JP6167851B2 - ヤシ核殻炭の製造方法 - Google Patents
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Description
近年、高炉のコークス比の低下により、焼結鉱が使用する粉コークスは、バランス上、不足する方向にある。粉コークス量を補完する炭材として、無煙炭の使用も進められてきた。粉コークスを補完又は代替する他の新たな炭材の開発が望まれている。
バイオマスは、カーボンニュートラルな材料である。カーボンニュートラルとは、その使用に際してCO2排出をカウントしなくてもよいという考え方をいう。即ち、植物(茎・葉・根など)は全て有機化合物で出来ている。その植物が種から成長するとき、光合成により大気中の二酸化炭素の炭素原子を取り込んで有機化合物を作り、植物のからだを作る。そのため植物を燃やして二酸化炭素を発生させても、空気中に排出される二酸化炭素の中の炭素原子はもともと空気中に存在した炭素原子を植物が取り込んだものであるため、大気中の二酸化炭素総量の増減には影響を与えないからである。
したがって、焼結鉱製造において、粉コークスに替えてバイオマスを利用することができれば、地球温暖化対策としての寄与が大きい。
特許文献2では、大半が炭素と有機分からなる下水汚泥を乾留して得られるカーボンニュートラル材としての下水汚泥由来炭化物を粉コークス代替として利用する技術が開示されており、その下水汚泥炭化物の粒度として、3mm未満が望ましいとしている。また乾留前の下水汚泥は、基本的に微細粒子からなるため、乾留後も微細粒子が主体となるとしている。すなわち、下水汚泥炭化物の粒度は、粉コークス並みの3mm以下の微細粒子が望ましいとしている。
特許文献3では、石炭を回転キルンにより加熱乾留して焼結用固体燃料としてのチャーを製造するに際し、理論燃焼空気量を調整し、0.25mm以下の微粉粒子を燃焼処理する技術が開示されている。
特許文献4では、コークス乾式消火設備(CDQ)で木質系バイオマスを乾留し、焼結用炭材を製造する方法が開示されており、焼結用に適した1〜3mmの粒径を得るには、乾留前のバイオマスは3mm以上粒子が80質量%以上にすることが望ましいとしている。
また、特許文献4に記載の発明は、焼結用に適した粒径は、従来の粉コークスと同じ1〜3mmであることを前提に、原料であるバイオマスの粒径調整を規定するが、粉コークスとは特性が相違するバイオマス炭材の焼結用に適した粒径が検討されていない。
ヤシ核殻を原料とした焼結鉱製造用のヤシ核殻炭は、比表面積が大きいことから、燃焼速度が速いという特性がある。その結果、ヤシ核殻炭を焼結鉱製造に用いると、焼結歩留が低下するという問題がある。その対応策として、燃焼速度を調整するため、ヤシ核殻炭の粒径を大きくすることを考えた。
しかし、ヤシ核殻炭を破砕・篩分けにより所望の粒度に調整しようとしても、ヤシ核殻炭は、粉砕され微細粒となり、適切な粒度調整が難しいという問題がある。
本発明の目的は、破砕・篩分けによることなく、原料(ヤシ核殻)の粒度を調整することにより、適切な粒径のヤシ核殻炭の製造方法を提供することである。
(1)焼結鉱の製造の固体燃料に用いるヤシ核殻炭の製造方法であって、
原料として平均粒径(DA)を調整したヤシ核殻を加熱・乾留することによって、
製品であるヤシ核殻炭を破砕することなく平均粒径(DB)が2.7mm―6.0mmであるヤシ核殻炭を得、
ヤシ核殻の平均粒径(DA)に対するヤシ核殻炭の平均粒径(DB)の割合α(粒径縮小割合)が、45.9%−66.9%であるヤシ核殻を用いることを特徴とするヤシ核殻炭の製造方法。
ここで、DA=100×DB/αである。
(2)ヤシ核殻を加熱・乾留する設備が、外部加熱の連続乾留方式であって、
前記α(粒径縮小割合)が、45.9%−51.9%であるヤシ核殻を用いることを特徴とする(1)に記載のヤシ核殻炭の製造方法。
(3)ヤシ核殻を加熱・乾留する設備が、内部加熱の連続乾留方式であって、
前記α(粒径縮小割合)が、46.6%−56.1%であるヤシ核殻を用いることを特徴とする(1)に記載のヤシ核殻炭の製造方法。
(4)ヤシ核殻を加熱・乾留する設備が、外部加熱のバッチ乾留方式であって、
前記α(粒径縮小割合)が、50.9%であるヤシ核殻を用いることを特徴とする(1)に記載のヤシ核殻炭の製造方法。
(5)ヤシ核殻を加熱・乾留する設備が、内部加熱のバッチ乾留方式であって、
前記α(粒径縮小割合)が、58.7%−66.9%であるヤシ核殻を用いることを特徴とする(1)に記載のヤシ核殻炭の製造方法。
ヤシ核殻は、油ヤシからパーム油を製造する際に発生する残渣である。油ヤシの果実の外側は油分を含んだ柔らかい部分で、これを高温蒸気で種子から分離してプレス機で絞り、パーム油を抽出する。果実の内部に核があり、核を取り除かれた後に残る殻がヤシ核殻である。
図1(A)にヤシ核殻、図1(B)にヤシ核殻炭の外形を示す。ヤシ核殻は特殊な形状をしており、その乾留物であるヤシ核殻炭も同様の形状を留めている。
ヤシ核殻炭の比表面積は、既存炭材の65倍〜88倍であり、ヤシ核殻炭は、燃焼性が非常に高い。ここで、比表面積は、粒径2.0mm〜4.0mmの炭材を用いてBETにより測定したものである。
ヤシ核殻炭の平均粒径は、4〜5mmであり既存炭材より粗粒である。また、ヤシ核殻炭Aの粒度構成を図2に示す。既存炭材は、粒径1.0mm以下の比率が略50%程度であるが、ヤシ核殻炭は、粒径1.0mm以下の比率が略ゼロであるという特徴がある。
本発明者等は、ヤシ核殻炭の粒径が、焼結生産率に及ぼす影響を焼結鍋試験により調査した。焼結用炭材として用いられる無煙炭を基準とし、平均粒径が0.5mm、2.0mm、4.0mm、又は、6.0mmのヤシ核殻炭を配合した原料をスリットバー方式により充填層の上層に細粒、下層に粗粒を充填し、焼成して焼結生産率を測定した。
図3にヤシ核殻炭の平均粒径と焼結生産率の関係を示す。ここで焼結生産率とは、下記の式(1)により算出されるものである。
図3において、ヤシ核殻炭の平均粒径が、2.7mm―6.0mmで、焼結生産率が基準の無煙炭より大きい。ヤシ核殻炭の平均粒径が、4±0.4mmの場合、焼結生産率が特に高い。
焼結用炭材として用いられる粉コークス又は無煙炭の平均粒径は、0.5mm―2mmである。ヤシ核殻炭の平均粒径が粉コークス等の平均粒径より大きいと焼結生産率が高くなる理由は以下であると考える。即ち、ヤシ核殻炭は、粉コークス等に比べ比表面積が大きく、燃焼速度が速い(表2)。焼結工程で燃焼速度が速いヤシ核殻炭を用いるとフレームフロントスピード(FFS)が速くなり、生産速度が速くなる。しかし、FFSが速すぎると、下方に吸引するドワイトロイド(DL)式焼結機では、炭材の燃焼により発生した充填層上層の熱が、下層原料へ伝達される時間が短縮され、熱不足により、焼成が不十分となり、焼結歩留が低下し生産性が阻害されると考える。そこで、ヤシ核殻炭の燃焼速度が速すぎることによる歩留低下を抑制するために、平均粒径を粉コークス等よりも大きくする方が、焼結生産率を高めるものと考えられる。また、焼結では、スリットバー方式等の装入装置で、充填層の高さ方向に原料粒度が偏析しており、カーボン濃度も異なる。具体的には、熱が不足する上層のカーボン濃度が高く、蓄熱する下層のカーボン濃度が低くなるようにしている。ヤシ核殻炭は、特殊な形状であり、粗粒化することにより、粉コークスや無煙炭と同様の高さ方向のカーボン濃度分布を作り込めることも見出した。
ヤシ核殻炭を2.7mm―6.0mmの粒度に調整することにより焼結生産性を高めることができ、特に、4±0.4mmで、焼結生産率が高いことが分かった。
ここで、ヤシ核殻炭を破砕・篩分けにより粒度を調整する方法を考えた。
ヤシ核殻を乾留して得られるヤシ核殻炭の粒度は、平均粒径4mm―5mm程度である(表3)。そこで、実機の焼結破砕機(ロッドミル)を用いて、ヤシ核殻炭を破砕して所望の粒度を得ることを試みた。表4に、その前後の粒度変化を示す。破砕前のヤシ核殻炭は平均粒径が4.4mmであるのに対し、破砕後のヤシ核殻炭は平均粒径が0.6mmとなり、2mm以下が96.5%、1mm以下が80.7%であった。このように、既存の焼結破砕機では、ヤシ核殻炭が粉々になってしまい、所望の粒度を得られないことが判明した。
ヤシ核殻炭を破砕により、所望の粒度を得ようとすると、微粉砕される。そこで、本発明者等は、ヤシ核殻乾留時の収縮や粉化による粒度低下代を予め予測し、乾留後のヤシ核殻炭が焼結に適した粒径になるように、乾留前のヤシ核殻の粒度を調整することにより焼結鉱製造に適したヤシ核殻炭を得る方法を考えた。即ち、原料であるヤシ核殻の粒度を事前に調整し、ヤシ核殻炭を破砕することなく焼結鉱製造に適したヤシ核殻炭を得る方法である。
乾留条件を変更してヤシ核殻を加熱・乾留し、ヤシ核殻炭を製造した。乾留方式は、バッチ外熱式、バッチ内燃式、連続外熱式及び連続内燃式の4方式とした。外熱式は、ロータリーキルン(内径90mm、長さ800mm)を用いた。乾留の雰囲気は、外熱式はAir、内燃式はN2の吹き込みによった。加熱・乾留温度は、800℃である。ヤシ核殻の処理速度は、内燃式で111g/min,外熱式で153g/minとした。
表1に示すヤシ核殻A及びヤシ核殻Bを上記の各加熱乾留方式の設備により加熱・乾留してヤシ核殻炭を製造した結果を表4に示す。
外熱式よりも内熱式の方が、ヤシ核殻炭の平均粒径が小さいのは、ヤシ核殻の一部が燃焼しているためである。また連続処理がバッチ処理よりもヤシ核殻炭の平均粒径が一般的に小さいのは、連続処理をした場合、急速昇温されるので、ヤシ核殻の一部が破砕されるためであると考えられる。
以上のことより、ヤシ核殻の平均粒径(DA)に対するヤシ核殻炭の平均粒径(DB)の割合α(粒径縮小割合)が、45.9%ー66.9%であることを予定して、ヤシ核殻の平均粒径(DA)を事前に調整すれば、ヤシ核殻炭を破砕することなく所望の平均粒径(DB)のヤシ核殻炭を得ることができることを確認した。
Claims (5)
- 焼結鉱の製造の固体燃料に用いるヤシ核殻炭の製造方法であって、
原料として平均粒径(DA)を調整したヤシ核殻を加熱・乾留することによって、
製品であるヤシ核殻炭を破砕することなく平均粒径(DB)が2.7mm―6.0mmであるヤシ核殻炭を得、
ヤシ核殻の平均粒径(DA)に対するヤシ核殻炭の平均粒径(DB)の割合α(粒径縮小割合)が、45.9%−66.9%であるヤシ核殻を用いることを特徴とするヤシ核殻炭の製造方法。
ここで、DA=100×DB/αである。 - ヤシ核殻を加熱・乾留する設備が、外部加熱の連続乾留方式であって、
前記α(粒径縮小割合)が、45.9%−51.9%であるヤシ核殻を用いることを特徴とする請求項1に記載のヤシ核殻炭の製造方法。 - ヤシ核殻を加熱・乾留する設備が、内部加熱の連続乾留方式であって、
前記α(粒径縮小割合)が、46.6%−56.1%であるヤシ核殻を用いることを特徴とする請求項1に記載のヤシ核殻炭の製造方法。 - ヤシ核殻を加熱・乾留する設備が、外部加熱のバッチ乾留方式であって、
前記α(粒径縮小割合)が、50.9%であるヤシ核殻を用いることを特徴とする請求項1に記載のヤシ核殻炭の製造方法。 - ヤシ核殻を加熱・乾留する設備が、内部加熱のバッチ乾留方式であって、
前記α(粒径縮小割合)が、58.7%−66.9%であるヤシ核殻を用いることを特徴とする請求項1に記載のヤシ核殻炭の製造方法。
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