JP2009071113A - 圧電素子の駆動方法 - Google Patents

圧電素子の駆動方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2009071113A
JP2009071113A JP2007239099A JP2007239099A JP2009071113A JP 2009071113 A JP2009071113 A JP 2009071113A JP 2007239099 A JP2007239099 A JP 2007239099A JP 2007239099 A JP2007239099 A JP 2007239099A JP 2009071113 A JP2009071113 A JP 2009071113A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
electric field
driving
piezoelectric
piezoelectric film
reverse electric
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Abandoned
Application number
JP2007239099A
Other languages
English (en)
Inventor
Yasukazu Nihei
靖和 二瓶
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Corp
Original Assignee
Fujifilm Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fujifilm Corp filed Critical Fujifilm Corp
Priority to JP2007239099A priority Critical patent/JP2009071113A/ja
Priority to US12/205,402 priority patent/US7675220B2/en
Priority to EP08015858A priority patent/EP2037510A3/en
Publication of JP2009071113A publication Critical patent/JP2009071113A/ja
Abandoned legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10NELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10N30/00Piezoelectric or electrostrictive devices
    • H10N30/80Constructional details
    • H10N30/802Drive or control circuitry or methods for piezoelectric or electrostrictive devices not otherwise provided for

Landscapes

  • General Electrical Machinery Utilizing Piezoelectricity, Electrostriction Or Magnetostriction (AREA)
  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

【課題】ペロブスカイト構造をもつPb(Ti,Zr,M)O系の圧電体膜を有する圧電素子において、圧電体膜のAサイトイオンの析出による圧電性能の低下を防止して、圧電素子の耐久性を向上させる。
【解決手段】基板と、基板上に形成された基板側電極と、この基板側電極上に形成された、一般式Pb(Ti,Zr,M)Oで表されるペロブスカイト型結晶構造をもつ圧電体膜と、この圧電体膜上に形成された表面側電極とを有する圧電素子の駆動方法であって、基板側電極と表面側電極との間に所定の駆動電圧を印加して圧電素子を駆動した先の駆動時間と、この先の駆動時間の次の駆動時間との間の駆動待機時間中に、定常的に、駆動電圧によって圧電体膜に形成される駆動電界に対する逆電界を圧電体膜に所定時間印加することを特徴とする圧電素子の駆動方法を提供する。
【選択図】図2

Description

本発明は、一般式Pb(Ti,Zr,M)Oで表されるペロブスカイト型結晶構造をもつ圧電体膜を備える圧電素子の駆動方法に関し、特に圧電素子の耐久性を向上させる圧電素子の駆動方法に関する。
近年、圧電体を用いたアクチュエータ、センサー、記憶素子などの各種のデバイスの研究および開発が盛んであり、スパッタ法等の気相成長法により成膜される圧電体膜が、高性能機能膜として注目されている。このような圧電体膜は、例えば、インクジェットヘッドやマイクロポンプなどの圧電アクチュエータの圧電素子に使用されている。
例えば、特許文献1には、圧電材料に電気パルスを印加してインクチャンバーの一部を変形させ、インクチャンバー内に圧力パルスを発生させ、この圧力パルスによりノズルからインク滴を吐出させるインクジェットヘッドおよびその駆動方法が記載されている。
特許文献1では、インク滴を吐出せしめる電気パルスの印加後に、前記電気パルスの逆極性の電圧となる追加電気パルスを印加せしめ、これにより、インクメニスカスを速やかに基準状態に戻し、インクジェットヘッドの応答周波数を高め、高速印字を可能とすることが記載されている。
また、特許文献2には、長期間使用して変位性能が低下した圧電素子の変位性能を回復するために、圧電素子に、駆動時に印加した電場方向と反対の方向に抗電界以上の電界を印加することを特徴とする圧電素子の再生方法が記載されている。この圧電素子の再生方法では、長時間の駆動により内部電界が形成された圧電素子、すなわち圧電膜に、駆動時に印加した電界と反対方向に、その圧電膜の抗電界以上の電界を印加することにより、内部電界を破壊して、圧電膜の変位性能を回復させることが記載されている。
特開平5−338150号公報 特開平6−342946号公報
ところで、圧電体膜(圧電体)は、高温、高湿になるほど、変位性能の低下、すなわち劣化が発生する。本発明者の研究の結果、ペロブスカイト構造を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等のPb(Ti,Zr,M)O系の圧電体膜を用いた圧電素子において、圧電素子を駆動するための駆動電界を一方向に印加し続けると、マイナス電極側に圧電体膜のAサイト元素の化合物、すなわちPb化合物が析出し、圧電体膜の圧電性能が低化することがわかった。
この圧電体膜の圧電性能の低化は、以下のようなプロセスで生じると考えられる。まず、圧電素子を駆動するために圧電体膜に印加された駆動電界により、圧電体膜のAサイトイオン、すなわちPbイオンが、マイナス電極側に引き寄せられる。次いで、引き寄せられたAサイトイオンが、高頻度に水分と反応し、酸化物などのAサイト元素の化合物となり析出すると推測される。このようにして、圧電体膜の変位性能が低下し、圧電体膜の劣化が進行する。
また、Pb(Ti,Zr,M)O系のペロブスカイト構造を有する圧電体膜において、柱状粒界構造を有することにより、高圧電定数を得ることができる点で好ましいが、本発明者の研究により、上記のAサイト元素の化合物であるPb化合物の析出による圧電体の劣化は、柱状粒界構造を有する圧電体で顕著に見られることもわかった。
このように、圧電体膜(圧電体)に印加される電界と、圧電体膜の周囲の水分により、Aサイトイオンが移動し、Aサイト元素の化合物の析出が生じると、圧電体膜の組成が不可逆的に変化して変位性能(圧電定数)が低下する。この圧電体膜の変位性能の低下は、圧電体膜の不可逆的な変化に起因するため、低下した変位性能を回復することは不可能である。したがって、Aサイトイオンの移動、析出による圧電体膜の劣化を防止することは、圧電体膜の耐久性を向上させる上で重要な課題である。
ここで、特許文献1のように、インクメニスカスを速やかに基準状態に戻すために、逆極性の電圧となる逆電圧を印加する駆動方法では、インク吐出毎に行う必要があり、吐出する液体の固有振動周期の一周期以内に逆電圧を印加する必要があり、駆動のシーケンスも複雑となる。また、この逆電圧の大きさや、印加タイミングは、吐出する液体の特性や、インクジェットヘッドの構成等に依存する体積速度の固有振動周期に応じて設定されるものであり、圧電体膜の劣化の防止を目的として設定されるものではない。また、特許文献1には、上記の圧電体の劣化についての検討はなされていない。
また、特許文献2では、駆動電界とは逆方向の電界であり、その強度が抗電界以上の逆電界を印加しているため、圧電体膜の内部分極の反転が起こり、これにより圧電体膜の圧電性能が低下してしまう問題がある。さらに、この内部分極の反転により低下した圧電性能を再生するために、再度、分極を反転する工程を行う必要があるという問題がある。
本発明の目的は、上記課題を解決し、ペロブスカイト構造をもつPb(Ti,Zr,M)O系の圧電体膜を有する圧電素子において、圧電体膜のAサイトイオンの析出による圧電性能の低下を防止して、圧電素子の耐久性を向上させることができる圧電素子の駆動方法を提供することにある。
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するために、本発明は、基板と、この基板上に形成された基板側電極と、この基板側電極上に形成された、一般式Pb(Ti,Zr,M)Oで表されるペロブスカイト型結晶構造をもつ圧電体膜と、この圧電体膜上に形成された表面側電極とを有する圧電素子の駆動方法であって、前記表面側電極と前記基板側電極との間に所定の駆動電圧を印加して前記圧電素子を駆動した先の駆動時間と、この先の駆動時間の次の駆動時間との間の駆動待機時間中に、定常的に、前記圧電素子を駆動している間に印加される前記駆動電圧によって前記圧電体膜に形成される駆動電界に対する逆電界を前記圧電体膜に所定時間印加することを特徴とする圧電素子の駆動方法を提供するものである。
本発明において、前記駆動電界は、その方向が、前記圧電体膜のAサイトイオンが前記表面側電極に引き寄せられる方向であることが好ましい。
また、前記逆電界の強度は、前記圧電体膜の抗電界以下であることが好ましく、前記逆電界の強度は、前記圧電体膜の抗電界の10%以上であることが好ましい。
また、前記逆電界は、前記駆動電圧の逆電圧である逆電界印加電圧を前記基板側電極と前記表面側電極との間に印加することにより形成され、前記逆電界印加電圧は、前記圧電体膜の抗電界を形成するDC電圧以下であることが好ましく、前記逆電界印加電圧は、前記圧電体膜の抗電界の10%の強度の電界を形成するDC電圧以上であることが好ましい。
また、前記先の駆動時間は、前記圧電素子を前記駆動電圧で連続サイクル駆動したときの駆動開始から前記Aサイトイオンが前記駆動電界によって引き寄せられた電極側に存在する水分との反応によって生成したA元素化合物が析出するまでの劣化サイクル数に基づいて設定される、この劣化サイクル数より短い、前記逆電界の印加を開始する時点の逆電界印加開始サイクル数に対応する時間であり、前記圧電体膜に前記逆電界を印加する前記所定時間は、前記逆電界印加開始サイクル数に応じて設定される逆電界印加時間であることが好ましい。
あるいは、前記先の駆動時間は、前記圧電素子を前記駆動電圧で連続サイクル駆動したときの駆動開始から前記圧電体膜の変位量の低下が始まるまでの劣化サイクル数に基づいて設定される、この劣化サイクル数より短い、前記逆電界の印加を開始する時点の逆電界印加開始サイクル数に対応する時間であり、前記圧電体膜に前記逆電界を印加する前記所定時間は、前記逆電界印加開始サイクル数に応じて設定される逆電界印加時間であることが好ましい。
ここで、前記劣化サイクル数をCd、前記劣化サイクル数に対応する劣化時間をTd、前記駆動電圧をVd、前記逆電界を形成するために前記基板側電極と前記表面側電極との間に印加される、前記駆動電圧の逆電圧である逆電界印加電圧をVr、前記逆電界印加開始サイクル数をCrとするとき、前記逆電界印加時間Trは、下記式で定まる最低逆電界印加時間Trm以上の時間であることが好ましい。
Trm=Cr×(Vd/Vr)×(Td/Cd)
また、前記圧電体膜は、PZT(PbZrTiO)であり、前記Aサイトイオンは、Pbイオンであることが好ましい。
また、前記圧電体膜は、柱状粒界結晶構造を有する薄膜であることが好ましい。
本発明によれば、圧電体膜に駆動電界を所定時間だけ印加した後の駆動待機時間中に、逆電界を所定時間だけ印加することにより、駆動電界により電極側に引き寄せられた圧電体膜のAサイトイオンを引き戻すことができ、低下した圧電体膜の圧電性能を回復させることができる。これにより、再び圧電素子の通常駆動を行う際に、圧電素子の圧電性能を回復させた状態で駆動することができ、圧電素子の耐久性を向上させることができる。
以下に、本発明に係る圧電素子の駆動方法、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る圧電素子の駆動方法を適用する、ダイアフラム型圧電アクチュエータ(以下、圧電アクチュエータという)を利用したインクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)の1つの吐出部を模式的に示す断面図である。
インクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)10の1つの吐出部は、インクが貯留されるインク室(液体貯留室)22及びインク室22から外部にインクが吐出されるインク吐出口(液体吐出口)24を基板に形成したインクノズル(液体貯留吐出部材)20上に、振動板26を介して、下部電極(基板側電極)14と圧電体膜16と上部電極(表面側電極)18とを順次備えた圧電素子12が形成されたものである。
インクジェット記録ヘッド10は、複数の吐出部を有するものであり、各吐出部において、下部電極14およびインクノズル20を共有している。
また、駆動部28は、下部電極14と上部電極18とにそれぞれ接続される。駆動部28は、下部電極14と上部電極18との間に電圧を印加して、圧電素子12を駆動するものである。
また、制御部30は、駆動部28に接続している。制御部30は、駆動部28に駆動信号を送信し、駆動部28の動作を制御するものである。
ここで、本実施形態では、上部電極18を駆動電極とし、通常駆動時、すなわち、インク吐出時において、上部電極18がマイナス電極(低電位側の電極)、下部電極14がプラス電極(高電位側の電極)となるように、上部電極18に駆動電圧を印加して、圧電素子12の駆動を行う。
インクジェット式記録ヘッド10では、圧電体膜16に対して、下部電極14と上部電極18とにより厚み方向に電界が印加される。本実施形態では、インク吐出時である通常駆動時に、下部電極14から上部電極18の方向の電界が印加される。
そして、圧電体膜16に印加する電界強度を増減させて圧電体膜16を伸縮させ、これによってインク室22の体積を変化させ、インク室22からのインクの吐出や吐出量の制御が行われる。
本実施形態のインクジェット式記録ヘッド10では、基板の裏面側をドライエッチング若しくはウェットエッチングしてオープンループ構造のインク室22を形成し、基板自体の加工によりインクノズル20と振動板26とを形成してから、基板の表面側に圧電素子12を形成して、製造されたものである。
なお、本実施形態では、インクノズル20と振動板26とは別部材としたが、別途、振動板26を設けることなく、基板にインク室22を形成することにより、圧電体膜16に対応する位置に形成された薄肉部を振動板26としてインクノズル20を構成し、インクノズル20と振動板26と一体としてもよい。
本実施形態では、上記の製造工程に限定されず、基板の表面側に圧電素子12を形成してから、基板の裏面側を加工してインクノズル20と振動板26とを形成してもよい。
インクノズル20の材料となる基板としては、特に制限なく、シリコン、ガラス、ステンレス(SUS)、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)、アルミナ、サファイヤ、及びシリコンカーバイド等の基板が挙げられる。また、基板として、シリコン基板上にSiO膜とSi活性層とが順次積層されたSOI基板等の積層基板を用いてもよい。
下部電極14の主成分としては、特に制限はなく、Au、Pt、Ir、IrO、RuO、LaNiO、及びSrRuO等の金属又は金属酸化物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
上部電極18の主成分としては、特に制限はなく、下部電極14として使用可能な上記の金属又は金属酸化物に加え、Al、Ta、Cr、Cu等の一般的に半導体プロセスにより成形可能な電極材料、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
下部電極14と上部電極18の厚みは特に制限はなく、50〜500nmであることが好ましい。
本実施形態において、圧電体膜16は、スパッタ法等の気相成長方法により形成された圧電体の膜である。圧電体膜16の膜厚は特に制限なく、10nm〜100μmが好ましく、100nm〜20μmがより好ましい。
圧電体膜16は、1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物により構成されている(不可避不純物を含んでもよい)。圧電体膜16は、下記一般式(P)で表される1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物からなることが好ましい。
一般式Pb(Ti,Zr,M)O・・・(P)
上記式において、PbはAサイト元素であり、Ti,Zr,MはBサイト元素である。また、Mは、Sn,Nb,Ta,Mo,W,Ir,Os,Pd,Pt,Re,Mn,Co,Ni,V,及びFeからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素であり、0<x<1、0<y<1、0≦z<1、x+y+z=1である。
また、Aサイト元素であるPbと酸素とのモル比、及びBサイト元素と酸素とのモル比は基本的に1:3であるが、ペロブスカイト構造を取り得る範囲内では1:3からずれてもよい。
また、複数の元素からなるBサイト元素については、酸素のモル数を3とした時の、それぞれのBサイト元素のモル数の合計であるx+y+zは、1が標準であるが、ペロブスカイト構造を取り得る範囲内では1からずれてもよい。
上記一般式(P)で表されるペロブスカイト型酸化物としては、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ジルコニウム酸鉛、ニッケルニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛、等の鉛含有化合物、及びこれらの混晶系が挙げられる。
なお、圧電体膜16は、柱状粒界構造を有するペロブスカイト結晶の圧電体の薄膜を成膜するための条件で成膜されることが好ましい。この柱状粒界構造を有するペロブスカイト結晶の圧電体膜は、高い配向性を備えることにより、高い圧電定数を有することが好ましい。
以下、本発明に係る圧電素子の駆動方法について、添付の図面、図2〜6を参照して説明する。
図2には、本発明の圧電素子の駆動方法を示すグラフである。図2の横軸は時間を示し、縦軸は、駆動電極である上部電極18に印加される電圧を示す。
ここで、圧電体膜16の劣化は、上述のように、圧電体膜16に電界を印加することにより、圧電体膜16のAサイトイオンがマイナス電極側に引き寄せられ、引き寄せられたAサイトイオンが、マイナス電極側において高頻度に水分と接触して、Aサイト元素の化合物(酸化物等)が析出し、圧電体膜の組成が不可逆的に変化することにより生じると考えられている。圧電体膜16に上述の不可逆的な劣化が生じ、その圧電性能が低下した場合、低下した圧電性能を回復させることはできない。
特に、Aサイトイオンが上部電極18側に引き寄せられることにより、より高頻度に水分と接触し、よりAサイト元素の化合物が析出しやすいという問題もある。
本発明は、圧電体膜のAサイトイオンの移動により圧電体膜16の圧電性能が低下すること、さらに、Aサイトイオンの析出により圧電体膜16が不可逆的に劣化して、その圧電性能が不可逆的に低下することを見出し、このような圧電性能の低下を防止して圧電体膜の耐久性を向上させる圧電素子の駆動方法を提供することを目的としてなされたものである。
具体的には、本発明は、圧電体膜16に通常駆動時の駆動電界を所定時間(図2に示す、駆動電界印加時間Ts)だけ印加した後、圧電体膜16の通常駆動が停止している駆動待機時間中に、圧電体膜16に駆動電界とは逆方向の電界(以下、逆電界という)を所定時間(図2に示す、逆電界印加時間Tr)だけ印加し、再び圧電体膜16を通常駆動するというものである。
これにより、駆動電界により圧電体膜16のAサイトイオンがマイナス電極側(本実施形態では、上部電極18側)に移動され、マイナス電極付近でAサイト元素の化合物が析出して、圧電体膜の圧電性能の低下を防止することができ、圧電体膜が、良好な圧電性能を示す状態で、圧電素子の駆動を行うことができる。
以下、本発明の圧電素子の駆動方法を行うにあたり、予め、通常駆動時の駆動電界を印加する時間である「駆動電界印加時間Ts」、および逆電界を印加する時間である「逆電界印加時間Tr」を設定する。以下、その設定方法の一例について、図5を参照して説明する。
まず、温度が40℃、湿度が80%の高湿雰囲気中で、圧電素子12の駆動電極である上部電極18に、1サイクルにおいて電圧の絶対値の最大値がVd(V)(以下、駆動電圧Vdという)、1サイクルの周期がN’(sec)の電圧を連続的に印加して、圧電素子12をサイクル駆動する。このように、圧電素子12を連続的にサイクル駆動して、圧電体膜16の劣化が生じるサイクル数を把握する(図5中のS1)。
ここで、圧電体膜16の劣化とは、サイクル駆動時に圧電体膜16に印加される駆動電界により、Aサイトイオンがマイナス電極となる上部電極18側に引き寄せられ、引き寄せられたAサイトイオンが化合物として析出することにより生じる、不可逆的な劣化である。この不可逆的な劣化が生じ、圧電体膜16の変位が低下し始めるサイクル数を、圧電体膜16の劣化が生じるサイクル数とし、以下、劣化サイクル数Cdという。
次に、駆動サイクル数Cと、圧電体膜16の劣化が生じる時間である劣化時間Tdとの関係から、駆動サイクル数Cと逆電界印加時間Tとの関係を把握する(図5中のS2)。
具体的には、(サイクル周期N')×(劣化サイクル数B)を計算して、劣化サイクル数Bだけサイクル駆動した駆動時間であり、圧電体膜16の劣化が生じる時間である劣化時間Cを算出する。この劣化サイクル数Cdと劣化時間Tdとを、横軸がサイクル数C、縦軸が駆動電界印加時間T’のグラフ上にプロットして、図3に示すような、下記(1)式の直線グラフを策定する。
T’=C×N’・・・(1)
この駆動電界印加時間T’は、駆動電圧Vdでサイクル駆動した場合において、あるサイクル数Cにおける、駆動電界を印加した時間であるので、圧電体膜16のAサイトイオンの移動の程度、すなわち、Aサイトイオンの移動に起因する圧電定数の低下といった圧電体膜16の劣化の目安になると考えることができる。
ここで、あるサイクル数C(このサイクル数に対応する駆動電界印加時間T’)だけサイクル駆動した後に、印加電圧の大きさをVdとして逆電界を印加した場合において、マイナス電極側に移動したAサイトイオンを引き戻すのに必要な最短の逆電界印加時間Tは、駆動電界を印加した時間T’と同等と考えることができる。本実施形態では、印加電圧をVdとして逆電界を印加した場合における、サイクル数Aと最短の逆電界印加時間Tとの関係を、下記の(2)式として、図4に破線で示す。
T=C×N’・・・(2)
ここで、本発明において、逆電界印加時の電極間の電圧(逆電界印加電圧)の大きさは、Vdに限定されない。実際に印加する逆電界印加電圧の大きさに応じて、最短の逆電界印加時間も変化するため、上記(2)式の補正を行う必要があるが、その点については後に詳述する。
次に、逆電界印加電圧Vrを確定する(図5中のS3)。本実施形態では、逆電界印加電圧Vrは、圧電体膜16に印加される逆電界の強度の上限が、圧電体膜16の抗電界となり、下限が、抗電界の10%となる電圧である。換言すると、逆電界の強度の上限は、抗電界の強度であり、下限は、抗電界の10%となる強度である。
ここで、抗電界とは、圧電体膜の分極を反転させる強度の電界である。逆電界が抗電界よりも大きくなるような、逆電界印加電圧Vrを印加すると、圧電体膜16の分極を反転させてしまうおそれがある。分極の反転が生じると、駆動電界と同じ方向に、抗電界以上の電界を圧電体膜16に印加して、反転した分極を再度反転させて分極を元に戻す必要がある。
また、本発明の駆動方法において、逆電界を印加するのは、駆動電界によって上部電極18側に引き寄せられたAサイトイオンを、下部電極14側に向かって移動させて引き戻すことが目的であり、逆電界が抗電界以下であっても、Aサイトイオンを移動させることができる。
以上から、抗電界以下の逆電界を印加することにより、圧電体膜に分極の反転が生じることなく、マイナス電極側に引き寄せられたAサイトイオンを引き戻し、圧電性能の低下を防止することができる。
また、圧電体膜16に印加する電界の強度はなるべく小さい方が好ましい。圧電薄膜の場合は、膜欠陥当が存在すると、欠陥部分の耐電圧が弱く、その欠陥部分をきっかけとして電化集中による破壊が生じてしまう。特に、薄膜の場合は、この欠陥に起因する破壊の発生確率が高くなる。印加電圧を小さくして、印加する電解の強度を小さくすることにより、上記の破壊の発生を抑制することができる。
しかしながら、逆電界の強度としては、Aサイトイオンを移動させることができる強度が必要である。
上述のように、本発明では、抗電界の10%以上の逆電界を印加することにより、駆動電界によりマイナス電極側に引き寄せられたAサイトイオンを引き戻し、圧電性能の低下を防止することができる。
なお、圧電体膜16の抗電界の強度は、圧電体膜16と同一の成膜条件で形成した圧電体膜を用いて、予め、実験等で測定しておけばよい。
次に、駆動サイクル数Cと逆電化印加時間Tとの関係を補正する(図5中のS4)。
上述のように、本発明において、逆電界印加時の基板間電圧(逆電界印加電圧)の大きさはVdに限定されず、実際に印加する逆電界印加電圧Vrおよび駆動電圧Vdの大きさに応じて、上記(2)式の補正を行う必要がある。
逆電界印加電圧の大きさに応じて、圧電体膜16に印加される逆電界の強度は変化する。逆電界の強度が変化すると、Aサイトイオンの移動にかかる時間も変化し、圧電体膜のAサイトイオンを引き戻すのに必要な最短の逆電界印加時間も変化する。
例えば、逆電界の強度が大きい場合の方が、小さい場合よりも、Aサイトイオンの移動が短時間で起こる傾向がある。
したがって、実際に印加される逆電界の大きさに応じて、図4の破線で示す、上記(2)で表される逆電界印加時間Tとサイクル数Cとの関係を補正する必要がある。
ここで、駆動電圧をVd、比例定数をNとして、逆電界印加電圧がVrの場合における、駆動電界を印加したサイクル数Cと、圧電体膜のAサイトイオンを引き戻すのに必要な最短の逆電界印加時間Tとの関係は、下記(3)式であり、図4に実線で示す。
T=C×N=C×(Vd/Vr)×N’・・・(3)
本実施形態では、逆電界印加時間Tは、駆動電圧Vdと逆電界印加電圧Vrとの比である(Vd/Vr)に比例するとして概算する。この補正を行った関係式(3)を利用して、実際に圧電体膜に逆電界を印加する時間である逆電界印加時間Trを確定する。
次に、逆電界駆動の導入時期の確定、すなわち、駆動電界の印加を停止して、逆電界の印加に切換えるタイミングを確定する(図5中のS5)。本実施形態では、駆動電界のサイクル数Cが劣化サイクル数Cdとなる前に、駆動電界の印加を停止して、逆電界を印加する。この駆動電界の印加を停止するサイクル数であり、逆電界の印加を開始するサイクル数を、逆電界印加開始サイクル数Crとする。この逆電界印加開始サイクル数Crにおける駆動電界印加時間Tsは、上記(1)式から、Ts=Cr×N’であり、図3に示すように、劣化時間Cよりも短い時間である。
逆電界印加開始サイクル数Crを劣化サイクル数Cd未満とすることにより、すなわち、駆動印加時間Tsを劣化時間Td未満とすることにより、Aサイト元素の化合物の析出による圧電体膜16の不可逆的な劣化が生じる前に、駆動電界の印加を停止することができる。
また、Aサイト元素の化合物が析出する前に、逆電界を印加することにより、駆動電界の印加によって低下した圧電体膜16の圧電性能を好適に再生することができ、圧電体膜16の耐久性を向上することができる。
次に、逆電界印加時間Trを確定する(図5中のS6)。逆電界印加時間Trは、後述する、最低逆電界印加時間Trmよりも長い時間である。
ここで、最低逆電界印加時間Trmは、駆動電界印加時間Tsだけ圧電体膜16に駆動電界を印加した後に、駆動電界により上部電極18側に移動したAサイトイオンを引き戻し、圧電体膜16の圧電性能を回復させるために必要な逆電界印加時間の下限値であり、上記(3)式を利用して概算することができる。
具体的には、駆動電界印加時間がTsのときの、駆動電界の印加サイクル数Aが、逆電界印加開始サイクル数Crとなるので、最低逆電界印加時間Trm=Cr×N=Cr×(Vd/Vr)×N’である。
ここで、上記(1)式から、N’=Td/Cdであるので、最低逆電界印加時間Trmは下記(4)式で表すことができる。
Trm=Cr×(Vd/Vr)×(Td/Cd)・・・(4)
なお、上記(1)式から、Ts=Cr×N’であるので、最低逆電界印加時間Trmと、電界印加時間Tsとの間には、Trm=(Vd/Vr)×Tsの関係がある。
算出した最低逆電界印加時間Trmに応じて、逆電界印加時間Trを確定する。本発明では、逆電化印加時間Trは、最低逆電界印加時間Trm以上とすることにより、駆動電界の印加によりマイナス電極側に引き寄せられたAサイトイオンを引き戻して、圧電体膜16の圧電性能を回復するのに必要な時間、逆電界を印加することができる。
なお、逆電界印加時間Trの上限は、通常駆動時と同様に、逆電界によりマイナス電極側に移動されたAサイトイオンが、Aサイト元素の化合物として析出し、圧電体膜の劣化が生じることのないように設定すればよい。
上述のように、駆動電界の印加を停止する逆電界印加開始サイクル数Crおよび駆動電界印加時間Tsを確定し、また、逆電界印加開始サイクル数Crに対応する最低逆電界印加時間Trm以上の時間として逆電界印加時間Trを確定する。
以下、この確定した、駆動電界印加時間Tsおよび逆電界印加時間Trを用いて本発明の圧電素子の駆動方法について、図6に示す、本発明の圧電素子の駆動方法の一実施形態を参照して説明する。
まず、制御部30からの通常駆動時の駆動信号を受けた、駆動部28がインクジェット記録ヘッド10の圧電素子12を通常に駆動する(図6中のS10)。
サイクル数Cが、予め設定した、逆電界印加開始サイクル数Crとなり、駆動電圧が印加された総時間が、駆動電界印加時間Ts(=Cr×N’)となったら制御部30は、駆動信号を停止し、駆動部28は、圧電素子10の駆動を停止する(図6中のS11、S12)。
次に、駆動電界と逆方向で、圧電体膜16に抗電界以下の逆電界が、圧電体膜16に印加されるように、制御部30からの駆動信号を受けた、駆動部28が下部電極14および上部電極18の電極間に電圧Vrを印加する(図6中のS13)。
次に、予め設定した逆電界印加時間Trだけ逆電界を印加したら、制御部30は、逆電界を印加させるための駆動信号を停止して、駆動部28は、逆電界の印加を停止する(図6中のS14、S15)。
以降、圧電素子の駆動を続ける場合は、上述のステップ繰り返す、すなわち、駆動電界印加時間Ts毎に(換言すると、逆電界印加開始サイクル数Cr毎に)駆動電界の印加を停止し、逆電界印加時間Trだけ抗電界以下の強度の逆電界を印加する(図6中のS16)。圧電素子の駆動を停止する場合は、上述のS16のステップ終了後に圧電素子の駆動を停止する(図6中のS17)。
本発明の圧電素子の駆動方法によると、圧電体膜に駆動電界を所定時間だけ印加した後に、逆電界を所定時間だけ印加することにより、駆動電界によりマイナス電極側に引き寄せられた圧電体膜のAサイトイオンを、マイナス電極側から引き戻すことができ、Aサイトイオンの移動により低下した圧電体膜の圧電性能を回復させることができる。これにより、再び圧電素子の通常駆動を行う際に、圧電素子の圧電性能を回復させた状態で駆動することができ、圧電素子の耐久性を向上させることができる。
ここで、駆動電界を印加する時間を上述の駆動電界印加時間Tsとすることにより、換言すれば、逆電界印加開始サイクル数Crを劣化サイクル数Cdよりも少ないサイクル数とすることにより、圧電体膜に不可逆的な劣化が生じる前に駆動電界を停止して、逆電界を印加することができ、これにより、Aサイトイオンの移動により圧電体膜に不可逆的な劣化が生じることを防止でき、圧電体膜の耐久性を向上することができる。
また、本発明によれば、柱状粒界構造を有し高い圧伝定数を持つ圧電体膜を用いた場合でも、圧電体膜のAサイトイオンの析出を防止することができ、これにより圧電体膜の圧電性能を維持することができる。
また、特に、本発明のように、基板と反対側の上電電極側に、Aサイトイオンが引き寄せられる場合において、特に、Aサイトイオンが高い頻度で水と接触するのでAサイト元素の化合物が析出しやすいことがわかっているが、このような場合でも、Aサイト元素の化合物の析出を好適に防止することができる。
なお、上述のように、逆電界の強度を圧電体膜の抗電界以下とすることにより、圧電体膜の分極が反転させることなく、駆動電界によりマイナス電極側に引き寄せられた移動した圧電体膜のAサイトイオンを、マイナス電極側から引き戻すことができる。
ここで、上述の実施形態において、通常の駆動時に、駆動電極である上部電極18がマイナス電極となるように駆動電圧を印加するとしたが、本発明はこれに限定されず、駆動電極18がプラス電極となるように上部電極18に駆動電圧を印加してもよい。また、下部電極14を駆動電極としてもよい。
すなわち、本発明では、上部電極18が低電位側の電極であり下部電極14が高電位側の電極である構成に限定されず、上部電極18が高電位側の電極であり下部電極14が低電位側の電極としてもよい。
また、上述の実施形態では、ペロブスカイト構造を有するPb(Ti,Zr,M)O系の圧電体膜を備える圧電アクチュエータを用いたインクジェット吐出ヘッドについて説明したが、これに限定されず、マイクロポンプなどの圧電アクチュエータを適用可能な各種の装置において、本発明を適用可能である。
以下、本発明に係る圧電素子の駆動方法の実施例を説明する。
本実施例において、使用するダイアフラム型の圧電アクチュエータを利用するインクジェット記録ヘッドは、上述のインクジェット記録ヘッド10と同様の構成を有する。
より具体的な構成について説明する。基板として厚みが500μmのSi基板を用いた。このSi基板の上方に、10μmの厚みの振動板を介して、下部電極、圧電体膜、上部電極を順に積層して圧電素子を形成した。また、基板における圧電体膜の下方に対応する位置に、インク室22を形成してインクノズルを形成した。なお、インク室の形成は、リアクティブイオンエッチングで行ったが、これに限定されず、各種のドライエッチングやウェットエッチングの方法により、Si基板をエッチングすることで行うことができる。
また、下部電極は、200nmのTi層および500nmのIr層を順にスパッタ法により成膜した。
また、上部電極は、50nmのTi層および200nmのIr層を順にスパッタ法により成膜した。
また、圧電体膜は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)をスパッタ法により成膜した。圧電体膜の膜厚は、5μmである。なお、圧電体膜の成膜の際の成膜温度は、550℃であり、圧電体膜の成膜条件は、柱状粒界構造を持つペロブスカイト型PZTの結晶が、成膜される成膜条件である。本実施例では、成膜後、圧電体膜の断面SEM観察から、圧電体膜が良好な柱状粒界構造を有することが確認された。
上述の圧電素子を用いて、耐久試験を行った。まず、温度40℃、湿度80%の雰囲気中で、圧電体膜にVd=15−20Vの台形波形電圧(3−4kV/mmの台形波形電界、1サイクルのサイクル周期が10μsec)を印加して、サイクル数と変位の相関について、すなわち、経時変位特性を評価した。なお、本実施例では、上部電極側をマイナス電位となるようにマイナス電位駆動を行った。すなわち、本実施例では、上部電極がマイナス電極となる。
経時変位特性の評価の結果、5万サイクルで、変位が、50%減少し、圧電体膜が劣化することがわかった。なお、変位測定は、SOI基板を、圧電成膜面とは裏側からリソグラフィとドライエッチングを用いて構造化し、ダイアフラム構造を作製し、このダイアフラムの変位をレーザードップラー変位計を用いることで実施した。
この圧電体膜の劣化は、Pbイオンが、マイナス電位側の上部電極側に引き寄せられ、Pb化合物(例えば、PbO等)として析出し、この析出に伴う圧電性能の低下、すなわち変位の低下によるものである。なお、圧電体膜の経時変位特性の評価の結果、1万サイクルで、Pb化合物の析出が生じることがわかった。すなわち、本実施例では、劣化サイクル数Cdは1万サイクルであった。
このような、経時変位特性を有する圧電素子を有するインクジェット記録ヘッドに本発明の圧電素子の駆動方法を適用して、その耐久性について評価する。
まず、逆電界として印加するDC電界は、PZTの圧電体膜の抗電界±5kV/mmよりも絶対値で小さい値の2kV/mmとした。
また、変位特性の評価の結果から、通常駆動時の駆動電界の印加を停止させる逆電界印加開始サイクル数Crを、Pb化合物が析出する劣化サイクル数Cdである1万サイクル未満の5千サイクルとした。
また、本実施例で、最低逆電界印加時間Trmは、上記(3)式より、C×N=C×(Vd/Vr)×N’=0.1secである。なお、Cr=5千サイクル、N’=10μsec、(Vd/Vr)=(逆電界の強度/駆動電界の強度)である。この最低逆電界印加時間Trmの値から、逆電界印加時間Trは、最低逆電界印加時間Trm=0.1secよりも長い5分とした。
すなわち、本実施例では、通常駆動時の駆動電界の5千サイクル(駆動電界印加時間0.1sec)毎に、DCの逆電界(逆電界の印加電圧Vr=2kV)を5分間、圧電体膜に印加した。圧電体膜に逆電界を印加しない場合には、5万サイクルで圧電体膜の変位が低下して圧電体膜の劣化が生じたが、上述のように圧電素子を駆動することにより、30万サイクルでも圧電体膜の変位が低下せずに、耐久性が著しく向上することが確認できた。
なお、逆電界印加の導入周期、すなわち、駆動電界印加時間Tsが長いほど、逆電界印加する時間を長くする必要があることも判明し、最低逆電界印加時間Trmは、駆動電界印加時間Tsに略比例関係にあることがわかった。
また、逆電界印加の導入周期が長すぎる、すなわち、駆動電界印加時間Tsが長すぎると、Pb化合物が析出してしまい、一旦析出すると逆電界を印加しても耐久性は向上しないことを確認した。したがって、本実施例においてPb化合物の析出された劣化サイクル数1万サイクルよりも短いサイクル数を、駆動電界を停止させる逆電界印加開始サイクル数Cr(本実施例では、5千サイクル)として、駆動電界を停止する。これにより、上述のように、PZT圧電体膜のPb化合物の析出による、不可逆的な劣化を防止することができる。
以上、本発明に係る圧電素子の駆動方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施態様に限定はされず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
本発明に係る圧電素子の駆動方法を適用するインクジェット式記録ヘッドの一実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明の圧電素子の駆動方法を模式的に示すグラフである。 劣化サイクル数と劣化時間との関係を説明するグラフである。 サイクル数と逆電界印加時間との関係を説明するグラフである。 逆電界駆動の駆動条件を設定する設定方法の一例を示すフロー図である。 本発明に係る圧電素子の駆動方法の一実施形態を示すフロー図である。
符号の説明
10 インクジェット式記録ヘッド
12 圧電素子
14 下部電極
16 圧電体膜
18 上部電極
20 ノズルプレート
22 インク室
24 吐出口
26 振動板
28 駆動部
30 制御部

Claims (11)

  1. 基板と、この基板上に形成された基板側電極と、この基板側電極上に形成された、一般式Pb(Ti,Zr,M)Oで表されるペロブスカイト型結晶構造をもつ圧電体膜と、この圧電体膜上に形成された表面側電極とを有する圧電素子の駆動方法であって、
    前記表面側電極と前記基板側電極との間に所定の駆動電圧を印加して前記圧電素子を駆動した先の駆動時間と、この先の駆動時間の次の駆動時間との間の駆動待機時間中に、定常的に、前記圧電素子を駆動している間に印加される前記駆動電圧によって前記圧電体膜に形成される駆動電界に対する逆電界を前記圧電体膜に所定時間印加することを特徴とする圧電素子の駆動方法。
  2. 前記駆動電界は、その方向が、前記圧電体膜のAサイトイオンが前記表面側電極に引き寄せられる方向である請求項1に記載の圧電素子の駆動方法。
  3. 前記逆電界の強度は、前記圧電体膜の抗電界以下である請求項1または2に記載の圧電素子の駆動方法。
  4. 前記逆電界の強度は、前記圧電体膜の抗電界の10%以上である請求項3に記載の圧電素子の駆動方法。
  5. 前記逆電界は、前記駆動電圧の逆電圧である逆電界印加電圧を前記基板側電極と前記表面側電極との間に印加することにより形成され、
    前記逆電界印加電圧は、前記圧電体膜の抗電界を形成するDC電圧以下である請求項1〜4のいずれかに記載の圧電素子の駆動方法。
  6. 前記逆電界印加電圧は、前記圧電体膜の抗電界の10%の強度の電界を形成するDC電圧以上である請求項5に記載の圧電素子の駆動方法。
  7. 前記先の駆動時間は、前記圧電素子を前記駆動電圧で連続サイクル駆動したときの駆動開始から前記Aサイトイオンが前記駆動電界によって引き寄せられた電極側に存在する水分との反応によって生成したA元素化合物が析出するまでの劣化サイクル数に基づいて設定される、この劣化サイクル数より短い、前記逆電界の印加を開始する時点の逆電界印加開始サイクル数に対応する時間であり、
    前記圧電体膜に前記逆電界を印加する前記所定時間は、前記逆電界印加開始サイクル数に応じて設定される逆電界印加時間である請求項1〜6のいずれかに記載の圧電素子の駆動方法。
  8. 前記先の駆動時間は、前記圧電素子を前記駆動電圧で連続サイクル駆動したときの駆動開始から前記圧電体膜の変位量の低下が始まるまでの劣化サイクル数に基づいて設定される、この劣化サイクル数より短い、前記逆電界の印加を開始する時点の逆電界印加開始サイクル数に対応する時間であり、
    前記圧電体膜に前記逆電界を印加する前記所定時間は、前記逆電界印加開始サイクル数に応じて設定される逆電界印加時間である請求項1〜7のいずれかに記載の圧電素子の駆動方法。
  9. 前記劣化サイクル数をCd、前記劣化サイクル数に対応する劣化時間をTd、前記駆動電圧をVd、前記逆電界を形成するために前記基板側電極と前記表面側電極との間に印加される、前記駆動電圧の逆電圧である逆電界印加電圧をVr、前記逆電界印加開始サイクル数をCrとするとき、
    前記逆電界印加時間Trは、下記式、
    Trm=Cr×(Vd/Vr)×(Td/Cd)
    で定まる最低逆電界印加時間Trm以上の時間である請求項7または8に記載の圧電素子の駆動方法。
  10. 前記圧電体膜は、PZT(PbZrTiO)であり、前記Aサイトイオンは、Pbイオンである請求項1〜9のいずれかに記載の圧電素子の駆動方法。
  11. 前記圧電体膜は、柱状粒界結晶構造を有する薄膜である請求項1〜10のいずれかに記載の圧電素子の駆動方法。
JP2007239099A 2007-09-14 2007-09-14 圧電素子の駆動方法 Abandoned JP2009071113A (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007239099A JP2009071113A (ja) 2007-09-14 2007-09-14 圧電素子の駆動方法
US12/205,402 US7675220B2 (en) 2007-09-14 2008-09-05 Method of driving piezoelectric devices
EP08015858A EP2037510A3 (en) 2007-09-14 2008-09-09 Method of driving piezoelectric devices

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007239099A JP2009071113A (ja) 2007-09-14 2007-09-14 圧電素子の駆動方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2009071113A true JP2009071113A (ja) 2009-04-02

Family

ID=40220871

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007239099A Abandoned JP2009071113A (ja) 2007-09-14 2007-09-14 圧電素子の駆動方法

Country Status (3)

Country Link
US (1) US7675220B2 (ja)
EP (1) EP2037510A3 (ja)
JP (1) JP2009071113A (ja)

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011046088A (ja) * 2009-08-27 2011-03-10 Kyocera Corp 液体吐出ヘッドの使用方法および記録装置
JP2011093130A (ja) * 2009-10-28 2011-05-12 Kyocera Corp 液体吐出ヘッドの使用方法および記録装置
JP2014058078A (ja) * 2012-09-14 2014-04-03 Ricoh Co Ltd 液滴吐出ヘッドの駆動方法、液滴吐出ヘッドおよび画像形成装置
JP2014177061A (ja) * 2013-03-15 2014-09-25 Ricoh Co Ltd 液滴吐出ヘッドの駆動方法、液滴吐出ヘッドおよび画像形成装置
JP2014219488A (ja) * 2013-05-04 2014-11-20 ホーチキ株式会社 セラミックデバイス及びその動作方法
JP2016128270A (ja) * 2016-04-11 2016-07-14 株式会社リコー 液滴吐出ヘッドの駆動方法、液滴吐出ヘッドおよび画像形成装置
JP2016144289A (ja) * 2015-01-30 2016-08-08 セイコーエプソン株式会社 圧電素子の駆動方法及び圧電素子並びに圧電素子応用デバイス
JP2017094615A (ja) * 2015-11-25 2017-06-01 株式会社リコー 液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
JP2017119439A (ja) * 2017-03-06 2017-07-06 株式会社リコー 画像形成装置

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6597959B2 (ja) * 2015-10-05 2019-10-30 セイコーエプソン株式会社 圧電デバイス及び圧電デバイスの駆動方法

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6257265A (ja) * 1985-09-06 1987-03-12 Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> 圧電素子駆動法
JP3168699B2 (ja) 1992-06-12 2001-05-21 セイコーエプソン株式会社 インクジェットヘッドの駆動装置及びインクジェットヘッドの駆動方法
JPH06342946A (ja) 1993-05-31 1994-12-13 Toyota Central Res & Dev Lab Inc 圧電素子の再生方法
JP3705089B2 (ja) * 2000-07-24 2005-10-12 松下電器産業株式会社 薄膜圧電素子
CN1501575B (zh) * 2002-11-15 2010-05-12 松下电器产业株式会社 压电体驱动器及其驱动方法、以及盘记录重放装置
JP4665477B2 (ja) * 2004-10-20 2011-04-06 パナソニック株式会社 圧電体アクチュエータの制御方法および位置制御機構並びにディスク装置
JP5043336B2 (ja) * 2005-09-06 2012-10-10 京セラ株式会社 インクジェットプリンタヘッド

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011046088A (ja) * 2009-08-27 2011-03-10 Kyocera Corp 液体吐出ヘッドの使用方法および記録装置
JP2011093130A (ja) * 2009-10-28 2011-05-12 Kyocera Corp 液体吐出ヘッドの使用方法および記録装置
JP2014058078A (ja) * 2012-09-14 2014-04-03 Ricoh Co Ltd 液滴吐出ヘッドの駆動方法、液滴吐出ヘッドおよび画像形成装置
JP2014177061A (ja) * 2013-03-15 2014-09-25 Ricoh Co Ltd 液滴吐出ヘッドの駆動方法、液滴吐出ヘッドおよび画像形成装置
JP2014219488A (ja) * 2013-05-04 2014-11-20 ホーチキ株式会社 セラミックデバイス及びその動作方法
JP2016144289A (ja) * 2015-01-30 2016-08-08 セイコーエプソン株式会社 圧電素子の駆動方法及び圧電素子並びに圧電素子応用デバイス
JP2017094615A (ja) * 2015-11-25 2017-06-01 株式会社リコー 液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
US9925768B2 (en) 2015-11-25 2018-03-27 Ricoh Company, Ltd. Liquid discharge head, liquid discharge device, and liquid discharge apparatus
JP2016128270A (ja) * 2016-04-11 2016-07-14 株式会社リコー 液滴吐出ヘッドの駆動方法、液滴吐出ヘッドおよび画像形成装置
JP2017119439A (ja) * 2017-03-06 2017-07-06 株式会社リコー 画像形成装置

Also Published As

Publication number Publication date
EP2037510A2 (en) 2009-03-18
US7675220B2 (en) 2010-03-09
US20090009031A1 (en) 2009-01-08
EP2037510A3 (en) 2013-03-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2009071113A (ja) 圧電素子の駆動方法
JP4802469B2 (ja) 液滴吐出装置
JP2009081347A (ja) 圧電デバイスおよび液体吐出ヘッド
JP6680301B2 (ja) インクジェットヘッドおよびその製造方法、ならびにインクジェット記録装置
JP6398734B2 (ja) 圧電デバイス、圧電アクチュエータ、ハードディスクドライブ、及びインクジェットプリンタ装置
JP2008311634A (ja) 圧電素子及びその駆動方法、圧電装置、液体吐出装置
JP5275698B2 (ja) 圧電体膜の分極方法および圧電素子構造体の製造方法
JP5497394B2 (ja) 圧電アクチュエータとその駆動方法、液体吐出装置、圧電型超音波振動子
JP6575743B2 (ja) 液体噴射ヘッドの駆動方法及び圧電素子並びに液体噴射ヘッド
JP2008218547A (ja) 圧電体とその駆動方法、圧電素子、及び液体吐出装置
JP2010034154A (ja) 薄膜圧電素子の製造方法
WO2014024696A1 (ja) 圧電素子、圧電デバイス、インクジェットヘッドおよびインクジェットプリンタ
JP2009064859A5 (ja)
US7726783B2 (en) Liquid discharge apparatus
JP2010030129A (ja) 液体噴射ヘッド及び液体噴射装置並びに圧電素子
JP2008041921A (ja) 圧電薄膜素子およびその製造方法、ならびにインクジェットヘッドおよびインクジェット式記録装置
JP6048306B2 (ja) インクジェットヘッドおよびその駆動方法と、インクジェットプリンタ
JP2003188433A5 (ja)
JPH09254386A (ja) インクジェット記録用プリンタヘッド及びその製造方法
JP6481686B2 (ja) 強誘電体薄膜、圧電薄膜付き基板、圧電アクチュエータ、インクジェットヘッドおよびインクジェットプリンタ
JP6274308B2 (ja) 圧電素子、圧電素子の製造方法、圧電アクチュエータ、インクジェットヘッドおよびインクジェットプリンタ
JP4500870B2 (ja) ペロブスカイト型酸化膜の評価方法
JP4689482B2 (ja) 圧電アクチュエーター、圧電アクチュエーターの製造方法、液体吐出ヘッド
JP5449970B2 (ja) 圧電体膜の成膜方法、圧電素子、液体吐出装置、及び圧電型超音波振動子
JP5384843B2 (ja) 圧電素子構造体の製造方法および圧電素子構造体

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100204

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20121012

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20121023

A762 Written abandonment of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A762

Effective date: 20121113