JP6158718B2 - 射出成形機の金型保護設定値自動算出方法 - Google Patents

射出成形機の金型保護設定値自動算出方法 Download PDF

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Description

本発明は、射出成形機の金型保護設定値自動算出方法に関する。
射出成形は、加熱溶融させた材料を金型内に射出注入し、冷却し固化させる事によって、成形品を得る方法であり、複雑な形状の製品を大量生産するのに適している。射出成形の材料には、樹脂、金属、またはこれらの複合材料がある。一般に、射出成形は、型閉及び型締め、射出、保圧、冷却、計量、型開、取出、の順序で行われ、この成形サイクルの繰り返しで、製品を連続的に生産する。そして、成形サイクルが短時間であるほど生産性が高くなる。なおここで、型閉は、開いた金型を低い圧力で速やかに閉じる動作のことであり、また、型締めは、閉じた金型を型閉動作時の圧力よりさらに大きな圧力で締め付ける動作のことである。
成形サイクルのうち、型閉時間は、型開限位置まで開いた金型を閉じ始めてから金型を閉じて型閉限位置まで型締めするのに要した時間である。基準型閉時間は、成形サイクル開始時の1ショット目、又は、型開閉設定変更後の1ショット目にトルク初期設定値を上限トルクて型開限位置から型閉限位置まで型閉を行うのに要した時間である。型開限位置は、金型を完全に開いた位置である。型閉限位置は金型を完全に閉じた位置であり、原点となる。
型閉及び型締めにおけるピークトルクのうち、基準トルクは、成形サイクル開始時の1ショット目のトルク、又は、型開閉設定変更後の1ショット目のトルクである。制御上限トルクは、型開閉制御において、型閉から型締めまでの一連の動作での型開閉ユニットの駆動装置の出力の上限値であって、金型保護のために算出される値である。本明細書では、型閉におけるピークトルクをトルクとして表記する。トルクの単位はN・m(ニュートンメートル)である。トルクは、絶対値で表示する場合と、相対値で表示する場合がある。本明細書では、トルクは%表示する。例えば、型開閉ユニットの駆動装置の定格出力を100%としたときの割合でトルクは%表示される。
射出成形機は主に型開閉ユニットと射出ユニットに分かれている。型開閉ユニットは金型の開閉や突き出しを行うユニットであり、金型の開閉方式には、トグル方式と直圧方式とがある。射出ユニットは材料を加熱溶融させ、金型内へ射出する装置である。
型開閉ユニットの駆動装置には、油圧式と電動式がある。電動式は、サーボモータとボールねじで作動する。電動式は、油圧式よりも使用電力や騒音が低減され、応答性や繰り返し精度が良いなどの利点がある。
型締めでは、可動型は高い射出圧に耐えるために固定型に強固に押圧され、型の合わせ面には強大な面圧が加わる。すなわち、型締めでは、金型にはtonオーダーの強大な型締力が加わることとなる。ここで、金型が開閉動作する過程で、型の合わせ面に異物が付着した場合、そのまま型締めが行われると、強大な型締力が異物をかみ込んだ一点に集中して型の合わせ面を損傷し、金型を破損させてしまう金型破損事故に至ることがある。これについては、可動型と固定型が合わさった位置を計測することで、型の合わせ面に異物が付着したことを検知する方法も考えられるが、金型は熱膨張する性質があることから、金型温度や金型周囲温度の変化、成形条件の変化、温度条件の変化等により経時的な誤差が入り込み、型の合わせ面の位置を正確に把握し難い。金型は非常に高価かつ重要なツールであるから、上記のような金型破損事故を防止することは最重要課題である。そこで、制御上限トルクを算出して型閉時の上限値の設定を行って、金型を破損させないように保護する取り組みがなされている。
特許文献1には、可動プラテンの位置検出手段と、前回の成形サイクルにおける型閉じ時の可動プラテンの位置情報を記憶する記憶手段と、2回の成形サイクルの間での型閉じ時の可動プラテンの位置の差の限界値を設定する増分限界値設定手段と、現在の成形サイクルにおける型閉じ時の可動プラテンの位置と前記記憶手段に記憶された位置との差を演算してその演算結果を上記限界値と比較する演算及び比較手段とを備え、上記演算結果が上記限界値を越えていないことを条件として型締め動作を行うこと(その請求項1)、が記載されている。
特許文献2には、低圧型締め行程区間における設定圧力値を、固定側金型と可動側金型との間に異物が存在しない状態(正常な状態)での低圧型締め行程時に実測した型締め圧力のピーク値と同程度、もしくはそれをごく僅かに上回る程度の値に、マシン自体が自動的に修正するようにしたこと(その請求項1)、が記載されている。
特許文献3には、低圧型締力の設定値を、所定の大きさの型締力と、当該所定の大きさの型締力を可動金型に加えて固定金型に向けて移動させたときに前記可動金型が停止した位置との相関関係に基づいて求めること(その請求項1)、が記載されており、また、その段落0048には、型締力の値を大きくしていくと、金型停止位置は可動金型が固定金型に接触する位置に近づいていくが、型締力の値がある値を越えると、それ以上金型停止位置が変化しなくなる。この位置はグラフ上の変曲点に相当し、可動金型が固定金型に接触した位置であると判断することができるので、変曲点に相当する型締力の値を低圧型締力として設定すれば、確実に可動金型を固定金型に接触させることができる、との記述がある。
特公平7−121529号公報 特許第3648059号公報 特許第4689559号公報
上述の通り、成形サイクル時間が短いほど生産性が高くなるため、製造工程では、型閉時間が必要以上に長くならないように管理する必要がある。また、型閉時間は、制御上限トルクを算出する時間を短くするうえでも重要な要素である。
しかしながら、特許文献1〜3記載の方法は、いずれも、制御上限トルクを算出するときに、型閉時間を考慮するとの記述は見当たらない。制御上限トルクを安全かつ正確に算出する既知の方法としては、なるべく少しずつトルクを増やして型閉を繰り返す方法が挙げられるが、型閉時間が必要以上に長くなってしまうという問題がある。
そこで、本願発明者は、制御上限トルクと型閉時間とには一定の関係性があることに着目し、熟練した作業者(オペレータ)の作業と、新人で不慣れな作業者の作業を比較観察してみたところ、次のことが判明した。熟練した作業者は生産性があまり低下しないように工夫して制御上限トルクを算出しているように見受けられた。しかし、新人で不慣れな作業者は慎重を期してなるべく少しずつ型閉していた。その結果、型閉時間が長くなって型閉トルクが小さくなる傾向となり、制御上限トルクの算出時間が長くなり、尚且つ、成形サイクル時間が長くなってしまっていた。
すなわち、型閉時間が長くなるに従って制御上限トルクが小さい傾向があり、型閉時間が長すぎると制御上限トルクが不足する傾向があること、また、型閉時間が短くなるに従って制御上限トルクが大きい傾向があり、型閉時間が短すぎると制御上限トルクが過大となる可能性があること、などが判明した。したがって、本願発明者は、金型保護における型開閉制御の制御上限トルクの適正化を行うためには、トルクのみならず、型閉時間についてもフィードバックすべきであるとの考えに至った。
つまり、既知の、金型保護における型開閉制御の制御上限トルクの自動算出方法は、制御上限トルクにのみ着目して算出していたので、型閉時間が長くなって制御上限トルクが小さくなる傾向となり、また、制御上限トルクを算出する時間も長くなっていた。そして、型閉時間が必要以上に長くなることで生産性が低下する、という問題点を有する。
そこで本発明の目的は、制御上限トルクと型閉時間に一定の関係性があることに着目し、適正な範囲の制御上限トルクを自動的に算出する、射出成形機の金型保護設定値自動算出方法を提供することにある。
本発明の射出成形機の金型保護設定値自動算出方法は、制御手段によって可動型と固定型の型開閉制御を行う射出成形機において、型開閉制御における駆動装置の制御上限トルクを自動算出する方法であり、トルク初期設定値を上限トルクて型閉して初期型閉時間を実測し、次に、前回の上限トルクを半減させた最新の上限トルクにて型閉して最新型閉時間を実測し、前回型閉時間を基準としたときの最新型閉時間が10%超の割合で増加するまで前回の上限トルクを半減させた最新の上限トルクにて型閉して最新型閉時間を実測する工程を繰り返し、次に、前回の上限トルクと最新の上限トルクの定格出力比での差が3%以内でかつ初期型閉時間を基準としたときの最新型閉時間が10%以内の割合で増加する条件を満たしたときは最新の前記上限トルクに対して予め設定した型締め開始位置の大きさに対応して型開閉動作の安全に適する倍率で上限トルクを大きくする所定の係数を掛けるとともに、前記条件を満たさないときは、前回の上限トルクの定格出力比の1%以上3%以下の範囲で増加させた最新の上限トルクにて型閉して最新型閉時間を実測する工程を繰り返して前記条件を満たす最新の上限トルクを自動探索し、探索した最新の上限トルクに前記所定の係数を掛けることによって型開閉制御の金型保護設定値の制御上限トルクを決定することを特徴とする。
本発明によれば、制御上限トルクの境界判断がつき、尚且つ、制御上限トルクの境界判断の精度が向上する。さらに、算出した制御上限トルクに所定の係数を掛けた範囲内で型開閉動作を行なうので、より安全で安定した型開閉動作を行なうこととなる。
本発明では、型開閉ユニットの駆動装置の定格出力を100%としたときの割合でトルクを%表示している。本発明における基準型閉時間は、上限トルク初期設定値を上限トルクて型開限位置から型閉限位置まで型閉を行うのに要した時間である。本発明における制御上限トルクおよび上限トルクは、型開閉ユニットの駆動装置の定格出力を100%としたときの割合で表示される。
本発明は、前記トルク初期設定値を定格出力比で20%以上35%以内とすることを特徴とする。
本発明によれば、制御上限トルクを見つける探索回数を必要な限度で少なくできる。尚且つ、金型破損の虞がない。
本発明は、前記トルク初期設定値を35%とすることが好ましい。制御上限トルクを見つける探索回数が最小となり、尚且つ、金型破損の虞がないからである。
本発明は、前記射出成形機に備わっているタッチパネルにて算出度合いを選択入力し、選択入力した算出度合いに応じて前記所定の係数を掛けることを特徴とする。
本発明によれば、算出度合いの入力ミスを防止できるとともに、所定数の選択肢を選択することで、合理的な選択が行えることとなる。前記算出度合いには、複数の選択肢があり、特に3段階の選択ボタンを表示させることが好ましい。射出成形の場合、小物部品、一般部品、大物部品で区分して算出度合いを設定することが単純かつ、適切な選択肢と考えられる。
本発明の射出成形機は、前記金型保護設定値の自動算出方法を機能させたことを特徴とする。
本発明によれば、新人作業者や不慣れな作業者であったとしても、適正な範囲の制御上限トルクを自動的に算出するので、使い勝手がよい射出成形機となる。
本発明は、前記タッチパネルにて前記自動金型保護機能を作動するか否かを選択入力することが好ましい。
本発明によれば、熟練した作業者と、新人作業者や不慣れな作業者とで、前記自動金型保護機能を作動するか否かを選択入力することができる。また、装置や金型保全における試運転と、生産工程での運転とで、前記自動金型保護機能を作動するか否かを選択入力することができるので、さらに使い勝手がよい。
本発明の射出成形機の金型保護設定値自動算出方法によると、安全で必要十分な型開閉制御における駆動装置の制御上限トルクをより効率よく容易に設定することができる。トルク初期設定値から半減させていくときの上限トルクは安全な値である。前回の上限トルクと最新の上限トルクとの間で型閉時間が10%超増加するときは、型閉時のそのときの最新の上限トルクによって安全な制御上限トルクの目安をつけることができる。次に、その目安となる上限トルクを数%ずつ上げながら実質型閉時間が変わらなくなるところが、それ以上駆動装置の上限トルクを上げなくても要求されている型開閉制御の結果が得られているところであって、必要十分な望ましい型開閉制御における駆動装置の制御上限トルクを求めることができる。さらに、算出した制御上限トルクに所定の係数を掛けた範囲内で型開閉動作を行なうので、より安全で安定した型開閉動作を行なうこととなる。
本発明によれば、制御上限トルクを見つける探索回数を必要な限度で少なくできる。尚且つ、金型破損の虞がない。そして、本発明によれば、算出度合いの入力ミスを防止できるとともに、所定数の選択肢を選択することで、合理的な選択が行えることとなる。
これら本発明によれば、新人作業者や不慣れな作業者であったとしても、適正な範囲の制御上限トルクを自動的に算出するので、使い勝手がよい射出成形機となる。
本発明の自動金型保護機能付き射出成形機におけるタッチパネル画面を示す図である。 前記射出成形機におけるタッチパネル画面を示す図である。 前記射出成形機におけるタッチパネル画面を示す図である。 前記射出成形機におけるタッチパネル画面を示す図である。 前記射出成形機におけるタッチパネル画面を示す図である。 本発明の射出成形機における金型保護設定値の自動算出手順を示すフローチャート図である。 前記射出成形機におけるトルクと金型保護設定の関係を示すグラフ図である。 前記射出成形機の要部を示す構造図である。
本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
(本発明の実施形態)
図8は、本発明の自動金型保護機能付き射出成形機を側面側から示す構造図である。本実施形態の自動金型保護機能付き射出成形機100は、可動型220と固定型210との型開閉制御を行う制御回路107を備え、当該制御回路107には、基準トルクに対するトルク加算割合の上限値である制御上限トルクを自動算出する自動金型保護機能が備わっている。そして、各種条件入力、及び結果等を表示するタッチパネル108が配されている(図8)。なお、この実施の形態の射出成形機において、基準トルクは、多数の試験に基づいて上記各種条件に対応して予め適する値をデータとして有しており、上記各種条件が与えられたときにトルク初期設定として設定される。
図8に示す例は、横型締め構造の型開閉ユニットである。金型200は固定型210と可動型220とが対面して配されており、固定型210はクランプ手段115によって固定プラテン(固定盤)111に取り付けられており、可動型220はクランプ手段116によって可動プラテン(可動盤)113に取り付けられている。固定プラテン111とバックプラテン117(支持盤)とはそれぞれ機台102上に固定されており、可動プラテン113はガイド部材191とレール部材192とからなるスライド手段190を介して水平方向にスライド自在に機台102上に配されている。固定プラテン111とバックプラテン117との間には可動プラテン113が配されており、固定プラテン111とバックプラテン117とで固定された複数のタイバー110が可動プラテン113に挿通されており、可動プラテン113が固定プラテン111とバックプラテン117との間でスライド自在となる構成である(図8)。固定型210は、その背面(固定型取り付け板の背面)にロケートリングが付設されており、このロケートリングが、固定プラテン111に形成されたロケートリング取り付け穴に挿入され取り付けられた状態で、射出ユニット103の射出ノズル103aがロケートリング121に挿入されて固定型210のスプルブシュ(図示省略)に当接する(図8)。図8に示す例では、型開閉ユニットの駆動装置114で進退動作する型締め軸114aによって可動プラテン113が右方向にスライドし型閉じ動作および型締め動作を行い、可動プラテン113が左方向にスライドし型開き動作を行なう。駆動装置114には、サーボモータが適用される。
図7は、前記射出成形機100におけるトルクと金型保護設定の関係を示すグラフ図である。型閉時間は、型開限位置まで開いた金型を閉じ始めてから金型を閉じて型閉限位置まで型締めするのに要した時間である。基準型閉時間は、成形サイクル開始時の1ショット目、又は、型開閉設定変更後の1ショット目にトルク初期設定値を上限トルクて型開限位置から型閉限位置まで型閉を行うのに要した時間である。本実施形態における制御上限トルクおよび上限トルクは、型開閉ユニットにおける駆動装置114のサーボモータの定格出力を100%としたときの割合で表示される。
本発明では、型開閉制御における駆動装置の制御上限トルクを自動探索し、算出した制御上限トルクに所定の係数を掛けて型開閉制御の金型保護設定値における制御上限トルクとしている。制御上限トルクは、動力リミッターである。実施の形態の射出成形機においては、図7に示されるように監視トルクが設定される。監視トルクは、型閉時の安全なトルクであって制御上限トルクよりも低い値に設定され、監視トルクを超えると緊急停止するように設定されている。
(本発明の金型保護設定値の自動算出手順)
図6は、本発明の射出成形機における金型保護設定値の自動算出手順を示すフローチャート図である。図1〜図5は、前記射出成形機におけるタッチパネル画面を示す図であり、図1から順に、画面遷移した図となっている。本発明の方法による金型保護設定値の自動算出手順を以下に説明する。
先ず、射出成形機100を起動させて、タッチパネル108を操作し、金型保護メニューを表示させる(図1)。そして、自動金型保護のスイッチB1を“入”にする(符号S1、図1)。次に、算出度合いを“低”、“中”、“高”の3つのスイッチB2から選択する(符号S2、図1)。
タッチパネル108にて算出度合いを選択入力すると、選択した算出度合いに応じて、全体値(型締め開始位置)を設定する。ここで、全体値は型締め開始位置であり、ゼロ点からの距離を示している。また、後述するが、選択した算出度合いに応じて、自動探索した上限トルクに所定の係数を掛けて制御の上限トルクを決定することとなる。
例えば算出度合いを“低”にすると、全体値を0.4mmに設定する。
例えば算出度合いを“中”にすると、全体値を0.3mmに設定する。
例えば算出度合いを“高”にすると、全体値を0.2mmに設定する。
算出度合いを“低”にすると、型締め開始位置(全体値)が大きくなるので、金型温度変化に対して鈍感になる。連続成形後安定するまでの再度型厚調整の必要頻度は極わずかとなることから、大物部品の成形に適している。
算出度合いを“中”にすると、一般的な設定となる。金型温度変化による影響でたまには再度型厚調整が必要となることがある。
算出度合いを“高”にすると、型締め開始位置(全体値)が小さくなるので、金型温度変化に対して敏感になる。連続成形後安定するまでの再度型厚調整の必要頻度が頻繁となるが、小物部品の成形に適している。
保護時間は、例えば実型閉時間+0.2秒とする。保護時間の初期値は、例えば10秒とする。
例えば算出度合いを“低”にすると、オフセット値を10.0%に設定する。
例えば算出度合いを“中”にすると、オフセット値を5.0%に設定する。
例えば算出度合いを“高”にすると、オフセット値を2.0%に設定する。
算出度合いを“低”、“中”、“高”の3つのスイッチから選択する(符号S2、図1)。図1では、算出度合いを“高”に設定している。そして、タッチパネル108の全自動ボタンを押して、型閉ボタンを押すと自動金型機能が開始する。開始位置が型開限位置でない場合を考慮して、2回型開閉動作を行う(符号S3)。トルク初期設定値P41を上限トルクて型閉して初期型閉時間T1を実測する(符号S3)。
本発明では、トルク初期設定値P41を駆動装置の定格出力の20%以上かつ35%以内に設定する。以下、本発明では、駆動装置の定格出力に対する出力の割合を百分率で表すかどうかに関わらず定格出力比という。本実施例では、トルク初期設定値P41を駆動装置の定格出力比で35.0%に設定する(図1)。これは、制御上限トルクを見つける探索回数が最小となり、尚且つ、金型破損の虞がないからである。図1〜図5に示すタッチパネル108の画面遷移図の数値に基づいて、以下に説明する。
図1では、トルク初期設定値P41が35.0%にて型閉し、実測した初期型閉時間T1は0.85秒であった(符号S3)。
初期型閉時間T1が得られたので(符号S3)、次に、前回の上限トルクを半減させた最新の上限トルクにて型閉して最新型閉時間を実測する(符号S4)。
前回の上限トルクP41を半減させた最新の上限トルクP42は、35.0%÷2=17.5%となる(図2)。図2では、最新の上限トルクP42が17.5%にて型閉し、その結果、実測した最新型閉時間T2は0.86秒であった。
最新型閉時間T2が得られたので(符号S4)、次に、前回型閉時間を基準としたときの前記最新型閉時間が10%超の割合で増加する条件を満たしているか否かを判断する(符号S5)。符号S5の条件を満たしたときは符号S6のステップに進み、符号S5の条件を満たさなかったときは符号S4のステップに戻る。
図2では、最新型閉時間T2は0.86秒であるから前回型閉時間T1(図1の0.85秒)を基準として10%超の割合で増加しておらず、符号S5の条件を満たさなかったので、符号S4のステップに戻る。
図2では符号S5の条件を満たさなかったので符号S4のステップに戻る。前回の上限トルクP42を半減させた最新の上限トルクP43は、17.5%÷2=8.8%となる(図3)。ここでは、表示の都合上、小数点第2位以下を四捨五入して表示している。なお、小数点第2位以下を切り上げ表示する場合があり、小数点第2位以下を切捨て表示する場合もある。
図3では、最新の上限トルクP43が8.8%にて型閉し、その結果、実測した最新型閉時間T3は1.01秒であった。
符号S4のステップの次に、符号S5の条件を満たしているか否かを判断する。図3では、最新型閉時間T3は1.01秒であるから前回型閉時間T1(図2の0.86秒)を基準として10%超の割合で増加しており、符号S5の条件を満たしたので、符号S6のステップに進む。
図3では符号S5の条件を満たしたので、次に、前回の上限トルクと最新の上限トルクの定格出力比での差が3%以内でかつ初期型閉時間を基準としたときの最新型閉時間が10%以内の割合で増加する条件を満たしているか否かを判断する(符号S6)。符号S6の条件を満たしたときは符号S8のステップに進み、符号S6の条件を満たさなかったときは符号S7のステップに進む。
図3では、前回トルクP42に対する最新トルクP43の定格出力比の差は、17.5%−8.8%=8.7%であるから符号S6の条件を満たさなかったので、符号S7のステップに進む。
図3では符号S6の条件を満たさなかったので次に、前回の上限トルクを3%増加させた最新の上限トルクにて型閉して最新型閉時間を実測する(符号S7)。前回の上限トルクP43を3%増加させた最新の上限トルクP44は、8.8%+3.0%=11.8%となる(図4)。ここでは、表示の都合上、小数点第2位以下を四捨五入して表示している。
図4では、最新の上限トルクP44が11.8%にて型閉し、その結果、実測した最新型閉時間T4は0.88秒であった。
符号S7のステップの次に、符号S6の条件を満たしているか否かを判断する(符号S6)。図4では、前回の上限トルクP43に対する最新の上限トルクP44の定格出力比の差は3%以内である。尚且つ、初期型閉時間T1(図1の0.85秒)を基準としたときの最新型閉時間T4が10%以内の割合で増加しており、符号S6の条件を満たしているので、符号S8のステップに進む。
図4では符号S6の条件を満たしたので、次に、探索した最新の上限トルクに所定の係数を掛けて型開閉制御における金型保護設定値の制御上限トルクを決定する(符号S8)。
例えば算出度合いを“低”にすると、探索した最新の上限トルクを2.0倍にして型開閉制御の制御上限トルクとする。
例えば算出度合いを“中”にすると、探索した最新の上限トルクを1.5倍にして型開閉制御の制御上限トルクとする。
例えば算出度合いを“高”にすると、探索した最新の上限トルクを1.2倍にして型開閉制御の制御上限トルクとする。
図1では、算出度合いを“高”に設定していたので、探索した最新の上限トルクP44を1.2倍にして型開閉制御の金型保護設定値における制御上限トルクP45とする(符号S8)。つまり、探索した最新の上限トルクP44を1.2倍にした型開閉制御の金型保護設定値の制御上限トルクP45は、11.8%×1.2=14.2%となる(図5)。ここでは、表示の都合上、小数点第2位以下を四捨五入して表示している。
本実施形態によれば、制御上限トルクの境界判断がつき、尚且つ、当該境界判断の精度が向上する。さらに、算出した上限トルクに所定の係数を掛けた制御上限トルクにて型開閉動作を行なうので、より安全で安定した型開閉動作を行なうことができる。
以上、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。金型保護の各項目は任意の値に変更可能である。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
100 自動金型保護機能付き射出成形機、
107 制御手段(制御回路)、
108 タッチパネル、
200 金型(可動型及び固定型)、
210 固定型、
220 可動型、
P41 トルク初期設定値、前回の上限トルク、
P42,P43,P44 最新の上限トルク、
P45 型開閉制御の金型保護設定値の制御上限トルク、
T1 初期型閉時間、
T2,T3,T4 最新型閉時間

Claims (2)

  1. 制御手段によって可動型と固定型の型開閉制御を行う射出成形機において、型開閉制御における駆動装置の制御上限トルクを自動算出する方法であり、トルク初期設定値を上限トルクて型閉して初期型閉時間を実測し、次に、前回の上限トルクを半減させた最新の上限トルクにて型閉して最新型閉時間を実測し、前回型閉時間を基準としたときの前記最新型閉時間が10%超の割合で増加するまで前回の上限トルクを半減させた最新の上限トルクにて型閉して最新型閉時間を実測する工程を繰り返し、次に、前回の上限トルクと最新の上限トルクの定格出力比での差が3%以内でかつ前記初期型閉時間を基準としたときの最新型閉時間が10%以内の割合で増加する条件を満たしたときは前記最新の上限トルクに対して予め設定した型締め開始位置の大きさに対応して型開閉動作の安全に適する倍率で上限トルクを大きくする所定の係数を掛けるとともに、前記条件を満たさないときは、前回の上限トルクの定格出力比の1%以上3%以下の範囲で増加させた最新の上限トルクにて型閉して最新型閉時間を実測する工程を繰り返して前記条件を満たす最新の上限トルクを自動探索し、探索した最新の上限トルクに前記所定の係数を掛けることによって型開閉制御の金型保護設定値の前記制御上限トルクを決定することを特徴とする射出成形機の金型保護設定値自動算出方法。
  2. 前記トルク初期設定値を定格出力比で20%以上35%以内とすることを特徴とする請求項1記載の射出成形機の金型保護設定値自動算出方法。
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