JP6156006B2 - 電動車両用電池の選定方法および電動車両 - Google Patents

電動車両用電池の選定方法および電動車両 Download PDF

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Description

本発明は、電動車両の動力源として用いられる電気モータに電力を供給する電池の選定方法に関する。
近年、ハイブリッド自動車、電気自動車など、動力源の少なくとも一部に電気モータを使用した車両(電動車両)が増えてきている。電動車両においては、電気モータに電力を供給する電池が必須であるため、近年の電動車両の普及拡大に伴って、従来型の車両に広く使用されてきた鉛蓄電池(鉛バッテリ)以外に、例えばリチウムイオン電池やキャパシタなど、様々な種類の電池が開発されて市販されている。
例えば、下記特許文献1には、電動車両用の電池として、出力密度の大きい鉛蓄電池(パワー電池)と、エネルギー密度の大きいリチウムイオン電池(エネルギー電池)とを並列に接続したものを使用することが開示されている。
特開2011−250686号公報
ここで、電動車両に求められる走行性能(車両要求出力、要求航続距離など)は車種によって様々に変わり得る。このため、それぞれの車種に対し、入手可能な限られた電池の中から、走行性能を過不足なく満足することのできる最適な電池を選定することは非常に困難である。電池が最適でない場合、全ての要求値を満足させるために電池の重量を増やす必要があり、そのことが車両重量の増大や燃費の悪化を招く要因となっていた。
なお、上記特許文献1のように、複数種類の電池を組み合わせて使用する場合には、ある意味で電池性能が平均化されるので、場合によっては電池の軽量化につながることが期待される。しかしながら、上記特許文献1では、例えば数々の電池の中からどのような基準で電池の組合せを決定し、さらには電池重量の配分をどのように決定するかといった点について、具体的な言及は特になされていない。やみくもに電池を組み合わせても、やはり電池性能が過剰になることがあり、電池重量の増大や燃費の悪化を招くおそれがある。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、できるだけ少ない重量で必要な性能を発揮することが可能な電動車両用の電池を選定することを目的とする。
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、電動車両の動力源として用いられる電気モータに電力を供給する電池の選定方法であって、上記電気モータの出力の要求値である要求モータ出力と、上記電池のエネルギー容量の要求値である要求電池エネルギー容量とを決定する第1のステップと、電池の出力密度とエネルギー密度とをパラメータとする2次元の電池性能マップ上で、上記要求モータ出力と要求電池エネルギー容量との比に一致する一定の傾きをもった直線を要求P/Eラインとして設定する第2のステップと、上記電気モータを駆動し得る複数の候補電池のうち、上記要求P/Eラインよりも出力密度の大きいものをパワー電池、上記要求P/Eラインよりもエネルギー密度の大きいものをエネルギー電池とした場合に、上記パワー電池の中から特定の第1電池を選ぶとともに上記エネルギー電池の中から特定の第2電池を選び、これら第1、第2電池を並列に組み合わせて車両に搭載する第3のステップとを含み、上記第3のステップでは、上記電池性能マップ上で上記パワー電池の各プロットと上記エネルギー電池の各プロットとを結んだ直線が上記要求P/Eラインと交差する交点が最も原点から離れることになる特定のパワー電池およびエネルギー電池を選び、選んだパワー電池およびエネルギー電池をそれぞれ上記第1電池および第2電池として車両に搭載する、ことを特徴とするものである(請求項1)。
本発明によれば、要求モータ出力と要求電池エネルギー容量との比に基づき設定される要求P/Eラインを基準に、出力密度の大きいパワー電池とエネルギー密度の大きいエネルギー電池とに分類して、それぞれの電池を並列に組み合わせて使用するため、後の実施形態において詳しく説明するように、要求モータ出力と要求電池エネルギー容量との双方を満足させるのに必要な電池の総重量を低減することができる。このため、車両の製造コストを低減でき、さらには燃費性能を向上させることができる。
特に、本発明では、上記パワー電池の各プロットと上記エネルギー電池の各プロットとを結んだ直線が要求P/Eラインと交差する交点が最も原点から離れることになる特定のパワー電池およびエネルギー電池が選ばれるので、要求モータ出力と要求電池エネルギー容量との双方を最小限の電池重量で満足することができ車両のコストダウンと低燃費化とを十分に図ることができる。
ここで、要求モータ出力と要求電池エネルギー容量との比によっては、要求P/Eラインよりも出力密度の大きい電池(パワー電池)が存在しないことがあり得るし、また、要求P/Eラインよりもエネルギー密度の大きい電池(エネルギー電池)が存在しないこともあり得る。このような場合には、上述の方法で電池を選定することができないので、次のような方法で電池を選定するとよい。
すなわち、本発明において、上記要求P/Eラインよりも出力密度の小さい候補電池しか存在しないためにパワー電池に分類できる候補電池が存在しない場合には、上記エネルギー電池を単独で車両に搭載する(請求項2)。
また、上記要求P/Eラインよりもエネルギー密度の小さい候補電池しか存在しないためにエネルギー電池に分類できる候補電池が存在しない場合には、上記パワー電池を単独で車両に搭載する(請求項3)。
また、本発明は、上述の方法により選定された電池と、当該電池から電力の供給を受ける電気モータと、当該電気モータにより駆動される車輪とを備えた電動車両である(請求項4)。
本発明によれば、車両に搭載される電池の重量が小さく済むので、低コストで燃費性能に優れた車両を実現することができる。
上記の電動車両において、具体的な電池の搭載例は種々考えられるが、例えば、次のような態様で電池を搭載することが好適である。すなわち、上記電池として、出力密度が380±38W/kgでエネルギー密度が100±10Wh/kgのパワー電池と、出力密度が50±5W/kgでエネルギー密度が240±24Wh/kgのエネルギー電池とを並列に組み合わせて搭載し、かつモータ出力を50kWに、電池エネルギー容量を30kWhに設定する(請求項5)。
以上説明したように、本発明の電動車両用電池の選定方法によれば、できるだけ少ない重量で必要な性能を発揮することが可能な電池を選定することができる。
本発明の電池の選定方法によって選定された電池を搭載した電動車両の構成例を概略的に示す説明図である。 従来の電池の選定方法の問題点を説明するための図である。 本発明の実施形態において採用される電池の選定方法の手順を示すフローチャートである。 上記選定方法において用いられる電池性能マップを示す図である。 候補電池が全てエネルギー電池であった場合の選定方法を説明するための図である。 候補電池が全てパワー電池であった場合の選定方法を説明するための図である。
(A)電動車両の構成
図1は、本発明の電池の選定方法によって選定された電池を搭載した電動車両の構成例を概略的に示す説明図である。本図に示される電動車両は、電気エネルギーのみによって走行する(内燃機関を併用しない)いわゆる電気自動車であり、車輪5を駆動する電気モータ4と、電気モータ4に電力を供給する第1電池1および第2電池2と、各電池1,2から電気モータ4への電力の供給を制御する電力制御部3とを備えている。
第1電池1および第2電池2は、互いに特性の異なる電池であり、並列に接続された状態で車両に搭載されている。具体的に、第1電池1と第2電池2とを比較すると、第2電池2は第1電池1よりも出力密度が小さくかつエネルギー密度が大きい。言い換えると、第1電池1の出力密度は第2電池2よりも大きく、第2電池2のエネルギー密度は第1電池1よりも大きい。なお、出力密度とは、単位重量あたりの電力のことを指し、単位はW/kgである。また、エネルギー密度とは、単位重量あたりの電力量のこと指し、単位はWh/kgである。
上記のように、出力密度が相対的に大きい第1電池1は、高出力を発揮することを重視した電池であり、本明細書では、このようなタイプの電池をパワー電池(図1ではP電池と記載)という。また、エネルギー密度が相対的に大きい第2電池2は、充電容量の確保を重視した電池であり、本明細書では、このようなタイプの電池をエネルギー電池(図1ではE電池と記載)という。
(B)電池の選定方法
次に、図1に示した第1電池1および第2電池2として最適な電池を選定する方法について説明する。
<背景>
電動車両の設計にあっては、まず、電気モータの最大出力をいくらにするかという要求モータ出力(W)と、電気モータに電力を供給する電池のエネルギー容量をいくらにするかという要求電池エネルギー容量(Wh)とが決定され、この2種類の要求値に基づいて電池が選定される。なお、当実施形態のような電気自動車の場合、走行用の動力源は電気モータだけであるから、要求モータ出力は、車両に求められる走行性能を実現するために車輪に与えるべき出力(車両要求出力)と実質的に同じ値となる。また、要求電池エネルギー容量は、車両の航続可能距離をいくらにするかという要求航続距離から求められる。
電池を選定する際には、上記要求モータ出力と要求電池エネルギー容量との双方を過不足なく満足する1種類の電池を選定するのが理想的である。しかしながら、現実には、そのような電池はまず市場に存在しないので、上記2つの要求値のうちいずれかを上回る過剰性能の電池を選定せざるを得ないことがほとんどである。
図2は、上記のような事情を説明するためのグラフである。本グラフの横軸は電池のエネルギー密度(Wh/kg)を、縦軸は電池の出力密度(W/kg)を表している。また、本グラフにおいて、「要求P/Eライン」とは、上記要求モータ出力と要求電池エネルギー容量との比に一致する一定の傾きをもった直線である。また、「BICライン」とは、当該ラインよりも出力密度およびエネルギー密度の双方が高い電池が現時点で存在しないことを示す限界ラインであり、現存する各種電池の性能をグラフ上にプロットした場合の各プロットの分布から求めることができる(注:BICとは“Best in Class”の略)。
ここで、上記要求P/EラインとBICラインとが交差するポイントに一致する性能を有する電池が仮に存在したとして、これをA0としてプロットする。そして、このA0で表される電池を「仮想最適電池」という。このような性能の仮想最適電池A0が仮に存在していれば、上述した要求モータ出力と要求電池エネルギー容量とを、当該電池A0を単独で用いることで過不足なく満足でき、しかも電池の重量を最小限に抑えることができる。その理由は次のとおりである。
上記仮想最適電池A0のプロット(白丸)は、図示のとおり要求P/Eライン上に存在しているので、この仮想最適電池A0の出力密度とエネルギー密度との比は、上記要求P/Eラインの傾きと一致するはずである。このため、仮想最適電池A0の出力密度およびエネルギー密度と、要求モータ出力および要求航続距離との関係は、下記の式(1)によって表現することができる。
[数1]
P/DE=P/E ・・・(1)
ここに、
P:仮想最適電池の出力密度(W/kg)
E:仮想最適電池のエネルギー密度(Wh/kg)
P:要求モータ出力(W)=車両要求出力(W)
E:要求電池エネルギー容量(Wh)∝要求航続距離(km)である。
さらに、上記式(1)を変形することにより、
[数2]
E/DE=P/DP ・・・(2)
が得られる。
上記式(2)の左辺と右辺の単位は、それぞれ「kg」である。つまり、式(2)の左辺(E/DE)は、要求電池エネルギー容量Eを満たすことのできる電池の重量(kg)に相当し、右辺(P/DP)は、要求モータ出力Pを満たすことのできる電池の重量(kg)に相当する。上記のように右辺と左辺が等しいということは、1種類の電池を用いることで、要求モータ出力Pと要求電池エネルギー容量Eとの両方を過不足なく満足できることを意味する。
上記式(2)のような関係が成り立つのは、上記要求P/EラインとBICラインとが交差するポイントに一致する性能を有した理想的な電池(仮想最適電池A0)が存在すると仮定したからである。ところが現実には、そのような電池が存在することはほとんどない。そこで、このような場合には、最も近い性能をもった電池を用いることになる。図2では、仮想最適電池A0の性能に最も近い性能を有した候補電池をA1として示している。この候補電池A1のエネルギー密度をX、出力密度をYとすると、要求電池エネルギー容量Eを満たすのに必要な候補電池A1の重量はE/X(kg)であり、要求モータ出力Pを満たすのに必要な候補電池A1の重量はP/Y(kg)となる。
ここで、図2によれば、X<DE、Y>DP、の関係が成り立つから、要求電池エネルギー容量Eを満たすのに必要な候補電池A1の重量(E/X)は、仮想最適電池A0の重量(E/DE=P/DP)よりも大きく、要求モータ出力Pを満たすのに必要な候補電池A1の重量(P/Y)は、仮想最適電池A0の重量(E/DE=P/DP)よりも小さくなる。このため、要求モータ出力Pと要求電池エネルギー容量Eの双方を満足するのに必要な候補電池A1の重量としては、結局、大きいほうの重量(E/X)となり、仮想最適電池A0の重量よりも大きくなってしまう。
<当実施形態の選定方法>
上記のような問題に対し、本願発明者は、鋭意研究の結果、P/Eラインよりも出力密度の大きい電池とP/Eラインよりもエネルギー密度の大きい電池とをうまく組み合わせて使用すれば、仮想最適電池A0のような適当な電池が存在しなくても、電池の総重量を軽くできることを見出した。以下に、使用すべき電池の組合せを決定する選定方法について詳しく説明する。
図3は、電池を選定する手順を示したフローチャートである。本図に示すように、電池を選定するにあたっては、まず、要求モータ出力Pおよび要求電池エネルギー容量Eを決定する(ステップS1)。既に説明したとおり、これらの要求値は、実現したい車両の走行性能(車両要求出力、要求航続距離)から自ずと定まる値である。
ここでは、一例として、
要求モータ出力P :50kW@−30℃10sec
要求電池エネルギー容量E:30kWh
であるものとする。
なお、要求モータ出力Pの単位「W/kg@−30℃10sec」とは、電池を−30℃下で10秒間放電させた場合の平均の出力密度を意味する。また、要求電池エネルギー容量E=30kWhとは、車両の航続可能距離を300kmにするという要求から定められたものである。
次に、選定の対象となり得る複数の候補電池の性能を、電池の出力密度(W/kg)とエネルギー密度(Wh/kg)とをパラメータとする2次元のグラフにプロットした電池性能マップを作成する(ステップS2)。図4に、作成された電池性能マップの一例を示す。この図4の電池性能マップでは、先の図2と同じく、横軸がエネルギー密度、縦軸が出力密度とされている。ただし、縦軸の出力密度の単位としては、上記要求モータ出力Pに合わせて、電池を−30℃下で10秒間放電させた場合の平均の出力密度である(W/kg@−30℃10sec)を採用している。このように、温度と放電時間を特定しているのは、これらの条件によって電池の出力密度が変化するからである。よって、異なる条件下の出力密度を縦軸に設定すれば、図3とは異なるプロットの分布となる。どのような条件下の出力密度を設定するかは、求める性能に応じて適宜変更すればよい。これに対し、横軸のエネルギー密度(Wh/kg)は環境条件とは関係ないので、1つの電池に対して1つの値が定まる。
図4の電池性能マップ上にB1,B2,C1,C2,Dとして表記された各プロット、およびこれと同類の黒丸印の各プロットは、その1つ1つが各候補電池の性能を示している。プロットの対象となる候補電池としては、少なくとも車両の電気モータ4(図1)を駆動する出力を発揮できかつ車両の製造時に入手可能なものであればよい。典型的にはリチウムイオン電池が候補となることが多いが、金属空気電池やキャパシタなど、他の種類の電池であってもよい。
次に、上記ステップS1で決定した要求モータ出力Pおよび要求電池エネルギー容量Eの各値から、両者の比(P/E)を求め、その比と一致する一定の傾きをもった要求P/Eラインを、図4の電池性能マップ上に設定する(ステップS3)。ここでは、上述したように、要求モータ出力Pが50kW(@−30℃10sec)、要求電池エネルギー容量Eが30kWhであるから、要求P/Eラインは傾き1.67(=50/30)の直線となる。
次に、上記要求P/Eラインよりも出力密度の大きい候補電池、つまり要求P/Eラインよりもマップの左上側にプロットされる候補電池が存在するか否かを判定する(ステップS4)。さらに、上記要求P/Eラインよりもエネルギー密度の大きい候補電池、つまり要求P/Eラインよりもマップの右下側にプロットされる候補電池が存在するか否かを判定する(ステップS5)。以下では、要求P/Eラインよりも出力密度の大きい候補電池を「パワー電池」、要求P/Eラインよりもエネルギー密度の大きい候補電池を「エネルギー電池」という。図4のマップでいえば、候補電池B1,B2はパワー電池であり、候補電池C1,C2はエネルギー電池である。なお、候補電池Dは、要求P/Eライン上にプロットされているので、パワー電池にもエネルギー電池にも分類されない。
そして、上記ステップS4,S5でともにYESと判定されてパワー電池およびエネルギー電池の双方に分類される候補電池が存在することが確認された場合には、車両に搭載すべき電池として、パワー電池に分類される候補電池の中の1つと、エネルギー電池に分類される候補電池の中の1つとを選定する(ステップS6)。そして、ここで選定されたパワー電池およびエネルギー電池が、先に図1にて示された第1電池1および第2電池2として車両に搭載されることになる。すなわち、選定されたパワー電池を第1電池1、選定されたエネルギー電池を第2電池2として、これら第1電池1および第2電池2が並列に組み合わされて車両に搭載される。
ここで、上記ステップS6において、パワー電池とエネルギー電池との組合せをどのように決定するかについて詳しく説明する。ステップS6では、図4の電池性能マップ上で、パワー電池に分類される各候補電池のプロット(B1,B2など)と、エネルギー電池に分類される各候補電池のプロット(C1,C2など)とをそれぞれ直線で結び、それらの直線が上記要求P/Eラインと交差する交点を特定する。そして、当該交点が最もマップの原点Oから離れることになる特定のパワー電池とエネルギー電池との組合せを決定する。
図4の例では、パワー電池B1のプロットとエネルギー電池C1のプロットとを結んだ直線Lと、上記要求P/Eラインとが交差する交点Qが、最も原点Oから離れている。これに対し、他のどのパワー電池とエネルギー電池とを組み合わせても、上記要求P/Eラインとの交点が上記交点Qよりも原点Oから離れることはない。例えば、パワー電池B1の近傍に、パワー電池B1よりもわずかに出力密度の大きいパワー電池B2が存在しているので、このパワー電池B2と上記エネルギー電池C1とを組み合わせたと仮定する。このときに両電池のプロットどうしを結んだ直線をL’とすると、この直線L’と要求P/Eラインとの交点は、上記交点Qよりも原点Oに近くなっている。このことからも、パワー電池B1とエネルギー電池C1とを組み合わせた場合の交点Qが、最も原点Oから遠いことが理解される。このような事情により、図4の例においては、車両に搭載すべき電池(第1電池1および第2電池2)として、パワー電池B1とエネルギー電池C1との組合せが選定されることになる。
上記のようにして搭載すべき電池の組合せ(B1,C1)が決定されると、次に、搭載すべきパワー電池B1の重量とエネルギー電池C1の重量とをそれぞれ決定する(ステップS9)。
ここで、パワー電池B1のプロットとエネルギー電池C1のプロットとを結んだ直線Lは、パワー電池B1とエネルギー電池C1とを任意の重量比で並列に組み合わせた場合の性能を表すことになる。したがって、各電池B1,C1の重量比しだいで、上述した交点Qに対応する性能を実現することができる。交点Qは、要求P/Eライン上に一致する点であり、しかも電池性能の限界線であるBICラインよりも高性能な側(図中右上側)に位置しているので、上記交点Qに対応する性能を実現できれば、要求モータ出力Pと要求電池エネルギー容量Eとを最も軽い重量で満足することが可能になる。そこで、以下では、要求モータ出力Pと要求電池エネルギー容量Eとを同時に満足する性能(交点Qに対応する性能)を実現するために必要なパワー電池B1およびエネルギー電池C1の各重量を求める手順について説明する。
上記の重量を求めるには、下記の式(3)に示す連立方程式を解けばよい。
[数3]
a・x+b・y=P
c・x+d・y=E ・・・(3)
ここに、
a:パワー電池の出力密度(W/kg)
b:エネルギー電池の出力密度(W/kg)
c:パワー電池のエネルギー密度(Wh/kg)
d:エネルギー電池のエネルギー密度(Wh/kg)
x:パワー電池の重量(kg)
y:エネルギー電池の重量(kg)である。
具体的に、図4の例によると、選定されたパワー電池B1の出力密度は380±38(W/kg)、エネルギー密度は100±10(Wh/kg)であり、選定されたエネルギー電池C1の出力密度は50±5(W/kg)、エネルギー密度は240±24(Wh/kg)である(「±」付き数値は公差を表す)。上記式(3)にこれを当てはめると、a=380、c=100、b=50、d=240、となる。また、上記ステップS1で説明したように、ここでは、要求モータ出力Pが50kW(=50000W)、要求電池エネルギー容量Eが30kWh(=30000Wh)である。
そこで、これらの値を代入して上記式(3)の連立方程式を解くと、その解は、パワー電池B1の重量xが122kg、エネルギー電池C1の重量yが74kgとなる。つまり、要求モータ出力Pに合致する50kWのモータ出力と、要求電池エネルギー容量Eに合致する30kWhの電池エネルギー容量とを同時に実現するには、122kgのパワー電池B1と74kgのエネルギー電池C1とを組み合わせればよいことが分かる。
以上のような選定の結果、ここでは、122kgのパワー電池B1からなる第1電池1と、74kgのエネルギー電池C1からなる第2電池2とが、並列に組み合わされて車両に搭載されることになる(図1)。よって、車両に搭載されるトータルの電池の重量は、第1電池1の重量(122kg)と第2電池2の重量(74kg)とを合計した値:196kgとなる。
これに対し、例えばパワー電池B1を単独で用いた場合、あるいはエネルギー電池C1を単独で用いた場合には、上記組合せ時の重量(196kg)よりも重量を大きくしなければ、要求モータ出力Pと要求電池エネルギー容量Eとの双方を満足することはできない。
例えば、パワー電池B1を単独で用いた場合、出力を50kWにするための電池重量は131kg(=50000/380)、エネルギー容量を30kWhにするための電池重量は300kg(=30000/100)であるから、要求モータ出力Pと要求電池エネルギー容量Eとの双方を満足するには、重い方の300kgの重量を採用する必要がある。
また、エネルギー電池C1を単独で用いた場合、出力を50kWにするための電池重量は1000kg(=50000/50)、エネルギー容量を30kWhにするための電池重量は125kg(=30000/240)であるから、要求モータ出力Pと要求電池エネルギー容量Eとの双方を満足するには、重い方の1000kgの重量を採用する必要がある。
このように、パワー電池B1およびエネルギー電池C1は、図4の電池性能マップにおいて要求P/Eラインから外れた位置にプロットされているので、各電池B1またはC1を単独で用いた場合には、要求モータ出力Pを満足するのに必要な重量と要求電池エネルギー容量Eを満足するのに必要な重量とにずれが生じ、結果として、両電池B1,C1を組み合わせた場合よりも大きな重量が必要とされる。上記電池B1,C1と同じくBICライン(性能の限界線)上にプロットされている電池C2についても、要求P/Eラインからは外れているので、やはり同じことがいえる。
一方、図4の電池Dについては、要求P/Eライン上にプロットされているので、この電池Dを単独で用いれば、上記のような必要重量のずれが生じることはない。しかしながら、上記パワー電池B1およびエネルギー電池C1との組合せにより得られる交点Qに比べれば、出力密度およびエネルギー密度の絶対値が小さいので、やはり、電池B1,C1の組合せよりも必要な重量は大きくなってしまう。
以上のように、図4の例では、パワー電池B1とエネルギー電池C1とを所定の重量配分(122kg:74kg)で組み合わせて使用することにより、最も小さい重量で要求モータ出力Pと要求電池エネルギー容量Eとの双方を満足させ得ることが分かった。これにより、車両の重量が効果的に低減されるので、より優れた燃費性能を実現することが可能になる。
ここで、図4の例では、要求P/Eラインの両側にそれぞれ候補電池が存在していたので、候補電池をパワー電池とエネルギー電池との両方に分類することができたが、要求P/Eラインの傾き(要求モータ出力Pと要求電池エネルギー容量Eとの比)によっては、上記のような分類が不可能な場合がある。このような場合は、上述した図3のステップS4,S5の判定がNOとなり、それに伴って次のような電池の選定が行われる。
まず、上記ステップS4での判定がNOの場合、つまり要求P/Eラインよりも出力密度の大きい候補電池が存在しなかった場合について説明する。この場合の電池性能マップを簡略的に図5に示す。本図に示すように、要求P/Eラインよりも出力密度の大きい(マップの左上側に位置する)候補電池が存在しないということは、マップ上の候補電池は全てエネルギー電池に分類されることになる。したがって、この場合はエネルギー電池を単独で使用せざるを得ないので、重量が最も小さく済む特定の1つのエネルギー電池を、車両に搭載すべき電池として選定する(ステップS7)。
具体的には、要求P/Eラインにできるだけ近く、かつできるだけ出力密度の大きいエネルギー電池を使用すれば、要求モータ出力Pと要求電池エネルギー容量Eとの双方を満足するのに必要な電池の重量を小さくすることができる。そこで、図5の例では、BICライン上の最も左側にプロットされたエネルギー電池Fが選定され、この電池Fが単独で車両に搭載されることになる。
次に、上記ステップS5での判定がNOの場合、つまり要求P/Eラインよりもエネルギー密度の大きい候補電池が存在しなかった場合について説明する。この場合の電池性能マップを簡略的に図6に示す。本図に示すように、要求P/Eラインよりもエネルギー密度の大きい(マップの右下側に位置する)候補電池が存在しないということは、マップ上の候補電池は全てパワー電池に分類されることになる。したがって、この場合はパワー電池を単独で使用せざるを得ないので、重量が最も小さく済む特定の1つのパワー電池を、車両に搭載すべき電池として選定する(ステップS8)。
具体的には、要求P/Eラインにできるだけ近く、かつできるだけエネルギー密度の大きいパワー電池を使用すれば、要求モータ出力Pと要求電池エネルギー容量Eとの双方を満足するのに必要な電池の重量を小さくすることができる。そこで、図6の例では、BICライン上の最も右側にプロットされたパワー電池Gが選定され、この電池Gが単独で車両に搭載されることになる。
なお、上記実施形態では、電気モータ4の駆動力のみによって車輪5を駆動するいわゆる電気自動車を前提として本発明を説明したが、本発明は、動力源の少なくとも一部に電気モータが使用されている電動車両であれば、種々のタイプの車両に適用することができる。例えば、電気モータと内燃機関とを併用するハイブリッド自動車や、外部からの充電が可能ないわゆるプラグインハイブリッド自動車にも、本発明を好適に適用することができる。
1 第1電池
2 第2電池
4 電気モータ

Claims (5)

  1. 電動車両の動力源として用いられる電気モータに電力を供給する電池の選定方法であって、
    上記電気モータの出力の要求値である要求モータ出力と、上記電池のエネルギー容量の要求値である要求電池エネルギー容量とを決定する第1のステップと、
    電池の出力密度とエネルギー密度とをパラメータとする2次元の電池性能マップ上で、上記要求モータ出力と要求電池エネルギー容量との比に一致する一定の傾きをもった直線を要求P/Eラインとして設定する第2のステップと、
    上記電気モータを駆動し得る複数の候補電池のうち、上記要求P/Eラインよりも出力密度の大きいものをパワー電池、上記要求P/Eラインよりもエネルギー密度の大きいものをエネルギー電池とした場合に、上記パワー電池の中から特定の第1電池を選ぶとともに上記エネルギー電池の中から特定の第2電池を選び、これら第1、第2電池を並列に組み合わせて車両に搭載する第3のステップとを含み、
    上記第3のステップでは、上記電池性能マップ上で上記パワー電池の各プロットと上記エネルギー電池の各プロットとを結んだ直線が上記要求P/Eラインと交差する交点が最も原点から離れることになる特定のパワー電池およびエネルギー電池を選び、選んだパワー電池およびエネルギー電池をそれぞれ上記第1電池および第2電池として車両に搭載する、ことを特徴とする電動車両用電池の選定方法。
  2. 請求項1に記載の電動車両用電池の選定方法において、
    上記要求P/Eラインよりも出力密度の小さい候補電池しか存在しないためにパワー電池に分類できる候補電池が存在しない場合には、上記エネルギー電池を単独で車両に搭載する、ことを特徴とする電動車両用電池の選定方法。
  3. 請求項1または2に記載の電動車両用電池の選定方法において、
    上記要求P/Eラインよりもエネルギー密度の小さい候補電池しか存在しないためにエネルギー電池に分類できる候補電池が存在しない場合には、上記パワー電池を単独で車両に搭載する、ことを特徴とする電動車両用電池の選定方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項の方法により選定された電池と、当該電池から電力の供給を受ける電気モータと、当該電気モータにより駆動される車輪とを備えた、ことを特徴とする電動車両。
  5. 請求項4に記載の電動車両において、
    上記電池として、出力密度が380±38W/kgでエネルギー密度が100±10Wh/kgのパワー電池と、出力密度が50±5W/kgでエネルギー密度が240±24Wh/kgのエネルギー電池とが並列に組み合わされて搭載され、かつモータ出力が50kWに、電池エネルギー容量が30kWhに設定された、ことを特徴とする電動車両。
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