JP6170795B2 - 電極活物質、電極活物質の製造方法、電極材料、電極用ペースト、電極及び電池 - Google Patents
電極活物質、電極活物質の製造方法、電極材料、電極用ペースト、電極及び電池 Download PDFInfo
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Description
レーザー回折法による体積基準の平均粒径が5μm以上30μm以下であり、
偏光顕微鏡により光学組織を観察した偏光顕微鏡画像のうち480μm×540μmの矩形の視野において、面積の小さな光学組織から順に面積を累積し、その累計面積が光学組織の全面積の60%の面積となるときの光学組織の面積が10μm 2 以上5000μm 2 以下であり、流れ組織とファインモザイク組織とで形成された異方性組織であり、該流れ組織と該ファインモザイク組織との面積比が40:60〜70:30であり、真密度が1.9g/cm 2 以上2.17g/cm 2 以下であり、六方晶黒鉛としてのc軸方向の結晶子サイズが1nm以上10nm以下である電極活物質。
アスペクト比の小さな光学組織から順に光学組織の数を数えて、光学組織の全体数の60%に達したときの光学組織のアスペクト比が1.5以上6以下である上記(1)に記載の電極活物質。
950℃以上1500℃以下の不活性雰囲気にてコークスを焼成する工程を有し、
上記焼成前又は焼成後に、上記コークスをレーザー回折法による体積基準の平均粒径が5μm以上30μm以下となるように粉砕、分級し、
上記コークスは、偏光顕微鏡により光学組織を観察した偏光顕微鏡画像のうち480μm×540μmの矩形の視野において、面積の小さな光学組織から順に面積を累積し、その累計面積が光学組織の全面積の60%の面積となるときの光学組織の面積が10μm 2 以上5000μm 2 以下であり、流れ組織とファインモザイク組織とで形成された異方性組織であり、該流れ組織と該ファインモザイク組織との面積比が40:60〜70:30である電極活物質の製造方法。
1.コークス
2.電極活物質及びその製造方法
3.電極材料
4.電極用ペースト
5.電極
6.電池
コークスは、電池の電極を形成する電極活物質の原料となるものである。電極活物質の特性は、原料であるコークスの等方性、非等方性、偏光顕微鏡で観察した際の組織の大きさ等の光学組織が影響する場合がある。本発明を適用した電極活物質は、光学組織の面積やアスペクト比が特定の範囲であったり、光学異方性を有するコークスを原料として用いる。コークスの光学組織の面積及びアスペクト比は、コークスの断面を偏光顕微鏡で観察して得られる画像を解析して算出することができる。
コークスは、偏光顕微鏡により光学組織を観察して得られる偏光顕微鏡画像のうち480μm×540μmの矩形の視野において、面積の小さな光学組織から順に面積を累積し、その累計面積が光学組織の全面積の60%の面積となるときの光学組織の面積(以下、Da(60)ともいう。)が10μm2以上5000μm2以下であり、好ましくは10μm2以上2000μm2以下であり、より好ましくは20μm2以上1000μm2以下である。Da(60)が10μm2以上5000μm2以下の範囲内であれば、このようなコークスを電極活物質の原料に用いた場合には、放電容量、大電流負荷特性、サイクル特性の3つのバランスを取ることができる。
コークスは、種類により形状や物理特性が異なる。コークスとしては、光学組織を観察した際に流れ組織を有し、異方性であるものが好ましい。ここで、コークスの光学組織は、偏光顕微鏡観察によって得られた画像により、アスペクト比:粒子のアスペクト比:最大長Dmax/最大長垂直長DNmax(Dmax:粒子画像の輪郭上の2点における最大の長さ;DNmax:最大長に平行な2本の直線で画像を挟んだとき、2直線間を垂直に結ぶ最短の長さ)が、2.5以上となるものを流れ組織とし、アスペクト比が1より大きく2.5未満となるものをファインモザイク組織とする。コークスを負極活物質の原料として使用する場合には、流れ組織を有するコークスを使用すると比較的高い初期効率が得られ、ファインモザイク組織を有するコークスを使用すると比較的初期効率が低く、高い放電容量が得られる。
偏光顕微鏡により観察する観察対象領域となるコークスの断面は、次のようにして試料を作製して調製する。
[偏光顕微鏡観察用の試料作製]
先ず、最初の工程は、内容積30cm3のプラスチック製サンプル容器の底に両面テープを貼り、その上にスパチュラ2杯ほど(2g程度)の観察用サンプルを載せる。次の工程は、冷間埋込樹脂(商品名:冷間埋込樹脂#105、製造会社:ジャパンコンポジット株式会社、販売会社:丸本ストルアス株式会社)に硬化剤(商品名:硬化剤(M剤)、製造会社:日本油脂株式会社、販売会社:丸本ストルアス株式会社)を加え、30秒練る。次の工程は、得られた混合物(5ml程度)をサンプル容器に高さ約1cmになるまでゆっくりと流し入れ、1日静置して凝固させる。次の工程は、凝固したサンプルを取り出し、両面テープを剥がす。そして、最後の工程は、研磨板回転式の研磨機を用いて、サンプルの測定する面を研磨する。
次に、偏光顕微鏡画像の解析方法について説明する。以上のようにして作製した試料を偏光顕微鏡で観察する。観察は、例えば200倍で行う。偏光顕微鏡で観察したものは、OLYMPUS製CAMEDIA C−5050 ZOOMデジタルカメラをアタッチメントで偏光顕微鏡に接続して撮影し、画像とする。シャッタータイムは1.6秒で行う。撮影データのうち、1200ピクセル×1600ピクセルの画像を解析対象とする。これは480μm×540μmの視野を検討していることに相当する。画像解析はImageJ(アメリカ国立衛生研究所製)を用いて、青色部、黄色部、赤色部、黒色部を色判定する。ImageJの各色を定義したパラメーターは、以下の表1の通りである。
電極活物質は、原料に上述した性状を有するコークス、好ましくは石油系コークス及び石炭系コークスのうちの少なくとも1つを用い、そのコークスを焼成して得ることができる。即ち、電極活物質は、コークスの焼成物であるソフトカーボンである。電極活物質は、レーザー回折法による体積基準の平均粒径(D50)が5μm以上30μm以下である。更に、電極活物質は、偏光顕微鏡により光学組織を観察した偏光顕微鏡画像のうち480μm×540μmの矩形の視野において、面積の小さな光学組織から順に面積を累積し、その累計面積が光学組織の全面積の60%の面積となるときの光学組織の面積が10μm2以上5000μm2以下であり、流れ組織とファインモザイク組織とで形成された異方性組織であり、流れ組織とファインモザイク組織との面積比が40:60〜70:30である。また、電極活物質は、真密度が1.9g/cm2以上2.17g/cm2以下であり、六方晶黒鉛としてのc軸方向の結晶子サイズが1nm以上10nm以下である。更に、電極活物質は、偏光顕微鏡画像のうち480μm×540μmの矩形の視野において、アスペクト比の小さな光学組織から順に光学組織の数を数えて、光学組織の全体数の60%に達したとき光学組織のアスペクト比が1.5以上6以下であることが好ましい。なお、Da(60)及びARb(60)は、コークスのDa(60)及びARb(60)と同様であるため詳細な説明を省略する。
レーザー回折法による体積基準の平均粒径(D50)(以下、単に平均粒径ともいう。)は、5μm以上30μm以下であることが好ましい。平均粒径が5μm以上30μm以下の範囲である場合には、電極密度を上げることができ、また負極活物質中へのリチウム拡散に時間がかからず、高速充電をすることができる。平均粒径は、レーザー回折式のマスターサイザで測定することができる。
電極活物質の製造方法は、Da(60)が10μm2以上5000μm2以下を満たし、流れ組織とファインモザイク組織とで形成された異方性組織であり、流れ組織とファインモザイク組織との面積比が40:60〜70:30であり、真密度が1.9g/cm2以上2.17g/cm2以下となり、六方晶黒鉛としてのc軸方向の結晶子サイズが1nm以上10nm以下となれば特に限定されないが、以下に説明する製造方法は効率良く製造することができる。
(粉砕工程)
粉砕工程では、上述した性状を有するコークス、例えば石油系コークス及び石炭系コークスのうち少なくとも1つを粉砕機により粉砕する。粉砕には、公知のジェットミル、ハンマーミル、ローラーミル、ピンミル、振動ミル等が用いることができる。粉砕は、コークスの平均粒径(D50)が5μm以上30μm以下となるように行う。
分級工程は、気流分級や篩などを使用して粒度分布を調整する。
焼成工程は、不活性雰囲気で上述した性状を有する石油系コークス及び石炭系コークス等のコークスを温度950℃以上1500℃以下で焼成する。焼成工程では、熱処理炉の中に酸素が大量に混在しているとコークスが酸化されてしまうので、不活性雰囲気下で熱処理を行うことで酸化を防ぐようにする。熱処理炉内を不活性雰囲気にするには、アルゴン等の不活性ガスを用いる。
コーティング工程は、例えば石油系コークス及び石炭系コークス等のコークスを粉砕し、分級した後であって、焼成工程の前、又は焼成後、粉砕、分級した後に行う。コーティング工程では、例えば電極活物質のBET比表面積を下げるために、平均粒度が0.01μm以上25μm以下の石油系又は石炭系ピッチを、粉砕、分級したコークスと混合し、900℃以上1500℃以下の窒素雰囲気下で3時間熱処理を行う。ピッチの添加量は、コークス及び石油系又は石炭系ピッチを合わせた全質量の0.5%以上15%以下であることが好ましい。ピッチの添加量が0.5%以上15%以下である場合には、高い初期効率を得ることができる。また、ピッチの添加量は、全質量の0.5%以上10%以下であればより好ましい。ピッチの添加量が0.5%以上10%以下である場合には、コークスの凝集を抑制することができる。また、ピッチの添加量は、全質量の0.5%以上5%以下であれば更に好ましい。ピッチの添加量が0.5%以上5%以下である場合には、初期効率と大電流充放電特性のバランスをより良くすることができる。
酸化工程では、粉砕、分級後に焼成されたコークス、又は焼成後に粉砕、分級されたコークスを300℃以上1100℃以下の酸化性雰囲気にて酸化する。酸化性雰囲気とは、酸素など酸化性ガスが含有されていればよく、空気であってもよい。酸化工程では、例えば電極活物質の比表面積を上げるために、酸化性雰囲気下で、1時間酸化処理を行う。酸化温度は、300℃以上1100℃以下である。酸化温度が300℃以上1100℃以下の範囲である場合には、電極活物質の比表面積を向上させることができ、コークスが酸化し過ぎることを抑制することができる。また、酸化温度が500℃以上1000℃以下であればより好ましい。酸化温度が500℃以上1000℃以下の範囲である場合には、高い初期効率を保持することができる。酸化温度が700℃以上900℃以下であれば更に好ましい。酸化温度が700℃以上900℃以下の範囲である場合には、初期効率と大電流充放電特性のバランスをより良くすることができる。
電極材料は、上述の電極活物質を含むものである。その電極材料を、特に負極の負極活物質に用いた場合には、高い放電容量、大電流充放電特性及び初期効率を得ることができ、サイクル特性を向上させることができる。
(1)電極用ペースト
電極用ペーストは、電極活物質を含む電極材料とバインダを含むものである。電極用ペーストは、電極材料とバインダとを混練することによって得られる。混錬には、リボンミキサー、スクリュー型ニーダー、スパルタンリューザー、レディゲミキサー、プラネタリーミキサー、万能ミキサー等、公知の混練装置が使用できる。電極用ペーストは、シート状、ペレット状等の形状に成形することができる。
電極用ペーストは、電極活物質又は電極活物質と導電助剤との混合物及びバインダを含有する溶液又は分散液と、必要に応じた溶媒とを混練して得られる。電極用ペーストは、電極を形成する際の電極形成用塗工液となる。
電極は、電極用ペーストの成形体からなり、例えばリチウム系電池の負極である。電極は、例えば電極用ペーストを集電体上に塗布し、乾燥し、加圧成形することによって得られる。
電極は、電極形成用塗工液を集電体に塗布し、乾燥後、加圧成形することにより得られる。
電池としては、例えば上述した電極活物質、好ましくは負極活物質を含む負極を備える一次電池又は二次電池である。例えば、リチウム系電池であり、リチウムイオン二次電池やリチウムポリマ電池である。
本発明を適用した電池としては、リチウムイオン二次電池を例に挙げて説明する。リチウムイオン二次電池は、正極と負極とが電解液の中に浸漬された構造を有する。
負極には、上述した負極活物質を含む負極を用いる。
正極には、正極活物質として、公知の物質を使用することが可能である。例えば、リチウム含有遷移金属酸化物が使用可能であり、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Mo及びWから選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素とリチウムとを主として含有する酸化物が好ましく、リチウムに対する遷移金属元素のモル比が0.3〜2.2の化合物が好ましい。
非水系電解液としては、非水系溶媒中に、溶質としてリチウム塩を含むものを用いることができる。リチウム塩としては、一般に知られているLiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCl、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiN(CF3SO2)2等がある。これらのリチウム塩は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。リチウム塩の濃度は、0.1モル/L以上5.0モル/L以下が好ましく、0.5モル/L以上、3.0モル/L以下がより好ましい。
高分子固体電解質は、マトリクスを形成する高分子化合物、リチウム塩及び必要に応じて可塑剤を含むものである。高分子化合物としては、ポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイドなどのポリアルキレンオキサイド誘導体及びその誘導体を含む重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリカーボネート、リン酸エステル重合体、ポリアルキルアミン、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリフォスファゼン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリシロキサンなどの誘導体及びその誘導体を含む重合体等が挙げられる。
リチウムイオン二次電池及びリチウムポリマ電池は、以下の代表的な製造方法により製造することができるが、これに限定されるものではない。
[1]平均粒子径
平均粒子径(D50)は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置マイクロトランクHRA(日機装株式会社製)を用いて粒度分布を測定し、50%の値より求めた。
真密度は、ユアサアイオニクス株式会社製のウルトラピクノメータ10001にてヘリウムガスを用いて気相置換法により測定した。
BET比表面積は、ユアサアイオニクス株式会社製のNOVA2200eにて窒素ガスを用いてBET法により測定した。
(1)負極
各実施例及び比較例の負極活物質100gに、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)1.5g、水を適宜加えて粘度を調節し、固形分比40%のスチレン−ブタジエン(SBR)微粒子が分散した水溶液3.8gを加え攪拌・混合し、充分な流動性を有するスラリー状の分散液を作製した。次に、作製した分散液を厚み20μmの銅箔上にドクターブレードを用いて厚さ150μmで均一となるように塗布し、ホットプレートにて乾燥後、真空乾燥機で70℃、12時間乾燥させた。そして、乾燥後は、ロールプレスにて加圧成形して、密度の調整を行い、電池評価用の負極を得た。負極の塗布量は、6mg/cm2であり、電極密度は、1.2g/ccであった。
正極活物質としてLi3Ni1/3Mn1/3Co1/3を90gと導電助剤としてカーボンブラック(TIMCAL社製)5g、及び結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)5gに、N−メチル−ピロリドンを適宜加えながら攪拌・混合し、スラリー状の分散液を作製した。
非水溶媒として、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を体積比3:7で混合し、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.0モル/L溶解させたものを電解液とした。
[二極セル]
先ず、負極及び正極を打ち抜いて面積20cm2の負極片及び正極片を得た。正極片のAl箔にAlタブを、負極片のCu箔にNiタブをそれぞれ取り付けた。次に、ポリプロピレン製フィルム微多孔膜を負極片と正極片との間に挟み入れ、その状態でアルミラミネートに詰めた。次に、アルミラミネートに電解液を注液した。その後、開口部を熱融着によって封止して評価用の電池(設計容量25mAh)を得た。
対極リチウムセルは、ポリプロピレン製のねじ込み式フタつきのセル(内径約18mm)内に、作製した負極と16mmφに打ち抜いた金属リチウム箔をポリプロピレン製マイクロポーラスフィルム(ポリポア株式会社、セルガード2400)を挟み込んで積層し、電解液を加えて作製した。
評価は、対極リチウムセルを用いて試験を行った。充電は、レストポテンシャルから0.002Vまで0.2mAでCC(コンスタントカレント:定電流)充電(以下、CCモードともいう。)を行う。次に、0.002VでCV(コンスタントボルト:定電圧)充電(以下、CVモードともいう。)に切り替え、電流値が25.4μAに低下した時点で停止させる。
二極セルを用いて試験を行った。試験は、二極セルを上限電圧4.15V、カットオフ電流値1.25mAとしてCC−CVモードにより5mAで充電後、下限電圧2.8VでCCモードにより125mA(=5C)放電し、0.2C放電容量(0.2C=5mA)を基準として、1C、5C、10Cにおける放電容量の比を算出した。
試験用の電極を次のようにして作製した。まず、最初の工程は、電極ペーストを高純度銅箔上にドクターブレードを用いて150μm厚に塗布し、70℃で12時間真空乾燥した。次の工程では、乾燥させたものを15mmφに打ち抜き、打ち抜いた電極を超鋼製プレス板ではさみ、プレス圧が電極に対して1×102N/mm2(1×103kg/cm3)となるようにプレスした。得られた電極について、電極質量と電極厚みから電極密度を算出した。
以下の実施例と比較例では、三種類のコークスA、B、Cから1つ原料を選び、負極活物質を作製した。各コークスは、次のようにして作製した。
まず、最初の工程では、イラン産原油(API30、ワックス含有率2%、硫黄分0.7%)を常圧蒸留し、重質溜分に対して、十分な量のモリブデンニッケル触媒を用い、280℃、40atmで、水素と反応させた。次の工程では、得られたオイルが透明となるまで触媒等の固形分を遠心分離し、粘調の液体を得た。次の工程では、このオイルを小型ディレイドコーキングプロセスに投入した。ドラム入り口温度は、550℃であり、ドラム内圧は、600kPa(6kgf/cm2)であり、この状態を10時間維持した。そして、最後に水冷して黒色塊を得た。
まず、最初の工程では、中国遼寧省産原油(API28、ワックス含有率17%、硫黄分0.66%)を常圧蒸留し、重質溜分に対して、十分な量のY型ゼオライト触媒を用い、510℃、常圧で流動床接触分解を行った。次の工程では、得られたオイルが透明となるまで触媒等の固形分を遠心分離し、デカントオイルを得た。次の工程では、このオイルを小型ディレイドコーキングプロセスに投入した。ドラム入り口温度は、505℃であり、ドラム内圧は、600kPa(6kgf/cm2)であり、この状態を10時間維持した。そして、最後に水冷して黒色塊を得た。
原料は、メキシコ産原油を常圧蒸留した残渣を使用した。原料の成分は、比重0.7°API、アスファルテン分15質量%、樹脂分14質量%、硫黄分5.3質量%である。この原料を小型ディレイドコーキングプロセスに投入した。この際、コークスドラム前の加熱炉ヒータ出口温度は、560℃であり、ドラム内圧は、207kPa(2kgf/cm2)の状態で運転した。すると、コークスは、通常とは異なり、粒径約3〜8mm粒子状に造粒された状態となる。これを冷却してコーキングドラムから取り出して得た。
実施例1では、コークスAを平均粒子径が24μmとなるように粉砕、分級処理した後、1300℃の窒素雰囲気下で3時間熱処理を行い、負極活物質を作製した。この負極活物質のBET比表面積、粒度分布、(002)面の面間隔(d002)、C軸方向の結晶子サイズ(Lc(002))及び真密度を下記の表3に示す。
実施例2では、コークスBを平均粒子径が21μmとなるように粉砕、分級処理した後、1300℃にて窒素雰囲気下で、3時間熱処理を行い、負極活物質を作製した。この負極活物質のBET比表面積、粒度分布、(002)面の面間隔(d002)、C軸方向の結晶子サイズ(Lc(002))及び真密度を表3に示す。
実施例3では、コークスAを平均粒子径が24μmとなるように粉砕、分級処理したものと、全体に対して2質量%となるように、平均粒径が7.0μmで実質的に30μm以上の粒子を含まない異方性石油ピッチ(軟化点230℃、残炭率73%)とを、自転公転式混合機にて2000rpmで20分間乾式混合を行い、混合物を得た。
実施例4では、実施例2で得た負極活物質を、700℃にて空気雰囲気下で、1時間酸化処理を行ったこと以外は、実施例2と同様にして負極活物質を作製した。この負極活物質のBET比表面積、粒度分布、(002)面の面間隔(d002)、C軸方向の結晶子サイズ(Lc(002))及び真密度を表3に示す。
実施例5は、酸化処理温度を1000℃としたこと以外は実施例4と同様にして負極活物質を作製した。この負極活物質のBET比表面積、粒度分布、(002)面の面間隔(d002)、C軸方向の結晶子サイズ(Lc(002))及び真密度を表3に示す。
実施例6では、コークスBを平均粒子径が21μmとなるように粉砕、分級処理したこと以外は実施例2と同様にして負極活物質を作製した。この負極活物質のBET比表面積、粒度分布、(002)面の面間隔(d002)、C軸方向の結晶子サイズ(Lc(002))及び真密度を表3に示す。
実施例7では、1100℃にて窒素雰囲気下で3時間熱処理を行ったこと以外は実施例2と同様にして負極活物質を作製した。この負極活物質のBET比表面積、粒度分布、(002)面の面間隔(d002)、C軸方向の結晶子サイズ(Lc(002))及び真密度を表3に示す。
実施例8では、コークスBを1300℃にて窒素雰囲気下で3時間熱処理を行った後、平均粒子径が22μmとなるように粉砕、分級処理し、負極活物質を作製した。この負極活物質のBET比表面積、粒度分布、(002)面の面間隔(d002)、C軸方向の結晶子サイズ(Lc(002))及び真密度を表3に示す。
比較例1では、コークスCを平均粒子径が20μmとなるように粉砕、分級処理した後、1300℃にて窒素雰囲気下で3時間熱処理を行い、負極活物質を作製した。この負極活物質のBET比表面積、粒度分布、(002)面の面間隔(d002)、C軸方向の結晶子サイズ(Lc(002))及び真密度を表3に示す。
比較例2では、2000℃にて窒素雰囲気下で3時間熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして負極活物質を作製した。この負極活物質のBET比表面積、粒度分布、(002)面の面間隔(d002)、C軸方向の結晶子サイズ(Lc(002))及び真密度を表3に示す。
比較例3では、900℃にて窒素雰囲気下で、3時間熱処理を行ったこと以外は実施例2と同様にして負極活物質を作製した。この負極活物質のBET比表面積、粒度分布、(002)面の面間隔(d002)、C軸方向の結晶子サイズ(Lc(002))及び真密度を表3に示す。
Claims (13)
- コークスの焼成物であり、
レーザー回折法による体積基準の平均粒径が5μm以上30μm以下であり、
偏光顕微鏡により光学組織を観察した偏光顕微鏡画像のうち480μm×540μmの矩形の視野において、面積の小さな光学組織から順に面積を累積し、その累計面積が光学組織の全面積の60%の面積となるときの光学組織の面積が10μm2以上5000μm2以下であり、流れ組織とファインモザイク組織とで形成された異方性組織であり、該流れ組織と該ファインモザイク組織との面積比が40:60〜70:30であり、真密度が1.9g/cm2以上2.17g/cm2以下であり、六方晶黒鉛としてのc軸方向の結晶子サイズが1nm以上10nm以下である電極活物質。 - 偏光顕微鏡により光学組織を観察した偏光顕微鏡画像のうち480μm×540μmの矩形の視野において、
アスペクト比の小さな光学組織から順に光学組織の数を数えて、光学組織の全体数の60%に達したときの光学組織のアスペクト比が1.5以上6以下である請求項1に記載の電極活物質。 - BET比表面積が0.5m2/g以上5m2/g以下であり、六方晶黒鉛としての面間隔が0.341nm以上0.346nm以下である請求項1又は請求項2に記載の電極活物質。
- 請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載する電極活物質の製造方法であり、
950℃以上1500℃以下の不活性雰囲気にてコークスを焼成する工程を有し、
上記焼成前又は焼成後に、上記コークスをレーザー回折法による体積基準の平均粒径が5μm以上30μm以下となるように粉砕、分級し、
上記コークスは、偏光顕微鏡により光学組織を観察した偏光顕微鏡画像のうち480μm×540μmの矩形の視野において、面積の小さな光学組織から順に面積を累積し、その累計面積が光学組織の全面積の60%の面積となるときの光学組織の面積が10μm 2 以上5000μm 2 以下であり、流れ組織とファインモザイク組織とで形成された異方性組織であり、該流れ組織と該ファインモザイク組織との面積比が40:60〜70:30である電極活物質の製造方法。 - 上記コークス及び石油ピッチ又は石炭ピッチを合わせた全質量に対して0.5質量%以上15.0質量%以下の範囲となるように、該コークスに該石油ピッチ又は石炭ピッチを混合して上記焼成を行う請求項4に記載の電極活物質の製造方法。
- 上記粉砕、分級後に焼成したコークス、又は上記焼成後に粉砕、分級したコークスを300℃以上1100℃以下の酸化性雰囲気にて更に焼成する請求項4又は請求項5に記載の電極活物質の製造方法。
- 上記コークスは、上記偏光顕微鏡により上記光学組織を観察した上記偏光顕微鏡画像のうち480μm×540μmの矩形の視野において、アスペクト比の小さな光学組織から順に光学組織の数を数えて、光学組織の全体数の60%に達したときの光学組織のアスペクト比が1.5以上6以下である請求項4乃至請求項6の何れか1項に記載の電極活物質の製造方法。
- 請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載する電極活物質を含む電極材料。
- 請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載する電極活物質とバインダとを含む電極用ペースト。
- 請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載する電極活物質を含む電極。
- 電極密度が1g/cm2以上1.5g/cm2以下である請求項10に記載の電極。
- 請求項10又は請求項11に記載する電極を含む電池。
- リチウムイオン二次電池である請求項12に記載の電池。
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