JP6691508B2 - 固体燃料の製造方法及び固体燃料 - Google Patents

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本発明は、樹皮(バーク)を焙焼(torrefaction)することによって得られる固体燃料の製造方法に関する。
近年、化石燃料の枯渇化及びCO排出による地球温暖化への対策として、バイオマスを原料とする燃料の利用が検討されている。一般にバイオマスとは、エネルギー源又は工業原料として利用することのできる生物体をいい、代表的なものは木材、建築廃材、農産廃棄物等である。従来よりバイオマスを有効利用する方法が各種提案されている。その中でも、バイオマスを低コストで以って高付加価値物に転換できる有用な方法として、バイオマスを炭化して固体燃料を製造する方法がある。これは、バイオマスを炭化炉に投入して酸素欠乏雰囲気下で所定時間加熱して炭化処理し、固体燃料を製造するものである。
このようにして製造された固体燃料は、発電設備や焼却設備等の燃焼設備の燃料に用いられるが、この場合、燃焼効率を向上させるために固体燃料を細かく粉砕して微粉燃料として用いることがある。固体燃料は単独であるいは石炭と混合して粉砕されるが、バイオマスのうち木質系バイオマスは大部分が繊維質であるため、粉砕性が悪く、燃焼効率の低下、粉砕機の運転性低下等の問題があった。
特許文献1には、材廃材、間伐材、庭木、建築廃材等の木質系バイオマスを240℃以上300℃以下の温度で、15分以上90分以下の時間で熱分解した後に粉砕する方法が開示されている。加熱温度が240℃より低い温度であると破砕性、粉砕性が向上せず、300℃よりも高い温度であると破砕、粉砕時にサブミクロンオーダーの微粉量が増大して粉体トラブルを生じ易くなるため好ましくないとしている。
また、特許文献2には穀類、実、種子を含むバイオマスを酸素濃度1〜5%、処理温度350〜400℃で30〜90分加熱して炭化処理することで、石炭と同等の粉砕性を有する固体燃料を製造する方法が開示されている。
特開2006−26474号公報 特開2009−191085号公報
しかしながら、上記方法で製造された炭化物は、物質収率及び熱量収率が低く、石炭に比較すると粉砕性が不十分であり、石炭と混合して粉砕処理して微粉炭ボイラーの燃料として使用することが困難である。
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、樹皮(バーク)を原料として、酸素濃度10%以下で、かつ温度170〜350℃の条件下で焙焼(torrefaction)し、得られた焙焼物の水分を10〜50%に調整後、嵩密度0.5g/cm以上に高密度化することによって、石炭と同等の粉砕性を有する固体燃料が製造できること見出した。
本発明の製造方法にて得られる固形燃料は、物質収率、熱量収率が高く、さらに石炭と同等の粉砕性を有し、高密度であるため、石炭と混合して粉砕処理して微粉炭ボイラーの燃料として高い比率で混炭して使用することできる。
本発明において、原料として樹皮(バーク)を使用する。樹皮はあまり利用されることなく、廃棄されることが多いの現状である。本発明者らは樹皮を有効利用することを検討したところ、樹皮を原料として焙焼した場合、木部のチップと比較して良好な性質を有する固形燃料が得られることが判明した。樹皮は木部と比較するとヘミセルロースの含有量が少ないので、焙焼した後の物質収率が高くなる。樹皮は0.1〜100mmのサイズに粉砕されたものを使用することが好ましく、0.1〜50mmのサイズのものを使用することがさらに好ましい。樹種は広葉樹、針葉樹のいずれも使用できるが、杉の樹皮が好ましい。なお、樹皮の水分は10%以下とすることが好ましく、5%以下とすることがさらに好ましい。
本発明における焙焼(torrefaction)とは、低酸素雰囲気下で、所謂炭化処理よりも低い温度で加熱する処理のことである。通常の木材の炭化処理の温度は400〜700℃であるが、焙焼はより低い温度で行われる。焙焼を行うことによって、その出発原料よりも高いエネルギー密度を有する固体燃料が得られる。
本発明における焙焼の処理条件は、酸素濃度10%以下で、温度170〜350℃である。酸素濃度が10%を超えると物質収率、熱量収率が低下する。また、温度が170℃未満では後述する粉砕性が不十分であり、350℃を超えると物質収率、熱量収率が低下する。温度は170〜300℃が好ましく、さらに200〜260℃がさらに好ましい。ヘミセルロースは270℃付近で熱分解が顕著になるのに対して、セルロースは355℃付近、リグニンは365℃付近で熱分解が顕著になるので、焙焼の処理温度を170〜350℃とすることで、ヘミセルロースを優先的に熱分解して、物質収率と粉砕性を両立できる固体燃料を製造することが可能になると推察される。
本発明において、焙焼処理を行うための装置は特に限定されないが、ロータリーキルン、竪型炉が好ましい。なお、酸素濃度を10%以下に調整するため装置内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。処理時間は15〜180分が好ましい。
本発明で得られる固体燃料は原料の樹皮に対して物質収率で60〜90%、熱量収率で70〜95%である。また、粉砕性の指標であるJIS M 8801:2004に規定のハードグローブ粉砕性指数(HGI)は30以上が好ましく、40以上がさらに好ましい。HGIが高くなるほど、粉砕され易いことを示している。HGIが30〜70の範囲であれば、石炭と混合して粉砕処理することが可能となる。石炭のHGIは通常40〜70であるので、本発明で得られた固体燃料は石炭と同等の粉砕性を有している。
本発明における高密度化とは、焙焼された樹皮の粉砕物状の出発原料(焙焼物)をブリケットやペレット状に成型する処理のことを意味する。成型処理を行うことによって、嵩密度を大幅に高めることができる。高密度化する前の焙焼物の嵩密度は0.01g/cm〜0.3g/cmで、高密度化処理後の固体燃料の嵩密度は0.5g/cm〜1.0g/cmである。高密度化することにより、固体燃料として微粉炭ボイラーで燃焼させる際、石炭との混合比率を上昇させることができ、また、燃料の輸送コストを削減することができる。
高密度化処理後の固体燃料の嵩密度は、0.5g/cm以上とすることが必要で、好ましくは0.6g/cm以上にすることが好ましい。嵩密度が0.5g/cm未満であると固体燃料を燃料として微粉炭ボイラーで燃焼させる際、石炭との混合比率をあまり大きくすることが不可能なため、本発明の効果を最大限に得ることができない。
本発明における高密度化の処理条件は、水分が10〜50%とすることが必要である。水分が10%より少ないとブリケッターやペレタイザーの内部で閉塞が発生し、安定した成型物の製造ができない。水分が50%を超えると成型できず、粉体状またはペースト状で排出される。
本発明において、バインダーを0〜50重量部添加することが好ましい。バインダーは特に限定されていないが、有機高分子(リグニンなど)、無機高分子(アクリル酸アミドなど)、農業残渣(ふすま(小麦粉製造時に発生する残渣)など)等が望ましい。樹皮を効率よく有効利用することを目的としている観点から、バインダー添加部数は少ない方が望ましく、0〜50重量部、より好ましくは0〜20重量部が望ましい。ただし、50重量部以上添加しても高密度化が不可能であるというわけではない。
本発明において高密度化処理を行うための装置は特に限定されていないが、ブリケッター(北川鉄工所(株)製)、リングダイ式ペレタイザー(CPM(株)製)、フラットダイ式ペレタイザー(ダルトン(株)製)等が望ましい。
以下に実施例にて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
杉の樹皮をナイフ切削型バイオマス燃料用チッパー(緑産(株)製、Wood Hacker MEGA360DL)にて粉砕処理した。粉砕後、70mmのスクリーンを通過した樹皮を原料として、乾燥機で120℃、10分間乾燥処理を行った。続いて大型キルン型炭化炉を用い、窒素パージして、焙焼温度310℃、滞留時間30分で焙焼を行って生成物を得た。得られた生成物の水分を30%に調整し、フラットダイ式ペレタイザー(ダルトン(株)社製、ディスクペレッターF−5/11−175型)にてダイ穴直径5mm、ダイ厚さ20mmのフラットダイを用いて高密度化処理を行い、嵩密度0.65g/cmの固体燃料を得た。なお、嵩密度の測定方法は、JIS K 2151の6「かさ密度試験方法」に従った。
[実施例2]
実施例1と同様にして得た生成物の水分を20%に調整した以外は、実施例1と同様にして高密度化処理を行い、嵩密度0.60g/cmの固体燃料を得た。
[実施例3]
実施例1と同様にして得た生成物の水分を40%に調整した以外は、実施例1と同様にして高密度化処理を行い、嵩密度0.63g/cmの固体燃料を得た。
[比較例1]
焙焼温度120℃とした以外は、実施例1と同様にして生成物を得て、水分調整後、高密度化処理を行ったところ、ダイ穴で閉塞が発生し固体燃料が得られなかった。
[比較例2]
焙焼温度600℃とした以外は、実施例1と同様にして生成物を得て、水分調整後、高密度化処理を行ったところ、嵩密度0.35g/cmの固体燃料が少量得られ、大部分は粉状になって排出され、固形物にならなかった。
[実施例4]
焙焼温度260℃とした以外は、実施例1と同様にして生成物を得て、水分調整後、高密度化処理を行い、嵩密度0.68g/cmの固体燃料を得た。
[比較例3]
実施例1と同様にして得た生成物の水分を5%に調整した以外は、実施例1と同様にして高密度化処理を行ったところ、ダイ穴で閉塞が発生し固体燃料が得られなかった。
[比較例4]
実施例1と同様にして得た生成物の水分を70%に調整した以外は、実施例1と同様にして高密度化処理を行ったところ、液状のままであり固形化できなかった。
[実施例5]
実施例1と同様にして得た生成物にふすまを5重量部添加し、水分を30%に調整した以外は、実施例1と同様にして高密度化処理を行い、嵩密度0.60g/cmの固体燃料を得た。
[実施例6]
実施例1と同様にして得た生成物にふすまを40重量部添加し、水分を30%に調整し以外は、実施例1と同様にして高密度化処理を行い、嵩密度0.55g/cmの固体燃料を得た。
[実施例7]
実施例1と同様にして得られた生成物の水分を30%に調整し、リングダイ式ペレタイザー(CPM(株)製、ペレットミル1100型)にてダイ穴直径6mm、ダイ厚さ20mmのリングダイを用いて高密度化処理を行い、嵩密度0.58g/cmの固体燃料を得た。
[実施例8]
実施例1と同様にして得られた生成物の水分を30%に調整し、ブリケッター(北川鉄工所(株)製、フォーミルGMG−200RD型)にてスリーブ径49mm、スリーブ長150mmのスリーブを用いて高密度化処理を行い、嵩密度0.52g/cmの固体燃料を得た。
Figure 0006691508
表1に示されるように、酸素濃度10%以下で、かつ温度170〜350℃の条件下で焙焼し、水分を10〜50%に調整した実施例1〜8の固体燃料は高密度化処理によって嵩密度を0.5g/cm以上とすることが可能であった。これに対して、温度170℃未満で焙焼した比較例1は高密度化処理を行っても成型することができず、温度350℃を超えた温度で焙焼した比較例2は高密度化処理しても嵩密度を0.5g/cm以上とすることができなかった。また、水分が10〜50%の範囲外である比較例3、4は高密度化処理を行っても成型することはできなかった。

Claims (2)

  1. 石炭と混合して粉砕処理に供する固体燃料の製造方法であって、
    0.1〜100mmのサイズに粉砕された樹皮を酸素濃度10%以下かつ温度170〜350℃の条件下でロータリーキルンを用いて焙焼し、得られた焙焼物の水分を10〜50%に調整して得た生成物とバインダーと混合してから、嵩密度(JIS K 2151の6「かさ密度試験方法」に従って測定)が0.5g/cm以上に高密度化することを特徴とし、前記バインダーの量が、上記生成物100重量部に対して5〜50重量部である、上記方法。
  2. 前記バインダーが、農業残渣である、請求項1に記載の方法。
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