JP6161318B2 - 長尺ptcヒーターおよびその使用方法 - Google Patents

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Description

本発明は正温度係数特性を備えた長尺PTCヒーターとその使用方法に関する。
正温度係数(PTC)特性を備えた発熱体は知られている。ここで、PTC特性とは、Positive Temperature Coefficientの頭文字を取ったものであり、温度が高くなると電気抵抗が正の数の係数だけ変化する特性をいう。PTC特性を備えた発熱体を持つヒーターは、優れた省エネ性を備えることから種々の分野で用いられている。PTC特性を備えた発熱体として、チタン酸バリウムに添加物を加えたセラミックスからなるものと、樹脂組成物中にカーボンブラックのような導電体粉末を添加したものとが知られている。
後者の一例として、特許文献1には、2本の長尺状の給電線に対して、樹脂組成物(ポリマー)に導電性カーボンブラックを添加した導電性重合体(発熱体として機能する)を、直接的に溶融成形した長尺PTCヒーターが記載されている。これらの長尺PTCヒーターは全体が絶縁性部材で覆われている。
特開昭60−262856号公報
前記特許文献1に記載される形状のPTC特性を備えた長尺PTCヒーターは、横幅が狭く、また全体として可撓性があり、水道管などに巻き付けて使用したり、凹凸の多い面に沿わせて使用するのに適している。また、セラミックス形のPTC発熱体と比較して、特許文献1に記載されるような、樹脂組成物に導電性カーボンブラックを添加したPTC発熱体は、軽量である利点もある。
しかしながら、特許文献1に記載される形態の長尺PTCヒーターは、給電線に加熱溶融した発熱体としての樹脂組成物を、そのほぼ全長にわたって一体成形して形成されたものであり、給電線と樹脂組成物との接合は面接合となっている。そのために、可撓性はあるとしても、長尺状のヒーターに反覆して折り曲げが作用したときに、樹脂組成物と給電線との間の接合面に剥離が生じる恐れがある。また、局部的に過度の折り曲げが作用したときにも、その部分の接合面に剥離が生じる恐れがある。このような剥離は、導通不良を引き起こすので避けなければならない。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、導電体粉末を含む樹脂組成物からなる正温度係数特性を備えた発熱体を持つ長尺PTCヒーターにおいて、反覆して折り曲げが作用したとき、あるいは局部的に過度の折り曲げが作用したときにも、樹脂組成物と給電線との間の接合面に剥離が生じるのを回避できるようにした、より改良された正温度係数特性を備えた発熱体を持つ長尺PTCヒーターを提供することを課題とする。
上記の課題を解決するための本発明による長尺PTCヒーターは、正温度係数特性を備えた発熱体を持つ長尺PTCヒーターであって、前記発熱体は導電体粉末を含む樹脂組成物からなるチップ状の発熱体であり、その複数個が金属端子を介して給電線に適宜の間隔をおいて機械的および電気的に接続しており、全体が絶縁性部材で覆われていることを特徴とする。
本発明による長尺PTCヒーターは、複数のチップ状の発熱体が所定の間隔をおいて配置されており、かつ、各発熱体と給電線との接続は金属端子を介して行われていて、金属端子の形状を適宜設定することにより、金属端子と給電線との接続を実質的に点による接続とすることができる。そのために、給電線の長手方向の全域にわたって発熱体と給電線とが面で接触しているものと比較して、長尺PTCヒーターが曲がりを受けたときに発熱体に作用する曲げ応力を小さくすることができ、発熱体と金属端子の間、金属端子と給電線との間での剥離は生じにくくなる。同時に、十分な可撓性も確保される。そのために、本発明による長尺PTCヒーターは、施工環境に左右されることなく、種々の施工現場で使用することが可能となり、かつ施工現場での取り扱いも容易となる。
本発明による長尺PTCヒーターにおいて、好ましくは、給電線が、金属単線のより線または編組線であることを特徴とする。より好ましくは、銅単線のより線または編組線である。編組線である給電線を用いることで、長尺PTCヒーターの折り曲げによる損傷を低減することができ、かつ曲げ耐性の大きな長尺PTCヒーターを得ることができる。金属単線は直径が0.2mm程度であることが好ましい。
本発明による長尺PTCヒーターにおいて、好ましくは、チップ状の発熱体と金属端子とは導電ペーストを介して電気的に接続していることを特徴とする。ここで、導電ペーストとは、低温溶融金属粒子を熱硬化樹脂組成物中に分散させたペースト状材料をいっており、チップ状の発熱体と金属端子との間により高い接続信頼性が確保される。低温溶融金属粒子としては、Ag、AgPd、Pd、Au、Alなどが例示できる。熱硬化樹脂としては、エポキシ樹脂などを例示できる。
本発明による長尺PTCヒーターにおいて、チップ状の発熱体の形状には特に制限はなく、矩形状、台形状、楕円状、円形状など任意である。好ましくは、チップ状の発熱体は幅Dおよび長さLの矩形状であり、長さL方向の側辺が金属端子を介して給電線に接続しており、D/Lが1または1以上である。より好ましくは、D/Lは2以上である。
この形態では、長尺ヒーターを曲げたときに、D/Lが1未満であるチップ状の発熱体と比較して、曲げやすくなると共に、チップ状の発熱体が絶縁性の被覆樹脂に損傷を与えるのを抑制することができる。すなわち、曲げたときの応力を緩和できるので、より小さな曲率で曲げながら配設施工することが可能となる。
また、本発明による長尺PTCヒーターは加熱を必要とする任意の場所で使用することができる。PTC特性を備えた発熱体を有することから、省エネルギーの効果も達成できる。使用方法の例として、可撓性に優れた特性を活用して、水道管などの通水管に本発明による長尺PTCヒーターを巻き付けるようにまたは直線状に配置して通電加熱することで該通水管内での凍結を防止する使用方法、コンクリート型枠に沿って上記の長尺PTCヒーターを配置して通電加熱することで打設したコンクリートの養生時にコンクリートの凍結を防止する使用方法、本発明による長尺PTCヒーターはセラミックス発熱体を全長に備えるものと比較して軽量であることから、建築物に付設された通水用の縦樋内に本発明による長尺PTCヒーターを配置して通電加熱することで該縦樋内での凍結を防止する使用方法、などを挙げることができる。
本発明において、導電体粉末としては、カーボンブラック、ニッケルなどの導電体粉末が挙げられる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラックおよびファーネスブラックで表面積が大きいもの、例えば、バルカンXC−72(キャポット社製品)、コンチネックスN330(カポット社製品)などが挙げられる。導電体粉末の平均粒径は40〜70μmであるか、それより大きな平均粒径のものあるいはそれより小さい平均粒径のものと混合したものでもよい。
本発明において、樹脂組成物とは、ポリマーとして一般に使用されている高分子材料であってよく、ポリエチレン、ポリエチレン共重合体、ポリエステル、フッ素樹脂、フッ素系ゴム、アクリルゴム、ポリ塩化ビニルなどを挙げることができる。
導電体粉末の樹脂組成物に対する添加量は、樹脂組成物100重量部に対して、15〜30重量部であることが好ましい。導電体粉末の添加量が少なすぎると抵抗値が大きくなりすぎて発熱しなくなる。逆に多くなりすぎると抵抗が低くなると同時に、抵抗値の温度依存性がなくなりPTC特性を示さなくなる。
樹脂組成物には必要により、安定剤、特にフッ素樹脂の場合、炭酸カルシウムなどの酸受容体を含有させることもできる。また、樹脂組成物を架橋させるには、電子線架橋や有機過酸化物などによる化学架橋により行えばよい。
本発明において、全体を覆う絶縁性部材としては、電気絶縁性、可撓性および耐候性を有する材料である、例えば塩化ビニル系樹脂を用いることができる。他に、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ−4-メチルペンテン-1、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド樹脂などを挙げることができる。さらに、ゴム材料の例として、天然ゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、フッ素樹脂ゴム、ブチルゴムなどを挙げることができる。
本発明によれば、可撓性に優れることから、繰り返しの曲げが作用しても、また局所的に90度から180度のような大きな曲げが作用しても、導電体粉末を含む樹脂組成物からなるチップ状の発熱体と給電線との間に剥離が生じるのを効果的に回避することできる、より改良された長尺PTCヒーターが得られる。また、本発明による長尺PTCヒーターを使用することで、種々の形態の通水管内での凍結を効果的に防止することができ、また打設したコンクリートが養生中に凍結するのも効果的に防止することができる。
本発明による長尺PTCヒーターの一実施の形態を示す断面図であり、図2のI−I線に沿って示している。 図1に示す長尺PTCヒーターの要部を示す斜視図であり、絶縁性部材を除去した状態で示している。 図1に示す長尺PTCヒーターで用いる金属端子を説明する斜視図。 本発明による長尺PTCヒーターを製造する工程の一例を説明するための図。 図4に示す製造工程で用いる押出成形機のクロスヘッドの概略断面図。 本発明による長尺PTCヒーターの他の実施の形態を示す3つの図。
以下、図面を参照しながら、本発明のいくつかの実施の形態を説明する。
図1〜図5を参照して、本発明による長尺PTCヒーターの第1の実施の形態を説明する。なお、以下の説明では、長尺PTCヒーターを単に「ヒーター」という。この例において、ヒーター1は、後に記載するように、押出成形によって全体が製造されており、例えば、厚み4mm、横幅17mm、長さ100mのような長尺なコード状をなしている。
ヒーター1の断面形状は任意であってよいが、図1には断面長方形のものが示される。他に、断面は、円や楕円状などであってもよい。好ましくは、被加熱体とヒーター1との密着性を向上させることができるように、表面に平面部を有していることが望ましく、その理由から、図1に示すような断面が長方形のものは、特に好適である。
ヒーター1内には、導電体粉末を含む樹脂組成物からなるチップ状の発熱体2の複数個と、各チップ状の発熱体2に給電するための一対の給電線3と、前記発熱体2と給電線3とを機械的および電気的に接続するめの金属端子4とが封入されており、それらが、前記のように塩化ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂である絶縁性部材5で覆われることで、ヒーター1とされている。
チップ状の発熱体2の形状に制限はないが、この例では、幅がD、長さがL、厚みがHの直方体をなしている。チップ状の発熱体2は、限定されないが、ヒーター1が前記の寸法に形成されている場合、例えば、図2に示すように、幅D:8mm、長さL:6mm、厚みH:1.6mmの寸法に形成される。なお、より可撓性を向上させるために、発熱体2での幅D/長さLの値Pが1または1以上であることが望ましい。図示しないが、発熱体2は円盤状のものであってもよい。
チップ状の発熱体2は、ベース樹脂としての樹脂組成物(例えば、低密度ポリエチレンなど)と導電体粉末(例えば、カーボンブラックなど)、さらに必要に応じて、二酸化珪素などの適宜のフィラーや、安定剤のような適宜の添加物との混合組成物を、撹拌しながら押出機により所要形状に(例えば扁平な長尺板状に)押し出し、押し出し後の混合組成物を乾燥処理し、適宜の大きさに裁断することで得ることができる。なお、このような導電体粉末を含む樹脂組成物からなる発熱体の製造方法は、例えば特開昭60−262856号公報、特公平4−37557号公報、特開2008−123764号公報など記載されるようすでに知られており、本発明による前記チップ状の発熱体2は、それらの公報に記載されている導電体粉末を含む樹脂組成物からなる発熱体を、所定の大きさと形状であるチップ状に裁断することで得ることができる。
前記チップ状の発熱体2は、図3に示す金属端子4を介して、前記した給電線3に機械的および電気的に接続している。金属端子4は、導電性を有すると共に柔軟に折り曲げることができる可撓性を有する材料、例えば銅などの金属板で作られる。この例において、金属端子4は、チップ状の発熱体2の長さL方向の端面とほぼ同じ形状と大きさである底面部41と、該底面部41の長手方向のほぼ中央部から一方側に延長する給電線把持片42と、該給電線把持片42の両側部において給電線把持片42とは反対方向に延長する発熱体把持片43、43とで構成されており、前記給電線把持片42は前記した給電線3にかしめられて給電線3と一体となり、発熱体把持片43、43はチップ状の発熱体2の長さL方向の端縁部にかしめられて発熱体2と一体となる。金属端子4の素材としては、前記した銅の他に、例えば、リン青銅、鉄、鉄ニッケル合金、金、銀、アルミニウムなどを用いることが可能である。
給電線3にかしめられる給電線把持片42は、所要の機械的強度が得られることを条件に、より幅の狭いものであることが望ましい。それにより、金属端子4と給電線3との接触部はより点接触に近いものとなり、ヒーター1の柔軟性、可撓性が向上する。また、発熱体2にかしめられる発熱体把持片43、43は、より幅の広いものであることが望ましい。それにより、金属端子4とチップ状の発熱体2との接触面積をより広いものとすることができ、発熱体2への給電条件を良好にすることができる。好ましくは、少なくとも発熱体2と発熱体把持片43、43とが接触する領域には、前記した導電ペースト6が塗布される。
図2に示すように、前記した2本の給電線3、3が並置され、その間に、幅D方向の両端に前記金属端子4、4を固定したチップ状の発熱体2が、所定の間隔をおいて、適数だけ備えられる。そして、各給電線3の一端部には、外部の電源と接続するための電気供給コード(不図示)が半田付け等にて接続され、電気供給コードから各給電線3、3および金属端子4を介して、チップ状の発熱体2に電力が供給される。なお、本発明において、前記給電線3には、銅などの導電性を有する単線や集合線、より線を用いることができ
る。特に、容易に撓ませることができることから銅単線の編組線は好ましい。
次に、図4、図5をも参照して、上記ヒーター1の製造方法について説明する。まず、前記したようにしてチップ状の発熱体2を製造し、両端縁近傍に導電ペースト6を塗布し焼き付け固定する。また、適宜の方法で金属端子4を製造する。そして、チップ状の発熱体2の導電ペースト6が塗布されている端縁部に、該金属端子4の発熱体把持片43、43側を当接して、チップ状発熱体2の厚さ方向の両端面側から挟み込み、かしめることで、金属端子4をチップ状の発熱体2に固定する。なお、このとき、必要に応じて、各発熱体把持片43、43互いに対向した内面上に予めクリーム半田などを塗布してもよい。
続いて、発熱体把持片43、43側をチップ状の発熱体2に固定した金属端子4の給電線把持片42側に、前記給電線3、3を沿わせておき、給電線把持片42をかしめることで金属端子4と給電線3とを一体に固定する。なお、このとき、必要に応じて、給電線把持片42を給電線3に対してスポット溶接してもよい。このようにして製造された、平行に走る2本の給電線3、3の間に、所定の間隔をおいて複数個のチップ状の発熱体2を固定した長尺発熱ユニット20が、図2に示される。そして、この長尺発熱ユニット20は、図4に示すように、巻取ドラム11にロール状に巻き取られて保管される。なお、隣接するチップ状の発熱体2、2間の距離は、所要の加熱環境が得られることを条件に任意であってよいが、通常は、1〜100mm程度の範囲である。なお、隣接するチップ状の発熱体2、2の距離はすべて同じであってもよく、異なった間隔で配置されていてもよい。
ロール状に巻き取られた長尺発熱ユニット20を巻取ドラム11から引き出し、押し出し成形法を用いて全体を絶縁性部材5(例えば、電気絶縁性および可撓性を有する塩化ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂5a)で被覆することで、ヒーター1とされる。具体的には、図5に示すように、電気絶縁性および可撓性を有する塩化ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂5aを押出成形機12のクロスヘッド13から所定圧力にて押し出して帯状の成形体を押出成形によって作製する際に、上記長尺発熱ユニット20を、押し出される各熱可塑性樹脂5a間に順次挟み込むことにより、長尺発熱ユニット20は、上記成形体の長さ方向に沿って上記成形体(絶縁性部材5)内に封入される。
図5に示すように、このとき、各熱可塑性樹脂5aは、クロスヘッド13のダイ13aとニップル13bとの間をそれぞれ押し出される一方、長尺発熱ユニット20は、ニップル13b内を通過することにより、各熱可塑性樹脂5aが各チップ状の発熱体2の厚さ方向の両端面に向かうように長尺発熱ユニット20に対してそれぞれ押し出される。
その際に、ニップル13b内の長尺発熱ユニット20が通過する貫通孔13cを介して吸引しており、ダイ13aとニップル13bとの間からチューブ状に押し出された各熱可塑性樹脂5aおよびニップル13bの先端により囲まれた空間を減圧状態としている。これにより、上記各熱可塑性樹脂5aが、迅速に長尺発熱ユニット20に密着すると共に一体化するようになっている。
このようにして長尺発熱ユニット20を挟んだ各熱可塑性樹脂5aが一体化した後、図4に示すように、水冷槽14内にて水冷することにより、図1に断面を示す形状の、上記長尺発熱ユニット20を有する帯状の長尺PTCヒーター1が形成される。このヒーター1は、巻取ドラム15にロール状に巻き取られる。この製造方法では、押出成形時に加熱によって膨張した熱可塑性樹脂の冷却による収縮によって、各発熱体把持片43、43がチップ状の発熱体2に、給電線把持片42が各給電線3に押圧されながら、長尺発熱ユニット20はヒーター1内に封入される。
このことから、上記方法では、金属端子4とチップ状の発熱体2および給電線3との接続が、ヒーター1を撓ませた場合においても熱可塑性樹脂の冷却時の収縮力によってヒーター1内にて維持できるので、従来のように発熱体および給電線とを接続する半田による結合を省くことができる。さらに、長尺発熱ユニット20を熱可塑性樹脂の押出成形によって連続的に熱可塑性樹脂からなる帯状の成形体内に封入してヒーター1を作製できるので、長尺発熱ユニット20を封入したヒーター1を特に長さの制限がなく作製することが容易となる。
本発明によるヒーター1では、チップ状の発熱体2は導電体粉末を含む樹脂組成物からなっており、それ自体で可撓性を持つ。また、セラミックスの発熱体と比較して軽量である。さらに、チップ状の発熱体2は、所定の間隔をおいて、その複数個が金属端子4を介して給電線3に固定されている。従って、ヒーター1は十分な可撓性を備え、かつ軽量化も可能となる。さらに、金属端子4に形成した幅の狭い把持片(給電線把持片42)によって、チップ状の発熱体2は給電線3に固定されており、特許文献1に記載されるような従来の長さの長い樹脂組成物からなる発熱体が給電線に対して一体成形されている形態の長尺PTCヒーターと比較して、ヒーター1が折曲したときに作用する曲げ応力によって、チップ状の発熱体2と金属端子4の間、金属端子4と給電線3との間で剥離が生じるのを、ほぼ完全に回避することができる。それにより、ヒーター1の使用態様を問わず、ヒーター1としての信頼性は大きく向上する。さらに、曲げ特性に優れていることから、被加熱体に対するヒーター1の接触面も広く確保することができる。
上記のように、本発明による長尺PTCヒーター1は曲げ特性に優れていることから、種々の場所での加熱手段として用いることができる。中でも、水道管などの通水管に上記の長尺PTCヒーター1を巻き付けるように配置して通電加熱することで当該通水管内での凍結を防止するという使用方法は好ましい態様である。前記のように本発明による長尺PTCヒーター1は曲げ特性に優れており、通水管の直径が5mm程度のものに対しても、チップ状の発熱体2を通水管の表面に直線的に沿わせた状態で密着させることが可能となる。
他の好適な使用態様として、コンクリート型枠に沿って上記の長尺PTCヒーター1を配置して通電加熱することで打設したコンクリートの養生時にコンクリートの凍結を防止するという使用態様が挙げられる。打設したコンクリートの表面が凹凸面であるような場合には、コンクリートの凹凸表面に沿って長尺PTCヒーター1を確実に配置することができるようになり、均一な養生を進行させることができる。また、型枠内に打設したコンクリートの場合にも、隣接する型枠内のコンクリートの表面に、型枠を跨ぐようにして連続して長尺PTCヒーター1を確実に配置することができるようになり、養生作業がきわめて容易となる。
他の好適な使用態様として、建築物に付設された通水用の縦樋内に上記の長尺PTCヒーター1を配置して通電加熱することで、該縦樋内での凍結を防止するという使用態様が挙げられる。長さの全長にわたって発熱体を配置した長尺PTCヒーターと比較して、本発明による長尺PTCヒーター1は、チップ状の発熱体2が間隔をおいて配置された形状であり、軽量となる。発熱体がセラミックスであるものと比較しても軽量となる。そのために、縦樋が10mを超えるような長いものであっても、その全長にわたって、本発明による長尺PTCヒーターをそのまま投入した場合でも、自重によってヒーターが切断するような事態が生じるのを回避することができる。自重による切断を回避するために、途中の箇所で固定する作業を回避することができ、長さの長い縦樋内での凍結防止処理がきわめて容易となる。
図6(a)(b)(c)は、チップ状の発熱体2の他の形態を示している。図6(a)に示すチップ状の発熱体2aは、平面視長方形ではなく、平行四辺形をなしている。他の部品は図2に示した長尺発熱ユニット20と同じであり、同じ符号を付している。この形態のチップ状の発熱体2aを持つヒーター1は、管などに巻き付けて使用するときに、管表面とチップ状の発熱体2aとの馴染み性を一層よくすることが可能となる。
図6(b)に示すチップ状の発熱体2bは、長さLが、図2に示した長尺発熱ユニット20で使用したチップ状の発熱体2の長さLと比較して、十分に小さくなっている。一例として、図2に示したチップ状の発熱体2が幅D:8mm、長さL:6mm、厚みH:1.6mm(D/L=1.3)であるのに対して、チップ状の発熱体2bでは、幅D:8mm、長さL:2mm、厚みH:1.6mm(D/L=4.0)とされている。また、それに応じて、金属電極4bの幅も、チップ状の発熱体2bの長さL:2mmに一致するように、狭くされている。この形態のチップ状の発熱体2bを持つヒーター1は、長手方向に直交する方向でも曲がりやすくなっており、細管の長手方向に沿ってヒーター1を配設するときに、チップ状の発熱体2bと管表面との接触面積を確実に確保しやすくなる。
図6(c)に示すチップ状の発熱体2cは、前記図6(b)に示したチップ状の発熱体2bの複数本(図では7本)を近接して平行に配置し、それを一つの金属電極4cで一体に固定している。この形態のチップ状の発熱体2cは、給電線3への取り付けが簡素化できる利点がある。長手方向に直交する方向での曲がりやすさは、チップ状の発熱体2bとほぼ同じであり、同様な効果が得られる。
次に、実施例と比較例により本発明による長尺PTCヒーター1の優位性を説明する。
(1)曲がり性の試験
A.実施例品
[導電体粉末を含む樹脂組成物からなるチップ状発熱体の製造]
導電体粉末としてのカーボンブラック20重量部と、樹脂組成物としての低密度ポリエチレン100重量部と、クレー5重量部とで混和した材料を、200〜250℃の温度で加熱押出機により混練しかつ押出成形することで、幅D:8mm、厚みH:1mmである、樹脂組成物を発熱体として持つ長尺のPTC発熱体を得た。その長尺のPTC発熱体の幅方向の端縁に導電ペーストとして、Agを混入した導電ペースト(大研化学工業株式会社製、GA−2500E)を塗布して焼き付けた。
それを、長さL:1mmに切断して発熱体チップAを得た。また、その発熱体チップAの6本を8mmの幅内に平行に並べて発熱体チップBとした。また、長さL:8mmに切断して発熱体チップCを得た。発熱体チップAでの前記D/L=8/1=8、発熱体チップBでの前記D/L=8/(1×6)=1.3、発熱体チップC1での前記D/L=8/8=1、である。
それぞれの発熱体チップA、B、Cに、図3に一例を示したような、銅板から加工した両端部に把持部を持つ金属端子の一端側の把持部を固定して、チップ状発熱体A1、B1、C1とした。なお、各金属端子の他端側の把持部は給電線への把持部である。チップ状発熱体A1で用いた金属端子の幅は約1mm、チップ状発熱体B1で用いた金属端子の幅は約8mm、チップ状発熱体C1で用いた金属端子の幅は約8mmであり、給電線側の把持部の幅はほぼ1mmとした。
B.比較例品
市販されている厚みH:1mmのセラミックス形のPTC発熱体から、幅D:8mm、長さL:8mmの発熱体チップXを得た。それに、実施例でのチップ状発熱体C1で用いたものと同じ金属端子の一端を固定して、チップ状発熱体X1とした。
C.試験
細い水道管や機器のドレインパイプを想定した直径10mmの円筒形のパイプを被加熱物として想定し、使い方として、パイプに長尺PTCヒーターを巻き付けるのではなく、長手方向に沿って這わせることを想定したときの、実施例品A1、B1、C1、比較例品X1のそれぞれと、パイプ表面との接触しやすさを比較した。試験では、各発熱体チップの幅:D方向をパイプの軸心線に直交する方向とし、手で各チップ状発熱体の表面をパイプ側に押し付けるようにした。
D.結果
・チップ状発熱体A1は、容易にパイプの曲面に沿って変形することができた。
・チップ状発熱体B1も、チップ状発熱体A1と同様、容易にパイプの曲面に沿って変形することができた。
・チップ状発熱体C1は、曲面に沿わせるのに、チップ状発熱体A1、B1と比較して、大きな力を必要とした。また、発熱体チップの全面をパイプ表面の曲面に沿わせることは困難であった。
・チップ状発熱体X1は、チップ状発熱体C1と同じ力で押し付けても、パイプ表面の曲面に沿うように湾曲させることができなかった。
E.評価
実施例品は、チップ状発熱体の基材が樹脂製であることから、比較例品と比べて、曲がりやすくなっており、容易にかつ広い面積で被加熱体との間の伝熱面積を確保できることがわかる。そのために、実施例品A1、B1では、パイプに巻き付けることなく、長手方向に沿わせるだけで、所要の加熱効果を得ることができ、被加熱物に対するヒーターの取り付け作業も容易となる。実施例品C1では、十分な加熱効果を得るためには、パイプに巻き付けることが求められるが、同じ加熱面積を得るためのヒーター1の製造作業は、簡素化できる利点がある。比較例品X1の場合は、例え巻き付けるとしても、被加熱物に対する接触面積が少ないために、実施例品と同等の加熱効果を得るのはできない。
なお、上記の比較は、実施例品と比較例品を用いて長尺PTCヒーターを製造し、それを用いて試験する場合でも、同様な結果となる。
(2)発熱体の長さと幅の比による被覆である絶縁性部材に与える影響試験
A.実施例品
上記(1)曲がり性の試験で用いたと同じ長尺のPTC発熱体から、幅D:8mm、長さL:6mmの発熱体チップE(D/L=8/6=1.33)と、幅D:8mm、長さL:15mmの発熱体チップF(D/L=8/15=0.53)とを作り、図3に示した形状の銅製の金属端子を固定して、チップ状発熱体E1、F1とした。チップ状発熱体E1、F1の発熱体チップE、Fに一端を固定した金属端子の他端側の把持片に、直径0.2mmの銅より線からなる直径0.8mmの給電線を固定した。隣接するチップ状発熱体間の距離は、10mmとした。そして、全体をブチルゴム(絶縁性部材に相当する)で覆って、長尺PTCヒーターとした。
B.試験
それぞれの長尺PTCヒーターを、直径19mmのパイプに見立てた金属の棒に掛け渡し、その両端部を一つにして、そこにばね計りを接続し、引っ張り試験を行った。ブチルゴムの被覆が破壊され、チップ状発熱体が露出するときの力を測定した。
C.結果
・チップ状発熱体E1を用いた試験材では、引っ張り力が25kgになってもチップ状発熱体が露出することはなかった。
・チップ状発熱体F1を用いた試験材では、引っ張り力が10kgの時点で、被覆が破損して、チップ状発熱体が露出した。また、チップ状発熱体に変形する破損が見られた。
D.考察
この結果から、曲面に巻き付ける方法で長尺PTCヒーターを使用する場合に、発熱体チップの幅Dと長さLの比D/LをD/L≧1とすることが、被覆破損を防ぎ、また発熱体破損も防ぐことができ、好ましいことがわかる。
(3)給電線と発熱体との剥離性試験(試験1)と破損試験(試験2)
A.実施例品
上記(2)で用いた、発熱体としてチップ状発熱体E1(D/L=8/6=1.33)を用い、直径0.2mmの銅より線からなる直径0.8mmの給電線に、隣接するチップ状発熱体E1間の距離が10mmとなるようにして固定した後、全体をブチルゴム(絶縁性部材に相当する)で覆った長尺PTCヒーターを、10cmの長さで切断したものを実施例品とした。
B.比較例品
チップ状発熱体として、市販されている厚みH:1mmのセラミックス形のPTC発熱体から切り出した幅D:8mm、長さL:6mmの発熱体チップを用いた以外は、実施例品と同じようにして長尺PTCヒーターを製造し、それを10cmの長さで切断したものを比較例品とした。
C.試験1(剥離性試験)
長尺PTCヒーターを、細い水道管や機器のドレインパイプに巻き付けて冬季以外は取り外す等の用途や、仮設的にパイプや建築物の基礎型枠の加温を繰り返す目的で取り付けることを想定して、双方の長尺PTCヒーターに対して繰り返し曲げ試験を行い、電気抵抗の変化をテスターを用いて測定した。試験は、一端から5cmまでを万力で挟持した状態で、他端側を直角まで折り曲げ、折り曲げた後、元の直線状の姿勢に戻すことを、10回行い、各回での伸ばした状態および直角に曲げた状態での電気抵抗を測定した。その結果を表1に示した。
Figure 0006161318
D.評価
表1に示されるデータから、本発明による長尺PTCヒーターは、曲げによる電気的接触に影響がないことがわかる。これは、発熱体が導電体粉末を含む樹脂組成物からなるチップ状の発熱体であること、金属端子を介して給電線に固定していることから、曲げに対する追従性が良好となり、発熱体と給電線とが離れ難くなった結果である。
E.試験2(破損試験)
上記試験1(剥離性試験)での10回目の曲げを行った実施例品と比較例品について、外観を目視により観察した。実施例品では絶縁性部材に相当するブチルゴムに破れはなく、外観に変化はなかった。一方、比較例品では、ブチルゴムに破れが生じ、給電線が外部に露出した状態となっていた。これは、実施例品は、発熱体が導電体粉末を含む樹脂組成物からなるチップ状の発熱体であることから、曲げに対する追従性が良好となった結果である。
1…本発明による長尺PTCヒーター、
2…導電体粉末を含む樹脂組成物からなるチップ状の発熱体、
3…給電線、
4…金属端子、
5…絶縁性部材、
6…導電ペースト、
20…長尺発熱ユニット。

Claims (5)

  1. 正温度係数特性を備えた発熱体を持ち管の表面に沿って配設するのに用いる長尺PTCヒーターであって、前記発熱体は導電体粉末を含む樹脂組成物からなる平面視で平行四辺形のチップ状の発熱体であり、その複数個が金属端子を介して給電線に適宜の間隔をおいて機械的および電気的に接続しており、全体が絶縁性部材で覆われていることを特徴とする管の表面に沿って配設するのに用いる長尺PTCヒーター。
  2. 正温度係数特性を備えた発熱体を持ち管の表面に沿って配設するのに用いる長尺PTCヒーターであって、前記発熱体は、導電体粉末を含む樹脂組成物からなる幅Dおよび長さLの矩形状であってD/Lが2以上である発熱体の複数本を近接して平行に配置して、その幅D方向の両端を一つの金属電極で一体に固定した形態のチップ状の発熱体であり、その複数個が金属端子を介して給電線に適宜の間隔をおいて機械的および電気的に接続しており、全体が絶縁性部材で覆われていることを特徴とする管の表面に沿って配設するのに用いる長尺PTCヒーター。
  3. 給電線が、金属単線のより線または編組線であることを特徴とする請求項1または2に記載の長尺PTCヒーター。
  4. チップ状の発熱体と金属端子とは導電ペーストを介して電気的に接続していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の長尺PTCヒーター。
  5. 水道管などの通水管に請求項1ないし4のいずれか一項に記載の長尺PTCヒーターを巻き付けるようにまたは直線状に配置して通電加熱することで該通水管内での凍結を防止することを特徴とする長尺PTCヒーターの使用方法。
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