JP6171265B2 - 複式筆記具 - Google Patents

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Description

本発明は、ダブルノック式シャープペンシルや、軸筒本体内に少なくともシャープペンシルユニットを含む筆記体を前後動可能に複数配置した複式筆記具などのシャープペンシルユニットを出没可能に配置した筆記具に関する。
1例として、中軸の先方に先軸を着脱可能に固定し、中軸の側面に複数箇所で穿設したスリット(長手スリット部)のそれぞれにおいて、軸方向に案内されるスライダーの前方にシャープペンシルユニットまたはボールペンリフィルが固定された複式筆記具がある。
より詳細には、前記シャープペンシルユニットは芯パイプとシャープペンシル筆記体とを有し、スライダーの前方には芯パイプが固定され、芯パイプの前方にシャープペンシル筆記体を取り付けてなる。ここで、シャープペンシルユニットは、継ぎ手によって芯パイプとシャープペンシル筆記体とを連結しているが、この継ぎ手は大径部とその大径部の前方に形成された小径部を有しており、小径部にはチャックスプリングが張設されている。シャープペンシル筆記体は、一般的なチャック機構を内蔵し、後端にチャック機構と連結した継ぎ手を介して芯パイプに接合し、芯パイプの後端がスライダーの孔部に嵌着されている。芯の繰り出しは、シャープペンシル筆記体の口金の段部が先軸の内段部に当接した状態で、スライダーの前後動によりチャックを連動させて行われる。また、前記ボールペンリフィルは受けパイプと芯ホルダー、そして、ボールペン筆記体とを有し、スライダーの前方には受けパイプが固定され、受けパイプの前方に芯ホルダーを取付けて、その芯ホルダーのチャックによってボールペン筆記体の先端部が突出状態に把持されてなる。そして、各スライダーを、スライダーの前方と中軸先方との間にそれぞれリターンスプリングを付勢して前後動可能に設け、各筆記体のいずれか一本の先端部を先軸の突出孔(先端口)から選択的に突出すると共に、前進位置にある他の筆記体が後退する際には、筆記体の後退時(リターン時)にスライダーと中軸とを衝止させることにより各筆記体の先端部を収納している。
特開2006−142522号公報。
しかし、前記の従来技術は、スライダーと中軸が衝合した際に前後方向の強い衝撃が生じるため、筆記体がシャープペンシルである場合には、衝撃力によりチャック機構が収容するシャープペンシル芯を喰いちぎって(折損して)しまう問題があった。即ち、突出状態にあるシャープペンシル筆記体の係止を解除した際には、リターンスプリングの付勢力によってシャープペンシル筆記体が後退し、シャープペンシル筆記体のスライダー後端が中軸に衝突(衝止)し、強い衝撃を生じる。ここで、スライダー、中軸は弾性部材ではないので、衝撃は吸収されない。又、シャープペンシル筆記体(のスライダー)は急停止するので、衝撃はシャープペンシル筆記体の先端方向にあるシャープペンシルユニットまで伝達される。急停止により、シャープペンシルユニット内のチャックスプリングは、一旦、圧縮される方向(後方)に力がかかるが、すぐ反転して伸長方向(前方)への力が作用する。これにより、チャックリングがチャック体を囲い込む方向に動くので、この時に芯を喰いちぎって(折損して)しまう問題があった。
又、ダブルノック式シャープペンシルにおいても、シャープペンシル機構が軸内に収納される際の衝撃により、同様の問題を抱えていた。
そこで、本発明は、芯の把持・開放を行うチャック体と、そのチャック体の前方を囲繞すると共にチャック体の開閉を行うチャックリングを有するシャープペンシルユニットを、軸筒内に出没可能に配置した筆記具であって、チャック体の芯把持部に対応する外周部を少なくとも、軸線に対して略平行な水平部と、その水平部の後方に位置し、軸線方向に傾斜した傾斜面とから形成すると共に、一方、前記チャックリングの内周部を、軸線に対して略平行に形成し、チャック体がチャックリングに嵌着され、前記チャックリングと前記傾斜面の後端とが接触し、チャック体が芯を把持してチャックリングに締め付けられる間にチャックリングがチャック体と摺動する長さであって、前記チャックリングと前記傾斜面の接触点までの長さをK、前記チャック体の前端から前記傾斜面の後端までの長さをDとしたときに、比率K/Dは14%以上30%未満であることを要旨とする。
本発明は、芯の把持・開放を行うチャック体と、そのチャック体の前方を囲繞すると共にチャック体の開閉を行うチャックリングを有するシャープペンシルユニットを、軸筒内に出没可能に配置した筆記具であって、チャック体の芯把持部に対応する外周部を少なくとも、軸線に対して略平行な水平部と、その水平部の後方に位置し、軸線方向に傾斜した傾斜面とから形成すると共に、一方、前記チャックリングの内周部を、軸線に対して略平行に形成し、チャック体がチャックリングに嵌着され、前記チャックリングと前記傾斜面の後端とが接触し、チャック体が芯を把持してチャックリングに締め付けられる間にチャックリングがチャック体と摺動する長さであって、前記チャックリングと前記傾斜面の接触点までの長さをK、前記チャック体の前端から前記傾斜面の後端までの長さをDとしたときに、比率K/Dは14%以上30%未満であるので、本発明により、複式筆記具やダブルノック式シャープペンシルにおけるシャープペンシルユニットを解除した際にチャックリングやチャック体に伝達される衝撃力による、芯の喰いちぎり(折損)を防止することが出来る。
本発明を示す外観正面図。 図1の側面図。 図2の縦断面図。 図3の前方拡大図 図1のW−W線断面図。 図5のV部拡大。 図1のY−Y線断面図。 ボールペンリフィル用スライダーの単体斜視図。 ボールペンリフィルと接続部材とスライダーの分解要部拡大図。 ボールペンリフィル用スライダー(変形例)の単体斜視図。 ボールペンリフィルと接続部材とスライダー(変形例)の分解要部拡大図。 図9における連結状態を示す外観斜視図。 ボールペンリフィル用スライダーの正面図。 接続部材の外観斜視図。 接続部材の正面図。 図15の側面図。 図12のA−A線断面図。 図12のB−B線断面図。 シャープペンシルユニット用のスライダーの単体外観斜視図。 シャープペンシルユニットの縦断面図。 シャープペンシルユニットの芯タンクとスライダーとの連結状態を示す側面図。 図21におけるシャープペンシルユニット用のスライダーと芯タンク接続部縦断面図。 (a)シャープペンシルユニットとスライダーとの連結状態を示す外観斜視図。 (b)シャープペンシルユニットとスライダーとの連結状態を示す側面図。 シャープペンシルユニット用のスライダー接続部の変形例。 図24のスライダーをシャープペンシルユニットに組み付けた側面外観図。 (a)動作を示す外観斜視図(スライダー後退位置)。 (b)動作を示す外観斜視図(スライダー前進位置)。 図26(b)の縦断面図。 シャープペンシルユニット突出状態での縦断面図。 図28の前側縦断面図。 図29のチャック体周辺の拡大図。 図26(b)の状態における本筆記具の正面図(前方方向)。 図31のC−C方向断面矢視図。 図29の状態から、芯の繰り出し最大押圧時の状態。
作用について説明する。本発明は、芯の把持・開放を行うチャック体と、そのチャック体の前方を囲繞すると共にチャック体の開閉を行うチャックリングを有するシャープペンシルユニットを、軸筒内に出没可能に配置した筆記具であって、チャック体の芯把持部に対応する外周部を少なくとも、軸線に対して略平行な水平部と、その水平部の後方に位置し、軸線方向に傾斜した傾斜部とから形成すると共に、一方、前記チャックリングの内周部を、軸線に対して略平行に形成し、チャック体がチャックリングに嵌着され、芯を把持する際にチャックリングがチャック体と摺動する摺動領域をK、前記チャック体の前端から前記傾斜面の後端までの長さをDとしたときに、比率K/Dは14%以上30%未満であるので、衝撃力によりチャック体とチャックリングの接触点Sがずれても、芯に過大な芯把持力はかからない。よって、芯にダメージを与えることがなく、芯の喰いちぎり(芯の折損)を防止することができ、複合筆記具が使用しやすくなる。
本発明の第1実施例を図1〜図33に示し、説明する。尚、図中下方を前方と言い、上方を後方と言う。例として黒色と赤色の2色からなるボールペンリフィル、及びシャープペンシルユニットが摺動自在に配置されている多芯筆記具(複式筆記具)である。尚、複式筆記具の軸本体(軸筒)内に配置する筆記体としては、少なくともシャープペンシルユニットを含む筆記体であって、ボールペンリフィルに限らず、例えば、スタイラスペンや棒状消しゴム繰り出し体(リフィル)などでも良い。
参照符号1は、軸本体(軸筒)であり、その軸本体1は、前軸2と後軸3とより構成されている。また、本例において、前軸2は、先部材4と中軸5の螺合構造により構成されているが、凹凸嵌合で圧入されていても良いし、一体的に形成されていても良い。しかし、後述する筆記体の交換や成形の容易性を考慮すると2部材とし、着脱自在に固定した方が良い。また、前記先部材4の内径部には、先端側へ向かって徐々に径が小さくなる円錐部4aが形成されている。そして、その先部材4の先端には、筆記体が出没する突出孔4bが形成されている。又、先部材4の内径部には、軸本体1の長手方向に長い平面部4cが複数箇所形成されているため、軸本体1(先部材4)が透明な場合には、前記平面部4cによって得られるレンズ効果によって、内部に配置されたシャープペンシルユニット、ボールペンリフィルの色を容易に識別することができ、高級感も得られるようになる(図1〜4、図29を参照)。尚、本実施例では、軸本体1を透明、或いは、着色された半透明な材質によって形成しているが、これに限らず、軸本体を有色不透明な材質から形成しても良い。
前記後軸3には、その長手方向に3個のスリット6が形成されている(図5を参照)。本例においては、3個のスリット6が形成されているが、筆記体であるボールペンリフィルの数が2本と、シャープペンシルユニットの数が1本であるためであり、この筆記体の本数によってスリットの形成する数も変わるものである。また、スリット6は、後軸3の一方の端部まで形成されていると共に、スリット6の両側には、摺動溝7がほぼ一直線上に形成されている。又、後軸3には、摺動溝7と長手方向に略同じ長さのスライド面3aが形成されている。しかし、この摺動溝7、及びスライド面3aは、スリット6の両側の全長に渡って形成されているのではなく、中間部までしか形成されていない。スライド面3aは、後述する摺動突起12の背面を受けている。また、前記スリット6の摺動溝7よりも軸心側は、幅の狭い幅狭スリット部6aとなっている(図6を参照)。
前記後軸3の前方には断面の形状が外側に円弧部を有する半月形をした脚部8が120度間隔の位置に形成されている。この脚部8は、スリット6が形成されることにより形成される。よって、筆記体の数によって脚部8の数は変わる。その脚部8の外接円径は、後軸3の最大外径よりも小さく形成されている(図7を参照)。
符号9は、後軸3に一体的に形成されたクリップ部であるが、別部材で構成し後軸3に固定などしても良い。符号10は、前記クリップ部9の前方内面に形成された玉部であって、その玉部10は前記中軸5の表面に当接している。
前記後軸3のスリット6には、透明、或いは、着色された半透明な材質からなるスライダー11が摺動自在に配置されている。該スライダー11は、ボールペンリフィル用のスライダー11Bとシャープペンシルユニット用のスライダー11Sがある。ここではボールペンリフィル用のスライダー11Bについて詳述する。このスライダー11Bの長手方向の両側には、摺動突起12が形成されており、前記スリット6に形成された摺動溝7に摺動可能に係合している(図5、6を参照)。尚、摺動突起12と摺動溝7の係合関係は、ボールペンリフィル用のスライダー11Bとシャープペンシルユニット用のスライダー11S共、同じである。このスライダー11Bの背面には、延出部111を介して間隔をおいて2つの解除突起13、14が形成されている。本実施例においては、前記スライダー11Bの側面には、後述するシャープペンシル用のスライダー11Sの様な孔11Sfはない(図8、図9を参照)。
しかしながら、これに限らず、変形例としてスライダー11Bの側面に3個の孔11Sfが設けられていても良い(図10、図11を参照)。孔11Sfを設ける場合は、スライダー11Bの側面に設けられた3個の孔11Sfは、貫通孔と非貫通孔とから構成されている。具体的に説明すると、解除突起13の近傍に形成されている孔11Sfと、解除突起14の近傍に形成されている孔11Sfは、延出部111を貫通した貫通孔となっており、一方、スライダー11Bの前方部に形成された孔11Sfは非貫通孔となっている(図10を参照)。そして、前記貫通孔である孔11Sfは、幅狭スリット部6aに位置しているものの、その孔11Sfの半分が幅狭スリット部6aから露出している。孔11Sfの半分程度を幅狭スリット部6aから露出させることによって、その孔11Sfに貯留されたゴミや埃を孔11Sfの両開口部から効率的に排出できるようにしているのである。一方、非貫通孔である孔11Sfの一部は、摺動突起12に位置している。即ち、摺動突起12の一部分が孔11Sfによって切り欠かれている。これによって、摺動突起12の前方部分に弾力性が発生し、多少の寸法上のばらつきが発生したとしてもスムーズな摺動動作が得られるようになる。
また、貫通した孔11Sfの内周面のほぼ中央部には、微細な突起が円周上に形成されている。内周面に円周上の突起を形成することによって、スライダーを樹脂成型品とした場合、後述するようにその成形性の向上が図られる。
尚、本例においては、孔11Sfの縦断面形状を円形としているが、楕円や三角、四角、多角形、或いはこれらの組合せた形状としても良いが、スライダー11Sを成形品とした場合には、その成形性を考慮すると丸形状が良い。また、孔11Sfの数は、本例では3箇所としているが、1個所であっても良いし、4個所や5個所などであっても良い。
そして、スライダー11Bの孔11aには、後述する筆記体に収納されるインキの色と略同色な色を有した接続部材15の一端部(後方部15a)が着脱自在に挿着されており、その接続部材15の他端部(前方部15b)には、ポリプロピレンやナイロンなどの樹脂材質からなる円筒状のボールペンリフィル16Bが接続されている(図9を参照)。
尚、前記ボールペンリフィル16Bは、インキを収容するポリプロピレンなどの樹脂材質で押し出し成形によって形成されたインキ収容管(パイプ部)16Baと、そのインキ収容管16Baの前方に圧入されたボールペンチップ(筆記部)16Bbなどから構成されている(図12を参照)。インキ収容管16Baに圧入されているため、ボールペンチップ16Bbの外径は、インキ収容管16Baの外径よりも小さい。このため、インキ収容管16Baの前端部には段部が形成される。ここでは、このインキ収容管16Baの前端部を16Bfとする。
ここで、前記スライダー11Bは、透明、或いは、着色された半透明な材質で形成されているため、その内部に位置する前記接続部材15の色や表示を容易に識別することができる。これに加え、スライダー11Bには平面部11bと曲面部11cが形成されているため、それによって得られるレンズ効果によって、前記接続部材15の色をさらに容易に識別することができるようになる(図13を参照)。
尚、スライダー11Bは、透明、或いは、着色された半透明な材質に限らず、着色不透明な材質から形成しても良い。着色不透明部材とした場合には、その着色した色と略同色のインキが内蔵されているボールペンリフィル16Bを取り付けることで、そのボールペンリフィル16Bの色を視覚的に識別出来る。また、本実施例においては、ボールペンリフィル16Bとスライダー11Bと間に接続部材15を介しているが、この接続部材15はスライダー11Bと一体に形成しても良い。この場合にも、内蔵されているインキの色と略同色のスライダー11Bにボールペンリフィル16Bを取り付けることで、そのボールペンリフィル16Bの色を視覚的に識別出来る。
前記接続部材15の中間部には、大径部15cが形成されており、後方部15aの孔11aに対する過度な挿入と、前方部15bの筆記体16Bに対する過度な挿入が防止されている。また、接続部材15の後方部15aには、スライダー11Bの孔11aに対する挿着・嵌合を良好なものとなすために円周状の嵌合突起15dが形成される一方、前方部15bにはボールペンリフィル16Bに空気が侵入するための平面部15eが形成されている。その平面部15eは、90度の角度をもって4方に形成されている。即ち、接続部材15の前方部15bの横断面形状は、正方形状をなしている。また、4つの平面部15eには、ボールペンリフィル16Bとの良好な係合・嵌合力を得るために突起15f、15gが部分的に形成されているが、突起同士が重ならないようになっている。即ち、4つの平面部15eに形成された各々の突起15fは、長手方向、並びに、周方向に対して異なった位置に形成されている(図14を参照)。具体的に説明すると、前方の対向した位置に形成された突起15fと離隔して、後方にはその突起15fと90度の角度をもって突起15gが対向して形成されている(図15、16を参照)。前記インキの消費に伴うボールペンリフィル16B内部への空気の侵入を確実なものとしていると共に、樹脂材質からなるインキ収容管16Baの塑性変形による接続部材15からの脱落を防止している。つまり、前方に形成された突起15fによってボールペンリフィル16Bが楕円状に膨出すると共に、後方に形成された突起15gによって、前記膨出部とは90度の角度をもって該部分も膨出部16Bdが形成される。即ち、互いが90度の方向で膨出する反面、その膨出した方向と90度回転した方向は縮径させられるため、インキ収容管16Baの内面が突起15f、15gに食い込むようになり各々の係合部がより強固になると共に、それら接続部材15とインキ収容管16Baとの相対的な回転が防止される(図17、図18参照;図中点線16Beは、本来のボールペンリフィル16Bの内面形状である。)。
また、前記突起15fや15gは、その断面形状が矢型状をなしているが、前方に位置する突起15fのボールペンリフィル16への挿着側は、鈍角(α)に形成されており、一方、離脱側は鋭角(β)に形成されている。ちなみに、本例においては、挿入側を約150度に形成し、離脱側を70度に形成している(図16を参照)。
尚、前記スライダー11Bの前端部には、後述する弾撥部材17Bの外径部を保持する延出部11dが形成されている(図8参照)。延出部11d間の長さは、後述する弾撥部材17Bの外径よりも若干短く形成されており、これによって弾撥部材17Bは延出部11dに圧入された状態となっている。即ち、ボールペンリフィル16Bを交換する際にも弾撥部材17Bがスライダー11Bの前端部から外れないようになっている。また、前記スライダー11Bの接続部材15(後方部15a)に対する挿着力(嵌合力)は、ボールペンリフィル16Bの接続部材15(前方部15b)に対する挿着力(嵌合力)よりも弱く設定されている。即ち、ボールペンリフィル16Bをスライダー11Bに対して離脱させようとすると、ボールペンリフィル16Bと接続部材15が連結された状態でスライダー11Bから離脱する。参照符号17Bは、ボールペンリフィル16B並びにボールペンリフィル16Bに接続するスライダー11Bを後方に付勢するコイルスプリングなどの弾撥部材である(図3参照)。前記弾撥部材17Bは、後述するシャープペンシルユニット16S並びに芯タンク161に接続するスライダー11Sを後方に付勢するコイルスプリングなどの弾撥部材17Sより、ばね定数を高くしている。
次に、前記中軸5について、具体的に説明する。前記前軸2の1部材である中軸5の中間部には、規制部18が形成されており、その規制部18には、筆記体16B、16Sが遊挿する3つの貫通孔19が形成されており、前記規制部18に弾撥部材17B、17Sの一端を係止させることにより、筆記体16B、16Sを後方に付勢している。また、中軸5の内側で、規制部18の後方には、長手方向に3つの溝部20が形成されており、この溝部20に前記後軸3の脚部8が摺接され、組み立て時に脚部8が案内されるようになっている。また、その溝部20は、脚部8の断面形状とほぼ同形をなしている。即ち、外側に円弧部を有する半月形となっている。
次に、シャープペンシル用のスライダー11Sについて詳述する。このスライダー11Sの長手方向の両側には、摺動突起12が形成されており、前記スリット6に形成された摺動溝7に摺動可能に係合している(図5、6を参照)。このスライダー11Sの背面には、延出部111を介して間隔をおいて2つの解除突起13、14が形成されている(図19を参照)。更に、スライダー11Sの側面には3個の孔11Sfが設けられているが、それらは、貫通孔と非貫通孔とから構成されている。具体的に説明すると、解除突起13の近傍に形成されている孔11Sfと、解除突起14の近傍に形成されている孔11Sfは、延出部111を貫通した貫通孔となっており、一方、スライダー11の前方部に形成された孔11Sfは非貫通孔となっている。そして、前記貫通孔である孔11Sfは、幅狭スリット部6aに位置しているものの、その孔11Sfの半分が幅狭スリット部6aから露出している。孔11Sfの半分程度を幅狭スリット部6aから露出させることによって、その孔11Sfに貯留されたゴミや埃を孔11Sfの両開口部から効率的に排出できるようにしているのである。一方、非貫通孔である孔11Sfの一部は、摺動突起12に位置している。即ち、摺動突起12の一部分が孔11Sfによって切り欠かれている。これによって、摺動突起12の前方部分に弾力性が発生し、多少の寸法上のばらつきが発生したとしてもスムーズな摺動動作が得られるようになる。また、貫通した孔11Sfの内周面のほぼ中央部には、微細な突起が円周上に形成されている。内周面に円周上の突起を形成することによって、スライダーを樹脂成型品とした場合、後述するようにその成形性の向上が図られる。
尚、本例においては、孔11Sfの縦断面形状を円形としているが、楕円や三角、四角、多角形、或いはこれらの組合せた形状としても良いが、スライダー11Sを成形品とした場合には、その成形性を考慮すると丸形状が良い。また、孔11Sfの数は、本例では3箇所としているが、1個所であっても良いし、4個所や5個所などであっても良い。
更に、前記摺動突起12の前端面と、後述する後方筒部25の間には、後述する弾撥部材17Sの内径部を保持するため、円周の一部である円弧部11Sgが形成されている。円弧部11Sgは、対向した位置にも形成されており、2箇所ある。(図19参照。対向した位置の円弧部11Sgは図示されていない。)。円弧部11Sgの半径は、後述する弾撥部材17Sの内径の半径よりも若干大きく形成されており、これによって弾撥部材17Sは円弧部11Sgに圧入された状態となっている。参照符号17Sは、シャープペンシルユニット16S並びに芯タンク161に接続するスライダー11Sを後方に付勢するコイルスプリングなどの弾撥部材である(図3参照)。前記弾撥部材17Sは、前記ボールペンリフィル16B並びにボールペンリフィル16Bに接続するスライダー11Bを後方に付勢するコイルスプリングなどの弾撥部材17Bより、ばね定数を低くしている。
また、本実施例においては、前記弾撥部材17Sをコイルスプリングからなしており、その弾撥部材17Sの両端に座巻き部(両端座巻き部)を設けると共に、中間の2箇所にも座巻き部(中間座巻き部)を設けている(図3参照)。このように、少なくとも1箇所以上に中間座巻き部を設けることにより、座巻き部以外の有効巻き部を分断し、短くすることで、有効巻き部が、径方向に膨らんで撓むことを防止することが出来る。そして、弾撥部材同士や他部品との擦れによる操作性不良、擦れ傷、擦れによる異音を防止し、良好にシャープペンシルユニットを使用することが出来る。この中間座巻きを有する弾撥部材はボールペンリフィルに用いても同様の効果を得ることができ、有用であるが、シャープペンシルユニットの場合は、ボールペンリフィルの場合と比較して、シャープペンシルユニットを選択・突出させ、係止させた後も芯を繰り出すための押圧操作が必要なため、このように中間座巻き部を有する弾撥部材17Sは、より有用である。
更に、前記弾撥部材17Sにおいて、中間の2箇所に設けた座巻き部(中間座巻き部)は、両端に設けた座巻き部(両端座巻き部)より巻き数を多くするよう異ならしめても良い。両端座巻き部より中間座巻き部の巻き数を多くすることにより、組立前の弾撥部材単体状態において、弾撥部材同士が絡み合うことを防止することが出来る。シャープペンシルユニットの場合は、ボールペンリフィルの場合と比較して、シャープペンシルユニットを選択・突出させ、係止させた後も芯を繰り出すための押圧操作が必要なため、弾撥部材の全長が長くなる。よって、中間の座巻きの巻き数を増やすことは、中央部での弾撥部材同士の絡み防止に有用である。尚、本実施例においては、両端座巻き部を各3巻き、中間座巻き部を各4巻きとしている。
シャープペンシル用のスライダー11Sの前方には、後述するシャープペンシルユニット16Sの芯タンク161を接続する連結部21が形成されている(図19〜22、図28参照)。前記連結部21について詳述すると、その連結部21には、前端から後方に向けて円形から8角形へと順次拡径し変化する傾斜面22aを有する角錐状の前方筒部22、および、その前方筒部22の後方であって前方筒部22の外形より小径の溝部23が形成されている。ここで前方筒部22の形状は8角形となっているが、これに限定されるものではなく、後述する芯タンク161との接続が点接触になればよい。例えば、4角形や5角形、或いは、10角形や12角形などであっても良い。また、前記溝部23の後方には、後方に向かい拡径する傾斜面24が形成されており、その傾斜面24の後方には後方筒部25が形成されている。
尚、スライダー11Sには、前記スリット6の幅より大きい幅の略半球状のツバ部11Sdが形成されている。そのツバ部11Sdにより幅広になることで、シャープペンシルユニット16Sの突出操作が向上すると共に、芯出し操作も容易に行え、また、その芯出し操作の際、スライダー11Sが後軸3の軸心方向に没入してしまうのを防止する。
又、シャープペンシルユニット16Sは、芯を複数本収容し金属材質で成形された芯タンク161と、その芯タンク161の前方に継ぎ手部材162を介して取り付けられた芯の把時・開放を行うチャック体163と、そのチャック体163の前方を囲繞すると共にチャック体163の開閉を行うチャックリング164、並びに、前記チャック体163を覆うように配置されたガイド筒165、そして、そのガイド筒165と前記継ぎ手部材162との間に配置され、チャック体163や芯タンク161を後方に向けて付勢するコイルスプリングなどからなる弾撥部材166とから構成されている。また、前記ガイド筒165の先端には、先部材167が螺合などの手段によって着脱自在に取り付けられており、その先部材167の内方には、繰り出された芯の後方への移動を規制するゴム状弾性体からなる芯戻り止め部材168が内設している。
シャープペンシルユニット16Sを構成する外装部品の継ぎ手部材162、ガイド筒165、先部材167の材質は、真鍮などによる金属にめっきなどの表面処理を施しても良いし、ポリアセタール、ナイロンなどによる樹脂成形品でも良い。
次に、チャック体163及びチャックリング164について、図30に基づいて詳述する。
図30に示すように、チャック体163には、芯把持部163aに対応する外周部163bが形成され、その外周部163bは水平部163cと傾斜面163dで構成されている。水平部163cは、チャック体163の前端近傍からチャック体163の軸線と略平行な周面として形成されている。そして、このチャック体163の水平部163cの後端から後方は、チャック体163の軸心に向かって傾斜した周面である傾斜面163dが形成されている。傾斜面163dは、有効な芯の把持力を得るために軸線方向に対して略3〜4°の緩やかな勾配で形成されている。更に、傾斜面163dの後端から後方にも、チャック体163の軸心に向かって傾斜した周面である案内傾斜面163eが形成されている。案内傾斜面163eは、傾斜面163dより傾斜角度が大きく、チャックリング164を外設し易くしている。この案内傾斜面163eの傾斜角度は、本実施例では、25°としている。案内傾斜面163eの後端は、チャック体163の胴径部163fに接続されている。
尚、チャック体163の前記芯把持部163aの前端は、チャック体163の前端から形成されたR部163iに接続されており、このR部163jは、チャック体163が芯を把持する時の把持力集中を避けるために形成されている。また、チャック体163の前記芯把持部163aの後端は、後方に形成されたテーパー部163hに接続している。このテーパー部163hは、芯が芯把持部163aへ挿通し易くするために形成され、芯が挿通する貫通孔163iに接続している。本実施例にあっては、チャック体163の芯把持部163aの後端は、チャック体163の外周部163bにおける案内傾斜面163eの後端よりも後方に位置している。
一方、チャックリング164にあっては、チャック体163の傾斜面163dが嵌着するチャックリング164の内周部164aが、軸線方向と平行に形成されている。内周部164aの前端には、前端に向かい内径が拡径した、軸心に向かって傾斜した傾斜面164bが形成されている。傾斜面164bは、チャック体163をチャックリング164内に内設し易くし、チャック体163に打痕等のキズ付きを防止するために設けている。この傾斜面164bの形成部は、傾斜面ではなく、外側に膨らんだ円弧状に形成されていても良い。
チャック体163及びチャックリング164が、上記のように形成されているので、図30に示す様に、チャック体163が芯を把持してチャックリング164に締め付けられたときに、チャックリング164の内周部164aの前端が、チャック体163の傾斜面163dとの接触点163gとなる。チャック体163の前端から傾斜面163dの後端までの長さをDとする。又、接触点163gから傾斜面163dの後端までの長さをKとする。この長さKは、チャック体163が芯を把持してチャックリング164に締め付けられるまでの間に、チャックリング164の内周部164aの前端が、チャック体163の傾斜面163dに摺動していく範囲を表す。最終地点が、接触点163gである。
ここで、比率K/Dは、14%以上30%未満の範囲とすることが望ましい。比率K/Dは、チャック体163の外周部163bに対する、チャック体163がチャックリング164に締め付けられる範囲である。仮に、この比率K/Dが大きければ、長さKが長いということであり、チャック体163が芯を把持する把持力が強くなり、芯にダメージ(課題な荷重)を与えやすくなる。また、仮に、この比率K/Dが小さければ、長さKが短いということであり、チャック体163の芯を把持する把持力が弱くなり、筆記中に芯が引っ込んでしまう。より具体的には、前記比率K/Dが30%以上の場合には、チャック体163の芯を把持する把持力が強くなり、芯にダメージ(過大な荷重)を与え易くなる。又、14%未満の場合には、チャック体163の芯を把持する把持力が弱くなり、筆記中に芯が引っ込んでしまう。よって、比率K/Dを14%以上30%未満の範囲とすることにより、シャープペンシルユニットの突出状態を解除した際に、その衝撃力による芯の喰いちぎり(折損)を防止することが出来る。
ここで、シャープペンシルユニット16Sの先部材167は、軸本体1の先端より突出して視認しやすいので、金属材質にめっきを施すのが良く、また、継ぎ手部材162やガイド筒165は、後述する芯繰り出し操作により互いに摺動するので、潤滑性のあるポリアセタール、ナイロン樹脂などにするのが良い。この場合、継ぎ手部材162とガイド筒165は、同じ樹脂でも良いが、例えばポリアセタール、ナイロン樹脂の様に異なる樹脂にした方が、より芯繰り出し操作の摺動性は良くなる。同じ樹脂にする場合は、グレードを異ならせる。このように互いに摺動する部材に硬度差をつけることにより、摺動性が向上する。
シャープペンシルユニット16Sを構成する各部材の構成について、詳述する。
前記芯タンク161と継ぎ手部材162との連結は、継ぎ手部材162の後方に設けられた連結部162aが芯タンク161に嵌合することによってなし、その嵌合は、前記連結部162aの前方に設けられた大径部162bの後方段部162bAの端面に芯タンク161の前端部が当接することで、嵌合完了となる。
又、前記ガイド筒165は、その後方部外形が、後方に向かって順に、大径部165a、後方に縮径するテーパー部165bにより形成されている。テーパー部165bの後端の外径は、継ぎ手部材162の縮径部162cよりも大きく、継ぎ手部材162の大径部162bの外径と略同じである。このテーパー部165bは、後述するシャープペンシルユニット16Sを軸本体1に収納する場合に、インキ収容管16Baの前端部16Bfが、ガイド筒165に引っかかって抵抗とならないようにスムーズに収納するために形成されている。即ち、シャープペンシルユニット16Sを軸本体1に収納する場合には、他のスライダー11Bを押圧し、互いのスライダー11S、11Bの背面に形成されている解除突起13、14を衝突させることによって、スライダー11Sの係合を解除する。このときスライダー11Bは、他のスライダーであるスライダー11Sを若干押圧しているので、押圧された筆記体は、その分前進し、ガイド筒と当接してしまうことがある。しかし、他の筆記体がシャープペンシルユニットのガイド筒と当接してしまったとしても、前記テーパー部165bがあるので、ボールペンリフィル16Bの前端部16Bfによる擦れ抵抗はなく、シャープペンシルユニット16Sの後退動作(収納)をスムーズに行うことが出来る。尚、前記ガイド筒165のテーパー部165bの後方を、テーパー部165から連続して形成された小径部としてもよい。
更に、前記弾撥部材166は、シャープペンシルユニット16Sの出没過程、及び芯繰り出し操作の過程で、他の筆記体と擦れ合って、スライド操作感が悪くなったり、急に操作が重くなったりすることを防ぐために、ガイド筒165などの内方に配置することが好ましい。
次にシャープペンシル用スライダー11Sとシャープペンシルユニット16S(芯タンク161)との連結部について詳述する。前記スライダー11Sの連結部21が芯タンク161の後端部に挿入されており、スライダー11Sの前方筒部22と芯タンク161の間には、前方筒部22の傾斜面22aと芯タンク161の内面とによって前方空間部26が形成されている。また、後方筒部25の外形を芯タンク161の内形より小さく設定することにより、各々の寸法差で後方空間部27が形成されている。また、スライダー11Sと芯タンク161の後端には隙間30が形成されている。この状態でスライダー11Sの溝部23付近の芯タンク161の外側は、径方向に小さくするようにかしめている(かしめ部28)。そのかしめ部28は、本例においては、円周状にかしめられているが、部分的にかしめても良い。このかしめ部28により芯タンク161は、スライダー11Sから脱落することなく固定される。また、前記芯タンク161の内面と前方筒部22の後端部は、その後端部の形状が8角形になっているため、点接触となっている。さらに、前記前方空間部26や後方空間部27、並びに、隙間30によりシャープペンシルユニット16Sは、回動可能に連結されている。ここで、スライダー11Sの前方筒部22は、前方に向かって縮径することで傾斜しているが、これは芯タンク161の挿入時の案内部となっている。前記前方筒部22の長さをある程度、確保することで芯タンク161の挿入時の案内と同時に芯タンク161をかしめる際の内面ガイドとしての役割を果たしている。また、前記隙間30はシャープペンシルユニット16Sのスライダー11Sに対する回動を可能にすることはもちろん、その回動時にスライダー11Sの連結部21の後端面に芯タンク161の後端面が接触しないように設定されている。これにより、シャープペンシルユニット16Sがスムーズに回動でき、出没動作が軽快に行える。また、シャープペンシルユニット16Sの回動範囲は、前記芯タンク161の後端内面が後方筒部25の表面に接触することによって規制されている。この接触によりスライダー11Sを前方に押圧したとき、芯タンク161の後端内面部が、後方筒部25に喰いつくように作用して、スライダー11Sの前方への動きをロスなく、確実にシャープペンシルユニット16S(芯タンク161)に伝達することができる。
シャープペンシル用スライダー11Sとシャープペンシルユニット16S(芯タンク161)との連結部の構成は、前述した点接触の構成に限らない。
例えば、前記芯タンク161は、前記シャープペンシル用のスライダー11Sの前方の連結部21近傍において、屈曲させ(屈曲部161b;図23(a)、(b)参照)、軸本体1に装着した際、シャープペンシルユニット16Sの前方部が軸本体1の中心軸線方向に向かうようにしても良い。この場合、前記芯タンク161は、前記スライダー11Sの前記連結部21に接着などの手段によって着脱不能に固定するなどしても良い。
また、前記連結部21には、ポリプロピレンやナイロンなどの樹脂材質、或いは金属材質からなる円筒状のシャープペンシルユニット16Sの芯タンク161がかしめ加工(かしめ部161a)によって回転不能に接続されていても良い。そのかしめ部161aは、円周状に渡って形成されている。勿論、複数方向からかしめても良いし、適宜選択が可能である。着脱自在にし、回転は不能に挿着されていても良い。
或いは、シャープペンシルユニット16Sの前方を中心方向に向けるために、前記連結部21を屈曲させても良い(図24、図25参照)。具体的に説明すると、前記スライダー11Sの連結部21が、前記スライダー11Sの連結部21を除く後方基部に対して角度を保たせて屈曲させている。
次に動作について、図3、図26〜図29、図33に示し説明する。スライダー11Sを前方(図26中左斜め上方)に押圧すると、スライダー11Sは、後軸3のスリット6並びに摺動溝7、スリット6aに案内され、弾撥部材17Sが圧縮変形されながら、シャープペンシルユニット16Sを伴い前進し、シャープペンシルユニット16Sの先端が軸本体1の先端より突出する(図28参照)。同時に、スライダー11Sが後軸3の内方である軸心方向に押し込まれるが、ツバ部11Sdが、後軸3のスリット6の両側の外周面に当接し、スライダー11Sの押し込みが規制される。次いで、スライダー11Sの側面部に形成されている摺動突起12の後端(図27では上方)が、摺動溝7の前端部に係合し、シャープペンシルユニット16Sの後退作用を阻止し、シャープペンシルユニット16Sの前進位置が維持される。つまり、この摺動溝7をスリット6の中間部までしか形成しないことにより、スライダー11Sの係合をも兼ねるようになっている。
このシャープペンシルユニット16Sの突出過程において、前記スライダー11Sの後部が軸本体1の中心軸線方向に向かって沈み込み、シャープペンシルユニット16Sの前方部が軸本体1の内壁面に接近しようとするが、シャープペンシルユニット16Sは、その後部で回動可能に連結されているため、シャープペンシルユニット16Sの前方部は直線を維持した状態で突出する。
ここで、前述した様にシャープペンシルユニット16Sの弾撥部材17Sは、ボールペンリフィル16Bの弾撥部材17Bよりもばね定数を低くしているため、ボールペンリフィル16Bの弾撥部材17Bよりも強さ(荷重)が低くなる。よって、シャープペンシルユニット16Sを軸本体1から突出させる際の操作感が、ボールペンリフィル16Bを軸本体1から突出させる際の操作感よりも軽くなる。このように、ボールペンリフィル16Bとシャープペンシルユニット16Sとで突出操作時の操作感が異なることで筆記体の違いを容易に識別でき、複式筆記具が使用し易くなる。
又、シャープペンシルユニット16Sは、ボールペンリフィル16Bと比較して、シャープペンシルユニット16Sの先端が前記軸本体1の先端より突出した前進位置から、更に、スライダー11Sを前進方向に操作する芯の繰り出し押圧操作が必要であり、弾撥部材17Sが付勢(圧縮)される距離(ストローク)、回数が多い。よって、ばね定数の小さい方がスプリング荷重を低く出来るので、芯の繰り出しノック圧が低くなり操作がし易くなる。
尚、前記先部材4の前端部から没入状態におけるボールペンリフィル16Bの前端部(段部)16Bfまでの距離をAとする。
ここで、シャープペンシルユニット16Sの先端が前記軸本体1の先端より突出した前進位置において、スライダー11Sのツバ部11Sdの上部11Seを前方方向へ押圧操作すると、シャープペンシルユニット16Sの先部材167が、前記先部材4の内径部の先端側へ向かって徐々に径が小さくなる円錐部4aに当接し、シャープペンシルユニット16Sの前進移動が阻止される。先部材167の外周面は複数の段部を有しており、各段部において、前方側の先部材167の外径よりも後方側の先部材167の外径の方が大きく形成されている。このため、シャープペンシルユニット16Sが前進せしめられると、シャープペンシルユニット16Sの先部材167は、前記軸本体1の先部材4に当接する。ここで、さらに、スライダー11Sを押圧操作すると、芯タンク161やチャック体163が弾撥部材166の弾発力に抗して前進し、前記大径部162bの前方段部162bBが、ガイド筒165のテーパー部165bの後端に当接することにより前進終了となり、これが芯の繰り出し押圧操作のストロークとなる。丁度、継ぎ手部材162の縮径部162cがガイド筒165の内部に収容される状態である(このときの先部材4の前端から前記大径部162bの前方段部162bBまでの距離をBとする(図33))。これによって芯の繰り出しがなされる。このとき、前述した通り、シャープペンシルユニット16Sの回動範囲は芯タンク161の後端内面部が後方筒部25の表面に接触することによって規制されており、この接触によりスライダー11Sを前方に押圧したとき、芯タンク161の後端内面部が後方筒部25の喰いつくように作用して、スライダー11Sの前方への動きをロスなく、確実にシャープペンシルユニット16S(芯タンク161)に伝達することができるのである。尚、芯の繰り出し押圧操作時におけるシャープペンシルユニットの最大前進状態においては、前記シャープペンシルユニットの前方段部162bBは、前記ボールペンリフィル16Bの前端部(段部)16Bfよりも前方に位置している(B<A)。
この芯繰り出し操作の過程で、スライダー11Sのツバ部11Sdが後軸3の外周面を摺接している。尚、本願発明においては、芯の繰り出し操作過程でスライダー11Sを前後動させた際に、他のボールペンリフィルのスライダー11Bと関わってしまうことはない。即ち、スライダー11S、及び、その前方に設けられたシャープペンシルユニットが単独で前後動する。このため、芯の繰り出し操作時に、ボールペンリフィル(シャープペンシルユニットを除く他の筆記体)まで僅かに前後動作してしまうようなことはない。シャープペンシルユニットの芯の繰り出し操作時には、シャープペンシルユニットのみが、軸本体1に対して前後動する。このようにシャープペンシルユニットのみが、軸本体1に対して前後動することによって、芯繰り出し操作荷重の増加がなく、良好な芯の繰り出し操作を行うことが出来る。
次に、シャープペンシルユニット16Sを軸本体1に収納したい場合には、他のスライダー11Bを押圧する。他のスライダー11Bを押圧すると、互いのスライダー11S、11Bの背面に形成されている解除突起13、14が衝突する。この衝突作用により、押圧されている状態にあるスライダー11Sが後軸3の外側方向に押圧される。そして、この押圧作用により、前記スライダー11Sの摺動突起12と摺動溝7との係合が解除され、その解除作用により突出している状態にあるシャープペンシルユニット16Sが弾撥部材17Sの作用により後退し軸本体1内に没入し、スライダー11Sは元の後退位置まで戻ることになる。
尚、図26(b)は、スライダー11Sが前進した状態を図示している。この状態では、後軸3は、スリット6、並びに、幅狭スリット部6aが大きな空間部となっている。この状態では勿論、更に芯の繰り出し作動を行うと、空間部にゴミや埃などの異物が入り易くなる。その結果、ゴミや埃などの異物がスリット6や幅狭スリット部6aの壁面、及び、スライド面3aに貼り付きやすい状態になっている。
但し、スリット6は外周面に近いのでゴミや埃などの異物は取り除き易く、スライド面3aは、摺動突起12の背面が接しながら摺動しているので、ゴミや埃などの異物は掻き出し易くなっている。しかし、幅狭スリット部6aは、軸心近傍に位置しているため、ゴミや埃などの異物を取り除き難くなっている。そこで、本実施例においては、シャープペンシルユニット16Sを軸本体1に収納する後退動作により、スライダー11Sの孔11Sfが、幅狭スリット部6aのゴミや埃を掻き取るように除去すると共に、孔11Sfに掻き取った異物を貯留するのである。そして、貯留した後においては、孔11Sfの幅狭スリット部6aから露出した部分から排出されるのである。
このシャープペンシルユニット16Sの芯繰り出し操作の過程において、重要なのはシャープペンシルユニット16Sが、芯の繰り出し押圧操作時におけるシャープペンシルユニットの最大前進状態の時に、継ぎ手部材162の大径部162bの前方段部162bBが、インキ収容管16Baの前端部(段部)16Bfよりも前方に位置するように構成することである(B<A)。即ち、没入状態ボールペンリフィルの段部16Bfの先部材4の前端部からの距離Aよりも、シャープペンシルユニット16Sの芯繰り出し操作の過程における、芯の繰り出し押圧操作時におけるシャープペンシルユニットの最大前進状態の時の前記シャープペンシルユニット16Sの前方段部162bBの先部材の前端部からの距離Bの方が、小さいという関係を満たしている(図33参照)。これは、前記大径部162bの前方段部162bBよりも外径が大きいテーパー部165bが、前記前端部16Bfと当接・干渉することによりシャープペンシルユニット16Sが湾曲し、芯出作動が悪くなることを防ぐためである。
また、前述したように、芯繰り出し操作は、シャープペンシルユニット16Sの先端が前記軸本体1の先端より突出した前進位置において、スライダー11Sのツバ部11Sdの上部11Seを前方方向へ押圧操作すると、シャープペンシルユニット16Sの先部材167が、前記先部材4の内径部の先端側へ向かって徐々に径が小さくなる円錐部4aに当接し、シャープペンシルユニット16Sの前進移動が阻止される。ここで、さらに、スライダー11Sを押圧操作すると、芯タンク161やチャック体163が弾撥部材166の弾発力に抗して前進し、前記大径部162bの前方段部162bBが、ガイド筒165のテーパー部165bの後端に当接することにより前進終了となり、これが芯の繰り出し押圧操作のストロークとなる。丁度、継ぎ手部材162の縮径部162cがガイド筒165の内部に収容される状態である(図33参照)。これによって芯の繰り出しがなされる。従って、芯の繰り出し操作の過程において、前記テーパー部165bが、前記前端部16Bfと当接・干渉することによりシャープペンシルユニット16Sが湾曲し、芯繰り出し作動が悪くなることを防ぎ、良好な芯繰り出し作動を得ることが出来る。
先部材167には段部が形成されているが、先端部分なので、他の筆記体と擦れ合うことはない。(図29参照)
以下、実施例および比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1〜5)
チャック体163の前端から傾斜面163dの後端までの長さDは、1.52mm、1.67mm、1.82mmの3水準を用意する。
又、チャックリング164との組合せは、接触点163gから傾斜面163dの後端までの長さKが、0.25mm、0.35mm、0.47mm、0.50mmになるよう設定する。組合せは、表1の通り。

(比較例1〜4)
チャック体163の前端から傾斜面163dの後端までの長さDは、1.52mm、1.67mmの2水準を用意する。
又、チャックリング164との組合せは、接触点163gから傾斜面163dの後端までの長さKが、0.20mm、0.47mm、0.62mmになるよう設定する。組合せは、表1の通り。

実施例1〜5、比較例1〜4で作製したチャック体163、チャックリング164を組み込んだシャープペンシルユニットを組み立てる。これらシャープペンシルユニットを組み込んだ複式筆記具にて芯折れ試験、芯の耐圧試験を実施した。これらの結果を表1に示す。

(1)芯折れ試験は、シャープペンシルユニット筆記体の係止と解除を、シャープペンシルユニット筆記体のスライダーと他のボールペンリフィルのスライダーを操作して連続で30回繰り返す。そして、シャープペンシルユニット筆記体のスライダーをノックして芯を出し、芯折れの有無を確認する。
◎:芯折れなし(40回以上)。
○:芯折れなし。
×:芯折れ有り。
××:芯折れ有り(15回以内)。
(2)芯の耐圧試験(芯の引っ込み防止)は、芯を約1mm出し、台ばかりなどを用いて芯に鉛直圧縮荷重をかける。6N(600gf)で、芯が先部材内にもぐり込みの有無を確認する。
○:芯引っ込みなし(800gf以上)。
○:芯引っ込みなし。
×:芯引っ込み有り。
××:芯引っ込み有り(300gf以内)。
Figure 0006171265
上記の結果から、K/Dの比率は、14%以上30%未満の範囲ある実施例の評価が良く、更には、26%以上28%以下だと更に良いことが分かる。これにより、衝撃力による芯の喰い千切り(折損)を防止することが出来ることがわかる。即ち、衝撃力によりチャック体とチャックリングの接触点Sがずれても、芯に過大な芯把持力はかからず、芯にダメージを与えることがなく、芯の喰いちぎり(芯の折損)を防止することができ、複合筆記具が使用しやすくなる。
1 軸本体(軸筒)
2 前軸
3 後軸
3a スライド面
4 先部材
4a 円錐部
4b 突出孔
4c 平面部
5 中軸
6 スリット
6a スリット
7 摺動溝
8 脚部
9 クリップ部
10 玉部
11 スライダー
111 延出部
11B ボールペンリフィル用のスライダー
11S シャープペンシルユニット用のスライダー
11Sd ツバ部
11Se 上部
11Sf 孔
11Sg 円弧部
11a 孔
11b 平面部
11c 円弧状の曲面部
11d 延出部
12 摺動突起
13 解除突起
14 解除突起
15 接続部材
15a 後方部
15b 前方部
15c 大径部
15d 嵌合突起
15e 平面部
15f 突起
15g 突起
16B ボールペンリフィル
16Ba インキ収容管(パイプ部)
16Bb ボールペンチップ(筆記部)
16Bc 膨出部
16Bd 膨出部
16Be 内面形状
16Bf 前端部(段部)
16S シャープペンシルユニット
161 芯タンク
161a かしめ部
161b 屈曲部
162 継ぎ手部材
162a 連結部
162b 大径部
162bA後方段部
162bB前方段部
162c 縮径部
163 チャック体
163a 芯把持部
163b 外周部
163c 水平部
163d 傾斜面
163e 案内傾斜面
163f 胴径部
163g 接触点
163h テーパー部
163i 貫通孔
164 チャックリング
164a 内周部傾斜面
164b 傾斜面
165 ガイド筒
165a 大径部
165b テーパー部
166 弾撥部材
167 先部材
168 芯戻り止め部材
17 弾撥部材
17B 弾撥部材
17S 弾撥部材
18 連結部
19 貫通孔
20 溝部
21 連結部
22 前方筒部
23 溝部
24 傾斜面
25 後方筒部
26 前方空間部
27 後方空間部
28 かしめ部
30 隙間

Claims (2)

  1. 芯の把持・開放を行うチャック体と、そのチャック体の前方を囲繞すると共にチャック体の開閉を行うチャックリングを有するシャープペンシルユニットを、軸筒内に出没可能に配置した筆記具であって、チャック体の芯把持部に対応する外周部を少なくとも、軸線に対して略平行な水平部と、その水平部の後方に位置し、軸線方向に傾斜した傾斜面とから形成すると共に、一方、前記チャックリングの内周部を、軸線に対して略平行に形成し、チャック体がチャックリングに嵌着され、前記チャックリングと前記傾斜面の後端とが接触し、チャック体が芯を把持してチャックリングに締め付けられる間にチャックリングがチャック体と摺動する長さであって、前記チャックリングと前記傾斜面の接触点までの長さをK、前記チャック体の前端から前記傾斜面の後端までの長さをDとしたときに、比率K/Dは14%以上30%未満であることを特徴とするシャープペンシルユニットが出没可能な筆記具。
  2. 前記チャック体の前端から、そのチャック体の芯把持部の前端までをR部としたことを特徴とする請求項1に記載のシャープペンシルユニットが出没可能な筆記具。
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