以下、本発明の実施の形態による気圧式倍力装置として、車両用ブレーキ装置に適用される気圧式倍力装置を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1乃至図4は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、気圧式倍力装置1は、その外殻を構成するハウジング2を有し、該ハウジング2は、車両(図示せず)の前側寄りに位置するフロントシェル3と、その後側に位置するリヤシェル4とにより構成されている。これらシェル3,4は、その外周側で互いに気密状態に固着され、ハウジング2の内部に室(後述の負圧室Aと変圧室B)を画成している。
ハウジング2のフロントシェル3には、前壁3Aの中央部にマスタシリンダ(図示せず)の一部を収納するための筒状凹部3Bが形成されている。ここで、フロントシェル3の筒状凹部3Bには、前記マスタシリンダとの間を気密にシールする環状のシール部材(図示せず)が設けられている。このシール部材は、ハウジング2内の負圧室Aを外部の大気に対して気密状態にシールするものである。
一方、リヤシェル4には、車両ボディ(図示せず)への取付面となる後壁4Aの中央部から軸方向外向きに後方筒部4Bが突設されている。また、リヤシェル4には、後方筒部4Bの軸方向(長さ方向)途中部位に環状の段差部4Cが設けられている。この段差部4Cには、後述する入力ロッド12の押動操作解除時に後述のストップキー21が図1に示すように当接し、これによって、バルブボディ6およびプランジャ19の戻り位置が規制される。
ハウジング2内には、ダイヤフラム等からなるパワーピストン5が設けられている。該パワーピストン5は、外周側がフロントシェル3とリヤシェル4との間に固着され、内周側が後述のバルブボディ6に固着されている。フロントシェル3とリヤシェル4との間に形成されるハウジング2内の空間は、パワーピストン5により定圧室としての負圧室Aと変圧室Bとに画成されている。
バルブボディ6は、リヤシェル4の後方筒部4B内に挿通され、ハウジング2内に軸方向に変位可能に設けられている。バルブボディ6は、例えば高強度の樹脂材料を用いて形成され、大径部6Aと小径筒部6Bとを有している。バルブボディ6の大径部6A側は、ハウジング2内でパワーピストン5の内周側に連結(固着)されている。バルブボディ6の小径筒部6Bは、リヤシェル4の後方筒部4Bからハウジング2の外部に延出されている。バルブボディ6は、パワーピストン5の変位に連動してハウジング2内を軸方向に変位するものである。
また、バルブボディ6の大径部6Aには、負圧室Aに常時連通して変圧室Bに連通,遮断される連通路7が形成され、該連通路7は、小径筒部6B側に向けて軸方向一側に延びている。図2に示すように、バルブボディ6の小径筒部6Bには、連通路7の一側(開口端側)に位置して環状の弁座部6Cが形成され、該弁座部6Cは、後述のポペット弁体13、プランジャ本体20の当接部20Aと共に弁手段としての弁機構8を構成している。
該弁機構8は、ポペット弁体13がプランジャ本体20の当接部20A及び/又はバルブボディ6の弁座部6Cに離着座することにより、変圧室Bを負圧室Aに連通,遮断させるため後述の如く開,閉弁するものである。また、バルブボディ6には、大径部6Aの内周側に位置して後述の出力ロッド22側へと軸方向他側に突出する筒状突出部6Dが一体形成されている。
ここで、バルブボディ6には、小径筒部6B内の弁座部6Cの位置から筒状突出部6Dに向けて軸方向に延びる貫通穴としての段付穴9が形成されている。この段付穴9内には、後述のプランジャ19が摺動可能に挿嵌される共に、ブレーキアシスト機構31が軸方向に変位可能に設けられている。また、バルブボディ6には、小径筒部6Bの基端側に位置して径方向に延びるキー挿入穴10と他の連通路11とが形成され、キー挿入穴10内には後述のストップキー21が挿入されている。他の連通路11は、段付穴9の奥所側を変圧室Bに常時連通させるものである。
入力ロッド12は、一端側がリヤシェル4の後方筒部4Bから外部に突出し、他端側がバルブボディ6の小径筒部6B内に挿入して設けられている。該入力ロッド12の他端側には、図2に示すように球形部12Aが一体形成され、この球形部12Aは、後述のプランジャ19(即ち、プランジャ本体20)にカシメ等の手段を用いて連結されている。そして、入力ロッド12は、その一端側(突出端側)が車両のブレーキペダル(図示せず)に連結され、ブレーキ操作時には図1中の矢示C方向に押動操作される。
ポペット弁体13は、バルブボディ6の小径筒部6B内に設けられている。該ポペット弁体13は、弾性材料によって略筒状に形成され、その一端側は後述の戻しばね15等により小径筒部6Bの内周壁に押付けられて固定されている。そして、ポペット弁体13の他端側は、図2に示すように弱ばね14によりバルブボディ6の弁座部6Cに向けて常時付勢されている。これにより、弁機構8の一部を構成するポペット弁体13は、後述するプランジャ本体20の当接部20Aとバルブボディ6の弁座部6Cとに離着座するものである。
戻しばね15は、バルブボディ6の小径筒部6Bと入力ロッド12との間に配設されている。該戻しばね15は、バルブボディ6に対して入力ロッド12を矢示D方向に向けて常時付勢している。これにより、入力ロッド12に対する押動操作(ブレーキ操作)の解除時には、バルブボディ6がハウジング2内を図1に示す初期位置(後述のストップキー21により規制された位置)に戻るまで、入力ロッド12が戻しばね15により矢示D方向に押圧される。
ここで、リヤシェル4の後方筒部4Bには、その開口端側に環状のシール部材16が設けられている。該シール部材16は、バルブボディ6の小径筒部6Bの外周面に摺接し、後方筒部4Bの開口端と小径筒部6Bとの間をシールしている。即ち、シール部材16は、後方筒部4Bの開口端と小径筒部6Bとの間で変圧室Bを外部の大気に対して気密にシールするものである。
バルブボディ6の小径筒部6B内に装着されたフィルタ17は、ハウジング2(リヤシェル4)の外部から小径筒部6B内に導入される作動気体としての空気を清浄化し、ハウジング2内にダスト等が侵入するのを防止するものである。保護ブーツ18は、バルブボディ6の小径筒部6Bの突出端側を外部のダスト等から保護するものである。該保護ブーツ18は、弾性材料により蛇腹状の筒体として形成され、その一端側は入力ロッド12の軸方向中間部に取付けられている。保護ブーツ18の他端側は、リヤシェル4の後方筒部4Bの開口端(先端)側に取付けられ、後方筒部4B内を摺動する小径筒部6Bの外周面を外部のダスト等から保護している。
プランジャ19はバルブボディ6の段付穴9内に変位可能に挿嵌されている。該プランジャ19は、プランジャ本体20と後述の筒状ホルダ35とにより構成されている。ここで、プランジャ本体20の一端側は段付筒状に形成され、バルブボディ6の小径筒部6B内ヘと突出している。そして、プランジャ本体20の突出端(一端)側には、入力ロッド12の球形部12Aが着脱可能に固着され、これによりプランジャ本体20は、入力ロッド12と一体に図1中の矢示C,D方向に変位する構成となっている。
図2に示すように、プランジャ本体20の突出端(一端)側には、バルブボディ6の弁座部6Cよりも小径に形成された環状弁座としての当接部20Aが一体に設けられている。プランジャ本体20の当接部20Aは、ポペット弁体13に離着座することにより小径筒部6B内の大気圧を連通路11側に導入したり、大気導入を遮断したりするものである。
プランジャ本体20の当接部20Aは、バルブボディ6の弁座部6Cおよびポペット弁体13と共に弁手段としての弁機構8を構成している。プランジャ本体20の当接部20Aは、ポペット弁体13に離着座することにより小径筒部6B内の大気圧に対する変圧室Bの連通,遮断を制御する。また、ポペット弁体13がバルブボディ6の弁座部6Cに離着座することにより、負圧室Aに対する変圧室Bの連通,遮断を制御するものである。
図2に示すように、プランジャ本体20の他端側は、段付穴9の小径穴部側に挿嵌された受圧凸部20Bとなり、該受圧凸部20Bには、後述の筒状ホルダ35が嵌合して設けられている。そして、プランジャ本体20と筒状ホルダ35からなるプランジャ19は、後述する出力ロッド22からの反力の一部をブレーキアシスト機構31(特に、ピストン32、段付スリーブ34およびスプリング39)を介して入力ロッド12に伝達するものである。さらに、プランジャ本体20の外周側にはキー挿入穴10と対応する位置に環状溝20Cが形成され、該環状溝20Cには、ストップキー21が係合状態で取付けられている。
ストップキー21はプランジャ19の戻り位置を規制するもので、該ストップキー21は、略長方形の平板を用いて形成され、バルブボディ6のキー挿入穴10を介してプランジャ本体20の環状溝20Cに遊嵌状態で係合されている。そして、ストップキー21の端部は、バルブボディ6から径方向に一定寸法だけ突出し、リヤシェル4の段差部4Cに当接可能となっている。
即ち、入力ロッド12に対する押動操作の解除時に、ストップキー21は、リヤシェル4の段差部4Cに当接することにより、バルブボディ6およびプランジャ19の戻り位置を図1に示すように規制するものである。なお、リヤシェル4には、前記段差部4Cに替えて別体のストッパ部材(図示せず)を設け、このストッパ部材に対してストップキー21の端部を当接させる構成としてもよい。
出力ロッド22は、入力ロッド12の押動操作力を倍力した状態で外部に出力するための部材である。該出力ロッド22は、軸方向の一側に大径のフランジ部22Aが設けられ、該フランジ部22Aは、バルブボディ6の筒状突出部6Dを後述のリアクションディスク25を介して軸方向他側から施蓋するように、バルブボディ6の筒状突出部6Dに嵌合されている。
そして、出力ロッド22は、入力ロッド12への押動操作時にバルブボディ6と一緒に図1中の矢示E方向に大きな出力をもって押動される。即ち、出力ロッド22の他端側は、フロントシェル3の筒状凹部3Bに向けて軸方向に突出し、入力ロッド12の押動操作力を倍力した力(出力)で前記マスタシリンダのピストン(図示せず)を軸方向に押圧する構成となっている。
ばね受23はバルブボディ6の筒状突出部6D側に設けられている。該ばね受23は、出力ロッド22のフランジ部22Aを介して筒状突出部6Dの外周側に取付けられ、筒状突出部6Dに対するフランジ部22Aの抜止めを戻しばね24と共に行う構成となっている。ここで、戻しばね24は、ばね受23とフロントシェル3の筒状凹部3Bとの間に配設され、バルブボディ6を図1中の矢示F方向に常時付勢するものである。
リアクションディスク25は、バルブボディ6の筒状突出部6Dと出力ロッド22のフランジ部22Aとの間に配設されたリアクション部材である。該リアクションディスク25は、弾性変形可能なゴム材料等の弾性部材を用いて円板状に形成されている。そして、リアクションディスク25は、後述の如く負圧室Aと変圧室Bとの間に発生した圧力差により、バルブボディ6に生じた推力(矢示E方向の推力)を出力ロッド22に伝達する。
このとき、リアクションディスク25は、バルブボディ6からの推力に従って弾性変形し、その一部が後述のピストン32(小径部32Bの端面)に当接する位置まで受圧部材38内に向けて隙間S1(図2参照)の寸法分だけ膨出する。この状態で、リアクションディスク25は、出力ロッド22からの反力を、フランジ部22Aを介して受承すると共に、反力の一部をブレーキアシスト機構31(特に、ピストン32、段付スリーブ34およびスプリング39)とプランジャ19とを介して入力ロッド12側に伝達し、前記ブレーキペダル側の運転者に踏み応えを与えるものである。
負圧導入管26はフロントシェル3の前壁3Aに設けられている。該負圧導入管26は、図1に示すようにフロントシェル3の前壁3Aから突出するパイプ等からなり、エンジンの吸気マニホールドに逆止弁(いずれも図示せず)等を介して接続されている。そして、負圧導入管26は、前記エンジンの作動時に吸気マニホールド内で発生した負圧を負圧室A内へと導くことにより、負圧室A内を大気圧よりも低い圧力に保持するものである。
また、フロントシェル3の前壁3Aには、前記マスタシリンダをフロントシェル3に固定するための固定ボルト27が設けられている。リヤシェル4の後壁4Aには、リヤシェル4を含めてハウジング2全体を車両のエンジンルーム内壁等に取付ける取付ボルト28が設けられている。ここで、固定ボルト27と取付ボルト28とは連結ロッド29を介して一体に形成されている。そして、連結ロッド29の長さ方向途中位置には、筒状のシール部材30が摺動可能に挿嵌して設けられている。該シール部材30は、パワーピストン5と連結ロッド29との間を気密にシールし、連結ロッド29の周囲で負圧室Aと変圧室Bとの間を封止状態に保つものである。
次に、図2を参照して第1の実施の形態で採用したブレーキアシスト機構31について説明する。このブレーキアシスト機構31は、バルブボディ6の段付穴9内に位置してプランジャ19とリアクションディスク25との間に設けられている。
ここで、ブレーキアシスト機構31は、後述の段付スリーブ34等を介して段付穴9内に可動に配置されリアクションディスク25の一側端面に軸方向の隙間S1を介して対向するピストン32と、ピストン32と共にリアクションディスク25に当接するレシオリング37と、プランジャ19とピストン32との間に介装されプランジャ19(後述の筒状ホルダ35)に当接する弾性部材33と、ピストン32および弾性部材33の外周に嵌合して取付けられた段付スリーブ34と、該段付スリーブ34をリアクションディスク25側に付勢する後述のスプリング39とを備えている。
ここで、ピストン32は、軸方向一側の大径部32Aと他側の小径部32Bとから段付の円柱状に形成されている。大径部32Aは弾性部材33よりも大径に形成され、大径部32Aの一側端面は弾性部材33に当接している。ピストン32の小径部32Bは、リアクションディスク25に当接するように後述のレシオリング37内を軸方向他側に向けて突出している。図4に示すように、ピストン32の小径部32Bは、リアクションディスク25に対して受圧面積A3をもって当接することができる。
弾性部材33は、ピストン32と筒状ホルダ35との間に介装されるゴム等の弾性体からなる円筒状の部材であり、段付スリーブ34内でピストン32の大径部32Aと筒状ホルダ35との間に隙間がない状態で挟持されている。そして、弾性部材33は、そのリアクションディスク25側の面である他側端面33Aが段付スリーブ34の段部34Cに臨むように、段部34Cの段差面と同一な環状平面上に配置されている。
段付スリーブ34は、軸方向一側に位置し弾性部材33および筒状ホルダ35の外周に摺動可能に嵌合する小径筒部34Aと、軸方向他側に位置してピストン32の大径部32Aの外周に摺動可能に嵌合する大径筒部34Bと、小径筒部34Aと大径筒部34Bとの間に形成された段差面を含む環状の段部34Cとを含んで構成されている。段付スリーブ34の小径筒部34Aは、内部に収容した弾性部材33が拡径(径方向外向きに弾性変形)するのを制限し、大径筒部34Bは、弾性部材33の拡径を許容するように小径筒部34Aよりも大径に形成されている。
段付スリーブ34の大径筒部34Bは、ピストン32の大径部32Aよりも軸方向に長く延びて形成されている。大径筒部34Bの開口端(軸方向の他側端部)は、後述する受圧部材38の一側端面に当接可能になっており、運転者がブレーキペダルを踏込み操作していない非制動位置では受圧部材38の一側端面との間に隙間S2が形成されている。この隙間S2は、通常の制動時にブレーキアシスト機構31が作動しないように若干の離間寸法が設定されていればよく、望ましくは、リアクションディスク25とピストン32(小径部32Bの端面)との隙間S1以上の寸法となるように設定する。この状態で、ピストン32の大径部32Aと受圧部材38の一側端面との間には、図2に示すように、隙間S1よりも軸方向寸法が大きい環状の空間が形成されている。
筒状ホルダ35は、段付スリーブ34との間で後述するスプリング39のばね力を受承する部材である。筒状ホルダ35は、プランジャ19の一部を構成し、その一側がプランジャ本体20の受圧凸部20Bに嵌合して固定されている。筒状ホルダ35の一側外周には、スプリング39のばね力を受承するばね受部35Aが径方向外向きに突設されている。筒状ホルダ35の内周側には、弾性部材33の中心側を貫通して延びるステム36が設けられ、該ステム36の先端側(他側端部)は、圧入等の手段を用いてピストン32の中心側に締結状態で連結されている。このため、弾性部材33は、ステム36による締結力によりピストン32と筒状ホルダ35との間に弾性変形しない状態で軸方向両側にほぼ隙間がなく挟持されている。
ピストン32の小径部32Bには、その外周側に段付円筒状のレシオリング37が摺動可能に挿嵌され、該レシオリング37の外周には、環状の段部37Aが一体に形成されている。また、レシオリング37の軸方向他側の端部は、ピストン32の大径部32Aの軸方向一側の面に当接するようになっている。一方、バルブボディ6の筒状突出部6D内には、環状の受圧部材38が固定されており、受圧部材38は、段付穴9の軸方向他側でリアクションディスク25の一側面に当接するように配置されている。そして、受圧部材38の内周側には、ピストン32の小径部32Bがレシオリング37と共に摺動可能に挿通されている。受圧部材38の内周側には、レシオリング37の段部37Aと軸方向で対向する位置に環状の段差部38Aが設けられている。この段差部38Aは、非制動位置において、レシオリング37の段部37Aとの間に隙間S3(図2参照)が設定されている。この隙間S3は、ジャンプインクリアランスである隙間S1以上の寸法となるように設定されている。
ここで、図1、図2に示す非制動位置において、ピストン32の小径部32Bおよびレシオリング37の先端部(他側端部)とリアクションディスク25との間には、予め決められた軸方向寸法の隙間S1(ジャンプインクリアランス)が形成されている。ブレーキ操作時に、マスタシリンダからの液圧反力が出力ロッド22を介して伝達されるため、リアクションディスク25は、その一部がピストン32(小径部32Bの端面)に当接する位置まで受圧部材38内に向けて隙間S1分だけ膨出して、ブレーキ操作の踏力(入力)と液圧反力(出力)とがバランスするようになっている。
このように、リアクションディスク25の一部が隙間S1分、膨出したときには、その膨出圧によりレシオリング37がピストン32の大径部32A側に向けて移動(後退)するが、隙間S3により、レシオリング37は、環状の段部37Aが受圧部材38の段差部38Aに当接しない。一方、急ブレーキ操作がなされてブレーキアシスト機構31が作動したときには、リアクションディスク25の一部が隙間S1分以上に膨出しようとする。このとき、レシオリング37は、環状の段部37Aが受圧部材38の段差部38Aに当接する。これにより、レシオリング37のリアクションディスク25への当接面積分の液圧反力がバルブボディ6に受承されるようになる。図4に示すように、レシオリング37は、リアクションディスク25に対して受圧面積A2をもって当接することができる。
スプリング39は段付スリーブ34と筒状ホルダ35とを互いに離間する方向に向けて付勢する付勢部材である。スプリング39は、段付スリーブ34の大径筒部34Bと筒状ホルダ35のばね受部35Aとの間に介装され、段付スリーブ34の大径筒部34Bの段部34Cを、ピストン32の大径部32Aの一側端面側に常時押圧して両者を当接させている。これにより、スプリング39は、非制動位置において、セット荷重が付加されている。
このように構成されるブレーキアシスト機構31は、急ブレーキの操作時に、バルブボディ6に対するプランジャ19の相対移動量または速度が所定値に達して、これ以上になると、段付スリーブ34の大径筒部34Bが受圧部材38の軸方向一側端面に当接する。即ち、図2中に示す隙間S2が零となる。これにより、弾性部材33と筒状ホルダ35とが、スプリング39の付勢力に抗して段付スリーブ34内を軸方向に移動する。このとき、ピストン32の大径部32Aと段付スリーブ34の段部34Cとが軸方向に相対移動することで、両者の間に空間(図3中に示す空間SP)が生じる。そして、弾性部材33は、この大径筒部34Bの内部の空間SP内にはみ出すように拡径すると共に、ピストン32と筒状ホルダ35との間で軸方向に圧縮される。
これにより、ブレーキアシスト機構31は、急ブレーキの操作時にプランジャ19が段付穴9内でバルブボディ6に対して軸方向に大きく相対変位するのを許す。従って、本実施形態においては、弾性部材33のリアクションディスク25側の他側端面33Aが、段付スリーブ34の小径筒部34Aと大径筒部34Bとの間の段部34Cの段差面に臨んでいるので、ピストン32と段付スリーブ34のとの相対移動によって生じる空間(図3中にSPで示す)内へと即座に弾性部材33の外周側がはみ出るようになり、ブレーキアシスト機構31の軸長短縮性が向上する。
第1の実施の形態による気圧式倍力装置1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
まず、車両の運転者がブレーキペダルを踏込み操作すると、これにより入力ロッド12が矢示C方向に押動され、プランジャ19とブレーキアシスト機構31は、バルブボディ6の段付穴9内で図2に示す隙間S1において入力ロッド12と一体に変位する。そして、プランジャ19(プランジャ本体20)の変位により環状の当接部20Aが、バルブボディ6の弁座部6Cとの当接によって追従を規制されたポペット弁体13から離座すると、バルブボディ6の小径筒部6B内から大気圧が連通路11を介して変圧室B内に導入され、負圧室Aと変圧室Bとの間に圧力差が発生する。
このため、バルブボディ6は、負圧室Aと変圧室Bとの間の圧力差によってパワーピストン5に生じた推力で図1中の矢示E方向に前進する。このときの推力は、バルブボディ6からリアクションディスク25を介して出力ロッド22に伝達され、所謂ジャンプインが生じ、出力ロッド22からの出力は瞬間的に上昇する。そして、このジャンプイン後は入力ロッド12への入力(ペダル踏力)が増大するに応じて出力も一定の倍力比、即ち、リアクションディスク25に対する受圧部材38の当接面積(図4中に示す受圧面積A1に該当する)と、ピストン32の小径部32B及びレシオリング37の先端部の当接面積、即ち、図4に示す受圧面積(A2+A3)との比で増大することになる。
また、このようなブレーキ操作時の状態では、負圧室Aと変圧室Bとの間の圧力差に応じてバルブボディ6がパワーピストン5と共に矢示E方向に変位し、ポペット弁体13は弁座部6Cに着座した状態でバルブボディ6と共に同方向に変位する。そして、この間はプランジャ本体20の当接部20Aがポペット弁体13に対する離着座を繰返す。また、入力ロッド12に対する矢示C方向の入力とリアクションディスク25を介した矢示F方向の反力とが釣合った(均衡)状態を保つことにより、プランジャ本体20の当接部20Aはポペット弁体13に対して着座することになる。
さらに、ペダル(入力ロッド12)を大きく踏込むことにより、負圧室Aと変圧室Bとの間の圧力差が最大となった状態、即ち、変圧室Bがほぼ大気圧となった状態では、これ以上に入力ロッド12を踏込み操作しても圧力差による倍力作用は発揮できなくなる。そして、出力ロッド22は、この状態で入力ロッド12と実質的に一体となって軸方向に変位し、その後はストロークエンドに達する。
一方、ブレーキ操作を解除したときには、入力ロッド12が戻しばね15により矢示D方向に押戻され、これに伴ってプランジャ19も同方向に引っ張られる。このため、プランジャ本体20の当接部20Aは、ポペット弁体13に着座し、変圧室Bを外部の大気に対して遮断することになる。また、このときに、プランジャ19は、プランジャ本体20の当接部20Aを介してポペット弁体13を弱ばね14に抗して矢示D方向に押圧し、バルブボディ6の弁座部6Cからポペット弁体13を強制的に離座させる。
この結果、負圧室Aと変圧室Bとが連通路7,11等を介して互いに連通することになり、負圧室A内の負圧が変圧室B側に導入される。これによって、負圧室Aと変圧室Bとがブレーキ操作解除前の圧力差よりも低い圧力差になる。そして、出力ロッド22は、バルブボディ6と共に戻しばね24により矢示F方向に押戻され、最終的には図1に示す如く、ストップキー21の突出端側がリヤシェル4の段差部4Cに当接することになる。
そして、ストップキー21が段差部4Cに当接した状態で、プランジャ19の最終戻り位置が規制され、パワーピストン5、バルブボディ6、入力ロッド12および出力ロッド22等が図1に示す初期位置に復帰する。また、ポペット弁体13は、このときにバルブボディ6の弁座部6Cとプランジャ本体20の当接部20Aとに着座し、変圧室Bを負圧室Aと同様の負圧状態に保ったまま次なるブレーキ操作に備えることになる。
次に、第1の実施の形態で採用したブレーキアシスト機構31の動作について図2、図3及び図4を参照して説明する。
即ち、プランジャ19(筒状ホルダ35)とリアクションディスク25との間に設けられたピストン32、弾性部材33、段付スリーブ34、レシオリング37およびスプリング39等からなるブレーキアシスト機構31は、通常の制動時に、段付スリーブ34の大径筒部34Bが受圧部材38の軸方向一側端面に当接することがほとんどなく、スプリング39が軸方向に圧縮変形されることはほとんどない。よって、弾性部材33は、段付スリーブ34の小径筒部34Aの内周面によって、その形状が保持された状態となる。これにより、気圧式倍力装置1の通常制動時には、前述したように一定の倍力比で、入力ロッド12の押圧力(ブレーキペダルの操作力、踏力)に対して比例する出力が出力ロッド22に発生する。
一方、急ブレーキ操作(急制動)時には、入力速度(ブレーキペダルの踏込速度)が大きく、バルブボディ6に対するプランジャ19の相対移動量または速度が所定値に達して、これ以上となるので、図3に示すように、段付スリーブ34の大径筒部34Bが受圧部材38の軸方向一側端面に当接する。これにより、段付スリーブ34の大径筒部34Bと筒状ホルダ35のばね受部35Aとの間でスプリング39が軸方向に圧縮変形される。このため、弾性部材33と筒状ホルダ35は、スプリング39の付勢力に抗して段付スリーブ34内を軸方向に移動し、弾性部材33は、ピストン32の大径部32Aと段付スリーブ34の段部34Cとの間に形成される大径筒部34Bの内部の空間SPに、はみ出すように拡径する。
この結果、段付スリーブ34内で弾性部材33が軸方向に圧縮される。換言すると、弾性部材33は、段付スリーブ34の大径筒部34Bの空間SP内にはみ出すように拡径し、ピストン32と筒状ホルダ35との間で軸方向に圧縮され易くなる。これにより、図4に示すように、プランジャ19は、バルブボディ6に対して軸方向に大きく変位し、弁機構8の開度(ポペット弁体13と当接部20Aとの開度)を大きくして出力を増大させることができる。しかし、このとき、出力の増大分、マスタシリンダからの液圧反力が増大するため、出力を維持するためのブレーキペダルの必要踏力も増大してしまう。この結果、場合によっては、出力を維持することができず、ブレーキペダルを操作しきれなくなる可能性がある。
これに対して、本実施の形態においては、レシオリング37が設けられていることで、上記の問題を解消している。即ち、一方、急ブレーキ操作がなされてブレーキアシスト機構31が作動したときには、弾性部材33の軸方向寸法が小さくなるので、リアクションディスク25の一部が隙間S1分以上に膨出しようとする。このとき、レシオリング37は、環状の段部37Aが受圧部材38の段差部38Aに当接する。これにより、レシオリング37のリアクションディスク25への当接面積分の液圧反力がバルブボディ6に受承されるようになる。従って、このときの倍力比は、リアクションディスク25に対する受圧部材38の当接面積(受圧面積A1)にレシオリング37の先端部の当接面積(受圧面積A2)を加算した当接面積(受圧面積A1+A2)と、ピストン32の小径部32Bの当接面積(受圧面積A3)との比となるため、倍力比を増大することができ、ブレーキペダルの必要踏力を低減することが可能になる。このため、本実施の形態の気圧式倍力装置においては、ブレーキアシスト機構31を作動させても、ブレーキペダルの必要踏力を増大させることなく、迅速に大きな制動力を発生させることができる。
ところで、従来技術によるブレーキアシスト機構では、特許文献1(特開2007−98970号公報)の図1に示すように、ブレーキアシスト機構のピストンに段付部が設けられており、ブレーキアシスト機構の非作動時には、弾性部材の一部が前記段付部内にはみ出さない構造としている。しかし、その反面ブレーキアシスト機構を作動させるときには、段付スリーブとピストンとの間の空間形成にある程度の相対移動が必要となり、弾性部材が段付スリーブ内でピストンの段付部との間にはみ出すのに時間を要し、入力荷重が高くなってブレーキアシスト機構の作動遅れが生じることがある。また、ブレーキアシスト機構が作動したときには、ピストンの段付部側に弾性部材がはみ出し始めると、これによって圧縮力が一気に開放されるため、その際にペダル振動(衝撃音)が発生する等の問題がある。
そこで、第1の実施の形態では、このような問題を解消するために、ブレーキアシスト機構31は、リアクションディスク25と軸方向で対向するピストン32と、該ピストン32とプランジャ19の筒状ホルダ35との間に介装された弾性部材33と、ピストン32、弾性部材33およびプランジャ19(筒状ホルダ35)の外周に摺動可能に嵌合して設けられ弾性部材33の拡径を制限する小径筒部34Aと弾性部材33の拡径を許容する大径筒部34Bとを有する段付スリーブ34と、該段付スリーブ34をリアクションディスク25側へ付勢するスプリング39とを備えている。
この上で、ブレーキアシスト機構31の非作動時に、弾性部材33のリアクションディスク25側の面である他側端面33Aは、段付スリーブ34の小径筒部34Aと大径筒部34Bとの間の段差面である段部34Cに臨んでおり、バルブボディ6に対するプランジャ19の相対移動量または速度が所定値に達したとき(即ち、ブレーキアシスト機構31の作動時)に、弾性部材33は、スプリング39の付勢力に抗して段付スリーブ34内を軸方向に移動して大径筒部34Bで拡径する構成としている。
第1の実施の形態で採用したブレーキアシスト機構31は、このような構成を有することにより、急ブレーキ操作時にバルブボディ6に対するプランジャ19の相対移動量または速度が所定値以上に達すると、弾性部材33と筒状ホルダ35は、スプリング39の付勢力に抗して段付スリーブ34内を軸方向に移動し、弾性部材33は、ピストン32の大径部32Aと段付スリーブ34の段部34Cとの間で大径筒部34B内にはみ出すように拡径する。
この場合、ピストン32の大径部32Aは、外周側部位がブレーキアシスト機構31の非作動時に段付スリーブ34の小径筒部34Aと大径筒部34Bとの間の段部34Cに全周にわたって当接し、弾性部材33は、その他側端面33Aが段付スリーブ34の小径筒部34A内で段部34Cに臨むように、段部34Cと同一な環状平面上に配置される構成としている。
このため、ブレーキアシスト機構31の作動時には、弾性部材33と筒状ホルダ35とがスプリング39の付勢力に抗して段付スリーブ34内を軸方向に移動すると、弾性部材33は、その他側端部がピストン32の大径部32Aと段付スリーブ34の段部34Cとの間で大径筒部34B内にはみ出し易くなり、従来技術に比較してより低い入力荷重で、弾性部材33を軸方向に圧縮変形させることが可能となる。即ち、弾性部材33の軸長短縮性を向上することができる。
また、このような弾性部材33の軸長短縮性(はみ出し性)の向上は、スプリング39の付勢力(ばね荷重)の低減と同様の効果が期待できる。そして、弾性部材33は、ピストン32の大径部32Aと段付スリーブ34の段部34Cとの間で大径筒部34B内にはみ出すように拡径するため、弾性部材33の軸方向圧縮力を拡径方向へと早く開放できる分、ブレーキペダルの振動を低減でき、衝撃音の発生を抑えることができる。
次に、図5は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、弾性部材のリアクション部材側の面が、段付スリーブの大径筒部に臨んだ位置となるように配置、即ち、段付スリーブの小径筒部と大径筒部との段差面が弾性部材の前記リアクション部材側の面よりもプランジャ側に位置するように配置される構成としている。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
ここで、第2の実施の形態で採用したブレーキアシスト機構41は、第1の実施の形態で述べたブレーキアシスト機構31と同様に構成され、ピストン42、弾性部材43、段付スリーブ44およびスプリング45等を含んでいる。しかし、この場合のブレーキアシスト機構41は、非作動時に弾性部材43のリアクションディスク25側の面である他側端面43Aが、段付スリーブ44の大径筒部44B内に臨んだ位置となるように配置する構成としている。即ち、段付スリーブ44の小径筒部44Aと大径筒部44Bとの段差面(段部44C)が、弾性部材43のリアクション部材25側の他側端面43Aよりもプランジャ19側に位置するように配置される構成としている。
ピストン42は、軸方向の一側の大径部42Aと他側の小径部42Bとを有しており、大径部42Aのプランジャ19側の面の外周側に環状突起42Cが形成されている。環状突起42Cは、弾性部材43の他側端面43Aの外周側を取囲むように寸法Lをもって軸方向に突出している。そして、ピストン42は、弾性部材43の中心側を貫通して延びるステム36により筒状ホルダ35に締結状態で連結されている。そして、本実施の形態のピストン42は、大径部42Aの環状突起42Cが後述する段付スリーブ44の段部44C(即ち、段差面)に当接する構成としている。
弾性部材43は、第1の実施の形態で述べた弾性部材33とほぼ同様に構成され、ステム36による締結力によりピストン42と筒状ホルダ35との間に弾性変形しない状態で挟持されている。本実施の形態の弾性部材43は、リアクションディスク25側となる他側端部が、ピストン42の大径部42Aの環状突起42Cの内周側に入り込んで配置されている。
段付スリーブ44は、第1の実施の形態で述べた段付スリーブ34と同様に構成され、小径筒部44A、大径筒部44Bおよび環状の段部44Cを有している。段付スリーブ34の段部44Cは、段差面を構成するものである。
かくして、このように構成される第2の実施の形態でも、弾性部材43のはみ出し性を向上することができ、第1の実施の形態と同様な効果を奏することができる。特に、第2の実施の形態では、ブレーキアシスト機構41の非作動時に、弾性部材43の他側端面43A(即ち、リアクションディスク25側の面)が、段付スリーブ44の大径筒部44B内に臨んだ位置となるように配置する構成としている。即ち、段付スリーブ44の小径筒部44Aと大径筒部44Bとの段差面を含む段部44Cが、弾性部材43のリアクション部材25側の面43Aよりもプランジャ19側に位置するように配置される構成としている。
このため、弾性部材43のうち圧縮されたときに比較的弾性変形し易い外周面が段付スリーブ44の小径筒部44Aと大径筒部44Bとの段差面を含む段部44Cに臨んでいるので、急ブレーキの操作時において、筒状ホルダ35と弾性部材43とがスプリング39の付勢力に抗して段付スリーブ44内を軸方向に移動するときには、ピストン42の環状突起42Cと段付スリーブ44の段部44Cとで形成される空間である大径筒部44Bの内部空間に、弾性部材33が迅速にはみ出すように拡径させることができる。
この結果、弾性部材43は、ピストン42の環状突起42Cと段付スリーブ44の段部44Cとで形成される大径筒部44Bの内部空間に迅速にはみ出すように拡径するため、弾性部材43の軸方向圧縮力を拡径方向へとより素早く開放できる分、ブレーキペダルの振動を低減でき、衝撃音の発生を抑えることができる。
なお、前記第1の実施の形態では、プランジャ19をプランジャ本体20と筒状ホルダ35との2部材により構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばプランジャを単一部材により構成してもよく、3個以上の部材により構成してもよい。この点は第2の実施の形態についても同様である。
また、前記各実施の形態では、入力ロッド12に対する押動操作の解除時に、ストップキー21がリヤシェル4の段差部4Cに当接することにより、バルブボディ6およびプランジャ19の戻り位置を規制する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば別体のストッパ部材をリヤシェルに設け、このストッパ部材に対してストップキー21の端部を当接させる構成としてもよい。