JP2009113061A - TiAl基合金の鋳塊製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】底盤からの鋳塊への汚染の影響を少なくでき、溶解の度に底盤を準備する必要もなく、又、鋳塊の引き抜きもスムーズに行うことができるTiAl基合金の鋳塊製造方法を提供する。
【解決手段】CCIM法で溶解原料3を供給しつつ、るつぼ底1を下方に引き抜き大型のTiAl基合金で成る鋳塊5を製造する方法において、溶解開始時の底盤本体6aの上面を、高周波コイル4の下端より上方7mm以下となるようにすると共に、底盤6の上面を、高周波コイル4の下端以上の位置になるようにする。又、底盤本体6aの外周面と水冷銅製るつぼ2の内壁面の間に1〜8mmの隙間7を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、コールドクルーシブル誘導溶解(CCIM)法で、TiAl基(金属間化合物系)合金で成る大型で長尺の鋳塊を製造するTiAl基合金の鋳塊製造方法に関するものである。
TiAl基(金属間化合物系)合金は、軽量・高強度であることから、航空宇宙用、自動車用のエンジン等に利用され始めているが、酸素含有量(酸素濃度)が高くなると延性が大幅に低下してしまうといった問題が残されている。また、酸素含有量を低値に制御した大型鋳塊へのニーズが高まっているものの、まだ、酸素含有量を低値に制御する製造技術自体が確立されるに至っていないのが現状である。
チタン(Ti)合金、ジルカロイなどの実用的に使用されている合金鋳塊は、現在、工業的には真空アーク溶解法、プラズマアーク溶解法、電子ビーム溶解法などにより製造されている。これらの溶解法は、いずれも水冷された銅材をるつぼ溶解容器として用いる溶解法である。これらの溶解法は、合金原料の全量を一括して溶解せずに、少量ずつ供給して溶解を行い、形成される溶融金属浴を下側から順次凝固させて鋳塊を製造することを特徴としている。現在、1〜10ton程度の鋳塊がこれらの溶解法を用いて製造されている。
真空アーク溶解法は、Ti原料やAl原料に、他の様々な合金成分を配合して、プレス成型や溶接などにより棒状の合金原料棒を作製し、この合金原料棒を消耗電極にして溶解を行い、合金化を行う方法である。この溶解法は、全ての合金原料を一括して溶解せずに、一部分ずつを順次溶解凝固させる溶解法である。そのため、合金原料棒に融点差の大きい元素成分が多量に含まれる場合は、低融点の元素成分が合金原料棒から先に溶解落下して、高融点の元素成分が遅れて溶解するなどの現象が起こり、製造される鋳塊の成分偏析が著しくなるという問題があった。
例えば、典型的なチタン合金であるTi−6Al4V(質量%)合金、Ti−15V3Al3Cr3Sn(質量%)合金などの合金量であれば、Al(融点:660℃)やSn(融点:232℃)などの低融点元素の含有量は僅かで、成分偏析などの問題は発生せず、均質な成分組成の合金鋳塊を製造することは可能である。
それに対して、TiAl基(金属間化合物系)合金などのように多量のAlが含有される合金の場合は、高融点のTi(融点:1680℃)と低融点のAl(融点:660℃)を組み合わせて棒状の消耗電極を製作して、真空アーク溶解を行うと、低融点のAlから先に溶解落下して、合金原料棒にTiが残ってしまうことになる。この場合、残ったTi原料の一部が強度不足となって溶解する前に落下したり、あるいはAlが全て溶解した後にTiが溶解したりするなどの状況となってしまい、合金化が不十分となって、成分偏析の大きな鋳塊が製造される可能性が高くなるといった問題がある。従って、真空アーク溶解法で、TiAl基(金属間化合物系)合金を製造すること自体が容易ではない。
また、プラズマアーク溶解法や電子ビーム溶解法では、水冷銅製のハース(皿状溶解容器)を用いる方法であれば、ハース内において溶融金属浴を合金化することは可能ではある。しかしながら、通常は溶融金属浴部の体積は、鋳塊全体の体積と比べてかなり小さいため、合金製造には原料配合の段階で、微小なサイズに調整した合金原料を配合しなければならない等の制約があり、均質な合金組成の大型鋳塊の製造には課題が残る。更には、高真空を用いる電子ビーム溶解法では、Alなどの蒸発ロスによる鋳塊の成分変動が起こりやすいという問題もあって、成分変動の少ないTiAl基(金属間化合物系)合金の鋳塊を製造するのは容易ではない。
一方、コールドクルーシブル誘導溶解(CCIM)法のように、合金原料を一括で全量溶解して合金化した後に、凝固させて鋳塊を製造する方法もある。この溶解方法であれば、融点差の大きな合金でも比較的溶解することが容易であり、成分の均質な溶湯を容易に製造することができると考えられるが、CCIM法によって大型の鋳塊を製造する技術は、現状ではまだ開発途上である。また、通常実施されている重力鋳造法により作製した鋳塊は、鋳塊中心部に凝固収縮による空孔状欠陥(引け巣)が発生しやすく、この欠陥部に合金成分が濃化偏析するなどの問題が発生しやすいという課題も残っている。
CCIM法により比較的大型で長尺の鋳塊を製造する方法として、非特許文献1に記載の製造方法が知られている。この製造方法は、水冷銅るつぼを用いて、その外周部に設置した高周波コイルに高周波電流を通電して、水冷銅るつぼ内に供給した合金原料を誘導溶解し、水冷銅るつぼの底部を下方に引き抜いて大型で長尺の鋳塊を製造する方法である。この製造方法は、水冷銅るつぼと溶湯プールの間にフッ化カルシウム(CaF)などのフッ化物系スラグを、精錬効果、電気的絶縁効果、或いは引き抜き時の潤滑効果などを狙って添加することを特徴としている。この方法により、溶解原料としてスポンジTiを用いて、直径5インチの長尺鋳塊が製造できることが示されているが、Ti溶湯に溶融フッ化カルシウム(CaF)が接触することとなるため、鋳塊中にフッ素(F)が数十ppmほど混入する結果となっており、高清浄な鋳塊を製造するには問題がある。よって、TiAl基(金属間化合物系)合金の鋳塊製造にそのまま適用することは不可能である。
また、CCIM法によって大型で長尺の鋳塊を製造する方法として、フッ化カルシウム(CaF)などの精錬材を添加せずに、コイルからの電磁気力により溶融金属浴を保持して、水冷銅るつぼの底部を引き抜くことにより、長尺鋳塊を製造する方法も考えることはできる。この製造方法であれば、フッ素(F)による汚染の影響はないが、溶解開始時の溶解スタート材となる底盤が溶解することによって溶解プールを汚染するという鋳塊への影響は、全く検討されておらず、この方法で健全な鋳塊を製造することは、現状技術からは困難であった。
発明者らは、CCIM法で塊状の合金原料を供給しつつ、水冷銅製るつぼのるつぼ底を下方に引き抜くことで、溶解鋳造の操業条件を最適化することにより、合金原料などの解け残りのない健全な大型の鋳塊を製造する方法について特許出願している(特許文献1,2)。
しかしながら、これらの製造方法においても、TiAl基(金属間化合物系)合金の鋳塊中の、底盤の溶損に伴う成分変動の影響を制御する課題が残されていた。また、初期の加熱時に、るつぼ底の上面に取り付けられた底盤が膨張することに伴い、鋳塊の引き抜きができなくなったり、底盤の外周面と水冷銅製るつぼの内壁面の隙間に浸入した溶湯が下方に流れ落ちて、装置を汚損したりするという課題の解決についても検討されていなかった。
溶解初期の鋳塊ボトム部における成分変動の抑制については、CCIM法の溶解開始時に溶解スタート材として用いる底盤(スターター)の構造を適切化することにより、所定の合金構成に近い組成の溶湯プールを形成させる溶解方法が既に出願されてはいる(特許文献3)。しかしながら、この溶解方法に用いるスターターは、非常に複雑な構造であり、しかも、そのスターターの相当量(大部分)を溶解させて初期溶湯プールの成分組成を調整しようとするものである。従って、溶解の都度、複雑な構造のスターターを新たに準備しなければならないという課題があり、煩雑な操作も必要となるという問題が残されていた。
特開2006−122920号公報 特開2006−281291号公報 特開平8−290247号公報 P.G.Clites,「Inductslag Melting Process」,US,Bureau of Mines Bulletin 673,1982
本発明は、上記従来の問題を解消せんとしてなされたもので、CCIM法によってTiAl基(金属間化合物系)合金で成る鋳塊を製造した際の、底盤の溶解量を極力少なくすることで、底盤を形成する主要元素、特にTiによるTiAl基合金から成る鋳塊への汚染の影響を少なくすることができ、健全な大型の鋳塊を得ることができるばかりか、複雑な構造の底盤を溶解の度に準備する必要もなく、更には、初期の加熱時に、るつぼ底の上面に取り付けられた底盤の膨張に伴い、鋳塊の引き抜きができなくなったり、底盤の外周面と水冷銅製るつぼの内壁面の隙間に浸入した溶湯が下方に流れ落ちたりすることで、装置を汚損するということはないTiAl基合金の鋳塊製造方法を提供することを課題とするものである。
請求項1記載の発明は、るつぼ底が上下方向に移動自在に形成された水冷銅製るつぼの内部に供給した溶解原料を、その水冷銅製るつぼの周囲を取り巻く高周波コイルによる誘導加熱で溶解して、前記るつぼ底を下方に移動させることにより、直径200mm以上、直径に対する高さ寸法がその1.5倍以上の、TiAl基合金で成る鋳塊を製造するTiAl基合金の鋳塊製造方法であって、前記るつぼ底の上面に溶解開始時の溶解スタート材となる底盤を設け、その底盤を、純チタン材或いはチタン合金材で成る底盤本体のみの一層構造か、純チタン材或いはチタン合金材で成る底盤本体とその上面に溶着された前記溶解原料と略同材質の底盤上部材で構成される二層構造とし、溶解開始時の前記底盤本体の上面位置が、前記高周波コイルの下端位置より上方7mm以下の位置となるようにして配置すると共に、溶解開始時の前記底盤の上面位置が、前記高周波コイルの下端位置以上の位置になるようにして配置することを特徴とするTiAl基合金の鋳塊製造方法である。
請求項2記載の発明は、溶解開始時に、純チタン材或いはチタン合金材で成る前記底盤本体の外周面と、前記水冷銅製るつぼの内壁面との間に、1〜8mmの隙間を形成することを特徴とする請求項1記載のTiAl基合金の鋳塊製造方法である。
請求項3記載の発明は、前記隙間に、耐熱セラミック製の詰め物を充填することを特徴とする請求項2記載のTiAl基合金の鋳塊製造方法である。
請求項4記載の発明は、純チタン材或いはチタン合金材で成る前記底盤本体の高さ寸法は、前記水冷銅製るつぼの内径の0.15〜0.5倍であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のTiAl基合金の鋳塊製造方法である。
本発明の請求項1記載のTiAl基合金の鋳塊製造方法によると、CCIM法でTiAl基(金属間化合物系)合金を製造した際の、底盤本体の溶解量を極力少なくすることで、底盤本体を形成する主要元素によるTiAl基合金から成る鋳塊への汚染の影響を少なくすることができ、健全で軽量・高強度なTiAl基合金で成る大型鋳塊を製造することができる。また、準備する底盤は一層構造か二層構造の非常に単純な構造であって、しかも、一度の溶解で溶かされる底盤の部位はその上部の僅かの部位であり、底盤は数度の溶解時に亘り繰り返して使用することができ、複雑な構造の底盤を溶解の度に準備する必要もない。更には、底盤と溶解原料が溶解により一体化されるので、鋳塊の下方への引き抜きを確実に行うことができる。
本発明の請求項2記載のTiAl基合金の鋳塊製造方法によると、初期の加熱で底盤本体が膨張することによって鋳塊の引き抜きに影響を生じたり、引き抜きそのものができなくなったりするというようなことはなく、スムーズに鋳塊の引き抜きができると共に、初期の溶解時に底盤本体の外周面と水冷銅製るつぼの内壁面の隙間に浸入した溶湯が下方に流れ落ちて、装置を汚損するといった問題も発生することがない。
本発明の請求項3記載のTiAl基合金の鋳塊製造方法によると、耐熱セラミック製の詰め物によって、底盤の外周面と水冷銅製るつぼの内壁面の隙間に浸入した溶湯が下方に流れ落ちて、装置を汚損するといった問題の発生を確実に防止することができる。
本発明の請求項4記載のTiAl基合金の鋳塊製造方法によると、溶解初期の熱応力による底盤本体の変形を防止することができると共に、底盤を1回の溶解時だけではなく複数回の溶解時に亘って使用することができる。また、底盤が無駄に長くなり、鋳塊の引き抜きに影響を及ぼすほどの不必要な長さとはならず、歩留まり低下もなくなる。
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて更に詳細に説明する。
本発明のTiAl基合金の鋳塊製造方法は、図1及び図2に示すような、るつぼ底1が上下方向に移動自在に形成された水冷銅製るつぼ2と、その水冷銅製るつぼ2の周囲を取り巻くように配置された高周波コイル4で成るコールドクルーシブル誘導溶解(CCIM)装置Aを用いて実施することができる。
このコールドクルーシブル誘導溶解装置Aを用いて、Ti、Al、Cr、V、Nb、Mn等で成る溶解原料3から製造される鋳塊5は円柱状であって、その寸法が、直径200mm以上、その直径に対する高さ寸法が1.5倍以上、即ち300mm以上のものを、本発明のTiAl基合金の鋳塊製造方法によって製造される対象の、いわゆる大型の鋳塊5とする。前記した寸法に達しない小型の鋳塊5であれば、特にコールドクルーシブル誘導溶解装置Aを用いなくても比較的容易に製造することができると共に、30kg以下の小型であって実用性がないため、本発明のTiAl基合金の鋳塊製造方法によって製造される対象の鋳塊5とはしない。尚、前記の説明では、鋳塊5の直径の下限と、その直径に対する高さ寸法の倍率の下限のみを示したが、特にそれらの上限については設定しない。但し、鋳塊5の直径は1000mm以下、直径に対する高さ寸法の倍率は5倍以下とすることが好ましい。
このコールドクルーシブル誘導溶解装置Aを構成する水冷銅製るつぼ2は、複数本の銅製セグメント9を円筒状に組み合わせて構成されており、底部には円形で銅製のるつぼ底1が配置されている。水冷銅製るつぼ2の内径は、例えば220mmである。複数本の銅製セグメント9、9、…の間には、0.05〜2mmのスリットが設けられており、それらスリットには、電気的絶縁のため、イットリア(Y)系セメント、或いはアルミナ(Al)系セメント等の絶縁材が埋め込まれている。高周波コイル4は、水冷銅製るつぼ2の周囲をその上下端をある程度残し、螺旋状に取り巻くように水冷銅製るつぼ2の表面より僅かに離れて設けられており、大出力の高周波電源10に接続されている。銅製セグメント9、るつぼ底1、高周波コイル4は夫々中空状であり、中空内部には冷却水が注入されている。るつぼ底1は、下方のシリンダ等の引き抜き機構13に連結されて上下方向に移動自在に構成されており、水冷銅製るつぼ2の銅製セグメント9で成る円筒状の本体から下方に引き出すように移動させることができる。
また、るつぼ底1の上面には、溶解開始時のスタート材となる底盤6が取り付けられる。底盤6は、図3(c)に示すように、純チタン材或いはチタン合金材で成る底盤本体6aのみで成る一層構造か、図3の(a)、(b)に夫々示すように、純チタン材或いはチタン合金材で成る底盤本体6aと、その上面に溶着された、溶解原料3と同材質の底盤上部材6bとで構成される二層構造となっている。
本発明の製造方法から得られる鋳塊5は、Ti−30Al−2Cr−2V−6Nb(質量%)合金や、Ti−30Al−3Cr−3V−4Mn(質量%)合金等のTiAl基(金属間化合物系)合金で成る鋳塊5である。そのため、底盤6にも鋳塊5と同材質のTiAl基合金を採用すれば、底盤6が溶解することによる鋳塊5の汚染はなくなると考えることができる。しかしながら、TiAl基合金は熱応力が作用すると非常に割れやすい合金であって、このTiAl基合金で底盤6を作製すれば、初期の溶湯プール11の形成時に、底盤6に大きな割れが発生することになり、安定した鋳塊5の引き抜きを行うことが不可能になる。そのため、底盤6に鋳塊5と同材質のTiAl基合金を採用することはできない。
本発明では、底盤6(底盤本体6a)には熱応力が作用しても割れにくい純チタン材或いはチタン合金材を採用した。純チタン材としては工業用純チタン材を、チタン合金材としてはAlを合金成分として含有するTi−6Al4V(質量%)合金を、夫々具体的な事例として例示することができる。底盤6(底盤本体6a)には炭素鋼やステンレス鋼も採用することができると考えることができるが、本発明の製造方法から得られる鋳塊5は、TiAl基合金から成る鋳塊5であり、炭素鋼やステンレス鋼の主成分であるFeは重大な汚染源となりうるため採用できないと考え、底盤6(底盤本体6a)の材質として、TiAl基合金の主成分であるTiを主体とする材料を採用することとした。底盤6(底盤本体6a)は、溶解初期に非常に高温となり、鋳塊5の引き抜きの際に引っ張り応力が作用するため、純チタン材はチタン合金材と比較して、底盤6(底盤本体6a)が変形しやすいという懸念もある。従って、底盤6(底盤本体6a)には、高温での強度がより高いチタン合金材を採用することのほうが望ましい。
底盤6は、純チタン材やチタン合金材で成る底盤本体6aだけで構成されていても良いが、後ほど説明するように、その上部は水冷銅製るつぼ2内に供給される初期の溶解原料3と共に、製造される鋳塊5のボトム部を形成する初期の溶湯プール11を形成するため、溶湯プール11の汚染を僅かにするためにも、できる限り溶解原料3と近似する材質とすることが望ましい。従って、底盤本体6aの上面に、溶解原料3と同材質の底盤上部材6bを溶着して、底盤6を二層構造とすることの方が望ましい。
尚、その底盤上部材6bの厚み(高さ寸法)は、50mm以下であることが望ましい。TiAl基合金は融点が比較的低く、溶解しやすいため、底盤上部材6bの全てが溶解して底盤6の外周面と水冷銅製るつぼ2の内壁面との間の隙間7に流れ込んでしまう危険性がある。底盤上部材6bの厚み(高さ寸法)が50mm超の場合、流れ込む量が大量になる可能性があり、鋳塊5を引き抜く際の大きな抵抗となることがあるので、50mm以下とすることが望ましい。また、その厚み(高さ寸法)の下限は、5mmであることが望ましい。下限は特になくても良いが、溶湯プール11の汚染を僅かにするという効果を具備するためには、最低限5mmは必要である。
前記したコールドクルーシブル誘導溶解装置Aは、真空チャンバーB内に設けられている。真空チャンバーB内の空気は、溶解原料3の溶解前に、拡散ポンプ(図示せず)により1.3×10−2Pa程度の圧力になるまで排気しておくことが、酸素ピックアップ防止のためには望ましい。TiAl基(金属間化合物系)合金の溶解では、その後、合金元素の蒸発ロスを抑制するため、不活性ガス(Arなど)を真空チャンバーB内に導入し、圧力は27〜80KPa程度にしておく。
以上のような構成のコールドクルーシブル誘導溶解装置A等を用いて、Ti、Al、Cr、V、Nb、Mn等で成る溶解原料3から、直径200mm以上、高さ寸法300mm以上の、円柱状で大型の鋳塊5を製造するが、以下、その鋳塊5の製造方法について説明する。
コールドクルーシブル誘導溶解装置A等を用いて鋳塊5を製造する作業を始める前に、溶解原料3を準備する。溶解原料3は、所定のTiAl基合金で成る鋳塊5を製造するために必要な配合割合を考慮し、Ti、Alのほか、適宜Cr、V、Nb、Mn等を配合したものとする。溶解原料3には、水冷銅製るつぼ2内に初期に供給される塊状溶解原料3aと、初期の溶解が終了した後、水冷銅製るつぼ2内に供給する複数本の棒状溶解原料3bがある。尚、溶解原料3は、必ずしも塊状溶解原料3aと複数本の棒状溶解原料3bでなくても良く、一度に供給する1個或いは複数の溶解原料3であっても良いし、初期に供給する原料と、追加供給する原料に分ける場合であっても、その形状、数量は問わない。
まず、溶解開始時のスタート材となる底盤6を上面に取り付けたるつぼ底1を所定の高さ位置に配置した状態で、水冷銅製るつぼ2の内部に、塊状溶解原料3aを供給する。この状態で、高周波コイル4に高周波電流を通電することにより、高周波コイル4による誘導発熱領域にある底盤6の上部と塊状溶解原料3aを同時に溶解する。溶解された底盤6の上部と塊状溶解原料3aは、初期の溶湯プール11を形成する。
次にるつぼ底1を下方に引き下げれば、るつぼ底1上の溶湯プール11は、高周波コイル4による誘導発熱領域から徐々に下方に抜き出されることとなり、その下方から凝固を開始する。尚、溶湯プール11のうち水冷銅製るつぼ2の内壁面に接触した外表面から、水冷により事前に凝固を開始して凝固スカルとなっているため、下方に抜き出しても流れ出すことはない。
溶湯プール11を徐々に下方に引き抜くにつれて、水冷銅製るつぼ2内の溶湯プール11の量が減少するため、その引き抜き量と見合う量の棒状溶解原料3bを上方より追加供給して溶解することにより、溶湯プール11の量を常に一定に保つことができる。この引き抜きによって凝固した部位が目的の鋳塊5となる。尚、上方より供給する棒状溶解原料3bは、複数本を束にして、真空チャンバーBの上部に設けた吊り下げ機構12に吊り下げた状態で、その下端部から溶湯プール11の減少量に見合った量だけ徐々に供給される。
この引き抜き法によって作製される鋳塊5には、一般に行われている重力鋳造法で作製する鋳塊5のように中心部に引け巣欠陥が発生することはなく、健全な鋳塊5を製造することができる。TiAl基合金のように特に割れやすい合金材料の鋳塊製造方法として、この引き抜き法は適したものということができる。
次に、本発明の要点の一つである溶解開始時の底盤6の配置位置について、図3(a)〜(c)に基づき説明する。
溶解開始時の底盤6の上面位置は、高周波コイル4の下端位置以上の位置になるようにして配置される。このように配置することにより、少なくとも底盤6の上部を、高周波コイル4による誘導発熱領域に配置することができ、水冷銅製るつぼ2内に初期に供給される塊状溶解原料3a(図3には図示せず)と共に溶解して、溶湯プール11を形成することができる。底盤6の上部を塊状溶解原料3aと共に溶解して溶湯プール11(図3には図示せず)を形成することで、底盤6は鋳塊5と一体と成るので、鋳塊5とるつぼ底1は強固に連結され、続いて行う鋳塊5の下方への引き抜き作業を確実に行うことができる。
溶解開始時の底盤6の上面位置が、高周波コイル4の下端位置より下に位置する場合には、底盤6が高周波コイル4による誘導発熱領域を外れるため、底盤6が塊状溶解原料3aと共に溶解して溶湯プール11を形成することができない。その結果、鋳塊5とるつぼ底1が強固に連結されないこととなり、鋳塊5の引き抜きができないという問題を発生することとなる。
尚、図3(c)に示すように、底盤6が一層構造の場合は、底盤6は、純チタン材或いはチタン合金材で成る底盤本体6aだけで構成されており、図3(a),(b)に示すように、底盤6が二層構造の場合は、底盤6は、純チタン材或いはチタン合金材で成る底盤本体6aと、溶解原料3と同材質の底盤上部材6bで構成されている。
また、溶解開始時の底盤本体6aの上面位置は、高周波コイル4の下端位置より少なくとも上方7mmが上限となるようにして配置される(例えば、図3(c)に示すXが7mmの場合が上限)。このように配置することにより、底盤本体6aを形成する純チタン材やチタン合金材の溶湯プール11への溶け込み量を抑制することができ、初期の溶湯プール11の凝固により形成される鋳塊5のボトム部におけるTi濃度の上昇、それに伴うAlやその他の合金成分の濃度低下を抑制することができる。尚、底盤6が二層構造の場合に限定されるが、溶解開始時の底盤本体6aの上面位置は、高周波コイル4の下端位置より下に配置することが、溶湯プール11に純チタン材やチタン合金材が溶け込まないということで望ましい。
また、溶解初期において、底盤6の上部が溶解する際、純チタン材或いはチタン合金材で成る底盤本体6aは高温に加熱されて膨張するため、底盤6(底盤本体6a)の外周面と水冷銅製るつぼ2の内壁面との間に隙間7を形成しておく必要がある。隙間7が狭すぎる場合は、純チタン材或いはチタン合金材で成る底盤本体6aが膨張して水冷銅製るつぼ2の内壁面に強く押し付けられる状況となる。そのため、鋳塊5を下方に引き抜こうとした際に、引き抜きのために設けられたシリンダや引き抜き用モータ等の引き抜き機構13に大きな負荷を生じて引き抜きができなくなる場合がある。一方、隙間7が広すぎる場合は、溶湯が隙間7に流入して下方に流れ落ちて装置を汚損したり、下方で凝固して鋳塊5の引き抜き時の障害となったりすることがある。
このような事態になることを避けるために、底盤6(底盤本体6a)の外周面と水冷銅製るつぼ2の内壁面との間の隙間7は、1〜8mmとする必要がある。1mmより狭い隙間7や、8mmより広い隙間7であれば、前記したような問題を生じることがある。より好ましい隙間7の広さは2〜5mmである。
隙間7には、溶湯が流入して下方に流れ落ちることを防止するために、図3(b)に示すように、隙間7を耐熱セラミック製の布状になった詰め物8で埋めておくことが有効である。このように隙間7を詰め物8で埋める場合であっても、8mmより広い隙間7の場合は均一に埋めることは難しいため、溶湯が隙間7に流入して下方に流れ落ちることは確実に防止することはできない。
更には、底盤本体6aの高さ寸法は、水冷銅製るつぼ2の内径の0.15〜0.5倍とすることが有効である。底盤本体6a自体は、最終的には切断して鋳塊5から除去するため、製品歩留まり上は短い方が望ましい。しかしながら、短過ぎると、溶解初期の熱応力による変形が激しくなり、底盤本体6aを保持しているるつぼ底1との接触が不十分となり、鋳塊5のるつぼ底1からの冷却が十分にできなくなる。また、底盤上部材6bの厚み(高さ寸法)にもよるが、底盤上部材6bの厚み(高さ寸法)が薄い場合、底盤本体6aの厚み(高さ寸法)と合わせた底盤6の総厚み(高さ寸法)が、再使用不可能な非常に薄い厚みとなってしまい、条件によれば一度の使用しかできなくなる。そのため、底盤本体6aの高さ寸法は、最低限でも、水冷銅製るつぼ2の内径の0.15倍は必要である。また、底盤本体6aの高さ寸法を無駄に長くしても意味がなく、鋳塊5の引き抜き時の引き抜き量が無駄に長くなるだけであるので、底盤本体6aの高さ寸法の上限は、水冷銅製るつぼ2の内径の0.5倍とすることが望ましい。
TiAl基合金の成分組成については、米国、日本などから多数の報告がでているが、ここでは合金成分を10質量%含有する以下の2種類のTiAl基合金について確認試験を実施した。TiAl基合金の成分組成として、Ti−30Al−3Cr−3V−4Mn(質量%)合金、及びTi−30Al−2Cr−2V−6Nb(質量%)を選択した。これら合金で成る鋳塊5を、コールドクルーシブル誘導溶解装置Aを用いることで、製造した。使用したコールドクルーシブル誘導溶解装置A、並びに真空チャンバーBの基本仕様は以下に示す通りである。
コールドクルーシブル誘導溶解装置Aは、周波数:3000Hz、出力:400kW(Max)の高周波電源10を有しており、製合盤を介して、水冷ケーブルにより高周波コイル4と接続されている。高周波コイル4は水冷銅製るつぼ2の外周を7周に亘り取り巻いており、その長さは256mmである。水冷銅製るつぼ2は、円筒状に組まれた24本の銅製セグメント9と、引き抜き機構13に取り付けられたるつぼ底1より構成されている。銅製セグメント9、るつぼ底1等の内部には冷却水が流されており、その冷却水の流量は400L/minである。また、コールドクルーシブル誘導溶解装置Aが収容された真空チャンバーBの内容量は10mである。
(実施例1)
実施例1では、様々な構成の底盤6を準備したが、その底盤本体6aは工業用純チタン材を用いて形成し、底盤6が二層構造の場合は、底盤上部材6bはTiAl−Mn合金、或いはTiAl−CrVNb合金を用いて形成した。これら様々な構成の底盤6をるつぼ底1上面に取り付けて、溶解開始時の底盤6の上面位置と、底盤本体6aの上面位置を様々な位置に配置することにより、請求項1に記載した製造方法についての効果を確認した。
この実施例1の試験で使用した水冷銅製るつぼ2の内径は、220mmであって、使用した溶解原料3は、Ti−30Al−3Cr−3V−4Mn(質量%)合金、或いはTi−30Al−2Cr−2V−6Nb(質量%)合金である。また、溶解原料3のうち、水冷銅製るつぼ2の内部に初期に供給する溶解原料3は、20kgの塊状溶解原料3aであって、追加供給用の溶解原料3は、複数本の棒状溶解原料3bを円柱状に束ねたもので、その総直径は140mm、長さは1000mm、総重量は60kgである。この追加供給用の溶解原料3は、真空チャンバーBの上部に設けられた吊り下げ機構12に吊り下げた状態で、その下端部から水冷銅製るつぼ2の内部に供給される。
まず、底盤6を溶解開始時の所定の位置に配置し、水冷銅製るつぼ2の内部に塊状溶解原料3aを供給した。その後、真空チャンバーBの内部の空気を拡散ポンプで6.7×10−2Paになるまで真空排気した後、高純度Arを27KPaまで充填して不活性ガス雰囲気とした。次に、高周波電源10の出力を入れて、100kW(10分間)→200kW(10分間)→260kW(10分間)で保持して、塊状溶解原料3aと底盤6の上部を溶解し、初期の溶湯プール11を形成させた。
その後、棒状溶解原料3bを下方に押し下げて、その下端部を前記溶湯プール11内に浸漬して溶解すると同時に、その溶解量に見合った分だけ鋳塊5を下方に引き抜くことで、常時、溶湯プール11の量を一定とする。鋳塊5を下方に引き抜く際の投入電力は300kWとし、その引き抜き速度を2mm/分として、連続的に鋳塊5の引き抜きを行うことで試験を実施した。試験で製造された鋳塊5は、直径215mm、長さ500mmの円柱状である。
以上の試験結果を表1及び表2に示す。表1は、Ti−30Al−3Cr−3V−4Mn(質量%)合金で成る鋳塊5を製造した実施例、表2は、Ti−30Al−2Cr−2V−6Nb(質量%)合金で成る鋳塊5を製造した実施例である。表1の場合、使用した溶解原料3は、Ti−30Al−3Cr−3V−4Mn(質量%)合金であり、底盤6が二層構造の場合は、底盤上部材6bはTiAl−CrVMn合金を用いて形成している。また、表2の場合、使用した溶解原料3は、Ti−30Al−2Cr−2V−6(質量%)Nb合金であり、底盤が二層構造の場合は、底盤上部材6bはTiAl−CrVNb合金を用いて形成している。
表1並びに表2に記載のXは、高周波コイル4の下端位置から底盤本体6aの上面位置までの寸法(mm)を示し、プラス(+)は底盤本体6aの上面位置が高周波コイル4の下端位置より上方にある場合を、マイナス(−)は底盤本体6aの上面位置が高周波コイル4の下端位置より下方にある場合を夫々示す。また表1に記載のYは、底盤上部材6bの高さ寸法(厚み:mm)を示し、0と記載されたものは、底盤6が底盤本体6aだけで成る一層構造のものを示す。
試験では、製造された鋳塊5のボトム部において、底盤本体6aの上面位置から13mmの位置より分析試料を採取し、ICP発光分析法で成分組成を測定した。表1においては、Alが28.0〜30.5質量%、Crが2.5〜3.5質量%、Vが2.5〜3.5質量%、Mnが3.0〜5.0質量%のものを、表2においては、Alが28.0〜30.5質量%、Crが1.5〜2.5質量%、Vが1.5〜2.5質量%、Nbが5.0〜7.0質量%のものを、夫々合格とし、その範囲外のものを、鋳塊5が底盤6のTiで汚染されたものと判断して不合格とした。尚、この試験では、全ての発明例、比較例において、溶解開始時の前記底盤6の上面位置を、前記高周波コイル4の下端位置より上方になるようにして配置した。
表1における発明例1〜4、表2における発明例5〜8は、夫々溶解開始時の底盤本体6aの上面位置を、高周波コイル4の下端位置より上方7mmから下方10mmまでの範囲で変化させた事例である。発明例1〜3や発明例5〜7では、底盤本体6aと底盤上部材6bで成る二層構造の底盤6を用い、発明例と発明例8では、底盤本体6aだけで成る一層構造の底盤6を用いた。
発明例1〜4と発明例5〜8の全てで、製造された鋳塊5のボトム部の成分組成は、全て合格判定基準内であった。これは、初期の溶湯プール11内に溶融した底盤本体6aからのTiの量が僅か、或いは皆無であり、鋳塊5のボトム部への底盤6からのTiによる汚染の影響が少なかったことを示している。特に発明例1〜3や発明例5〜7では、高周波コイル4による誘導発熱領域から工業用純チタン材で成る底盤本体6aが外れて配置されたため、工業用純チタン材の溶湯プール11への溶け込み量は非常に僅かか、或いは皆無であった。従って、初期の溶湯プール11の凝固により形成された鋳塊5のボトム部において、表1の場合はAlやMnの濃度低下を、表2の場合はAl、Cr、V、Nbの濃度低下を、夫々抑制することができたと判断することができる。発明例4や発明例8では、工業用純チタン材で成る底盤本体6aの上部が僅かに(7mm)、高周波コイル4による誘導発熱領域に位置することになった。しかしながら、底盤本体6aからのTiの初期の溶湯プール11内への溶け込み量は夫々許容できる範囲内で、それに伴う溶湯プール11全体に占めるAl、Mn、Cr、V、Nbの濃度低下は僅かであって、合格判定基準内に納まったと判断することができる。
これに対し、比較例1〜4や比較例5〜8の全てで、製造された鋳塊5のボトム部の成分組成は、合格判定基準を外れることとなった。これら全ての比較例では、溶解開始時の工業用純チタン材で成る底盤本体6aの上面位置が、高周波コイル4の下端位置より7mmを超えて上方に位置した。従って、初期の溶湯プール11内に溶融した底盤本体6aからのTiの量が大量で、それに伴う溶湯プール11全体に占めるAl、Mn、Cr、V、Nbの濃度低下が大きく、鋳塊5のボトム部への底盤6からのTiによる汚染の影響が多かったことを示している。
(実施例2)
実施例2では、請求項2に記載した底盤本体6aの外周面と水冷銅製るつぼ2の内壁面との間に形成される隙間7の影響を確認した。試験条件については、「使用した水冷銅製るつぼ2の内径が250mm」、「追加供給用の複数本の棒状溶解原料3bを円柱状に束ねたものの、総直径が160mm、長さは1000mm、総重量は100kg」、「製造した鋳塊5は、直径が245mm、長さが550mmの円柱状」とした点を除けば実施例1と略同一である。また、鋳塊5は、Ti−30Al−3Cr−3V−4Mn(質量%)合金で形成したが、Ti−30Al−2Cr−2V−6Nb(質量%)合金等他のTiAl基合金であっても同じ結果を得ることができる。
試験結果を表3に示す。表3に記載のWは、底盤本体6aの外周面と水冷銅製るつぼ2の内壁面との間に形成された隙間7の幅(mm)を示し、同じく表3に記載のLは、底盤本体6aの高さ寸法(厚み:mm)を示す。
底盤本体6aの外周面と水冷銅製るつぼ2の内壁面との間に形成された隙間7の幅を1〜8mmの範囲内とした発明例9〜11では、全てスムーズに鋳塊5の引き抜きができた(評価:○)。これに対し、隙間7を0.05mmとした比較例9、隙間7を9mmとした比較例10では、引き抜き時に過負荷が発生し、鋳塊5の引き抜きができなかった(評価:×)。比較例9では、初期の加熱で底盤本体6aが膨張することによって鋳塊5の引き抜きに影響を生じたと考えることができ、比較例10では、初期の溶解時に底盤本体6aの外周面と水冷銅製るつぼ2の内壁面の隙間7に浸入した溶湯が、その隙間7内で凝固したためと考えられる。尚、隙間7を7mmとした発明例11でも、引き抜きには影響がでなかったものの、隙間7内に少量の溶湯が浸入した形跡が認められた。
(実施例3)
実施例3では、請求項4に記載の、底盤本体6aの高さ寸法を水冷銅製るつぼ2の内径に対して、どの程度の比率にすれば良いかという点を確認した。試験条件は、前記の実施例2と全て同一である。また、鋳塊5は、Ti−30Al−3Cr−3V−4Mn(質量%)合金で形成したが、実施例2と同様に、Ti−30Al−2Cr−2V−6(質量%)Nb合金等他のTiAl基合金であっても同じ結果を得ることができる。
試験結果を表4に示す。表3と同様に、表4に記載のWは、底盤本体6aの外周面と水冷銅製るつぼ2の内壁面との間に形成された隙間7の幅(mm)を示し、同じく表4に記載のLは、底盤本体6aの高さ寸法(厚み:mm)を示す。尚、発明例10は表3に記載の発明例10と同一のものである。
水冷銅製るつぼ2の内径に対する底盤本体6aの高さ寸法の比率を、0.15〜0.5倍の範囲内とした発明例10,12では、全てスムーズに鋳塊5の引き抜きができた(評価:○)。これに対して、水冷銅製るつぼ2の内径に対する底盤本体6aの高さ寸法の比率を、0.1倍とした比較例11では、溶解初期の熱応力による底盤6の変形が大きく鋳塊5を引き抜くことは不可能であった(評価:×)。また、水冷銅製るつぼ2の内径に対する底盤本体6aの高さ寸法の比率を、0.6倍とした比較例12では、引き抜きはできたものの、底盤本体6aが無駄に長くなり実用的なものではなく、歩留まり低下を招くだけのものであった(評価:△)。
本発明の一実施例を示す縦断面図である。 同実施例のコールドクルーシブル誘導溶解装置を示す縦断面斜視図である。 同実施例の底盤と高周波コイルの位置関係の概略を示し、(a)〜(c)は夫々底盤の配置位置が異なる状態を示す縦断面模式図である。
符号の説明
1…るつぼ底
2…水冷銅製るつぼ
3…溶解原料
3a…塊状溶解原料
3b…棒状溶解原料
4…高周波コイル
5…鋳塊
6…底盤
6a…底盤本体
6b…底盤上部材
7…隙間
8…詰め物
9…銅製セグメント
10…高周波電源
11…溶湯プール
12…吊り下げ機構
13…引き抜き機構
A…コールドクルーシブル誘導溶解装置
B…真空チャンバー

Claims (4)

  1. るつぼ底が上下方向に移動自在に形成された水冷銅製るつぼの内部に供給した溶解原料を、その水冷銅製るつぼの周囲を取り巻く高周波コイルによる誘導加熱で溶解して、前記るつぼ底を下方に移動させることにより、直径200mm以上、直径に対する高さ寸法がその1.5倍以上の、TiAl基合金で成る鋳塊を製造するTiAl基合金の鋳塊製造方法であって、
    前記るつぼ底の上面に溶解開始時の溶解スタート材となる底盤を設け、その底盤を、純チタン材或いはチタン合金材で成る底盤本体のみの一層構造か、純チタン材或いはチタン合金材で成る底盤本体とその上面に溶着された前記溶解原料と略同材質の底盤上部材で構成される二層構造とし、
    溶解開始時の前記底盤本体の上面位置が、前記高周波コイルの下端位置より上方7mm以下の位置となるようにして配置すると共に、
    溶解開始時の前記底盤の上面位置が、前記高周波コイルの下端位置以上の位置になるようにして配置することを特徴とするTiAl基合金の鋳塊製造方法。
  2. 溶解開始時に、純チタン材或いはチタン合金材で成る前記底盤本体の外周面と、前記水冷銅製るつぼの内壁面との間に、1〜8mmの隙間を形成することを特徴とする請求項1記載のTiAl基合金の鋳塊製造方法。
  3. 前記隙間に、耐熱セラミック製の詰め物を充填することを特徴とする請求項2記載のTiAl基合金の鋳塊製造方法。
  4. 純チタン材或いはチタン合金材で成る前記底盤本体の高さ寸法は、前記水冷銅製るつぼの内径の0.15〜0.5倍であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のTiAl基合金の鋳塊製造方法。
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