JP6164510B2 - リフレクタアレイ光学装置及びその作製方法 - Google Patents

リフレクタアレイ光学装置及びその作製方法 Download PDF

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Description

本発明は、被観察物の実像(実鏡映像)を観察者側の空間に結像させる光学装置及びその作製方法に関する。
空中に被観察物の実像(実鏡映像)を結像させて、それを観察者が見ることができるようにした表示装置が提案されている(特許文献1、参照)。
かかる表示装置は、被観察物の実像(実鏡映像)を観察者側の空間に結像させる実鏡映像結像光学系と、当該実鏡映像結像光学系の該観察者側とは反対側の空間に配置される該実像(実鏡映像)を形成するための被観察物とを備えている。かかる実鏡映像結像光学系は、被観察物の実像(実鏡映像)を当該実鏡映像結像光学系の対称面に対して対称位置に結像させることができる。
特許文献1は、実鏡映像結像光学系又は光学素子として、各々が互いに直交する2つの微小な鏡面(反射面)からなる複数の単位光学素子(各々を2面コーナーリフレクタと称する)の平面的集合体を提案している。特許文献1は、複数の2面コーナーリフレクタを1つの平面上にアレイ状にすなわち碁盤目状に整列配置した2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を開示している。2面コーナーリフレクタアレイ光学素子には、2面コーナーリフレクタとして、素子面を貫通する方向に想定される光学的な貫通穴の内壁を鏡面として利用するものや、透明基盤の表面から突出した透明な筒状体の内壁を鏡面として利用するものがある(特許文献2、参照)。なお、透明な筒状体は光学的な穴を筒状に突出させてその内部を透光材料で充填した角柱等のプリズムであるので、以下、透明な筒状体を単に突出部と称することとする。
2面コーナーリフレクタアレイ光学素子においては、複数の整列された2面コーナーリフレクタ各々の各鏡面が素子面にほぼ垂直に直立配置されているので、該素子面の一方側に配置した被観察物からの光線は、該素子面を通過する際に2面コーナーリフレクタにて2回反射されて、光線が屈曲して素子面を通過して被観察物のない該素子面の他方の主面側の空間に実像として結像する。すなわち、2面コーナーリフレクタアレイ光学素子は、被観察物が2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の素子面(対称面とも称する)に対して対称位置に存在するように、その実像を結像させることができる。
国際公開第2007−116639号公報 特開2011−191404号公報
特許文献1に記載された光学的な貫通穴の内壁を鏡面とした2面コーナーリフレクタ光学素子は電鋳工法を用いて作製される。また、特許文献2に記載された突出部の内壁を鏡面として利用する2面コーナーリフレクタ光学素子は金型を作製して樹脂成形法を用いて作製される。何れの作製方法においても、精密加工が必要であり、大きな面積の2面コーナーリフレクタ光学素子を作製することは非常に困難であり、せいぜい10cm□の大きさの板状の光学素子を作製することが限度である。
そこで、本発明は、2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を用いた大型の実鏡映像結像光学系であるリフレクタアレイ光学装置及びその作製方法を提供することを目的とする。
本発明の一方の主面側にある被観察物の実像を他方の主面側の空間に結像させるリフレクタアレイ光学装置の作製方法は、透明材料からなる基盤と、各々が前記基盤の主面に垂直で且つ互いに直交する少なくとも2つの直交側面及び前記基盤の主面に平行な上面を有する突出部であり且つ前記直交側面の内角の向きが揃うように前記基盤上に一体的に形成された複数の2面コーナーリフレクタと、からなる2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を少なくとも2枚形成する工程と、前記2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の各々の前記基盤の端面同士を接着剤で貼り合わせる工程と、貼り合わせた前記2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の前記複数の2面コーナーリフレクタが形成された前記基盤の主面の反対側の主面を研削し鏡面として前記基盤の厚さを貼り合せ時より薄くする研削工程と、を含むことを特徴とする。研削工程は少なくとも研磨、切削の一方で実行される。素子端面同士を貼り合わせる工程後に基盤の厚さを貼り合せ時より薄くする研削工程を実行することにより、素子端面繋ぎ合わせ面が見え難くい大面積の2面コーナーリフレクタ光学素子を実現できる。
本発明のリフレクタアレイ光学装置の作製方法において、前記貼り合わせる工程は、前記2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の各々の接着すべき前記基盤の端面に隣接する前記基盤の主面部分の前記複数の2面コーナーリフレクタをマスキング材で被覆する被覆工程と、前記接着すべき前記基盤の端面同士の間に前記接着剤を供給して、前記接着剤の一部分を前記基盤の端面同士の間から前記マスキング材の表面に押し出しながら前記2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を貼り合わせる工程と、を含むこととすることができる。前記マスキング材は、突出した複数の突出部(2面コーナーリフレクタ)を配置した部分に前記接着剤が入り込むことを防止する効果を奏する。
本発明のリフレクタアレイ光学装置の作製方法において、前記研削工程の前又は後に、前記接着剤の一部分とともに前記マスキング材を前記基盤の主面の前記複数の2面コーナーリフレクタから除去する。前記接着剤が複数の2面コーナーリフレクタの間に残存すると、作製後の2面コーナーリフレクタ内部を伝搬する光が2面コーナーリフレクタ表面で反射する条件が変化してしまうことになるので、前記マスキング材と後にマスキング材を除去することは当該反射条件変化を防ぐ効果がある。
本発明のリフレクタアレイ光学装置の作製方法の前記被覆工程において、前記複数の2面コーナーリフレクタのすべてを前記マスキング材で被覆し、前記研削工程において、前記基盤の厚さを零まで研削して前記基盤を除去し、前記複数の2面コーナーリフレクタのすべてと前記マスキング材を露出させ、前記研削工程の後に、前記複数の2面コーナーリフレクタのすべてと前記マスキング材の露出面に透明基盤を接着する接着工程と、前記接着工程後に、前記接着剤の一部分とともに前記マスキング材を前記透明基盤上の前記複数の2面コーナーリフレクタから除去する除去工程と、を更に実行する。ここでは、貼り合せた複数の2面コーナーリフレクタ光学素子より大きな面積を有した繋ぎ合わせが無い別の透明基盤を用意し、先の基盤を完全に除去した後に、当該別の透明基盤上に2面コーナーリフレクタを接着して再配置することによって、当該別の透明基盤とその上に接着された複数の2面コーナーリフレクタ(直交側面を有し、その内角の向きが一定方向に揃った複数の突出部)を有するリフレクタアレイ光学装置が作成できる。すなわち、上記のマスキング材の被覆工程、基盤を除去する研削工程、透明基盤の接着工程、及びマスキング材の除去工程を実行することにより、繋ぎ目の元となる2面コーナーリフレクタ光学素子基板部分がなくなり、繋ぎ合わせがない大面積の2面コーナーリフレクタ光学装置が実現できる。また、前記複数の2面コーナーリフレクタが形成された前記透明基盤の主面の反対側の主面が鏡面である。
本発明のリフレクタアレイ光学装置の作製方法において、前記貼り合わせる工程は、前記基盤の端面同士の間に前記接着剤を供給する前に前記複数の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の前記接着すべき前記基盤の端面同士を接触させ、前記接触した前記基盤の端面間を掛け渡す位置関係で粘着テープを前記基盤の主面部分に貼付して繋げる工程を含み、前記2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を貼り合わせる前に前記粘着テープで繋げられた部分を支点(回転中心)として、隣り合う前記基盤の該端面同士を開いた状態となし、該端面同士の間に前記接着剤を供給した後、前記基盤の該端面同士を閉じて貼り合わせることとすることができる。前記2面コーナーリフレクタ光学素子の2面コーナーリフレクタ部分が当該素子の端面近傍まで形成されていることは、継ぎ目が目立たなくなるので好ましい。
本発明のリフレクタアレイ光学装置の作製方法において、前記貼り合わせる工程は、前記基盤の端面同士の間に前記接着剤を供給する前に、平板の同一平面上に前記複数の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子をそれらの前記接着すべき前記基盤の端面同士が向かい合うように配置して、前記接着すべき前記基盤の端面同士の間に前記接着剤を供給した後、前記基盤の該端面同士を互いに向けて突き合わせて貼り合わせることとすることができる。
本発明のリフレクタアレイ光学装置の作製方法において、前記貼り合わせる工程は、透明平板の同一平面上に接着剤を供給して、前記接着剤が供給された前記透明平板上に前記2面コーナーリフレクタアレイ光学素子をそれらの前記接着すべき前記基盤の端面同士が向かい合うように配置して、前記接着すべき前記基盤の端面同士の間に前記接着剤を供給して、前記基盤の該端面同士を互いに向けて突き合わせて、前記透明平板と前記2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を貼り合わせることとすることができる。
前記粘着テープ又は前記平板若しくは前記透明平板を用いた前記貼り合わせ工程によれば、隣り合う2面コーナーリフレクタ光学素子の基盤の突出部側と反対側の主面がそれぞれ揃うような(段差が生じないような)位置関係で貼り合わせることができる。隣り合う基盤の主面に段差が生じる場合、貼り合わせ部分で実鏡映像に歪が生じるけれども、前記貼り合わせ工程によれば当該実鏡映像歪が防止できる。
本発明のリフレクタアレイ光学装置の作製方法において、前記マスキング材が水溶性のマスキング材からなる。本発明のリフレクタアレイ光学装置の作製方法において、前記マスキング材を除去する工程において水中の超音波洗浄を施す。超音波洗浄はマスキング材の除去に優れ好適である。
本発明による一方の主面側にある被観察物の実像を他方の主面側の空間に結像させるリフレクタアレイ光学装置は、同一平面上に並置された複数枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を有し、前記複数枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の各々は、透明材料からなる基盤と、前記基盤上に形成された複数の2面コーナーリフレクタと、からなり、前記複数の2面コーナーリフレクタの各々は、前記基盤の主面に垂直で且つ互いに直交する少なくとも2つの直交側面及び前記基盤の主面に平行な上面を有する突出部であり且つ前記直交側面の内角の向きが揃うように前記基盤上に形成され、前記複数枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子は、前記複数の2面コーナーリフレクタの前記直交側面の交線が前記基盤の法線に平行となるように、前記基盤の端面同士にて貼り合わされ、前記複数の2面コーナーリフレクタが形成された前記基盤の主面の反対側の主面が鏡面処理されていることを特徴とする。すなわち、本発明のリフレクタアレイ光学装置は、タイリング(平面充填)された複数の2面コーナーリフレクタ光学素子からなる大面積の2面コーナーリフレクタ光学素子集合体である。
本発明のリフレクタアレイ光学装置においては、前記複数の2面コーナーリフレクタが同一ピッチでマトリクス状に整列されており、前記複数枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の隣り合うもの同士は、前記複数の2面コーナーリフレクタの前記直交側面同士が平行に揃うように配置されていてもよい。
本発明のリフレクタアレイ光学装置においては、前記複数枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の各々は前記基盤から突出する角柱形状突出部であってもよい。
本発明のリフレクタアレイ光学装置においては、前記角柱形状突出部は、前記直交側面の交線に対向する側に前記基盤の法線から傾斜する側面を有し、前記上面の面積より大なる面積を有し且つ前記基盤と接合する底面を有することとすることができる。すなわち、2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の各々は、透明材料から一体成形された基盤の表面から突出した角錐台を複数有し、それぞれの該角錐台の4つある側面のうちの直交する2面が基盤と垂直な平面(2面コーナーリフレクタ)として形成され、且つ、前記2面以外の面が、角錐台の基盤面側の平面(底面)より、基盤側とは反対側の平面(上面)の方が小さくなるような傾斜をつけた平面として形成された構造を有する。このリフレクタアレイ光学装置においては、前記基盤の法線から傾斜する側面の傾斜角度が5度以上25度以下であることが好ましい。この傾斜角度は5度以上であれば、いわゆる「抜きテーパー」として働くため、金型からの2面コーナーリフレクタ光学素子成形品の取り外しを容易にすることができる。スタンパからの2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の取り外しを考えると、この傾斜角度は大きい方が良いが、大き過ぎると2面コーナーリフレクタで反射した光の出射面である上記角錐台の上面の面積が小さくなることにより被観察物の実像(実鏡映像)が暗くなってしまう。また、上記上面面積を確保した場合には上記角錐台の底面の面積が大きくなり単位面積当りの2面コーナーリフレクタの数が減少してしまうため、やはり被観察物の実像(実鏡映像)が暗くなってしまう。これら相反する現象に対して様々な傾斜角度のスタンパを用いて成形実験を行った結果、上記傾斜角度は5度以上25度以下にすることが好適である。上記角錐台において、2面コーナーリフレクタを形成する2面以外の側面(上面と底面除く)は2面存在することになり、その両面に上記傾斜を付けることになるが、それら両面の傾斜角度は等しくても良いし、等しくなくても良い。前記2面コーナーリフレクタアレイ光学素子は樹脂成形法により作製されていることが好ましい。
本発明のリフレクタアレイ光学装置の作製方法によれば、2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の繋ぎ合わせ面が見え難くなり、被観察物の明るい実像(実鏡映像)を観察者側の空間に結像させる大型のリフレクタアレイ光学装置を実現できる。
本発明の実施例のリフレクタアレイ光学装置の構成例を概念的に示す概略斜視図である。 図1のリフレクタアレイ光学装置の動作を説明する概略斜視図である。 本発明の実施例のリフレクタアレイ光学装置の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を模式的に示す概略部分平面図である。 図3の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の2面コーナーリフレクタを模式的に示す概略部分切欠斜視図である。 本発明の更なる実施例のリフレクタアレイ光学装置の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を模式的に示す概略部分平面図である。 図5の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の2面コーナーリフレクタを模式的に示す概略部分切欠斜視図である。 図6のA−A断面における断面図(a)及びB−B断面における断面図(b)である。 本発明の実施例にかかる2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の角錐台を模式的に示す斜視図である。 本発明の実施例のリフレクタアレイ光学装置の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子のための2面コーナーリフレクタアレイ光学素子成形品を概念的に示す平面図である。 図9の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子成形品から切り出された2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を概念的に示す概略平面図である。 本発明の実施例のリフレクタアレイ光学装置の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子のための2面コーナーリフレクタアレイ光学素子成形品を概念的に示す平面図である。 図11の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子成形品から切り出された2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を概念的に示す概略平面図である。 本発明の他の実施例の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を概念的に示す概略平面図である。 本発明の実施例のリフレクタアレイ光学装置作製方法における2枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を概念的に示す概略斜視図である。 本発明の実施例にかかる4枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を貼り合わせたリフレクタアレイ光学装置の概念的に示す概略斜視図である。 本発明の他の実施例のリフレクタアレイ光学装置作製方法における2枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を概念的に示す概略斜視図である。 本発明の他の実施例にかかるリフレクタアレイ光学装置を概念的に示す概略斜視図である。 本発明のリフレクタアレイ光学装置作製方法における2枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を貼り合わせる工程の手順を説明するための2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を概念的に示す概略斜視図である。
以下に、本発明の実施例のリフレクタアレイ光学装置について、図面を用いて説明する。
図1は、実施例のリフレクタアレイ光学装置3の構成の一例を模式的に示す斜視図である。このリフレクタアレイ光学装置3は、同一の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6,7,8,9(4枚の小型パネル)が一平面上に互いに接して並行配置されそれらの端面同士が接合されて、全体で1枚の大型パネルとして構成されている。また、4枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6,7,8,9の各々には、複数の2面コーナーリフレクタ61が同一平面上に存在するように並設されている。2面コーナーリフレクタ61の各々は2つの相互に直交する鏡面61a,61bから構成されている。多数の2面コーナーリフレクタ61はアレイ状にすなわち碁盤目状に整列配置されている。2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6,7,8,9は複数の2面コーナーリフレクタ61の集合アレイ領域を形成するように貼り合わされている。図1に示すように、4枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6,7,8,9は、すべての2面コーナーリフレクタ61の鏡面61a,61bの交線CLがすべての2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の主面の法線に平行となるように、2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6,7,8,9の基盤の端面60a同士にて貼り合わされている。
図2に示すように、リフレクタアレイ光学装置3は、その一方の主面側に被観察物4が配置された場合、被観察物の実像5(実鏡映像)を装置の他方側の空間に結像させる。すなわち、リフレクタアレイ光学装置3は、その素子面6Sを対称面とする面対称位置に被観察物4の実鏡映像5を結像させることができる。リフレクタアレイ光学装置3の素子面6Sは2面コーナーリフレクタ61を構成するそれぞれ2つの鏡面61a,61bに対してほぼ垂直な仮想的な平面である。なお、2面コーナーリフレクタ61はリフレクタアレイ光学装置3の全体の大きさ(数十cm〜数mオーダ)と比べて非常に微小(μmオーダ)であるので、図1及び図2では2面コーナーリフレクタ61の集合全体をグレーで表し、その内角の向きをV字形状で概念的に表してある。
図3は4枚の小型パネルの1つの例の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の一部を具体的に示す部分平面図である。2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6は、碁盤目状に配置された複数の直方体の突出部40とこれら突出部を保持する基盤60とからなり、突出部40と基盤60とは透明材料から一体的に成形されて構成されている。この2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の表面には、それぞれが同一な角柱形状の複数の直方体の突出部40が整列されて設けられている。2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の裏面は鏡面処理された平坦鏡面である。
図4は図3の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の一部(4×4の直方体の突出部40)の斜視図を示す。突出した突出部40の4つの側面が基盤60の主面に対して垂直面となっている。直方体の突出部40各々の隣接する2つの直交側面の内壁面61a,61bが2面コーナーリフレクタ61である。基盤60の側から入射し直方体の突出部40の内壁面61a,61bへ向かう光線は内壁面61a,61b(鏡面)で2回反射され、直方体の突出部40の上面から射出される。
2面コーナーリフレクタ光学素子の作製方法としては、金型を用いたアクリル等の樹脂の射出成形法及び熱プレス成形法がある。スタンパ等の金型はナノ加工により金属製マスター板に突出部(直方体、立方体)に対応した形状を作製してから電鋳反転工法により作製できる。他の2面コーナーリフレクタ光学素子の作製方法として、例えば、直接X線リソグラフィ法等を用いることにより、透明樹脂基盤に直接、4面垂直側壁を持った直方体や立方体の複数を作製することができる。
さらにまた、図5は更なる他の実施例の4枚の小型パネルの1つの2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の一部の平面図を示す。図6は図5の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の一部(4×4の角錐台の突出部51)の斜視図を示す。2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6は、透明材料からなる基盤60とその上に一体的に碁盤目状に成形された複数の角錐台の突出部51とからなる。2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の表面には、それぞれが同一な角柱形状の複数の角錐台の突出部51が整列されて設けられている。角錐台の突出部51の4つの内側面の内の2つが基盤60の主面に対して垂直面となり、他の2面が基盤60の法線に対して傾斜したテーパー面となっている。角錐台の突出部51のうち隣接して直交する2つの内壁面61a,61bが2面コーナーリフレクタ61である。成形品表面に作製する凸形状突出部にテーパー面いわゆる「抜きテーパー」を付けることにより、スタンパ等の金型から成形品である2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を取り外し易くすることができる。
図6に示すように、基盤60の側から入射し角錐台の突出部51の内壁面61a,61bへ向かう光線は内壁面61a,61bで2回反射され、角錐台の突出部51の上面から射出される。
角錐台形状の突出部51を有する一方の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6について詳述する。図7に図6のA−A断面及びB−B断面における拡大部分断面図を示す。図8は2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の1つの角錐台の突出部51を模式的に示す斜視図を示す。
図6に示す角錐台の突出部51の各々には2面コーナーリフレクタ61として2つの直交する側面(鏡面61a,61b)が形成され、2面コーナーリフレクタを形成する上面と底面を除く2鏡面以外の側面62a,62bが基盤60の主面の法線から一定の角度(傾斜面)を持っている。図6において側面62aは角錐台の突出部51の奥側で見えていない。図7に記載した角錐台の突出部51の寸法H、L、D及び角度θの値は、高さH=170μm、正方形上面一辺L=150μm、間隔D=10μm、テーパー角度θ=108°である。角錐台の突出部51は樹脂成形時の抜きテーパーを考慮した傾斜面(基盤に垂直な面からの角度18度)を持つが、これは代表値であり、本発明はこれに限定されるものではない。
図8に示すように、角錐台の突出部51は基盤60と一体となる底面52とその面積より小なる面積の上面53を有する。角錐台の突出部51は2面コーナーリフレクタの直交側面61a,61bを含む立方体形状部Cと、立方体形状部Cと一体となった2面コーナーリフレクタ以外の側面62a,62bを平面として含むテーパー部Tと、からなる。角錐台突出部51は、その4つある側面61a,61b,62a,62bのうちの直交する2面61a,61bが基盤60と垂直な平面(2面コーナーリフレクタ61)として形成され、且つ、当該2面以外の側面62a,62bが、角錐台突出部51の基盤60の側の平面(底面)から基盤側とは反対側の平面(上面)の方が小さくなるような傾斜をつけた平面として形成された構造を有する。樹脂成形法又は熱プレス成形によれば、薄い平板状の基盤60の上に、平面視でほぼ角錐台(例えば正方形底面)の突出部51(一辺が例えば50〜200μm)の多数を離型性よく形成できる。基盤60の法線から傾斜する側面62a,62bの傾斜角度が5度以上25度以下であることが好ましい。この傾斜角度は5度以上であれば、樹脂成形法のいわゆる「抜きテーパー」として働くため、金型からの2面コーナーリフレクタ光学素子6の成形品の取り外しを容易にすることができる。スタンパからの2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の取り外しを考えると、この傾斜角度は大きい方が良いが、大き過ぎると2面コーナーリフレクタ61で反射した光の出射面である角錐台突出部51の上面の面積が小さくなることにより被観察物の実像(実鏡映像)が暗くなってしまう。また、上記上面面積を確保した場合には角錐台突出部51の底面の面積が大きくなり単位面積当りの2面コーナーリフレクタ61の数が減少してしまうため、やはり被観察物の実像(実鏡映像)が暗くなってしまう。これら相反する現象に対して様々な傾斜角度のスタンパを用いて成形実験を行った結果、上記傾斜角度は5度以上25度以下にすることが好適である。角錐台突出部51において、2面コーナーリフレクタ61を形成する2面以外の側面(上面と底面除く)は2面存在することになり、その両面に上記傾斜を付けることになるが、それら両面の傾斜角度は等しくても良いし、等しくなくても良い。
図4及び図6に示すように、2面コーナーリフレクタ光学素子6のいずれにおいても、各2面コーナーリフレクタ61の2つの直交側面61a,61bの交線CLは基盤60の主面に直交する。各2面コーナーリフレクタ61は、基盤60の上において直交側面61a,61bがなす内角が全て同じ向きとなるように、規則的な格子点上に整列させて形成されている。すなわち、2面コーナーリフレクタ61のすべては、基盤60の主面に垂直で且つ直交側面61a,61bの内角の向きが一定方向に揃うように、同一ピッチでマトリクス状に整列されて基盤60に一体的に形成されている。例えば、矩形の基盤60に同一の複数の矩形の2面コーナーリフレクタ61が矩形となるように配列されている。2面コーナーリフレクタ61は光学的には必ずしも規則的に整列させる必要はないが、2面コーナーリフレクタ光学素子を作製する上では規則的に配列させた方が好ましい。
図1に示すように、4枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6,7,8,9は、すべての2面コーナーリフレクタ61の直交側面61a,61bの交線CL(図4及び図6)が基盤60の法線に平行となるように、基盤60の端面60a同士にて貼り合わされている。2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の隣り合うもの同士は、複数の2面コーナーリフレクタ61の直交側面61a同士と直交側面61b同士がそれぞれ平行に揃うように配置され、貼り合わされている。複数枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の隣り合うもの同士は、複数の2面コーナーリフレクタ61の直交側面61a,61bの内角の向きが揃うように配置されているので、明るい被観察物の実像を映す大型のリフレクタアレイ光学装置3が得られる。
[第1のリフレクタアレイ光学装置作製方法]
まず、貼り合わせる前の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の予備処理について説明する。
図9に2面コーナーリフレクタアレイ光学素子用の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子成形品を示す。樹脂成形法の製造過程で金型から抜き取る目的で、2面コーナーリフレクタアレイ光学素子成形品Mは、基盤60の主面に複数の2面コーナーリフレクタ61が一体成形された2面コーナーリフレクタ61のアレイ領域Maの周辺に縁部PRが設けられてある。縁部PRは貼り合わせに不要なのでアクリルカッター等の切断手段を用いて周囲の縁部PRをアレイ領域Ma境界近傍を境に切断(破線が切断線を示す)してアレイ領域Maから矩形形状の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6を得る(図10)。この2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6は、図10に示すように、2面コーナーリフレクタ61の直交側面61a,61bに平行な端面60aを有する。
また、図11に示すように、所望の形状の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6を得るために周囲の縁部PRとアレイ領域Maの一部を切断する(破線が切断線を示す)こともできる。例えば、2面コーナーリフレクタ61内角の二等分線(45°)と二等分線に垂直な線で切断してアレイ領域Maから矩形形状の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6を得る((図12))。得られた矩形の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の基盤60は、図12に示すように、直交側面61a,61bに対して45度の角度で交差する平坦な端面60aを有する。
またさらに、一体成形された2面コーナーリフレクタアレイ光学素子成形品からは、図13に示すように、基盤60において直交側面61a,61bの一方の側面に対して零度を超え45度未満の角度φで交差する平坦な端面60aを有する矩形形状の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6を切り出すこともできる。なお、図9乃至図13では2面コーナーリフレクタ61の集合全体をグレーで表し、2面コーナーリフレクタ61の内角の向きをV字形状で概念的に表してある。
ここで、縁部PR等を切断したままでは2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の周縁の切断面が粗面として残る。この粗面の切断面を研磨剤で磨き、鏡面としておく必要がある。また、2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の周縁の切断面が波打った曲面にならないように平面となるように研磨剤で研磨することが好ましい。研磨剤としては市販のプラスチッククリーナー(例えば、株式会社ソフト99コーポーレーション製)を用いることができる。研磨剤を布又はベンコットに含ませてしばらく研磨し、最後に2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の断面を水洗する。さらに2面コーナーリフレクタ61のアレイ領域Maに研磨剤が入り込んでしまった場合には超音波洗浄器により2面コーナーリフレクタ61のアレイ領域Maに付着した研磨剤を除去する。
次に、図14を参照して、2枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6を貼り合わせてリフレクタアレイ光学装置を作製する手順を説明する。なお、図14において2面コーナーリフレクタの方向を示唆するために2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の4×4の角錐台の突出部51を強調して概念的に描いているもので、その数や大きさを正確に示すものではない。
次に、図14(a)に示すように、2枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の各々の接着すべき基盤60の端面60aに隣接する基盤60の主面部分60b上の複数の角錐台状突出部51(2面コーナーリフレクタ61)を水溶性のマスキング材63で被覆する。
マスキング材63は光学素子の角錐台状突出部51の配置部分全体に渡って覆って設けてもよいし、端面60a近傍の一部(例えば基盤断面付近から2cm程度)のみを覆って設けてもよい。後の工程を考えて5mm〜10mm程度と厚めに形成することもできる。角錐台状突出部51同士の間隙部分に接着剤が入り込んで残存した場合、作製されたリフレクタアレイ光学装置の角錐台状突出部51内部を伝搬する光が角錐台状突出部51表面で反射する際に、反射条件が変化してしまう。これをマスキング材63は防ぐ効果がある。
マスキング材63として酢酸ビニル樹脂を水に乳化させた接着剤を使うと密着性が強すぎて、角錐台状突出部51同士の間に浸透したマスキング材自体が除去できなくなる恐れがある。逆に密着力が弱すぎるゴム系マスキング材では被覆が上手くいかず端面60a同士の接着に入る前にゴム系マスキング材が基盤の端から剥がれる恐れがある。また、アクリル樹脂は耐薬品性が弱いのでエタノール等で洗浄した場合、アクリル樹脂製の基盤と角錐台状突出部にクラックが入ることがある。そこで、本実施例ではマスキング材63として基盤への密着性がある水溶性薬剤、GSIクレオス製マスキングゾル(登録商標)を使用している。これにより、2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の端面60a同士を接着後、水につけて超音波洗浄すればマスキング材を容易に剥すことができる。マスキング材63は、接着剤に対しての耐溶剤性と2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6に対しての非溶解性とを有する成膜型剥離性塗料である。なお、接着剤は光学接着剤である必要はなく、マスキング材63に対しても接着力を有するものであればよい。
次に、図14(b)に示すように、2枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の接着すべき基盤の端面60a同士を接触させ、接着した基盤の端面60a間を掛け渡す位置関係で粘着テープ64を基盤60の主面部分(突出部のある主面部分60bの反対側)に貼付して繋げる。ここで、2枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の2面コーナーリフレクタ61のすべてが基盤60の主面に垂直で且つ直交側面61a,61bの内角の向きが一定方向に揃うように、両素子は位置合わせされ接触するようになされる。
粘着テープ64(例えばセロテープ(登録商標))を角錐台状突出部51のない基盤平面側に貼る。この粘着テープ64で2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6(基盤)の厚み方向の段差を無くすことが継ぎ目を目立たなくする上で非常に重要である。粘着テープ64は、しわになったり、粘着テープ64中に気泡が入らないように貼る。この粘着テープ64は基盤平面側に液状の接着剤が浸透していくことを防ぐ効果がある。
次に、図14(c)に示すように、2枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6を貼り合わせる前に粘着テープ64で繋げられた部分を支点(回転中心)として、隣り合う基盤の端面60a同士を開いた状態となし、該端面60a同士の間に液体状態の光学接着剤70を供給する。ここでは、粘着テープ64を貼った方と反対側の角錐台状突出部51が形成された側をVの字のように開き、その間に、先細ノズル等で何点かに分け液状の光学接着剤70を供給する。光学接着剤70は基盤60を構成するアクリル等の樹脂の屈折率に略等しい屈折率を有する紫外線硬化樹脂等を使用する。これにより、貼り合わせ後の接着層を通過する光の量を確保でき、さらに接着層の境界面での光の反射を防止できて、継ぎ目を目立たなくする効果が得られる。
図14(d)に示すように、光学接着剤70の一部分を、基盤の端面60aとマスキング材63同士の間隙からマスキング材63の表面に押し出しながら2枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の基盤の端面同士を閉じて貼り合わせる。ここで、粘着テープ64で予め保持されているので、貼り合わせる2面コーナーリフレクタ光学素子6の基盤60の突出部側と反対側の主面が揃い、段差が生じないような位置関係で貼り合わせることができる。2枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の両側から互いに向けて強く押し込み、そのままの状態で紫外線を照射し光学接着剤70を硬化させる。不要な光学接着剤70は基盤60の角錐台状突出部51側にはみ出してくるがマスキング材63で角錐台状突出部51を保護してあるため問題にはならない。
次に、貼り合わされた2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6から粘着テープ64を剥がし、その後、研削工程として、基盤60の突出部を有する主面と反対側の主面(平面側)を研磨することにより基盤60の厚さを貼り合せ時より薄くする(図14(e))。研削工程には、研磨剤を用いて基盤60の自転と公転を組み合わせた通常の研磨手法や切削手法が利用できる。研削工程により光学接着剤70のはみ出しや未充填部分を除去することができるので、少なくとも基盤60片側の繋ぎ目が見え難い大面積のリフレクタアレイ光学装置が作製できることになる。
次に、光学接着剤70の一部分とともにマスキング材63を基盤60の主面から除去する(図14(f))。これにより、直交側面61a,61bの内角の向きが一定方向に揃った複数の角錐台突出部51を有する同一の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の2枚が一平面上に互いに接して並行配置され接合したリフレクタアレイ光学装置3が得られる。なお、当該マスキング材除去工程と研削工程は逆でもよい、つまり、基盤60を研磨後にマスキング材63を剥がしてもよい。
以上のようなマスキング材を用いた貼り合せを行えば、突出部側若しくは粘着テープ側における光学接着剤のはみ出しを最小限に抑えることにできる。また、実験の結果、マスキング材63との間や粘着デープ64との間の僅かな隙間に光学接着剤70の微量がみ出したり、逆に、光学接着剤の浸透が不十分で気泡が残ってしまう不具合を発見した。そして、それらが起点となり繋ぎ目が見え易くなることが分かった。本実施例は、研削工程の研磨または切削などの研削方法により、基盤60を除去してこれらの起点を除去してしまおうとするものである。2面コーナーリフレクタが突出部によって設けられているタイプで基盤の厚みが3mm以上であるような厚い場合、接着端面を目立たせないようにするため基盤接合後に平面裏面を研磨して薄くすることが有効である。さらに、研磨することで接合時に接合断面よりはみ出た接着剤を除去できるために、はみ出た接着剤のレンズ効果による像の乱れを排除することができる。
さらに、図14(d)に示すように、光学接着剤70を接着に必要な量よりやや多めに塗ることにより、2枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6をそれらの両側から押し込んだときにマスキング材63の上に光学接着剤70が盛り上がる。これにより、超音波洗浄の際にマスキング材63が溶けて硬化した光学接着剤70がやや浮き上がるので、余分な硬化した光学接着剤70を剥がすことが容易になり、基盤の端面同士の間にのみ光学接着剤が充填される。このようにマスキング材の上に光学接着剤70の接着部を盛り上げておいた方が不要な接着剤を剥がす上で有利である。また、余分な硬化接着剤樹脂が除去されるので、当該余分な硬化接着剤樹脂のレンズ効果による実鏡映像の精鋭度低下を防止できて好ましい。また、2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の接着面はできる限り平坦な鏡面状に磨いた方が良いということが判った。端面60aに凹凸があるままだと屈折率マッチングする紫外線接着剤を用いても接着断面に白い濁りが見えて奇麗にはならない。
図14に示す工程を繰り返し、貼り合わせた2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の組を複数作製して、貼り合わせた組の2つ同士を図14に示す工程を繰り返すことで、図15(a)に示すように、複数の角錐台突出部51を有する同一の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6,7,8,9(4枚の小型パネル)が一平面上に隙間なく互いに接して並行配置され接合したリフレクタアレイ光学装置3が得られる。なお、図14(e)に示す研削工程は、2枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の貼り合わせ時ではなく、マスキング材を残したまま図15(a)に示すような複数の素子貼り合わせた時に実行することもできる。
図3に示すような2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6を用いた場合、図14に示す工程を繰り返し、貼り合わせた2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の組を複数作製して、貼り合わせた組の2つ同士を図14に示す工程を繰り返すことで、図15(b)に示すように、複数の直方体突出部40を有する同一の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6,7,8,9(4枚の小型パネル)が一平面上に互いに接して並行配置され接合したリフレクタアレイ光学装置3が得られる。
[第2のリフレクタアレイ光学装置作製方法]
まず、図16(a)に示すように、2枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の各々の接着すべき基盤60の端面60aに隣接する基盤60の主面部分の複数の角錐台状突出部51(2面コーナーリフレクタ61)のすべてを水溶性のマスキング材63で被覆する。マスキング材63は光学素子の角錐台状突出部51の配置部分全体に渡って覆って設け、後の工程を考えて5mm〜10mm程度と厚めに形成する。マスキング材63は複数の突出部51を支持する補助基板として機能する。
次に、図16(b)に示すように、2面コーナーリフレクタ光学素子を光学接着剤70で貼り合せる。貼り合せ時には、第1の作製方法の粘着テープ64による方法を用いることもできる。
続いて、図16(c)に示すように基盤60の突出部を有する主面と反対側の主面(平面側)を研磨する。研磨により図16(d)に示すように基盤が除去される。つまり、複数の2面コーナーリフレクタ各々の一部(突出部の底面)とマスキング材63を露出させる。
予め、貼り合せ後の複数の2面コーナーリフレクタ光学素子の面積と同等、若しくは、より大きな面積を有する透明平板である別の透明基盤66を用意しておく。
次に、図16(e)に示すようにこの透明基盤66上に複数の2面コーナーリフレクタ(突出部)を光学接着剤(図示せず)により再配置する。つまり、研削工程において、前記基盤の厚さを零まで研削して基盤を除去し、研削工程後の2面コーナーリフレクタ各々の一部とマスキング材の露出面を、透明基盤66主面上に光学接着剤で接着する。なお、透明基盤66主面は鏡面処理された鏡面であることが好ましい。
最後に、図16(f)に示すように第1の作製方法と同様に光学接着剤70と共にマスキング材63を除去する。これにより、透明基盤66とその上に接着された複数の2面コーナーリフレクタ(直交側面61a,61bの内角の向きが一定方向に揃った複数の角錐台突出部51)を有するリフレクタアレイ光学装置3が得られる。透明基盤66の貼り合わせ工程でも光学接着剤を用いているため、マスキング材63の一部が透明基盤66上に残ってしまう可能性があるが、この部分を通る光は結像には関係ないので問題ない。
この実施例に示すように貼り合せに用いた基盤60を完全に除去してしまえば、繋ぎ目の問題はなくなり、高性能の大型リフレクタアレイ光学装置を得ることができる。
例えば、図17(a)に示すような、複数の角錐台状突出部51(2面コーナーリフレクタ61)を有する透明基盤66を有するリフレクタアレイ光学装置3が作製され得る。この場合、4枚の同一の矩形2面コーナーリフレクタアレイ光学素子(図示せず)を合わせた面積より大なる透明基盤66を用意して、複数の角錐台突出部上にマスキング材を残したまま4枚の同一の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を合わせて、それら2面コーナーリフレクタの反対側の基盤の主面を研削して除去し、露出した複数の角錐台突出部の底面に透明基盤66に光学接着剤で接着して作製され得る。
同様に、図3に示すような2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6を用いて、図17(b)に示すような、複数の角錐台状突出部51(2面コーナーリフレクタ61)を有する透明基盤66を有するリフレクタアレイ光学装置3が作製され得る。
[貼り合わせ工程の変形例]
まず、上記の第1の作製方法と同様な基盤60の端面60aが鏡面状に磨かれた2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6を用意する。そして、図18(a)に示すように、上記第1の作製方法と同様に2枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の各々の接着すべき基盤60の端面60aに隣接する基盤60の主面部分の複数の2面コーナーリフレクタ61をマスキング材63で被覆する。さらに、基盤60の反対側の平面裏面をマスキング材63aで被覆する。
次に、定盤となる平坦な平板65と、平板65に対して滑り易く同一の厚さを有する平行平板からなるスライダ板Sと、を用意する。そして、図18(b)に示すように、平板65の同一平面上に、それぞれスライダ板Sを介して2枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6がそれらの接着すべき基盤の端面60a同士が向かい合い、スライダ板Sの端面からの端面60a同士が突き出るように、2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6を配置する。かかる配置の前又は後において、接着すべき基盤の端面60aに光学接着剤70を供給し付着させて置く。
次に、図18(c)に示すように、基盤の端面60a同士を互いに向けて突き合わせて貼り合わせる。スライダ板Sの端面同士は接触させず、間隙を保つようにする。ここで、貼り合わせる2面コーナーリフレクタ光学素子6の基盤60の突出部側と反対側の主面が揃うような(段差が生じないような)位置関係で貼り合わせ、2枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の両側から互いに向けて強く押し込み、そのままの状態で紫外線を照射し光学接着剤70を硬化させる。不要な光学接着剤70は基盤60の両面側にはみ出してくるがマスキング材63で角錐台状突出部51を保護して基盤60の反対側の平面裏面をもマスキング材63aで被覆してあるため問題にはならない。
次に、平板65上のスライダ板Sから貼り合わされた2面コーナーリフレクタ光学素子6を取り上げる(図18(d))。
その後、上記の第1のリフレクタアレイ光学装置作製方法と同様に、図14(e)に示すように研削工程として、貼り合わされた2面コーナーリフレクタ光学素子の基盤60の突出部を有する主面と反対側の主面(平面側)を研磨することにより基盤60の厚さを貼り合せ時より薄くした後、図14(f)に示すようにマスキング材除去工程を実行して、リフレクタアレイ光学装置が得られる。
或いは、図18(d)に示すように貼り合わされた2面コーナーリフレクタ光学素子6を平板65上のスライダ板Sから取り上げた後、上記の第2のリフレクタアレイ光学装置作製方法と同様に、図16(c)に示すように基盤60の突出部を有する主面と反対側の主面(平面側)を研磨して、図16(d)に示すように基盤を完全に除去し、複数の2面コーナーリフレクタ各々の一部(突出部の底面)とマスキング材63を露出させる。そして、図16(e)に示すように、予め用意した透明平板である別の透明基盤66と研削工程の後の2面コーナーリフレクタ各々の一部とマスキング材の露出面とを光学接着剤で接着する。そして、図16(f)に示すようにマスキング材除去工程を実行して、リフレクタアレイ光学装置が得られる。これにより、繋ぎ目のない透明基盤66とその上に接着された複数の2面コーナーリフレクタ(各々の直交側面61a,61bの内角の向きが一定方向に揃い該直交側面の交線が透明基盤66の法線に平行となる複数の角錐台突出部51)を有するリフレクタアレイ光学装置3が得られる。
上記のいずれの実施例においては、面コーナーリフレクタアレイ光学素子6同士を接着させる端面60aは、2面コーナーリフレクタが設けられている主面に対し垂直な面として形成されていたが、当該端面はこれに限らず、傾斜して形成されていてもよい。
上記のリフレクタアレイ光学装置の作製方法における粘着テープ64又は平板65を用いた貼り合わせ工程によれば、隣り合う2面コーナーリフレクタ光学素子6の基盤60の突出部側と反対側の主面が揃うような(段差が生じないような)位置関係で貼り合わせることができる。隣り合う基盤60の主面に段差が生じる場合、貼り合わせ部分で実鏡映像に歪が生じるけれども、上記の貼り合わせ工程によれば当該実鏡映像歪が防止できる。
6 2面コーナーリフレクタアレイ光学素子
6S 素子面
40 直方体突出部
51 角錐台
52 底面
53 上面
60 基盤
61 2面コーナーリフレクタ
61a,61b 直交側面(鏡面)
62a,62b 2面コーナーリフレクタ以外の側面(テーパー面)
63 マスキング材
64 粘着テープ
65 平板
66 透明基盤
70 光学接着剤
CL 鏡面の交線
C 立方体形状部
T テーパー部

Claims (8)

  1. 一方の主面側にある被観察物の実像を他方の主面側の空間に結像させるリフレクタアレイ光学装置の作製方法であって、
    透明材料からなる基盤と、各々が前記基盤の主面に垂直で且つ互いに直交する少なくとも2つの直交側面及び前記基盤の主面に平行な上面を有する突出部であり且つ前記直交側面の内角の向きが揃うように前記基盤上に一体的に形成された複数の2面コーナーリフレクタと、からなる2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を少なくとも2枚形成する工程と、
    前記2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の各々の前記基盤の端面同士を接着剤で貼り合わせる工程と、
    貼り合わせた前記2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の前記複数の2面コーナーリフレクタが形成された前記基盤の主面の反対側の主面を研削し鏡面として前記基盤の厚さを貼り合せ時より薄くする研削工程と、を含むことを特徴とする作製方法。
  2. 前記貼り合わせる工程は、
    前記2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の各々の接着すべき前記基盤の端面に隣接する前記基盤の主面部分の前記複数の2面コーナーリフレクタをマスキング材で被覆する被覆工程と、
    前記接着すべき前記基盤の端面同士の間に前記接着剤を供給して、前記接着剤の一部分を前記基盤の端面同士の間から前記マスキング材の表面に押し出しながら前記2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を貼り合わせる工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の作製方法。
  3. 前記研削工程の前又は後に、前記接着剤の一部分とともに前記マスキング材を前記基盤の主面の前記複数の2面コーナーリフレクタから除去する工程と、を含むことを特徴とする請求項2に記載の作製方法。
  4. 一方の主面側にある被観察物の実像を他方の主面側の空間に結像させるリフレクタアレイ光学装置の作製方法であって、
    透明材料からなる基盤と、各々が前記基盤の主面に垂直で且つ互いに直交する少なくとも2つの直交側面及び前記基盤の主面に平行な上面を有する突出部であり且つ前記直交側面の内角の向きが揃うように前記基盤上に一体的に形成された複数の2面コーナーリフレクタと、からなる2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を少なくとも2枚形成する工程と、
    前記複数の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の各々の前記複数の2面コーナーリフレクタのすべてをマスキング材で被覆する被覆工程と、
    前記複数の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の各々の接着すべき前記基盤の端面同士の間に接着剤を供給して、前記接着剤の一部分を前記基盤の端面同士の間から前記マスキング材の表面に押し出しながら前記複数の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を貼り合わせる工程と、
    貼り合わせた前記複数の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の前記複数の2面コーナーリフレクタが形成された前記基盤の主面の反対側の主面から前記基盤の厚さを零まで研削して前記基盤を除去し、前記複数の2面コーナーリフレクタ各々の一部と前記マスキング材を露出させる研削工程と、
    前記研削工程の後に、前記複数の2面コーナーリフレクタ各々の一部と前記マスキング材の露出面に別の透明基盤を接着する工程と、
    前記別の透明基盤を接着する工程後に、前記接着剤の一部分とともに前記マスキング材を前記別の透明基盤上の前記複数の2面コーナーリフレクタから除去する工程と、を含むことを特徴とする作製方法。
  5. 前記貼り合わせる工程は、
    前記基盤の端面同士の間に前記接着剤を供給する前に前記複数の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の前記接着すべき前記基盤の端面同士を接触させ、前記接触した前記基盤の端面間を掛け渡す位置関係で粘着テープを前記基盤の主面部分に貼付して繋げる工程を含み、
    前記複数の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を貼り合わせる前に前記粘着テープで繋げられた部分を支点として、隣り合う前記基盤の該端面同士を開いた状態となし、該端面同士の間に前記接着剤を供給した後、前記基盤の該端面同士を閉じて貼り合わせることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1に記載の作製方法。
  6. 前記貼り合わせる工程は、
    前記基盤の端面同士の間に前記接着剤を供給する前に、平板の同一平面上に前記複数の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子をそれらの前記接着すべき前記基盤の端面同士が向かい合いかつ突き出るようにスライダ板に配置され、前記接着すべき前記基盤の端面同士の間に前記接着剤を供給した後、前記基盤の該端面同士を互いに向けて突き合わせて貼り合わせることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1に記載の作製方法。
  7. 前記マスキング材が水溶性のマスキング剤からなることを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか1に記載の作製方法。
  8. 前記マスキング材を除去する工程において水中の超音波洗浄を施すことを特徴とする請求項7に記載の作製方法。
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