JP6164511B2 - 液滴吐出ヘッドの駆動方法、液滴吐出ヘッドおよび画像形成装置 - Google Patents

液滴吐出ヘッドの駆動方法、液滴吐出ヘッドおよび画像形成装置 Download PDF

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本発明は、液滴吐出ヘッドの駆動方法、この駆動方法を採用した液滴吐出ヘッド、及び、この液滴吐出ヘッドを採用した画像形成装置に関するものである。
一般に、プリンタ、ファックス、複写機、プロッタ、或いはこれらの内の複数の機能を複合した画像形成装置としては、例えばインクの液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを備え、媒体を搬送しながらインク滴を用紙に付着させて画像形成を行うインクジェット記録装置がある。ここでの媒体は「用紙」ともいうが材質を限定するものではなく、被記録媒体、記録媒体、転写材、記録紙なども同義で使用する。また、画像形成装置は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味する。そして、画像形成とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与する(単に液滴を吐出する)ことをも意味する。また、インクとは、所謂インクに限るものではなく、吐出されるときに液体となるものであれば特に限定されるものではなく、例えばDNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる液体の総称として用いる。
インクジェット記録装置における液滴吐出ヘッドは、インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する加圧液室(インク流路、加圧室、圧力室、吐出室、液室等とも称される)と、加圧液室内のインクを吐出するための圧力発生手段で構成されている。圧力発生手段としては、加圧液室の一壁面を構成する振動板上に圧電素子などの電気機械変換素子を配置したものが知られている。
電気機械変換素子は、一対の電極に挟まれた電気機械変換膜からなり、電気機械変換膜に応力が加えられると電荷が発生し、電圧を印加すると電気機械変換膜が伸張する性質を有している。液滴吐出ヘッドは、このような電気機械変換素子に駆動電圧を印加して、駆動電圧に応じた電気機械変換素子の変位を振動板を介して加圧液室内のインクに伝達する構成であり、加圧された加圧液室内のインクはノズルから吐出される。
このような電気機械変換素子に繰り返し駆動電圧を印加していると、駆動電圧に対する変位量(以下、変位特性という)が低下する、いわゆる電気機械変換素子の疲労現象が発生する。疲労現象は、駆動電圧を繰り返し印加すると、次第に、電荷が偏在してトラップされたり、分極方向が駆動電圧により形成される電界に沿って一部固定されたりすることにより発生する。変位特性が変化する電気機械変換素子が搭載されたインクジェット記録装置では、電気機械変換素子及び振動板の変位量が駆動時間の経過に伴って変動してしまい、吐出特性が安定しないという問題がある。
変位特性の低下を解決する方法として、分極方向の固定により形成された電気機械変換素子の内部電界を破壊するよう、駆動電圧と逆極性の電圧を印加する方法が知られている。例えば、特許文献1に記載されるように、電気機械変換素子に抗電界以上の電界強度を有する逆極性の電圧を印加することで、駆動電圧を繰り返して印加した際に電気機械変換素子に形成された内部電界を破壊して変位特性を回復させている。
しかしながら、駆動電圧とは逆極性の抗電界以上の電界を形成することで、電気機械変換素子の分極が反転する。このような反転を長期に繰り返すと、電気機械変換素子にかかる負担が大きくなって、変位特性が低下してしまう。
本出願人は、特願2012−048958号(以下、先願という)にて、電気機械変換素子の駆動時に、電気機械変換素子に対して電気機械変換膜の抗電界を越える電界強度を示す駆動波形を印加し、電気機械変換素子の非駆動時に、駆動波形に対して逆極性であって、かつ、抗電界未満の電界強度を示す逆極性波形を印加する電気機械変換素子の駆動方法を提案している。この駆動方法では、逆極性波形が、駆動波形の印加に伴い膜厚方向で偏在してトラップされた電気機械変換膜中の電荷を取り除くことにより変位特性を回復させている。また、逆極性波形は抗電界を超えていないため、電気機械変換膜の分極状態は反転を繰り返すことはない。このため、電気機械変換素子にかかる負担が小さくなり、変位特性の低下を抑制できる。
本発明者は、先願の電気機械変換素子の駆動方法をさらに検討し、逆極性波形の波形によって変位特性の回復効果に差があることを見出した。
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、電気機械変換素子の繰り返し駆動に伴う変位特性の低下を良好に抑制することのできる液滴吐出ヘッドの駆動方法、液滴吐出ヘッド、及び、インクジェット記録装置を提供することである。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、液滴を吐出するノズルと、該ノズルに連通する加圧液室と、該加圧液室の一壁面を構成する振動板上に設けられた電気機械変換素子とを備え、該電気機械変換素子に電圧を印加することで該振動板を介して加圧液室内の液体を加圧して該ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの駆動方法であって、駆動時に上記電気機械変換素子に対して抗電界を越える電界強度を示す駆動波形を印加し、非駆動時に該駆動波形に対して逆極性であって、抗電界未満の電界強度を示すパルス波形からなる逆極性波形を印加し、上記パルス波形は、パルス幅、立ち下がり時間及び立ち上がり時間が、上記加圧液室内の液体のメニスカス固有周期の半整数倍を基準とするものであることを特徴とするものである。
本発明においては、非駆動時に駆動波形に対して逆極性であって、抗電界未満の電界強度を示す逆極性波形を印加することで、先願と同様の理由で繰り返し駆動に伴う変位特性の低下を抑制できる。さらに、この逆極性波形を、メニスカス固有周期の半整数倍を基準とした波形とすることで、以下の理由により、変位特性の低下を良好に抑制することができる。
電気機械変換素子に駆動波形が入力されて液滴が吐出されると、電気機械変換素子は収縮し、加圧液室は減圧状態となり、一度メニスカスは後退する。加圧液室内には特定周期の圧力波が発生しており、その周期に従ってメニスカスは振動する。この特定周期は、固有周期という。
電気機械変換素子に印加する逆極性波形がメニスカス固有周期の半整数倍を基準としていない場合は、逆極性波形による振動と、メニスカス振動とが共振し、印加した逆極性波形による振動が打ち消されてしまう。すなわち、電気機械変換素子は、印加された逆極性波形に対して良好な応答を示せず、逆極性波形による変位特性の回復効果が得られ難い。一方、逆極性波形として、メニスカス固有周期の半整数倍を基準とした波形を印加すると、メニスカス振動との共振を抑えることができる。このため、印加した逆極性波形に電気機械変換素子が良好な応答を示すことができ、逆極性波形による変位特性の回復効果が得られる。よって、電気機械変換素子の繰り返し駆動に伴う変位特性の低下を良好に抑制することができる。
本発明によれば、電気機械変換素子の繰り返し駆動に伴う変位特性の低下を良好に抑制することができるという優れた効果がある。
本実施形態に係る液滴吐出ヘッドの基本構成を示す断面図。 電気機械変換素子の基本層構成を示す断面図。 電気機械変換素子の代表的なP−Eヒステリシスループ。 メニスカス固有振動Tcを導出するための振動評価の説明図。 電気機械変換素子に印加する駆動波形及び逆極性波形の説明図。 実施例、比較例の変位量の変動の評価結果をしめすグラフ。 逆極性波形の波形の差による振動板の変位を示すグラフであり、(a)はメニスカス固有振動を考慮しない場合、(b)はメニスカス固有周期の半整数倍を基準とする場合。 インクジェット記録装置に搭載した液滴吐出ヘッドの断面図。 本実施形態のインクジェット記録装置の斜視図。 本実施形態のインクジェット記録装置の斜視図。
以下、本発明の一実施形態に係る液滴吐出ヘッドついて説明する。
インクジェット記録装置において使用する液滴吐出ヘッドは、インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する加圧液室(インク流路、加圧室、圧力室、吐出室、液室等とも称される)と、加圧液室内のインクを吐出するための圧力発生手段で構成されている。圧力発生手段としては、圧電素子などの電気機械変換素子を用いて吐出室の壁面を形成する振動板を変形変位させることでインク滴を吐出させるピエゾ型のものが知られている。ピエゾ型のものにはd33方向の変形を利用した縦振動(プッシュモード)型、d31方向の変形を利用した横振動(ベンドモード)型、さらには剪断変形を利用したシェアモード型等がある。最近では、半導体プロセスやMEMSの進歩により、以下に示すように、Si基板に直接加圧液室及び電気機械変換素子を作り込んだ薄膜アクチュエータが用いられている。
図1は、本実施形態の液滴吐出ヘッドの基本構成を示す断面図である。この液滴吐出ヘッド1は、ノズル板10と、基板20と、振動板30と、電気機械変換素子40とを有している。ノズル板10には、インク滴を吐出するノズル11が形成されている。ノズル板10、加圧液室基板20、及び振動板30により、ノズル11に連通する加圧液室21(インク流路、加圧室、圧力室、吐出室、液室等とも称される)が形成されている。振動板30は、圧力液室21の一壁面を形成している。
電気機械変換素子40は、第1の電極41と、電気機械変換膜42と、第2の電極43とを有する。電気機械変換素子40は、電気信号を機械的変位に変換し、或いは機械的変位を電気信号に変換する素子である。電気機械変換素子40は、基板20の一方の面に成膜された振動板30の、加圧液室21に対応する位置に設けられている。また、電気機械変換素子40の第2の電極43の上に、図示しない保護層、層間絶縁層等を設けている。
液滴吐出ヘッド1は、電気機械変換素子40が駆動されることにより、ノズル11からインクの液滴を吐出するヘッドである。具体的には、液滴吐出ヘッド1は、第1の電極41または第2の電極43に電圧を印加することで電気機械変換膜42に応力を発生させて振動板30を振動させる。この振動板30の振動に伴ってノズル11から加圧液室21内のインクを液滴状に吐出する機能を有する。なお、加圧液室21内にインクを供給するインク供給手段、インクの流路、流体抵抗等についての図示及び説明は省略している。
図2は、上記電気機械変換素子40の一例である圧電素子の基本的層構成を示す断面図である。上述のように、電気機械変換素子40は、基板20と振動板30とを積層形成した上に、第1の電極41と、圧電体膜(電気機械変換膜)42と、第2の電極43を積層して形成される。電気機械変換素子40を、図1に示す形状に形成するためには、圧電体膜(電気機械変換膜)42と、第2の電極43を形成した後に、所望の形状に圧電体膜(電気機械変換膜)42と、第2の電極43の形状をエッチング技術により形成する。また、図示しない保護層、層間絶縁層は所望の部分にのみ形成すれば良く、所望の形状となるようエッチング技術により形成する。以下、各層に使用される材料およびその製造プロセスに関して、詳しく説明を加える。
基板20としては、シリコン単結晶基板を用いることが好ましく、通常100〜600μmの厚みを持つことが好ましい。面方位としては、(100)、(110)、(111)と3種あるが、半導体産業では一般的に(100)、(111)が広く使用されている。本実施形態においては、主に(100)の面方位を持つ単結晶基板を主に使用する。
また、図1に示すような圧力液室を作製していく場合、エッチングを利用してシリコン単結晶基板を加工していくが、この場合のエッチング方法としては、異方性エッチングを用いることが一般的である。異方性エッチングとは結晶構造の面方位に対してエッチング速度が異なる性質を利用したものである。
例えば、KOH等のアルカリ溶液に浸漬させた異方性エッチングでは、(100)面に比べて(111)面は約1/400程度のエッチング速度となる。従って、面方位(100)では約54°の傾斜を持つ構造体が作製できるのに対して、面方位(110)では深い溝をほることができるため、より剛性を保ちつつ、配列密度を高くすることができることが分かっている。本実施形態で(110)の面方位を持った単結晶基板を使用することも可能である。但し、この場合、マスク材であるSiOもエッチングされてしまうということが挙げられるため、この辺りも留意して利用している。
振動板30としては、図1に示すように電気機械変換素子40によって発生した力を受けて変形変位し、加圧液室内のインク滴を吐出させる。このような機能を有するため、振動板30は所定の強度を有したものであることが好ましい。材料としては、Si、SiO、SiをCVD法により作製したものが挙げられる。さらに、第1の電極41と、圧電体膜42の線膨張係数に近い材料を選択することが好ましい。
後述のように、圧電体膜42としては、一般的にPZTが使用される。そのため、振動板30として、圧電体膜42の線膨張係数8×10−6(1/K)に近い、5×10−6〜10×10−6の線膨張係数を有した材料が好ましく、さらには、7×10−6〜9×10−6の線膨張係数を有した材料がより好ましい。具体的な材料としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化オスミウム、酸化レニウム、酸化ロジウム、酸化パラジウム及びそれらの化合物等であり、これらをスパッタ法もしくは、Sol−Gel法を用いてスピンコータにて作製することができる。
振動板30の膜厚としては0.1〜10μmが好ましく、0.5〜3μmがさらに好ましい。この範囲より小さいと図1に示すような圧力室の加工が難しくなり、この範囲より大きいと振動板30が変形変位しにくくなり、インク滴の吐出が不安定になる。
第1、2の電極41,43としては、金属材料としては従来から高い耐熱性と低い反応性を有する白金が用いられている。しかし、鉛に対しては十分なバリア性を持つとはいえない場合もあり、イリジウムや白金−ロジウムなどの白金族元素や、これら合金膜も挙げられる。また、白金を使用する場合には下地(特にSiO)との密着性が悪いために、Ti、TiO、Ta、Ta、Ta等を先に密着層として積層することが好ましい。作製方法としては、スパッタ法や真空蒸着等の真空成膜が一般的である。膜厚としては、0.05〜1μmが好ましく、0.1〜0.5μmがさらに好ましい。
また、圧電体膜42の変位の経時的な疲労特性に対する懸念から、第1の電極41と圧電体膜42および圧電体膜42と第2の電極43との間にSrRuO、LaNiOなどの導電性酸化物を電極部として積層することが好ましい。
圧電体膜(電気機械変換膜)42としては、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を主に使用した。PZTとは、ジルコン酸鉛(PbTiO)とチタン酸鉛(PbTiO)の固溶体で、その比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成は、PbZrOとPbTiOの比率が53:47の割合で、化学式で示すとPb(Zr0.53、Ti0.47)O、一般にはPZT(53/47)と示されるPZT等を使用することができる。
圧電体膜(電気機械変換膜)42の他の材料系としては、一般式ABOで記述され、A=Pb、Ba、Sr B=Ti、Zr、Sn、Ni、Zn、Mg、Nbを主成分とする複合酸化物が該当する。その具体的な記述として(Pb1−x、Ba)(Zr、Ti)O、(Pb)(Zr、Ti、Nb1−x−y)O、これはAサイトのPbを一部Baで置換した場合及びBサイトのZr、Tiを一部Nbで置換した場合である。このような置換はPZTの変位特性の改善に向けた材料改質で行なわれる。PZT以外の酸化物としてはチタン酸バリウム、鉄酸ビスマス等が挙げられる。
圧電体膜(電気機械変換膜)42は、例えば、スパッタ法若しくはSol−Gel法を用いてスピンコータにて作製することができる。その場合は、パターニング化が必要となるので、フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。
PZTをSol−Gel法により作製した場合、出発材料に酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒としてメトキシエタノールに溶解させ均一溶液を得ことで、PZT前駆体溶液が作製できる。金属アルコキシド化合物は大気中の水分により容易に加水分解してしまうので、前駆体溶液に安定化剤としてアセチルアセトン、酢酸、ジエタノールアミンなどを適量添加しても良い。
振動板30の全面にPZT膜を得る場合、スピンコート等の溶液塗布法により塗膜を形成し、溶媒乾燥、熱分解、結晶化の各々の熱処理を施すことで得られる。塗膜から結晶化膜への変態には体積収縮が伴うので、クラックフリーな膜を得るには一度の工程で100nm以下の膜厚が得られるように前駆体濃度の調整が必要になる。
圧電体膜(電気機械変換膜)42の膜厚としては0.5〜5μmが好ましく、1〜2μmがより好ましい。この範囲より小さいと十分な変位を発生することができなくなり、この範囲より大きいと何層も積層させていくため、工程数が多くなりプロセス時間が長くなる。
以下、実施例1〜5に基づき説明する。
<実施例1>
Si基板20(シリコンウエハ)に振動板30として熱酸化膜(膜厚1μm)を形成し、密着層としてチタン膜(膜厚50nm)、第1の電極41として白金膜(膜厚250nm)及びSrRuO膜(膜厚50nm)を順次スパッタ成膜した。チタン膜については、熱酸化膜と白金膜の間の密着層としての役割を持つ。スパッタ成膜時の基板加熱温度については550℃にて成膜を実施した。
次に、電気機械変換膜42としてPb:Zr:Ti=110:53:47の組成比で調合した溶液を準備した。具体的な前駆体塗布液の合成については、出発材料に酢酸鉛三水和物、イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムを用いた。酢酸鉛の結晶水はメトキシエタノールに溶解後、脱水した。化学両論組成に対し鉛量を過剰にしてある。これは熱処理中のいわゆる鉛抜けによる結晶性低下を防ぐためである。
イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムをメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応、エステル化反応を進め、先記の酢酸鉛を溶解したメトキシエタノール溶液と混合することでPZT前駆体溶液を合成した。このPZT濃度は0.5モル/リットルにした。この液を用いて、スピンコートにより成膜し、成膜後、120℃乾燥→500℃熱分解を行った。
3層目の熱分解処理後に、結晶化熱処理(温度750℃)をRTA(急速熱処理)により実施した。このときPZTの膜厚は240nmであった。この工程を計8回(24層)実施し、約2μmのPZT膜厚を得た。
次に、第2の電極43としてSrRuO3膜(膜厚40nm)、白金膜(膜厚125nm)を順次スパッタ成膜した。スパッタ成膜時の基板温度は300℃とした。SrRuO3膜についてはRTA処理にて酸素雰囲気中で550℃/300sのポストアニール処理をした。その後、フォトレジストをスピンコート法で成膜し、通常のフォトリソグラフィー法でレジストパターンを形成した後、ICPエッチング装置を用いてパターンを作製した。
次に、加圧液室21を形成するために、Si基板20を所望の厚さt(例えば厚さ80μm)になるように、公知の技術で研磨した。研磨法以外にエッチング等を用いてもよい。次に、リソグラフィー法により、加圧液室21以外の隔壁部をレジストで被覆する。
その後、アルカリ溶液(KOH溶液、あるいはTMHA溶液)で異方性ウェットエッチングを行って加圧液室21を形成し、電気機械変換素子40を有する液滴吐出ヘッド1(図1参照)を作製した。図3に、作製した電気機械変換素子40の代表的なP−Eヒステリシスループを示す。電気機械変換素子40における電気機械変換膜42の抗電界は20kV/cm程度である。
次に、作製した液滴吐出ヘッド1の電気機械変換素子40について、変位量の変動評価を行った。電気機械変換素子40の変位量の変動評価は、電気機械変換素子40の駆動時に、電気機械変換素子40に対して電気機械変換膜42の抗電界を越える電界強度を示す駆動波形を印加し、電気機械変換素子40の非駆動時に、駆動波形に対して逆極性であって、抗電界未満の電界強度を示し、加圧室内21内のインクのメニスカス固有周期の半整数倍を基準とする波形からなる逆極性波形を印加することによりおこなった。
電気機械変換素子40にパルス状の駆動波形が入力して液滴が吐出されると、電気機械変換素子40は収縮し、加圧液室21は減圧状態となり、一度メニスカスは後退する。加圧液室21内には特定周期の圧力波が発生しており、その周期に従ってメニスカスは振動する。この特定周期は、固有周期(Tc)という。
図4は、インク滴吐出時の振動板30の変位(振動)を観察したグラフである。点線でしめす波形の電圧を印加すると、実線でしめす振動板30の変位が観測される。この振動板30の減衰周期(図4では、5μs以降)が液室の圧力に起因するメニスカス固有周期Tcである。メニスカス固有周期Tcは、図4に示されるような振動評価での共振周期、または、流体の伝播を電気回路に見立てて計算する等価回路法により、導出される。
本実施例の液滴吐出ヘッドの構成では、メニスカス共振Tc=3.7μsであった。
図5は、変位量の変動評価において電気機械変換素子に印加する電圧波形(駆動波形及び逆極性波形)の説明図である。図5に示す電圧波形では、最大値がV1[V]の駆動波形Fに対し、駆動波形Fの電圧とは逆極性の電圧−V2[V]の逆極性波形Rが印加されている。但し、V1[V]は電気機械変換膜42の抗電界を越える電界強度を示す電圧に設定し、−V2[V]は電気機械変換膜42の抗電界未満の電界強度を示す電圧に設定する。
実施例1では、抗電界を超える電界強度E1=150kV/cmを示す駆動波形FをT1=500ms印加した後、駆動波形Fに対して逆極性であって、かつ、抗電界未満の電界強度E2=−15kV/cmを示す逆極性波形RをT2=500ms印加するという駆動波形Fと逆極性波形Rの組み合わせを1シーケンスとした波形を印加した。このときの逆極性波形Rのパルス形状は、立ち下がり時間Tf=5.5μs、パルス幅Tw=1.7μs、立ち上がり時間Tr=5.5μsのパルス波形である。
<実施例2>
実施例1で作製した電気機械変換素子40を用いて変位量の変動評価を行った。実施例2では、抗電界を超える電界強度E1=150kV/cmを示す駆動波形FをT1=500ms印加した後、駆動波形Fに対して逆極性であって、かつ、抗電界未満の電界強度E2=−5kV/cmを示す逆極性波形RをT2=500ms印加するという駆動波形Fと逆極性波形Rの組み合わせを1シーケンスとした波形を印加した。このときの逆極性波形Rのパルス形状は、立ち下がり時間Tf=5.5μs、パルス幅Tw=1.7μs、立ち上がり時間Tr=5.5μsのパルス波形である。
<実施例3>
実施例1で作製した電気機械変換素子40を用いて変位量の変動評価を行った。実施例3では、抗電界を超える電界強度E1=150kV/cmを示す駆動波形FをT1=900ms印加した後、駆動波形Fに対して逆極性であって、かつ、抗電界未満の電界強度E2=−15kV/cmを示す逆極性波形RをT2=100ms印加するという駆動波形Fと逆極性波形Rの組み合わせを1シーケンスとした波形を印加した。このときの逆極性波形Rのパルス形状は、立ち下がり時間Tf=5.5μs、パルス幅Tw=1.7μs、立ち上がり時間Tr=5.5μsのパルス波形である。
<実施例4>
実施例1で作製した電気機械変換素子40を用いて変位量の変動評価を行った。実施例4では、抗電界を超える電界強度E1=150kV/cmを示す駆動波形FをT1=500ms印加した後、駆動波形Fに対して逆極性であって、かつ、抗電界未満の電界強度E2=−15kV/cmを示す逆極性波形RをT2=500ms印加するという駆動波形Fと逆極性波形Rの組み合わせを1シーケンスとした波形を印加した。このときの逆極性波形Rのパルス形状は、立ち下がり時間Tf=5.5μs、パルス幅Tw=5.5μs、立ち上がり時間Tr=5.5μsのパルス波形である。
<実施例5>
実施例1で作製した電気機械変換素子40を用いて変位量の変動評価を行った。実施例5では、抗電界を超える電界強度E1=150kV/cmを示す駆動波形FをT1=500ms印加した後、駆動波形Fに対して逆極性であって、かつ、抗電界未満の電界強度E2=−15kV/cmを示す逆極性波形RをT2=500ms印加するという駆動波形Fと逆極性波形Rの組み合わせを1シーケンスとした波形を印加した。このときの逆極性波形Rのパルス形状は、立ち下がり時間Tf=13μs、パルス幅Tw=1.7μs、立ち上がり時間Tr=13μsのパルス波形である。
<比較例1>
実施例1で作製した電気機械変換素子40を用いて変位量の変動評価を行った。比較例1では、抗電界を超える電界強度E1=150kV/cmを示す駆動波形Fを連続的に印加し、逆極性波形Rは印加しなかった。
<比較例2>
実施例1で作製した電気機械変換素子40を用いて変位量の変動評価を行った。比較例2では、抗電界を超える電界強度E1=150kV/cmを示す駆動波形FをT1=500ms印加した後、駆動波形Fに対して逆極性であって、かつ、抗電界未満の電界強度−15kV/cmを示す逆極性波形RをT2=500ms印加するという駆動波形Fと逆極性波形Rの組み合わせを1シーケンスとした波形を印加した。このときの逆極性波形Rのパルス形状は、立ち下がり時間Tf=1μs、パルス幅Tw=4μs、立ち上がり時間Tr=1μsのパルス波形である。
<検討>
実施例1〜5、比較例1及び2の結果について検討する。実施例1〜5、比較例1及び2において、変位量はレーザードップラ振動計を用いて計測した。電気機械変換素子40の最初の変位量の絶対値を100%としたときの1010回繰り返し駆動波形Fのパルスを印加した後の変位量の変化率で評価した。ここでは、逆極性波形Rのパルス数はカウントしておらず、駆動波形Fのパルス数のみをカウントした。図6に1010回駆動での変位量の変動の評価結果を、表1に1010回繰り返した後の変位量の変化率をまとめた。ここで正符号は100%より大きい状態、負符号は100%より小さい状態である。

Figure 0006164511
図6および表1に示すように、実施例1〜5についてはすべて変位量の変動幅が3%内程度に収まっており、逆極性波形Rにより変位量の変動(低下)が抑制されていることがわかる。駆動波形Fの印加に伴い、膜厚方向で偏在してトラップされた電気機械変換膜42中の電荷を逆極性波形が取り除いているためである。また、逆極性波形Rは抗電界を超えていないため、電気機械変換膜42の分極状態は長期駆動を実施しても反転を繰り返すことはない。そのため、電気機械変換素子40にかかる負担が小さく、安定した変位を得ることができるとともに、抗電界での分極反転に伴う電流増大といった問題も回避することができる。
逆極性波形Rは加圧室内21内のインクのメニスカス固有周期の半整数倍を基準にしているため、以下のような理由で変位量の変動幅が良好に抑制される。
図7は、(a)メニスカス固有周期を考慮しないで、単純に逆極性のパルス波形を印加した場合(比較例2)と、(b)メニスカス固有周期を考慮して固有周期の半整数倍を基準とするパルス波形を印加した場合(実施例)との振動板30の変位を示したグラフである。
図7(a)に示すように、逆極性波形Rがメニスカス固有周期Tcの半整数倍ではない場合は、加圧液室21内のメニスカス振動と共振し、振動板30の振動を励振して、印加した逆極性波形とは異なる変位で振動板30が変位してしまう。すなわち、電気機械変換素子40が振動しようとしても、メニスカス振動と共振して、電気機械変換素子40は印加された逆極性波形Rに対して良好に応答できない。このため、逆極性波形Rによる変位特性の回復効果が得られ難い。
一方、図7(b)に示すように、逆極性波形Rとして、メニスカス固有周期Tcの半整数倍となる波形を印加すると、加圧液室21内のメニスカスの共振による振動板30の強制振動を抑えることができる。このため、印加した逆極性波形Rに電気機械変換素子40が良好な応答を示すことができ、逆極性波形Rによる変位特性の回復効果が得られる。このため、電気機械変換素子40の繰り返し駆動に伴う変位特性の低下を良好に抑制することができる。
実施例1では、パルス幅Twはメニスカス固有共振の1/2倍としている。また、立ち上がり時間Tf、立下り時間Trは、メニスカス固有共振の3/2倍としている。立ち上がり時間Tf、立下り時間Trを、メニスカス固有周期Tcの1/2倍とした場合は、共振の周期以下のため共振が励起されてしまうため好ましくない。なお、パルス幅Twはメニスカス固有共振の1/2の幅でも電圧変動がないため、問題ない。
実施例2においては、逆極性波形Rの電界強度E2を抗電界に対してより低くしても効果の発現が達成できている。逆極性の電界強度の上限は抗電界未満であり、下限は抗電界の20%以上であることが好ましく、上限は抗電界の80%がより好ましい。
実施例3においては、逆極性波形Rの印加時間T2が短くなっても効果の発現が達成できている。逆極性波形Rの印加時間T2が短くても、駆動波形Fの印加時間分でトラップされた電荷の抜き出しができているためである。逆極性波形Rの印加時間T2は50mss以上が好ましく、より好ましくは100ms以上である。また、変位量の変動は駆動波形Fの印加に伴うトラップされた電荷の膜厚方向での偏在が進行することで生じる。従って、駆動波形Fと逆極性波形Rとの印加時間比率が重要であり、逆極性波形Rの印加時間T2は駆動波形Fの印加時間の0.1倍以上であることが好ましい。
実施例4、5においては、逆極性波形Rのパルス形状の変化させている。
実施例4においては、パルス幅Twをメニスカス固有共振の3/2倍としても効果の発現が達成できている。パルス幅Twは短くても効果があるが、逆極性波形Rにより駆動中にトラップされた電荷を抽出するため、1μs以上であることが好ましい。なお、パルス幅の長さは、電気機械変換素子の充放電特性も考慮して決められる。
実施例5に示すように、パルス波形の立ち下がり、立ち上がりが緩やかであっても効果が確認できており、十分な逆極性波形Rの印加時間があればよい。
パルス波形の立ち下がり時間Tf、立ち上がり時間Tr、パルス幅Twは逆極性波形の印加時間との兼ね合いがあるが、立ち上がり時間Tf、立下り時間Trは、メニスカス固有周期Tcの3/2倍以上の半整数値倍、パルス幅Twはメニスカス固有周期Tcの1/2倍以上であることがより好ましい。
比較例1、2では変位の変動幅が大きくなっている。比較例1においては逆極性波形を印加していないため、駆動中に蓄積される電荷の抜き取りができていないため、経時に電荷の偏在が進行しているためである。比較例2においては、駆動波形Fに対して逆極性であって、抗電界未満の電界強度を示し、メニスカス固有周期の半整数倍ではないパルス幅を有する逆極性波形を印加しているため、逆極性波形Rによる効果が良好に得られない。
次に、上記液滴吐出ヘッドを搭載する画像形成装置としてのインクジェット記録装置について説明する。インクジェット記録装置には、騒音が極めて小さくかつ高速印字が可能であり、更にはインクの自由度があり安価な普通紙を使用できるなど多くの利点がある。そのため、プリンタ、ファクシミリ、複写装置等の画像記録装置或いは画像形成装置として広く展開されている。
本実施形態のインクジェット記録装置には、図8に示すような、図1にしめす基本構成を有する液体吐出ヘッドを複数個配置した液滴吐出ヘッド107を用いる。この液滴吐出ヘッドは、上述のように、電気機械変換素子40を簡便な製造工程で形成し、その後の加圧液室形成のために、基板20の裏面からのエッチング除去を行い、ノズルを有するノズル板10を接合することで形成される。
9は、本実施形態のインクジェット記録装置の斜視図、図10は同記録装置の機構部の側面図である。
このインクジェット記録装置は、記録装置本体81の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ、キャリッジに搭載した本発明を実施したインクジェットヘッドからなる記録ヘッド、記録ヘッドへインクを供給するインクカートリッジ等で構成される印字機構部82等を収納し、装置本体81の下方部には前方側から多数枚の用紙83を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい。)84を抜き差し自在に装着することができ、また、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85を開倒することができ、給紙カセット84或いは手差しトレイ85から給送される用紙83を取り込み、印字機構部82によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ86に排紙する。
印字機構部82は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド91と従ガイドロッド92とでキャリッジ93を主走査方向に摺動自在に保持し、このキャリッジ93にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する本発明に係るインクジェットヘッドからなるヘッド94を複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。またキャリッジ93にはヘッド94に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ95を交換可能に装着している。
インクカートリッジ95は上方に大気と連通する大気口、下方にはインクジェットヘッドへインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力によりインクジェットヘッドへ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、記録ヘッドとしてここでは各色のヘッド94を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。
ここで、キャリッジ93は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド91に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド92に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ93を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ97で回転駆動される駆動プーリ98と従動プーリ99との間にタイミングベルト100を張装し、このタイミングベルト100をキャリッジ93に固定しており、主走査モータ97の正逆回転によりキャリッジ93が往復駆動される。
一方、給紙カセット84にセットした用紙83をヘッド94の下方側に搬送するために、給紙カセット84から用紙83を分離給装する給紙ローラ101及びフリクションパッド102と、用紙83を案内するガイド部材103と、給紙された用紙83を反転させて搬送する搬送ローラ104と、この搬送ローラ104の周面に押し付けられる搬送コロ105及び搬送ローラ104からの用紙83の送り出し角度を規定する先端コロ106とを設けている。搬送ローラ104は副走査モータ107によってギヤ列を介して回転駆動される。
そして、キャリッジ93の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ104から送り出された用紙83を記録ヘッド94の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材109を設けている。この印写受け部材109の用紙搬送方向下流側には、用紙83を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ111、拍車112を設け、さらに用紙83を排紙トレイ86に送り出す排紙ローラ113及び拍車114と、排紙経路を形成するガイド部材115,116とを配設している。
記録時には、キャリッジ93を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド94を駆動することにより、停止している用紙83にインクを吐出して1行分を記録し、用紙83を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙83の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙83を排紙する。
また、キャリッジ93の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、ヘッド94の吐出不良を回復するための回復装置117を配置している。回復装置117はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ93は印字待機中にはこの回復装置117側に移動されてキャッピング手段でヘッド94をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段でヘッド94の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
このように、このインクジェット記録装置においては、上記実施例1〜5の逆極性波形を有した波形で駆動させるインクジェットヘッドを搭載する。これにより、安定したインク滴吐出特性が得られて、画像品質が向上する。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次に態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
液滴を吐出するノズル11と、ノズルに連通する加圧液室21と、加圧液室の一壁面を構成する振動板30上に設けられた電気機械変換素子40とを備え、電気機械変換素子に電圧を印加することで振動板を介して加圧液室内の液体を加圧してノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの駆動方法である。駆動時に電気機械変換素子に対して抗電界を越える電圧を有する駆動波形Fを印加し、非駆動時に起動波形に対して逆極性であって、抗電界未満の電界強度を示し、且つ、加圧室内の液体のメニスカス固有周期Tcの半整数倍のパルス幅を有する逆極性波形Rを印加する。これよれば、上記実施形態について説明したように、電気機械変換素子の繰り返し駆動に伴う変位特性の低下を良好に抑制することができる。
(態様B)
(態様A)において、逆極性波形の電界強度は抗電界の20%以上である。これによれば、上記実施例1〜5について説明したように、電気機械変換素子の繰り返し駆動に伴う変位特性の低下を良好に抑制することができる。
(態様C)
(態様A)または(態様B)において、逆極性波形がパルス波形である。これによれば、上記実施例1〜5について説明したように、電気機械変換素子の繰り返し駆動に伴う変位特性の低下を良好に抑制することができる。
(態様D)
(態様A)、(態様B)または(態様C)において、逆極性波形の印加時間が50msec以上である。これによれば、上記実施例1〜5について説明したように、電気機械変換素子の繰り返し駆動に伴う変位特性の低下を良好に抑制することができる。
(態様E)
(態様C)または(態様D)において、逆極性波形の立ち下がり時間及び立ち上がり時間がメニスカス固有周期の3/2倍以上の半整数倍である。これによれば、上記実施例1〜5について説明したように、電気機械変換素子の繰り返し駆動に伴う変位特性の低下を良好に抑制することができる。
(態様F)
(態様C)または(態様D)において、逆極性波形のパルス幅がメニスカス固有周期の1/2倍以上の半整数倍である。これによれば、上記実施例1〜5について説明したように、電気機械変換素子の繰り返し駆動に伴う変位特性の低下を良好に抑制することができる。
(態様G)
(態様C)、(態様D)、(態様E)または(態様F)において、逆極性のパルス波形の印加回数が1000回以上である。これによれば、上記実施例1〜5について説明したように、電気機械変換素子の繰り返し駆動に伴う変位特性の低下を良好に抑制することができる。
(態様H)
(態様A)、(態様B)、(態様C)、(態様D)、(態様E)、(態様F)または(態様G)において、逆極性波形の印加時間が駆動波形の印加時間の0.1倍以上である。これによれば、上記実施例1〜5について説明したように、電気機械変換素子の繰り返し駆動に伴う変位特性の低下を良好に抑制することができる。
(態様H)
液滴を吐出するノズルと、ノズルに連通する加圧液室と、加圧液室の一壁面を構成する振動板上に設けられた電気機械変換素子とを備え、電気機械変換素子に電圧を印加することで振動板を介して加圧液室内の液体を加圧してノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドにおいて、(態様A)、(態様B)、(態様C)、(態様D)、(態様E)、(態様F)、(態様G)または(態様H)の何れかの液滴吐出ヘッドの駆動方法により上記液滴吐出ヘッドを駆動する駆動手段を備える。これによれば、上記実施形態について説明したように、電気機械変換素子の繰り返し駆動に伴う変位特性の低下を良好に抑制し、経時で安定した吐出性能が得られる。
(態様H)
媒体を搬送しながら、液滴吐出手段により吐出した液滴を該媒体に付着させて画像形成を行う画像形成装置において、上記前記液滴吐出手段として(態様H)の液滴体吐出ヘッドを採用する。これによれば、上記実施形態について説明したように、高品位な画像が得られる。
1 液滴吐出ヘッド
10 ノズル板
11 ノズル
20 基板
30 振動板
40 電気機械変換素子
41 第1の電極41
42 電気機械変換膜
43 第2の電極
特開2003−80698号公報

Claims (9)

  1. 液滴を吐出するノズルと、該ノズルに連通する加圧液室と、該加圧液室の一壁面を構成する振動板上に設けられた電気機械変換素子とを備え、該電気機械変換素子に電圧を印加することで該振動板を介して加圧液室内の液体を加圧して該ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの駆動方法であって、
    駆動時に上記電気機械変換素子に対して抗電界を越える電界強度を示す駆動波形を印加し、非駆動時に該駆動波形に対して逆極性であって、抗電界未満の電界強度を示すパルス波形からなる逆極性波形を印加し、
    上記パルス波形は、パルス幅、立ち下がり時間及び立ち上がり時間が、上記加圧液室内の液体のメニスカス固有周期の半整数倍を基準とするものであることを特徴とする液滴吐出ヘッドの駆動方法。
  2. 請求項1の液滴吐出ヘッドの駆動方法において、上記逆極性波形の電界強度は、上記抗電界の20%以上であることを特徴とする液滴吐出ヘッドの駆動方法。
  3. 請求項1または2に記載の液滴吐出ヘッドの駆動方法において、上記逆極性波形の印加時間が50msec以上であることを特徴とする液滴吐出ヘッドの駆動方法。
  4. 請求項1乃至3の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッドの駆動方法において、上記パルス波形の立ち下がり時間及び立ち上がり時間がメニスカス固有周期の3/2倍以上の半整数倍であることを特徴とする液滴吐出ヘッドの駆動方法。
  5. 請求項1乃至4の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッドの駆動方法において、上記逆極性波形のパルス幅がメニスカス固有周期の1/2倍以上の半整数倍であることを特徴とする液滴吐出ヘッドの駆動方法。
  6. 請求項1乃至5の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッドの駆動方法において、上記逆極性波形の印加回数が1000回以上であることを特徴とする液滴吐出ヘッドの駆動方法。
  7. 請求項1乃至6の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッドの駆動方法において、上記逆極性波形の印加時間が上記駆動波形の印加時間の0.1倍以上であることを特徴とする液滴吐出ヘッドの駆動方法。
  8. 液滴を吐出するノズルと、該ノズルに連通する加圧液室と、該加圧液室の一壁面を構成する振動板上に設けられた電気機械変換素子とを備え、該電気機械変換素子に電圧を印加することで該振動板を介して加圧液室内の液体を加圧して該ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドにおいて、
    請求項1乃至7の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッドの駆動方法により上記液滴吐出ヘッドを駆動する駆動手段を備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  9. 媒体を搬送しながら、液滴吐出手段により吐出した液滴を該媒体に付着させて画像形成を行う画像形成装置において、
    記液滴吐出手段として請求項8に記載の液滴体吐出ヘッドを採用したことを特徴とする画像形成装置。
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