなり、メンテナンスの頻度が増えたり、設備寿命が低下する虞がある。このようなことから、1次鋳塊のCl濃度は0.02質量%以上0.10質量%以下にすることが好ましい。
図4は、チャージ原料に含有されるCl量(チャージ原料Cl量)と1次消耗電極に含まれるCl量(電極配合Cl量)との含有比と、歩留との関係をまとめたものである。
図4に示すように、Cl含有比が0.73%未満では歩留の高いものが散見されるもののバラツキが大きい。一方、Cl含有比を0.73%以上とすると、歩留を98%付近の高歩留で安定させることができる。
さて、スポンジチタンに含有されるCl量が0.02質量%〜0.1質量%であり、再生スクラップにはClが含有されていないことから、式(3)で求められるCl量以上を含むスポンジチタンを、サイドチャージからのCl供給源とすることが好ましい。
例えば、スポンジチタンの含有比率を100%にする場合(チャージ原料の全てがスポンジチタン)、Cl含有率が0.02質量%のスポンジチタンをCl供給源として用いればよい。また、スポンジチタンの含有比率を40%にする場合(例えば、チャージ原料7のうち再生スクラップが60%、スポンジチタンが40%)、Cl含有率が0.05質量%のスポンジチタンをCl供給源として用いればよい。
以上、本発明によれば、Clを含有するスポンジチタンなどの原料7を、最終回の1つ前であるVAR溶解時(1回目のVAR溶解時)にサイドチャージにより供給しているため、1回目のVAR溶解後の1次鋳塊10には、0.02質量%以上のClが含有されることになる。特に、サイドチャージ式によってClの供給を行っているため、Clを含む原料7は鋳塊の外側に位置しながら溶解するため、1次鋳塊10の表面側にClが存在しやすくなる。
2質量%以上残存するように1回目のVAR溶解時にClを供給して、当該Clを含む1次鋳塊10を2回目のVAR溶解に用いる消耗電極3としていたが、これに代え、1回目のVAR溶解はClを意図的に供給せずに溶解を行い、2回目のVAR溶解に用いる消耗電極3の表面にClを塗布してもよい。
次に、1回目のVAR溶解が終了すると、当該VAR溶解で製造した1次鋳塊10を2回目のVAR溶解における消耗電極3として使用することとし、この消耗電極3の表面に、LiCl、NaCl、MgCl2のうちの1種或いは2種以上を塗布する。そして、Clが塗布された消耗電極3を鋳型2内にセットして、鋳型2内を真空状態にしながら2回目のVAR溶解を行う。
図5に示すように、消耗電極3の表面にMgCl2を塗布しないで2回目のVAR溶解を行った場合、歩留は93〜99%未満でバラツキが大きく、特に、全チャージ数に対する98%以上歩留のチャージ数は30%以下であった。一方、消耗電極3の表面にMgCl2を塗布塗布して2回目のVAR溶解を行った場合、歩留が98%以上となるチャージが最も多く、消耗電極3の表面にMgCl2を塗布しない場合に比べて非常に歩留を向上させることができた。なお、MgCl2以外のLiCl、NaClを2回目のVAR溶解に用いる消耗電極3の表面に塗布しても同様の効果を得ることができる。
2 鋳型
3 消耗電極
4 電極支持体
5 供給装置
6 開口
7 原料(チャージ原料)
8 ホッパ
9 搬送シュート
10 チャージ原料
Claims (4)
- チタンを含有する消耗電極と鋳型との間にアークを発生させて前記消耗電極を溶解するアーク溶解処理を2回行うことによってチタン鋳塊を製造するチタン鋳塊の製造方法において、
1回目のアーク溶解処理後の1次鋳塊にClが0.02質量%以上残存するように、1回目のアーク溶解処理時にClを含有する原料をサイドチャージにより供給することを特徴とするチタン鋳塊の製造方法。 - (前記サイドチャージにより供給する原料に含有するCl含有量)÷(消耗電極に含有するCl含有量)で算出されるCl含有比を0.73以上としていることを特徴とする請求項1に記載のチタン鋳塊の製造方法。
- 次式で求められるCl量を含むスポンジチタンを、Clを供給するための前記原料としてサイドチャージにより供給することを特徴とする請求項2に記載のチタン鋳塊の製造方法。
- 前記サイドチャージにより供給する原料は、LiCl、NaCl、MgCl2のうちの1種或いは2種以上を含んでいることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のチタン鋳塊の製造方法。
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