<第1実施形態>
(1)全体構成
図1は、本発明の第1実施形態にかかる車両の車室前部の構成を示す図である。本図に示すように、車室前部には、車幅方向に延びるインストルメントパネル2が設けられている。インストルメントパネル2の運転席側(図1では左側)にはメータユニット3が設けられ、このメータユニット3の後方にはステアリングハンドル4が設けられている。インストルメントパネル2の車幅方向中央部から車両後方に向かってセンターコンソール5が設けられ、このセンターコンソール5上にシフト装置1が設けられている。
第1実施形態において、車両は、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジン等の内燃機関からなるエンジン(図示省略)と、エンジンの駆動力を減速しつつ車輪に伝達する多段式の自動変速機50(図8)とを備えている。自動変速機50は、車速やエンジン負荷等に応じて自動的に減速比を選択する変速機(AT)である。この自動変速機50の変速レンジには、駆動力伝達が切断されるニュートラルレンジと、駆動力伝達が切断された上に出力軸がロックされるパーキングレンジと、車両を前進させる方向に駆動力を伝達するドライブレンジ(前進走行レンジ)と、車両を後退させる方向に駆動力を伝達するリバースレンジ(後退走行レンジ)とが存在する。シフト装置1は、このように複数存在する自動変速機の変速レンジの中から所望のレンジを選択するために操作されるものである。
図2は、シフト装置1を拡大して示す平面図である。この図2および先の図1に示すように、シフト装置1は、メイン操作部7と、パーキングスイッチ8と、インジケータ9とを備えている。なお、図2において、矢印Fは車両の前方を示し、矢印Lは車両の左方を示している。このことは、図2以降の他の図面でも同様である。
パーキングスイッチ8は、自動変速機50の変速レンジをパーキングレンジに切り替えるときに操作されるプッシュ式のボタンスイッチである。また、パーキングスイッチ8の上面には、「P」という文字の文字盤が設けられ、パーキングレンジが選択されるとLED等の光源により上記「P」の文字が強調表示されるようになっている。すなわち、パーキングスイッチ8は、パーキングレンジに切り替えるためのスイッチとしての機能だけでなく、パーキングレンジが選択されていることを表示するインジケータとしての機能も兼ね備えている。
メイン操作部7は、自動変速機50の変速レンジをパーキングレンジ以外のレンジ(つまりドライブ、リバース、ニュートラルのいずれかのレンジ)に切り替えるときに操作されるものである。詳しくは後述するが、第1実施形態におけるメイン操作部7は、前後方向に傾動させる等の操作が可能である。このメイン操作部7に対する操作パターンの違いにより、自動変速機50の変速レンジがドライブ、リバース、ニュートラルのいずれかのレンジに切り替わるようになっている。
インジケータ9は、現在選択されている変速レンジを表示するものである。図2に例示されるインジケータ9の場合、リバースレンジを表す「R」、ニュートラルレンジを表す「N」、ドライブレンジを表す「D」の文字盤が、前方から順に設けられている。そして、メイン操作部7の操作に応じてドライブ、リバース、ニュートラルのいずれかのレンジが選択されたときには、その選択中のレンジに対応した文字(R,N,Dのいずれか)が強調表示されるようになっている。
さらに、上記のようなインジケータ9による変速レンジの表示に加えて、第1実施形態では、メータユニット3にも変速レンジが表示されるようになっている。すなわち、メータユニット3は、その所定箇所(例えばスピードメータとタコメータとの間)に液晶画面等からなる表示部を有しており、その表示部に、選択中の変速レンジに対応した文字(P,R,N,D)が表示されるようになっている。
次に、シフト装置1のメイン操作部7の具体的構造について、図2〜図7を用いて説明する。これらの図に示すように、メイン操作部7は、シフトレバー10と、シフトレバー10を前後方向に傾動可能に支持する本体部20とを有している。
シフトレバー10は、請求項にいう「操作部材」に相当するものであり、ドライバーにより把持されるシフトノブ11と、シフトノブ11から下方に延びる棒状のレバー部12と、レバー部12の下端に設けられた球体部13と、球体部13から斜め下方に突出するディテント用脚部14およびガイド用脚部15とを有している。
シフトノブ11にはプッシュボタン40が設けられている。プッシュボタン40は、請求項にいう「スイッチ部」に相当するものであり、押圧操作されることで所定の信号を発信する接点(図示省略)を内蔵したプッシュ式のボタンスイッチである。シフトレバー10を操作するドライバーは、シフトノブ11を把持しながら、その手の親指等を用いてプッシュボタン40を押圧操作することが可能である。
ディテント用脚部14は、球体部13の下面から斜め下方に延びる中空状の脚本体14bと、脚本体14bの先端からさらに下方に突出する付勢部14aとを有している。付勢部14aは、脚本体14bの内部に設けられた圧縮スプリング(図示省略)により下方に押圧されている。このような付勢部14aは、圧縮スプリングを押し戻す上向きの力を受けて上昇し、その力が減少すると下降するというように、脚本体14bに対し進退自在に支持されている。
ガイド用脚部15は、球体部13の下面から斜め下方に延びる棒状の部材である。第1実施形態では、ディテント用脚部14が左側に傾斜しているのに対し、ガイド用脚部15は右側に傾斜するように設けられている。
本体部20は、上面が開口した箱状の筐体21と、筐体21の上面の開口を覆うように取り付けられるカバー部22とを有している。
カバー部22には、シフトレバー10のレバー部12が挿通される円形の挿通穴22aが形成されている。この挿通穴22aの内径は、レバー部12の外径よりも所定量大きい値に設定されている。
筐体21の内部には、シフトレバー10の球体部13を包み込んで支持するレバー支持部23が、その左右の連結部24を介して架設されている。レバー支持部23は、上面および下面が開口した中空状の部材であり、球体部13の外周面に沿うように形成された部分球面状の内周面を有している。このようなレバー支持部23に支持された球体部13は、レバー支持部23の内部で自在に回転することが可能である。
筐体21は、その下壁部に、V字状に傾斜した第1傾斜面部21aおよび第2傾斜面部21bを有している。第1傾斜面部21aは、シフトレバー10のディテント用脚部14と対向し、ディテント用脚部14の軸心と略直交する面に沿って形成されている。第2傾斜面部21bは、シフトレバー10のガイド用脚部15と対向し、ガイド用脚部15の軸心と略直交する面に沿って形成されている。
第1傾斜面部21aの上面には、下方に凹んだ部分球面状の球状受け面25aを有する誘導部材25が設けられている。球状受け面25aには、シフトレバー10のディテント用脚部14の先端部、つまり付勢部14aが、圧縮スプリングによる押圧力を受けて常時押し付けられている。
付勢部14aは、球状受け面25aの中心部(凹球面の底部)に当接しているときに脚本体14bから最も進出し、付勢部14aの当接位置が球状受け面25aの中心部から離れるほど、圧縮スプリングの押圧力に反して後退する。後退した付勢部14aは、圧縮スプリングにより球状受け面25aに強く押し付けられ、その押し付け力が、付勢部14aを球状受け面25aの中心部に戻そうとする力に変換される。このため、シフトレバー10に対し乗員の手による操作力(シフトレバー10を傾動させる力)が加えられていない状態では、シフトレバー10は、付勢部14aが球状受け面25aの中心部に位置する状態に保持される。このように付勢部14aが球状受け面25aの中心部に位置しているとき、シフトレバー10は鉛直方向に起立した姿勢となるが、以下では、この状態におけるシフトレバー10の位置を「ホーム位置」と称する。
一方で、上記ホーム位置にあるシフトレバー10が操作力を受けて所定の方向に傾動変位すると、付勢部14aが球状受け面25aの中心部から離間し、それに伴い上述したとおり、付勢部14aを球状受け面25aの中心部に戻そうとする力が発生する。このため、上記シフトレバー10に対する操作力が解除されると、シフトレバー10はおのずと上記ホーム位置に復帰することになる。
以上のように、第1実施形態では、凹状の部分球面からなる球状受け面25aと、これに常時押し付けられる付勢部14aとにより、変位後のシフトレバー10をホーム位置に自動的に復帰させるディテント機構30が構成されている。言い換えると、このようなディテント機構30を備えた第1実施形態のシフト装置1は、いわゆるモメンタリ式のシフト装置の部類に属する。
図5、図6に示すように、第2傾斜面部21bの上面には、前後方向に延びるガイド溝27を有したガイド部材26が設けられている。ガイド溝27には、シフトレバー10のガイド用脚部15の先端部が摺動可能に嵌合されている。シフトレバー10は、このようにガイド用脚部15がガイド溝27に嵌合された状態で上述したレバー支持部23により支持されることで、ガイド溝27に沿って前後方向にのみ傾動変位することが可能とされている。
図7(a)は、シフトレバー10が上記ホーム位置にあるときの状態を示している。シフトレバー10がホーム位置にあるとき、つまり、付勢部14aが球状受け面25aの中心部にあってシフトレバー10が鉛直方向に起立しているとき、ガイド用脚部15の先端部は、ガイド溝27の前後方向の中央に配置される。
この状態から、図7(b)のようにシフトレバー10が前方に傾動変位すると、ガイド用脚部15の先端部がガイド溝27に沿って後方に移動する。また、図7(c)のようにシフトレバー10が後方に傾動変位すると、ガイド用脚部15の先端部がガイド溝27に沿って前方に移動する。そして、ガイド用脚部15がガイド溝27の後端部27bに当接した時点で、シフトレバー10はそれ以上前方に変位することができなくなり、ガイド用脚部15がガイド溝27の前端部27aに当接した時点で、シフトレバー10はそれ以上後方に変位することができなくなる。言い換えると、シフトレバー10は、ガイド用脚部15がガイド溝27の前端部27aに当接する位置から後端部27bに当接する位置までの範囲に限り、前後方向に自由に傾動変位することができる。なお、本体部20のカバー部22に設けられた挿通穴22aの内径は、ガイド用脚部15がガイド溝27の前端部27aから後端部27bまで移動するのに伴うレバー部12の前後方向移動を許容し得る大きさに設定されている。
図6に示すように、ガイド溝27の前端部27aには第1圧力センサ31が取り付けられ、ガイド溝27の後端部27bには第2圧力センサ32が取り付けられている。これら第1、第2圧力センサ31,32は、請求項にいう「第1操作力検出手段」および「第2操作力検出段」に該当するもので、シフトレバー10の操作力を検出するためのセンサである。具体的に、第1圧力センサ31(第1操作力検出手段)は、シフトレバー10の後方への操作力として、ガイド溝27の前端部27aに当接したガイド用脚部15から受ける圧力を検出する。同様に、第2圧力センサ32(第2操作力検出手段)は、シフトレバー10の後方への操作力として、ガイド溝27の後端部27bに当接したガイド用脚部15から受ける圧力を検出する。
(2)制御系統
図8は、第1実施形態のシフト装置1に関する制御系統を示すブロック図である。本図に示されるコントローラ60は、周知のCPU、RAM、ROM等を含むマイクロコンピュータからなるもので、請求項にいう「制御手段」に相当するものである。すなわち、コントローラ60は、シフト装置1の操作状態に応じて自動変速機50の変速動作を制御する等の機能を有している。なお、図8ではコントローラ60が一体のブロックとして表されているが、コントローラ60は、例えば車体側と自動変速機50側とにそれぞれ分割して設けられた複数のマイクロコンピュータから構成されるものであってもよい。
コントローラ60は、上述したパーキングスイッチ8、第1、第2圧力センサ31,32、プッシュボタン40、自動変速機50(より詳しくはその変速アクチュエータ50a)、インジケータ9、およびメータユニット3と電気的に接続されている。なお、自動変速機50の変速アクチュエータ50aとは、例えば、自動変速機50に内蔵されるクラッチやブレーキ等の摩擦締結要素の締結・解放を切り替えるソレノイドバルブ等のことである。
また、車両には、ブレーキペダルが踏み込み操作されているか否かを検出するためのブレーキセンサ(ブレーキスイッチ)42が設けられており、このブレーキセンサ42もコントローラ60と電気的に接続されている。
コントローラ60は、パーキングスイッチ8に内蔵された接点からの信号に応じて、パーキングスイッチ8が押圧操作されたか否かを判定する。また、第1、第2圧力センサ31,32からの信号に応じて、シフトレバー10が前後方向のいずれに傾動操作されたか、およびその際のシフトレバー10に対する操作力がどの程度かを判定する。さらに、プッシュボタン40に内蔵された接点からの信号に応じて、プッシュボタン40が押圧操作されたか否かを判定する。そして、このようにして判定されるシフト装置1の操作状態に基づいて、自動変速機50の変速レンジの切り替え制御や、インジケータ9およびメータユニット3の表示制御(現在の変速レンジを表示する制御)等を実行する。
また、コントローラ60は、いわゆるシフトロック機能を有する。すなわち、コントローラ60は、ブレーキセンサ42からの信号に基づいてブレーキペダルがオフ状態である(ブレーキペダルが踏み込まれていない)ことが確認された場合に、パーキングレンジから他のレンジへの切り替えを禁止する機能を有している。
(3)変速パターン
以上のようなコントローラ60の制御の下、第1実施形態では、シフト装置1のシフトパターンが、図9(a)〜(d)および図10のように設定されている。以下、各図の内容について詳しく説明する。
(パーキングレンジからのシフトパターン)
図9(a)は、現在の変速レンジがパーキングレンジである状態から変速操作を開始した場合のシフトパターンを示している。本図において、中央に表記された「P」は、シフトレバー10がホーム位置に保持されているデフォルト状態でパーキングレンジが選択されていることを示している。また、この「P」の前方に表記された「N」は、シフトレバー10がホーム位置から前方に傾動操作されるとニュートラルレンジに切り替わることを示している。同様に、「P」の後方に表記された「N」は、シフトレバー10がホーム位置から後方に傾動操作されるとニュートラルレンジに切り替わることを示している。
さらに、前方側の「N」の右側に白抜き矢印(button push)を挟んで表記された「R」は、シフトレバー10の前方への傾動操作の後さらにプッシュボタン40が押圧操作されるとリバースレンジに切り替わることを示している。同様に、後方側の「N」の右側に白抜き矢印(button push)を挟んで表記された「D」は、シフトレバー10の後方への傾動操作の後さらにプッシュボタン40が押圧操作されるとドライブレンジに切り替わることを示している。
以上をまとめると、現在の変速レンジがパーキングレンジであるときのシフトパターンは、図10において「現レンジ」=「P」の列にも示されるとおり、
・前方へのレバー操作 → ニュートラルレンジ
・前方へのレバー操作&ボタンプッシュ → リバースレンジ
・後方へのレバー操作 → ニュートラルレンジ
・後方へのレバー操作&ボタンプッシュ → ドライブレンジ
のようになる。
なお、このようなシフトパターンにおいて、ドライブレンジに切り替えるためにシフトレバー10を「後方」に傾動操作することは、請求項にいう「第1方向」への変位操作に相当し、リバースレンジに切り替えるためにシフトレバー10を「前方」に傾動操作することは、請求項にいう「第2方向」への変位操作に相当する。
(リバースレンジからのシフトパターン)
図9(b)は、現在の変速レンジがリバースレンジである状態から変速操作を開始した場合のシフトパターンを示している。本図において、中央の「R」の前方に表記された「空」と、さらにその右側に表記された「空」は、リバースレンジが選択されている状態でシフトレバー10がホーム位置から前方に傾動操作され、あるいは、その状態からさらにプッシュボタン40が押圧操作されても、それらの操作が無効とされることを示している。操作が無効である場合、現在の変速レンジ(ここではリバースレンジ)が維持された上で、例えばメータユニット3内の所定の表示部に、操作が無効である旨を報知するメッセージが表記される。
逆に、リバースレンジが選択されている状態でシフトレバー10がホーム位置から後方に傾動操作された場合には、変速レンジがリバースレンジからニュートラルレンジに切り替えられる。さらに、シフトレバー10の後方への傾動操作に加えてプッシュボタン40の押圧操作が行われた場合には、変速レンジがドライブレンジに切り替えられる。
以上をまとめると、現在の変速レンジがリバースレンジであるときのシフトパターンは、図10において「現レンジ」=「R」の列にも示されるとおり、
・前方へのレバー操作 → 無効
・前方へのレバー操作&ボタンプッシュ → 無効
・後方へのレバー操作 → ニュートラルレンジ
・後方へのレバー操作&ボタンプッシュ → ドライブレンジ
のようになる。
(ニュートラルレンジからのシフトパターン)
図9(c)は、現在の変速レンジがニュートラルレンジである状態から変速操作を開始した場合のシフトパターンを示している。本図によれば、現在の変速レンジがニュートラルレンジであるときにシフトレバー10がホーム位置から前方または後方に傾動操作されても、変速レンジはニュートラルレンジのまま変化しない。なお、操作自体が無効(空)とされているわけではないので、メータユニット3には特にメッセージは表示されない。一方、ニュートラルレンジからリバースまたはドライブレンジに切り替えるには、上述した図9(a)のパターン(パーキングレンジからのシフトパターン)と同様の操作が必要である。すなわち、リバースレンジに切り替えるには、シフトレバー10の前方への傾動操作の後さらにプッシュボタン40の押圧操作を行う必要があり、ドライブレンジに切り替えるには、シフトレバー10の後方への傾動操作の後さらにプッシュボタン40の押圧操作を行う必要がある。
以上をまとめると、現在の変速レンジがニュートラルレンジであるときのシフトパターンは、図10において「現レンジ」=「N」の列にも示されるとおり、
・前方へのレバー操作 → ニュートラルレンジ(現状維持)
・前方へのレバー操作&ボタンプッシュ → リバースレンジ
・後方へのレバー操作 → ニュートラルレンジ(現状維持)
・後方へのレバー操作&ボタンプッシュ → ドライブレンジ
のようになる。
(ドライブレンジからのシフトパターン)
図9(d)は、現在の変速レンジがドライブレンジである状態から変速操作を開始した場合のシフトパターンを示している。本図によれば、現在の変速レンジがドライブレンジであるときにシフトレバー10がホーム位置から後方に傾動操作されたり、さらにその状態からプッシュボタン40が押圧操作されても、それらの操作は無効とされる。逆に、シフトレバー10が前方に傾動操作された場合には、変速レンジがドライブレンジからニュートラルレンジに切り替えられ、シフトレバー10の前方への傾動操作の後さらにプッシュボタン40の押圧操作が行われた場合には、変速レンジがリバースレンジに切り替えられる。
以上をまとめると、現在の変速レンジがドライブレンジであるときのシフトパターンは、図10において「現レンジ」=「D」の列にも示されるとおり、
・前方へのレバー操作 → ニュートラルレンジ
・前方へのレバー操作&ボタンプッシュ → リバースレンジ
・後方へのレバー操作 → 無効
・後方へのレバー操作&ボタンプッシュ → 無効
のようになる。
なお、図示を省略しているが、現在の変速レンジがいずれであるかにかかわらず、シフトレバー10をホーム位置に保持したままプッシュボタン40を押圧操作した場合、その押圧操作は無効とされる。
また、パーキングレンジ以外の変速レンジからパーキングレンジに切り替えたい場合には、シフトレバー10を用いずに、パーキングスイッチ8を押圧操作する。すなわち、現在の変速レンジがリバース、ニュートラル、ドライブのいずれかのレンジであるときにパーキングスイッチ8を押圧操作すると、それだけで変速レンジがパーキングレンジに切り替わる。
(走行レンジ切り替え時の判定ロジック)
ここで、走行レンジへの切り替えを許可するか否かの判定ロジックについて具体的に説明する。なお、ここでいう走行レンジとは、駆動力が車輪に伝達される(車両の走行を許可する)変速レンジのことであり、第1実施形態ではドライブレンジおよびリバースレンジのいずれかのことである。逆に、非走行レンジとは、車輪への駆動力伝達が切断される変速レンジのことであり、第1実施形態ではパーキングレンジおよびニュートラルレンジのいずれかのことである。
上述したように、変速レンジを非走行レンジ(パーキングレンジまたはニュートラルレンジ)から走行レンジ(ドライブレンジまたはリバースレンジ)に切り替えるには、図9(a)または(c)に示したように、シフトレバー10を前方または後方に傾動操作した上でさらにプッシュボタン40を押圧操作することが必要である。このとき、コントローラ60は、ドライブまたはリバースレンジに切り替えてよいか否かの判定を、第1圧力センサ31または第2圧力センサ32から得られるシフトレバー10の操作力と、プッシュボタン40からの信号(ボタン押圧時に発せられる信号)の有無とに基づいて行う。すなわち、コントローラ60は、(i)シフトレバー10の後方への操作力(第1圧力センサ31の検出値)がある値を超えていること、(ii)プッシュボタン40からの信号入力があること、の2つの要件がともに成立したときに、ドライブレンジへの切り替えを許可する。また、(iii)シフトレバー10の前方への操作力(第2圧力センサ32の検出値)がある値を超えていること、(iv)プッシュボタン40からの信号入力があること、の2つの要件がともに成立したときには、リバースレンジへの切り替えを許可する。
図11は、シフトレバー10に関する上記要件(i)(iii)の成立をどのように判定するのかを説明するためのグラフである。本グラフにおいて、横軸はシフトレバー10の操作力を、縦軸は第1、第2圧力センサ31,32の出力値をそれぞれ表している。なお、横軸については、操作力がゼロのときを中心として、ドライブレンジに切り替わる方向(D方向)にシフトレバー10が操作されたときの操作力を中心よりも右側に示し、リバースレンジに切り替わる方向(R方向)にシフトレバー10が操作されたときの操作力を中心よりも左側に示している。上述したように、第1実施形態では、ドライブレンジに切り替えたいときはシフトレバー10を後方に傾動操作し、リバースレンジに切り替えたいときはシフトレバー10を前方に傾動操作させるので、グラフ中のD方向とは後方のことであり、R方向とは前方のことである。
図11のグラフに特性線Xとして示すように、第1圧力センサ31の出力値は、シフトレバー10の後方への操作力に比例して変化する。すなわち、シフトレバー10が後方側の変位限界(ガイド用脚部15がガイド溝27の前端部27aに当接する位置)まで操作されると、これに伴いガイド用脚部15が第1圧力センサ31を押圧することにより、第1圧力センサ31に圧力が加わる。この第1圧力センサ31に加わる圧力は、上記変位限界においてドライバーからシフトレバー10に加えられる後方への操作力が大きいほど増大する。このため、第1圧力センサ31の出力値は、シフトレバー10の後方への操作力に比例して変化する。
同様に、図11に特性線Yとして示すように、第2圧力センサ32の出力値は、シフトレバー10の前方への操作力に比例して変化する。すなわち、シフトレバー10が前方側の変位限界(ガイド用脚部15がガイド溝27の後端部27bに当接する位置)まで操作されると、これに伴いガイド用脚部15が第2圧力センサ32を押圧することにより、第2圧力センサ32に圧力が加わる。この第2圧力センサ32に加わる圧力は、上記変位限界においてドライバーからシフトレバー10に加えられる前方への操作力が大きいほど増大する。このため、第2圧力センサ32の出力値は、シフトレバー10の後方への操作力に比例して変化する。
図11のグラフにおいて、シフトレバー10の後方(D方向)への操作力T1と、前方(R方向)への操作力T2とは、それぞれ、上記要件(i)(iii)の成立を判定するための閾値である。以下では、T1を第1閾値、T2を第2閾値とする。
コントローラ60は、第1圧力センサ31の出力値が所定値αよりも大きくなると、シフトレバー10の後方への操作力が第1閾値T1を超えたことを認識し、そのことをもって、変速レンジをドライブレンジに切り替えるための上記要件(i)が成立したと判定する。そして、この要件(i)の成立に加えて、プッシュボタン40が押圧操作されて上記要件(ii)が成立した場合に、変速レンジをドライブレンジに切り替える。
また、コントローラ60は、第2圧力センサ32の出力値が所定値βよりも大きくなると、シフトレバー10の前方への操作力が第2閾値T2を超えたことを認識し、そのことをもって、変速レンジをドライブレンジに切り替えるための上記要件(iii)が成立したと判定する。そして、この要件(iii)の成立に加えて、プッシュボタン40が押圧操作されて要件(iv)が成立した場合に、変速レンジをリバースレンジに切り替える。
ここで、図11のグラフから明らかなように、リバースレンジへの切り替え時に用いられる第2閾値T2は、ドライブレンジへの切り替え時に用いられる第1閾値T1よりも大きく設定されている。すなわち、シフトレバー10が後方に傾動操作されたときは、その後方への操作力が第1閾値T1を超えていれば、さらにプッシュボタン40が押圧操作されたときに当該操作が受け付けられてドライブレンジへの切り替えが許可される。これに対し、シフトレバー10が前方に傾動操作されたときは、その前方への操作力が第1閾値T1よりも大きい第2閾値T2を超えたときにようやくプッシュボタン40の押圧操作が受け付けられて、リバースレンジへの切り替えが許可される。
以上説明したことは、走行レンジ間での切り替え、つまり、リバースレンジからドライブレンジへの切り替えもしくはその逆方向の切り替えを行うときでも同様である。例えば、変速レンジをリバースレンジからドライブレンジに切り替えるときにはシフトレバー10を後方に傾動操作し、変速レンジをドライブレンジからリバースレンジに切り替えるときにはシフトレバー10を前方に傾動操作するが(図9(b)(d)参照)、それぞれの場合に用いられるシフトレバー10の操作力の閾値としては、上述した第1閾値T1および第2閾値T2が用いられる。
すなわち、現在の変速レンジがリバースレンジである場合(図9(b))は、シフトレバー10の後方への操作力が第1閾値T1を超えた状態でプッシュボタン40が押圧操作されたときに、変速レンジがリバースレンジからドライブレンジに切り替えられる。また、現在の変速レンジがドライブレンジである場合(図9(d))は、シフトレバー10の前方への操作力が第2閾値T2を超えた状態でプッシュボタン40が押圧操作されたときに、変速レンジがドライブレンジからリバースレンジに切り替えられる。
(4)作用等
以上説明したように、第1実施形態にかかるシフト装置1では、変速レンジとして非走行レンジ(パーキングレンジ、ニュートラルレンジ)が選択されている状態でシフトレバー10がホーム位置から前方または後方のいずれかに傾動操作された場合にニュートラルレンジが選択される一方、シフトレバー10の傾動操作に加えてプッシュボタン40が押圧操作された場合には、変速レンジがドライブレンジまたはリバースレンジに切り替えられる。ドライブレンジへの切り替えは、ホーム位置から後方に傾動操作されたシフトレバー10の操作力が第1閾値T1を超えた状態でさらにプッシュボタン40が押圧操作されたときに実行され、リバースレンジへの切り替えは、ホーム位置から前方に傾動操作されたシフトレバー10の操作力が第1閾値T1よりも大きい第2閾値T2を超えた状態でさらにプッシュボタン40が押圧操作されたときに実行される。このような構成のシフト装置1によれば、安全性を確保しながら、素早くかつ簡便に走行レンジを選択することができる。
すなわち、上記第1実施形態では、非走行レンジが選択されている状態でシフトレバー10がホーム位置から前方または後方に傾動変位しても、ニュートラルレンジに切り替わるだけで、その状態でさらにプッシュボタン40が押圧されない限り走行レンジ(ドライブレンジまたはリバースレンジ)に切り替わらないので、シフトレバー10に誤って手が触れるなどの誤操作があったとしても、ドライバーの意に反して車両が発進するような事態が回避され、車両の安全性を十分に確保することができる。
ここで、上記第1実施形態とは異なる安全対策として、走行レンジへの切り替え時に、プッシュボタン40を最初に押圧操作するように要求することも考えられる。すなわち、シフトレバー10がホーム位置にある状態から、まずプッシュボタン40を押圧し、その押圧を維持したままシフトレバー10を傾動させるという操作が行われた場合に、走行レンジへの切り替えを許可することが考えられる。しかしながら、このようにすると、プッシュボタン40を押圧するためにシフトノブ11をしっかり握ったままシフトレバー10を傾動操作する必要があるので、素早くかつ簡便な操作を求めるドライバーにとっては煩わしさを感じる要因となり得る。
これに対し、上記第1実施形態では、変速レンジを走行レンジ(ドライブレンジまたはリバースレンジ)に切り替えたいときは、まずシフトレバー10を傾動操作し、その上でプッシュボタン40を押圧操作すればよいので、操作の初期段階にかかる負担が少なく済み、走行レンジへの切り替え操作を素早くかつ簡便に行うことができる。すなわち、最初からプッシュボタン40の押圧を要求する上述したケースとは異なり、プッシュボタン40を押圧しながらシフトレバー10を操作する必要がないので、シフトレバー10をしっかり握る必要がなく、比較的軽快な操作でシフトレバー10を動かすことができる。そして、このようにシフトレバー10を軽快に操作した後、最後にプッシュボタン40を押圧すれば走行レンジに切り替えることができるので、安全性を確保しながら優れた操作性を実現することができる。
さらに、上記第1実施形態では、ドライブレンジに切り替えるためにシフトレバー10が後方に傾動操作されたときは、その後方への操作力が第1閾値T1を超えたことを条件に、プッシュボタン40の押圧操作が受け付けられてドライブレンジに切り替わるのに対し、リバースレンジに切り替えるためにシフトレバー10が前方に傾動操作されたときは、その前方への操作力が第1閾値T1よりも大きい第2閾値T2を超えなければプッシュボタン40の押圧操作が受け付けられない(リバースレンジへの切り替えが許可されない)。このように、リバースレンジへの切り替え時に要求されるシフトレバー10の操作力(第2閾値T2)が、ドライブレンジへの切り替え時に要求されるシフトレバー10の操作力(第1閾値T1)よりも大きく設定されていれば、車両を後退させるリバースレンジへの切り替え時に、シフトレバー10をその変位限界までしっかり押し付けるような確実な操作を行うことがドライバーに求められる。これにより、車両を後退させようとするドライバーに対しより慎重な操作を促すことができるので、安全性をより高めることができる。
また、上記第1実施形態では、シフトレバー10の操作力を圧力センサ31,32を用いて直接的に検出しつつ、その検出した操作力の閾値、つまりレンジ切り替えの許可判定値(第1閾値T1、第2閾値T2)に差をもたせたるようにしたので、リバースレンジへの切り替え時に必要な操作力を確実に高めることができる上に、どの程度の操作力を要求するかを閾値の増減によって自由に設定することができる。
<第2実施形態>
図12は、本発明の第2実施形態にかかるシフト装置を示すブロック図である。この第2実施形態のシフト装置は、ドライブレンジまたはリバースレンジへの切り替え時に、プッシュボタン40の押圧操作を受け付けられる状態になったことをドライバーに報知する報知手段70を備えている点で、先の第1実施形態のシフト装置1とは相違する。なお、これ以外の構成は第1実施形態のシフト装置1と同様である。図12において、報知手段70以外の構成要素に対し第1実施形態(図1〜図11)と同一の符号を付しているのはこのためである。
報知手段70は、ドライブレンジへの切り替えのために後方側の変位限界まで傾動操作されたシフトレバー10の操作力が第1閾値T1を超えたとき、および、リバースレンジへの切り替えのために前方側の変位限界まで傾動操作されたシフトレバー10の操作力が第2閾値T2を超えたときに、それぞれドライバーに対し所定の報知を行う。報知の具体的手段は特に問わないが、何らかの効果音をスピーカ等から発してもよいし、メータユニット3に何らかの文字またはメッセージ等を表示してもよい。
例えば、現在の変速レンジがパーキングレンジまたはニュートラルレンジである場合に(図9(a)(c)参照)、ドライブレンジに切り替えようとしたドライバーがシフトレバー10を後方に傾動操作したとすると、その後方への操作力が図11に示した第1閾値T1を越えたときに、報知手段70が作動する。同様に、現在の変速レンジがリバースレンジである場合にも(図9(b)参照)、シフトレバー10の後方への操作力が第1閾値T1を超えたときに、報知手段70が作動する。
また、例えば、現在の変速レンジがパーキングレンジまたはニュートラルレンジである場合に、リバースレンジに切り替えようとしたドライバーがシフトレバー10を前方に傾動操作したとすると、その前方への操作力が図11に示した第2閾値T2(>T1)を越えたときに、報知手段70が作動する。同様に、現在の変速レンジがドライブレンジである場合にも(図9(d)参照)、シフトレバー10の前方への操作力が第2閾値T2を超えたときに、報知手段70が作動する。
以上のような第2実施形態の構成によれば、シフトレバー10の操作力が第1閾値T1または第2閾値T2を超えたときに作動する報知手段70からの報知に基づき、ドライバーは、プッシュボタン40の押圧操作が受け付けられる状態になったこと、つまり、追加でプッシュボタン40を押圧しさえすれば変速レンジがドライブレンジまたはリバースレンジに切り替わることを認識することができる。これにより、プッシュボタン40を押圧すべきタイミングが分かり易くなるので、シフト装置の操作性をより向上させることができる。
<第3実施形態>
図13は、本発明の第3実施形態にかかるシフト装置を説明するための図である。第3実施形態のシフト装置は、シフトレバー10を自動的にホーム位置に復帰させるためのディテント機構30に、先の第1実施形態とは異なる細工がされている。なお、構造面での相違はディテント機構30に関するものだけであり、それ以外の構造は基本的に先の第1実施形態と同様である。
具体的に、第3実施形態では、誘導部材25の球状受け面25aに、第1突起81および第2突起82が設けられている。第1突起81は、請求項にいう「第1抵抗付与部材」に相当するもので、後方に傾動操作されたシフトレバー10に対し抵抗力を付与する役割を果たす。第2突起82は、請求項にいう「第2抵抗付与部材」に相当するもので、前方に傾動操作されたシフトレバー10に対し抵抗力を付与する役割を果たす。以下、そのしくみについて具体的に説明する。
図13では、球状受け面25aに押し付けられるディテント用脚部14の付勢部14aの位置について、シフトレバー10がホーム位置にあるときの付勢部14aの位置(つまり球状受け面25aの中心部に対応する位置)をP0、シフトレバー10がその後方側の変位限界(ガイド用脚部15がガイド溝27の前端部27aに当接する位置)に達した時点での付勢部14aの位置をP1、シフトレバー10がその前方側の変位限界(ガイド用脚部15がガイド溝27の後端部27bに当接する位置)に達した時点での付勢部14aの位置をP2としている。なお、既に説明したシフト装置の構造からも理解されるように、ディテント用脚部14は、シフトレバー10が前方に変位したときに後方に移動し、シフトレバー10が後方に変位したときに前方に移動するので、後方側の変位限界に対応する位置P1は球状受け面25aの中心部より前側になり、前方側の変位限界に対応する位置P2は球状受け面25aの中心部より後ろ側になる。
第1突起81は、シフトレバー10がその後方側の変位限界に達したときの付勢部14aの位置P1よりも球状受け面25aの中心寄りに設けられている。このため、シフトレバー10が後方に傾動操作されたときは、それが変位限界に達するよりも手前で、付勢部14aが第1突起81に当接し、それによってシフトレバー10に加わる抵抗力が増大する。そして、この増大した抵抗力に打ち勝つ力によってシフトレバー10がさらに後方に操作されると、付勢部14aが第1突起81を乗り越えて(通過して)、シフトレバー10が最終的に後方側の変位限界に達するまで移動する。
第2突起82は、シフトレバー10がその前方側の変位限界に達したときの付勢部14aの位置P2よりも球状受け面25aの中心寄りに設けられている。このため、シフトレバー10が前方に傾動操作されたときは、それが変位限界に達するよりも手前で、付勢部14aが第2突起82に当接し、それによってシフトレバー10に加わる抵抗力が増大する。そして、この増大した抵抗力に打ち勝つ力によってシフトレバー10がさらに前方に操作されると、付勢部14aが第2突起82を乗り越えて(通過して)、シフトレバー10が最終的に前方側の変位限界に達するまで移動する。
図13に示すように、第2突起82の突出量(球状受け面25aの基礎面からの突出量)h2は、第1突起81の突出量h1よりも大きい値に設定されている。このh2>h1の関係は、第2突起82の通過時にシフトレバー10に加わる抵抗力の方が、第1突起81の通過時にシフトレバー10に加わる抵抗力よりも大きいことを意味する。
また、ホーム位置に対応する位置P0から第2突起82までの距離L2は、ホーム位置に対応する位置P0から第1突起81までの距離L1よりも大きい値に設定されている。このL2>L1の関係は、ホーム位置から抵抗付与位置(突起81または82の通過位置)までシフトレバー10を移動させるのに必要な操作ストロークが、後方操作時よりも前方操作時の方が大きいことを意味する。
この第3実施形態においても、先の第1実施形態と同様、パーキング、リバース、ニュートラルのいずれかのレンジからドライブレンジに切り替えるときは、シフトレバー10を後方に傾動操作した上で、プッシュボタン40を押圧操作する(図9(a)(b)(c)参照)。また、また、パーキング、ニュートラル、ドライブのいずれかのレンジからリバースレンジに切り替えるときは、シフトレバー10を前方に傾動操作した上で、プッシュボタン40を押圧操作する(図9(a)(b)(d)参照)。
ただし、ドライブレンジまたはリバースレンジへの切り替えを許可する条件は、先の第1実施形態とは若干異なる。具体的に、コントローラ60(図8参照)は、(i)’シフトレバー10が後方側の変位限界(ガイド用脚部15がガイド溝27の前端部27aに当接する位置)まで操作されたことが第1圧力センサ31によって検出されたこと、(ii)プッシュボタン40からの信号入力があること、の2つの要件がともに成立したときに、ドライブレンジへの切り替えを許可する。また、(iii)’シフトレバー10が前方側の変位限界(ガイド用脚部15がガイド溝27の後端部27bに当接する位置)まで操作されたことが第2圧力センサ32によって検出されたこと、(iv)プッシュボタン40からの信号入力があること、の2つの要件がともに成立したときに、リバースレンジへの切り替えを許可する。
すなわち、先の第1実施形態では、前方側または後方側の変位限界まで達したときのシフトレバー10の操作力を圧力センサ31,32によって直接検出し、その大小によってレンジ切り替えの有無を判定したが(第1実施形態における要件(i)(iii)参照)、第3実施形態では、上記要件(i)’(iii)’として示したように、圧力センサ31,32を、操作力を検出するためというよりも、シフトレバー10が変位限界まで達したことを確認するために用いる。つまり、第3実施形態では、第1圧力センサ31および第2圧力センサ32が、シフトレバー10の位置検出のために用いられている。このような第3実施形態において、第1圧力センサ31は、請求項にいう「第1位置検出手段」に相当し、第2圧力センサ32は、請求項にいう「第2位置検出段」に相当する。
例えば、第1圧力センサ31の出力値が少しでも上昇すれば、シフトレバー10が後方側の変位限界に到達した、つまり要件(i)’が成立したと判定することができる。また、第2圧力センサ32の出力値が少しでも上昇すれば、シフトレバー10が前方側の変位限界に到達した、つまり要件(iii)’が成立したと判定することができる。このため、コントローラ60は、第1圧力センサ31または第2圧力センサ32の出力値が比較的小さめに設定されたある閾値を超えた場合に、上記要件(i)’(iii)’が成立したと判定する。なお、このときに用いられる閾値は、要件(i)’(iii)’のいずれの場合でも同一であり、また、先の第1実施形態で用いたセンサ出力の閾値(図11のα,β)よりも小さい。
以上説明したように、本発明の第3実施形態では、後方に変位するシフトレバー10に対し抵抗力を付与する第1突起81と、前方に変位するシフトレバー10に対し抵抗力を付与する第2突起82とがディテント機構30に設けられており、第2突起82の突出量h2の方が第1突起81の突出量h1よりも大きい。言い換えると、第3実施形態では、ディテント機構30に設けられた突出量の異なる第1突起81および第2突起82によって、シフトレバー10を前方変位させるときに必要な操作力が、後方変位させるときに必要な操作力よりも大きくなるように設定されている。そして、シフトレバー10が少なくとも第1突起81を通過した後にドライブレンジへの切り替えが許可され、また、シフトレバー10が少なくとも第2突起82を通過した後にリバースレンジへの切り替えが許可されるようになっているので、結果的に、リバースレンジへの切り替え時に必要な操作力が、ドライブレンジへの切り替え時に必要な操作力よりも大きくなる。これにより、先の第1実施形態と同様に、リバースレンジへの切り替え時にドライバーに慎重な操作を促すことができ、簡単かつ確実に安全性を向上させることができる。
また、上記第3実施形態では、ホーム位置から第2突起82による抵抗付与位置までシフトレバー10を移動させるのに必要な操作ストロークが、ホーム位置から第1突起81による抵抗付与位置までシフトレバー10を移動させるのに必要な操作ストロークよりも大きい(図13の寸法関係:L2>L1より)。このような構成によれば、抵抗力が増大する位置(その位置を超えればプッシュボタン40の押圧操作が受け付け可能となる位置)までシフトレバー10を移動させるのに必要な操作ストロークが、ドライブレンジへの切り替え時よりもリバースレンジへの切り替え時に大きくなるので、ドライバーの意図に反してリバースレンジが選択される可能性をより低減することができ、車両の安全性を高めることができる。
<第4実施形態>
図14〜図20は、本発明の第4実施形態にかかるシフト装置100の機械的または電気的構成を示す図である。先の第1実施形態のシフト装置1は、パーキングレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジ、およびドライブレンジの4種類の間で変速レンジを切り替るものであったが、第4実施形態のシフト装置100は、これら4種類のレンジに加えて、マニュアルレンジへの切り替えをも可能としたものである。マニュアルレンジは、車両を前進させる方向に駆動力を伝達する変速レンジであり、その意味ではドライブレンジと同じである。ただし、マニュアルレンジの場合は、ドライブレンジにはない特有の機能として、シフトレバー10を用いて前進時のギヤ段を故意に切り替える操作が可能になる。例えば、自動変速機50のギヤ段が前進6段である場合には、1〜6速の間でギヤ段を順に増やすアップシフトや、ギヤ段を順に減らすダウンシフトの操作が可能になる。
上記のようにマニュアルレンジが追加されたことに伴い、第4実施形態のインジケータ109(図14)には、第1実施形態のインジケータ9(図2)と異なり、リバースレンジを表す「R」、ニュートラルレンジを表す「N」、ドライブレンジを表す「D」の文字盤に加えて、マニュアルレンジを表す「M」の文字盤が設けられている。
また、第4実施形態では、メイン操作部107の構造についても第1実施形態のものとは異なっている。具体的に、第4実施形態のメイン操作部107では、ドライブレンジからマニュアルレンジへの切り替えまたはその逆方向の切り替えを可能にするため、シフトレバー10が前後方向だけでなく左右方向にも傾動可能に支持されている。この点を除いては、基本的に先の第1実施形態のメイン操作部7と同様であるから、以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
第4実施形態のメイン操作部107は、第1実施形態のメイン操作部7と同様に、シフトレバー10と、シフトレバー10を傾動可能に支持する本体部20とを有している。ただし、第1実施形態とは異なる点として、第4実施形態のシフトレバー10は、シフトノブ11、レバー部12、球体部13、ディテント用脚部14、およびガイド用脚部15に加えて、揺動子90を有している。揺動子90は、球体部13から一旦下方に延びた後に屈曲して前方に延びるように設けられている。
また、第4実施形態の本体部20には、ガイド用脚部15が嵌合するガイド溝97を有したガイド部材96が設けられている。このガイド溝97は、第1実施形態のガイド溝27と異なり、平面視十字状に形成されている。
具体的に、ガイド溝97は、前後方向に延びる第1溝部97Aと、左右方向に延びて第1溝部97Aと交差する第2溝部97Bとを有している。このような十字形状のガイド溝97にガイド用脚部15が摺動自在に嵌合することにより、シフトレバー10は、前後方向および左右方向にそれぞれ傾動可能に支持されている。
図18(a)は、シフトレバー10がホーム位置にあるときの状態を示している。シフトレバー10がホーム位置にあるとき、つまり、付勢部14aが球状受け面25aの中心部にあってシフトレバー10が鉛直方向に起立しているとき、ガイド用脚部15の先端部は、ガイド溝97の中央部、つまり第1溝部97Aと第2溝部97Bとの交差部分に配置される。
この状態から、図18(b)のようにシフトレバー10が前方に傾動変位すると、ガイド用脚部15の先端部が第1溝部97Aに沿って後方に移動する。また、図18(c)のようにシフトレバー10が後方に傾動変位すると、ガイド用脚部15の先端部が第1溝部97Aに沿って前方に移動する。そして、ガイド用脚部15が第1溝部97Aの後端部97Abに当接した時点で、シフトレバー10はそれ以上前方に変位することができなくなり、ガイド用脚部15が第1溝部97Aの前端部97Aaに当接した時点で、シフトレバー10はそれ以上後方に変位することができなくなる。言い換えると、シフトレバー10は、ガイド用脚部15が第1溝部97Aの前端部97Aaに当接する位置から後端部97Abに当接する位置までの範囲に限り、前後方向に自由に傾動変位することができる。
図19(a)は、図18(a)と同じくシフトレバー10がホーム位置にある状態を示している。この状態から、図19(b)のようにシフトレバー10が左方に傾動変位すると、ガイド用脚部15の先端部が第2溝部97Bに沿って右方に移動する。また、図19(c)のようにシフトレバー10が右方に傾動変位すると、ガイド用脚部15の先端部が第2溝部97Bに沿って左方に移動する。そして、ガイド用脚部15が第2溝部97Bの右端部97Bbに当接した時点で、シフトレバー10はそれ以上左方に変位することができなくなり、ガイド用脚部15が第2溝部97Bの左端部97Baに当接した時点で、シフトレバー10はそれ以上右方に変位することができなくなる。言い換えると、シフトレバー10は、ガイド用脚部15が第2溝部97Bの左端部97Baに当接する位置から右端部97Bbに当接する位置までの範囲に限り、左右方向に自由に傾動変位することができる。
図17に示すように、第1溝部97Aの前端部97Aaには第1圧力センサ31が取り付けられ、第1溝部97Aの後端部97Abには第2圧力センサ32が取り付けられている。これら各圧力センサ31,32の構成は、先の第1実施形態に圧力センサ31,32と同様である。
さらに、本体部20の内部には、図15および図16に示すように、シフトレバー10の前後方向の変位量を検出する前後変位量センサ91と、シフトレバー10の左右方向の変位量を検出する左右変位量センサ92とが設けられている。
前後変位量センサ91は、シフトレバー10の前後方向の変位量として、シフトレバー10の球体部13から左右に突出する回転軸98の回転角を検出するものである。回転軸98は、レバー支持部23と筐体21の左右側壁との間に設けられた連結部24の内部を左右方向に延びるように設けられており、その一端部が前後変位量センサ91まで延びている。シフトレバー10が前後方向に傾動変位すると、その変位量に比例した角度だけ回転軸98が回転するとともに、その回転角度が前後変位量センサ91によって電気的に検出される。
左右変位量センサ92は、シフトレバー10の左右方向の変位量として、筐体21の前壁部21cの内面に枢着された揺動部材93の揺動量を検出するものである。揺動部材93は、上下方向に長尺な板状部材からなり、その下部が揺動軸94を介して筐体21の前壁部21cに枢着されることにより、揺動軸94を中心にして左右方向に揺動可能に支持されている。揺動部材93の上下方向の中間部には、上下方向に長尺な長穴93aが形成されており、この長穴93aにはシフトレバー10の揺動子90の端部が挿入されている。このように長穴93aに挿入された揺動子90は、シフトレバー10が左右方向に傾動するのに伴い揺動部材93を逆方向に押動し、これに伴い左右方向に揺動する揺動部材93の上端部の揺動量が、左右変位量センサ92によって検出されるようになっている。
図20のブロック図に示すように、第1圧力センサ31、第2圧力センサ32、前後変位量センサ91、および左右変位量センサ92は、それぞれコントローラ60と電気的に接続されている。コントローラ60は、第1圧力センサ31および第2圧力センサ32から入力される圧力の検出信号と、前後変位量センサ91および左右変位量センサ92から入力される回転角および揺動量の検出信号とに基づいて、シフトレバー10の操作状態(操作方向や操作力)を判定するとともに、プッシュボタン40の接点から入力される信号の有無に基づいて、プッシュボタン40が押圧操作されたか否かを判定する。そして、それぞれの判定結果に基づいて、自動変速機50の変速レンジ(またはギヤ段)を制御する。以下では、その変速制御のパターンを、図21(a)〜(e)および図22を用いて説明する。
(パーキングレンジからのシフトパターン)
図21(a)は、現在の変速レンジがパーキングレンジである状態から変速操作を開始した場合のシフトパターンを示している。本図に示すように、現在の変速レンジがパーキングレンジであるときにシフトレバー10がホーム位置から前方または後方に傾動操作されると、変速レンジがニュートラルレンジに切り替わる。また、シフトレバー10の後方への傾動操作の後さらにプッシュボタン40が押圧操作されると、変速レンジがドライブレンジに切り替わり、シフトレバー10の前方への傾動操作の後さらにプッシュボタン40が押圧操作されると、変速レンジがリバースレンジに切り替わる。
一方、現在の変速レンジがパーキングレンジであるときにシフトレバー10がホーム位置から左方または右方に傾動操作されると、その操作は無効とされる。つまり、現在の変速段(ここではパーキングレンジ)が維持された上で、例えばメータユニット3内の所定の表示部に、操作が無効である旨を報知するメッセージが表記される。
以上をまとめると、現在の変速レンジがドライブレンジであるときのシフトパターンは、図22において「現レンジ」=「D」の列にも示されるとおり、
・前方へのレバー操作 → ニュートラルレンジ
・前方へのレバー操作&ボタンプッシュ → リバースレンジ
・後方へのレバー操作 → ニュートラルレンジ
・後方へのレバー操作&ボタンプッシュ → ドライブレンジ
・左方へのレバー操作 → 無効
・右方へのレバー操作 → 無効
のようになる。
(リバースレンジからのシフトパターン)
図21(b)は、現在の変速レンジがリバースレンジである状態から変速操作を開始した場合のシフトパターンを示している。本図に示すように、現在の変速レンジがリバースレンジであるときにシフトレバー10がホーム位置から前方に傾動操作され、あるいは、その状態からさらにプッシュボタン40が押圧操作されても、それらの操作は無効とされる。逆に、シフトレバー10がホーム位置から後方に傾動操作された場合には、変速レンジがリバースレンジからニュートラルレンジに切り替えられ、さらに、シフトレバー10の後方への傾動操作に加えてプッシュボタン40の押圧操作が行われた場合には、変速レンジがドライブレンジに切り替えられる。また、シフトレバー10がホーム位置から左方または右方に傾動操作された場合には、それらの操作は無効とされる。
以上をまとめると、現在の変速レンジがリバースレンジであるときのシフトパターンは、図22において「現レンジ」=「R」の列にも示されるとおり、
・前方へのレバー操作 → 無効
・前方へのレバー操作&ボタンプッシュ → 無効
・後方へのレバー操作 → ニュートラルレンジ
・後方へのレバー操作&ボタンプッシュ → ドライブレンジ
・左方へのレバー操作 → 無効
・右方へのレバー操作 → 無効
のようになる。
(ニュートラルレンジからのシフトパターン)
図21(c)は、現在の変速レンジがニュートラルレンジである状態から変速操作を開始した場合のシフトパターンを示している。本図に示すように、現在の変速レンジがニュートラルレンジであるときにシフトレバー10がホーム位置から前方または後方に傾動操作されても、変速レンジはニュートラルレンジのまま変化しない。シフトレバー10の後方への傾動操作に加えてプッシュボタン40の押圧操作が行われた場合には、変速レンジがドライブレンジに切り替えられ、シフトレバー10の前方への傾動操作に加えてプッシュボタン40の押圧操作が行われた場合には、変速レンジがリバースレンジに切り替えられる。また、シフトレバー10がホーム位置から左方または右方に傾動操作された場合には、それらの操作は無効とされる。
以上をまとめると、現在の変速レンジがニュートラルレンジであるときのシフトパターンは、図22において「現レンジ」=「N」の列にも示されるとおり、
・前方へのレバー操作 → ニュートラルレンジ(現状維持)
・前方へのレバー操作&ボタンプッシュ → リバースレンジ
・後方へのレバー操作 → ニュートラルレンジ(現状維持)
・後方へのレバー操作&ボタンプッシュ → ドライブレンジ
・左方へのレバー操作 → 無効
・右方へのレバー操作 → 無効
のようになる。
(ドライブレンジからのシフトパターン)
図21(d)は、現在の変速レンジがドライブレンジである状態から変速操作を開始した場合のシフトパターンを示している。本図に示すように、現在の変速レンジがドライブレンジであるときにシフトレバー10がホーム位置から後方に傾動操作され、あるいは、その状態からさらにプッシュボタン40が押圧操作されても、それらの操作は無効とされる。逆に、シフトレバー10がホーム位置から前方に傾動操作された場合には、変速レンジがリバースレンジからニュートラルレンジに切り替えられ、さらに、シフトレバー10の後方への傾動操作に加えてプッシュボタン40の押圧操作が行われた場合には、変速レンジがリバースレンジに切り替えられる。
シフトレバー10がホーム位置から左方に傾動操作された場合には、変速レンジがドライブレンジからマニュアルレンジに切り替えられる。これに対し、シフトレバー10がホーム位置から右方に傾動操作された場合には、その操作は無効とされる。
以上をまとめると、現在の変速レンジがドライブレンジであるときのシフトパターンは、図22において「現レンジ」=「D」の列にも示されるとおり、
・前方へのレバー操作 → ニュートラルレンジ
・前方へのレバー操作&ボタンプッシュ → リバースレンジ
・後方へのレバー操作 → 無効
・後方へのレバー操作&ボタンプッシュ → 無効
・左方へのレバー操作 → マニュアルレンジ
・右方へのレバー操作 → 無効
のようになる。
(マニュアルレンジからのシフトパターン)
図21(e)は、現在の変速レンジがマニュアルレンジである状態から変速操作を開始した場合のシフトパターンを示している。本図に示すように、現在の変速レンジがマニュアルレンジであるときにシフトレバー10がホーム位置から後方に傾動操作された場合には、ギヤ段を1つ上げるアップシフトが実行される。これに対し、シフトレバー10がホーム位置から前方に傾動操作された場合には、ギヤ段を1つ下げるダウンシフトが実行される。なお、シフトレバー10の前方または後方への傾動操作の後さらにプッシュボタン40が押圧操作された場合、プッシュボタン40の押圧操作については無効とされる(レバー操作は無効でないので、アップシフトまたはダウンシフトは実行される)。
シフトレバー10がホーム位置から右方に傾動操作された場合には、変速レンジがマニュアルレンジからドライブレンジに切り替えられる。これに対し、シフトレバー10がホーム位置から左方に傾動操作された場合には、その操作は無効とされる。
以上をまとめると、現在の変速レンジがドライブレンジであるときのシフトパターンは、図22において「現レンジ」=「M」の列にも示されるとおり、
・前方へのレバー操作 → ダウンシフト
・前方へのレバー操作&ボタンプッシュ → ダウンシフト(ボタンプッシュ無効)
・後方へのレバー操作 → アップシフト
・後方へのレバー操作&ボタンプッシュ → アップシフト(ボタンプッシュ無効)
・左方へのレバー操作 → 無効
・右方へのレバー操作 → ドライブレンジ
のようになる。
なお、図示を省略しているが、現在の変速レンジがいずれであるかにかかわらず、シフトレバー10をホーム位置に保持したままプッシュボタン40を押圧操作した場合、その押圧操作は無効とされる。
また、現在の変速レンジがいずれであるかにかかわらず、シフトレバー10をホーム位置から左方または右方に傾動操作した後さらにプッシュボタン40を押圧操作した場合、プッシュボタン40の押圧操作については無効とされる。
(走行レンジ切り替え時の判定ロジック)
上述した変速パターンのうち、マニュアルレンジ以外のレンジからドライブレンジまたはリバースレンジに切り替えるケース(図21(a)〜(d)参照)において、その切り替えを実行するか否かの判定は、先の第1実施形態と同様、第1圧力センサ31および第2圧力センサ32から得られる前方または後方へのシフトレバー10の操作力と、プッシュボタン40からの信号(ボタン押圧時に発せられる信号)の有無とに基づいて行われる。すなわち、ホーム位置から後方に傾動操作されたシフトレバー10の操作力が第1閾値T1(図11)を超えた状態でさらにプッシュボタン40が押圧操作されたことがコントローラ60により認識された時点で、走行レンジがドライブレンジに切り替えられる。また、ホーム位置から前方に傾動操作されたシフトレバー10の操作力が第2閾値T2(図11)を超えた状態でさらにプッシュボタン40が押圧操作されたことがコントローラ60により認識された時点で、走行レンジがリバースレンジに切り替えられる。この場合において、リバースレンジへの切り替え時に用いられる第2閾値T2は、ドライブレンジへの切り替え時に用いられる第1閾値T1よりも大きく設定されている。
このような構成によれば、第1実施形態のときと同様、ドライブレンジまたはリバースレンジへの切り替え操作を簡便かつ素早く行うことが可能になるとともに、リバースレンジへの切り替え時にドライバーに慎重な操作を促すことにより、安全性をより高められる等の利点がある。
(マニュアルレンジに関する切り替え制御の判定ロジック)
図21(d)(e)に示すように、シフトレバー10を左右方向に操作してドライブレンジからマニュアルレンジ、もしくはその逆方向に切り替えるケースにおいて、その切り替えを実行するか否かの判定は、左右変位量センサ92から得られる左右方向の変位量に基づいて行われる。また、図21(e)に示すように、マニュアルレンジが選択されている状態でシフトレバー10を前後方向に操作することにより、ギヤ段を上げ下げするアップシフトまたはダウンシフトを行うケースにおいて、ギヤ段の切り替えを実行するか否かの判定は、前後変位量センサ91から得られる前後方向の変位量に基づいて行われる。
このように、第4実施形態では、マニュアルレンジに関する切り替え制御、つまり、ドライブ/マニュアルレンジの切り替えやギヤ段の切り替え制御時に、シフトレバー10の操作力を検出するセンサ(圧力センサ)を用いることなく、シフトレバー10の変位量を検出するセンサ(変位量センサ91,92)を用いて、切り替えの可否が判定される。すなわち、ドライブレンジまたはリバースレンジへの切り替えは、車両の前進/後退を選択する操作であり、仮に誤操作であった場合の影響が大きいので、切り替えを許可するか否かの判定をより慎重に行うことが求められる(そのために操作力をパラメータとしている)。これに対し、ドライブ/マニュアルレンジの切り替えやギヤ段の切り替えは、仮に誤操作であったとしても大事に至ることはないので、シフトレバー10がしっかりと操作されたことを操作力に基づき確認しなくても、ある程度のシフトレバー10の変位量が確認されれば切り替えを許可しても問題はなく、そうすることでむしろ、マニュアルレンジでの走行中に要求される軽快感が演出される。
<その他の変形例>
上述した第1〜第4実施形態では、請求項にいう「操作部材」として前後2方向(もしくは前後左右の4方向に)傾動操作されるシフトレバー10を採用したが、操作部材は少なくとも特定の2方向に変位可能であればよく、その具体的構成は適宜変更可能である。例えば、乗員が把持し易いようにデザインされた部品(例えばパソコン用のマウスに似た形状の部品)を、センターコンソール5の上面を2つ以上の方向にスライド移動し得るように設け、このスライド自在なデザイン部品を上記操作部材として用いてもよい。さらに、このデザイン部品にプッシュボタンを設け場合には、デザイン部品のスライド操作とプッシュボタンの押圧操作との組合せにより、上述した各実施形態と同様のシフトパターンを実現することができる。
また、シフトレバー10(操作部材)を前後2方向もしくは前後左右の4方向に傾動可能とした上記第1〜第4実施形態とは異なり、前後方向と左右いずれか一方との合計3方向に傾動可能としてもよい。この場合は、ドライブレンジが選択されている状態で左右いずれか一方にシフトレバー10が傾動操作されるとマニュアルレンジに切り替わり、その状態で再び上記一方の方向にシフトレバー10が傾動操作されるとドライブレンジに切り替わるというようなシフトパターンを採用することができる。
いずれにせよ、操作部材は少なくとも2つ以上の方向に変位可能であればよい。2つ以上のいくつの方向に操作部材を変位させるか、あるいは変位する方向をどの方向(前後、左右、斜め)に向けるかは、求められる性能や法規等に応じて種々変更され得る。
また、上記第3実施形態では、ディテント機構30を構成する球状受け面25aに第1突起81および第2突起82を設け、これら第1、第2突起81,82により、シフトレバー10に抵抗力を付与する部材(請求項にいう「第1、第2抵抗付与部材」)を構成したが、抵抗付与部材は、シフトレバー10(操作部材)に抵抗力を付与できるものであればよく、その具体的構成は種々変更可能である。例えば、シフトレバー10のガイド用脚部15が摺動するガイド溝(27,97)の内壁に、溝幅を部分的に狭くする突起を設けることにより、シフトレバー10に抵抗力を付与するようにしてもよい。
また、上記第1、第2、第4実施形態では、シフトレバー10が前後の変位限界まで到達したときにシフトレバー10に加えられている操作力を圧力センサ31,32を用いて検出し、その検出された操作力に基づいてドライブレンジまたはリバースレンジへの切り替えの可否を判定したが、シフトレバー10の操作力を検出するセンサに加えて、シフトレバー10の変位量を検出するセンサ(例えば第4実施形態の前後変位量センサ91)を用いて、レンジ切り替えの可否を判定してもよい。例えば、シフトレバー10が前方または後方に傾動操作されたことを変位量センサを用いて確認した上で、前方または後方への操作力が所定の閾値以上であることを圧力センサを用いて確認し、同じ方向への変位量および操作力が確認されたときにはじめて、ドライブレンジまたはリバースレンジへの切り替えを許可することが考えられる。このようにすれば、より正確にシフトレバー10に対する操作を認識することができ、また、いずれかのセンサが故障した場合のバックアップを図ることができる。
また、上記第4実施形態では、車両が左ハンドル車(図1参照)であることを前提に、図21(a)〜(e)に示したようなシフトパターンを採用したが、車両が右ハンドル車である場合には、図示のパターンに対し左右対称の関係になるように、つまり図21(d)のマニュアルレンジ(M)の位置と図22(e)のドライブレンジ(D)の位置とが左右逆転するようにシフトパターンを変更することが望ましい。
また、上記各実施形態では、請求項にいう「スイッチ部」としてプッシュ式のボタンスイッチ(プッシュボタン40)を採用したが、スイッチ部の具体例はこれに限られず、例えばトグルスイッチを採用してもよい。さらには、ドライバーの指から入力される圧力の大きさに基づいてスイッチ操作の有無を検出する感圧センサを「スイッチ部」として用いてもよい。
また、上記各実施形態のシフト装置は、エンジン(内燃機関)と車輪との間に介設された多段式の自動変速機50の変速レンジを切り替え操作するものであったが、本発明が適用可能な変速機は、多段式の自動変速機に限られず、例えば無段変速機(CVT)であってもよい。さらには、電気自動車に用いられる変速機のように、前進/後退を電気的に切り替えるものにも本発明を適用することができる。