以下、本発明を具体的に説明する。
まず、フッ素ゴム(A)及びフッ素樹脂(B)を含むフッ素ゴム組成物であって、250℃で24時間熱処理したときの重量減少率が2.20〜3.00%であることを特徴とするフッ素ゴム組成物(以下、本発明の第1のフッ素ゴム組成物ともいう。)について説明する。
本発明の第1のフッ素ゴム組成物は、フッ素ゴム(A)を含む。
フッ素ゴム(A)は、主鎖を構成する炭素原子に結合しているフッ素原子を有し且つゴム弾性を有する非晶質の重合体からなるものである。フッ素ゴム(A)は、1種の重合体からなるものであってもよいし、2種以上の重合体からなるものであってもよい。
フッ素ゴム(A)は、ビニリデンフルオライド〔VdF〕に基づく重合単位〔VdF単位〕を含む重合体であることが好ましい。
フッ素ゴム(A)は、VdF単位及び含フッ素エチレン性単量体に基づく重合単位(但し、VdF単位は除く。)を含む共重合体であることがより好ましい。フッ素ゴム(A)は、VdF単位、含フッ素エチレン性単量体に基づく重合単位、並びに、VdF及び含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に基づく共重合単位(但し、VdF単位及び含フッ素エチレン性単量体に基づく共重合単位を除く。)を含む共重合体であることも好ましい。
フッ素ゴム(A)は、30〜85モル%のVdF単位及び70〜15モル%の含フッ素エチレン性単量体に基づく共重合単位を含むことが好ましく、30〜80モル%のVdF単位及び70〜20モル%の含フッ素エチレン性単量体に基づく共重合単位を含むことがより好ましい。VdF及び含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に基づく共重合単位は、VdF単位と含フッ素エチレン性単量体に基づく共重合単位の合計量に対して、0〜10モル%であることが好ましい。
含フッ素エチレン性単量体としては、例えばテトラフルオロエチレン〔TFE〕、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕、フッ化ビニル等の含フッ素単量体が挙げられるが、これらのなかでも、TFE、HFP及びPAVEからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)又はパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)であることがより好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)であることが更に好ましい。これらをそれぞれ単独で、又は任意に組み合わせて用いることができる。
VdF及び含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテル等が挙げられる。
フッ素ゴム(A)は、VdF/HFP共重合体、VdF/HFP/TFE共重合体、VdF/CTFE共重合体、VdF/CTFE/TFE共重合体、VdF/PAVE共重合体、VdF/TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP/PAVE共重合体、及び、VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体であることが好ましく、耐熱性、圧縮永久ひずみ、加工性、コストの点から、VdF/HFP共重合体、及び、VdF/HFP/TFE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体であることがより好ましい。
フッ素ゴム(A)は、加工性が良好な点から、ムーニー粘度(ML1+10(121℃))が5〜140であることが好ましく、10〜120であることがより好ましく、20〜100であることが更に好ましい。
ムーニー粘度は、ASTM−D1646に準拠して、下記測定機器を用いて、下記条件で測定することができる。
測定機器:ALPHA TECHNOLOGIES社製のMV2000E型ローター回転数:2rpm
測定温度:100℃
フッ素ゴム(A)は、数平均分子量20,000〜1,200,000のものが好ましく、30,000〜300,000のものがより好ましく、50,000〜200,000のものが更に好ましく用いられる。数平均分子量は、テトラヒドロフラン、n−メチルピロリドン、等の溶媒を用い、GPCにて測定することができる。
フッ素ゴム(A)は、常法により製造することができる。
本発明の第1のフッ素ゴム組成物は、フッ素樹脂(B)を含む。
フッ素樹脂(B)としては、溶融加工性のフッ素樹脂であることが好ましい。溶融加工性のフッ素樹脂を用いることによって、より優れた低摩擦性及び非粘着性を有するフッ素ゴム成形品を得ることができる。また、後述するような、表面に凸部を有するフッ素ゴム成形品を得ることができる。このような凸部を有するフッ素ゴム成形品はより優れた低摩擦性及び非粘着性を備えるものとなる。更に、フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とがより一体的に形成されるため、耐久性も向上する。
溶融加工性のフッ素樹脂としては、例えば、TFE/HFP共重合体〔FEP〕、TFE/PAVE共重合体〔PFA〕、エチレン〔Et〕/TFE共重合体〔ETFE〕、Et/TFE/HFP共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン〔PCTFE〕、CTFE/TFE共重合体、Et/CTFE共重合体、ポリフッ化ビニリデン〔PVdF〕、TFE/VdF共重合体、VdF/HFP/TFE共重合体、VdF/HFP共重合体、及び、ポリフッ化ビニル〔PVF〕からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、溶融加工性であれば、低分子量のポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕も用いることも可能である。
フッ素樹脂(B)の融点は、140〜340℃であることが好ましく、160〜320℃であることがより好ましく、180〜300℃であることが更に好ましい。含フッ素エチレン性重合体の融点が、140℃未満であると、架橋成形時にブリードアウトする傾向があり、340℃を超えると、VdF系フッ素ゴム(A)の混合が困難になる傾向がある。
上記融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
フッ素樹脂(B)は、372℃におけるメルトフローレート〔MFR〕が0.3〜100g/10分であることが好ましい。MFRが小さすぎると耐摩耗性に劣るおそれがあり、MFRが大きすぎると成形が困難になるおそれがある。
上記MFRは、ASTMD1238に準拠し、温度372℃、荷重5kgで測定して得られる値である。
フッ素樹脂(B)は、低摩擦性、耐摩耗性、非粘着性、耐熱性、耐薬品性の観点から、パーフルオロフッ素樹脂であることが好ましい。
フッ素樹脂(B)は、なかでも、フッ素ゴム(A)、特にVdF単位を含む重合体との相溶性に優れる点から、ETFEが特に好ましい。
ETFEは、エチレンに基づく重合単位〔Et単位〕とテトラフルオロエチレンに基づく重合単位〔TFE単位〕とを含む共重合体である。
TFE単位とEt単位との含有モル比は20:80〜90:10が好ましく、37:63〜85:15がより好ましく、38:62〜80:20が特に好ましい。
ETFEは、TFE及びエチレンと共重合可能な単量体に基づく重合単位を含むものであってもよい。共重合可能な単量体としては、CTFE、トリフルオロエチレン、HFP、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、フッ化ビニル、2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−1−ペンテン(CH2=CFCF2CF2CF2H)等の含フッ素単量体が挙げられ、HFPであることが好ましい。また、TFE及びエチレンと共重合可能な単量体としては、イタコン酸、無水イタコン酸等の脂肪族不飽和カルボン酸であってもよい。
TFE及びエチレンと共重合可能な単量体に基づく重合単位は、全単量体単位に対して0.1〜5モル%であることが好ましく、0.2〜4モル%であることがより好ましい。
ETFEは、融点が140〜340℃であることが好ましく、160〜300℃であることがより好ましく、180〜260℃であることが更に好ましい。
本発明の第1のフッ素ゴム組成物においては、フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)との体積比(フッ素ゴム(A))/(フッ素樹脂(B))が60/40〜97/3であることが好ましい。フッ素樹脂(B)が少なすぎると低摩擦性及び非粘着性が充分に得られないおそれがあり、一方、フッ素樹脂(B)が多すぎると、ゴム弾性が損なわれる恐れがある。フッ素ゴムに起因する柔軟性と、フッ素樹脂に起因する低摩擦性及び非粘着性の両方が良好な点から、体積比(フッ素ゴム(A))/(フッ素樹脂(B))は、65/35〜95/5であることがより好ましく、70/30〜90/10であることが更に好ましい。
本発明の第1のフッ素ゴム組成物は、250℃で24時間熱処理したときの重量減少率が2.20〜3.00%である。フッ素ゴム組成物の重量減少率が上記範囲内にあると、得られるフッ素ゴム成形品に優れた低摩擦性及び非粘着性を付与することができる。この理由は明確ではないが、フッ素ゴム組成物の重量減少率が上記範囲内にあることにより、フッ素ゴム組成物をフッ素樹脂(B)の融点以上の温度で熱処理したときの収縮率が増加することにより、得られるフッ素ゴム成形品の表面にフッ素樹脂(B)に由来する凸部をより多く形成することができるためであると推定される。
また、フッ素樹脂(B)の割合を増加させることなくフッ素ゴム成形品表面の低摩擦性及び非粘着性を改善できるため、フッ素ゴム(A)本来の特性を低下させることがない。更に、熱処理温度を高くしたり、熱処理時間を長くしたりする必要がないため、生産性を低下させることもない。
上記重量減少率が小さすぎても、大きすぎても、フッ素ゴム成形品表面の低摩擦性及び非粘着性を充分に改善できないおそれがある。上記重量減少率の下限は2.25%が好ましく、2.30%がより好ましく、2.35%が更に好ましく、上記重量減少率の上限は2.95%が好ましく、2.90%がより好ましい。
本発明の第1のフッ素ゴム組成物は、更に、フッ素ゴム組成物をフッ素樹脂(B)の融点以上の温度に加熱する熱処理工程(例えば、後述する熱処理工程(III))における加熱温度未満の沸点を有する物質(C)を含むことが好ましい。上記物質(C)を使用することで、熱処理時のフッ素ゴム組成物の収縮率を増加させることができ、その結果、得られるフッ素ゴム成形品に優れた低摩擦性及び非粘着性を付与することができる。
上記物質(C)の沸点は、フッ素ゴム(A)に応じて適宜決定すればよいが、例えば、250℃未満であることが好ましい。添加量を少量にできる観点から、200℃以下がより好ましく、150℃以下が更に好ましい。また、一次架橋(成形架橋)時に揮発する量を少なくする観点から、40℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。
上記物質(C)としては、具体的に、ワックス、液状フッ素ゴム、架橋剤、フッ素オイル、フッ素グリース等が例示でき、これらを単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
上記ワックスは、主たる成分が脂肪酸及びその誘導体(脂肪酸エステル、脂肪酸の金属塩、脂肪酸アミド等)、アルコール及び多価アルコールとそのエステル、炭化水素の少なくとも1種からなる、常温で固体の物質をいう。
ワックスは、天然ワックス、合成ワックス及び半合成ワックスに分類される。更に、天然ワックスは、生物由来のワックスと化石由来のワックスとに分類される。
生物由来のワックスとしては、ミツロウ、サラシミツロウ、中国ロウ、鯨ロウ、セラック、ラノリン等の動物ベースのワックス、及び、カルナバワックス、キャンデリラワックス、モクロウ、ライスワックス、米ぬかワックス等の植物ベースのワックスが挙げられる。
化石由来のワックスとしては、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の炭素ベースのワックス、及び、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、オイルシェルより抽出されたワックス等のオイルベースのワックスが挙げられる。
天然ワックスとしては、中でも、カルナバワックス、キャンデリラワックス、モクロウ、ライスワックス及び米ぬかワックスからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
合成ワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックスの混合物、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合等の各種ポリマーが挙げられる。ポリエチレンワックスとしては、三井ハイワックス(三井化学(株)製)、サンワックス(三洋化成工業(株))、エポレン(Eastman Chemical社製)、アライドワックス(Allied Signals社製)が商品として入手できる。合成ワックスにおいて前記のようなポリマーを用いる場合のポリマーの平均分子量は、適度な融点(軟化点)を有し、取扱い性、混合性が良好であるという点から、500以上が好ましく、1000以上がより好ましく、1500以上が更に好ましい。また、ポリマーの平均分子量は、ゴムへの分散性が良好であるという点から、10000以下が好ましく、8000以下がより好ましく、6000以下が更に好ましい。
合成ワックスとしては、中でも、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、並びに、ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックスの混合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
半合成ワックスとしては、アマインドワックス、変性モンタンワックス等が挙げられる。
これらの中で、安価という観点から、天然ワックスが好ましく、また、純度が高く、品質が安定しているという観点から、合成ワックスが好ましい。
また、上記ワックスは、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用して用いても良い。
ワックスにおける炭化水素基の炭素数としては、適度な融点(軟化点)を有し、取扱い性、混合性が良好であるという点から、13以上が好ましく、15以上がより好ましく、17以上が更に好ましい。また、ワックスにおける炭化水素基の炭素数は、ゴムへの分散性が良好であるという点から、500以下が好ましく、400以下がより好ましく、300以下が更に好ましい。
ワックスの融点は、取扱い性、混合性が良好であるという点から、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。また、ゴムへの分散性が良好であるという点から、130℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。
上記液状フッ素ゴムは、粘度が5000P以下(JIS K6893準拠)であるフッ素ゴムをいう。上記液状フッ素ゴムとしては、ダイエルG−101(ダイキン工業(株)製)等が例示できる。
上記架橋剤としては、後述する架橋剤のうち、フッ素ゴム組成物をフッ素樹脂(B)の融点以上の温度に加熱する熱処理工程における加熱温度未満の沸点を有するものが使用できる。
上記フッ素オイルとしては、デムナムS20(ダイキン工業(株)製)等が例示できる。
上記フッ素グリースとしては、ダイフロイルグリースDG−203(ダイキン工業(株)製)等が例示できる。
上記物質(C)としては、比較的安価で、しかもフッ素ゴム(A)の特性に悪影響を及ぼしにくい点で、ワックスがより好ましく、カルナバワックスが特に好ましい。
上記物質(C)の配合量は、その種類に応じて、フッ素ゴム組成物の重量減少率が上記範囲内となるように決定すればよい。物質(C)の配合量が少なすぎても、多すぎても、フッ素ゴム成形品表面の低摩擦性及び非粘着性を充分に改善できないおそれがある。
上記物質(C)としてワックスを用いる場合は、フッ素ゴム組成物100質量%に対し、0.1質量%以上であることが好ましい。ワックスの配合量の下限は、フッ素ゴム組成物100質量%に対し、0.2質量%がより好ましく、0.3質量%が更に好ましく、0.4質量%が特に好ましい。また、上限は、1.9質量%が好ましく、1.7質量%がより好ましく、1.6質量%が更に好ましい。
上記物質(C)として液状フッ素ゴムを用いる場合は、フッ素ゴム組成物100質量%に対し、1.0質量%以上であることが好ましい。液状フッ素ゴムの配合量の下限は、フッ素ゴム組成物100質量%に対し、2.0質量%がより好ましく、3.0質量%が更に好ましく、5.0質量%が特に好ましい。また、上限は、14.5質量%が好ましく、14.0質量%がより好ましく、13.5質量%が更に好ましい。
上記物質(C)として架橋剤を用いる場合、フッ素ゴム(A)の架橋に必要な量も考慮して、配合量を決定することが好ましい。フッ素ゴム(A)の架橋に必要な量を考慮すると、物質(C)として架橋剤を用いる場合の架橋剤の総配合量は、フッ素ゴム組成物中のフッ素ゴム(A)100質量%に対し、1.1質量%以上であることが好ましい。下限は、1.2質量%がより好ましく、1.3質量%が更に好ましく、1.4質量%が特に好ましい。また、上限は、2.5質量%が好ましく、2.2質量%がより好ましく、2.0質量%が更に好ましい。
本発明の第1のフッ素ゴム組成物は、必要に応じて、フッ素ゴム(A)、フッ素樹脂(B)及び物質(C)以外のその他の成分を含んでもよい。
例えば、本発明の第1のフッ素ゴム組成物は、上記フッ素ゴム(A)の架橋系に応じて、架橋剤、架橋助剤、架橋促進剤等を含むことが好ましい。
上記フッ素ゴム(A)の架橋系は、用途によって選択すればよい。架橋系としては、パーオキサイド架橋系、ポリオール架橋系、ポリアミン架橋系等が挙げられる。
上記フッ素ゴム(A)の架橋系は、パーオキサイド架橋系、及び、ポリオール架橋系からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。耐薬品性の観点からはパーオキサイド架橋系が好ましく、耐熱性の観点からはポリオール架橋系が好ましい。
従って、上記架橋剤としては、ポリオール架橋剤、及び、パーオキサイド架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種の架橋剤が好ましい。
架橋剤の配合量は、架橋剤の種類等によって適宜選択すればよいが、フッ素ゴム(A)100質量部に対して0.2〜5.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜3.0質量部である。
パーオキサイド架橋は、パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴム及び架橋剤として有機過酸化物を使用することにより行うことができる。
パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムとしては特に限定されず、パーオキサイド架橋可能な部位を有するフッ素ゴムであればよい。上記パーオキサイド架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、ヨウ素原子を有する部位、臭素原子を有する部位等を挙げることができる。
有機過酸化物としては、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生し得る有機過酸化物であればよく、例えば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト等を挙げることができる。これらの中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3が好ましい。
有機過酸化物の配合量は、フッ素ゴム100質量部に対して0.1〜15質量部が好ましく、より好ましくは0.3〜5質量部である。
架橋剤が有機過酸化物である場合、上記フッ素ゴム組成物は更に架橋助剤を含むことが好ましい。架橋助剤としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5−トリス(2,3,3−トリフルオロ−2−プロペニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン)、トリス(ジアリルアミン)−S−トリアジン、N,N−ジアリルアクリルアミド、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルフタルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレート、トリアリルホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、架橋性及び機械物性、柔軟性が優れる点から、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
架橋助剤の配合量は、フッ素ゴム100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましく、0.01〜7.0質量部であることがより好ましく、更に好ましくは0.1〜5.0質量部である。架橋助剤が、0.01質量部より少ないと、機械物性が低下し、柔軟性が劣り、10質量部をこえると、耐熱性に劣り、上記フッ素ゴム組成物から得られる成形品の耐久性も低下する傾向がある。
ポリオール架橋は、ポリオール架橋可能なフッ素ゴム及び架橋剤としてポリヒドロキシ化合物を使用することにより行うことができる。ポリオール架橋系における、ポリヒドロキシ化合物の配合量としては、ポリオール架橋可能なフッ素ゴム100質量部に対して0.01〜15質量部であることが好ましく、より好ましくは0.02〜15質量部である。更に好ましくは0.1〜8質量部であり、特に好ましくは0.5〜5質量部である。ポリヒドロキシ化合物の配合量がこのような範囲であることにより、ポリオール架橋を充分に進行させることができる。
上記ポリオール架橋可能なフッ素ゴムとしては特に限定されず、ポリオール架橋可能な部位を有するフッ素ゴムであればよい。上記ポリオール架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、フッ化ビニリデン(VdF)単位を有する部位等を挙げることができる。上記架橋部位を導入する方法としては、フッ素ゴムの重合時に架橋部位を与える単量体を共重合する方法等が挙げられる。
ポリヒドロキシ化合物としては、耐熱性に優れる点からポリヒドロキシ芳香族化合物が好適に用いられる。
上記ポリヒドロキシ芳香族化合物としては、特に限定されず、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(以下、ビスフェノールAFという)、レゾルシン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシスチルベン、2,6−ジヒドロキシアントラセン、ヒドロキノン、カテコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(以下、ビスフェノールBという)、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラフルオロジクロロプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、3,3’,5,5’−テトラクロロビスフェノールA、3,3’,5,5’−テトラブロモビスフェノールA等が挙げられる。これらのポリヒドロキシ芳香族化合物は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等であってもよいが、酸を用いて共重合体を凝析した場合は、上記金属塩は用いないことが好ましい。
架橋剤がポリヒドロキシ化合物である場合、上記フッ素ゴム組成物は更に架橋促進剤を含むことが好ましい。架橋促進剤は、ポリマー主鎖の脱フッ酸反応における分子内二重結合の生成と、生成した二重結合へのポリヒドロキシ化合物の付加を促進する。
なお、架橋促進剤は、更に、酸化マグネシウム等の受酸剤や、水酸化カルシウム等の架橋助剤と組み合わせて用いてもよい。
架橋促進剤としては、オニウム化合物が挙げられ、オニウム化合物のなかでも、第4級アンモニウム塩等のアンモニウム化合物、第4級ホスホニウム塩等のホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、環状アミン、及び、1官能性アミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、第4級アンモニウム塩及び第4級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
第4級アンモニウム塩としては特に限定されず、例えば、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムアイオダイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムメチルスルフェート、8−エチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−プロピル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−エイコシル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−テトラコシル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド(以下、DBU−Bとする)、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−フェネチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−(3−フェニルプロピル)−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド等が挙げられる。これらの中でも、架橋性、機械物性、及び、柔軟性の点から、DBU−Bが好ましい。
また、第4級ホスホニウム塩としては特に限定されず、例えば、テトラブチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(以下、BTPPCとする)、ベンジルトリメチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリブチルホスホニウムクロライド、トリブチルアリルホスホニウムクロライド、トリブチル−2−メトキシプロピルホスホニウムクロライド、ベンジルフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロライド等を挙げることができ、これらの中でも、架橋性、機械物性、及び、柔軟性の点から、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(BTPPC)が好ましい。
また、架橋促進剤として、第4級アンモニウム塩とビスフェノールAFとの固溶体、第4級ホスホニウム塩とビスフェノールAFとの固溶体、特開平11−147891号公報に開示されている塩素フリー架橋促進剤を用いることもできる。
架橋促進剤の配合量は、フッ素ゴム100質量部に対して、0.01〜8質量部であることが好ましく、より好ましくは0.02〜5質量部である。架橋促進剤が、0.01質量部未満であると、フッ素ゴムの架橋が充分に進行せず、得られる成形品の耐熱性等が低下するおそれがある。8質量部をこえると、上記架橋性組成物の成形加工性が低下するおそれや、機械物性における伸びが低下し、柔軟性も低下する傾向がある。
本発明の第1のフッ素ゴム組成物は、フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)との相溶性向上のため、少なくとも1種の多官能化合物を含有してもよい。多官能化合物とは、1つの分子中に同一又は異なる構造の2つ以上の官能基を有する化合物である。
多官能化合物が有する官能基としては、カルボニル基、カルボキシル基、ハロホルミル基、アミド基、オレフィン基、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、エポキシ基等、一般に反応性を有することが知られている官能基であれば任意に用いることができる。
これらの官能基を有する化合物は、フッ素ゴム(A)との親和性が高いだけではなく、フッ素樹脂(B)が持つ反応性を有することが知られている官能基とも反応し、更に相溶性が向上することも期待される。
本発明の第1のフッ素ゴム組成物は、必要に応じてフッ素ゴム中に配合される通常の添加剤、例えば充填剤、加工助剤、可塑剤、着色剤、安定剤、接着助剤、離型剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、表面非粘着剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤等の各種添加剤を配合することができ、これらの添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で使用すればよい。
次に、フッ素ゴム(A)、フッ素樹脂(B)及びワックスを含むフッ素ゴム組成物であって、フッ素ゴム組成物100質量%に対し、ワックスが0.1〜1.9質量%であることを特徴とするフッ素ゴム組成物(以下、本発明の第2のフッ素ゴム組成物ともいう。)について説明する。
本発明の第2のフッ素ゴム組成物が含むフッ素ゴム(A)及びフッ素樹脂(B)としては、本発明の第1のフッ素ゴム組成物について説明したものと同様のものを使用することができる。
本発明の第2のフッ素ゴム組成物は、ワックスを含む。ワックスは、フッ素ゴム組成物をフッ素樹脂(B)の融点以上の温度に加熱する熱処理工程における加熱温度未満の沸点を有する物質であるため、熱処理時のフッ素ゴム組成物の収縮率を増加させることができる。これにより、得られるフッ素ゴム成形品の表面にフッ素樹脂(B)に由来する凸部をより多く形成することができ、その結果、フッ素ゴム成形品に優れた低摩擦性及び非粘着性を付与することができる。また、ワックスは比較的安価で、しかもフッ素ゴム(A)の特性に悪影響を及ぼしにくいという利点もある。
本発明の第2のフッ素ゴム組成物が含むワックスとしては、本発明の第1のフッ素ゴム組成物における物質(C)について説明したものと同様のものを使用することができる。なかでも、比較的安価で、しかもフッ素ゴム(A)の特性に悪影響を及ぼしにくい点で、カルナバワックスが特に好ましい。
本発明の第2のフッ素ゴム組成物においては、フッ素ゴム組成物100質量%に対し、ワックスが0.1〜1.9質量%である。ワックスの配合量が少なすぎても、多すぎても、フッ素ゴム成形品表面の低摩擦性及び非粘着性を充分に改善できないおそれがある。ワックスの配合量の下限は、フッ素ゴム組成物100質量%に対し、0.2質量%が好ましく、0.3質量%がより好ましく、0.4質量%が更に好ましい。また、上限は、1.9質量%が好ましく、1.7質量%がより好ましく、1.6質量%が更に好ましい。
本発明の第2のフッ素ゴム組成物は、必要に応じて、フッ素ゴム(A)、フッ素樹脂(B)及びワックス以外のその他の成分を含んでもよい。上記その他の成分としては、本発明の第1のフッ素ゴム組成物について説明したものと同様のものを例示することができる。
本発明の第1及び第2のフッ素ゴム組成物は、例えば、下記混練工程(I)を含む製造方法により製造することができる。
本発明のフッ素ゴム組成物は、フッ素樹脂(B)とフッ素ゴム(A)とをフッ素樹脂(B)の融点より5℃低い温度以上の温度で混練してフッ素ゴム組成物を得る混練工程(I)を含む製造方法により得られるものであることが好ましい。
(I)混練工程
混練工程(I)では、フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とを、フッ素樹脂(B)の融点より5℃低い温度以上の温度、好ましくはフッ素樹脂(B)の融点以上の温度で溶融混練する。加熱温度の上限は、フッ素ゴム(A)又はフッ素樹脂(B)のいずれか低い方の熱分解温度未満である。
フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)との溶融混練はその温度で架橋を引き起こす条件(架橋剤、架橋促進剤及び受酸剤の存在下等)では行わないが、フッ素樹脂(B)の融点より5℃低い温度以上の溶融混練温度で架橋を引き起こさない成分(例えば特定の架橋剤のみ、架橋剤と架橋促進剤の組合せのみ、等)であれば、溶融混練時に添加混合してもよい。架橋を引き起こす条件としては、例えば、ポリオール架橋剤と架橋促進剤と受酸剤との組合せが挙げられる。
したがって、本発明における混練工程(I)では、フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とを溶融混練してプレコンパウンド(予備混合物)を調製し、ついで、架橋温度未満の温度で他の添加剤や配合剤を混練してフルコンパウンドとする2段階混練法が好ましい。もちろん、全ての成分を架橋剤の架橋温度未満の温度で混練する方法でもよい。
上記架橋剤としては、上述したものを架橋系にあわせて適宜使用することができる。
溶融混練は、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、押出機等を使用して、フッ素樹脂(B)の融点より5℃低い温度以上の温度、例えば200℃以上、通常230〜290℃でフッ素ゴムと混練することにより行うことができる。これらの中でも、高剪断力を加えることができる点で、加圧ニーダー又は二軸押出機等の押出機を用いることが好ましい。
また、2段階混練法におけるフルコンパウンド化は、架橋温度未満、例えば100℃以下の温度でオープンロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等を用いて行うことができる。
上記溶融混練と類似の処理としてフッ素樹脂中でフッ素ゴムをフッ素樹脂の溶融条件下で架橋する処理(動的架橋)がある。動的架橋では、熱可塑性樹脂のマトリックス中に未架橋ゴムをブレンドし、混練しながら未架橋ゴムを架橋させ、かつその架橋したゴムをマトリックス中にミクロに分散させる方法であるが、本発明における溶融混練では、架橋を引き起こさない条件(架橋に必要な成分の不存在、又はその温度で架橋反応が起こらない配合等)で溶融混練するものであり、またマトリックスは未架橋ゴムとなり、未架橋ゴム中にフッ素樹脂が均一に分散している混合物である点において本質的に異なる。
次に、本発明のフッ素ゴム組成物からフッ素ゴム成形品を製造する方法について説明する。
上記フッ素ゴム成形品は、上記フッ素ゴム組成物を架橋することにより得ることができる。
特に、本発明のフッ素ゴム成形品は、後述する製造方法により得られるものであることが好ましい。
上記成形品は、
(II)上記フッ素ゴム組成物を成形架橋する成形架橋工程、及び、
(III)得られた架橋成形品をフッ素樹脂(B)の融点以上の温度に加熱する熱処理工程
を含む方法により製造することができる。
(II)成形架橋工程
この工程は、フッ素ゴム組成物を成形し架橋し、熱処理工程により得られる成形品と略同形状の架橋成形品を製造する工程である。
成形方法としては、例えば金型等による加圧成形法、インジェクション成形法等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
架橋方法も、スチーム架橋、加圧成形法、加熱により架橋反応が開始される通常の方法、放射線架橋法等が採用でき、なかでも、加熱による架橋反応が好ましい。
成形及び架橋の方法及び条件としては、採用する成形及び架橋において公知の方法及び条件の範囲内でよい。また、成形と架橋は順不同で行ってもよいし、同時に並行して行ってもよい。
限定されない具体的な架橋条件としては、通常、150〜300℃の温度範囲、1分間〜24時間の架橋時間内で、使用する架橋剤等の種類により適宜決めればよい。また、成形架橋条件は、フッ素樹脂(B)の融点未満の温度であることが好ましく、より好ましくはフッ素樹脂(B)の融点より5℃以上低い温度以下である。また、架橋条件における温度の下限は、フッ素ゴム(A)の架橋温度である。
未架橋ゴムの架橋において、最初の架橋処理(1次架橋という)を施した後に2次架橋と称される後処理工程を施すことがあるが、次の熱処理工程(III)で説明するように、従来の2次架橋工程と本発明の成形架橋工程(II)及び熱処理工程(III)とは異なる処理工程である。
(III)熱処理工程
この熱処理工程(III)では、得られた架橋成形品をフッ素樹脂(B)の融点以上の温度に加熱する。熱処理工程(III)を経ることにより、製造する成形品の低摩擦性をより向上させることができる。
フッ素ゴム(A)及びフッ素樹脂(B)の熱分解を回避するために、加熱温度は、フッ素ゴム(A)又はフッ素樹脂(B)のいずれか低い方の熱分解温度未満の温度が採用される。
加熱温度がフッ素樹脂(B)の融点よりも低い場合は、成形品の低摩擦性が充分に得られないおそれがある。好ましい加熱温度は、短時間で低摩擦化することができることから、フッ素樹脂(B)の融点より5℃以上高い温度である。
加熱時間は加熱温度と密接に関係しており、加熱温度が比較的下限に近い温度では比較的長時間加熱を行い、比較的上限に近い加熱温度では比較的短い加熱時間を採用することが好ましい。このように加熱時間は加熱温度との関係で適宜設定すればよいが、加熱処理をあまり高温で行うとフッ素ゴムが熱劣化することがあるので、加熱処理温度は、実用上300℃までである。
ところで、従来行われている2次架橋は1次架橋終了時に残存している架橋剤を完全に分解してフッ素ゴムの架橋を完結し、架橋成形品の機械的特性や圧縮永久ひずみ特性を向上させるために行う処理である。
したがって、フッ素樹脂の共存を想定していない従来の2次架橋条件は、その架橋条件が偶発的に熱処理工程の加熱条件と重なるとしても、2次架橋ではフッ素樹脂の存在を架橋条件設定の要因として考慮せずに未架橋フッ素ゴムの架橋の完結(架橋剤の完全分解)という目的の範囲内での加熱条件が採用されているにすぎず、フッ素樹脂を配合した場合にゴム架橋物(ゴム未架橋物ではない)中でフッ素樹脂を加熱軟化又は溶融する条件を導き出せるものではない。
なお、成形架橋工程(II)において、フッ素ゴム(A)の架橋を完結させるため(架橋剤を完全に分解するため)の2次架橋を行ってもよい。
また、熱処理工程(III)において、残存する架橋剤の分解が起こりフッ素ゴム(A)の架橋が完結する場合もあるが、熱処理工程(III)におけるかかるフッ素ゴム(A)の架橋はあくまで副次的な効果にすぎない。
特に、混練工程(I)で得られるフッ素ゴム組成物は、フッ素ゴム(A)が連続相を形成しかつフッ素樹脂(B)が分散相を形成している構造、又はフッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)が共に連続相を形成している構造をとっているものと推定され、このような構造を形成することにより、成形架橋工程(II)での架橋反応をスムーズに行うことができ、得られる架橋物の架橋状態も均一になる。
本発明のフッ素ゴム成形品は、多数の凸部が成形品表面に均一に存在していることにより、優れた低摩擦性及び非粘着性を示す。上記凸部は、実質的にフッ素ゴム組成物に含まれるフッ素樹脂(B)からなることが好ましい。上記凸部は、例えば上述した方法により、上記フッ素ゴム組成物に含まれるフッ素樹脂(B)を表面に析出させて形成することができる。
上記凸部は、本発明のフッ素ゴム成形品本体との間に明確な界面等が存在せず、上記凸部とフッ素ゴム成形品とは一体的に構成されていることとなり、上記凸部が脱落したり、欠損したりしにくいとの効果をより確実に享受することができる。
上記凸部が実質的に上記フッ素ゴム組成物に含まれるフッ素樹脂(B)からなることは、IR分析やESCA分析によってフッ素ゴム(A)由来のピークとフッ素樹脂(B)由来のピークのピーク比を求めることにより、示すことができる。具体的には、凸部を有する領域において、IR分析によって、フッ素ゴム(A)由来の特性吸収のピークとフッ素樹脂(B)由来の特性吸収のピークとの比(成分由来ピーク比=(フッ素ゴム(A)由来のピーク強度)/(フッ素樹脂(B)由来のピーク強度))を、凸部と凸部外のそれぞれの部分で測定し、凸部外の成分由来ピーク比が、凸部の成分由来ピーク比に対して1.5倍以上、好ましくは2倍以上であればよい。
上記凸部の形状について、図面を参照しながらもう少し詳しく説明する。
図1(a)は、フッ素ゴム成形品30が有する凸部の形状を模式的に示す斜視図であり、(b)は(a)の表面に垂直な直線B1と直線B2とを含む平面で凸部31を切断した断面図であり、(c)は(a)の表面と平行な直線C1と直線C2とを含む平面で切断した断面図である。そして、図1(a)〜(c)は、本発明のフッ素ゴム成形品表面の微小領域を模式的に描画している。本発明のフッ素ゴム成形品表面には、図1(a)〜(c)に示すように、例えば、略円錐形状(コーン形状)の凸部31が形成されている。
ここで、凸部31の高さとは、フッ素ゴム成形品表面から突出した部分の高さをいう(図1(b)中、H参照)。また、凸部31の底部断面積とは、凸部31を、フッ素ゴム成形品表面と平行な平面(直線C1と直線C2とを含む平面)で切断した面において観察される凸部31の断面に於ける面積の値をいう(図1(c)参照)。
上記フッ素ゴム成形品表面に対する上記凸部を有する領域の面積比(凸部の占有率)は、0.06(6%)以上であることが好ましい。より好ましい面積比は、0.15以上であり、0.30以上が更に好ましい。上記フッ素ゴム成形品表面に対する凸部を有する領域の面積比は、上記凸部の底部断面積を評価する切断面において、凸部が占める面積の比率をいう。
本発明のフッ素ゴム成形品において、フッ素樹脂(B)の体積比は、上記フッ素ゴム成形品の0.05〜0.45(5〜45体積%)であることが好ましい。体積比の下限は、0.10(10体積%)であることがより好ましい。体積比の上限は、0.40(40体積%)であることがより好ましく、0.35(35体積%)であることが更に好ましく、0.30(30体積%)であることが特に好ましい。
上記フッ素樹脂(B)は、優れた耐熱性を有する。従って、後述する成形架橋工程や熱処理工程によって分解することがないので、上記体積比は、フッ素ゴム組成物に含まれるフッ素樹脂(B)の体積割合と同一とみなすことができる。
上記凸部を有する領域の面積比が、上記フッ素樹脂(B)の体積比の1.2倍以上であることが好ましく、1.3倍以上であることがより好ましい。これは、本発明のフッ素ゴム成形品は、成形品表面における凸部を有する領域の比率が、成形品におけるフッ素樹脂(B)の体積比よりも高い、すなわち、フッ素ゴム組成物に含まれるフッ素樹脂(B)の体積比よりも高い、ということを意味している。本発明のフッ素ゴム成形品はこの特徴により従来のフッ素ゴム成形品と区別でき、成形品におけるフッ素樹脂(B)の混合割合が低くても、フッ素ゴムの欠点であった低摩擦性及び非粘着性が改善されており、フッ素ゴムの利点が損なわれていることもない。
上記凸部は、高さが0.2〜5.0μmであることが好ましい。凸部の高さがこの範囲にあると、フッ素ゴム成形品の低摩擦性及び非粘着性がより優れたものとなる。より好ましい高さは、0.3〜4.0μmであり、更に好ましくは、0.5〜3.0μmである。
上記凸部は、底部断面積が2〜500μm2であることが好ましい。凸部の底部断面積がこの範囲にあると、フッ素ゴム成形品の低摩擦性及び非粘着性がより優れたものとなる。より好ましい底部断面積は、3〜400μm2であり、更に好ましい底部断面積は、3〜300μm2である。
本発明のフッ素ゴム成形品は、上記凸部の高さの標準偏差が0.300以下であることが好ましい。この範囲にあると、フッ素ゴム成形品の低摩擦性及び非粘着性がより優れたものとなる。
本発明のフッ素ゴム成形品は、凸部の数が3000〜60000個/mm2であることが好ましい。この範囲にあると、フッ素ゴム成形品の低摩擦性及び非粘着性がより優れたものとなる。
凸部を有する領域の面積比、凸部の高さ、凸部の底部断面積、凸部の数等は、例えば、キーエンス社製、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9700)を用い、解析ソフトとして三谷商事株式会社製のWinRooF Ver.6.4.0を用いて算出することができる。凸部を有する領域の面積比は、凸部の底部断面積を求め、断面積合計の値が、測定全領域面積に占める割合として求められる。凸部の数は、測定領域中の凸部の数を1mm2当たりの数に換算したものである。
本発明のフッ素ゴム成形品において、上記凸部はフッ素ゴム成形品表面の一部に形成されていればよく、フッ素ゴム成形品表面には該凸部が形成されていない領域を有していてもよい。例えば、本発明のフッ素ゴム成形品において、低摩擦性及び非粘着性が必要とされない部分には上記凸部が形成されている必要はない。
本発明のフッ素ゴム成形品は、表面領域でフッ素樹脂比率が増大した状態になっているものと推定される。
この表面領域でフッ素樹脂比率が増大した状態は、例えば熱処理後の架橋成形品をESCAやIRで化学的に分析することで検証できる。
例えば、ESCA分析では成形品の表面から約10nmまでの深さの原子団を同定できるが、熱処理後において、フッ素ゴム由来の結合エネルギーでのピーク(PESCA1)とフッ素樹脂由来のピーク(PESCA2)の比(PESCA1/PESCA2)が小さくなっている、すなわちフッ素樹脂の原子団が多くなっている。
また、IR分析では成形品の表面から約0.5〜1.2μmまでの深さの原子団を同定できるが、熱処理後において、深さ0.5μmでのフッ素ゴム由来の特性吸収のピーク(PIR0.51)とフッ素樹脂由来のピーク(PIR0.52)の比(PIR0.51/PIR0.52)が小さくなっている、すなわちフッ素樹脂の原子団が多くなっている。しかも、深さ0.5μmでの比(PIR0.51/PIR0.52)と深さ1.2μmでの比(PIR1.21/PIR1.22)を比べても、深さ0.5μmでの比(PIR0.51/PIR0.52)の方が小さくなっており、表面に近い領域の方にフッ素樹脂比率が増大していることを示している。
本発明のフッ素ゴム成形品は、表面領域のフッ素樹脂比率が高いことにより、フッ素樹脂の特性、例えば低摩擦性や非粘着性、撥水撥油性が、熱処理をしないものより、格段に向上する。しかも、表面部分以外では逆にフッ素ゴムの特性が発揮でき、全体として、低摩擦性や非粘着性、撥水撥油性、エラストマー性、のいずれにもバランスよく優れている。更に、フッ素樹脂とフッ素ゴムに明確な界面状態が存在しないので、表面のフッ素樹脂に富む領域が脱落することもなく、耐久性に優れている。
本発明のフッ素ゴム成形品は、その低摩擦性、非粘着性、撥水撥油性(高接触角)を利用して、シール材、摺動部材、非粘着性部材等として有用である。
具体的には、次の成形品が例示できるが、これらに限定されるものではない。
シール材:
半導体製造装置、液晶パネル製造装置、プラズマパネル製造装置、プラズマアドレス液晶パネル、フィールドエミッションディスプレイパネル、太陽電池基板等の半導体関連分野では、O(角)−リング、パッキン、ガスケット、ダイアフラム、その他の各種シール材等が挙げられ、これらはCVD装置、ドライエッチング装置、ウェットエッチング装置、酸化拡散装置、スパッタリング装置、アッシング装置、洗浄装置、イオン注入装置、排気装置に用いることができる。具体的には、ゲートバルブのO−リング、クォーツウィンドウのO−リング、チャンバーのO−リング、ゲートのO−リング、ベルジャーのO−リング、カップリングのO−リング、ポンプのO−リングやダイアフラム、半導体用ガス制御装置のO−リング、その他の各種シール材として、レジスト現像液、剥離液用のO−リング、その他の各種シール材として用いることができる。
自動車分野では、エンジン並びに周辺装置に用いるガスケット、シャフトシール、バルブステムシール、各種シール材や、AT装置の各種シール材に用いることができる。燃料系統並びに周辺装置に用いるシール材としては、O(角)−リング、パッキン、ダイアフラム等が挙げられる。具体的には、エンジンヘッドガスケット、メタルガスケット、オイルパンガスケット、クランクシャフトシール、カムシャフトシール、バルブステムシール、マニホールドパッキン、酸素センサー用シール、インジェクターO−リング、インジェクターパッキン、燃料ポンプのO−リングやダイアフラム、クランクシャフトシール、ギアボックスシール、パワーピストンパッキン、シリンダーライナーのシール、バルブステムのシール、自動変速機のフロントポンプシール、リアーアクスルピニオンシール、ユニバーサルジョイントのガスケット、スピードメーターのピニオンシール、フートブレーキのピストンカップ、トルク伝達のO−リング、オイルシール、排ガス再燃焼装置のシール、ベアリングシール、キャブレターのセンサー用ダイアフラム等として用いることができる。
航空機分野、ロケット分野及び船舶分野では、ダイアフラム、O(角)−リング、バルブ、パッキン、各種シール材等が挙げられ、これらは燃料系統に用いることができる。具体的には、航空機分野では、ジェットエンジンバルブステムシール、ガスケット及びO−リング、ローテーティングシャフトシール、油圧機器のガスケット、防火壁シール等に用いられ、船舶分野では、スクリューのプロペラシャフト船尾シール、ディーゼルエンジンの吸排気用バルブステムシール、バタフライバルブのバルブシール、バタフライ弁の軸シール等に用いられる。
化学プラント分野では、バルブ、パッキン、ダイアフラム、O(角)−リング、各種シール材等が挙げられ、これらは医薬、農薬、塗料、樹脂等化学品製造工程に用いることができる。具体的には、化学薬品用ポンプ、流動計や配管のシール、熱交換器のシール、硫酸製造装置のガラス冷却器パッキング、農薬散布機や農薬移送ポンプのシール、ガス配管のシール、メッキ液用シール、高温真空乾燥機のパッキン、製紙用ベルトのコロシール、燃料電池のシール、風洞のジョイントシール、ガスクロマトグラフィーやpHメーターのチューブ結合部のパッキン、分析機器や理化学機器のシールやダイアフラム、弁部品等として用いることができる。
現像機等の写真分野、印刷機械等の印刷分野及び塗装設備等の塗装分野では、乾式複写機のシール、弁部品等として用いることができる。
食品プラント機器分野では、バルブ、パッキン、ダイアフラム、O(角)−リング、各種シール材等が挙げられ、食品製造工程に用いることができる。具体的には、プレート式熱交換器のシール、自動販売機の電磁弁シール等として用いることができる。
原子力プラント機器分野では、パッキン、O−リング、ダイアフラム、バルブ、各種シール材等が挙げられる。
一般工業分野では、パッキング、O−リング、ダイアフラム、バルブ、各種シール材等が挙げられる。具体的には、油圧、潤滑機械のシール、ベアリングシール、ドライクリーニング機器の窓用のシール、その他のシール、六フッ化ウランの濃縮装置のシール、サイクロトロンのシール(真空)バルブ、自動包装機のシール、空気中の亜硫酸ガス、塩素ガス分析用ポンプのダイアフラム(公害測定器)等に用いられる。
電気分野では、具体的には、新幹線の絶縁油キャップ、液封型トランスのベンチングシール等として用いられる。
燃料電池分野では、具体的には、電極、セパレーター間のシール材や水素・酸素・生成水配管のシール等として用いられる。
電子部品分野では、具体的には、放熱材原料、電磁波シールド材原料、コンピュータのハードディスクドライブのガスケット等に用いられる。
現場施工型の成形に用いることが可能なものとしては特に限定されず、例えばエンジンのオイルパンのガスケット、磁気記録装置用のガスケット、クリーンルーム用フィルターユニットのシーリング剤等が挙げられる。
また、磁気記録装置(ハードディスクドライブ)用のガスケット、半導体製造装置やウェハー等のデ場合ス保管庫等のシールリング材等のクリーン設備用シール材に特に好適に用いられる。
更に、燃料電池セル電極間やその周辺配管等に用いられるパッキン等の燃料電池用のシール材等にも特に好適に用いられる。
摺動部材:
自動車関連分野では、ピストンリング、シャフトシール、バルブステムシール、クランクシャフトシール、カムシャフトシール、オイルシール、ワイパーブレード等が挙げられる。
一般に、他材と接触して摺動を行う部位に用いられるフッ素ゴム製品が挙げられる。
非粘着性部材:
コンピュータ分野での、ハードディスククラッシュストッパー等が挙げられる。また、複写機、プリンタ分野でのロール部品等が挙げられる。
撥水撥油性を利用する分野:
自動車のワイパーブレード、屋外テントの引き布等が挙げられる。
次に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例中の使用材料は、それぞれ次に示すものである。
フッ素ゴム(A)
ポリオール架橋可能な2元フッ素ゴム(ダイキン工業(株)製のG710BP)
フッ素樹脂(B)
ネオフロンETFE(ダイキン工業(株)製のEP−610)
配合物
ワックス:カルナバワックス(東亜化成(株)製のTOWAX−3P1)
液状フッ素ゴム:ダイエルG−101(ダイキン工業(株)製)
充填剤
カーボンブラック(Cancarb社製のMTカーボン:N990)
架橋剤
ビスフェノールAF(特級試薬 和光純薬工業(株)製)
架橋促進剤
BTPPC(特級試薬 和光純薬工業(株)製)
受酸剤
酸化マグネシウム(協和化学工業(株)製 MA150)
架橋助剤
水酸化カルシウム(近江化学工業(株)製 CALDIC2000)
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
(1)架橋(加硫)特性
キュラストメーターII型(JSR(株)製)にて最低トルク(ML)、最高トルク(MH)、誘導時間(T10)及び最適加硫時間(T90)を測定する。
(2)100%モジュラス(M100)
JIS K6251に準じて測定した。
(3)引張破断強度(Tb)
JIS K6251に準じて測定した。
(4)引張破断伸び(Eb)
JIS K6251に準じて測定した。
(5)硬度(ショアA)
JIS K6253に準じ、デュロメータ タイプAにて測定した(ピーク値)。
(6)成形品表面の凸部の総体積は、キーエンス社製、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9700)を用い、解析ソフトとして三谷商事株式会社製のWinRooF Ver.6.4.0を用いて算出(280μm×200μ当たりの凸部総体積)した。
(7)重量減少率
架橋性組成物を250℃に維持された過熱炉中に24時間入れて取り出し、前後の重量減少量を加熱前の重量で割った百分率を重量減少率とした。
実施例1−1
内容積3リットルの加圧型ニーダーに、体積充填率が85%になるようにフッ素ゴム(A)85質量部とフッ素樹脂(B)15質量部とを投入し、材料(フッ素ゴムとフッ素樹脂)温度が230℃になるまで練り、フッ素ゴム組成物を得た。ローターの回転数は45rpmとした。得られたフッ素ゴム組成物に、オープンロールにて表1に示す所定の配合物、充填剤、架橋剤、架橋促進剤等の成分を混合した。
その後、フッ素ゴム組成物を、成形金型内で、180℃、5分間、40kg/cm2の加圧下で架橋して、一次架橋成形品を得た。その後、一次架橋成形品を230℃に維持された加熱炉中に24時間入れて加熱処理を行うことで、試験成形品(シート:45mm×80mm×2mm)を得た。
実施例1−2
実施例1−1の配合物のカルナバワックスを表1の配合量とした以外は、実施例1−1と同様の方法で試験成形品を得た。
実施例1−3
実施例1−1の配合物のカルナバワックスを表1の配合量とした以外は、実施例1−1と同様の方法で試験成形品を得た。
実施例1−4
実施例1−1の配合物のカルナバワックス、架橋剤及び架橋促進剤を表1の配合量とした以外は、実施例1−1と同様の方法で試験成形品を得た。
実施例1−5
実施例1−4の配合物のカルナバワックスを表1の配合量とした以外は、実施例1−4と同様の方法で試験成形品を得た。
実施例1−6
実施例1−4の配合物のカルナバワックスを表1の配合量とした以外は、実施例1−4と同様の方法で試験成形品を得た。
実施例2−1
実施例1−1のカルナバワックスの代わりにG−101を使用し、表1の配合量とした以外は、実施例1−1と同様の方法で試験成形品を得た。
実施例2−2
実施例2−1の配合物のG−101を表1の配合量とした以外は、実施例2−1と同様の方法で試験成形品を得た。
実施例3
実施例1−1の配合物、架橋剤及び架橋促進剤を表1の配合量とした以外は、実施例1−1と同様の方法で試験成形品を得た。
比較例1
内容積3リットルの加圧型ニーダーに、体積充填率が85%になるようにフッ素ゴム(A)85質量部とフッ素樹脂(B)15質量部とを投入し、材料(フッ素ゴムとフッ素樹脂)温度が230℃になるまで練り、フッ素ゴム組成物を得た。ローターの回転数は45rpmとした。得られたフッ素ゴム組成物に、オープンロールにて表1に示す所定の配合物、充填剤、架橋剤、架橋促進剤等の成分を混合した。
その後、フッ素ゴム組成物を、成形金型内で、180℃、5分間、40kg/cm2の加圧下で架橋して、一次架橋成形品を得た。その後、一次架橋成形品を230℃に維持された加熱炉中に24時間入れて加熱処理を行うことで、試験成形品(シート:45mm×80mm×2mm)を得た。
比較例2
比較例1で配合物を表1のように混合した以外は、比較例1と同様の方法で試験成形品を得た。
比較例3
比較例1の配合物を表1のように混合した以外は、比較例1と同様の方法で試験成形品を得た。
実施例1−1〜1−6、実施例2−1〜2−2、実施例3及び比較例1〜3で得られた試験成形品の物性を測定した。結果を表1に示す。