高炉用の鉄源として使用される焼結鉱は、一般に下記の方法により製造される。
焼結用の原料は、粉鉄鉱石、返鉱、炭材および副原料から構成されている。返鉱とは、焼結ケーキを破砕した後に発生する成品粒度条件から外れる焼結鉱である。炭材とは、コークス、石炭など、炭素源を含有する原料をいう。副原料とはSiO2を含有する原料、CaOを含有する原料、MgOを含有する原料など、鉄鉱石、返鉱および炭材を除く原料を意味する。製鉄所内で発生するダストやスラグなどの雑原料は、炭素源を含むものもあるが、副原料に分類される。これらの原料のうち、粉鉄鉱石、副原料および炭材の大部分は、銘柄毎にヤードに野積みされる。
これらの原料は、それぞれ原料槽に一時保管され、予め計画された配合比率にしたがって原料槽から切り出され、混合される。このように混合された原料を「焼結原料」という。混合された直後の焼結原料の水分値(この水分値を、「初期水分」という)は、通常3.0〜6.0質量%程度である。初期水分は、晴天の日が続けばヤードに野積みされた鉄鉱石、副原料や炭材が乾燥するため低くなり、一方雨天が続けば濡れるため高くなり、日々変動している。
この焼結原料は、通常6.0〜7.5質量%程度の水分値になるように水分が添加され、混合、調湿および造粒処理が施される。ここで、水分が添加された後の焼結原料の水分値を「造粒水分」という。
混合・造粒処理は、種々の粒径の粒子が水分を介して合体し、擬似的な粒子が形成される過程である。形成された擬似的な粒子を「擬似粒子」という。通常は、粒子径が1mm以上の原料を核粒子として、その周囲に粒子径が0.25mm以下の原料が付着した、平均粒径が2〜4mm程度の擬似粒子が形成される。
この擬似粒子は、サージホッパーに装入された後、サージホッパーの下方からロールフィーダによって切り出され、スローピングシュート等の偏析装入装置を介して焼結機のパレット上へ装入される。擬似粒子は、パレット上で焼結原料充填層(以下、単に「原料層」とも記す)を形成し、通常は、500〜700mm程度の層厚となるように調整される。
形成された原料層には、高さ方向に偏析が生じる。一般的に、上層部に細粒の擬似粒子が堆積しやすく、下層部に粗粒の擬似粒子が堆積しやすい傾向にあり、粒度偏析と呼ばれる。さらに、同一粒径であれば、密度が小さい擬似粒子ほど下層部に偏在する傾向があり、これは密度偏析と呼ばれる。すなわち、粗粒で密度が小さい擬似粒子ほど下層部に偏在する傾向がある。近年では、粒度偏析強化の観点から、偏析装入装置として、スリットバー装入装置、スリットワイヤー装入装置、ISF装入装置、ハイブリッド式磁力偏析装入装置、風力偏析装置等が使用されている。
続いて、点火炉で原料層の表面に着火させ、下方へ空気を吸引する。この着火により、原料層内に存在する擬似粒子中の炭材の燃焼が開始され、炭材の燃焼部分は燃焼帯を形成する。原料層が給鉱側から排鉱側へ移動する間、下方から吸引されているので、空気が原料層の上部から下部に向かって流入する。これにともない、燃焼帯は、次第に原料層の上部から下部に向かって移動する。
なお、燃焼帯において発生する燃焼熱は、燃焼帯が上部から下部に移行するにつれて蓄積されるので、一般に、原料層の上部では熱不足になりやすく、下部では熱過剰になりやすい。そこで、この熱的な偏差を緩和して原料層温度を均一にするために、原料層の高さ方向の炭素濃度(一般に、フリーカーボン(Free−C)濃度が用いられる)を上層部で高く、下層部で低くなるように、偏析装入装置を用いて偏析装入を行っている。このFree−C濃度分布の制御においては、炭材の粒度や、擬似粒子内の炭材腑存状態に起因する変動を考慮する必要がある。
前記燃焼帯の移行にともない、燃焼帯で発生する熱によって周囲の擬似粒子が昇温され、部分的に溶融し、その融液により擬似粒子間が架橋されて焼結し、原料層は最終的に焼結ケーキを形成する。このようにして形成された焼結ケーキは、焼結機の排鉱部から排鉱される。
上記のように、原料層は、焼結機のパレット上に装入されて以降、焼結ケーキを形成し、冷却後、排鉱されるまでの間に、昇温、焼結および冷却の各操作を受けるので、それらの条件により焼結成品の品質は左右される。
このように、焼結時に高さ方向における原料層温度を均一にするため、Free−C濃度を、高さ方向で均一分布にするのではなく、適正な分布状態になるように、偏析装入装置を用いて粒度偏析を生じさせる(すなわち、上層部に細粒、下層部に粗粒の擬似粒子を堆積させる)ことにより制御している。この制御の結果、一般的には、原料層の上層部のFree−C濃度が高く、下層部へ向かうにしたがってFree−C濃度が低下する適正な分布状態になる。
また、粉コークスの適正粒度は、0.5〜2.0mmとされている。その理由は、前述のFree−C濃度の適正制御を行うためにはこの粒度が望ましく、また、その結果として、原料層内で、適切な燃焼時間を確保して、焼結鉱の良好な品質に結びつけることができるからである。
ところで、焼結機では、炭材として多量の粉コークスや石炭を使用しており、多量の炭酸ガスを発生させている。この炭酸ガスの発生を抑制するために、炭材としてバイオマス、もしくはバイオマスを乾留したバイオマス炭を使用する方法が検討されている。
バイオマスはエネルギー源としての生物体であり、特に、植物バイオマスは、燃焼させるなどしてエネルギー源として消費すると分解して炭酸ガスを発生するが、太陽光によって炭酸ガスと水分とが光合成して再度植物バイオマスに成長し、短期間の循環サイクルを形成する。そのため、植物バイオマスは、地下資源エネルギーである石炭や石油などとは異なり、「カーボンニュートラル」材と称され、エネルギー源としての消費により炭酸ガスに戻っても地球温暖化ガスとしての炭酸ガス発生量には関与しないと考えられている。
これまでに、バイオマス、もしくはバイオマスを加熱して炭化させたバイオマス炭を焼結で使用した試験結果がいくつか報告されている。
例えば、非特許文献1では、焼結用の固体炭材である粉コークス(一部)の代替えとして、ひまわりの種皮、ハーゼルナッツ殻、アーモンド殻などのバイオマスを使用した焼結試験結果が報告されている。ここでは、バイオマスは揮発分が70質量%と高く、焼結過程で燃焼するよりも前に揮発分が未燃焼で排出されるため、有効に活用されないと指摘されているが、一方、ひまわりの種皮から製造したペレットの粒径を変更した試験結果から、0.6〜0.85mmの粒径のものがコークスの熱履歴に最も近く、バイオマスを利用する場合には、粒径1mm以下として粉コークスに混合(置換率:25%)するのがよいとされている。しかしながら、ここでの試験は、原料層の高さ方向の固定炭素濃度が均一の状態で実施されており、焼結操業の実態を反映しているとは言い難い。
非特許文献2では、バイオマス炭は粉コークスや無煙炭よりも粗粒化し、高燃焼性を制御することにより成品歩留が改善されると報告されており、適正操業条件が粉コークスや無煙炭と異なることが指摘されている。しかしながら、バイオマス炭の適正粒度は示されていない。また、この報告も、原料層の高さ方向の固定炭素濃度が均一の状態で実施された結果に基づくもので、焼結操業の実態を反映しているとは言い難い。
特許文献1では、焼結工程において、炭材として使用するコークスの一部を硫黄分や窒素分の少ないバイオマス炭化物により代替し、コークス燃焼時に発生するNOX、SOXを低減する技術が開示されている。一方、バイオマス炭化物を多量に配合すると焼結性が悪化するという問題も提起されている。さらに、バイオマス炭化物を使用する場合、成品歩留確保の観点から、コークス配合量よりもバイオマス炭化物の配合量を増やさなければならないことも記載されている。しかしながら、特許文献1では、使用したバイオマス炭化物については、化学組成および水分が開示されているのみであり、粒度や処理方法については記載されていない。
特許文献2では、その大半が炭素と有機分からなる下水汚泥を乾留して得られるカーボンニュートラル材としての下水汚泥由来炭化物を粉コークスの代替えとして利用する技術が開示されており、その下水汚泥炭化物の粒度として、従来使用されている粉コークス並の5mm以下、望ましくは3mm以下とするのが良好としている。しかしながら、この下水汚泥炭化物の粒径は、原料層高さ方向の粒度分布が均一であることを前提として得られた結果に基づくものであり、実際のプロセスで実施しているように粒度偏析(上層部に細粒、下層部に粗粒の擬似粒子が堆積)させた場合については、検討されていない。
また、特許文献3では、石炭を回転キルンにより加熱乾留して焼結用固体燃料としてのチャーを製造するに際し、所定量の空気を供給して微粉粒子の燃焼処理を行う技術が開示されている。しかしながら、従来の粉コークスや無煙炭と同様に、粒径が5mmを超える石炭チャーは最下層で偏析するので好ましくなく、適正な粒径は0.5〜5mm程度であるとしており、破砕ラインが必要であると考えられる。また、この石炭チャーの粒径は、原料層高さ方向の粒度分布が均一であることを前提として得られた結果に基づくものであり、実際のプロセスで実施しているような粒度偏析させた場合については、検討されていない。
上述したように、焼結機では炭材として多量の石炭やコークスを使用するため炭酸ガスの排出量がきわめて大きい。この炭酸ガス排出量を削減するためには、カーボンニュートラル材と称されるバイオマスを炭化したバイオマス炭の使用が有効であり、石炭やコークスの代替として利用する技術開発が行われてきた。しかし、前掲の非特許文献1、2に記載される技術は、焼結操業の実態を反映しているとは言い難い条件を前提として行われた試験をもとに導出されたものである。特許文献2、3においても、焼結原料層の高さ方向の粒度分布が均一であることを前提としており、実際のプロセスで実施しているような粒度偏析させた場合については、検討されていない。また、特許文献1では、使用したバイオマス炭化物の粒度や処理方法については何も記載されていない。
一方、バイオマス資源としては、アブラ椰子核殻(Palm Kernel Shell:以下、「PKS」ともいう)やそれを加熱して炭化させたアブラ椰子核殻炭(以下、「PKS炭」ともいう)が有望視されており、例えば、特許文献4に、鉄鋼業で使用される冶金用コークスをPKS炭に代替することを目的として、アブラ椰子核殻(PKS)からPKS炭を製造する技術も開示されている。
しかしながら、バイオマス炭を焼結工程で使用する場合には、既存の炭材である粉コークスや無煙炭とは、適正な操業条件が異なることが予想され、このことは、バイオマス炭の一種であるPKS炭を使用する場合にも該当する。
PKS炭を焼結用固体炭材として使用するに際しての好ましい操業条件を見出した例は見られず、適正な操業技術が確立されていないことが、実際に、PKS炭を焼結用固体炭材として使う上での障害になっている。
本発明はこのような実状に鑑みてなされたもので、バイオマスとしてアブラ椰子核殻(PKS)を加熱処理して炭化させたPKS炭を焼結用固体炭材として利用することにより、地球温暖化ガスである炭酸ガス排出量を抑制するとともに、好ましい操業条件を見出し、適正な操業技術を確立して、焼結生産性を向上させることができる焼結鉱の製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明者らは、先ず、PKS炭の性状について詳細に調査した。PKS炭は、アブラ椰子の実を粉砕して油分(パーム油)を搾り取った残渣であるアブラ椰子核殻(PKS)を、加熱処理することにより得られる炭化物である。PKS炭は、以下に述べる形状ならびにそれに起因する特性を有している。
図1は、アブラ椰子核殻(PKS)の外観を例示する写真である。アブラ椰子核殻(PKS)は、アブラ椰子の実の粉砕過程で、楕円形の椰子核が部分的に破砕され、半楕円形でかつ内部が窪んだ形状、もしくはそれが部分的に欠けた形状を呈している。
図2は、アブラ椰子核殻炭(PKS炭)の外観を例示する写真である。PKSは加熱処理(乾留)をしても粉々になることはなく、ほぼ元の形状を維持している。
このPKS炭を炭材の一部に使用して造粒処理したとき、造粒物(擬似粒子)として取り込まれたPKS炭が、次の図3に示すように、その窪んだ部分に微粉鉄鉱石が入り込んで、窪みが微粉鉄鉱石で埋まった状態になっていることを知見した。
図3は、PKS炭配合時の造粒物の断面構造を例示するCT写真である。(a)と(b)の2例を表示している。造粒物はそれぞれ擬似粒子(平均粒径2〜4mm程度)を構成しており、矢印を付して示したPKS炭の造粒物は、PKS炭の窪みに微粉鉄鉱石が埋まった状態の擬似粒子となっていることがわかる。
すなわち、PKS炭(造粒物)は造粒する前のPKS炭と粒径が同程度であり、埋まった微粉鉄鉱石により質量が上昇していると考えられる。ここで、PKS炭(造粒物)の粒径や、造粒する前のPKS炭の粒径とは、篩い分けした後のPKS炭(破片)1個の粒径を意味する。
次に、PKS炭の化学組成、発熱量、粒径、その他基礎性状等について述べる。
表1に、PKS炭の工業分析および元素分析の結果を既存炭材と対比して例示する。PKS炭は、固定炭素が既存炭材と同程度含まれており、発熱量も既存炭材と同程度である。
表2に、PKS炭の基礎性状および平均粒径を既存炭材と対比して例示する。
嵩密度は、前記図2の外観写真にも示されるとおり、半楕円形でかつ内部が窪んでいるため、0.50〜0.58g/cm3であり、既存炭材(0.77〜0.88g/cm3)よりも小さい。
一方、真密度は、1.60〜1.71g/cm3であり、既存炭材(1.54〜1.95g/cm3)とほぼ同程度である。
比表面積は、PKS炭Aが55m2/gで、既存炭材の約65倍であり、PKS炭Bが75m2/gで、既存炭材の約88倍であり、燃焼性が非常に高いと考えられる。ここで、比表面積は、篩粒径2.0〜4.0mmを用いて、BET法により測定した値である。なお、「篩粒径2.0〜4.0mm」とは、篩目の大きさが2mmの篩で篩い分けたときの篩上であって、4mmの篩で篩い分けたときの篩下をいう。単に「粒径2.0〜4.0mm」ともいう。
また、保水性指数は、PKS炭Aが10.8質量%で、既存炭材の約2.6倍であり、PKS炭Bが12.8質量%で、既存炭材の約3.0倍であり、造粒時の水分は高めにしておくことが望ましい。ここで、保水性指数は、乾燥させた炭材に過剰に水を加えた後、遠心分離機で2750rpm、30分遠心脱水した後に残留する水分値である。
平均粒径は、PKS炭Aが4.2mmであり、PKS炭Bが4.9mmであり、いずれも既存炭材より粗粒である。なお、ここでいう「平均粒径」とは、後に定義するように、算術平均粒径を意味する。
表3に、篩い分けしたPKS炭の粒径範囲毎の1個当たりの平均質量を既存炭材と対比して例示する。
篩い分けしたPKS炭の1個当たりの平均質量は、いずれの粒径範囲においても既存炭材より小さい。これは、既存炭材が、次の図4に示すように、球形に近いのに対して、PKS炭は半楕円形でかつ内部が窪んでいることによるものと考えられる。
図4は、粉コークス配合時の造粒物の断面構造を例示するCT写真である。矢印を付して示した粉コークスが核になり、その周りに粉状物が付着して擬似粒子が構成されているが、核になっている粉コークスは球形に近い形状をなしている。
図5は、炭材の粒径分布曲線(累積分布曲線)を例示する図である。既存炭材は、粒径1.0mm以下の粒子の比率が50%程度であるが、PKS炭は、粒径1.0mm以下の粒子の比率がほぼゼロという特徴がある。
一般に、焼結プロセスにおいては、燃焼性の良好な炭材を使用すると燃焼速度が向上し、焼結生産率が向上する一方、成品歩留が低下することが知られている。また、炭材の燃焼性は、細粒であるほど比表面積が大きいため、速いことが知られている。
PKS炭の焼結用固体炭材としての利用を考えた場合、PKS炭の特徴の一つは、上述したとおり、既存の炭材と比較して比表面積が極めて大きく(前記表2参照)、そのため燃焼性が非常に高いことにあると考えられる。
そこで、本発明者らは、PKS炭のような燃焼性の良好な炭材を使用するに際し、既存炭材である粉コークスや無煙炭よりも粗粒化することにより、燃焼時間を延長して、成品歩留の低下を抑えつつ焼結生産率を向上させる方法について検討した。
なお、焼結原料のパレットへの装入時に、原料層の高さ方向における粒度偏析が起こるが、上述したように、PKS炭は、半楕円形でかつ窪みがある形状をしているため(前記図1、図2参照)、擬似粒子内に取り込まれても粒径はほとんど上昇することがない。さらにPKS炭の窪みに微粉鉄鉱石が埋まった状態の擬似粒子となっているため(前記図3参照)、密度が高く、従来の炭材より粗粒化しても下層部に偏在されにくいと考えられる。また、粗粒化については、前記図5に示したように、PKS炭は、アブラ椰子核殻(PKS)を加熱処理して炭化した時点で既存炭材に比べて粗粒化しているので、利用する上で好都合である。
このような考え方のもとに、鍋試験装置を用い、炭材としてPKS炭を使用した焼結試験を行ったところ、後述するように、PKS炭を粗粒化することにより良好な結果が得られ、PKS炭の平均粒径が2.7〜6.0mmであれば、既存炭材である無煙炭を使用した場合よりも焼結生産率が向上することが判明した。この平均粒径範囲は、既存炭材である無煙炭の平均粒径に対する平均粒径差で表示すると、1.0〜4.3mm粗粒にすることに該当する。
さらに、PKS炭の平均粒径を4.0mm±0.4mm(無煙炭に対する平均粒径差で1.9mm〜2.9mm粗粒化)として炭材に用いることにより、既存炭材を使用した焼結原料を焼結機パレットに偏析装入した場合と同様のFree−C濃度分布を作り込めることがわかった。
本発明は、このような検討ならびに知見に基づきなされたもので、下記(1)および(2)の焼結鉱の製造方法を要旨とする。
(1)粉鉄鉱石類、副原料、返鉱および固体炭材からなる焼結原料を造粒処理して得られた擬似粒子を焼結機のパレットに偏析装入し、原料層の高さ方向に炭素濃度差を生じさせて焼成する焼結鉱の製造方法において、前記焼結原料中の固体炭材の一部または全部として、アブラ椰子核殻(PKS)を加熱処理して製造した固体炭化物であるPKS炭を配合する際に、平均粒径を2.7mm〜6.0mmに調整したPKS炭を配合することを特徴とする焼結鉱の製造方法(以下、この発明を「第1発明」と記す)。
前記第1発明において、平均粒径を4mm±0.4mmに調整したPKS炭を配合する実施の形態を採ることが望ましい。
(2)鉄鉱石、副原料、返鉱および固体炭材からなる焼結原料を造粒処理して得られた擬似粒子を焼結機のパレットに偏析装入し、原料層の高さ方向に炭素濃度差を生じさせて焼成する焼結鉱の製造方法において、前記焼結原料中の固体炭材の一部として、アブラ椰子核殻(PKS)を加熱処理して製造した固体炭化物であるPKS炭を配合する際に、平均粒径を、固体炭材である粉コークスまたは無煙炭の平均粒径よりも1.0mm〜4.5mmの範囲内で粗粒に調整したPKS炭を配合することを特徴とする焼結鉱の製造方法(以下、この発明を「第2発明」と記す)。
前記第2発明において、平均粒径を、粉コークスまたは無煙炭の平均粒径よりも1.9mm〜2.9mm粗粒に調整したPKS炭を配合する実施の形態を採ることが望ましい。
ここで、「平均粒径」とは、Σ(Vi×di)/Σ(Vi)(但し、Vi:粒子径diである粒子の存在比率であり、粒子径diは、各篩の篩目間の中間粒度で代表させる)で定義される算術平均粒径を意味する。なお、上記定義式は、普通、Σ(Vi×di)/100として、算術平均粒径が算出される。
「固体炭材」とは、前記のとおり、コークス、石炭など、炭素源を含有する原料をいう。「返鉱」とは、焼結原料を焼成して得られた焼結ケーキを高炉使用に適した粒度範囲に破砕し、篩い分けする過程で発生する成品粒度条件から外れる焼結鉱である。
「偏析装入」とは、焼結原料の焼結機パレットへの装入時に一般に行われている装入方法で、前述したように、偏析装入装置を用いて粒度偏析を生じさせる(すなわち、上層部に細粒、下層部に粗粒の擬似粒子を堆積させる)装入方法である。
また、原料層の高さ方向に生じさせる「炭素濃度差」は、ここでは、Free−C濃度の差で表す。「偏析装入」することにより、原料層の高さ方向に炭素濃度差を生じさせ、原料層の上層部のFree−C濃度を高くし、下層部へ向かうにしたがってFree−C濃度を低下させることができる。
本発明によれば、PKS炭を焼結用固体炭材として利用することができ、それにより、炭材の燃焼速度を向上させ、焼結生産性を向上させることができる。地球温暖化ガスである炭酸ガス排出量の抑制にも大きく貢献することができる。
前記の第1発明は、粉鉄鉱石類、副原料、返鉱および固体炭材からなる焼結原料を造粒処理して得られた擬似粒子を焼結機のパレットに偏析装入し、原料層の高さ方向に炭素濃度差を生じさせて焼成する焼結鉱の製造方法であることを前提としている。前述のように、焼結時に高さ方向における原料層温度を均一にするために、装入時の炭素濃度を高さ方向で均一に分布させるのではなく、偏析装入装置を用いて炭素濃度が適正な分布になるように粒度分布を生じさせる偏析装入が多く採用されている。本発明の焼結鉱の製造方法(前記の「第2発明」を含む)においても、このようなパレット内原料層の形成を行う。
図6は、焼結機(実機)における原料層高さ方向のFree−C濃度分布を例示する図である。原料層高さおよびFree−C濃度のいずれも相対値で表している。偏析装入装置を用いて粒度偏析させる(一般的に上層部に細粒の擬似粒子が堆積しやすく、下層部に粗粒の擬似粒子が堆積しやすい)ことにより、同図に示すように、Free−C濃度は上層部で高く、下層部で低い適正な分布状態となる。
第1発明では、この前提のもとに、前記粉鉄鉱石類、副原料、返鉱を配合した焼結原料に、固体炭材の一部または全部として、半楕円形でかつ窪みのあるアブラ椰子核殻(PKS)を加熱処理して製造した固体炭化物であるPKS炭を配合する際に、平均粒径を2.7mm〜6.0mmに調整したPKS炭を配合する。
平均粒径を2.7mm〜6.0mmの範囲内に調整したPKS炭を配合するのは、以下に示す焼結鍋試験の結果によるものである。
具体的には、炭材として、平均粒径が0.5mm、2.0mm、4.0mmまたは6.0mmのPKS炭を使用した場合の焼結生産率を求め、既存炭材使用時の焼結生産率と比較した。これら平均粒径が異なるPKS炭は、造粒後のPKS炭を、次の図7に示すスリットバー方式の簡易装入装置を用いて分級(5分割)して得られたものである。ここで、「焼結生産率」とは、粒径が5mm以上の焼結鉱の質量を焼結機の有効面積および焼結時間により除し、下記(1)式を用いて算出される値である。なお、「粒径5mm以上」とは、篩目の大きさが5mmの篩により篩い分けた篩上を意味する。
焼結生産率(s−t/m2/d)=[粒径が5mm以上の焼結鉱の質量(s−t)/
{焼結機の有効面積(m2)×焼結時間(分)}]×60×24 ・・(1)
図7は、スリットバー方式の簡易装入装置の概略構成を模式的に示す図である。同図に示すように、この簡易装入装置にはスリット幅が細幅から広幅に適宜調整されたスリット1が設けられており、傾斜させたスリットバー2の上を、原料3が上方側から下方側へと移動する間に、原料3は、その粒径に応じて順次スリット1を抜けて落下し、5分割される。
図8は、比較のために行ったもので、原料均一装入時におけるPKS炭の平均粒径が焼結生産率に及ぼす影響を示す図である。すなわち、炭材として平均粒径が0.5mm、2.0mm、4.0mmまたは6.0mmのPKS炭を使用した原料を、それぞれ、前記の簡易装入装置を通さずに鍋試験装置に装入した場合の試験結果を示したものである。基準となる既存炭材としては、無煙炭(平均粒径1.7mm)を用いた。
図8に示したように、PKS炭の平均粒径が0.9〜6.0mmの範囲内であれば、既存炭材である無煙炭を使用した場合よりも焼結生産率が向上することが判明した。既存炭材である無煙炭を使用した場合よりも焼結生産率が向上するのは、前記表2に示したように、PKS炭の比表面積が既存炭材に比べて格段に大きく、燃焼性が非常に高いことによるものと考えられる。
図8から、PKS炭の平均粒径が0.5mmのときは、炭材の燃焼速度が低下しており、炭材としてPKS炭を使用する場合、粗粒化されたものが必要であることがわかる。なお、PKS炭は、前記図2、図3に示した形状や、前記図5に示した粒度分布(粒径1.0mm以下の粒子の比率がほぼゼロであること)等から、十分に粗粒化された状態にあるといえる。
図9は、原料偏析装入時におけるPKS炭の平均粒径が焼結生産率に及ぼす影響を示す図である。実際の操業では、前述のように、原料偏析装入を行っているので、実際に即した操業条件を求めるべく、炭材として平均粒径が0.5mm、2.0mm、4.0mmまたは6.0mmのPKS炭を使用した原料を、それぞれ、前記図7に示した簡易装入装置を通し、粗粒側に分級されたものから順番に鍋試験装置に装入して焼結したものである。
図9に示したように、PKS炭の平均粒径が2.7〜6.0mmの範囲内にあれば、既存炭材である無煙炭を使用した場合よりも焼結生産率を向上させることができる。PKS炭の平均粒径が2.7mm未満のときは、下層部で焼結鉱成品歩留の低下が認められた。PKS炭が適正な分布状態になるようにするには、炭材として使用するPKS炭の平均粒径の下限を原料均一装入時におけるよりもかなり高めた粒度条件が必要となる。なお、ここで、「焼結鉱成品歩留」とは、粒径が5mm以上の焼結鉱の質量を、元の焼結ケーキの質量で除した値を意味し、下記(2)式により算出される。
焼結鉱成品歩留(質量%)={粒径が5mm以上の焼結鉱の質量(t)/
焼結ケーキの質量(t)}×100 ・・・・(2)
PKS炭の配合は、通常は、固体炭材の一部をPKS炭に置き換えることにより行うが、固体炭材の全部をPKS炭に置き換えてもよい。
前記第1発明においては、平均粒径を4mm±0.4mmに調整したPKS炭を配合する実施の形態を採ることが望ましい。これは、以下に述べる検討結果に基づくものである。
図10は、焼結鍋試験における原料層高さ方向のFree−C濃度分布を示す図である。なお、同図では、Free−C濃度および原料層高さのいずれも相対値で示している。なお、Free−C濃度は、焼結原料を塩酸で脱炭酸処理(石灰石などに由来する炭素を除去)した後、1400℃で燃焼させ、赤外吸収法で測定した。
この図は、炭材として平均粒径が0.5mm、2.0mm、4.0mmまたは6.0mmのPKS炭を使用した原料を、前記図7に示した簡易装入装置を通し、粗粒側に分級されたものから順番に鍋試験装置に装入(つまり、偏析装入)したときに、原料の一部を原料層の高さ別に採取し、Free−C濃度を測定して得られた図である。このような装入方法を採ったのは、実際のスリットバー装入装置では、粗粒の原料(擬似粒子)が焼結機パレットの下層に、細粒の原料が上層に堆積するように構成されているからである。なお、基準となる既存炭材使用時のFree−C濃度分布の測定には、無煙炭(平均粒径1.7mm)を用いた。
図10に示したように、炭材として無煙炭(平均粒径1.7mm)を使用した原料を挿入した場合は、原料層高さ方向にFree−C濃度がほぼ均一に分布している。
これに対し、PKS炭を炭材として用いた場合、その平均粒径が2.0mmまたは0.5mmのときは、Free−Cが上層部に偏在し、下層部はFree−C濃度が低くなっている。したがって焼結反応は十分に進行せず、下層部の焼結鉱成品歩留が低下すると考えられる。一方、PKS炭の平均粒径が6.0mmのときは、Free−Cが下層部に偏在している。この場合は、上層部の成品歩留が低下すると考えられる。
平均粒径が4.0mmのPKS炭を炭材として用いた場合、Free−C濃度の分布状態は無煙炭を用いた場合と大略同じ状態となった。すなわち、PKS炭の平均粒径を4.0mmと、既存炭材よりも粗粒にすることにより、既存炭材と同様のFree−C濃度分布を作り込むことができる。
上記の実施形態において、配合するPKS炭の平均粒径に4mm±0.4mmと幅をもたせたのは、実際の操業時における平均粒径調整上の便宜を図ったためである。
前記第1発明においては、配合するPKS炭が、真密度1.60〜1.71g/cm3で、かつ嵩密度0.50〜0.58g/cm3である実施の形態を採ることができる。
この実施形態は、第1発明において炭材として使用するPKS炭の基礎性状(そのうちの嵩密度および真密度)を規定したものである。PKS炭の形状やそれに起因する特性、さらには比表面積、平均粒径等が嵩密度および真密度に反映されていると考えられるので、この規定によりPKS炭の品質が保証されることになる。したがって、炭材としてPKS炭を使用することによる効果を確実に得ることができる望ましい実施形態であるといえる。
真密度の望ましい下限を1.60g/cm3としたのは、前記表2に示したPKS炭Aの真密度が1.60g/cm3であり、上限を1.71g/cm3としたのは、同表に示したPKS炭Bの真密度が1.71g/cm3だからである。一方、嵩密度の望ましい下限を0.50g/cm3としたのは、前記表2に示したPKS炭Bの嵩密度が0.50g/cm3であり、上限を0.58g/cm3としたのは、同表に示したPKS炭Aの真密度が0.58g/cm3だからである。
PKS炭AとPKS炭Bは、アブラ椰子核殻(PKS)を加熱処理して得られたPKS炭の中から基礎性状(特に、嵩密度および真密度)の違いの大きいものとして選び出しているので、嵩密度および真密度が上記望ましい範囲内にあるPKS炭はその品質が保証されたものとみることができる。
また、前記第1発明においては、配合するPKS炭が、篩粒径2.0〜2.8mmに含まれるPKS炭の1個当たりの平均質量が1.28〜1.72gであり、篩粒径2.8〜4.0mmに含まれるPKS炭の1個当たりの平均質量が3.60〜5.32gであり、篩粒径4.0〜6.7mmに含まれるPKS炭の1個当たりの平均質量が10.5〜15.7gである実施の形態を採ることができる。なお、ここで、例えば「篩粒径2.0〜2.8mm」とは、篩目の大きさが2mmの篩で篩い分けたときの篩上であって、2.8mmの篩で篩い分けたときの篩下をいう。
この実施形態も、第1発明において炭材として使用するPKS炭の基礎性状(そのうちの、特定の篩粒径範囲に含まれるPKS炭1個当たりの平均質量)を規定したものである。嵩密度および真密度の望ましい範囲を規定した上記の実施形態と同様に、PKS炭の性状が反映されていると考えられるので、この規定によりPKS炭の品質が保証されることになる。したがって、PKS炭を使用することによる効果を確実に得ることができる望ましい実施形態であるといえる。
前記特定の篩粒径範囲(篩粒径2.0〜2.8mm、2.8〜4.0mmまたは篩粒径4.0〜6.7mm)に含まれるPKS炭1個当たりの平均質量の望ましい下限を上記のようにそれぞれ1.28g、3.60g、10.5gと定めたのは、前記表3に示したPKS炭Aの当該篩粒径範囲に含まれるPKS炭1個当たりの平均質量がそれぞれ1.28g、3.60g、10.5gだからである。一方、前記特定の篩粒径範囲に含まれるPKS炭1個当たりの平均質量の望ましい上限を上記のようにそれぞれ1.72g、5.32g、15.7gと定めたのは、前記表3に示したPKS炭Bの当該篩粒径範囲に含まれるPKS炭1個当たりの平均質量がそれぞれ1.72g、5.32g、15.7gだからである。
PKS炭AとPKS炭Bは、アブラ椰子核殻(PKS)を加熱処理して得られたPKS炭の中から基礎性状(特に、特定の篩粒径範囲に含まれるPKS炭1個当たりの平均質量)の違いの大きいものとして選び出しているので、特定の篩粒径範囲に含まれるPKS炭1個当たりの平均質量が上記望ましい範囲内にあるPKS炭はその品質が保証されたものとみることができる。
次に、第2発明では、前述の前提(すなわち、造粒処理した焼結原料を焼結機のパレットに偏析装入し、原料層の高さ方向に炭素濃度差を生じさせて焼成するという前提)のもとに、前記粉鉄鉱石類、副原料、返鉱を配合した焼結原料に、固体炭材の一部として、半楕円形でかつ窪みのあるアブラ椰子核殻(PKS)を加熱処理して製造した固体炭化物であるPKS炭を配合する際に、平均粒径を、粉コークスまたは無煙炭の平均粒径よりも1.0mm〜4.3mm粗粒に調整したPKS炭を配合する。
この第2発明は、第1発明におけるPKS炭の平均粒径の規定(2.7mm〜6.0mm)を、既存炭材である粉コークスまたは無煙炭の平均粒径との差(1.0mm〜4.5mm)で表した発明である。すなわち、無煙炭の平均粒径(1.7mm)との差は1.0mm〜4.3mmであり、粉コークスの平均粒径(1.5mm)との差は1.2mm〜4.5mm)なので、基準とする固体炭材の平均粒径により、1.0mm〜4.5mmの範囲内で粗粒に調整したPKS炭を配合する焼結鉱の製造方法である。
図11は、原料偏析装入時におけるPKS炭と既存炭材との平均粒径差が焼結生産率に及ぼす影響を示す図である。図11に示したように、原料偏析装入時におけるPKS炭と既存炭材との平均粒径差が1.0〜4.3mmの範囲内のとき、既存炭材である無煙炭を使用した場合よりも焼結生産率が向上する。PKS炭と既存炭材との平均粒径差が1.0mm未満のときは、下層部で焼結鉱成品歩留が低下する。
PKS炭の配合は、固体炭材の一部をPKS炭に置き換えることにより行う。固体炭材の全部を置き換えの対象としないのは、既存炭材を使用していないので、第2発明の規定上、PKS炭と既存炭材との平均粒径差を求め得ないからである。したがって、固体炭材の全部を置き換える場合は、第1発明で規定する粒度条件を満たす操業を行うことになる。
前記第2発明においては、平均粒径を、粉コークスまたは無煙炭の平均粒径よりも1.9mm〜2.9mm粗粒に調整したPKS炭を配合することとする実施の形態を採ることが望ましい。
前記の図10に示したように、PKS炭の平均粒径が4.0mmのとき、Free−C濃度が無煙炭(平均粒径1.7mm)の場合と同様の分布状態になるが、このときのPKS炭と無煙炭の平均粒径差は2.3mmである。
すなわち、PKS炭は、既存炭材である粉コークスや無煙炭の平均粒径(1.7mm)よりも2.3mm程度粗粒にすることにより、既存炭材と同様のFree−C濃度分布を作り込むことができる。
前記第2発明においては、配合するPKS炭が、真密度1.60〜1.71g/cm3で、かつ嵩密度0.50〜0.58g/cm3である実施の形態を採ることができる。
また、前記第2発明においては、配合するPKS炭が、篩粒径2.0〜2.8mmに含まれるPKS炭の1個当たりの平均質量が1.28〜1.72gであり、篩粒径2.8〜4.0mmに含まれるPKS炭の1個当たりの平均質量が3.60〜5.32gであり、篩粒径4.0〜6.7mmに含まれるPKS炭の1個当たりの平均質量が10.5〜15.7gである実施の形態を採ることができる。
これらの実施形態は、第1発明における前述の実施形態と同様、第2発明において炭材として使用するPKS炭の基礎性状(そのうちの嵩密度および真密度、または特定の篩粒径範囲に含まれるPKS炭1個当たりの平均質量)を規定したものである。したがって、前述したように、炭材としてPKS炭を使用することによる効果を確実に得ることができる望ましい実施形態であるといえる。
以上述べた本発明の焼結鉱の製造方法によれば、PKS炭を焼結用固体炭材として利用することにより、炭酸ガス排出量を抑制するとともに、炭材の燃焼速度を向上させ、焼結生産性を向上させることができる。
本発明の焼結鉱の製造方法の効果を評価するため、焼結シミュレーター実験装置を用いて焼結鉱製造実験を実施した。焼結シミュレーター実験装置は、長さ0.8m、幅0.4mのパレットを3枚連結して焼結できるように構成されたDL型焼結機の模型装置で、パレット内に原料を偏析させた状態で装入し、焼成することができる。なお、本模型装置は、スリットバー式装入装置を具備しており、実機と同様の高さ方向の粒度偏析、固体炭材の濃度分布を作り込むことが可能である。すなわち、本装置は、実機と同様の操業条件での焼結鉱製造実験を行うことが可能であり、炭材粒径の影響を含んだ焼結生産率の評価ができる。
表4および表5に、それぞれ実験で使用した焼結原料の配合1および配合2を示す。配合1では、炭材のうち70%をPKS炭に置換し、配合2では、炭材のうち40%をPKS炭に置換した。また、配合1では、平均粒径4.9mmのPKS炭(本発明例1)、または平均粒径4.2mmのPKS炭(本発明例2)を使用し、配合2では、平均粒径3.4mmのPKS炭(本発明例3)、または平均粒径3.0mmのPKS炭(本発明例4)を使用した。
図12は、前記表4に示した配合1の焼結原料を使用した場合の焼結生産率を従来例と対比して示す図である。既存炭材を使用した従来例1では、焼結生産率が31.8s-t/d/m2であったが、本発明例1および本発明例2では、それぞれ焼結生産率が34.4s‐t/d/m2と32.6s‐t/d/m2であった。従来例を100%として相対焼結生産率で表すと、本発明例1および本発明例2では、それぞれ8%および3%向上することを確認した。
図13は、前記表5に示した配合2の焼結原料を使用した場合の焼結生産率を従来例と対比して示す図である。既存炭材を使用した従来例2では、焼結生産率が29.7s-t/d/m2であったが、本発明例3および本発明例4では、それぞれ焼結生産率が33.9s‐t/d/m2と32.0s‐t/d/m2であった。相対焼結生産率で表すと、本発明例3および本発明例4では、それぞれ14%および8%向上することを確認した。
以上の実験結果から、本発明の効果が確認できた。なお、本発明は、上記本発明例に限定されず、上述した発明の目的および技術思想に反しない限り、上記実験で採用した条件以外の条件においても効果が得られるものである。