以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1を参照し、本発明に係る記録装置の一実施形態としてのインクジェットプリンタ1の全体構成について説明する。
プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部4が設けられている。筐体1aの内部空間は、上から順に空間A,Bに区分できる。空間A,Bには、給紙部23から排紙部4に向かう用紙搬送経路と、当該用紙搬送経路の下流側から上流側に向かう用紙再送経路とが形成されている。用紙Pは、図1に示されるように、用紙搬送経路では黒太矢印に沿って搬送され、用紙再送経路では白抜き太矢印に沿って搬送される。空間Aでは、用紙Pへの画像記録、用紙Pの排紙部4への搬送、及び、用紙Pの再送が行われる。空間Bでは、給紙部23から用紙搬送経路への給紙が行われる。
空間Aには、ブラックインクを吐出するヘッド(記録部)2、搬送装置3、及び、制御装置100等が配置されている。また、空間Aには、図示しないカートリッジが装着されている。このカートリッジには、ブラックインクが貯留されている。カーリッジは、チューブ及びポンプ(ともに図示せず)を介してヘッド2と接続され、インクがヘッド2に供給される。
ヘッド2は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有するライン式のヘッドである。ヘッド2の下面は、多数の吐出口が開口した吐出面2aである。記録に際して、吐出面2aからブラックインクが吐出される。ヘッド2は、ヘッドホルダ2bを介して筐体1aに支持されている。ヘッドホルダ2bは、吐出面2aがプラテン3d(後述する)との間に記録に適した所定の間隙が形成されるように、ヘッド2を保持している。
搬送装置3は、上流ガイド部3a、下流ガイド部3b、再送ガイド部3c、及び、プラテン3dを有している。プラテン3dは、ヘッド2の吐出面2aと対向する位置に配置されている。プラテン3dは、平坦な上面を有しており、用紙Pを下方から支持するとともに、吐出面2aとの間に記録領域(用紙搬送経路の一部)を構成する。上流ガイド部3a,下流ガイド部3bは、プラテン3dを挟んで配置されている。上流ガイド部3aは、2つのガイド31,32と、2つの搬送ローラ対41,42とを有し、記録領域(プラテン3dとヘッド2との間)と、給紙部23とを繋ぐ。下流ガイド部3bは、2つのガイド33,34と、3つの搬送ローラ対43〜45とを有し、記録領域と排紙部4とを繋ぐ。用紙搬送経路は、4つのガイド31〜34、プラテン3d及びヘッド2によって規定されている。
再送ガイド部(搬送機構)3cは、3つのガイド35〜37と、3つの搬送ローラ対46〜48と、位置決め機構50とを有し、記録領域を迂回して上流ガイド部3aと下流ガイド部3bとを繋ぐ。ガイド35は、ガイド33の途中部位に接続され、再送ガイド部3cと下流ガイド部3bとを繋いでいる。ガイド37は、ガイド31の途中部位に接続され、再送ガイド部3cと上流ガイド部3aとを繋いでいる。用紙再送経路は、3つのガイド35〜37及び位置決め機構50によって規定されている。
なお、搬送ローラ対44は、制御装置100の制御により、用紙Pの搬送方向が切り換えられる。つまり、搬送ローラ対44は、用紙Pを記録領域から排紙部4へと搬送する場合は、用紙Pが上方へ搬送されるように回転する。一方、搬送ローラ対44は、用紙Pを用紙搬送経路から用紙再送経路へと搬送する場合は、用紙Pの後端がガイド33とガイド35との接続箇所と搬送ローラ対44との間にあるときであって用紙センサ27で検知されたときに、用紙Pの後端が先端として下方へ搬送されるように、その回転方向が切り換えられる。用紙搬送経路から用紙再送経路に搬送されてきた用紙Pは、上流ガイド部3aに再送される。このとき、再送される用紙Pは、直前の記録領域を通過したときとはその表裏が反転した状態で当該記録領域に再び搬送される。こうして、用紙Pの両面に画像を記録することが可能となる。
3つの搬送ローラ対46〜48は、この順に配置されており、位置決め機構50は、搬送ローラ対47,48間に配置されている。また、位置決め機構50は、鉛直方向に関して、記録領域(プラテン3d)と給紙部23との間に配置されている。位置決め機構50は、上ガイド51と、下ガイド52と、駆動ローラ61と、従動拍車71とを有する。また、位置決め機構50は、両ガイド51,52間に搬送されてきた用紙Pの幅方向(主走査方向であって用紙Pの搬送方向Eと直交する方向)の一端をガイド面(後述する)54aに当接させながら搬送することで、用紙Pの幅方向の位置決めを行う。位置決め機構50の詳細については、後述する。
空間Bには、給紙部23が配置されている。給紙部23は、給紙トレイ24及び給紙ローラ25を有する。このうち、給紙トレイ24が、筐体1aに対して着脱可能となっている。給紙トレイ24は、上方に開口する箱であり、複数の用紙Pを収容可能である。給紙ローラ25は、給紙トレイ24内で最も上方にある用紙Pを送り出す。
ここで、副走査方向とは、搬送ローラ対42,43によって搬送される用紙搬送方向D、及び、搬送ローラ対47,48によって搬送される用紙搬送方向Eと平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
次に、制御装置100について説明する。制御装置100は、プリンタ1各部の動作を制御してプリンタ1全体の動作を司る。制御装置100は、外部装置(プリンタ1と接続されたPC等)から供給された記録指令に基づいて、記録動作を制御する。具体的には、制御装置100は、用紙Pの搬送動作、用紙Pの搬送に同期したインク吐出動作等を制御する。
制御装置100は、例えば、用紙Pの片面に記録を行う記録指令を外部装置から受信した場合、当該記録指令に基づいて、給紙部23、搬送ローラ対41〜45を駆動する。給紙トレイ24から送り出された用紙Pは、上流ガイド部3aによりガイドされ、記録領域(プラテン3dとヘッド2との間)に送られる。用紙Pは、ヘッド2のすぐ下方を通過する際に、制御装置100によってヘッド2が制御され、ヘッド2からインク滴が吐出される。これにより、用紙Pの表面に所望の画像が記録される。インクの吐出動作(インクの吐出タイミング)は、用紙センサ26からの検知信号に基づく。なお、用紙センサ26は、ヘッド2よりも搬送方向の上流に配置されて、用紙Pの先端を検知する。そして、画像が記録された用紙Pは、下流ガイド部3bによりガイドされて、筐体1a上部から排紙部4に排出される。
また、制御装置100は、例えば、用紙Pの両面に記録を行う記録指令を外部装置から受信した場合、当該記録指令に基づいて、給紙部23、搬送ローラ対41〜45を駆動する。まず、片面記録時と同様に、用紙Pは、表面に画像が形成され、排紙部4に向けて搬送される。図1に示すように、搬送途中のガイド部3bには、搬送ローラ対44の上流側近傍に、用紙センサ27が配置されている。用紙センサ27が用紙Pの後端を検出すると、制御装置100の制御の下、搬送ローラ対44が逆回転され、用紙Pの搬送の方向が反転される。このとき、搬送ローラ対46〜48、及び、駆動ローラ61も駆動される。これにより、用紙Pは、その経路が切り替えられ、用紙再送経路(白抜き矢印の示す経路)に沿って搬送される。このとき、位置決め機構50によって用紙Pの主走査方向に関する位置決めが行われ、位置決めが行われた用紙Pが記録領域に再送される。用紙再送経路から上流ガイド部3aに再送された用紙Pは、記録領域において裏返しで再供給され、裏面に画像が記録される。なお、裏面への画像記録に先立って、用紙Pの先端が用紙センサ26に検出されると、搬送ローラ対44が正回転に戻される。両面記録された用紙Pは、下流ガイド部3bを介して、排紙部4に排出されることになる。
次に、図2〜図5を参照しつつ位置決め機構50について、詳細に説明する。図2に示すように、位置決め機構50の上ガイド51及び下ガイド52は、ともに板状部材であって鉛直方向に互いに離隔して配置されている。これらガイド51,52間の空間が用紙再送経路の一部(搬送経路)を構成している。下ガイド52には、厚み方向に貫通した孔52aが形成されている。孔52aは、図3に示すように、副走査方向の幅が駆動ローラ61よりも若干小さい。下ガイド52は、搬送されてきた用紙Pの下面を支持する搬送面52bを有している。下ガイド52の主走査方向の一端には、鉛直方向に立設した垂直部54が形成されている。この垂直部54は、副走査方向に沿って延在し、副走査方向を面内方向に含む鉛直面であるガイド面54aを有する。ガイド面54aは、垂直部54の従動拍車71側の側面によって構成されている。なお、上ガイド51は、図2において、その一部だけが示されている。
駆動ローラ61及び駆動ローラ61と対向する従動拍車71は、主走査方向に関して、上ガイド51及び下ガイド52との間の搬送経路の中央(図2中一点鎖線で示す中心線)よりもガイド面54aに近い位置に配置されている。従動拍車71は、駆動ローラ61の回転によって、又は、駆動ローラ61によって搬送される用紙Pに搬送に伴って回転する。
駆動ローラ61は、図2に示すように、円筒状のローラ本体62と、ローラ本体62とともに回転する軸部63とを有する。ローラ本体62は、孔52aと対向する位置に配置され、従動拍車71よりも下方になるように配置されている。ローラ本体62は、その上端が下ガイド52の搬送面52bから上方に僅かに突出するように配置され、搬送面52b上に搬送されてきた用紙Pの下面と接触する。つまり、駆動ローラ61は、用紙Pの画像が記録されていない面と接触可能に配置されている。軸部63は、ローラ本体62に挿通された状態でローラ本体62に固定され、駆動ローラ61の回転軸を構成する。軸部63は、筐体1aに回転可能に支持されている。位置決め機構50は、図示しない駆動機構(駆動モータや駆動モータからの回転力を伝達する歯車など)を有している。この駆動機構は、制御装置100の制御により駆動され、軸部63を介してローラ本体62を回転させる。駆動ローラ61は、図3に示すように、軸部63の軸線Mが主走査方向に平行になるように配置されている。つまり、駆動ローラ61は、軸部63の軸線Mがガイド面54aに対して直交するように、配置されている。
また、位置決め機構50は、従動拍車71を支持する支持部80を有する。支持部80は、支持部本体81と、支持部本体81を下方に付勢する付勢部(不図示)とを有する。支持部本体81は、付勢部を介して上ガイド51の下面に取り付けられている。支持部本体81の下面には、下方に突出した一対のフランジ82が形成されている。一対のフランジ82には、主走査方向に貫通する孔82aが形成されている。これら孔82aに従動拍車71の軸部74が挿入されることで、従動拍車71が支持部80に回転可能に支持される。付勢部は、上ガイド51に固定されたコイルバネなどの弾性部材から構成されており、支持部本体81とともに従動拍車71を駆動ローラ61に向けて(下方に)付勢する。これにより、従動拍車71と駆動ローラ61との間には、用紙Pを挟持する所定の挟持力が生じる。このため、用紙Pが駆動ローラ61と従動拍車71とに挟まれながら、搬送方向Eに向けて搬送される。また、従動拍車71は、用紙Pの画像が記録された記録面と接触可能に配置される。
従動拍車71は、図3に示すように、4つの拍車72と、円筒状のローラ本体73と、ローラ本体73とともに回転する軸部74とを有し、搬送方向Eに関して、ガイド面54aと重なる位置に配置されている。軸部74は、図4に示すように、ローラ本体73に挿通された状態でローラ本体73に固定され、従動拍車71の回転軸を構成する。また、軸部74は、図3に示すように、軸線Lとガイド面54aとの交点よりもガイド面54aの搬送方向E下流部分と、軸線Lとがなす角度θ1が、例えば、85〜89°、より好ましくは88°(鋭角)となるように、配置されている。また、軸部74は、図4(b)に示すように、搬送方向Eから見て、軸線Lがガイド面54aに対してほぼ90°、すなわち、直交するように配置されている。
拍車72は、図4(a)に示すように、軸線L方向から見てローラ本体73の外周面73aから軸線Lと直交する方向に突出した複数の歯72aを有する。拍車72は、複数の歯72aが軸部74の軸線Lを中心とした周方向R(図4(a)中矢印R方向)に並んで一体的に形成された環状の薄板部材からなる。各歯72aは、ローラ本体73の外周面73aに固定された基部72bと、基部72bから外側に突出する歯部72cとを有する。複数の基部72bは、周方向Rに隣接するもの同士が一体的に繋がり、1つの環状部材を構成する。歯部72cは、図4(a)に示すように、軸線L方向から見て、先細り形状を有する。これにより、従動拍車71は、用紙Pに対して歯部72cの尖った先端が突き刺さるように当接することで、用紙Pの搬送に伴って回転する。
また、歯72aは、図4(b)に示すように、互いに平行な第1側面72a1及び第2側面72a2と、これら側面72a1,72a2を繋ぐ第3面72a3とを有する。第2側面72a2は、第1側面72a1よりもガイド面54aに近い位置にある。第2側面72a2は、ローラ本体73の外周面73aから歯72aの歯先まで延在する。第3面72a3は歯72aの歯先から上方に延在し、第1側面72a1はローラ本体73の外周面73aから第3面72a3の上端まで延在する。
第1側面72a1及び第2側面72a2は、歯72aの歯先に向かうに連れてガイド面54aから離れるように傾斜している。つまり、歯72aは、主走査方向に関して用紙Pにガイド面54aから離れる方向T(図6(b)参照)の力(反力)が作用したときに、軸線L方向に関してガイド面54aから離れる方向に歯先が撓むように構成されている。具体的には、第1側面72a1及び第2側面72a2は、第2側面72a2に沿う仮想平面Sと軸線Lとの交点よりもガイド面54aから離れる軸線Lの部分と、仮想平面Sとがなす傾斜角度θ2が、ほぼ60°となるように、配置されている。これにより、図4(b)に示すように、搬送面52b上を搬送されてきた用紙Pと拍車72の歯72aとが当接するときは、当該用紙Pと第2側面72a2とがなすガイド面54a側の角度がθ2となる。このため、歯72aから用紙Pに加えられる力Wは、下方への分力W1と、軸線L方向に関してガイド面54aから離れる方向の分力W2とに分解することができる。なお、歯72aから用紙Pに加えられる力Wは、従動拍車71を駆動ローラ61に向けて付勢する付勢部によって生じる力である。分力W1は、従動拍車71と駆動ローラ61とが、用紙Pを挟持する挟持力として作用する。分力W2は、従動拍車71の歯72aが、軸線L方向に関してガイド面54aから離れる方向に歯先が撓む力として作用する。各拍車72は、第1側面72a1及び第2側面72a2は、歯72aの歯先に向かうに連れてガイド面54aから離れるように傾斜している構成により、分力W2が生じるため、軸線L方向に関してガイド面54aから離れる方向に歯先が撓みやすい。
本実施形態における第1側面72a1及び第2側面72a2の角度θ2は60°であるが、30°以上90°未満の範囲であればどの角度であってもよい。角度θ2は、より好ましくは45°以上80°以下の範囲であればよい。例えば、角度θ2が45°以上であると、分力W2は分力W1以下にならない。このため、付勢部の付勢力によって生じる歯72aから用紙Pに加えられる力を、従動拍車71と駆動ローラとが用紙Pを挟持する挟持力として効率よく作用させることができる。すなわち、用紙Pを搬送するために必要な従動拍車71及び駆動ローラ61間の所定の挟持力を保つことが可能となる。この結果、用紙Pの搬送力を確保することができる。一方、角度θ2が45°未満となると、分力W2は分力W1よりも大きくなる。このため、用紙Pを搬送するために必要な所定の挟持力を得られにくくなり、用紙Pの不送りが生じてジャムが生じる虞がある。なお、第1側面72a1及び第2側面72a2の角度θ2は、用紙Pに方向Tの力が作用し、拍車72の用紙Pと当接する歯72aが撓んだときであっても角度θ2が45℃以上となるように決められていることが好ましい。これによると、拍車71の歯72aが撓んだときであっても、用紙Pの搬送力を確保することができる。
図5には、正弦曲線を示す。この正弦曲線を見ても分かるように、角度が80°以下であると、縦軸の変化量がある程度大きくなる。つまり、角度θ2が80°以下であると、用紙Pに方向Tの力が作用し、拍車72の用紙Pと当接する歯72aが一定量撓んだ場合に、歯先の鉛直方向に関する移動量(すなわち、上方への移動量)が大きくなる。このため、従動拍車71と駆動ローラ61間の挟持力が低下し、用紙Pが方向Tに移動しやすくなる。用紙Pが方向Tに移動することにより、歯72aが、用紙Pから受ける方向Tへの力を低減させることができる。この方向Tへの力は、従動拍車71の回転負荷となるため、方向Tへの力を低減させることによって、従動拍車71の回転負荷を低減することができる。その結果、用紙Pのジャムを抑制することができる。一方、図5に示す正弦曲線において、角度が80°を越えると、縦軸の変化量が小さくなる。つまり、角度θ2が80°を越える場合は、拍車72の用紙Pと当接する歯72aが一定量撓んだ場合でも、歯先の鉛直方向に関する移動量(すなわち、上方への移動量)が小さい。このため、従動拍車71と駆動ローラ61間の挟持力が低下せず、用紙Pが方向Tに移動しにくい。そのため、歯72が、用紙Pから受ける方向Tへの力が低減されにくく、従動拍車71の回転負荷も低減されにくい。その結果、用紙Pにジャムが生じ易くなる。また、角度θ2は、より一層好ましくは、50°以上70°以下の範囲であればよい。この範囲内であれば、用紙Pの搬送力を効果的に確保しつつ、ジャムの発生をより抑制することができる。
第2側面72a2の歯部72c部分(すなわち、歯先から基部72bまでの部分)は、図4(b)に示すように、平面である。このため、図6(c)に示すように、歯72aの歯先が軸線L方向に関してガイド面54aから離れる方向に撓んでも、第2側面72a2が用紙Pに当接しにくくなる。仮に、後述の変形例のように、第2側面272a2にテーパ面272dが形成されていると、歯先が軸線L方向に関してガイド面54aから離れる方向に撓んだときに、テーパ面272dと用紙Pとが当接する虞がある。テーパ面272dと用紙Pとが当接すると、接触面積が大きくなるため、用紙Pに記録された画像が乱れやすくなる。しかしながら、本実施形態においては、第2側面72a2が用紙Pに当接しにくいため、用紙Pに記録された画像が乱れにくくなる。
各歯72aの基部72bは、第2側面72a2に形成された溝75を有する。溝75は、周方向Rに沿って延在している。各基部72bに形成された溝75は、周方向Rに隣接する別の基部72bの溝75と繋がっている。このような溝75が形成され、歯72aの基部72bの厚みが減じられることで、拍車72の歯72aが、軸線L方向に関してガイド面54aから離れる方向により一層撓みやすくなる。
次に、位置決め機構50による用紙Pの位置決め動作について、以下に説明する。
まず、用紙Pは、搬送ローラ対47によって位置決め機構50へと搬送される。用紙Pの先端が、図6(a)に示すように、駆動ローラ61及び従動拍車71に達すると、駆動ローラ61によって用紙Pが方向Jに搬送される。つまり、従動拍車71の用紙Pと当接する点での回転方向は、軸線Lと直交する方向であるため、用紙Pをガイド面54aに近づける方向Jに搬送される。そして、用紙Pのガイド面54aに近い側の側端がガイド面54aに当接する。こうして、用紙P全体が、図6(b)に示すように、ガイド面54aに寄せられる。
用紙Pは、ガイド面54aに当接した後もガイド面54aに寄せられるように、方向Jに搬送される。このとき、用紙Pには、ガイド面54aと当接することで方向Tの力が作用する。用紙Pに方向Tの力が作用すると、用紙Pと当接する歯72aが上述したように撓む。つまり、歯72aは、図6(c)中2点鎖線で示す状態から実線で示す状態へと、軸線L1方向に関して歯先がガイド面54aから離れるように、撓む。このため、従動拍車71と駆動ローラ61間の挟持力が低下し、用紙Pが方向Tに移動しやすくなる。この結果、用紙Pのジャムを抑制することができる。加えて、従動拍車71と駆動ローラ61間の挟持力が低下するものの、用紙Pを搬送するために必要な所定の挟持力は保つため、用紙Pの搬送力を確保することができる。
このように駆動ローラ61及び従動拍車71は、用紙Pを搬送している際、用紙Pがガイド面54aに当接していてもガイド面54a側に寄せるように搬送するが、拍車72の歯72aが撓む構成であるため、用紙Pの方向Tへの力を逃がしながら、用紙Pを搬送方向Eに搬送することができる。こうして、用紙Pの主走査方向の位置決めが行われる。
以上に述べたように、本実施形態のプリンタ1によると、駆動ローラ61及び従動拍車71によって、用紙Pの両側端の一方がガイド面54aに寄せられるように用紙Pが搬送され、用紙Pがガイド面54aに沿って搬送される。このとき、用紙Pがガイド面54aに当接することで拍車72の歯先にスラスト荷重(方向Tの力)が生じても、拍車72の歯72aがガイド面54aから離れるように傾斜しているため、当該拍車72の歯72aがガイド面54aから離れる方向に撓みやすくなる。このため、用紙Pのジャムの発生を抑制することが可能となる。
従動拍車71は、搬送方向Eから見て、軸線Lがガイド面54aに対して直交するように、配置されている。これにより、用紙Pの搬送に伴って従動拍車71が回転する際に、搬送方向Eから見て従動拍車71の軸線Lがガイド面54aと交差する場合(直交を除く)と比較して、高い搬送精度を確保することができる。つまり、本実施形態のように、搬送方向Eから見て従動拍車71の軸線Lがガイド面54aと直交している場合、搬送面52bと直交する方向から見たときに、拍車72の回転に伴って拍車72の歯先が移動する軌跡は、当該軸線Lと直交する方向(方向J)に延びる直線状の軌跡となる。このため、拍車72の歯72aが用紙Pと当接しているときに、当該歯72aの移動する軌跡は、拍車72の軸線Lと直交する方向となる。言い換えると、拍車72の回転にともなって搬送される用紙Pの進行方向は、拍車72の軸線Lと直交する方向となる。一方、搬送方向Eから見て従動拍車71の軸線Lがガイド面54aと交差する場合(直交を除く)、搬送面52bと直交する方向から見たときに、拍車72の回転に伴って拍車72の歯先が移動する軌跡は、円形状の軌跡となる。このため、拍車72の歯72aが用紙Pと当接しているときに、当該歯72aの移動する軌跡は、円形状の軌跡となる。そのため、拍車72の回転に伴って搬送される用紙Pの進行方向は、この円形状の軌跡によって決まる。この円形状の軌跡の形状は、拍車72の直径によっても変動するため、用紙Pの進行方向を定めるのが比較的困難となる。よって、従動拍車71は、搬送方向Eから見て、拍車72の軸線Lがガイド面54aに対して直交するように配置されている方が、軸線Lがガイド面54aと交差する場合(直交を除く)と比較して、高い搬送精度を確保することができる。
変形例として、図7に示すように、拍車272の各歯272aが、第1側面272a1及び第2側面272a2の先端部に、歯先が先細りとなるようなテーパ面272dを有していてもよい。なお、第1側面272a1及び第2側面272a2は、上述の第1側面72a1及び第2側面72a2と平行である。第2側面272a2に形成されたテーパ面272dは、搬送されてきた用紙Pとの間において、ガイド面54a側の角度θ3が、角度θ2よりも小さくなるように形成されている。このような歯272aにおいても、歯先に向かうに連れてガイド面54aから離れるように傾斜しているため、上述の実施形態と同様に、歯272aを撓ませることが可能となる。このため、上述の実施形態と同様な効果を得ることができる。
別の変形例として、図8に示すように、拍車372の各歯372aが、第1側面を有さず、第2側面72a2と第3面372a3とだけを有していてもよい。第3面372a3は、歯372aの歯先から外周面73aまで鉛直方向に延在して形成されている。このような歯372aにおいても、歯先に向かうに連れてガイド面54aから離れるように傾斜しているため、上述の実施形態と同様に、歯372aを撓ませることが可能となる。このため、上述の実施形態と同様な効果を得ることができる。
また、別の変形例として、図9に示すように、拍車472の各歯472aは、上述の溝75に代えて厚み方向に貫通し且つ周方向Rに沿って配列された2つの孔475を有していてもよい。これら孔475は、基部472bに形成されている。これにおいても、溝75と同様に、歯472aの基部472bの厚みが部分的に減じられることで、拍車472の歯472aが、軸線L1方向に関してガイド面54aから離れる方向により一層撓みやすくなる。なお、各歯472aに形成された孔475の数は、2つでなくても、1又は3以上でもよい。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態及び各変形例においては、従動拍車は4つの拍車72,272,372,472を有しているが、1〜3又は5以上の拍車を有していてもよい。また、拍車がローラ本体73の直径方向に突出した複数の歯を有していてもよい。この場合、搬送方向Eから見て、従動拍車の軸線がガイド面54aから離れるに連れて上方に傾くように、従動拍車が配置されておればよい。これにおいても、拍車の歯が歯先に向かうに連れてガイド面54aから離れるように傾斜することとなる。このため、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、歯72a,272a,372a,472aの基部には、溝75や孔475などが形成されていなくてもよい。つまり、基部は、部分的に厚みが減じられていなくてもよい。この場合、歯72a,272a,372a,472a全体の厚みを薄くすればよい。また、位置決め機構50は、下流ガイド部3b内に設けられていてもよい。これにより、用紙Pが、位置決めされた状態で排紙部4に排出される。
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能である。さらに、画像記録する記録装置であれば、例えば、レーザー式やサーマル式など、どのような記録装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。