図1は、本発明の一実施形態である記録装置であるカラーインクジェットプリンタの概略構成図である。このカラーインクジェットプリンタ1(以下、プリンタ1とする)は、4つの液体吐出ヘッド2を有している。これらの液体吐出ヘッド2は、印刷用紙Pの搬送方向に沿って並べられ、プリンタ1に固定されている。液体吐出ヘッド2は、図1の手前から奥へ向かう方向に細長い形状を有している。
プリンタ1には、印刷用紙Pの搬送経路に沿って、給紙ユニット114、搬送ユニット120および紙受け部116が順に設けられている。また、プリンタ1には、液体吐出ヘッド2や給紙ユニット114などのプリンタ1の各部における動作を制御するための制御部100が設けられている。
給紙ユニット114は、複数枚の印刷用紙Pを収容することができる用紙収容ケース115と、給紙ローラ145とを有している。給紙ローラ145は、用紙収容ケース115に積層して収容された印刷用紙Pのうち、最も上にある印刷用紙Pを1枚ずつ送り出すことができる。
給紙ユニット114と搬送ユニット120との間には、印刷用紙Pの搬送経路に沿って、二対の送りローラ118aおよび118b、ならびに、119aおよび119bが配置されている。給紙ユニット114から送り出された印刷用紙Pは、これらの送りローラによってガイドされて、さらに搬送ユニット120へと送り出される。
搬送ユニット120は、エンドレスの搬送ベルト111と2つのベルトローラ106および107を有している。搬送ベルト111は、ベルトローラ106および107に巻き掛けられている。搬送ベルト111は、2つのベルトローラに巻き掛けられたとき所定の張力で張られるような長さに調整されている。これによって、搬送ベルト111は、2つのベルトローラの共通接線をそれぞれ含む互いに平行な2つの平面に沿って、弛むことなく張られている。これら2つの平面のうち、液体吐出ヘッド2に近い方の平面が、印刷用紙Pを搬送する搬送面127である。
ベルトローラ106には、図1に示されるように、搬送モータ174が接続されている。搬送モータ174は、ベルトローラ106を矢印Aの方向に回転させることができる。また、ベルトローラ107は、搬送ベルト111に連動して回転することができる。したがって、搬送モータ174を駆動してベルトローラ106を回転させることにより、搬送ベルト111は、矢印Aの方向に沿って移動する。
ベルトローラ107の近傍には、ニップローラ138とニップ受けローラ139とが、搬送ベルト111を挟むように配置されている。ニップローラ138は、図示しないバネによって下方に付勢されている。ニップローラ138の下方のニップ受けローラ139は、下方に付勢されたニップローラ138を、搬送ベルト111を介して受け止めている。2つのニップローラは回転可能に設置されており、搬送ベルト111に連動して回転する。
給紙ユニット114から搬送ユニット120へと送り出された印刷用紙Pは、ニップローラ138と搬送ベルト111との間に挟み込まれる。これによって、印刷用紙Pは、搬送ベルト111の搬送面127に押し付けられ、搬送面127上に固着する。そして、印刷用紙Pは、搬送ベルト111の回転に従って、液体吐出ヘッド2が設置されている方向へと搬送される。なお、搬送ベルト111の外周面113に粘着性のシリコンゴムによる処理を施してもよい。これにより、印刷用紙Pを搬送面127に確実に固着させることができる。
4つの液体吐出ヘッド2は、搬送ベルト111による搬送方向に沿って互いに近接して配置されている。各液体吐出ヘッド2は、下端にヘッド本体13を有している。ヘッド本体13の下面には、液体を吐出する多数の液体吐出孔8が設けられている(図3参照)。
1つの液体吐出ヘッド2に設けられた液体吐出孔8からは、同じ色の液滴(インク)が吐出されるようになっている。各液体吐出ヘッド2の液体吐出孔8は一方方向(印刷用紙Pと平行で印刷用紙P搬送方向に直交する方向であり、液体吐出ヘッド2の長手方向)に等間隔で配置されているため、一方方向に隙間なく印刷することができる。各液体吐出ヘッド2から吐出される液体の色は、それぞれ、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。各液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体13の下面と搬送ベルト111の搬送面127との間にわずかな隙間をおいて配置されている。
搬送ベルト111によって搬送された印刷用紙Pは、液体吐出ヘッド2と搬送ベルト111との間の隙間を通過する。その際に、液体吐出ヘッド2を構成するヘッド本体13から印刷用紙Pの上面に向けて液滴が吐出される。これによって、印刷用紙Pの上面には、制御部100によって記憶された画像データに基づくカラー画像が形成される。
搬送ユニット120と紙受け部116との間には、剥離プレート140と二対の送りローラ121aおよび121bならびに122aおよび122bとが配置されている。カラー画像が印刷された印刷用紙Pは、搬送ベルト111によって剥離プレート140へと搬送される。このとき、印刷用紙Pは、剥離プレート140の右端によって、搬送面127から剥離される。そして、印刷用紙Pは、送りローラ121a〜122bによって、紙受け部116に送り出される。このように、印刷済みの印刷用紙Pが順次紙受け部116に送られ、紙受け部116に重ねられる。
なお、印刷用紙Pの搬送方向について最も上流側にある液体吐出ヘッド2とニップローラ138との間には、紙面センサ133が設置されている。紙面センサ133は、発光素子および受光素子によって構成され、搬送経路上の印刷用紙Pの先端位置を検出することができる。紙面センサ133による検出結果は制御部100に送られる。制御部100は、紙面センサ133から送られた検出結果により、印刷用紙Pの搬送と画像の印刷とが同期するように、液体吐出ヘッド2や搬送モータ174等を制御することができる。
次に本発明の液体吐出ヘッドを構成するヘッド本体13について説明する。図2は、図1に示されたヘッド本体13を示す上面図である。図3は、図2の一点鎖線で囲まれた領域の拡大上面図であり、ヘッド本体13の一部である。図4は、図3と同じ位置の拡大透視図で、液体吐出孔8の位置が分かりやすいように、一部の流路を省略して描いている。なお、図3および図4において、図面を分かりやすくするために、圧電アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき液体加圧室10(液体加圧室群9)、しぼり12および液体吐出孔8を実線で描いている。図5は図3のV−V線に沿った縦断面図である。
ヘッド本体13は、平板状の流路部材4と、流路部材4上に、アクチュエータユニットである圧電アクチュエータユニット21とを有している。圧電アクチュエータユニット21は台形形状を有しており、その台形の1対の平行対向辺が流路部材4の長手方向に平行になるように流路部材4の上面に配置されている。また、流路部材4の長手方向に平行な2本の仮想直線のそれぞれに沿って2つずつ、つまり合計4つの圧電アクチュエータユニット21が、全体として千鳥状に流路部材4上に配列されている。流路部材4上で隣接し合う圧電アクチュエータユニット21の斜辺同士は、流路部材4の短手方向について部分的にオーバーラップしている。このオーバーラップしている部分の圧電アクチェータユニット21を駆動することにより印刷される領域では、2つの圧電アクチュエータユニット21により吐出された液滴が混在して着弾することになる。
流路部材4の内部には液体流路の一部であるマニホールド5が形成されている。マニホールド5は流路部材4の長手方向に沿って延び細長い形状を有しており、流路部材4の上面にはマニホールド5の開口5bが形成されている。開口5bは、流路部材4の長手方向に平行な2本の直線(仮想線)のそれぞれに沿って5個ずつ、合計10個形成されている。開口5bは、4つの圧電アクチュエータユニット21が配置された領域を避ける位置に形成されている。マニホールド5には開口5bを通じて図示されていない液体タンクから液体が供給されるようになっている。
流路部材4内に形成されたマニホールド5は、複数本に分岐している(分岐した部分のマニホールド5を副マニホールド5aということがある)。開口5bに繋がるマニホールド5は、圧電アクチュエータユニット21の斜辺に沿うように延在しており、流路部材4の長手方向と交差して配置されている。2つの圧電アクチュエータユニット21に挟まれた領域では、1つのマニホールド5が、隣接する圧電アクチュエータユニット21に共有されており、副マニホールド5aがマニホールド5の両側から分岐している。これらの副マニホールド5aは、流路部材4の内部の各圧電アクチュエータユニット21に対向する領域に互いに隣接してヘッド本体13の長手方向に延在している。
流路部材4は、複数の液体加圧室10がマトリクス状(すなわち、2次元的かつ規則的)に形成されている4つの液体加圧室群9を有している。液体加圧室10は、角部にアールが施されたほぼ菱形の平面形状を有する中空の領域である。液体加圧室10は流路部材4の上面に開口するように形成されている。これらの液体加圧室10は、流路部材4の上面における圧電アクチュエータユニット21に対向する領域のほぼ全面にわたって配列されている。したがって、これらの液体加圧室10によって形成された各液体加圧室群9は圧電アクチュエータユニット21とほぼ同一の大きさおよび形状の領域を占有している。また、各液体加圧室10の開口は、流路部材4の上面に圧電アクチュエータユニット21が接着されることで閉塞されている。
本実施形態では、図3に示されているように、マニホールド5は、流路部材4の短手方向に互いに平行に並んだ4列のE1〜E4の副マニホールド5aに分岐し、各副マニホールド5aに繋がった液体加圧室10は、等間隔に流路部材4の長手方向に並ぶ液体加圧室10の列を構成し、その列は、短手方向に互いに平行に4列配列されている。副マニホールド5aに繋がった液体加圧室10の並ぶ列は副マニホールド5aの両側に2列ずつ配列されている。
全体では、マニホールド5から繋がる液体加圧室10は、等間隔に流路部材4の長手方向に並ぶ液体加圧室10の列を構成し、その列は、短手方向に互いに平行に16列配列されている。各液体加圧室列に含まれる液体加圧室10の数は、アクチュエータである変位素子50の外形形状に対応して、その長辺側から短辺側に向かって次第に少なくなるように配置されている。液体吐出孔8もこれと同様に配置されている。これによって、全体として長手方向に600dpiの解像度で画像形成が可能となっている。すなわち、各副マニホールド5aには平均すれば150dpiに相当する間隔で個別流路32が接続されている。これは、600dpi分の液体吐出孔8を4つ列の副マニホールド5aに分けて繋ぐ設計をする際に、各副マニホールド5aに繋がる個別流路32が等しい間隔で繋がるとは限らないため、マニホールド5aの延在方向、すなわち主走査方向に平均170μm(150dpiならば25.4mm/150=169μm間隔である)以下の間隔で個別流路32が形成されているということである。
圧電アクチュエータユニット21の上面における各液体加圧室10に対向する位置には後述する駆動電極35がそれぞれ形成されている。駆動電極35は液体加圧室10より一回り小さく、液体加圧室10とほぼ相似な形状を有しており、圧電アクチュエータユニット21の上面における液体加圧室10と対向する領域内に収まるように配置されている。
流路部材4の下面の液体吐出面には多数の液体吐出孔8が形成されている。これらの液体吐出孔8は、流路部材4の下面側に配置された副マニホールド5aと対向する領域を避けた位置に配置されている。また、これらの液体吐出孔8は、流路部材4の下面側における圧電アクチュエータユニット21と対向する領域内に配置されている。これらの液体吐出孔群7は圧電アクチュエータユニット21とほぼ同一の大きさおよび形状の領域を占有しており、対応する圧電アクチュエータユニット21の変位素子50を変位させることにより液体吐出孔8から液滴が吐出できる。液体吐出孔8の配置については後で詳述する。そして、それぞれの領域内の液体吐出孔8は、流路部材4の長手方向に平行な複数の直線に沿って等間隔に配列されている。
ヘッド本体13に含まれる流路部材4は、複数のプレートが積層された積層構造を有している。これらのプレートは、流路部材4の上面から順に、キャビティプレート22、ベースプレート23、アパーチャ(しぼり)プレート24、サプライプレート25、26、マニホールドプレート27、28、29、カバープレート30およびノズルプレート31である。これらのプレートには多数の孔が形成されている。各プレートは、これらの孔が互いに連通して個別流路32および副マニホールド5aを構成するように、位置合わせして積層されている。ヘッド本体13は、図5に示されているように、液体加圧室10は流路部材4の上面に、副マニホールド5aは内部の下面側に、液体吐出孔8は下面にと、個別流路32を構成する各部分が異なる位置に互いに近接して配設され、液体加圧室10を介して副マニホールド5aと液体吐出孔8とが繋がる構成を有している。
各プレートに形成された孔について説明する。これらの孔には、次のようなものがある。第1に、キャビティプレート22に形成された液体加圧室10である。第2に、液体加圧室10の一端から副マニホールド5aへと繋がる流路を構成する連通孔である。この連通孔は、ベースプレート23(詳細には液体加圧室10の入り口)からサプライプレート25(詳細には副マニホールド5aの出口)までの各プレートに形成されている。なお、この連通孔には、アパーチャプレート24に形成されたしぼり12と、サプライプレート25、26に形成された個別供給流路6とが含まれている。
第3に、液体加圧室10の他端から液体吐出孔8へと連通する流路を構成する連通孔であり、この連通孔は、以下の記載においてディセンダ(部分流路)と呼称される。ディセンダは、ベースプレート23(詳細には液体加圧室10の出口)からノズルプレート31(詳細には液体吐出孔8)までの各プレートに形成されている。第4に、副マニホールド5aを構成する連通孔である。この連通孔は、マニホールドプレート27〜30に形成されている。
このような連通孔が相互に繋がり、副マニホールド5aからの液体の流入口(副マニホールド5aの出口)から液体吐出孔8に至る個別流路32を構成している。副マニホールド5aに供給された液体は、以下の経路で液体吐出孔8から吐出される。まず、副マニホールド5aから上方向に向かって、個別供給流路6を通り、しぼり12の一端部に至る。次に、しぼり12の延在方向に沿って水平に進み、しぼり12の他端部に至る。そこから上方に向かって、液体加圧室10の一端部に至る。さらに、液体加圧室10の延在方向に沿って水平に進み、液体加圧室10の他端部に至る。そこから少しずつ水平方向に移動しながら、主に下方に向かい、下面に開口した液体吐出孔8へと進む。
圧電アクチュエータユニット21は、図5に示されるように、2枚の圧電セラミック層21a、21bからなる積層構造を有している。これらの圧電セラミック層21a、21bはそれぞれ20μm程度の厚さを有している。圧電アクチュエータユニット21全体の厚さは40μm程度である。圧電セラミック層21a、21bのいずれの層も複数の液体加圧室10を跨ぐように延在している(図3参照)。これらの圧電セラミック層21a、21bは、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる。
圧電アクチュエータユニット21は、Ag−Pd系などの金属材料からなる共通電極34、Au系などの金属材料からなる駆動電極35を有している。駆動電極35は上述のように圧電アクチュエータユニット21の上面における液体加圧室10と対向する位置に配置されている。駆動電極35の一端は、液体加圧室10と対向する領域外に引き出されて接続電極36が形成されている。接続電極36は例えばガラスフリットを含む金からなり、厚さが15μm程度で凸状に形成されている。また、接続電極36は、図示されていないFPC(Flexible Printed Circuit)に設けられた電極と電気的に接合されている。詳細は後述するが、駆動電極35には、制御部100からFPCを通じて駆動信号(駆動電圧)が供給される。駆動信号は、印刷媒体Pの搬送速度と同期して一定の周期で供給される。
共通電極34は、圧電セラミック層21aと圧電セラミック層21bとの間の領域に面方向のほぼ全面にわたって形成されている。すなわち、共通電極34は、圧電アクチュエータユニット21に対向する領域内の全ての液体加圧室10を覆うように延在している。共通電極34の厚さは2μm程度である。共通電極34は図示しない領域において接地され、グランド電位に保持されている。本実施形態では、圧電セラミック層21b上において、駆動電極35からなる電極群を避ける位置に駆動電極35とは異なる表面電極(不図示)が形成されている。表面電極は、圧電セラミック層21bの内部に形成されたスルーホールを介して共通電極34と電気的に接続されているとともに、多数の駆動電極35と同様に、FPC上の別の電極と接続されている。
図5に示されるように、共通電極34と駆動電極35とは、最上層の圧電セラミック層21bのみを挟むように配置されている。圧電セラミック層21bにおける駆動電極35と共通電極34とに挟まれた領域は活性部と呼称され、その部分の圧電セラミックスには厚み方向に分極が施されている。本実施形態の圧電アクチュエータユニット21においては、最上層の圧電セラミック層21bのみが活性部を含んでおり、圧電セラミック21aは活性部を含んでおらず、振動板として働く。この圧電アクチュエータユニット21はいわゆるユニモルフタイプの構成を有している。
なお、後述のように、駆動電極35に選択的に所定の駆動信号が供給されることにより、この駆動電極35に対応する液体加圧室10内の液体に圧力が加えられる。これによって、個別流路32を通じて、対応する液体吐出口8から液滴が吐出される。すなわち、圧電アクチュエータユニット21における各液体加圧室10に対向する部分は、各液体加圧室10および液体吐出口8に対応する個別の変位素子50(アクチュエータ)に相当する。つまり、2枚の圧電セラミック層からなる積層体中には、図5に示されているような構造を単位構造とする変位素子50が液体加圧室10毎に、液体加圧室10の直上に位置する振動板21a、共通電極34、圧電セラミック層21b、駆動電極35により作り込まれており、圧電アクチュエータユニット21には変位素子50が複数含まれている。なお、本実施形態において1回の吐出動作によって液体吐出口8から吐出される液体の量は5〜7pL(ピコリットル)程度である。
多数の駆動電極35は、個別に電位を制御することができるように、それぞれがFPC上のコンタクトおよび配線を介して、個別にアクチュエータ制御手段に電気的に接続されている。
本実施形態における圧電アクチュエータユニット21の液体吐出時の駆動方法の一例を、駆動電極35に供給される駆動電圧(駆動信号)に関して説明する。駆動電極35を共通電極34と異なる電位にして圧電セラミック層21bに対してその分極方向に電界を印加したとき、この電界が印加された部分が、圧電効果により歪む活性部として働く。この時圧電セラミック層21bは、その厚み方向すなわち積層方向に伸長または収縮し、圧電横効果により積層方向と垂直な方向すなわち面方向には収縮または伸長しようとする。一方、残りの圧電セラミック層21aは、駆動電極35と共通電極34とに挟まれた領域を持たない非活性層であるので、自発的に変形しない。つまり、圧電アクチュエータユニット21は、上側(つまり、液体加圧室10とは離れた側)の圧電セラミック層21bを、活性部を含む層とし、かつ下側(つまり、液体加圧室10に近い側)の圧電セラミック層21aを非活性層とした、いわゆるユニモルフタイプの構成となっている。
この構成において、電界と分極とが同方向となるように、アクチュエータ制御部により駆動電極35を共通電極34に対して正または負の所定電位とすると、圧電セラミック層21bの電極に挟まれた部分(活性部)が、面方向に収縮する。一方、非活性層の圧電セラミック層21aは電界の影響を受けないため、自発的には縮むことがなく活性部の変形を規制しようとする。この結果、圧電セラミック層21bと圧電セラミック層21aとの間で分極方向への歪みに差が生じて、圧電セラミック層21bは液体加圧室10側へ凸となるように変形(ユニモルフ変形)する。
本実施の形態における液体吐出時の駆動は引き打ちと呼ばれるものであり、その駆動を、図7と、図6を用いて説明する。図6(a)は図5に示した変位素子50付近の部分断面図である。ただし、接続電極36につながる駆動電極34の引出し部分のない断面である。
共通電極34と駆動電極35とに挟まれた圧電体は、共通電極34と駆動電極35との間に電圧を加えるとその電圧により直接的に変形する圧電体であり、以下で駆動部51と呼ぶ。圧電セラミック層21aの駆動部51以外の圧電体は、共通電極34と駆動電極35との間に電圧を加えても、直接的には変形しない圧電体で、以下で非駆動部52と呼ぶ。
図7(b)における変位は、図5あるいは図6において変位素子50が上に変位する変位であり、液体加圧室10の体積を大きくする変位である。
まず、予め電圧V1(V、以下で単位を省略することがある)の駆動電圧を与えた状態で待機をする。電圧V1により駆動部51は圧電アクチュエータユニット21の平面方向に縮み、積層されている圧電セラミック層21aよりも短くなるため変位素子50の断面は図6(c)のように下側に凸に変形する。つまり、変位はd1(m、以下で単位を省略することがある)は負で、液体加圧室10は、電圧が加わっていない状態よりも体積が小さくなる。次に、電圧V2の駆動電圧を与えると、変位はd2になり、液体加圧室10の体積は大きくなって、図6(b)の状態となる。これにより、流路内の液体には液体吐出孔8からしぼり12に向かう方向の圧力波が生じる。次にこの圧力波がしぼり12で反射して帰ってくるタイミングに合うように、電圧V3の駆動電圧が加えられる。これにより、変位はd3になり、液体加圧室10は、体積が小さくなって図6(c)の状態となる。この変形により生じた圧力波が前述の反射してきた圧力波と合わさって液体吐出孔8に向かい、液滴が吐出される。
図7(a)の駆動波形は単純にするため、V1=V3、V2=0であるものを示したが、吐出動作の駆動波形はこれに限られるものでない。一般的に言えば、吐出動作の駆動波形は、共通電極34と駆動電極35との間に第1の電圧を加えて、液体加圧室10の体積が電圧を加えられていない状態の体積よりも小さい第1の状態で待機して、液体加圧室10の体積を第1の状態よりも大きくする第2の電圧を加えて第2の状態にした後、液体加圧室10の体積を前記第2の状態よりも小さくする第3の電圧を加えてものである。またさらに、このような駆動波形でなくとも、後述する非駆動部52に引張り応力が加わり駆動劣化が生じる駆動波形で駆動した場合に効果的である。
図6(c)の状態では変位素子50が変位することにより、非駆動部52には、積層方向に直交する方向で変位素子50に向かう方向に引張り応力が加わっている。上述のような駆動波形を加え続けると、図6(b)と図6(c)の状態を繰り返すことになり、非駆動部52は繰り返し加わる引張り応力によりしだいに引き伸ばされた状態に変形していく。
図6(d)は非駆動部52が変形して引き伸ばされた変位素子50であり、電圧が加わっていない状態である。電圧が加わっていないにもかかわらず、非駆動部52が変形しているため、変位素子が下側に変形してしまっている。このような状態になると、電圧が加わらない状態にしても図6(b)に示したような変位が0の状態にはならなくなり、駆動波形の電圧V1から電圧V2への変化時の変位d1からd2が小さくなる。その結果、同じ駆動波形を加えても、液滴の吐出速度が遅くなったり、液適量が少なくなったりする。これが駆動劣化である。
次に、このような駆動劣化の生じた液体吐出素子50に対して、再生波形を加えて、駆動劣化の程度が低い状態に戻す、本発明の液体吐出ヘッドの使用方法について説明する。再生波形による駆動を、図8、図6を用いて説明する。図8(b)における変位は、図5あるいは図6において変位素子が上に変位する変位であり、液体加圧室10の体積を大きくする変位である。
再生波形は、液体加圧室10の体積を電圧を加えられていない状態の体積より増加させる第1の電圧変化と、液体加圧室10の体積を減少させる第2の電圧変化を含む。また、第1の電圧変化は電圧を短時間で変化させる第1のパルス電圧を加える電圧変化と第1のパルス電圧が加わった後、その電圧を保持する部分とを含む。第1のパルス電圧は、圧電セラミック層21bに分域回転歪が生じる抗電界をEc(V/m、以下で単位を省略することがある)としたときに、共通電極34と駆動電極35との間に、圧電セラミック層21bに生じる電界の変化の絶対値が0.8Ec以上である。なお、図8(a)などにおい(Ec)などのと電界に括弧をつけた表記は、電界の値がEcとなる電圧、あるいは電界の変化量がEcとなる電圧という意味である。
図8(a)の再生波形において、第1の電圧変化は、電圧VR2からVR1への第1のパルス電圧を加えたあと電圧VR1を保持する部分であり、第2の電圧変化は、電圧VR1から電圧VR2への電圧変化である。図8(a)においては、第2の電圧変化は、電圧VR1から電圧VR2へのパルス電圧と、電圧VR2を保持する波形を含むが、これらは特に必要ではない。すなわち、電圧VR1からVR2の電圧変化は緩やかであってもかまわないし、電圧VR2での保持はなくてもよい。また、図8(a)においては、電圧VR2が正、すなわち液体加圧室10の体積が電圧を加えない場合よりも小さくなるようになっているが、これもそうでなくてもかまわない。
図8(a)の再生波形を図6(a)の変位素子50に与えた場合の挙動を説明する。第1の電圧変化においては、駆動部51は分極と逆方向に電圧が加わり、圧電アクチュエータユニット21の平面方向に伸び、そのため、変位素子50は上側に変位し、図6(e)のような状態なる。この状態では非駆動部52には圧縮応力が加わっている。そして、駆動劣化を生じさせていた非駆動部52の伸びは、再生波形によって、非駆動部52に繰り返し圧縮応力をくわえることで、徐々に元に戻っていく。再生波形の波形は、加える時間を調整することにより、非駆動部52の状態を初期とほぼ同じ状態にすることが可能であり、変位素子50の変位特性、ひいては液体吐出ヘッド2の吐出特性を初期とほぼ同じ状態に戻すことができる。
なお、再生波形においては、第1の電圧変化は電圧をVR2からVR1に短時間で変化させる第1のパルス電圧を加える電圧変化と第1のパルス電圧が加わった後、電圧VR1で保持すると部分とを含む。非駆動部52に圧縮応力を加えることは、液体加圧室10の体積を大きくする一定の電圧VR1を加え続けることでも実現できるが、このような電圧を加え続けても、駆動劣化の回復は事実上みられない。これは、駆動部51が変形することで生じる非駆動部52を圧縮する応力は小さいため、単に圧縮応力を加え続けても事実上圧縮されないためと考えられる。
非駆動部52を圧縮するには、非駆動部52を変形させて、その後、圧縮応力を加える必要がある。非駆動部52が変形した直後に圧縮応力が加わることにより、非駆動部52は、わずかに圧縮させる。この圧縮を複数回繰り返す。液体加圧室10の体積を大きくする一定の電圧VR1を加え続けた場合、最初に電圧VR1達するまでの電圧変化を急激にすれば、電圧を加え始める際には、上述の圧縮する効果が生じることになるが、1回の圧縮効果は僅かでる。そのため、駆動劣化から再生する再生波形は、複数回繰り返しかける必要がある。再生波形を加える回数は、駆動劣化の程度が小さい場合には、少ない回数ですみ、駆動劣化の程度が大きくなってから再生させる場合には多くの回数が必要となる。例えば、数%の駆動劣化が生じた状態から、ほぼ初期状態まで再生するには、少なくとも数百〜数千回の圧縮を繰り返す。
VR2からVR1への第1のパルス電圧は、非駆動部52を十分変形させることができるよう0.8Ec以上の電界変化が生じる電圧差にするとともに、電圧変化は、圧電体の変形が追従する程度以上の時間変化、例えば100μ秒以下程度、さらに10μ秒以下の短い時間とする。電圧の保持時間が短いと、1回の再生波形おいて圧縮応力の加わっている時間が短くなるが、再生波形の周期を短くすれば、回数を増やすことができる。再生波形の周期は、短くなりすぎると圧電体の応答が追従しなくなり効果が低くなるため、周波数で数百kHz以下にすることが好ましい。電圧の保持時間が長いと、圧電体が、変形直後の圧縮可能な状態でなくなったあとも圧縮を続けることになり、そのような状態での圧縮は、一定電圧を加え続けるのと同じで、事実上再生効果はないので、再生効率は悪くなる。再生効果を高くするには、電圧保持時間は再生波形の周期は、周波数で100Hz以上にするのがよい。
また、電圧VR1は、生じる電界がEcを超える電圧に近づくと、圧電セラミック層21bに分極反転が起こり始めることがあるが、液体加圧室10の体積が大きくなる変位が生じる電圧であれば、非駆動部52に圧縮応力が加わるので、特に問題ない。再生波形を繰り返し加えることで、圧電セラミック層21bに分極反転がより進んだ状態になると、圧縮応力が小さくなるが、そのような場合、駆動部51を再分極してもよい。また、再生波形により非駆動部52の伸びが初期状態とほぼ同じ状態になったとしても、圧電セラミック層21bの一部に分極反転が生じていて分極が弱くなるなどのために、変位素子50の変位が初期状態に戻っていない場合にも駆動部51を再分極してもよい。
再生波形を加えるのは、液体吐出の一の駆動波形と次の駆動波形との間であればいつでもかまわない。例えば、液体吐出ヘッド2を使い続けて、印刷される画像の精度が低くなったり、吐出特性の評価により駆動劣化が生じていることが分かったり、使用している時間が所定の時間より長くなったりした際に、再生波形を加えて、駆動劣化を少なくしたり、事実上なくすことができる。また、記録媒体を切り替える際に行った、自動で一定周期毎に行うようにしてもよい。
なお、再生波形を加える時間は、再生の途中で吐出動作を行わせて、駆動劣化の状態を確認して、時間調整しながら行なえば、ほほ初期の吐出特性にすることができる。吐出動作をさせる以外に、あらかじめ初期の共通電極34と駆動電極35の間の容量を測っておき、容量が初期値と同じになるまで再生波形を加えてもよい。これは駆動部51の容量が非駆動部52から受ける応力により変化することを利用したもので、容量が初期値と同じであれば、駆動部51が非駆動部52から受ける応力もほぼ同じで、変位素子50の変位特性もほぼ同じになる。
再生波形は、記録装置の制御部100が加えるようにしてもよいし、記録装置以外に再生波形を加える再生装置を準備し、液体吐出ヘッド2を記録装置から外して、再生装置を用いて再生してもよい。
続いて、駆動劣化の再生効率をよりよくする再生波形について説明する。図9(a)は、本発明の使用方法における再生波形の一例で、第1の電圧変化前の電圧を、液体加圧室10の体積が電圧を加えられていない状態の体積よりも大きくなる電圧にするとともに、第1の電圧変化後の電圧を、共通電極34と駆動電極35との間の圧電セラミック層21bに生じる電界の絶対値がEc以下としている。
このような波形にすることにより、非駆動部52に加わる応力が常に圧縮応力になるため、駆動劣化の再生効率をよりよくすることができる。第1の電圧変化前の電圧は、非駆動部52に加わる応力が引っ張り応力にならない範囲で第1のパルス電圧の電圧差を大きくするため0Vにするのがよい。第1の電圧変化後の電圧は、分極反転が生じにくいように電界の絶対値がEc以下にするのが好ましい。また、電界がEcに達しなくともEcに近づくと圧電体の一部に分極反転が生じ始めるので、第1の電圧変化後の電圧は、生じる電界の絶対値がさらに0.9Ec以下、特に0.8Ecが好ましい。
図9(b)は、本発明の使用方法における再生波形の一例で、第1の電圧変化開始時の電圧および第1の電圧変化終了時の電圧を、いずれも圧電セラミック層21bに生じる電界の絶対値がEc以下となる電圧にするとともに、第2の電圧変化を、第2のパルス電圧を加えた後、電圧を保持しない電圧変化とするか、第2のパルス電圧を加えた後に電圧を保持する時間が、第1のパルス電圧を加えた後に電圧を保持する時間よりも短い電圧変化としている。図9(b)において、第2のパルス電圧を加えた後に電圧を保持する時間t2(秒、以下で単位を省略することがある)は、第1のパルス電圧を加えた後に電圧を保持する時間t1よりも短くしてあり、t2は0秒、すなわち電圧を保持しなくてもよい。
第1の電圧変化終了時の電圧は、分極反転が生じにくいように電界の絶対値がEc以下にするのが好ましい。また、電界がEcに達しなくともEcに近づくと圧電体の一部に分極反転が生じ始めるので、第1の電圧変化後の電圧は、生じる電界の絶対値がさらに0.9Ec以下、特に0.8Ec以下が好ましい。第1の電圧変化前開始前の電圧は、電圧が高い方が第1のパルス電圧の電圧差が大きくなるので、非駆動部52が圧縮されやすくなるのが、第2の電圧変化により非駆動部52引っ張られるため、圧電体の変位の応答が遅くならないよう電界の強度がEcを超えないことが好ましい。
このような波形にすることにより、非駆動部に加わる圧縮応力が加わっている相対時間を長くでき、駆動劣化の程度を小さくする効率がよくなる。
図9(c)は、本発明の使用方法における再生波形の一例で、第1の電圧変化開始時の電圧および第1の電圧変化終了時の電圧を、いずれも圧電セラミック層21bに生じる電界の絶対値がEc以下となる電圧にするとともに、第1の電圧変化開始時の電圧と第1の電圧変化終了時の電圧の平均が、液体加圧室10の体積が電圧を加えられていない状態の体積よりも大きくなる電圧にしている。これは直接電圧で言えば、第1の電圧変化終了時の電圧VR1の絶対値が、第1の電圧変化開始時の電圧VR2の絶対値よりも大きいということである。
第1の電圧変化終了時の電圧は、分極反転が生じにくいように電界の絶対値がEc以下にするのが好ましい。また、電界がEcに達しなくともEcに近づくと圧電体の一部に分極反転が生じ始めるので、第1の電圧変化後の電圧は、生じる電界の絶対値がさらに0.9Ec以下、特に0.8Ec以下が好ましい。第1の電圧変化前開始前の電圧は、電圧が高い方が第1のパルス電圧の電圧差が大きくなるので、非駆動部52が圧縮されやすくなるのが、第2の電圧変化により非駆動部52引っ張られるため、圧電体の変位の応答が遅くならないよう電界の強度がEcを超えないことが好ましい。
このような波形にすることにより、第2の電圧変化時に加わる引張り応力よりも、第1の電圧変化時に加わる圧縮応力の方が大きくなるため、駆動劣化の程度を小さくする効率がよくなる。
図9(b)および図9(c)で説明した再生波形を組み合わせると、より再生効率よくなる。
まず、再生波形による駆動劣化改善の試験を行う評価用の液体吐出ヘッドを作製した。評価用の液体吐出ヘッドの基本的な構造は図2〜5に示したものと同じであるが、液体加圧室10がプレート31まで開口しており、実際に液体を吐出することはできないが、プレート31側からレーザードップラー変位計により、変位素子50の変位が測定できるようにしたものである。
圧電セラミック層に用いる圧電材料をチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)とし、PZTを用いたスラリーを作成し、このスラリーから、成形方法としてロールコーター法を採用して、グリーンシートを作製した。
次いで、金型打ち抜きによって、100μm径の貫通孔をグリーンシートに形成した。
その後、Ag−Pd合金を含む導体ペーストを用いたスクリーン印刷法により、各グリーンシートの表面に、共通電極となる電極パターンを形成した。
また、Ag−Pd合金に対して、圧電体粉末をフィラー剤として30体積%添加してビア導体ペーストを作製し、これをスクリーン印刷にて、グリーンシートに形成した貫通孔の内部に充填し、ビア電極を形成した。
次いで、このグリーンシートを2層積層して、内部に共通電極及びビア電極を備えた積層成形体を作製した。その後、この積層成形体を1020℃の温度で焼成して圧電焼結体を作製した。得られた圧電焼結体は1層あたり約20μmであった。
この圧電焼結体の表面に、変位素子を構成する部分の共通電極に相対するように主成分Auを含む導体ペーストを用いたスクリーン印刷により、マトリックス状に駆動電極を形成し、しかる後に、800℃の熱処理によって駆動電極を形成して圧電アクチュエータユニットを作製した。
流路部材の上に、圧電アクチュエータユニットを、開口部にそれぞれの変位素子が位置するように接着して液体吐出ヘッドを作製し、さらに液体吐出ヘッドの動作を制御するドライバーICを含む制御部を接続し、記録装置に相当する試験装置を作製した。
なお、用いた圧電体の抗電界は1.34×10−6V/mであり、この電界が生じる共通電極と駆動電極との電位差は26.8Vであった。
得られた記録装置を用いて、まず駆動劣化を生じさせ、その再生の試験を行なった。まず、駆動波形を与えて、グラフテック社製のレーザードップラー変計を用いて、初期変位量A(nm)を測定した。次に、周波数20kHzで駆動波形を100億サイクル加えて、駆動劣化は生じさせた。駆動劣化後の変位量B(nm)を測定すると、劣化率(A−B)/Aは、約19%であった。
次に、駆動劣化の生じた液体吐出ヘッドに表1に示した再生波形(一定電圧を印荷するものも含む)を与えて、再生処理を行なった。表1において、電圧VR1、VR2、周波数と、VR1のデューティを示した。電圧VR1、VR2は、抗電界Ecを生じさせる電圧(26.8V)の何倍であるかを示した。VRの1デューティは、1周期分の再生波形の中で電圧VR1を保持した時間の割合である。
駆動波形は最長100時間与え、変位量が初期変位量Aの1%以内になった場合は再生処理ができたものとして、生成処理に要した時間を生成時間として表1に示した。再生時間が記載されていないものは、100時間で初期変位量Aの1%以内にならなかったものである。
なお、テストNo.25においては、再生処理中に分極反転が生じたことにより変位量の低下がみられたため、途中で再分極処理を行ないながら試験した。
本発明の使用方法である再生波形を加えたテストNo.7〜25においては、駆動劣化した液体吐出ヘッドの変位と特性を初期状態に復帰させることができた。
また、本発明の使用方法でない再生波形を加えたテストNo.1〜3では、再生処理前後で変位量の改善はまったくなかった。これは前述したように、単に一定電圧を加えて非駆動部を圧縮しても、圧縮する応力が小さいため、駆動劣化から再生する効果が事実上生じないことを意味する。
さらに、本発明の使用方法でない再生波形を加えたテストNo.4〜6では、再生効果はあり、劣化率は低減したもの、100時間後の劣化率は10%以上で、初期変位量には到達しなかった。