JP6154391B2 - 遺伝子改変された主要組織適合複合体マウス - Google Patents

遺伝子改変された主要組織適合複合体マウス Download PDF

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Description

関連出願の引用
本願は、いずれも2011年10月28日に出願された米国仮特許出願第61/552,582号および同第61/552,587号、ならびに2012年9月14日に出願された米国仮特許出願第61/700,908号の優先権の利益を主張する。これらの出願はすべて、それらの全体が本明細書に参考として援用される。
発明の分野
本発明は、ヒトまたはヒト化主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子を発現する、遺伝子改変された非ヒト動物、例えば、げっ歯動物(例えば、マウスまたはラット)に関する。本発明はまた、ヒトまたはヒト化MHC Iタンパク質(例えば、MHC Iα鎖)および/またはヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンを発現する、遺伝子改変された非ヒト動物、例えば、マウスまたはラット、ならびに、これを発現する胚、組織および細胞にも関する。本発明はさらに、ヒトまたはヒト化MHCクラスIタンパク質(例えば、MHC Iα鎖)および/またはβ2ミクログロブリンを発現する、遺伝子改変された非ヒト動物を作製するための方法を提供する。また、in vitroにおけるヒト化細胞性免疫系に関連して、または遺伝子改変された非ヒト動物において、ペプチドを同定するためおよび評価するための方法、ならびに、非ヒト動物、例えばマウスまたはラットのMHC I遺伝子座および/またはβ2ミクログロブリン遺伝子座を改変し、ヒトまたはヒト化MHC Iおよび/またはβ2ミクログロブリンを発現する方法も提供する。
発明の背景
獲得免疫応答において、外来性抗原が、Bリンパ球(例えば、免疫グロブリン)およびTリンパ球(例えば、T細胞受容体すなわちTCR)上の受容体分子によって認識される。これらの外来性抗原は、特殊文化したタンパク質、一般に主要組織適合複合体(MHC)分子と呼ばれるタンパク質によって、細胞の表面にペプチド断片として提示される。MHC分子は、約4Mbに及ぶ遺伝子の連結したクラスターとして見出される複数の遺伝子座によってコードされる。マウスにおいて、MHC遺伝子は、第17番染色体上に見出され、歴史的な理由から、組織適合性2(H−2)遺伝子と呼ばれる。ヒトにおいて、上記遺伝子は、第6染色体上に見出され、ヒト白血球抗原(HLA)遺伝子と呼ばれる。マウスおよびヒトにおける遺伝子座は、多遺伝子性である;これらは、ヒトゲノムとマウスゲノムとにおいて類似の構成(organization)を示すMHC遺伝子の3つの高度多形性クラス(クラスI、IIおよびIII)を含む(それぞれ、図2および図3を参照されたい)。
MHC遺伝子座は、ゲノムにおいて最も高度の多形性を示す;いくつかの遺伝子は、300を超える対立遺伝子によって表される(例えば、ヒトHLA−DRβおよびヒトHLA−B)。全てのクラスIおよびII MHC遺伝子は、ペプチド断片を提示し得るが、各々の遺伝子は、多形および対立遺伝子バリアントを反映して、異なる結合特性を有するタンパク質を発現する。任意の所定の個体は、免疫応答の過程においてB細胞およびT細胞に対する、細胞表面に提示され得る独特な範囲のペプチド断片を有する。
ヒトおよびマウスの両方とも、クラスI MHC遺伝子を有する(図2および図3を参照されたい)。ヒトにおいて、古典的クラスI遺伝子は、HLA−A、HLA−BおよびHLA−Cと呼ばれ、他方で、マウスにおいて、これらは、H−2K、H−2DおよびH−2Lである。クラスI分子は、2本の鎖からなる:多形性α鎖(時々、重鎖と呼ばれる)および、一般に多形性ではないβ2−ミクログロブリンと呼ばれるより短い鎖(軽鎖としても知られる)(図1)。これらの2本の鎖は、細胞表面で非共有結合ヘテロダイマーを形成する。α鎖は、3つのドメイン(α1、α2およびα3)を含む。α鎖遺伝子のエクソン1はリーダー配列をコードし、エクソン2および3はα1およびα2ドメインをコードし、エクソン4はα3ドメインをコードし、エクソン5は膜貫通ドメインをコードし、エクソン6および7は細胞質尾部(cytoplasmic tail)をコードする。α鎖は、α1ドメインおよびα2ドメイン(Ig様ドメインに似ている)を含むペプチド結合溝(cleft)を形成し、その後に、β2−ミクログロブリンに類似するα3ドメインが続く。
β2ミクログロブリンは、非グリコシル化12kDaタンパク質である;その機能の1つは、MHCクラスIα鎖を安定化させることである。α鎖とは異なり、β2ミクログロブリンは膜まで及ばない。ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子座は、第15番染色体上にあり、他方で、マウス遺伝子座は、第2番染色体上にある。β2ミクログロブリン遺伝子は、4つのエクソンおよび3つのイントロンからなる。β2ミクログロブリンの循環形態は、血清、尿および他の体液中に存在する;従って、非共有結合MHC I関連β2ミクログロブリンは、生理学的条件下で、循環β2ミクログロブリンと交換され得る。
クラスI MHC分子は、腫瘍細胞を含む全ての有核細胞上に発現される。これらは、とりわけ、Tリンパ球およびBリンパ球、マクロファージ、樹状細胞ならびに好中球において特異的に発現され、CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)に対し、その表面にペプチド断片(典型的には、8〜10アミノ酸長)を提示するように機能する。CTLは、その自らの膜結合TCRによって認識されるMHC I結合ペプチドを保有する任意の細胞を死滅させることに特殊分化される。細胞が細胞性タンパク質に由来するが通常は存在しない(例えば、ウイルス起源、腫瘍起源または他の非自己起源の)ペプチドを提示する場合、このようなペプチドは、CTLによって認識され、該CTLは、活性化されて、該ペプチドを提示する細胞を死滅させる。
典型的には、MHC I分子との関連で、正常の(すなわち、自己の)タンパク質の提示は、寛容機構ゆえに、CTL活性化を惹起しない。しかし、いくつかの疾患(例えば、がん、自己免疫疾患)において、自己タンパク質に由来するペプチドが、免疫系の細胞構成要素の標的になり、このようなペプチドを提示する細胞の破壊をもたらす。MHCクラスI分子を介してヒトCTLによって認識されるペプチドの同定を改善するために、細胞性免疫応答を惹起するいくつかの自己由来抗原(例えば、種々のがんに関連する抗原)を認識することにおいて進歩はあるが、ヒト細胞性免疫系の諸態様を模倣するin vivoおよびin vitro両方の系についての必要性が依然としてある。ヒト細胞性免疫系を模倣する系は、ヒト治療剤、例えばワクチンおよび他の生物製剤を開発するための、疾患関連抗原を同定することにおいて使用され得る。ヒト免疫系との関連で、抗原認識を評価するための系は、治療的に有用な(例えば、ヒト疾患を研究し、これと闘うのに有用な)CTL集団を同定することを補助し得る。このような系はまた、ヒトCTL集団の活性を、感染症および外来性抗原保有実体とより有効に闘うように、増強することをも補助し得る。従って、ヒト免疫系の機能を模倣する構成要素を提示する免疫系を生成し得る生物システム(例えば、遺伝子操作動物)についての必要性がある。
ヒトMHCクラスIタンパク質およびそのキメラに関連し、CD8+T細胞に結合するペプチドを生成するかまたは同定するための生物系が提供される。細胞性免疫応答において機能するヒト分子またはヒト化分子を発現する非ヒト細胞を含む非ヒト動物が提供される。ヒトまたはヒトまたはヒト化MHC Iタンパク質およびヒトまたはヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンタンパク質をコードするヒト化げっ歯動物遺伝子座もまた提供される。ヒトまたはヒト化MHC分子およびヒトまたはヒト化β2ミクログロブリン分子を発現するヒト化げっ歯動物細胞もまた提供される。1種または複数種のヒトまたはヒト化免疫系分子を発現するヒト化げっ歯動物細胞を含む、in vivo系およびin vitro系が提供される。
キメラヒト/非ヒト(例えば、ヒト/げっ歯動物、例えば、ヒト/マウスまたはヒト/ラット)MHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をそのゲノムに含む非ヒト動物、例えば、げっ歯動物(例えば、マウスまたはラット)であって、ここで、該キメラポリペプチドのヒト部分がヒトMHC Iポリペプチドの細胞外ドメインを含む非ヒト動物が本明細書中で提供される。具体的には、非ヒト動物であって、内在性MHC I遺伝子座においてキメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、該キメラポリペプチドのヒト部分がヒトMHC Iポリペプチドの細胞外ドメインを含むヌクレオチド配列を含み、キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドを発現する非ヒト動物が本明細書中で提供される。1つの態様では、上記動物は、内在性非ヒトMHC I遺伝子座から内在性非ヒトMHC Iポリペプチドの細胞外ドメインを発現しない。本発明の1つの態様では、上記非ヒト動物(例えば、げっ歯動物、例えば、マウスまたはラット)は、キメラヒト/非ヒト(例えば、ヒト/げっ歯動物、例えばヒト/マウスまたはヒト/ラット)MHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む2コピーのMHC I遺伝子座を含む。本発明の別の態様では、上記動物は、キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む1コピーのMHC I遺伝子座を含む。従って、上記動物は、キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むMHC I遺伝子座について、ホモ接合型であってもヘテロ接合型であってもよい。種々の実施形態において、キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、非ヒト動物(例えば、げっ歯動物、例えば、ラットまたはマウス)の生殖細胞系に含まれる。
1つの態様では、キメラヒト/非ヒトMHC Iをコードするヌクレオチド配列は、内在性非ヒト調節エレメント、例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサーなどに作動可能に連結している。1つの実施形態において、キメラポリペプチドのヒト部分はヒトリーダー配列を含む。さらなる実施形態において、キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC Iポリペプチドのα1、α2およびα3ドメインを含む。ヒトMHC IポリペプチドはHLA−A、HLA−B、およびHLA−Cからなる群より選択され得る。1つの実施形態において、ヒトMHC Iポリペプチドは、HLA−A2ポリペプチド、例えば、HLA−A2.1ポリペプチドである。
1つの態様では、遺伝子操作された非ヒト動物は、げっ歯動物である。1つの実施形態では、上記げっ歯動物はマウスである。従って、1つの実施形態では、内在性非ヒト遺伝子座は、マウス遺伝子座、例えば、マウスH−2K、H−2DまたはH−2L遺伝子座である。1つの実施形態では、キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドの非ヒト部分は、内在性非ヒトMHC Iポリペプチドの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む。従って、上記非ヒト動物がマウスである実施形態では、内在性非ヒトMHC I遺伝子座は、H−2K遺伝子座(例えば、H−2Kb遺伝子座)であってもよく、内在性非ヒトMHC Iポリペプチドは、H−2Kポリペプチドであってもよい;従って、キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドは、H−2Kポリペプチドの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含み得る。非ヒト動物がマウスである別の実施形態では、内在性非ヒトMHC I遺伝子座は、H−2D遺伝子座であってもよく、内在性非ヒトMHC Iポリペプチドは、H−2Dポリペプチドであってもよい;従って、キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドは、H−2Dポリペプチドの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含み得る。同様に、別の実施形態では、内在性非MHC I遺伝子座は、H−2L遺伝子座であってもよく、内在性非ヒトMHC Iポリペプチドは、H−2Lポリペプチドであってもよい;従って、キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドは、H−2Lポリペプチドの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含み得る。
また、マウスであって、内在性H−2K遺伝子座においてキメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、該キメラポリペプチドのヒト部分がヒトHLA−A(例えば、HLA−A2)ポリペプチドの細胞外ドメインを含み、そのマウス部分がマウスH−2Kポリペプチドの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含むヌクレオチド配列を含み、該キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドを発現するマウスも本明細書中で提供される。いくつかの実施形態では、上記マウスは、内在性H−2K遺伝子座からマウスH−2Kポリペプチドの細胞外ドメインを発現しない。1つの態様では、キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、内在性マウス調節エレメントに作動可能に連結している。上記キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトリーダー配列を含み得る。これはまた、ヒトMHC Iポリペプチドのα1、α2およびα3ドメインをも含み得る。上記ヒトMHC Iポリペプチドは、HLA−Aポリペプチド、例えば、HLA−A2.1ポリペプチドであってもよい。1つの態様では、上記マウスH−2K遺伝子座は、H−2Kb遺伝子座である。
本発明の別の態様は、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をそのゲノムに含む、非ヒト動物、例えばげっ歯動物(例えば、マウスまたはラット)に関する。従って、非ヒト動物であって、内在性非ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子座においてヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現する非ヒト動物が本明細書中で提供される。1つの態様では、上記動物は、内在性非ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子座から機能的な内在性非ヒトβ2ミクログロブリンポリペプチドを発現しない。1つの態様では、上記動物は、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードする2コピーのβ2ミクログロブリン遺伝子座を含む;別の実施形態では、上記動物は、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードする1コピーのβ2ミクログロブリン遺伝子座を含む。従って、上記動物は、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするβ2ミクログロブリン遺伝子座について、ホモ接合型であってもヘテロ接合型であってもよい。種々の実施形態において、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、非ヒト動物(例えば、げっ歯動物、例えば、ラットまたはマウス)の生殖細胞系に含まれる。1つの実施形態では、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリンアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。1つの実施形態では、上記ポリペプチドは、MHC Iタンパク質に結合可能である。
いくつかの実施形態では、上記ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、内在性非ヒトβ2ミクログロブリン調節エレメントに作動可能に連結している。1つの態様では、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2〜エクソン4に示されるヌクレオチド配列を含む。別の態様では、上記ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2、3および4に示されるヌクレオチド配列を含む。さらなる態様において、上記ヌクレオチド配列はまた、非ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン1に示されるヌクレオチド配列をも含む。いくつかの実施形態では、上記非ヒト動物は、げっ歯動物(例えば、マウスまたはラット)である;従って、非ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子座は、げっ歯動物(例えば、マウスまたはラット)β2ミクログロブリン遺伝子座である。
ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を内在性β2ミクログロブリン遺伝子座において含むマウスであって、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現するマウスも提供される。いくつかの実施形態では、上記マウスは、内在性β2ミクログロブリン遺伝子座から、機能的な内在性マウスβ2ミクログロブリンを発現しない。上記ヌクレオチド配列は内在性マウス調節エレメントに連結し得る。1つの態様では、上記ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2〜エクソン4に示されるヌクレオチド配列を含む。あるいは、上記ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2、3および4に示されるヌクレオチド配列を含み得る。上記ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、マウスβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン1のヌクレオチド配列をさらに含み得る。1つの実施形態では、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリンアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。1つの実施形態では、上記ポリペプチドは、MHC Iタンパク質に結合可能である。
本発明は、キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列およびヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をそのゲノムに含む非ヒト動物(例えば、げっ歯動物、例えば、マウスまたはラット)をさらに提供する。1つの実施形態では、本発明は、キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドのヒト部分がヒトMHC Iポリペプチドの細胞外ドメインを含む該キメラポリペプチドをコードする第1ヌクレオチド配列、ならびにヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードする第2ヌクレオチド配列をそのゲノムに含む非ヒト動物であって、該第1ヌクレオチド配列は、内在性非ヒトMHC I遺伝子座に位置し、該第2ヌクレオチド配列は、内在性非ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子座に位置し、該動物は、該キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドおよび該ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現する非ヒト動物が提供される。1つの態様では、上記動物はマウスである。従って、内在性MHC I遺伝子座は、H−2K、H−2D、およびH−2L遺伝子座からなる群より選択され得る。1つの実施形態では、内在性マウス遺伝子座は、H−2K遺伝子座(例えば、H−2Kb遺伝子座)である。1つの実施形態では、上記ヒトMHC Iポリペプチドは、HLA−A、HLA−B、およびHLA−Cポリペプチドからなる群より選択される。1つの態様では、上記ヒトMHC Iポリペプチドは、HLA−A、例えば、HLA−A2(例えば、HLA−A2.1)である。種々の実施形態では、上記第1ヌクレオチド配列および上記第2ヌクレオチド配列は、上記非ヒト動物(例えば、げっ歯動物、例えば、マウスまたはラット)の生殖細胞系に含まれる。
従って、本発明は、キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドのヒト部分がヒトHLA−A(例えば、HLA−A2)の細胞外ドメインを含み、マウス部分がマウスH−2Kの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む該キメラポリペプチドをコードする第1ヌクレオチド配列、ならびにヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードする第2ヌクレオチド配列をそのゲノムに含むマウスであって、該第1ヌクレオチド配列は、内在性H−2K遺伝子座に位置し、該第2ヌクレオチド配列は、内在性マウスβ2ミクログロブリン遺伝子座に位置し、該マウスは、該キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドおよび該ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現するマウスを提供する。1つの実施形態では、上記キメラMHC Iポリペプチドおよびヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドの両方を含む非ヒト動物(例えば、マウス)は、それらのそれぞれの内在性遺伝子座から、内在性非ヒトMHC Iポリペプチド(例えば、マウスH−2Kポリペプチド)の細胞外ドメインおよび/または機能的な内在性非ヒト(例えば、マウス)β2ミクログロブリンポリペプチドを発現しない。1つの態様では、上記動物(例えば、マウス)は、それぞれ2コピーの上記第1ヌクレオチド配列および上記第2ヌクレオチド配列を含む。別の態様では、上記動物(例えば、マウス)は、1コピーの上記第1ヌクレオチド配列および1コピーの上記第2ヌクレオチド配列を含む。従って、上記動物は、上記第1ヌクレオチド配列および上記第2ヌクレオチド配列の両方について、ホモ接合型であっても、またはヘテロ接合型であってもよい。
1つの態様では、上記第1ヌクレオチド配列は、内在性非ヒト(例えば、マウス)MHC I調節エレメントに作動可能に連結しており、上記第2ヌクレオチド配列は、内在性非ヒト(例えば、マウス)β2ミクログロブリンエレメントに作動可能に連結している。上記キメラポリペプチドのヒト部分は、上記ヒトMHC Iポリペプチドのα1、α2およびα3ドメインを含み得る。上記第2ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2〜エクソン4に示されるヌクレオチド配列を含み得る。あるいは、上記第2ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2、3および4に示されるヌクレオチド配列を含み得る。1つの態様では、上記キメラMHC Iポリペプチドおよびヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドの両方を含むマウスは、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドの発現の非存在下における上記キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドの発現と比較して、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンの発現がキメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドの発現を増大させるものであってもよい。
本明細書中で記載される遺伝子操作された非ヒト動物(例えば、げっ歯動物、例えばマウスまたはラット)を作製する方法もまた、提供される。従って、1つの実施形態では、キメラヒト/げっ歯動物(例えば、ヒト/マウスまたはヒト/ラット)MHC Iポリペプチドを発現するようにげっ歯動物(例えば、マウスまたはラット)のMHC I遺伝子座を改変する方法であって、内在性MHC I遺伝子座において、げっ歯動物MHC Iポリペプチドの細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列を、ヒトMHC Iポリペプチドの細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列で置き換える工程を含む方法が提供される。別の実施形態では、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現するようにげっ歯動物(例えば、マウスまたはラット)のβ2ミクログロブリン遺伝子座を改変する方法であって、内在性げっ歯動物(例えば、マウスまたはラット)β2ミクログロブリン遺伝子座において、げっ歯動物(例えば、マウスまたはラット)β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列で置き換える工程を含む方法が提供される。このような方法では、上記置き換えは、単一のES細胞において行われ得、該単一のES細胞は、胚を作製するために、げっ歯動物(例えば、マウスまたはラット)に導入され得る。得られたげっ歯動物(例えば、マウスまたはラット)を交配して、二重ヒト化動物を生み出すことができる。
従って、本発明はまた、二重ヒト化動物、例えば、げっ歯動物(例えば、マウスまたはラット)を作製する方法をも提供する。1つの実施形態では、遺伝子改変されたマウスを作製する方法であって、(a)第1マウスのMHC I遺伝子座を、キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドを発現するように改変する工程であって、内在性マウスMHC I遺伝子座においてマウスMHC Iポリペプチドの細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列を、ヒトMHC Iポリペプチドの細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列で置き換える工程を含む工程、(b)第2マウスのβ2ミクログロブリン遺伝子座を、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現するように改変する工程であって、内在性マウスβ2ミクログロブリン遺伝子座においてマウスβ2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列で置き換える工程を含む工程;ならびに(c)該第1マウスと該第2マウスとを交配させて、そのゲノムに、キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドをコードする第1ヌクレオチド配列およびヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードする第2ヌクレオチド配列を含む遺伝子改変されたマウスを生み出す工程を含み、該遺伝子改変されたマウスは、キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドおよびヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現する方法が提供される。いくつかの実施形態では、上記MHC I遺伝子座は、H−2K、H−2D、およびH−2Lから選択され;いくつかの実施形態では、上記ヒトMHC Iポリペプチドは、HLA−A、HLA−B、およびHLA−Cから選択される。1つの実施形態では、上記MHC I遺伝子座は、H−2K遺伝子座であり、上記ヒトMHC Iポリペプチドは、HLA−A(例えば、HLA−A2)であり、上記マウスは、キメラHLA−A/H−2Kポリペプチド(例えば、HLA−A2/H−2Kポリペプチド)を発現する。1つの態様では、上記キメラHLA−A2/H−2Kポリペプチドは、HLA−A2ポリペプチドの細胞外ドメインならびにH−2Kポリペプチドの細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインを含む。1つの態様では、上記第2ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2、3、および4(例えば、エクソン2〜エクソン4)に示されるヌクレオチド配列、ならびにマウスβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン1に示されるヌクレオチド配列を含む。
本明細書中で記載される非ヒト動物(例えば、げっ歯動物、例えば、マウスまたはラット)に由来する細胞(例えば、単離された抗原提示細胞)もまた、本明細書中で提供される。本明細書中で記載される非ヒト動物に由来する組織および胚もまた提供される。
なお別の実施形態では、本発明は、免疫応答を惹起する抗原または抗原エピトープの同定のための方法、ワクチン候補を評価するための方法、ヒト病原体またはがん抗原に対する高親和性T細胞の同定のための方法を提供する。
本明細書中で記載される実施形態および態様のいずれもが、他に指示がない限り、文脈から別段明らかでない限り、互いに共同して使用され得る。他の実施形態は、続く詳細な記載を精査して当業者に明らかになる。以下の詳細な記載は、特許請求される本発明を制限しない、本発明の種々の実施形態の代表例を含む。添付の図面は、本明細書の一部を構成し、記載と一緒に、実施形態を例証するためのみに働き、本発明を制限しない。
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
内在性主要組織適合複合体I(MHC I)遺伝子座にキメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む非ヒト動物であって、
該キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC Iポリペプチドの細胞外ドメインを含み、
該非ヒト動物は、該キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドを発現する、非ヒト動物。
(項目2)
前記動物は、げっ歯動物であり、該げっ歯動物は、内在性主要組織適合複合体I(MHC I)遺伝子座においてキメラヒト/げっ歯動物MHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、
該キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC Iポリペプチドの細胞外ドメインを含み、
該げっ歯動物は、該キメラヒト/げっ歯動物MHC Iポリペプチドを発現する、項目1に記載の非ヒト動物。
(項目3)
内在性げっ歯動物MHC I遺伝子座から、内在性げっ歯動物MHC Iポリペプチドの細胞外ドメインを発現しない、項目2に記載のげっ歯動物。
(項目4)
前記ヌクレオチド配列は、内在性げっ歯動物調節エレメントに作動可能に連結している、項目2に記載のげっ歯動物。
(項目5)
前記げっ歯動物はマウスである、項目2に記載のげっ歯動物。
(項目6)
前記内在性遺伝子座はマウスH−2K遺伝子座である、項目5に記載のマウス。
(項目7)
前記キメラポリペプチドの前記ヒト部分はヒトリーダー配列を含む、項目2に記載のげっ歯動物。
(項目8)
前記キメラポリペプチドの前記ヒト部分は、前記ヒトMHC Iポリペプチドのα1、α2、およびα3ドメインを含む、項目2に記載のげっ歯動物。
(項目9)
前記キメラポリペプチドのげっ歯動物部分は、内在性げっ歯動物MHC Iポリペプチドの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む、項目2に記載のげっ歯動物。
(項目10)
前記げっ歯動物はマウスであり、前記内在性げっ歯動物MHC I遺伝子座は、H−2K遺伝子座であり、前記内在性げっ歯動物MHC Iポリペプチドは、H−2Kである、項目9に記載のげっ歯動物。
(項目11)
前記ヒトMHC Iポリペプチドは、HLA−A、HLA−B、およびHLA−Cからなる群より選択される、項目2に記載のげっ歯動物。
(項目12)
前記ヒトMHC Iポリペプチドは、HLA−Aポリペプチドである、項目11に記載のげっ歯動物。
(項目13)
内在性H−2K遺伝子座にキメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むマウスであって、
該キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトHLA−A2ポリペプチドの細胞外ドメインを含み、マウス部分は、マウスH−2Kポリペプチドの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含み、
該マウスは、該キメラHLA−A2/H−2Kポリペプチドを発現する、マウス。
(項目14)
内在性H−2K遺伝子座から前記マウスH−2Kポリペプチドの細胞外ドメインを発現しない、項目13に記載のマウス。
(項目15)
前記キメラポリペプチドの前記ヒト部分は、ヒトリーダー配列を含む、項目13に記載のマウス。
(項目16)
前記ヌクレオチド配列は、内在性マウス調節エレメントに作動可能に連結している、項目13に記載のマウス。
(項目17)
前記キメラポリペプチドの前記ヒト部分は、前記ヒトHLA−A2ポリペプチドのα1、α2、およびα3ドメインを含む、項目13に記載のマウス。
(項目18)
前記ヒトHLA−A2ポリペプチドは、HLA−A2.1ポリペプチドである、項目13に記載のマウス。
(項目19)
前記マウスH−2K遺伝子座は、H−2Kb遺伝子座である、項目13に記載のマウス。
(項目20)
マウスのMHC I遺伝子座を改変して、キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドを発現させる方法であって、該内在性MHC I遺伝子座において、マウスMHC Iポリペプチドの細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列を、ヒトMHC Iポリペプチドの細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列で置き換える工程を含む、方法。
(項目21)
前記マウスは、内在性マウスMHC I遺伝子座から、前記マウスMHC Iポリペプチドの前記細胞外ドメインを発現しない、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記マウスMHC I遺伝子座は、H−2K遺伝子座であり、前記マウスMHC Iポリペプチドは、H−2Kポリペプチドである、項目20に記載の方法。
(項目23)
前記ヒトMHC IポリペプチドはHLA−Aポリペプチドである、項目20に記載の方法。
(項目24)
前記マウスは、前記ヒトMHC Iポリペプチドのα1、α2、およびα3ドメインを発現する、項目20に記載の方法。
(項目25)
前記マウスは、前記マウスMHC Iポリペプチドの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを発現する、項目20に記載の方法。
(項目26)
前記置き換えは、単一のES細胞において行われ、該単一のES細胞は、マウス胚に導入されて、マウスを作製する、項目20に記載の方法。
(項目27)
内在性非ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子座にヒトβ2ミクログロブリンアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む非ヒト動物であって、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現する、非ヒト動物。
(項目28)
前記動物は、げっ歯動物であり、該げっ歯動物は、内在性げっ歯動物β2ミクログロブリン遺伝子座にヒトβ2ミクログロブリンアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、かつ、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現する、項目27に記載の非ヒト動物。
(項目29)
前記げっ歯動物は、内在性げっ歯動物β2ミクログロブリン遺伝子座から、機能的な内在性げっ歯動物β2ミクログロブリンポリペプチドを発現しない、項目28に記載のげっ歯動物。
(項目30)
前記ヌクレオチド配列は、内在性げっ歯動物β2ミクログロブリン調節エレメントに作動可能に連結している、項目28に記載のげっ歯動物。
(項目31)
前記ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2〜エクソン4に示されるヌクレオチド配列を含む、項目28に記載のげっ歯動物。
(項目32)
前記ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2、3、および4に示されるヌクレオチド配列を含む、項目28に記載のげっ歯動物。
(項目33)
前記ヌクレオチド配列は、げっ歯動物β2ミクログロブリン遺伝子のエクソン1に示されるヌクレオチド配列をさらに含む、項目31に記載のげっ歯動物。
(項目34)
前記ヌクレオチド配列は、げっ歯動物β2ミクログロブリン遺伝子のエクソン1に示されるヌクレオチド配列をさらに含む、項目32に記載のげっ歯動物。
(項目35)
前記げっ歯動物はマウスである、項目28に記載のげっ歯動物。
(項目36)
内在性β2ミクログロブリン遺伝子座にヒトβ2ミクログロブリンアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むマウスであって、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現する、マウス。
(項目37)
内在性マウスβ2ミクログロブリン遺伝子座から、機能的な内在性マウスβ2ミクログロブリンを発現しない、項目36に記載のマウス。
(項目38)
前記ヌクレオチド配列は、内在性マウス調節エレメントに作動可能に連結している、項目36に記載のマウス。
(項目39)
前記ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2〜エクソン4に示されるヌクレオチド配列を含む、項目36に記載のマウス。
(項目40)
前記ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2、3、および4に示されるヌクレオチド配列を含む、項目36に記載のマウス。
(項目41)
前記ヌクレオチド配列は、マウスβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン1に示されるヌクレオチド配列をさらに含む、項目39に記載のマウス。
(項目42)
前記ヌクレオチド配列は、マウスβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン1に示されるヌクレオチド配列をさらに含む、項目40に記載のマウス。
(項目43)
マウスのβ2ミクログロブリン遺伝子座を改変して、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現させる方法であって、該内在性マウスβ2ミクログロブリン遺伝子座において、マウスβ2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列で置き換える工程を含む、方法。
(項目44)
前記マウスは、内在性β2ミクログロブリン遺伝子座から、機能的なマウスβ2ミクログロブリンポリペプチドを発現しない、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2〜エクソン4に示されるヌクレオチド配列を含む、項目43に記載の方法。
(項目46)
前記ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2、3、および4に示されるヌクレオチド配列を含む、項目43に記載の方法。
(項目47)
前記改変された遺伝子座は、マウスβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン1のヌクレオチド配列を保持する、項目43に記載の方法。
(項目48)
前記置き換えは、単一のES細胞において行われ、該単一のES細胞は、マウス胚に導入されてマウスを作製する、項目43に記載の方法。
(項目49)
非ヒト動物であって、
そのゲノムに:
キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドをコードする第1ヌクレオチド配列であって、該キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC Iポリペプチドの細胞外ドメインを含む、第1ヌクレオチド配列;および
ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードする第2ヌクレオチド配列を含み、
該第1ヌクレオチド配列は、内在性非ヒトMHC I遺伝子座に位置し、該第2ヌクレオチド配列は、内在性非ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子座に位置しており、
該非ヒト動物は、該キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドおよび該ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現する、非ヒト動物。
(項目50)
前記動物は、げっ歯動物であり、該げっ歯動物は、そのゲノムに:
キメラヒト/げっ歯動物MHC Iポリペプチドをコードする第1ヌクレオチド配列であって、該キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC Iポリペプチドの細胞外ドメインを含む、第1ヌクレオチド配列;および
ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードする第2ヌクレオチド配列を含み、
該第1ヌクレオチド配列は、内在性げっ歯動物MHC I遺伝子座に位置し、該第2ヌクレオチド配列は、内在性げっ歯動物β2ミクログロブリン遺伝子座に位置し、
該げっ歯動物は、該キメラヒト/げっ歯動物MHC Iポリペプチドおよび該ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現する、項目49に記載の非ヒト動物。
(項目51)
前記げっ歯動物は、その内在性げっ歯動物遺伝子座から、内在性げっ歯動物MHC Iポリペプチドの細胞外ドメインおよび機能的な内在性げっ歯動物β2ミクログロブリンポリペプチドを発現しない、項目50に記載のげっ歯動物。
(項目52)
前記第1ヌクレオチド配列は、内在性げっ歯動物MHC I調節エレメントに作動可能に連結しており、前記第2ヌクレオチド配列は、内在性げっ歯動物β2ミクログロブリン調節エレメントに作動可能に連結している、項目50に記載のげっ歯動物。
(項目53)
マウスである、項目50に記載のげっ歯動物。
(項目54)
前記内在性MHC I遺伝子座は、マウスH−2K遺伝子座である、項目53に記載のマウス。
(項目55)
前記キメラポリペプチドの前記ヒト部分は、前記ヒトMHC Iポリペプチドのα1、α2、およびα3ドメインを含む、項目50に記載のげっ歯動物。
(項目56)
前記キメラヒト/げっ歯動物MHC Iポリペプチドのげっ歯動物部分は、げっ歯動物MHC Iポリペプチドの細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインを含む、項目50に記載のげっ歯動物。
(項目57)
前記ヒトMHC Iポリペプチドは、HLA−A、HLA−B、およびHLA−Cから選択される、項目50に記載のげっ歯動物。
(項目58)
前記ヒトMHC Iポリペプチドは、HLA−Aポリペプチドである、項目57に記載のげっ歯動物。
(項目59)
前記第2ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2〜エクソン4に示されるヌクレオチド配列を含む、項目50に記載のげっ歯動物。
(項目60)
前記第2ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2、3、および4に示されるヌクレオチド配列を含む、項目50に記載のげっ歯動物。
(項目61)
マウスであって、
そのゲノムに:
キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドをコードする第1ヌクレオチド配列であって、該キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトHLA−A2の細胞外ドメインを含み、マウス部分は、マウスH−2Kの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む、第1ヌクレオチド配列;ならびに
ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードする第2ヌクレオチド配列を含み、
該第1ヌクレオチド配列は、内在性H−2K遺伝子座に位置し、該第2ヌクレオチド配列は、内在性マウスβ2ミクログロブリン遺伝子座に位置し、
該マウスは、該キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドおよび該ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現する、マウス。
(項目62)
項目61に記載のマウスであって、内在性マウスH−2Kポリペプチドおよびβ2ミクログロブリンポリペプチドをそれらの内在性遺伝子座から発現しない、マウス。
(項目63)
前記第1ヌクレオチド配列は、内在性マウスH−2K調節エレメントに作動可能に連結しており、前記第2ヌクレオチド配列は、内在性マウスβ2ミクログロブリン調節エレメントに作動可能に連結している、項目61に記載のマウス。
(項目64)
前記キメラポリペプチドの前記ヒト部分は、前記ヒトMHC Iポリペプチドのα1、α2、およびα3ドメインを含む、項目61に記載のマウス。
(項目65)
前記第2ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2〜エクソン4に示されるヌクレオチド配列を含む、項目61に記載のマウス。
(項目66)
前記第2ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2、3、および4に示されるヌクレオチド配列を含む、項目61に記載のマウス。
(項目67)
前記ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドの発現は、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドの発現の非存在下での前記キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドの発現と比較して、該キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドの発現を増大する、項目61に記載のマウス。
(項目68)
遺伝子改変されたマウスを作製する方法であって、
第1マウスのMHC I遺伝子座を、キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドを発現するように改変する工程であって、該内在性マウスMHC I遺伝子座において、マウスMHC Iポリペプチドの細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列を、ヒトMHC Iポリペプチドの細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列で置き換える工程を含む工程;
第2マウスのβ2ミクログロブリン遺伝子座を、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現するように改変する工程であって、該内在性マウスβ2ミクログロブリン遺伝子座において、マウスβ2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列で置き換える工程を含む工程;ならびに
該第1マウスおよび該第2マウスを交配して、そのゲノムに、キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドをコードする第1ヌクレオチド配列、およびヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードする第2ヌクレオチド配列を含む遺伝子改変されたマウスを生み出す工程であって、該遺伝子改変されたマウスは、該キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドおよび該ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現する工程を含む、方法。
(項目69)
前記MHC I遺伝子座は、H−2K遺伝子座であり、前記ヒトMHC Iポリペプチドは、HLA−A2であり、前記マウスは、キメラHLA−A2/H−2Kポリペプチドを発現する、項目68に記載の方法。
(項目70)
前記キメラHLA−A2/H−2Kポリペプチドは、前記HLA−A2ポリペプチドの細胞外ドメインならびにH−2Kポリペプチドの細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインを含む、項目69に記載の方法。
(項目71)
前記第2ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2、3、および4に示されるヌクレオチド配列およびマウスβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン1に示されるヌクレオチド配列を含む、項目68に記載の方法。
図1は、クラスI MHC分子の4つのドメイン:α1、α2およびα3ドメインを含むα鎖および非共有結合した第4のドメインであるβ2−ミクログロブリン(β2m)の概略図である。灰色の円は、ペプチド結合溝に結合したペプチドを表す。 図2は、ヒトHLAの関連のゲノム構造の概略描写(原寸に比例しない)であり、クラスI、IIおよびIII遺伝子を示す。 図3は、マウスMHCの関連のゲノム構造の概略描写(原寸に比例しない)であり、クラスI、IIおよびIII遺伝子を示す。 図4は、キメラHLA−A/H−2KポリペプチドおよびIRES−GFPレポーターをコードするcDNAを含むウイルスベクター構築物(A);ならびに単独で(左)またはヒト化β2ミクログロブリンと共形質導入された(右)、HLA−A2によって形質導入された(破線)、HLA−A2/H−2Kによって形質導入された(点線)、または形質導入されていない(実線)MG87細胞におけるヒトHLA−A2の発現を比較するヒストグラム(B)を示す。(B)においてグラフで示される水平ゲートからのデータは、構築物を発現する細胞の百分率として(C)の表に示される。 図5は、ヒトHLA−A2タンパク質の細胞外領域を発現するキメラH−2K遺伝子座を作製するために使用される標的化戦略の概略図(原寸に比例しない)である。マウス配列は、黒で表され、ヒト配列は、白で表される。L=リーダー、UTR=非翻訳領域、TM=膜貫通ドメイン、CYT=細胞質ドメイン、HYG=ハイグロマイシン。 図6Aは、野生型(WT)マウスまたはキメラHLA−A2/H−2K遺伝子座(HLA−A/H−2K HET)を有するヘテロ接合型マウスのいずれかから単離された細胞におけるHLA−A2(左)およびH−2K(右)の発現(%全細胞)を明示する。 図6Bは、キメラHLA−A2/H−2K遺伝子座を有するヘテロ接合型マウスにおけるキメラHLA−A2/H−2Kタンパク質のin vivo発現のドットプロットである。 図7は、マウスβ2ミクログロブリン遺伝子座におけるβ2ミクログロブリン遺伝子のヒト化についての標的化戦略(原寸に比例しない)を示す。マウス配列は黒であり、ヒト配列は、白である。NEO=ネオマイシン。 図8は、野生型(WT)マウス、キメラHLA−A2/H−2Kに対してヘテロ接合型マウス、およびキメラHLA−A2/H−2Kに対してヘテロ接合型かつヒト化β2ミクログロブリンに対してヘテロ接合型マウス(二重ヘテロ接合型;クラスI/β2m HET)の血液から単離された細胞におけるHLAクラスIおよびヒトβ2ミクログロブリンの発現の代表的なドットプロットを示す。 図9は、野生型(WT)、キメラHLA−A2/H−2Kヘテロ接合型(クラスI HET)、およびキメラHLA−A2/H2K/ヒト化β2ミクログロブリン二重ヘテロ接合型(クラスI/β2m HET)マウスの血液から単離された細胞におけるヒトHLAクラスI発現(X軸)の代表的なヒストグラムを示す。 図10は、flu(左)またはEBV(右)ペプチドの存在下で野生型マウス(WT APC)由来の抗原提示細胞(APC)またはキメラHLA−A2/H−2Kおよびヒト化β2ミクログロブリンの両方に対してヘテロ接合型マウス由来の抗原提示細胞(APC)(二重HET APC)に曝露したヒトT細胞についてのIFNγ Elispotアッセイの結果を示す。統計学的分析を、Tukeyの事後多重比較検定(multiple comparison post test)による一元配置ANOVAを用いて実施した。
発明の詳細な説明
定義
本発明は、ヒトまたはヒト化MHC Iポリペプチドおよび/またはヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現する遺伝子改変された非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギなど);これらを含む胚、細胞および組織;これらを作製する方法;ならびにこれらを使用する方法を提供する。他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての用語および語句は、反対のことが明らかに示されない限り、またはこの用語もしくは語句が使用される文脈から別段明らかにされない限り、この用語および語句が当該分野で果たしている意味を含む。
用語「保存的」は、保存的アミノ酸置換を記載するために使用される場合、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する側鎖R基を有する別のアミノ酸残基によるアミノ酸残基の置換を含む。保存的アミノ酸置換は、保存的置換をコードするヌクレオチド変化を導入するようにヌクレオチド配列を改変することによって達成され得る。一般に、保存的アミノ酸置換は、対象のタンパク質の機能的特性、例えば、MHC Iが対象のペプチドを提示する能力を、実質的に変えない。類似の化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸の基の例としては、脂肪族側鎖、例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン;脂肪族−ヒドロキシル側鎖、例えばセリンおよびトレオニン;アミド含有側鎖、例えばアスパラギンおよびグルタミン;芳香族側鎖、例えばフェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン;塩基性側鎖、例えばリジン、アルギニン、およびヒスチジン;酸性側鎖、例えばアスパラギン酸およびグルタミン酸;ならびに、硫黄含有側鎖、例えばシステインおよびメチオニンが挙げられる。保存的アミノ酸置換基としては、例えば、バリン/ロイシン/イソロイシン、フェニルアラニン/チロシン、リジン/アルギニン、アラニン/バリン、グルタミン酸/アスパラギン酸、およびアスパラギン/グルタミンが挙げられる。いくつかの実施形態では、保存的アミノ酸置換は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発において使用されるように、タンパク質における任意の天然の残基のアラニンによる置換であってもよい。いくつかの実施形態では、保存的置換は、本明細書により参考として組み込まれる、Gonnetら((1992年)Exhaustive Matching of the Entire Protein Sequence Database、Science 256巻:1443〜45頁)において開示されるPAM250対数尤度行列において正の値を有するように行われる。いくつかの実施形態において、上記置換は、中程度に保存的な置換であり、ここで、該置換は、PAM250対数尤度行列において負でない値を有する。
従って、そのゲノムがヒトまたはヒト化MHC Iポリペプチドおよび/またはβ2ミクログロブリンポリペプチド(これらのポリペプチド(複数可)は、本明細書中で記載されるアミノ酸配列(複数可)の保存的アミノ酸置換を含む)をコードするヌクレオチド配列を含む遺伝子改変された非ヒト動物もまた、本発明によって包含される。
当業者は、本明細書中で記載されるヒトまたはヒト化MHC Iポリペプチドおよび/またはβ2ミクログロブリンをコードする核酸残基に加えて、遺伝コードの縮重に起因して、他の核酸が本発明のポリペプチド(複数可)をコードし得ることを理解する。従って、保存的アミノ酸置換を有するMHC Iポリペプチド(複数可)および/またはβ2ミクログロブリンポリペプチド(複数可)をコードするヌクレオチド配列をそのゲノムに含む遺伝子改変された非ヒト動物に加えて、そのゲノムが上記遺伝コードの縮重に起因して本明細書中で記載されるものとは異なるヌクレオチド配列(複数可)を含む非ヒト動物もまた、提供される。
用語「同一性」は、配列に関して使用される場合、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸の配列同一性を測定するために使用され得る当該分野で公知の多くの異なるアルゴリズムによって決定される同一性を含む。本明細書中で記載されるいくつかの実施形態では、同一性は、10.0のオープンギャップペナルティー、0.1の伸長ギャップペナルティーを用いたClustalW v.1.83(slow)アラインメントを使用し、かつGonnet類似性行列(MacVector(商標)10.0.2、MacVector Inc.、2008年)を使用して決定される。配列の同一性に関して比較される配列の長さは、特定の配列に依存する。種々の実施形態では、同一性は、成熟タンパク質の配列を、そのN−末端からそのC−末端まで比較することによって決定される。種々の実施形態では、キメラヒト/非ヒト配列をヒト配列と比較する場合、ヒト配列とキメラヒト/非ヒト配列のヒト部分との間のレベルの同一性の確認を目的とした比較を行う(例えば、キメラヒト/マウスタンパク質のヒトエクトドメイン対ヒトタンパク質のヒトエクトドメインを比較する)ことにおいて、該キメラヒト/非ヒト配列のヒト部分を使用する(しかし、非ヒト部分を使用しない)。
配列、例えば、ヌクレオチド配列またはアミノ酸に関して、用語「相同性」または「相同な」は、最適アラインメントおよび比較における2つの配列は、少なくとも約75%のヌクレオチドまたはアミノ酸、少なくとも約80%のヌクレオチドまたはアミノ酸、少なくとも約90〜95%のヌクレオチドまたはアミノ酸、例えば、97%を超えるヌクレオチドまたはアミノ酸において、同一であることを意味する。最適な遺伝子ターゲティングのために、標的化構築物(targeting construct)は、内在性DNA配列に対して相同なアーム(すなわち、「ホモロジーアーム」)を含むべきであることを、当業者は理解する;従って、相同組換えは、標的化構築物と標的にされた内在性配列との間に起こり得る。
用語「作動可能に連結している」は、記載された構成要素が、該要素の意図する様式で機能することを可能にする関係にある近位をいう。このように、タンパク質をコードする核酸配列は、正しい転写調節を有するように調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー配列など)に作動可能に連結し得る。さらに、本発明のキメラタンパク質またはヒト化タンパク質の種々の部分は、細胞内で、タンパク質の正しい折り畳み、プロセシング、標的、発現および他の機能的特性を保持するように作動可能に連結し得る。他に言及されない限り、本発明のキメラタンパク質またはヒト化タンパク質の種々のドメインは、互いに作動可能に連結している。
用語「MHC I複合体」などは、本明細書中で使用される場合、MHC Iα鎖ポリペプチドとβ2−ミクログロブリンポリペプチドとの間の複合体を含む。用語「MHC Iポリペプチド」などは、本明細書中で使用される場合、MHC Iα鎖ポリペプチドのみを含む。典型的には、用語「ヒトMHC」および「HLA」は、相互交換可能に使用され得る。
遺伝子置き換えに関して用語「置き換え」は、内在性遺伝子の遺伝子座に外来性遺伝物質を置き、それによって、オルソロガスなまたは相同な核酸配列で内在性遺伝子の全てまたは一部を置き換えることをいう。以下の実施例において実証されるように、マウスMHC Iポリペプチドおよびマウスβ2ミクログロブリンポリペプチドの部分をコードする内在性遺伝子座の核酸配列を、それぞれ、ヒトMHC Iポリペプチドおよびヒトβ2ミクログロブリンポリペプチドの部分をコードするヌクレオチド配列によって置き換えた。
「機能的」は、例えば、機能的ポリペプチドについて本明細書中で使用される場合、通常天然のタンパク質に関連する少なくとも1つの生物学的活性を有するポリペプチドをいう。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、内在性遺伝子座における置き換え(例えば、内在性非ヒトMHC Iおよび/またはβ2ミクログロブリン遺伝子座における置き換え)は、機能的内在性ポリペプチドを発現しない遺伝子座を生じる。
遺伝子改変されたMHC I非ヒト動物について本明細書中以下で記載されるいくつかの態様、例えば、動物の種類;動物系統;細胞の種類;スクリーニング、検出および他の方法;使用の方法;などは、遺伝子操作されたβ2ミクログロブリン動物およびMHC I/β2ミクログロブリン動物に対して適用可能である。
遺伝子改変されたMHC I動物
種々の実施形態では、本発明は、一般に、そのゲノムにヒトまたはヒト化MHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、遺伝子改変された非ヒト動物を提供する;従って、該動物は、ヒトまたはヒト化MHC Iポリペプチドを発現する。
MHC遺伝子は、3つのクラス:クラスI、クラスII、およびクラスIIIに分類され、これらの全ては、ヒト第6番染色体上またはマウス第17番染色体上のいずれかにコードされる。ヒトおよびマウスのMHCクラスの相対的構成の概略は、それぞれ図2および3に示される。MHC遺伝子は、マウスおよびヒトのゲノムの最も多形な遺伝子の1つである。MHC多形性は、進化的利点を提供する上で重要であると推定される;配列における変化はペプチド結合における差異をもたらし得、細胞傷害性T細胞に対し病原体をよりよく提示することを可能にする。
MHCクラスIタンパク質は、細胞外ドメイン(3つのドメイン:α、αおよびαを含む)、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部を含む。αおよびαドメインは、ペプチド結合溝を形成し、他方で、αは、β2−ミクログロブリンと相互作用する。
β2−ミクログロブリンとのその相互作用に加えて、αドメインは、TCR共受容体CD8と相互作用し、抗原特異的活性化を促進する。MHCクラスIのCD8に対する結合は、TCRのMHCクラスIに対する結合よりも約100倍弱いが、CD8結合は、TCR結合の親和性を増大する。Wooldridgeら(2010年)MHC Class I Molecules with Superenhanced CD8 Binding Properties Bypass the Requirement for Cognate TCR Recognition and Nonspecifically Activate CTLs、J. Immunol.184巻:3357〜3366頁。興味深いことに、MHCクラスIのCD8に対する結合の増大は、CTL活性化における抗原特異性を抑制した。同上。
MHCクラスI分子に対するCD8の結合は、種特異的である;CD8のマウスホモログであるLyt−2は、α3ドメインにおいてH−2D分子に結合するが、HLA−A分子には結合しないことが示された。Connollyら(1988年)The Lyt-2 Molecule Recognizes Residues in the Class I α3 Domain in Allogeneic Cytotoxic T Cell Responses、J. Exp. Med.168巻:325〜341頁。差次的結合は、おそらく、ヒトとマウスとの間で保存されていないCD8におけるCDR様抗原決定基(CDR1様およびCDR2様)に起因した。Sandersら(1991年)Mutations in CD8 that Affect Interactions with HLA Class I and Monoclonal Anti-CD8 Antibodies、J. Exp. Med.174巻:371〜379頁;Vitielloら(1991年)Analysis of the HLA-restricted Influenza-specific Cytotoxic T Lymphocyte Response in Transgenic Mice Carrying a Chimeric Human-Mouse Class I Major Histocompatibility Complex、J. Exp. Med.173巻:1007〜1015頁;ならびにGaoら(1997年)Crystal structure of the complex between human CD8αα and HLA-A2、Nature 387巻:630〜634頁。CD8は、α3ドメインの保存的領域において(223〜229位において)HLA−A2に結合することが報告されている。HLA−Aにおける単一の置換(V245A)が、CD8のHLA−Aに対する結合を減少させ、同時に、T細胞媒介型溶解を大きく減少させた。Salterら(1989年)、Polymorphism in the α3 domain of HLA-A molecules affects binding to CD8、Nature 338巻:345〜348頁。一般に、HLA−A分子のα3ドメインにおける多形性はまた、CD8に対する結合に影響を及ぼした。同上。マウスにおいて、H−2Dにおける残基227でのアミノ酸置換は、マウスLyt−2のH−2Dに対する結合に影響を及ぼし、変異体H−2Dによってトランスフェクトされた細胞は、CD8+T細胞によって溶解されなかった。Potterら(1989年)Substitution at residue 227 of H-2 class I molecules abrogates recognition by CD8-dependent, but not CD8-independent, cytotoxic T lymphocytes、Nature 337巻:73〜75頁。
従って、MHCクラスIα3ドメインとCD8との間の相互作用の種特異性に起因して、H−2K α3ドメインのヒトHLA−A2 α3ドメインによる置き換えを含むMHC I複合体は、マウスにおいて(すなわち、in vivoで)ヒトCD8の非存在下で非機能的であった。HLA−A2についてトランスジェニックである動物において、マウスα3ドメインに代えてのヒトα3ドメインによる置換は、T細胞応答の回復をもたらした。Irwinら(1989年)Species-restricted interactions between CD8 and the α3 domain of class I influence the magnitude of the xenogeneic response、J. Exp. Med.170巻:1091〜1101頁;Vitielloら(1991年)、上掲。
マウスMHCクラスIタンパク質の膜貫通ドメインおよび細胞質尾部もまた、重要な機能を有する。MHC I膜貫通ドメインの機能の1つは、おそらくはMHC分子の表面の架橋(またはライゲーション)の結果として、ホモタイプな細胞接着のHLA−A2による(接着を増強するかまたは阻害するための)モジュレーションを促進することである。Wagnerら(1994年)Ligation of MHC Class I and Class II Molecules Can Lead to Heterologous Desensitization of Signal Transduction Pathways That Regulate Homotypic Adhesion in Human Lymphocytes, J. Immunol.152巻:5275〜5287頁。細胞接着は、HLA−A2分子の多様なエピトープにおいて結合するmAbsによって影響を受け得、このことは、ホモタイプな細胞接着のモジュレーションに関係する複数の部位がHLA−A2上に存在すること;結合したエピトープに依存して、その影響は、HLA−A2依存型接着を増強し得るか、または阻害し得ることを示唆する。同上。
MHC I遺伝子のエクソン6および7によってコードされる細胞質尾部は、細胞表面上の正しい発現のため、およびNK細胞の細胞傷害性に対するLIR1媒介型阻害のために必要であると報告される。Grudaら(2007年)Intracellular Cysteine Residues in the Tail of MHC Class I Proteins Are Crucial for Extracellular Recognition by Leukocyte Ig-Like Receptor 1, J. Immunol.179巻:3655〜3661頁。細胞質尾部は、少なくともいくつかのMHC I分子の、そのシステイン残基におけるジスルフィド結合の形成を介した多量体化のために必要であり、従って、クラスター形成において、およびNK細胞による認識において役割を果たし得る。Lynchら(2009年)Novel MHC Class I Structures on Exosomes, J. Immunol.183巻:1884〜1891頁。
HLA−A2の細胞質ドメインは、構成的にリン酸化されたセリン残基およびリン酸化可能なチロシンを含有するが、Jurkat細胞においては、細胞質ドメインを欠く変異体HLA−A2分子が、発現、細胞骨格会合、凝集およびエンドサイトーシス内部移行に関して正常であるようである。Gurら(1997年)Structural Analysis of Class I MHC Molecules: The Cytoplasmic Domain Is Not Required for Cytoskeletal Association, Aggregation, and Internalization、Mol. Immunol.34巻(2号):125〜132頁。細胞質ドメインを欠く短縮型HLA−A2分子は、明らかに正常に発現し、β2ミクログロブリンと正常に会合する。同上。
しかし、いくつかの研究は、細胞内輸送、樹状細胞(DC)媒介型抗原提示およびCTLプライミングにおいて、細胞質尾部が重要であることを実証している。エクソン6によってコードされるチロシン残基は、エンドソームの区画を介したMHC I輸送、外来性抗原の提示、およびCTLプライミングに必要であることが示された;他方で、エクソン7の欠失は、抗ウイルス性CTL応答の増強を引き起こした。Lizeeら(2003年)Control of Dendritic Cross-Presentation by the Major Histocompatibility Complex Class I Cytoplasmic Domain、Nature Immunol.4巻:1065〜73頁;Bashaら(2008年)MHC Class I Endosomal and Lysosomal Trafficking Coincides with Exogenous Antigen Loading in Dendritic Cells、PLoS ONE 3巻:e3247;およびRodriguez-Cruzら(2011年)Natural Splice Variant of MHC Class I Cytoplasmic Tail Enhances Dendritic Cell-Induced CD8+ T-Cell Responses and Boosts Anti-Tumor Immunity、PLoS ONE 6巻:e22939。
種々の実施形態では、本発明は、そのゲノムにヒトまたはヒト化MHCクラスIポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、遺伝子改変された非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギなど)を提供する。非ヒト動物、例えば、キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドを発現する非ヒト動物は、そのゲノムに部分的にヒトであり部分的に非ヒトであるMHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み得る。1つの態様では、非ヒト動物は、ヒトまたはヒト化MHC Iポリペプチド、例えば、キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドのみを発現し、内在性MHC I遺伝子座から内在性非ヒトMHC Iタンパク質を発現しない。
1つの実施形態では、キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドは、そのヒト部分において、ヒトMHC Iポリペプチドのペプチド結合ドメインを含む。1つの態様では、キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC Iの細胞外ドメインを含む。この実施形態では、キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC Iのα鎖の細胞外ドメインを含む。1つの実施形態では、キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC Iのα1およびα2ドメインを含む。別の実施形態において、キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC Iのα1、α2、およびα3ドメインを含む。
ヒトまたはヒト化MHC Iポリペプチドは、HLA−A遺伝子座、HLA−B遺伝子座、HLA−C遺伝子座、HLA−E遺伝子座、HLA−F遺伝子座、またはHLA−G遺伝子座のいずれかによってコードされる機能的なヒトHLA分子に由来し得る。一般に使用されるHLA抗原のリストは、Shankarkumarら((2004年)The Human Leukocyte Antigen (HLA) System、Int. J. Hum. Genet.4巻(2号):91〜103頁)(本明細書中に参考によって組み込まれる)に記載される。Shankarkumarらはまた、当該分野で使用されるHLA命名法の簡潔な説明も提示する。HLA命名法および種々のHLA対立遺伝子に関するさらなる情報は、Holdsworthら(2009年)The HLA dictionary 2008: a summary of HLA-A, -B, -C, -DRB1/3/4/5, and DQB1 alleles and their association with serologically defined HLA-A, -B, -C, -DR, and -DQ antigens、Tissue Antigens 73巻:95〜170頁において、ならびにMarshらによる最新の更新(2010年)Nomenclature for factors of the HLA system、2010年、Tissue Antigens 75巻:291〜455頁によって見出され得る(両方とも、本明細書中で参考として組み込まれる)。従って、ヒトまたはヒト化MHC Iポリペプチドは、ここで記載される任意の機能的ヒトHLAクラスI分子に由来し得る。
1つの特定の態様では、ヒトまたはヒト化MHC Iポリペプチドは、ヒトHLA−Aに由来する。特定の実施形態では、HLA−Aポリペプチドは、HLA−A2ポリペプチド(例えば、およびHLA−A2.1ポリペプチド)である。1つの実施形態では、HLA−Aポリペプチドは、HLA−A0201対立遺伝子、例えば、HLA−A02:01:01:01対立遺伝子によってコードされるポリペプチドである。HLA−A0201対立遺伝子は、北米の集団の間で一般に使われている。本実施例は、この特定のHLA配列を記載するが、任意の好適なHLA−A配列、例えば、ヒト集団において示されるHLA−A2の多形バリアント、1つまたは複数の保存的または非保存的なアミノ酸改変を有する配列、遺伝コードの縮重に起因して本明細書中で記載される配列とは異なる核酸配列などが、本明細書中に包含される。
1つの態様では、ヒトHLA−A2配列を発現する非ヒト動物であって、該ヒトHLA−A2配列は、1つまたは複数の保存的または非保存的な改変を含む非ヒト動物が提供される。
1つの態様では、ヒトHLA−A2配列を発現する非ヒト動物であって、該ヒトHLA−A2配列は、ヒトHLA−A2配列に対して少なくとも約85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である非ヒト動物が提供される。特定の実施形態では、上記ヒトHLA−A2配列は、実施例において記載されるヒトHLA−A2配列に対し、少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。1つの実施形態では、ヒトHLA−A2配列は、1つまたは複数の保存的置換を含む。1つの実施形態では、上記ヒトHLA−A2配列は、1つまたは複数の非保存的置換を含む。
別の特定の態様では、ヒトまたはヒト化MHC Iポリペプチドは、HLA−BおよびHLA−Cから選択されるヒトMHC Iに由来する。1つの態様では、ヒトまたはヒト化MHC Iは、HLA−B、例えば、HLA−B27に由来する。
1つの態様では、キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドの非ヒト部分は、非ヒトMHC Iポリペプチドの膜貫通ドメインおよび/または細胞質ドメインを含む。1つの実施形態では、非ヒト動物はマウスであり、非ヒトMHC Iポリペプチドは、H−2K、H−2D、およびH−2Lから選択される。1つの実施形態では、非ヒトMHC Iポリペプチドは、H−2K、例えば、H−2Kbである。特定のH−2K配列は実施例において記載されるが、任意の好適なH−2K配列、例えば、多形バリアント、保存的/非保存的アミノ酸置換などが、本明細書中に包含される。
本明細書中で記載される非ヒト動物は、そのゲノムに、ヒトまたはヒト化MHC Iポリペプチド、例えば、キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み得、ここで、このようなポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、内在性非ヒトMHC I遺伝子座(例えば、H−2K遺伝子座)に位置する。1つの態様では、これは、内在性MHC I遺伝子またはその部分の、ヒトまたはヒト化MHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、例えば、本明細書中で記載されるキメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドをコードするキメラ遺伝子による置き換えをもたらす。1つの実施形態では、上記置き換えは、非ヒトMHC Iペプチド結合ドメインまたは非ヒトMHC I細胞外ドメインをコードする内在性ヌクレオチド配列の、非ヒトMHC Iペプチド結合ドメインまたは非ヒトMHC I細胞外ドメインをコードするヒトヌクレオチド配列(例えば、HLA−A2ヌクレオチド配列)による置き換えを含む。この実施形態では、上記置き換えは、非ヒトMHC Iポリペプチド(例えば、H−2Kポリペプチド)の膜貫通ドメインおよび/または細胞質ドメインをコードするMHC I配列の置き換えを含まない。従って、非ヒト動物は、内在性非ヒトMHC I遺伝子座においてキメラヒト/非ヒトヌクレオチド配列を含有し、内在性非ヒトMHC I遺伝子座から、キメラヒト/非ヒトMHCポリペプチドを発現する。
キメラヒト/非ヒトポリペプチドは、ヒトまたは非ヒトリーダー(シグナル)配列を含むようなものであってもよい。1つの実施形態では、キメラポリペプチドは、内在性MHC Iタンパク質の非ヒトリーダー配列を含む。別の実施形態では、キメラポリペプチドは、ヒトMHC Iタンパク質、例えば、HLA−A2タンパク質のリーダー配列(例えば、HLA−A2.1リーダー配列)を含む。従って、キメラMHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、ヒトMHC Iリーダー配列をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結し得る。
キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドは、そのヒト部分において、完全なまたは実質的に完全な、ヒトMHC Iポリペプチドの細胞外ドメインを含み得る。従って、上記ヒト部分は、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、例えば、95%以上の、ヒトMHC Iポリペプチドの細胞外ドメインをコードするアミノ酸(例えば、HLA−A2ポリペプチド)を含み得る。1つの例では、ヒトMHC Iポリペプチドの実質的に完全な細胞外ドメインは、ヒトMHC Iリーダー配列を欠く。別の例では、キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドは、ヒトMHC Iリーダー配列を含む。
さらに、キメラMHC Iポリペプチドは、内在性非ヒト調節エレメントの制御下で発現され得る(例えば、げっ歯動物のMHC I調節動物)。このような配置は、非ヒト動物において、例えば、非ヒト動物における免疫応答の間に、キメラMHC Iポリペプチドの正しい発現を促進する。
遺伝子改変される非ヒト動物は、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ウシ(例えば、雌ウシ、雄ウシ、バッファロー)、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、フェレット、霊長類(例えば、マーモセット、アカゲザル)からなる群より選択され得る。非ヒト動物について、好適な遺伝子改変可能なES細胞が容易に入手できない場合、他の方法が、遺伝子改変を含む非ヒト動物を作製するために使用される。このような方法は、例えば、非ES細胞ゲノム(例えば、線維芽細胞または人工多能性細胞)を改変する工程、および核移入を使用して好適な細胞、例えば、卵母細胞へ改変したゲノムを移植する工程、および胚を形成するために好適な条件下で、非ヒト動物において該改変細胞(例えば、改変卵母細胞)を懐胎させる工程を含む。
1つの態様では、非ヒト動物は、哺乳動物である。1つの態様では、非ヒト動物は、小型の哺乳動物、例えば、トビネズミ上科(Dipodoidea)またはネズミ上科(Muroidea)の小哺乳動物である。1つの実施形態では、遺伝子改変された動物は、げっ歯動物である。1つの実施形態では、げっ歯動物は、マウス、ラット、およびハムスターから選択される。1つの実施形態では、げっ歯動物は、上科ネズミ上科(superfamily Muroidae)から選択される。1つの実施形態では、遺伝子改変された動物は、カンガルーハムスター科(Calomyscidae)(例えば、マウス様ハムスター)、キヌゲネズミ科(Cricetidae)(例えば、ハムスター、新世界ラットおよび新世界マウス、ハタネズミ)、ネズミ科(Muridae)(真のマウスおよびラット(true mice and rats)、アレチネズミ、トゲマウス、タテガミネズミ(crested rats))、アシナガマウス科(Nesomyidae)(キノボリマウス(climbing mice)、イワマウス(rock mice)、尾のあるラット(with-tailed rats)、マダガスカルラットおよびマウス(Malagasy rats and mice))、トゲヤマネ科(Platacanthomyidae)(例えば、トゲヤマネ(spiny dormice))、ならびにメクラネズミ科(Spalacidae)(例えば、デバネズミ(mole ratses)、タケネズミ(bamboo rats)、およびモグラネズミ(zokors))から選択される科に由来する。特定の実施形態では、上記遺伝子改変されたげっ歯動物は、真のマウスまたはラット(ネズミ科)、アレチネズミ、トゲマウス、およびタテガミネズミから選択される。1つの実施形態では、遺伝子改変されたマウスは、ネズミ科のメンバー由来である。1つの実施形態では、上記動物は、げっ歯動物である。特定の実施形態では、上記げっ歯動物は、マウスおよびラットから選択される。1つの実施形態では、上記非ヒト動物は、マウスである。
特定の実施形態では、非ヒト動物は、C57BL/A、C57BL/An、C57BL/GrFa、C57BL/KaLwN、C57BL/6、C57BL/6J、C57BL/6ByJ、C57BL/6NJ、C57BL/10、C57BL/10ScSn、C57BL/10Cr、およびC57BL/Olaから選択されるC57BL系統のマウスである、げっ歯動物である。別の実施形態では、マウスは、129P1、129P2、129P3、129X1、129S1(例えば、129S1/SV、129S1/SvIm)、129S2、129S4、129S5、129S9/SvEvH、129S6(129/SvEvTac)、129S7、129S8、129T1、129T2である系統からなる群より選択される129系統である(例えば、Festingら(1999年)Revised nomenclature for strain 129 mice、Mammalian Genome 10巻:836頁を参照されたい、また、Auerbachら(2000年)Establishment and Chimera Analysis of 129/SvEv- and C57BL/6-Derived Mouse Embryonic Stem Cell Linesも参照されたい)。特定の実施形態では、遺伝子改変されたマウスは、上記の129系統と上記のC57BL/6系統との混血である。別の特定の実施形態では、マウスは、上記の129系統の混血であるか、または上記のBL/6系統の混血である。特定の実施形態では、混血の129系統は、129S6(129/SvEvTac)系統である。別の実施形態では、マウスは、BALB系統、例えば、BALB/c系統である。なお別の実施形態では、マウスは、BALB系統と別の上記の系統との混血である。
1つの実施形態では、非ヒト動物は、ラットである。1つの実施形態では、ラットは、Wistarラット、LEA系統、Sprague Dawley系統、Fischer系統、F344、F6、およびDark Agoutiから選択される。1つの実施形態では、ラット系統は、Wistar、LEA、Sprague Dawley、Fischer、F344、F6、およびDark Agoutiからなる群より選択される2以上の系統の混血である。
従って、1つの実施形態では、本発明は、そのゲノムにキメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む遺伝子改変されたマウスであって、該キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC I(例えば、ヒトHLA−A、例えば、ヒトHLA−A2、例えば、ヒトHLA−A2.1)のペプチド結合ドメインまたは細胞外ドメインを含むマウスに関する。いくつかの実施形態では、マウスは、その内在性マウス遺伝子座から、内在性マウスポリペプチドのペプチド結合ドメインまたは細胞外ドメインを発現しない。ヒトMHC Iのペプチド結合ドメインは、α1ドメインおよびα2ドメインを含み得る。あるいは、ヒトMHC Iのペプチド結合ドメインは、α1、α2、およびα3ドメインを含み得る。1つの態様では、ヒトMHC Iの細胞外ドメインは、ヒトMHC Iα鎖の細胞外ドメインを含む。1つの実施形態では、内在性マウス遺伝子座は、H−2K(例えば、H−2Kb)遺伝子座であり、キメラポリペプチドのマウス部分は、マウスH−2K(例えば、H−2Kb)ポリペプチドの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む。
従って、1つの実施形態では、、内在性H−2K(例えば、H−2Kb)遺伝子座にキメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む遺伝子改変されたマウスであって、該キメラポリペプチドのヒト部分はヒトHLA−A2(例えば、HLA−A2.1)の細胞外ドメインポリペプチドを含み、マウス部分はマウスH−2K(例えば、H−2Kb)ポリペプチドの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む、マウスが提供される。1つの態様では、マウスは、内在性MHC I遺伝子座から、マウスH−2K(例えば、H−2Kb)ポリペプチドの細胞外ドメインを発現しない。1つの実施形態では、マウスは、内在性H−2K(例えば、H−2Kb)遺伝子座からキメラHLA−A2/H−2K(例えば、キメラHLA−A2.1/H−2Kb)ポリペプチドを発現する。種々の実施形態では、キメラ遺伝子の発現は、内在性マウスMHCクラスI調節エレメントの制御下にある。いくつかの態様では、マウスは、キメラHLA−A2/H−2Kポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む2コピーのキメラMHC I遺伝子座を含み;他方、他の態様では、マウスは、キメラHLA−A2/H−2Kポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含有する1コピーのキメラMHC I遺伝子座を含む。従って、マウスは、キメラHLA−A2/H−2Kポリペプチドをコードするヌクレオチド配列について、ホモ接合型であってもヘテロ接合型であってもよい。
本明細書中で記載されるいくつかの実施形態では、内在性マウスH−2K遺伝子座に位置するキメラMHC I遺伝子座を含むマウスが提供される。上記キメラ遺伝子座は、ヒトHLA−A2タンパク質の細胞外ドメイン、例えば、ヒトHLA−A2遺伝子のα1、α2、およびα3ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む。上記キメラ遺伝子座は、マウスH−2Kタンパク質の細胞外ドメイン(例えば、マウスH−2Kのα1、α2、およびα3ドメイン)をコードするヌクレオチド配列を欠く。1つの態様では、上記キメラ遺伝子座は、マウスH−2Kのリーダーペプチド、α1、α2、およびα3ドメインをコードするヌクレオチド配列を欠き;ヒトHLA−A2のリーダーペプチド、α1、α2、およびα3ドメインならびにマウスH−2Kの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む。上記キメラ遺伝子座の種々のドメインは、キメラ遺伝子座が機能的なキメラヒト/マウスMHC Iタンパク質を発現するように、互いに作動可能に連結している。
種々の実施形態では、本明細書中で記載されるようにキメラMHC I遺伝子座から機能的なキメラMHC Iタンパク質を発現する非ヒト動物、例えば、げっ歯動物(例えば、マウスまたはラット)は、細胞表面にキメラタンパク質を表す。1つの実施形態では、非ヒト動物は、ヒトにおいて観察されるのと同様に、細胞分布において、細胞表面にキメラMHC Iタンパク質を発現した。1つの態様では、上記細胞は、キメラMHC Iタンパク質の細胞外部分(例えば、ヒトHLA−A2細胞外部分)に結合したペプチド断片(抗原断片)を表面に表す。1つの実施形態では、このようなキメラタンパク質の細胞外部分は、前記細胞の表面上の他のタンパク質、例えば、β2−ミクログロブリンと相互作用する。
種々の実施形態では、キメラMHC Iタンパク質、例えば、HLA−A2/H−2Kタンパク質を表面に表す細胞は、有核細胞である。種々の態様では、上記細胞は、抗原提示細胞(APC)である。体内のほとんどの細胞は、MHC Iに関して抗原を提示し得るが、抗原提示細胞のいくつかの非限定の例としては、マクロファージ、樹状細胞、およびB細胞が挙げられる。他の抗原提示細胞としては、プロフェッショナルAPCおよび非プロフェッショナルAPCが挙げられ、当該分野で公知であり、本明細書中に包含される。いくつかの実施形態では、キメラMHC Iタンパク質を表面に表す細胞は、腫瘍細胞であり、該キメラタンパク質によって提示されるペプチド断片は、腫瘍に由来する。他の実施形態では、キメラMHC Iタンパク質によって提示されるペプチド断片は、病原体、例えば、細菌またはウイルスに由来する。
本明細書中で記載されるキメラMHC Iタンパク質は、同じ細胞または第2の細胞の表面上の他のタンパク質と相互作用し得る。いくつかの実施形態では、キメラMHC Iタンパク質は、上記細胞の表面上の内在性非ヒトタンパク質と相互作用する。キメラMHC Iタンパク質もまた、同じ細胞または第2の細胞の表面上のヒトまたはヒト化タンパク質と相互作用し得る。
同じ細胞上で、HLAクラスI分子は、非ヒト(例えば、げっ歯動物、例えば、マウスまたはラット)およびヒトβ2−ミクログロブリンの両方と機能的に相互作用し得る。従って、1つの実施形態では、キメラMHC Iタンパク質、例えば、HLA−A2/H−2Kタンパク質は、マウスβ2−ミクログロブリンと相互作用する。いくつかのヒトHLAクラスI分子とマウスβ2−ミクログロブリンとの間の相互作用は起こり得るが、ヒトHLAクラスIとヒトβ2−ミクログロブリンとの間の相互作用と比較して、大いに低下する可能性がある。従って、ヒトβ2−ミクログロブリンの非存在下で、細胞表面上のヒトMHC Iの発現は低下し得る。Perarnauら(1988年)Human β2-microglobulin Specifically Enhances Cell-Surface Expression of HLA Class I Molecules in Transfected Murine Cells、J. Immunol.141巻:1383〜89頁。他のHLA分子、例えば、HLA−B27は、マウスβ2−ミクログロブリンと相互作用しない;例えば、Tishonら(2000年)Transgenic Mice Expressing Human HLA and CD8 Molecules Generate HLA-Restricted Measles Virus Cytotoxic T Lymphocytes of the Same Specificity as Humans with Natural Measles Virus Infection, Virology 275巻:286〜293頁を参照されたい、これは、トランスジェニックマウスにおけるHLA−B27機能は、ヒトβ2−ミクログロブリンとヒトCD8との両方を必要とすることを報告する。従って、別の実施形態では、キメラMHC Iタンパク質は、ヒトまたはヒト化β2−ミクログロブリンと相互作用する。本明細書中で以下に記載されるいくつかのこのような実施形態では、非ヒト動物、例えば、げっ歯動物(例えば、マウスまたはラット)は、そのゲノムにヒトまたはヒト化β2−ミクログロブリン遺伝子を含み、該動物は、機能的なヒトまたはヒト化β2−ミクログロブリンポリペプチドを発現し;従って、キメラMHC Iタンパク質は、ヒトまたはヒト化β2−ミクログロブリンポリペプチドと相互作用する。
種々の態様では、キメラタンパク質(例えば、HLA−A2/H−2Kタンパク質)はまた、第2の細胞の表面におけるタンパク質とも、(その細胞外部分を介して)相互作用する。上記第2の細胞は、非ヒトの細胞、例えば、マウスの細胞であってもよく、またはヒト起源の細胞であってもよい。上記第2の細胞は、キメラMHC Iポリペプチドを発現する細胞と同じ非ヒト動物に由来しても、または同じ非ヒト動物種に由来してもよい。キメラタンパク質(例えば、HLA−A2/H−2K)の細胞外部分が相互作用し得るタンパク質の非限定の例としては、T細胞受容体(TCR)およびその共受容体CD8が挙げられる。従って、第2の細胞は、T細胞であってもよい。さらに、キメラMHC Iタンパク質の細胞外部分は、ナチュラルキラー(NK)細胞の表面上のタンパク質、例えば、NK細胞の表面上のキラー免疫グロブリン受容体(KIR)に結合し得る。
T細胞またはNK細胞は、キメラMHC Iポリペプチドと表面に表れたそのペプチド断片との間で形成された複合体に結合し得る。このような結合は、T細胞活性化またはNK媒介型細胞死滅化の阻害をそれぞれもたらし得る。1つの仮説は、NK細胞は、そのMHC I複合体を下方制御することによってT細胞媒介型細胞傷害性を回避した感染細胞または腫瘍細胞のいずれかを死滅させるように進化しているというものである。しかし、MHC I複合体が細胞表面に発現される場合、NK細胞受容体はこれを認識し、NK媒介型細胞死滅化が阻害される。従って、いくつかの態様では、NK細胞がキメラMHC Iポリペプチド(例えば、HLA−A2/H−2Kポリペプチド)と感染細胞または腫瘍細胞の表面上に表れたペプチド断片との間に形成された複合体に結合する場合、NK媒介型細胞死滅化は、阻害される。
1例では、本明細書中で記載されるキメラMHC Iポリペプチド、例えば、キメラHLA−A2/H−2Kポリペプチドは、第2の細胞の表面上のCD8タンパク質と相互作用する。1つの実施形態では、キメラHLA−A2/H−2Kポリペプチドは、第2の細胞の表面上の内在性げっ歯動物(例えば、マウスまたはラット)CD8タンパク質と相互作用する。1つの実施形態では、第2の細胞はT細胞である。別の実施形態では、第2の細胞は、CD8を発現するように工学的に作製される。ある特定の態様では、キメラHLA−A2/H−2Kポリペプチドは、第2の細胞(例えば、ヒト細胞またはげっ歯動物細胞)の表面上のヒトCD8と相互作用する。いくつかのこのような実施形態では、非ヒト動物、例えば、マウスまたはラットは、ヒトCD8トランスジーンを含み、該マウスまたはラットは、機能的ヒトCD8タンパク質を発現する。
本明細書中で記載されるキメラMHC Iポリペプチドはまた、第2の細胞上の非ヒト(例えば、マウスまたはラット)TCR、ヒトTCR、またはヒト化TCRと相互作用し得る。キメラMHC Iポリペプチドは、第2の細胞の表面上の内在性TCR(例えば、マウスまたはラットのTCR)と相互作用し得る。キメラMHC Iポリペプチドはまた、第2の細胞の表面に発現されるヒトまたはヒト化TCRとも相互作用し得、ここで、該細胞は、キメラMHC Iポリペプチドを発現する細胞と同じ動物または動物種(例えば、マウスまたはラット)に由来する。上記キメラMHC Iポリペプチドは、ヒト細胞の表面に発現されるヒトTCRと相互作用し得る。
遺伝子操作された非ヒト動物に加え、非ヒト胚(例えば、げっ歯動物胚、例えば、マウスまたはラットの胚)であって、本明細書中で記載されるように非ヒト動物(例えば、げっ歯動物、例えば、マウスまたはラット)由来のドナーES細胞を含む胚もまた提供される。1つの態様では、胚は、キメラMHC I遺伝子を含むESドナー細胞、および宿主胚細胞を含む。
また、組織であって、本明細書中で記載されるように非ヒト動物(例えば、マウスまたはラット)に由来し、キメラMHC Iポリペプチド(例えば、HLA−A2/H−2Kポリペプチド)を発現する組織もまた提供される。
さらに、本明細書中で記載されるように非ヒト動物から単離された非ヒト細胞が提供される。1つの実施形態では、上記細胞はES細胞である。1つの実施形態では、上記細胞は、抗原提示細胞、例えば、樹状細胞、マクロファージ、B細胞である。1つの実施形態では、上記細胞は免疫細胞である。1つの実施形態では、免疫細胞はリンパ球である。
また、本明細書中で記載されるように非ヒト動物の染色体またはその断片を含む非ヒト細胞も提供される。1つの実施形態では、非ヒト細胞は、本明細書中で記載されるように非ヒト動物の核を含む。1つの実施形態では、非ヒト細胞は、核移入の結果として、染色体またはその断片を含む。
1つの態様では、本明細書中で記載されるようにキメラMHC Iポリペプチド(例えば、HLA−A2/H−2Kポリペプチド)をコードする遺伝子を含む非ヒト人工多能性細胞が提供される。1つの実施形態では、人工多能性細胞は、本明細書中で記載されるように非ヒト動物に由来する。
1つの態様では、本明細書中で記載されるように非ヒト動物の細胞に由来するハイブリドーマまたはクアドローマが提供される。1つの実施形態では、非ヒト動物は、マウスまたはラットである。
本明細書中で記載される遺伝子操作された非ヒト動物(例えば、遺伝子操作されたげっ歯動物、例えば、マウスまたはラット)を作製するための方法もまた提供される。遺伝子操作された非ヒト動物を作製するための方法は、そのゲノムがキメラMHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む動物を生じる。1つの実施形態では、上記方法は、そのゲノムが、内在性MHC I遺伝子座、例えば、H−2K遺伝子座において、キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、遺伝子操作されたマウスを生じ、ここで、該キメラMHC Iポリペプチドのヒト部分は、ヒトHLA−A2の細胞外ドメインを含み、マウス部分は、マウスH−2Kの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む。いくつかの実施形態では、上記方法は、実施例において記載される通り、VELOCIGENE(登録商標)技術を用いて作製された構築物の標的化を利用して該構築物をES細胞へと導入する工程、および、VELOCIMOUSE(登録商標)技術を用いて標的化したES細胞クローンをマウス胚へと導入する工程を含む。1つの実施形態では、ES細胞は、129マウス系統とC57BL/6マウス系統との混血である;別の実施形態では、ES細胞は、BALB/cマウス系統と129マウス系統との混血である。
従って、本明細書中で記載される遺伝子操作された非ヒト動物を作製するために使用されるヌクレオチド構築物も提供される。1つの態様では、上記ヌクレオチド構築物は以下を含む:5’および3’の非ヒトホモロジーアーム、ヒトHLA−A遺伝子配列を含むヒトDNA断片、および組換え部位が隣接する(flanked)選択カセット。1つの実施形態では、ヒトDNA断片は、ヒトHLA−A遺伝子のイントロンおよびエクソンの両方を含むゲノム断片である。1つの実施形態では、非ヒトホモロジーアームは、非ヒトMHCクラスI遺伝子座(例えば、マウスH−2K遺伝子座)に対して相同である。
1つの実施形態では、ゲノム断片は、ヒトHLA−Aリーダー、α1ドメイン、α2ドメインおよびα3ドメインをコードする配列を含む。1つの実施形態では、ヒトDNA断片は、5’から3’へ:HLA−Aリーダー配列、HLA−Aリーダー/α1イントロン、HLA−A α1エクソン、HLA−A α1−α2イントロン、HLA−A α2エクソン、HLA−A α2−α3イントロン、およびHLA−A α3エクソンを含む。
選択カセットは、対象の構築物を組み込んだ細胞(例えば、ES細胞)の選択を容易にするため、標的化構築物へと挿入されたヌクレオチド配列である。いくつかの好適な選択カセットが、当該分野で公知である。通常、選択カセットは、特定の抗生物質(例えば、Neo、Hyg、Pur、CM、Spec、など)の存在下でのポジティブ選択を可能にする。さらに、選択カセットは、組換え部位が隣接していてもよく、それにより、リコンビナーゼ酵素による処理の際に選択カセットの切除を可能にする。一般に使用される組換え部位は、Cre酵素およびFlp酵素によってそれぞれ認識されるloxPおよびFrtであるが、他のものは当該分野で公知である。
1つの実施形態では、選択カセットは、ヒトDNA断片の5’末端に位置する。別の実施形態では、選択カセットは、ヒトDNA断片の3’末端に位置する。別の実施形態では、選択カセットは、ヒトDNA断片内に位置する。別の実施形態では、選択カセットは、ヒトDNA断片のイントロン内に位置する。別の実施形態では、選択カセットは、α2−α3イントロン内に位置する。
1つの実施形態では、5’および3’非ヒトホモロジーアームは、それぞれ、内在性非ヒト(例えば、マウス)MHCクラスI遺伝子遺伝子座の5’および3’位置にゲノム配列を含む(例えば、非ヒトMHC I遺伝子の5’の第1リーダー配列および3’のα3エクソン)。1つの実施形態では、内在性MHCクラスI遺伝子座は、マウスH−2K、H−2DおよびH−2Lから選択される。特定の実施形態では、内在性MHCクラスI遺伝子座は、マウスH−2Kである。
1つの態様では、5’から3’へ以下を含むヌクレオチド構築物が提供される:内在性マウスH−2K遺伝子座の5’のマウスゲノム配列を含有する5’ホモロジーアーム、HLA−A遺伝子の第1ゲノム配列を含む第1のヒトDNA断片、5’組換え配列部位(例えば、loxP)、選択カセット、3’組換え配列部位(例えば、loxP)、HLA−A遺伝子の第2ゲノム配列を含む第2ヒトDNA断片、および内在性H−2K α3エクソンの3’のマウスゲノム配列を含有する3’ホモロジーアーム。1つの実施形態では、上記ヌクレオチド構築物は、5’から3’へ、以下を含む:内在性マウスH−2K遺伝子座の5’のマウスゲノム配列を含有する5’ホモロジーアーム、HLA−Aリーダー、HLA−Aリーダー/α1イントロン配列、HLA−A α1エクソン、HLA−A α1−α2イントロン、HLA−Aα2エクソン、α2−α3イントロンの第1の5’部分、組換え部位が隣接する選択カセット、α2−α3イントロンの第2の3’部分、HLA−A α3エクソンを含むヒトゲノム配列、および内在性マウスH−2K α3エクソンの3’の非マウスゲノム配列を含有する3’ホモロジーアーム。1つの実施形態では、5’ホモロジーアーム配列は、配列番号1に示され、3’ホモロジーアーム配列は、配列番号2に示される。
遺伝子ターゲティングの完了の際、ES細胞または遺伝子改変された非ヒト動物をスクリーニングして、対象の外来性ヌクレオチド配列の成功裏の組み込みまたは外来性ポリペプチドの発現を確認する。多くの技術が当業者に公知であり、それらとしては、サザンブロッティング、長PCR、定量的PCT(例えば、TAQMAN(登録商標)を用いたリアルタイムPCR)、蛍光in situハイブリダイゼーション、ノーザンブロッティング、フローサイトメトリー、ウェスタン分析、免疫細胞化学、免疫組織化学などが挙げられる(しかし、これらに限定されない)。1つの例では、対象の遺伝子改変を有する非ヒト動物(例えば、マウス)が、マウス対立遺伝子の欠失および/またはヒト対立遺伝子の獲得についての、対立遺伝子アッセイ(Valenzuelaら(2003年)High-throughput engineering of the mouse genome coupled with high-resolution expression analysis, Nature Biotech.21巻(6号):652〜659頁に記載される)の変形を用いるスクリーニングによって、同定され得る。遺伝子改変された動物において特定のヌクレオチドまたはアミノ酸配列を同定する他のアッセイは、当業者に公知である。
本開示はまた、非ヒト動物のMHC I遺伝子座を改変して、本明細書中で記載されるキメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドを発現させる方法をも提供する。1つの実施形態では、本発明は、マウスのMHC I遺伝子座を改変して、キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドを発現させる方法であって、内在性MHC I遺伝子座において、マウスMHCポリペプチドのペプチド結合ドメインをコードするヌクレオチド配列を、ヒトMHC Iポリペプチドのペプチド結合ドメインをコードするヌクレオチド配列で置き換える工程を含む方法を提供する。いくつかの態様では、マウスMHC Iの細胞外ドメインのヌクレオチド配列は、ヒトMHC Iの細胞外ドメインのヌクレオチド配列で置き換えられる。上記マウスは、内在性MHC I遺伝子座からマウスMHC Iのペプチド結合ドメインまたは細胞外ドメインを発現できない場合がある。いくつかの実施形態では、マウスH−2Kの細胞外ドメインのヌクレオチド配列がヒトHLA−A2の細胞外ドメインのヌクレオチド配列で置き換えられ、その結果、改変マウスMHC I遺伝子座がキメラHLA−A2/H−2Kポリペプチドを発現する。
1つの態様では、キメラヒトHLAクラスI/非ヒトMHCクラスI分子を作製する方法であって、単一の細胞において、ヌクレオチド構築物からキメラHLA−A/H−2Kタンパク質を発現させる工程を含み、該ヌクレオチド構築物は、HLA−Aタンパク質のα1、α2、およびα3ドメイン、ならびに非ヒトH−2Kタンパク質、例えば、マウスH−2Kタンパク質の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインをコードするcDNA配列を含む方法が提供される。1つの実施形態では、上記ヌクレオチド構築物はウイルスベクターであり;特定の実施形態では、該ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。1つの実施形態では、細胞は、CHO、COS、293、HeLa、およびウイルス核酸配列を発現する網膜細胞(例えば、PERC.6(商標)細胞)から選択される。
1つの態様では、キメラヒトHLAクラスI/非ヒトMHC Iタンパク質(例えば、HLA−A/H−2Kタンパク質)を発現する細胞が提供される。1つの実施形態では、細胞は、キメラMHCクラスI遺伝子を含む発現ベクターを含み、ここで、該キメラMHCクラスI遺伝子は、非ヒトH−2K遺伝子、例えば、マウスH−2K遺伝子の配列と作動可能な連結で融合した、ヒトHLA−A遺伝子の配列を含む。1つの実施形態では、ヒトHLA−A遺伝子の配列は、HLA−Aタンパク質のα1、α2およびα3ドメインをコードするエクソンを含む。1つの実施形態では、非ヒトH−2K遺伝子の配列は、H−2Kタンパク質の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインをコードするエクソンを含む。1つの実施形態では、細胞は、CHO、COS、293、HeLa、およびウイルス核酸配列を発現する網膜細胞(例えば、PERC.6(商標)細胞)から選択される。
本明細書中で記載されるように非ヒト動物によって作製されたキメラMHCクラスI分子もまた提供され、ここで、該キメラMHCクラスI分子は、ヒトHLA−Aタンパク質からのα1、α2、およびα3ドメイン、ならびに非ヒト、例えば、マウス、H−2Kタンパク質からの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む。本明細書中で記載されるキメラMHC Iポリペプチドは、抗HLA−A抗体によって検出され得る。従って、キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドを表面に表す細胞は、抗HLA−A抗体を用いて検出され得るかおよび/または選択され得る。いくつかの場合では、本明細書中で記載されるキメラMHC Iポリペプチドは、抗HLA−A2抗体によって検出され得る。
以下の実施例は、そのゲノムが、内在性マウスH−2K遺伝子座において、マウスH−2Kポリペプチドの細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列の、ヒトHLA−Aの細胞外ドメインをコードする配列による置き換えを含む、遺伝子操作された動物を記載するが、類似の戦略を使用して、他のマウスMHC I遺伝子座(H−2D、H−2Lなど)を、その対応するヒトHLA遺伝子座(HLA−B、HLA−Cなど)で置き換え得ることを、当業者は理解する。従って、そのゲノムにキメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、該ポリペプチドのヒト部分が、別のHLAクラスIタンパク質に由来する非ヒト動物もまた提供される。複数のMHC I遺伝子座の置き換えも企図される。
遺伝子改変されたβ2ミクログロブリン動物
本発明は、一般に、遺伝子改変された非ヒト動物であって、そのゲノムにヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み;従って、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現する、非ヒト動物を提供する。
β2ミクログロブリンすなわちMHCクラスI複合体の軽鎖(「β2M」とも略される)は、低分子の(12kDa)非グリコシル化タンパク質であり、主に、MHC Iα鎖を安定化するために機能する。ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子は、リーダー配列をコードする20のN末端アミノ酸を有する、119アミノ酸のタンパク質をコードする。成熟タンパク質は99アミノ酸を含む。上記遺伝子は、4つのエクソンを含有し、第1のエクソンは、5’非翻訳領域、完全なリーダー配列および成熟ポリペプチドの最初の2つのアミノ酸を含有し;第2のエクソンは、成熟タンパク質の大半をコードし;第3のエクソンは、成熟タンパク質の最後の4つのアミノ酸および停止コドンをコードし;第4のエクソンは、3’非翻訳領域を含有する。Gussowら(1987年)The β2-Microglobulin Gene. Primary Structure and Definition of the Transcriptional Unit、J. Immunol.139巻:3131〜38頁。β2ミクログロブリンは、MHC Iと非共有結合する。未結合のβ2ミクログロブリンは、体液、例えば血漿中に見出され、排泄のために腎臓に運ばれる。腎不全は、β2ミクログロブリンの蓄積を引き起こし、これは病原性であり得る(例えば、透析関連アミロイド症);蓄積したタンパク質は、関節および結合組織において、アミロイド斑に似た糸状の細線維を形成する。
透析関連アミロイド症に加えて、β2ミクログロブリンは、多くの他の障害に関与している。β2ミクログロブリンの上昇したレベルを、リンパ性悪性腫瘍、例えば、非ホジキンリンパ腫および多発性骨髄腫において検出した。例えば、Shiら(2009年)β2 Microglobulin: Emerging as a Promising Cancer Therapeutic Target, Drug Discovery Today 14巻:25〜30頁を参照されたい。β2ミクログロブリンのレベルの上昇を伴ういくつかの他の悪性腫瘍としては、乳がん、前立腺がん、肺がん、腎がん、消化器がんおよび鼻咽頭がんが挙げられる。β2ミクログロブリンの過剰発現は、腫瘍増殖促進作用を有することが示唆されている。同上。β2ミクログロブリンは、上皮を間葉に移行させ、乳がん、前立腺がん、肺がんおよび腎がんにおいて骨および軟組織へのがんの転移を促進することが、近年示されている。Jossonら(2011年)β2 microglobulin Induces Epitelial to Mesenchymal Transition and Confers Cancer Lethality and Bone Metastasis in Human Cancer Cells. Cancer Res.71巻(7号):1〜11頁。β2ミクログロブリンは、非古典的MHC Iメンバーであるヘモクロマトーシス(HFE)タンパク質と相互作用し、トランスフェリン受容体と相互作用し、鉄ホメオスタシスを調整する。同上。悪性腫瘍の他の特徴(自己再生、新脈管形成の強化、処置に対する抵抗性)におけるβ2ミクログロブリンの関与は、当該分野で広範に記載される。
β2ミクログロブリン欠損のマウスが報告されている。Kollerら(1990年)Normal development of mice deficient in β2m, MHC class I proteins, and CD8+ T cells, Science 248巻: 1227〜1230頁を参照されたい。Kollerらにおいて報告されるように、これらのマウスは、健康であるように見えるが、MHC クラスI 発現は検出されなかった。さらに、いくつかの組織では、T細胞集団がほとんど正常であるように見えたが、他においては、CD8+T細胞の顕著な低下が観察された。これは、MHC I発現の欠損は、Allenら((1986年)β2 microglobulin Is Not Required for Cell Surface Expression of the Murine Class I Histocompatibility Antigen H-2Db or of a Truncated H-2Db、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83巻:7447〜7451頁)によって得られた以前の結果と一致しないことを意味した。Allenらは、β2ミクログロブリンが、全てのMHC I複合体の細胞表面発現に絶対的に必要ではないと報告した。何故なら、β2ミクログロブリンを欠く細胞が、H−2Dを発現可能であったからである。しかし、これらの細胞におけるH−2Dの機能は、おそらく損なわれており、H−2Dのコンフォーメーションは、天然のタンパク質と異なっていた。このことは、Kollerおよび共同研究者らが、天然のH−2Dに対する抗体を用いて上記タンパク質を検出できなかったことを説明する。しかし、βミクログロブリンを欠く細胞は、CD8+T細胞(正常マウス由来の外来性CD8+T細胞を含む)に対して内在性抗原提示できると報告され、β2ミクログロブリンは、マウスにおける抗原チャレンジに対する応答において、高レベルのH−2MHCクラスI拘束CD8+CTLの発達のために必要ではないが、有効な免疫応答を維持するために必要とされると報告される。Quinnら(1997年)Virus-Specific, CD8+ Major Histocompatibility Complex Class I-Restricted Cytotoxic T Lymphocytes in Lymphocytic Choriomeningitis Virus-Infected β2-Microglobulin-Deficient Mice、J. Virol.71巻:8392〜8396頁。β2ミクログロブリンの非存在下で高レベルのそのようなT細胞を生成する能力は、H−2MHCクラスI拘束応答に限定されることが報告されていることに留意されたい。β2ミクログロブリン欠損マウスは、多くの劇的な特徴、例えば、いくつかの寄生虫症に対する感受性の増大、肝炎感染症に対する感受性の増大、鉄代謝の欠損、および繁殖不全表現型を有することが報告されている。Cooperら(2007年)An impaired breeding phenotype in mice with a genetic deletion of Beta-2 microglobulin and diminished MHC class I expression: Role in reproductive fitness、Biol. Reprod.77巻:274〜279頁。
無作為に挿入されたトランスジーンにおいてヒトβ2ミクログロブリンならびにヒトHLAクラスI分子(すなわち、HLA−B7)を発現するマウスが報告されている。Chamberlainら(1988年)Tissue-specific and cell surface expression of human major histocompatibility complex class I heavy (HLA-B7) and light (β2-microglobulin) chain genes in transgenic mice、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85巻:7690〜7694頁。ヒトHLAクラスIの発現は内在性クラスIの発現と一致し、肝臓において顕著に減少していた。同上。ヒトβ2ミクログロブリンの発現はまた、内在性β2ミクログロブリンと一致し、他方で、ヒトHLAクラスI分子の発現は、二重トランスジェニックマウスにおいて、10倍〜17倍増大した。同上。しかし、著者らは、マウス内在性β2ミクログロブリン遺伝子座のヒトβ2ミクログロブリン遺伝子座による置き換えを企図しなかった。
従って、そのゲノムが、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む遺伝子操作された非ヒト動物(例えば、げっ歯動物、例えば、マウスまたはラット)が、本明細書中で開示される。1つの態様では、上記動物は、内在性非ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子座から内在性非ヒトβ2ミクログロブリンを発現しない。いくつかの実施形態では、β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、部分的にヒトであり、部分的に非ヒトである。例えば該ポリペプチドは、ヒトβ2ミクログロブリンに対応するいくつかのアミノ酸と、非ヒトβ2ミクログロブリンに対応するいくつかのアミノ酸とを含有する。1つの態様では、非ヒト動物は、内在性非ヒト遺伝子座から内在性非ヒトβ2ミクログロブリンポリペプチドを発現せず、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドのみを発現する。1つの例では、非ヒト動物は、内在性β2ミクログロブリン遺伝子座から、完全な内在性非ヒトβ2ミクログロブリンポリペプチドを発現しないが、非ヒト内在性β2ミクログロブリンポリペプチドの部分のみを発現する。従って、種々の実施形態では、上記動物は、内在性非ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子座から、機能的な非ヒトβ2ミクログロブリンポリペプチドを発現しない。特定の態様では、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンをコードするヌクレオチド配列は、内在性非ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子座に位置する。1つの態様では、上記動物は、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む2コピーのβ2ミクログロブリン遺伝子座を含む。別の態様では、上記動物は、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む1コピーのβ2ミクログロブリン遺伝子座を含む。従って、上記動物は、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むβ2ミクログロブリン遺伝子座について、ホモ接合型であってもヘテロ接合型であってもよい。ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンのヌクレオチド配列は、ヒト集団において天然に見出されるβ2ミクログロブリン配列の集合に由来し得る。種々の実施形態では、本発明の遺伝子操作された非ヒト動物は、その生殖細胞系に、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンをコードするヌクレオチド配列を含む。1つの実施形態では、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリンアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。1つの実施形態では、上記ポリペプチドは、MHC Iタンパク質に結合可能である。
ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、完全なヒトβ2ミクログロブリン遺伝子に対応する核酸残基を含み得る。あるいは、上記ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリンタンパク質のアミノ酸21〜119に示されるアミノ酸配列(すなわち、成熟ヒトβ2ミクログロブリンに対応するアミノ酸残基)をコードする核酸残基を含み得る。代替の実施形態では、上記ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリンタンパク質のアミノ酸23〜115に示されるアミノ酸配列、例えば、ヒトβ2ミクログロブリンタンパク質のアミノ酸23〜119に示されるアミノ酸配列をコードする核酸残基を含み得る。ヒトβ2ミクログロブリンの核酸配列およびアミノ酸配列は、本明細書中に参考として組み込まれるGussowら(上掲)に記載される。
従って、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドは、ヒトβ2ミクログロブリンポリペプチドのアミノ酸23〜115に示されるアミノ酸配列、例えば、ヒトβ2ミクログロブリンポリペプチドのアミノ酸23〜119に示されるアミノ酸配列、例えば、ヒトβ2ミクログロブリンポリペプチドのアミノ酸21〜119に示されるアミノ酸配列を含み得る。あるいは、ヒトβ2ミクログロブリンは、ヒトβ2ミクログロブリンポリペプチドのアミノ酸1〜119を含み得る。
いくつかの実施形態では、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンをコードするヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2〜エクソン4に示されるヌクレオチド配列を含む。あるいは、上記ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2、3、および4に示されるヌクレオチド配列を含む。この実施形態では、エクソン2、3、および4に示されるヌクレオチド配列は、遺伝子の正常な転写および翻訳を可能にするように、作動可能に連結している。従って、1つの実施形態では、ヒト配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2〜エクソン4に対応するヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態では、ヒト配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2〜エクソン4の約267bp後ろに対応するヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態では、ヒト配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子の約2.8kbを含む。
従って、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドは、ヒトβ2ミクログロブリンのエクソン2〜エクソン4に示されるヌクレオチド配列、例えば、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2〜エクソン4に対応するヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列によってコードされ得る。あるいは、上記ポリペプチドは、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2、3、および4に示されるヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列によってコードされ得る。特定の実施形態では、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドは、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2〜エクソン4の約267bp後ろに対応するヌクレオチド配列によってコードされる。別の特定の実施形態では、ヒトまたはヒト化ポリペプチドは、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子の約2.8kbを含むヌクレオチド配列によってコードされる。β2ミクログロブリン遺伝子のエクソン4は、5’非翻訳領域を含有するので、ヒトまたはヒト化ポリペプチドは、β2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2および3を含むヌクレオチド配列によってコードされ得る。
遺伝子操作された動物を作製するための特定の核酸配列およびアミノ酸配列が、本実施例に記載されるが、1つまたは複数の保存的または非保存的アミノ酸置換の配列、または遺伝コードの縮重に起因して本明細書中で記載されるものとは異なっている配列もまた、提供されることが、当業者には理解される。
従って、ヒトβ2ミクログロブリン配列を発現する非ヒト動物が提供され、ここで、該β2ミクログロブリン配列は、ヒトβ2ミクログロブリン配列に対し、少なくとも約85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。特定の実施形態では、β2ミクログロブリン配列は、本実施例において記載されるヒトβ2ミクログロブリン配列に対し、少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。1つの実施形態では、ヒトβ2ミクログロブリン配列は、1つまたは複数の保存的置換を含む。1つの実施形態では、ヒトβ2ミクログロブリン配列は、1つまたは複数の非保存的置換を含む。
さらに、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンタンパク質をコードするヌクレオチド配列が、非ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン1に示されるヌクレオチド配列をも含む非ヒト動物が提供される。従って、特定の実施形態では、非ヒト動物は、そのゲノムにヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンをコードするヌクレオチド配列であって、非ヒトβ2ミクログロブリンのエクソン1およびヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2、3、および4を含むヌクレオチド配列を含む。従って、上記ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドは、非ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン1およびヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2、3、および4(例えば、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2および3)によってコードされる。
キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む非ヒト動物と同様に、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンをコードするヌクレオチド配列を含む非ヒト動物は、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ウシ(例えば、雌ウシ、雄ウシ、バッファロー)、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、フェレット、霊長類(例えば、マーモセット、アカゲザル)からなる群より選択され得る。本発明のいくつかの実施形態では、非ヒト動物は、哺乳動物である。特定の実施形態では、非ヒト動物は、ネズミ、例えば、げっ歯動物(例えば、マウスまたはラット)である。1つの実施形態では、上記動物は、マウスである。
従って、いくつかの態様では、遺伝子操作されたマウスであって、本明細書中で記載されるようにヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むマウスが提供される。遺伝子操作されたマウスであって、その内在性β2ミクログロブリン遺伝子座において、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチド(例えば、ヒトまたは実質的にヒトβ2ミクログロブリンポリペプチド)をコードするヌクレオチド配列を含むマウスが提供される。いくつかの実施形態では、上記マウスは、内在性β2ミクログロブリン遺伝子座から、内在性β2ミクログロブリンポリペプチド(例えば、機能的な内在性β2ミクログロブリンポリペプチド)を発現しない。いくつかの実施形態では、上記遺伝子操作されたマウスは、マウスβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン1およびヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2、3、および4を含むヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、上記マウスは、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現する。
1つの態様では、異種β2ミクログロブリン配列を含む改変非ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子座が提供される。1つの実施形態では、異種β2ミクログロブリン配列は、ヒトまたはヒト化配列である。
1つの実施形態では、改変遺伝子座は、げっ歯動物遺伝子座である。特定の実施形態では、げっ歯動物遺伝子座は、マウス遺伝子座またはラット遺伝子座から選択される。1つの実施形態では、非ヒト遺伝子座は、少なくとも1つのヒトβ2ミクログロブリンをコードする配列によって改変される。
1つの実施形態では、異種β2ミクログロブリン配列は、内在性調節エレメント、例えば、内在性プロモーターおよび/または発現制御配列に作動可能に連結している。特定の実施形態では、異種β2ミクログロブリン配列はヒト配列であり、該ヒト配列は、内在性プロモーターおよび/または発現制御配列に作動可能に連結している。
1つの態様では、内在性プロモーターおよび/または発現制御配列に作動可能に連結しているヒト配列を含む改変非ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子座が提供される。
種々の態様では、遺伝子改変された非ヒト動物または非ヒト動物に由来する細胞、胚、または組織によって発現されたヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンは、内在性β2ミクログロブリンおよび/または内在性ヒトβ2ミクログロブリンの全ての機能的態様を保存している。例えば、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンが、MHC Iポリペプチド(例えば、内在性非ヒトまたはヒトMHC Iポリペプチド)のα鎖に結合することが好ましい。ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドは、任意の他の分子、例えば、内在性非ヒトβ2ミクログロブリンおよび/または内在性ヒトβ2ミクログロブリンと会合する受容体、アンカーまたはシグナル伝達分子(例えば、HFEなど)に結合し得、これらを動員し得、または別の方法でこれらと会合し得る。
遺伝子改変された動物(例えば、げっ歯動物、例えば、マウスまたはラット)に加えて、組織または細胞であって、本明細書中で記載されるように非ヒト動物に由来し、異種β2ミクログロブリン遺伝子または異種β2ミクログロブリン配列、すなわち、ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列を含む組織または細胞もまた提供される。1つの実施形態では、異種β2ミクログロブリン遺伝子または異種β2ミクログロブリン配列は、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリン遺伝子またはヒトまたはヒト化β2ミクログロブリン配列である。好ましくは、上記細胞は有核細胞である。上記細胞は、MHC I複合体を発現することが公知である任意の細胞、例えば、抗原提示細胞であってもよい。前記細胞によって発現されるヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドは、内在性非ヒトMHC I(例えば、げっ歯動物MHC I)と相互作用して、機能的なMHC I複合体を形成し得る。得られたMHC I複合体は、T細胞、例えば、細胞傷害性T細胞と相互作用可能であり得る。従って、本明細書中で記載されるように非ヒト動物由来の細胞とT細胞とのin vitro複合体もまた提供される。
また、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリン遺伝子またはヒトまたはヒト化β2ミクログロブリン配列、ならびにさらなるヒトまたはヒト化配列、例えば、ここで開示されるキメラMHC Iポリペプチドを含む非ヒト細胞も提供される。このような場合、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドは、例えば、キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドと相互作用し得、機能的MHC I複合体が形成され得る。いくつかの態様では、このような複合体は、T細胞、例えば、ヒトまたは非ヒトT細胞上のTCRと相互作用可能である。従って、本明細書中で記載されるように非ヒト動物由来の細胞とヒトまたは非ヒトT細胞とのin vitro複合体もまた提供される。
本開示の別の態様は、本明細書中で記載されるように、異種β2ミクログロブリン遺伝子または異種β2ミクログロブリン配列を含むげっ歯動物胚(例えば、マウスまたはラットの胚)である。1つの実施形態では、上記胚は、異種β2ミクログロブリン遺伝子または異種β2ミクログロブリン配列を含むESドナー細胞および宿主胚細胞を含む。異種β2ミクログロブリン遺伝子または異種β2ミクログロブリン配列は、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリン遺伝子またはヒトまたはヒト化β2ミクログロブリン配列である。
本発明はまた、本明細書中で記載されるように非ヒト動物の染色体またはその断片を含む(例えば、染色体またはその断片が、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む)非ヒト細胞を包含する。非ヒト細胞は、本明細書中で記載されるように、非ヒト動物の核を含み得る。1つの実施形態では、非ヒト細胞は、核移入の結果として、染色体またはその断片を含む。
1つの態様では、異種β2ミクログロブリン遺伝子または異種β2ミクログロブリン配列を含む非ヒト人工多能性細胞が提供される。1つの実施形態では、人工多能性細胞は、本明細書中で記載されるように非ヒト動物に由来する。1つの実施形態では、異種β2ミクログロブリン遺伝子また異種β2ミクログロブリン配列は、ヒトまたはヒト化遺伝子またはヒトまたはヒト化配列である。
また、本明細書中で記載されるように非ヒト動物の細胞に由来するハイブリドーマまたはクアドローマも提供される。1つの実施形態では、非ヒト動物はマウスまたはラットである。
本開示はまた、本明細書中で記載される遺伝子操作された非ヒト動物(例えば、遺伝子操作されたげっ歯動物、例えば、マウスまたはラット)を作製するための方法も提供する。上記方法は、そのゲノムがヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む動物を生じる。1つの態様では、上記方法は、そのゲノムが、内在性β2ミクログロブリン遺伝子座において、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む遺伝子操作されたマウスを生じる。いくつかの場合では、上記マウスは、内在性マウスβ2ミクログロブリン遺伝子座から、機能的なマウスβ2ミクログロブリンを発現しない。いくつかの態様では、上記方法は、実施例において記載されるように、VELOCIGENE(登録商標)技術を用いて作製した標的化構築物を使用し、該構築物をES細胞へと導入し、標的とされたES細胞クローンを、VELOCIMOUSE(登録商標)技術を用いてマウス胚へと導入する。1つの実施形態では、上記ES細胞は、129マウス系統およびC57BL/6マウス系統の混血であり;別の実施形態では、上記ES細胞は、BALB/cマウス系統および129マウス系統の混血である。
また、遺伝子操作された非ヒト動物を作製するために使用されるヌクレオチド構築物も提供される。上記ヌクレオチド構築物は、以下を含み得る:5’および3’の非ヒトホモロジーアーム、ヒトβ2ミクログロブリン配列を含むヒトDNA断片、および組換え部位が隣接する選択カセット。1つの実施形態では、上記ヒトDNA断片は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のイントロンおよびエクソンの両方を含むゲノム断片である。1つの実施形態では、上記非ヒトホモロジーアームは、非ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子座に対して相同である。上記ゲノム断片は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2、3、および4を含み得る。1つの場合では、上記ゲノム断片は、5’から3’へ、エクソン2、イントロン、エクソン3、イントロン、およびエクソン4、ヒトβ2ミクログロブリン配列の全てを含む。上記選択カセットは、上記構築物内で、β2ミクログロブリンコード領域の外側のどこに位置してもよく、例えば、ヒトβ2ミクログロブリンのエクソン4の3’に位置してもよい。上記5’および3’の非ヒトホモロジーアームは、それぞれ、内在性非ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子の5’および3’のゲノム配列を含み得る。別の実施形態では、5’および3’の非ヒトホモロジーアームは、それぞれ、内在性非ヒト遺伝子のエクソン2の5’およびエクソン4の3’のゲノム配列を含む。
本発明の別の態様は、非ヒト動物(例えば、げっ歯動物、例えば、マウスまたはラット)のβ2ミクログロブリン遺伝子座を改変し、本明細書中で記載されるヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現させる方法に関する。マウスのβ2ミクログロブリン遺伝子座を改変してヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現させる1つの方法は、内在性β2ミクログロブリン遺伝子座にて、マウスβ2ミクログロブリンをコードするヌクレオチド配列を、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列で置き換える工程を含む。このような方法の1つの実施形態では、上記マウスは、内在性マウスβ2ミクログロブリン遺伝子座から、機能的なβ2ミクログロブリンポリペプチドを発現しない。いくつかの特定の実施形態では、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2〜4に示されるヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2、3、および4に示されるヌクレオチド配列を含む。
遺伝子改変されたMHC I/β2ミクログロブリン動物
種々の実施形態では、本発明は、一般に、そのゲノムにヒトまたはヒト化MHC Iおよびβ2ミクログロブリンポリペプチドの両方をコードするヌクレオチド配列を含む、遺伝子改変された非ヒト動物であって;従って、ヒトまたはヒト化MHC Iポリペプチドおよびβ2ミクログロブリンポリペプチドの両方を発現する、非ヒト動物を提供する。
ヒト/非ヒト系の構成要素を混合して使用する場合、機能的差異が生じる。HLAクラスIは、β2ミクログロブリンにマウスクラスIよりも強固に結合する。Bernabeu(1984年)β2-microgobulin from serum associates with MHC class I antigens on the surface of cultured cells、Nature 308巻:642〜645頁。機能的差異をなくす試みは、特定のヒト化MHCマウスの構築において反映される。そのN末端がヒトβ2−ミクログロブリンのC末端にリンカーを介して結合した、ヒトHLA−A2.1のα1およびα2およびマウスH−2Dのα3を有する、無作為に組み込まれたヒトHLA−A2.1/HLA−DR1キメラトランスジーンを発現する、H−2クラスIおよびクラス2ノックアウトマウス(β2ミクログロブリンKOバックグラウンドのマウスにおいて)が、開発されている。例えば、Pajotら(2004年)A mouse model of human adaptive immune functions: HLA-A2.1-/HLA-DR1-transgenic H-2 class I-/class II-knockout mice、Eur. J. Immunol.34巻:3060〜3069頁を参照されたい。これらのマウスは、B型肝炎ウイルスに対する抗原特異的抗体を生成し、CTL応答を惹起するが、HLA−A2.1についてのみトランスジェニックであるマウスまたはH−2クラスI/クラスIIノックアウトマウスは生成しないことが報告されている。上記遺伝子についてのみトランスジェニックであるマウスの欠損は、おそらく、このようなマウスが内在性クラスIおよび/またはクラスII遺伝子を用いて任意のトランスジーンを回避する能力から生じるものであり、MHCノックアウトマウスに利用不能である選択肢である。しかし、上記マウスは、少なくともH−2Dを発現し得、マウスβ2ミクログロブリンノックアウトマウスバックグラウンドへの交配に起因すると推定される(Pajotら上掲を参照されたい;これは、インタクトな内在性クラスIおよびクラスII遺伝子座を明らかに含む)。
ヒトβ2ミクログロブリンとのキメラ融合物の細胞表面発現は、内在性MHC発現よりも低いと報告されているが、NK死滅化(NK killing)の生存性/生存率は報告されておらず、NK自己死滅化(NK self−killing)の割合も報告されていない。Pajotら、上掲。CD8+T細胞数におけるいくらかの改善が、MHCクラスI欠損β2−ミクログロブリンノックアウトマウスに対して観察されている(全脾細胞の2〜3%対β2 KOマウスにおける0.6〜1%)。しかし、T細胞可変領域利用は、BV 5.1、BV 5.2、およびBV 11の遺伝子セグメントについて変更されたプロフィールを示した。CD8+およびCD4+T細胞応答の両方が、マウスを免疫するために使用した適切なB型肝炎抗原に対して拘束されたが、少なくとも2匹のマウスが、いずれかの抗原を有する細胞を死滅させたことが報告されている(該マウスは、1つの抗原のみで免疫されていて、このことは、NK細胞阻害の欠如またはNK細胞選択性の欠如に起因し得る)。
上で述べられた通り、ヒトMHC Iおよびヒトβ2ミクログロブリンの両方についてトランスジェニックであるマウスは、キメラMHC I/β2ミクログロブリンタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、該MHC I部分およびβ2ミクログロブリン部分は、1本のポリペプチド鎖内に含まれ、その結果、MHC Iα鎖とβ2ミクログロブリンとは互いに共有結合することにより、細胞表面において繋ぎ止められている。そのゲノムに2つの独立したヌクレオチド配列(ヒトまたはヒト化MHC Iポリペプチドをコードするものおよびヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするもの)を含むマウスが提供される。本明細書中で提供されるマウスは、天然に存在するMHC I複合体に非常に似ているMHC I複合体を発現し、ここで、MHC Iα鎖およびβ2ミクログロブリンは、MHC Iα鎖に非共有結合しているβ2ミクログロブリンを有する2つの別個のポリペプチド鎖上に提供される。
従って、本開示は、そのゲノムに以下を含む非ヒト動物を提供する:ヒトまたはヒト化MHC Iポリペプチドをコードする第1ヌクレオチド配列、およびヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードする第2ヌクレオチド配列。1つの態様では、そのゲノムに以下を含む非ヒト動物が提供される:(a)キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドをコードする第1ヌクレオチド配列であって、該キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC I(例えば、HLA−A、HLA−B、またはHLA−C;例えば、HLA−A2)のペプチド結合ドメインまたは細胞外ドメインを含む、ヌクレオチド配列、ならびに(b)ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードする第2ヌクレオチド配列。
第1ヌクレオチド配列は、上記動物が、そのゲノムにおいて、MHC I遺伝子座での、内在性MHC I遺伝子の全てまたは部分(例えば、ペプチド結合ドメインまたは細胞外ドメインをコードする部分)の、対応するヒトMHC I配列による置き換えを含むように、内在性非ヒトMHC I遺伝子座に位置してもよい。従って、上記動物は、内在性MHC I遺伝子座において、ヒトMHC I(例えば、HLA−A、HLA−B、またはHLA−C;例えば、HLA−A2)の細胞外ドメインならびに内在性非ヒトMHC I(例えば、H−2K、H−2D、など、例えば、H−2Kb)の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインをコードするヌクレオチド配列を含み得る。1つの態様では、上記動物はマウスであり、第1ヌクレオチド配列は、ヒトHLA−A2(例えば、HLA−A2.1)の細胞外ドメインおよびマウスH−2K(例えば、H−2Kb)の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む。
第2ヌクレオチド配列は、上記動物が、そのゲノムにおいて、β2ミクログロブリン遺伝子座での、内在性β2ミクログロブリン遺伝子の全てまたは部分の、対応するヒトβ2ミクログロブリン配列による置き換えを含むように、内在性非ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子座に位置してもよい。第2ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2〜エクソン4に示されるヌクレオチド配列を含み得る。あるいは、第2ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2、3、および4に示されるヌクレオチド配列を含み得る。この実施形態では、ヌクレオチド配列は、互いに作動可能に連結している。第2ヌクレオチド配列は、非ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン1の配列を、さらに含み得る。
1つの態様では、上記動物は、内在性非ヒトMHC I遺伝子座から、機能的なMHC Iを発現せず(例えば、内在性MHC Iのペプチド結合ドメインまたは細胞外ドメインのどちらも発現しない)、該動物は、内在性非ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子座から、機能的なβ2ミクログロブリンポリペプチドを発現しない。いくつかの態様では、上記動物は、キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むMHC I遺伝子座およびヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンをコードするヌクレオチド配列を含むβ2ミクログロブリン遺伝子座の両方について、ホモ接合型である。他の態様では、上記動物は、キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むMHC I遺伝子座ならびにヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンをコードするヌクレオチド配列を含むβ2ミクログロブリン遺伝子座の両方について、ヘテロ接合型である。
好ましくは、第1のヌクレオチド配列および第2のヌクレオチド配列は、内在性発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサーなど)に作動可能に連結している。
本明細書中に包含される第1のヌクレオチド配列および第2のヌクレオチド配列(およびこれらがコードするポリペプチド)の種々の他の実施形態は、明細書を通して記載された実施形態(例えば、遺伝子操作されたMHC I動物および遺伝子操作されたβ2ミクログロブリン動物に関連する節において記載されたもの)から、容易に理解され得る。
1つの態様では、本開示は、そのゲノムに、(a)キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチド(具体的には、HLA−A2/H−2Kポリペプチド)をコードし、該キメラポリペプチドのヒト部分が、ヒトHLA−A2の細胞外ドメインを含み、そのマウス部分が、マウスH−2Kの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む、第1ヌクレオチド配列、および(b)ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードする第2ヌクレオチド配列(例えば、該ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2〜エクソン4に示されるヌクレオチド配列、またはヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2、3、および4に示されるヌクレオチド配列を含む)を含むマウスであって、ここで、該第1ヌクレオチド配列は、内在性H−2K遺伝子座に位置し、該第2配列は、内在性β2ミクログロブリン遺伝子座に位置するマウスを提供する。1つの実施形態では、上記マウスは、機能的なH−2Kおよびマウスβ2ミクログロブリンポリペプチドを、そのそれぞれの内在性遺伝子座から発現しない。1つの実施形態では、上記マウスは、キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドおよびヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドの両方を発現する。
以下の実施例で示されるように、ヒトまたはヒト化MHC Iとβ2ミクログロブリンとの両方を共発現するように遺伝子操作された動物は、MHC Iのみについてヒト化した動物と比較して、細胞表面にキメラMHCクラスIの増大した発現を示した。いくつかの実施形態では、ヒトまたはヒト化MHC Iとβ2ミクログロブリンとの共発現は、ヒトまたはヒト化MHC Iの細胞表面発現を、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンの非存在下でのヒトまたはヒト化MHC Iの発現よりも、約10%を超えて、例えば、約20%を超えて、例えば、約50%以上、例えば、約70%増大する。
本開示はまた、そのゲノムが本明細書中で記載されるように第1のヌクレオチド配列および第2のヌクレオチド配列を含む、遺伝子操作された非ヒト動物(例えば、げっ歯動物、例えば、ラットまたはマウス)を作製する方法も提供する。上記方法は、一般に、そのゲノムが本明細書中で記載される第1のヌクレオチド配列(すなわち、ヒトまたはヒト化MHC I配列)を含む、第1の遺伝子操作された非ヒト動物を生み出す工程、そのゲノムが本明細書中で記載される第2のヌクレオチド配列(すなわち、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリン配列)を含む、第2の遺伝子操作された非ヒト動物を生み出す工程、ならびに、第1動物および第2動物を交配させて、そのゲノムが両ヌクレオチド配列を含有する子孫を得る工程を、含む。1つの実施形態では、第1動物および第2動物は、それぞれ第1ヌクレオチド配列および第2ヌクレオチド配列について、ヘテロ接合型である。1つの実施形態では、第1動物および第2動物は、それぞれ第1ヌクレオチド配列および第2ヌクレオチド配列について、ホモ接合型である。1つの実施形態では、第1動物および第2動物は、内在性非ヒト遺伝子座を、それぞれ第1ヌクレオチド配列および第2ヌクレオチド配列で置き換えることを介して生み出される。1つの態様では、第1動物および第2動物は、VELOCIGENE(登録商標)技術を介して生成した構築物の利用し、このような構築物を有する標的とされたES細胞クローンを、VELOCIMOUSE(登録商標)方法を介して、胚(例えば、げっ歯動物胚、例えば、マウスまたはラット胚)へと導入することによって生み出される。
遺伝子改変された動物の使用
種々の実施形態では、本明細書中で記載される遺伝子改変された非ヒト動物は、その細胞表面にヒトまたはヒト化MHC Iおよび/またはβ2ミクログロブリンを有するAPCを作製し、結果として、サイトゾルタンパク質に由来するペプチドを、CTLに対するエピトープとしてヒト様の様式で提示する(何故なら、その複合体の構成要素の実質的に全てが、ヒトまたはヒト化であるからである)。本発明の遺伝子改変された非ヒト動物は、ヒト化動物においてヒト免疫系の機能を研究するため;免疫応答を惹起する抗原および抗原エピトープ(例えば、T細胞エピトープ、例えば、独特なヒトがんエピトープ)を同定するため、例えば、ワクチン開発に使用するため;ヒト病原体またはがん抗原に対する高親和性T細胞(すなわち、高いアビディティを有して、ヒトMHC I複合体との関連で抗原に結合するT細胞)の同定のため、例えば、適応T細胞治療において使用するため;ワクチン候補の評価および他のワクチン戦略のため;ヒト自己免疫を研究するため;ヒト感染症を研究するため;および別の方法で、ヒトMHC発現に基づくより良い治療戦略を案出するために、使用され得る。
MHC I複合体は、ペプチドに結合し、それらを細胞表面に提示する。そのような複合体との関連で、一旦、表面に提示されると、上記ペプチドは、T細胞によって認識可能である。例えば、上記ペプチドが病原体または他の対象の抗原(例えば、腫瘍抗原)に由来する場合、T細胞認識は、T細胞活性化、提示されたペプチド配列を有する細胞のマクロファージによる死滅化、および提示された配列に結合する抗体のB細胞活性化をもたらし得る。
T細胞は、ペプチド結合MHCクラスIエクトドメインおよびT細胞のCD8エクトドメインを介して、MHC I複合体を発現する細胞と相互作用する。MHCクラスI分子に結合した好適な抗原を有するAPCに遭遇した、CD8+T細胞は、細胞傷害性T細胞になる。従って、MHCクラスIとの関連で、T細胞受容体に対し高いアビディティで結合する抗原は、ヒト病変に対する処置の開発において、潜在的に重要である。しかし、ヒトおよびマウスのMHC複合体は、抗原を異なって認識する(例えば、マウスMHC Iは、ヒトMHC Iと同じ抗原を認識しない場合があるか、または、ヒトMHC Iとは異なるエピトープを提示し得る)ので、マウスMHC Iとの関連で、抗原の提示は、ヒト疾患にいくぶん関係があるだけである。従って、ヒト病変について最も関係するデータは、ヒトMHC Iによる抗原エピトープの提示の研究を通して得られる。
従って、種々の実施形態では、本発明の遺伝子操作された動物は、ヒトにおいて免疫応答を開始する抗原の能力を評価するため、および、多様な抗原を生成し、ヒトワクチン開発において使用され得る特定の抗原を同定するために、とりわけ有用である。
1つの態様では、ペプチド配列のヒトにおける抗原性を決定するための方法であって、本明細書中で記載されるように遺伝子改変された非ヒト動物を、該ペプチド配列を含む分子に曝露する工程、該非ヒト動物に免疫応答を惹起させる工程、および、該非ヒト動物において、本明細書中で記載されるようにキメラヒト/非ヒトMHC I複合体またはヒト化MHC I複合体(キメラヒト/非ヒトMHC Iおよびヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンを含む)によって提示されるペプチドの配列に結合する細胞を検出する工程を含む方法が提供される。
1つの態様では、ペプチドが、ヒトにおいて細胞性免疫応答を引き起こすかどうかを決定するための方法であって、本明細書中で記載されるように遺伝子改変された非ヒト動物を該ペプチドに曝露する工程、該非ヒト動物に免疫応答を惹起させる工程、および、該非ヒト動物において、本明細書中で記載されるようにキメラヒト/非ヒトMHCクラスI分子によって該ペプチドの配列に結合する細胞を検出する工程を含む方法が提供される。1つの実施形態では、曝露後の上記非ヒト動物は、上記ペプチドに結合する、MHCクラスI拘束CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を含む。1つの実施形態では、CTLは、上記ペプチドを有する細胞を死滅させる。
1つの態様では、ヒトCTLエピトープを同定するための方法であって、本明細書中で記載されるように非ヒト動物を、推定CTLエピトープを含む抗原に曝露する工程、該非ヒト動物に免疫応答を惹起させる工程、該非ヒト動物から、該エピトープに結合したMHCクラスI拘束CD8+CTLを単離する工程、および、該MHCクラスI拘束CD8+CTLによって結合された該エピトープを同定する工程を含む方法が提供される。
1つの態様では、ヒト細胞によるその提示およびヒトリンパ球(例えば、ヒトT細胞)による結合がペプチド保有細胞の細胞傷害性をもたらす、HLAクラスI−拘束ペプチドを同定するための方法であって、本明細書中で記載されるように非ヒト動物(またはそのMHCクラスI発現細胞)を対象のペプチドを含む分子に曝露する工程、該対象のペプチドに結合するキメラヒト/非ヒトクラスI分子を発現する該非ヒト動物の細胞を単離する工程、HLAクラスI拘束細胞傷害性を導き得るヒトリンパ球に対して該細胞を曝露する工程、および、ペプチド誘導型細胞傷害性を測定する工程を含む方法が提供される。
1つの態様では、細胞傷害性T細胞応答をヒトにおいて起こす抗原を同定するための方法であって、本明細書中で記載されるように、マウスに対して推定抗原を曝露する工程、該マウスに免疫応答を起こさせる工程、および、HLA−A拘束分子により結合した抗原を同定する工程を含む方法が提供される。
1つの実施形態では、抗原は、細菌表面抗原またはウイルス表面抗原またはエンベロープタンパク質を含む。1つの実施形態では、抗原は、ヒト腫瘍細胞の表面の抗原を含む。1つの実施形態では、抗原は、ヒトにおける使用のための推定ワクチンを含む。1つの実施形態では、抗原は、ヒトにおいて抗体を生み出すヒトエピトープを含む。別の実施形態では、抗原は、エピトープ/MHC I複合体を標的とする高親和性CTLを生み出すヒトエピトープを含む。
1つの態様では、推定抗原が、ヒト免疫系に対する曝露の際に、HLA−A拘束免疫応答(例えば、HLA−A2拘束応答)を起こすエピトープを含有するかどうかを決定するための方法であって、本明細書中で記載されるように、マウスを推定抗原に曝露する工程、および、該マウスにおける抗原特異的HLA−A拘束(例えば、HLA−A2拘束)免疫応答を測定する工程を含む方法が提供される。
1つの実施形態では、推定抗原は、生物製剤またはその断片、非自己タンパク質、非自己細胞の表面抗原、腫瘍細胞の表面抗原、細菌細胞または酵母細胞または真菌細胞の表面抗原、ウイルスの表面抗原またはエンベロープタンパク質から選択される。
さらに、本明細書中で記載される遺伝子操作された非ヒト動物は、対象の抗原(例えば、腫瘍抗原または別の疾患抗原)を認識するT細胞受容体、例えば、高アビディティT細胞受容体の同定のために有用であり得る。上記方法は以下を含み得る:本明細書中で記載される非ヒト動物を抗原に曝露する工程、該非ヒト動物に該抗原に対する免疫応答を惹起させる工程、該非ヒト動物から、ヒトまたはヒト化MHC Iによって提示された抗原に結合するT細胞受容体を含むT細胞を単離する工程、および、該T細胞受容体の配列を決定する工程。
1つの態様では、ヒト腫瘍抗原に対して高い親和性を有するT細胞受容体可変ドメインを同定するための方法であって、ヒト化MHC Iα1、α2、およびα3ドメイン(例えば、HLA−A2 α1、α2、およびα3ドメイン)を含むマウスをヒト腫瘍抗原に曝露する工程;該マウスに免疫応答を起こさせる工程;および、該マウスから、T細胞受容体可変ドメインをコードする核酸配列を単離する工程を含み、ここで、該T細胞受容体可変ドメインは、約1ナノモル濃度以下のKでヒト腫瘍抗原に結合する方法が提供される。
1つの実施形態では、上記マウスは、内在性マウスT細胞受容体可変領域遺伝子遺伝子座において、複数の再配列されていないヒトT細胞受容体可変領域遺伝子セグメントによる置き換えであって、ここで、該再配列されていないヒトT細胞受容体可変領域遺伝子セグメントは、ヒト可変領域およびマウス定常領域を含むキメラヒト−マウスT細胞受容体遺伝子をコードするように組み換える置き換えをさらに含む。1つの実施形態では、上記マウスは、ヒトCD8トランスジーンを含み、該マウスは、機能的なヒトCD8タンパク質を発現する。
腫瘍抗原に対して高いアビディティを有するT細胞受容体は、細胞ベースの治療において有用である。ヒト腫瘍抗原に対し高いアビディティを有するT細胞集団は、腫瘍抗原に対し非常に高いアビディティを有するT細胞(すなわち、CD8のα3に対する結合不能性にもかかわらず該抗原を認識するT細胞クローン)のみを選択するために、α3サブユニットに対するCD8の結合性を最小化するように変異しているHLA−A2にヒトT細胞を曝露することによって、調製されている。Pittetら(2003年)α3 Domain Mutants of Peptide/MHC Class I Multimers Allow the Selective Isolation of High Avidity Tumor-Reactive CD8 T Cells、J. Immunol.171巻:1844〜1849頁を参照されたい。非ヒト動物、および該非ヒト動物の細胞は、ヒトHLAクラスIと、T細胞受容体に対する高いアビディティで結合するか、またはT細胞受容体を有するリンパ球を活性化する複合体を形成するペプチドを同定するために有用である。
T細胞に対する抗原/HLAクラスI結合、またはT細胞の活性化は、当該分野で公知の任意の好適な方法によって測定され得る。ペプチド特異的APC−T細胞結合および活性化は、測定可能である。例えば、HLA−A2を発現する抗原提示細胞のT細胞会合は、PIP2を生じて、免疫シナプスにおいて蓄積するが、他方で、架橋MHCクラスI分子はそれを起こさないことが、報告されている。Fooksmanら(2009年)Cutting Edge: Phosphatidylinositol 4,5-Bisphosphate Concentration at the APC Side of the Immunological Synapse Is Required for Effector T Cell Function、J. Immunol.182巻:5179〜5182頁を参照されたい。
TCRを有するリンパ球およびクラスI発現APCの相互作用の機能的帰結もまた、測定可能であり、リンパ球による細胞死滅化を含む。例えば、CD8+CTLによるHLA−A2のα2サブユニットにおける接触点は、Fas非依存型死滅化についてのシグナルを生成することが報告されている。HLA−A2発現Jurkat細胞は、細胞質ドメイン上に何ら明らかな確実性なしにCD8と接触することが(結晶学的研究から)公知であるHLA−A2分子上のエピトープに(抗体によって)接触した場合、アポトーシスがおこる。Pettersenら(1998年)The TCR-Binding Region of the HLA Class I α2 Domain Signals Rapid Fas-Independent Cell Death: A Direct Pathway for T Cell-Mediated Killing of Target Cells? J. Immunol.160巻:4343〜4352頁を参照されたい。CD8+CTLの CD8と接触したHLA−A2 α2 によって誘導された迅速な死滅化は、主に、このFas非依存型HLA−A2媒介型経路に起因し得ると仮定され(同上)、それ自身がアポトーシスを誘導し得るTCR非依存型α3ドメイン媒介型死滅化とは区別される(Woodleら(1997年)Anti-human class I MHC antibodies induce apoptosis by a pathway that is distinct from the Fas antigen-mediated pathway、J. Immunol.158巻:2156〜2164頁を参照されたい)。
T細胞とMHC Iとの関連でペプチドを表面に表すAPCとの間の相互作用の結果はまた、T細胞増殖アッセイによって測定され得る。あるいは、これは、一般に免疫応答の活性化と関連するサイトカイン放出の測定によって、決定され得る。1つの実施形態では、IFNγELISPOTが、CD8+T細胞活性化をモニタリングして定量化するために使用され得る。
本明細書中で記載されるように、CD8+T細胞活性化は、本明細書中で記載される遺伝子改変された非ヒト動物において、MHC Iに対するCD8の種特異的結合性に起因して、妨害され得る。種特異的CD8相互作用が所望される実施形態について、本明細書中で記載されるように遺伝子改変された動物(例えば、げっ歯動物、例えば、マウスまたはラット)の細胞は、(例えば、in vitroで)ヒト細胞、例えば、ヒトCD8保有細胞、例えば、ヒトT細胞に曝露される。1つの実施形態では、本明細書中で記載されるようにマウスのMHCクラスI発現細胞は、in vitroでヒトCD8およびT細胞受容体を含むT細胞に曝露される。特定の実施形態では、T細胞はヒトT細胞である。1つの実施形態では、マウスのMHCクラスI発現細胞は、キメラヒト/マウスMHC Iまたはヒト化MHC I複合体(ヒトβ2ミクログロブリンを含む)に結合するペプチドを含み、上記T細胞はヒトT細胞であり、ペプチドを表面に表すマウス細胞に結合するT細胞の能力が決定される。1つの実施形態では、ペプチドを表面に表すマウス細胞によるヒトT細胞の活性化が決定される。1つの実施形態では、ペプチドを表面に表す細胞によるヒトT細胞の活性化を測定するためのin vitro方法であって、本明細書中で記載されるように、マウスまたはマウス細胞を対象の抗原に曝露する工程、該マウス由来の細胞または該マウス細胞(ヒトまたはヒト化MHC Iとの複合体における該抗原に由来するペプチドを有すると推定される)を、ヒトT細胞に曝露する工程、および、該ヒトT細胞の活性化を測定する工程を含む方法が提供される。1つの実施形態では、上記方法は、ヒト病原体またはヒト新生物のT細胞エピトープを同定するために使用される。1つの実施形態では、上記方法は、ワクチンのためのエピトープを同定するために使用される。
1つの実施形態では、推定ヒト治療薬によるT細胞活性化を決定するための方法であって、本明細書中で記載されるように遺伝子改変された動物を推定ヒト治療薬に曝露する工程(または、例えば、そのような動物のヒトまたはヒト化MHC I発現細胞を推定治療薬のペプチド配列に曝露する工程)、ヒトまたはヒト化MHC I/ペプチド複合体を表面に表す遺伝子改変された動物の細胞を、該遺伝子改変された動物の細胞に結合可能なヒトT細胞受容体およびCD8を含むT細胞に曝露する工程、および、該遺伝子改変された動物の、該ペプチドを表面に表す細胞によって誘導されるヒトT細胞の活性化を測定する工程を含む方法が提供される。
種々の実施形態では、本明細書中で記載されるように動物由来のヒトまたはヒト化MHCクラスI発現細胞間に形成される複合体は、ヒトCD8配列を含むT細胞、例えば、ヒトT細胞、またはヒトCD8をコードするトランスジーンを含む非ヒト動物のT細胞によって作製される。ヒトCD8についてトランスジェニックであるマウスは、当該分野で公知である。Tishonら(2000年)Trangenic Mice Expressing Human HLA and CD8 Molecules Generate HLA-Restricted Measles Virus Cytotoxic T Lymphocytes of the Same Specificity as Humans with Natural Measles Virus Infection、Virology 275巻(2号):286〜293頁;また、LaFaceら(1995年)Human CD8 Transgene Regulation of HLA Recognition by Murine T Cells、J. Exp. Med.182巻:1315〜1325頁。
ヒト病原体または新生物からの抗原および抗原エピトープを同定する能力に加え、本発明の遺伝子改変された動物が、ヒト自己免疫疾患、例えば、I型糖尿病、多発性硬化症などに関連する自己抗原を同定するために使用され得る。例えば、Takakiら((2006年)HLA-A*0201-Restricted T Cells from Humanized NOD Mice Recognize Autoantigens of Potential Clinical Relevance to Type 1 Diabetes、J. Immunol.176巻:3257〜65頁)は、HLA/β2ミクログロブリン単鎖を有するNODマウスの、1型糖尿病自己抗原を同定する上での使用を記載する。また、本発明の遺伝子改変された動物は、ヒト自己免疫疾患の種々の態様を研究するために使用され得る。ヒトMHC Iのいくつかの多形対立遺伝子は、ある特定の疾患、例えば、自己免疫疾患(例えば、グレーヴス病、重症筋無力症、乾癬など)の発症に関連することが公知である;Bakkerら(2006年)A high-resolution HLA and SNP haplotype map for disease association studies in the extended human MHC、Nature Genetics 38巻:1166〜72頁および補遺情報、ならびにInternational MHC and Autoimmunity Genetics Network(2009年)Mapping of multiple susceptibility variants within the MHC region for 7 immune-mediated diseases, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 106巻:18680〜85頁、両方とも参考として本明細書中に組み込まれる)を参照されたい。ヒト化MHC I遺伝子座を含む本発明の遺伝子改変された動物は、自己免疫疾患モデルとして有用であり得るような対立遺伝子を含む。1つの実施形態では、疾患対立遺伝子は、HLA−B27であり、上記疾患は、硬直性脊椎炎または反応性関節炎であり;従って、1つの実施形態では、これらの疾患の研究のために使用される動物は、ヒトまたはヒト化HLA−B27を含む。
MHC I複合体を包含する細胞性免疫の他の態様は、当該分野で公知である;従って、本明細書中で記載される遺伝子操作された非ヒト動物は、免疫生物学のこれらの態様を研究するために使用され得る。例えば、TCRのMHCクラスIに対する結合性は、さらなる因子によって、in vivoで調整される。白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー(LILRB1、またはLIR−1)は、MHCクラスI拘束CTLにおいて発現され、APC上のMHCクラスI分子のα3サブユニットにおける特定の抗原決定基の結合によって、T細胞刺激を下方制御する。構造研究は、LIR−1およびCD8についての結合部位が重複することを示し、このことは、MHCクラスI分子との結合について、阻害性LIR−1が刺激性CD8と競合することを示唆する。Willcoxら(2003年)Crystal structure of HLA-A2 bound to LIR-1, a host and viral major histocompatibility complex receptor、Nature Immunology 4巻(9号):913〜919頁;また、Shirioshiら(2003年)Human inhibitory receptors Ig-like transcript 2 (ILT2) and ILT4 compete with CD8 for MHC class I binding and bind preferentially to HLA-G、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100巻(15号):8856〜8861頁。LIR−1は、阻害シグナルを、その(細胞内)免疫受容体チロシンベースの阻害性モチーフ(ITIM)を介して伝達する。NK細胞では、研究は、ITIMを欠く(通常、阻害不可能である)KIR(阻害性キラー細胞Ig様受容体)が、LIR−1の存在下で(おそらく、LIR−1 ITIMを介して)MHCクラスI分子のα3ドメインへの結合を阻害し得ることを示している(Kirwinら(2005年)Killer Cell Ig-Like Receptor-Dependent Signaling by Ig-Like Transcript 2 (ILT2/CD85j/LILRB1/LIR-1) J. Immunol.175巻:5006〜5015頁を参照されたい)。このことは、MHCクラスIに結合したLIR−1とKIRとの間の協調を示唆し、従って、NK細胞阻害の調節におけるHLAα3ドメイン結合の役割を示唆している。
上で記載されるように、MHC分子は、TCRを発現しない細胞と相互作用する。NK細胞はTCRを発現しない細胞である。NK細胞は、細胞性免疫応答において、および特に先天免疫において、中心的役割を果たす細胞傷害性リンパ球(CTL、すなわち細胞傷害性Tリンパ球とは区別される)である。NK細胞は、侵入性の微生物、ウイルス、および他の非自己(例えば、腫瘍)実体に対する防御の第1線である。NK細胞は、表面受容体を介して活性化されるかまたは阻害され、これらは、CD8を発現するが、TCRは発現しない。NK細胞は、MHCクラスIを発現する細胞と相互作用し得るが、相互作用は、TCR結合、ペプチド保有αおよびαドメインではなくCD8結合α3ドメインを介する。NK細胞の主な機能は、充分なMHCクラスI表面タンパク質を欠く細胞を破壊することである。
ヒトナチュラルキラー(NK)細胞の表面の架橋MHCクラスI分子は、細胞内チロシンリン酸化、MHCクラスI分子の免疫シナプスからの移動、および腫瘍細胞死滅化の下方制御をもたらす。Rubioら(2004年)Cross-linking of MHC class I molecules on human NK cells inhibits NK cell function, segregates MHC I from the NK cell synapse, and induces intracellular phosphotyrosines、J. Leukocyte Biol.76巻:116〜124頁。
NK細胞におけるMHCクラスIの別の機能は、明らかに自己死滅化を防ぐ。NK細胞は、活性化受容体2B4および2B4リガンドCD48の両方を有し;MHCクラスIは、2B4に結合し、CD48によるその活性化を妨げるようである。Betser-Cohen(2010年)The Association of MHC Class I Proteins with the 2B4 Receptor Inhibits Self-Killing of Human NK Cells, J. Immunol.184巻:2761〜2768頁。
従って、本明細書中で記載される遺伝子操作された非ヒト動物は、これらの非TCRまたは非CTL媒介型プロセスを研究するため、およびその調整のためのアプローチを設計するために、使用され得る。
本発明は、以下の非限定の実施例によって、さらに例証される。これらの実施例は、本発明の理解を助けるために示されるが、本発明の範囲を制限することを何ら企図せず、また何らそのように解釈されるべきではない。本実施例は、当業者に周知の慣用的方法(分子クローニング技術など)の詳細な記載を含まない。そうでないと示されない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度はセ氏(Celsius)で示され、圧力は大気圧付近である。
(実施例1.遺伝子改変されたHLA−A2マウスの構築および性質決定)
(実施例1.1:MG87細胞におけるHLA−A2/H−2Kの発現)
キメラHLA−A2/H−2K遺伝子配列を含むウイルス構築物(図4A)を、トランスフェクトした細胞におけるキメラヒト/マウスMHC I発現を分析するために、当業者に公知の標準的分子クローニング技術を用いて作製した。
簡潔には、キメラヒトHLA−A/マウスH−2Kウイルス構築物を、α鎖のα1、α2およびα3ドメインをコードするエクソン配列を用いて作製し、これらを、H−2K遺伝子由来の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインについて、マウスコード配列にインフレームげクローニングした(図4A、pMIG−HLA−A2/H2K)。図4に示される通り、上記構築物は、IRES−GFPレポーター配列を含み、これは、該構築物が、トランスフェクションによって細胞内で発現できるかどうかを決定することを可能にした。
上記のキメラ構築物を含むウイルスを作製し、ヒト胚性腎293(293T)細胞内で増やした。293T細胞を、10cmディッシュにまいて、95%コンフルーエンシーまで増殖させた。DNAトランスフェクション混合物を、25μgのpMIG−HLA−A2/H2K、pMIG−ヒトHLA−A2またはpMIG−ヒト化β2ミクログロブリン、および5μgのpMDG(エンベローププラスミド)、15μgのpCL−Eco(パッケージングシグナルΨなしのパッケージング構築物)、1mLのOpti−MEM(Invitrogen)を用いて調製した。この1mLのDNA混合物に、1mLのOpti−MEM中の80μLのリポフェクタミン−2000(Invitrogen)を加え、これを先に一緒に混合し、室温で5分間インキュベートさせた。リポフェクタミン/DNA混合物を、さらに20分間室温でインキュベートし、次いで、10cmディッシュに加え、この平板培養物(plate)を、37℃でインキュベートした。この細胞からの培地を、24時間後に回収し、新鮮な10mLのR10(RPMI 1640+10% FBS)培地を、この細胞に添加した。この培地交換を、2回繰り返した。計4日間の後、回収した培地をプールし、遠心分離し、滅菌フィルターを通して、細胞屑を除去した。
上記のように増やしたウイルスを、MG87(マウス線維芽細胞)細胞を変換するために使用した。単一のT−75フラスコからのMG87細胞を、PBSで1回洗浄した。3mLの0.25% トリプシン+EDTAを細胞に加え、室温で3分間インキュベートした。7mLのD10(高グルコースDMEM;10% ウシ胎仔血清)をこの細胞/トリプシン混合物に加え、15mLチューブに移して、1300rpmで5分間遠心分離した。細胞を遠心分離した後、培地を吸引し、細胞を、5mL D10中に再度懸濁させた。細胞を計数し、6ウェルプレート中の1ウェルあたり約3.0×10細胞を入れた。pMIG−ヒトHLA−A2またはpMIG−HLA−A2/H−2Kは、単独で、またはpMIG−ヒト化β2ミクログロブリンウイルスとともにウェルに加え、対照として非変換細胞を用いた。細胞を、37℃にて5% COと共に2日間インキュベートした。β2ミクログロブリンを有するかまたは有さないHLA−A2発現について、FACS分析(抗HLA−A2抗体、クローンBB7.2を用いた)のために、細胞を調製した。
グラフ(図4B)ならびに該グラフから得られたデータをまとめた表(図4C)は、ヒト化β2ミクログロブリンとの共変換は、右方へシフトする曲線によって実証されるように、ヒトHLA−A2またはキメラヒト/非ヒトHLA−A2/H−2Kの発現を増大することを実証する。
(実施例1.2.キメラHLA−A2/H−2K遺伝子座の操作)
マウスH−2K遺伝子を、独自のターゲッティングベクターを、ヒトおよびマウス細菌人工染色体(BAC)DNAからVELOCIGENE(登録商標)技術を用いて構築することにより、一工程でヒト化した(例えば、米国特許第6、586、251号およびValenzuelaら(2003年)High-throughput engineering of the mouse genome coupled with high-resolution expression analysis、Nat. Biotech.21巻(6号):652〜659頁を参照されたい)。マウスBACクローンRP23−173k21(Invitrogen)由来のDNAを、相同組換えによって改変し、マウスH−2K遺伝子のα1、α2およびα3ドメインをコードするゲノムDNAを、ヒトHLA−A遺伝子のα1、α2およびα3サブユニットをコードするヒトゲノムDNAで置き換えた(図5)。
簡潔には、loxP部位が隣接するハイグロマイシンカセットおよび5’非翻訳領域を含むマウスH−2K遺伝子座の5’の配列を含有する5’マウスホモロジーアーム(UTR;5’ホモロジーアームは、配列番号1に示される)およびマウスH−2K α3をコードする配列の3’のゲノム配列を含有する3’マウスホモロジーアーム(3’ホモロジーアームは、配列番号2に示される)を含むターゲッティングベクターを用いる、単一のターゲティング事象で、H−2K遺伝子のマウスα1、α2およびα3サブユニットをコードするゲノム配列を、ヒトHLA−A*0201遺伝子のα1、α2およびα3ドメインをコードするヒトゲノムDNAで置き換える。
内在性H−2K遺伝子遺伝子座を標的とするための最終構築物は、5’から3’へ、以下を含む:(1)内在性H−2K遺伝子の5’の約200bpのマウスゲノム配列(5’UTRを含む)を含有する5’ホモロジーアーム、(2)HLA−A0201リーダー配列、HLA−A0201リーダー/α1イントロン、HLA−A0201α1エクソン、HLA−A0201α1−α2イントロン、HLA−A0201α2エクソン、α2−α3イントロンの約316bpの5’末端を含む約1339bpのヒトゲノム配列、(3)5’loxP部位、(4)ハイグロマイシンカセット、(5)3’loxP部位、(6)α2−α3イントロンの約304bpの3’末端、HLA−A0201 α3エクソンを含む約580bpのヒトゲノム配列、ならびに(7)マウスH−2K α3と膜貫通をコードする配列との間のイントロンを含む約200bpのマウスゲノム配列を含有する3’ホモロジーアーム(H−2Kターゲッティングベクターの概略的表示については、図5を参照されたい)。ターゲッティングベクターの5’におけるマウス/ヒト配列の接合部における149ヌクレオチドの配列は、配列番号3に示され、ターゲッティングベクターの3’におけるヒト/マウス配列の接合部における159ヌクレオチドの配列は、配列番号4に示される。このターゲッティングベクターによる相同組換えは、内在性マウスH−2K膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインをコードする配列に作動可能に連結している、HLA−A0201遺伝子のα1、α2およびα3ドメインをコードするヒトゲノムDNAを含有する改変マウスH−2K遺伝子座を生成した。この遺伝子座は、翻訳されるとキメラヒト/マウスMHCクラスIタンパク質の形成を導く。
ターゲッティングされたBAC DNAを使用して、マウスF1H4 ES細胞をエレクトロポレーションし、有核細胞(例えば、Tリンパ球およびBリンパ球、マクロファージ、好中球)の表面にキメラMHCクラスIタンパク質を発現するマウスを生み出すための改変ES細胞を作製した。ヒトHLA配列の挿入物を含有するES細胞を、定量的TAQMAN(商標)アッセイによって同定した。特異的プライマーセットおよびプローブを、ヒトHLA配列および付随する選択カセットの挿入(対立遺伝子の獲得、GOA)ならびに内在性マウス配列の欠失(対立遺伝子の欠失、LOA)を検出するために設計した。表1は、定量的PCRアッセイにおいて使用されるプローブそれぞれについて検出される名称および位置を同定する。
Figure 0006154391
選択カセットは、当業者に公知の方法によって除去され得る。例えば、キメラヒト/マウスMHCクラスI遺伝子座を有するES細胞は、ヒトHLA−A0201遺伝子配列を含有する標的化構築物の挿入によって導入された「loxed」ハイグロマイシンカセットを除去するために、Creを発現する構築物によってトランスフェクトされ得る(図5を参照されたい)。ハイグロマイシンカセットは、Creリコンビナーゼを発現するマウスに交配させることによって、必要に応じて除去され得る。必要に応じて、ハイグロマイシンカセットは、そのマウスに保持される。
標的とした上記のES細胞を、ドナーES細胞として用い、VELOCIMOUSE(登録商標)方法によって、8細胞段階のマウス胚へと導入した(例えば、米国特許第7,294,754号およびPoueymirouら(2007年)F0 generation mice that are essentially fully derived from the donor gene-targeted ES cells allowing immediate phenotypic analyses Nature Biotech.25巻(1号):91〜99頁を参照されたい)。独立してキメラMHCクラスI遺伝子を有するVELOCIMICE(登録商標)(ドナーES細胞に完全に由来するF0マウス)を、独自のヒトHLA−A0201遺伝子配列の存在を検出する対立遺伝子アッセイ(Valenzuelaら、上掲)を改変して用いたゲノタイピングによって同定した。
(実施例1.3. 遺伝子改変されたマウスにおけるキメラ HLA−A/H−2K のin vivo発現)
実施例1.2に記載されるように遺伝子改変されたH−2K遺伝子座を有するヘテロ接合型マウスを、この動物の細胞におけるキメラHLA−A/H−2Kタンパク質の発現について分析した。
血液を、野生型マウスおよびHLA−A/H−2Kキメラヘテロ接合型(A2/H2K)マウスから別個に得た。細胞を、フィコエリトリンコンジュゲート(PE)抗HLA−A抗体によってヒトHLA−A2について染色し、アロフィコシアニンコンジュゲート抗H−2K抗体に1時間4℃にて曝露した。細胞を、HLA−AおよびH−2Kについて特異的な抗体を用いたフローサイトメトリーによって、発現について分析した。図6Aは、野生型およびキメラヘテロ接合型において、H−2KおよびHLA−A2の発現を示す(キメラヘテロ接合体は、両方のタンパク質を発現する)。図6Bは、ヘテロ接合体マウスにおいて、H−2KおよびキメラHLA−A2/H2Kの両方の発現を示す。
(実施例2:遺伝子改変されたβ2ミクログロブリンマウスの構築および性質決定)
(実施例2.1:ヒト化β2ミクログロブリン遺伝子座を操作する)
マウスβ2ミクログロブリン(β2m)遺伝子を、VELOCIGENE(登録商標)技術を用い、ヒトおよびマウスの細菌人工染色体(BAC)DNAからの独自のターゲッティングベクターを構築することによって、1工程でヒト化した(例えば、米国特許第6,586,251号およびValenzuelaら、上掲を参照されたい)。
簡潔には、ターゲッティングベクターを、RPCI−23ライブラリー(Invitrogen)由来のBACクローン89C24からのマウスβ2mの上流ホモロジーアームおよび下流ホモロジーアームを含有する細菌相同組換えによって生成した。このマウスホモロジーアームを、エクソン2から非コードエクソン4の約267ヌクレオチド下流へ延びる2.8kbのヒトβ2m DNA断片が隣接するように工学的に作製した(図7)。リコンビナーゼ認識部位(例えば、loxP部位)が隣接する薬物選択カセット(ネオマイシン)を、ターゲッティングベクター内に工学的に作製し、その後の選択を可能にした。最終ターゲッティングベクターを、直鎖状にし、F1H4マウスES細胞系内にエレクトロポレーションした(Valenzuela、上掲)。
薬物カセットを(Creリコンビナーゼの導入によって)除去した標的とされたES細胞クローンを、8細胞段階のマウス胚へと、VELOCIMOUSE(登録商標)方法によって導入した(例えば、米国特許第7,294,754号およびPoueymirouら、上掲を参照されたい)。ヒト化β2m遺伝子を有するVELOCIMICE(登録商標)(ドナーES細胞に完全に由来するF0マウス)を、マウス対立遺伝子の欠失およびヒト対立遺伝子の獲得について、対立遺伝子アッセイを改変して用いてスクリーニングすることによって、同定した(Valenzuelaら、上掲)。
(実施例2.2:ヒト化β2ミクログロブリンマウスの性質決定)
ヒト化β2ミクログロブリン(β2m)遺伝子についてのヘテロ接合型のマウスを、フローサイトメトリーを使用して、発現について評価した(図8および図9)。
簡潔には、当該分野で公知の技術を使用して、血液を、野生型、ヒト化β2m、ヒト化MHC(すなわち、ヒトHLA)クラスI、およびβ2mとMHCクラスIとの二重ヒト化マウスの群(1群あたりn=4)から単離した。各群におけるマウスそれぞれに由来する血液を、ACK溶解緩衝液(Lonza Walkersville)で処理し、赤血球を除去した。残った細胞を、蛍光色素をコンジュゲートした抗CD3(17A2)、抗CD19(1D3)、抗CD11b(M1/70)、抗ヒトHLAクラスI、および抗ヒトβ2ミクログロブリン(2M2)抗体を用いて染色した。フローサイトメトリーを、BD−FACSCANTO(商標)(BD Biosciences)を用いて実施した。
ヒトHLAクラスIの発現を、一重ヒト化動物および二重ヒト化動物由来の細胞において検出し、他方で、β2ミクログロブリンの発現を、二重ヒト化マウス由来の細胞のみにおいて検出した(図8)。ヒトβ2mおよびヒトHLAクラスIの共発現は、ヒトβ2mの非存在下でのヒトHLAクラスI発現と比較して、細胞表面のヒトHLAクラスIの検出可能な量の増大をもたらした(図9;平均蛍光強度2370対1387)。
(実施例3.HLA−A2/H−2Kおよびヒト化β2ミクログロブリンを発現する遺伝子改変されたマウス由来のAPCによって提示されたFluペプチドおよびエプスタイン・バーウイルス(EBV)ペプチドに対する免疫応答)
数人のヒトドナー由来のPBMCを、HLA−A2発現ならびにfluペプチドおよびEBVペプチドに対する応答を惹起するその能力の両方について、スクリーニングした。単一のドナーを、その後の実験のために選択した。
選択されたドナーのPBMCから、ネガティブセレクションを用いてヒトT細胞を単離する。脾性非T細胞を、キメラHLA−A2/H−2Kについてヘテロ接合型でありヒト化β2−ミクログロブリン遺伝子についてヘテロ接合型であるマウスおよび野生型マウスから単離した。マウス由来の約50,000の脾性非T細胞を、抗ヒトIFNγ抗体でコーティングしたElispotプレートに添加した。Fluペプチド(10マイクロモル濃度)またはEBVペプチドのプール(各5マイクロモル濃度)を、添加した。Poly ICを、25マイクログラム/ウェルで添加し、ウェルを、37℃にて5% COにおいて3時間インキュベートした。ヒトT細胞(50,000)および抗ヒトCD28を、脾性非T細胞および上記ペプチドに添加し、ウェルを、40時間37℃にて5% CO2においてインキュベートし、その後、IFNγ Elispotアッセイを実施した。
図10に示されるように、ヒトT細胞は、その表面にキメラHLA−A2/H−2Kおよびヒト化β2ミクログロブリンを発現したマウスAPCによって提示された場合、fluペプチドおよびEBVペプチドに対する応答を惹起し得た。
均等物
当業者は、慣用的実験以上のものを用いることなく、本明細書中で記載される本発明の特定の実施形態の多くの均等物を認識するか、または確かめることができる。このような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが企図される。
本出願を通して挙げられた全ての非特許文献、特許出願および特許の全内容は、その全体が、本明細書中で参考として組み込まれる。

Claims (39)

  1. 内在性主要組織適合複合体I(MHC I)遺伝子座にキメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む非ヒト動物であって、
    該キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC Iポリペプチドのα1ドメイン、α2ドメイン、およびα3ドメインを含み、
    該キメラポリペプチドの非ヒト部分は、内在性非ヒトMHC Iポリペプチドの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含み、
    該非ヒト動物は、該キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドを発現する、非ヒト動物。
  2. 内在性非ヒトMHC I遺伝子座から、内在性非ヒトMHC Iポリペプチドの細胞外ドメインを発現しない、請求項1に記載の非ヒト動物。
  3. 前記ヌクレオチド配列は、内在性非ヒト調節エレメントに作動可能に連結している、請求項1または請求項2に記載の非ヒト動物。
  4. 前記キメラポリペプチドの前記ヒト部分はヒトリーダー配列を含む、請求項1または請求項2に記載の非ヒト動物。
  5. 前記ヒトMHC Iポリペプチドは、HLA−A、HLA−B、およびHLA−Cからなる群より選択される、請求項1〜のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
  6. 前記ヒトMHC Iポリペプチドは、HLA−Aポリペプチドである、請求項1〜のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
  7. 前記ヒトMHC Iポリペプチドは、HLA−A2ポリペプチドである、請求項に記載の非ヒト動物。
  8. 前記ヒトHLA−A2ポリペプチドは、HLA−A2.1ポリペプチドである、請求項に記載の非ヒト動物。
  9. 前記非ヒト動物は、げっ歯動物である、請求項1〜のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
  10. 前記非ヒト動物は、マウスである、請求項1〜のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
  11. 前記非ヒト動物はマウスであり、前記内在性非ヒトMHC I遺伝子座はマウスH−2K遺伝子座であり、前記内在性非ヒトMHC IポリペプチドはH−2Kである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
  12. 前記非ヒト動物はマウスであり、前記H−2K遺伝子座は、H−2Kb遺伝子座であり、前記内在性非ヒトMHC IポリペプチドはH−2Kbである、請求項11に記載の非ヒト動物。
  13. マウスのMHC I遺伝子座を改変して、キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドを発現させる方法であって、該内在性MHC I遺伝子座において、マウスMHC Iポリペプチドのα1ドメイン、α2ドメイン、およびα3ドメインをコードするヌクレオチド配列を、ヒトMHC Iポリペプチドのα1ドメイン、α2ドメイン、およびα3ドメインをコードするヌクレオチド配列で置き換える工程を含み、該マウスは、該マウスMHC Iポリペプチドの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを発現する、方法。
  14. 前記マウスは、内在性マウスMHC I遺伝子座から、前記マウスMHC Iポリペプチドの細胞外ドメインを発現しない、請求項13に記載の方法。
  15. 前記マウスMHC I遺伝子座は、H−2K遺伝子座であり、前記マウスMHC Iポリペプチドは、H−2Kポリペプチドである、請求項13または請求項14に記載の方法。
  16. 前記ヒトMHC IポリペプチドはHLA−Aポリペプチドである、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記置き換えは、単一のES細胞において行われ、該単一のES細胞は、マウス胚に導入されて、マウスを作製する、請求項13〜16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 内在性非ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子座にヒトβ2ミクログロブリンアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含む請求項1〜12のいずれか一項に記載の非ヒト動物であって、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現する、非ヒト動物。
  19. 前記非ヒト動物は、内在性非ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子座から、機能的な内在性非ヒトβ2ミクログロブリンポリペプチドを発現しない、請求項18に記載の非ヒト動物。
  20. 前記ヌクレオチド配列は、内在性非ヒトβ2ミクログロブリン調節エレメントに作動可能に連結している、請求項18または請求項19に記載の非ヒト動物。
  21. 前記ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2〜エクソン4に示されるヌクレオチド配列を含む、請求項18〜20のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
  22. 前記ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2、3、および4に示されるヌクレオチド配列を含む、請求項18〜21のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
  23. 前記ヌクレオチド配列は、げっ歯動物β2ミクログロブリン遺伝子のエクソン1に示されるヌクレオチド配列をさらに含む、請求項20〜22のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
  24. マウスのβ2ミクログロブリン遺伝子座を改変して、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現させることをさらに含む請求項13〜17のいずれか一項に記載の方法であって、該内在性マウスβ2ミクログロブリン遺伝子座において、マウスβ2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列で置き換える工程を含む、方法。
  25. 前記マウスは、内在性β2ミクログロブリン遺伝子座から、機能的なマウスβ2ミクログロブリンポリペプチドを発現しない、請求項24に記載の方法。
  26. 前記ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2〜エクソン4に示されるヌクレオチド配列を含む、請求項24または請求項25に記載の方法。
  27. 前記ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2、3、および4に示されるヌクレオチド配列を含む、請求項24〜26のいずれか一項に記載の方法。
  28. 前記改変された遺伝子座は、マウスβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン1のヌクレオチド配列を保持する、請求項24〜27のいずれか一項に記載の方法。
  29. 遺伝子改変されたマウスを作製する方法であって、
    第1マウスのMHC I遺伝子座を、キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドを発現するように改変する工程であって、該内在性マウスMHC I遺伝子座において、マウスMHC Iポリペプチドのα1ドメイン、α2ドメインおよびα3ドメインをコードするヌクレオチド配列を、ヒトMHC Iポリペプチドのα1ドメイン、α2ドメインおよびα3ドメインをコードするヌクレオチド配列で置き換える工程を含み、
    該キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドのマウス部分は、内在性マウスMHC Iポリペプチドの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む、工程;
    第2マウスのβ2ミクログロブリン遺伝子座を、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現するように改変する工程であって、該内在性マウスβ2ミクログロブリン遺伝子座において、マウスβ2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列で置き換える工程を含む工程;ならびに
    該第1マウスおよび該第2マウスを交配して、そのゲノムに、キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドをコードする第1ヌクレオチド配列、およびヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドをコードする第2ヌクレオチド配列を含む遺伝子改変されたマウスを生み出す工程であって、該遺伝子改変されたマウスは、該キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドおよび該ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンポリペプチドを発現する工程を含む、方法。
  30. 前記MHC I遺伝子座は、H−2K遺伝子座であり、前記ヒトMHC Iポリペプチドは、HLA−A2であり、前記マウスは、キメラHLA−A2/H−2Kポリペプチドを発現する、請求項29に記載の方法。
  31. 前記キメラHLA−A2/H−2Kポリペプチドは、前記HLA−A2ポリペプチドの細胞外ドメインならびにH−2Kポリペプチドの細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインを含む、請求項30に記載の方法。
  32. 前記第2ヌクレオチド配列は、ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン2、3、および4に示されるヌクレオチド配列およびマウスβ2ミクログロブリン遺伝子のエクソン1に示されるヌクレオチド配列を含む、請求項29〜31のいずれか一項に記載の方法。
  33. キメラヒト/非ヒトMHC Iポリペプチドをコードする配列を含むことによって特徴付けられる、核酸であって、該キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC Iポリペプチドのα1ドメイン、α2ドメインおよびα3ドメインを含み、該キメラポリペプチドの非ヒト部分は、非ヒトMHC Iポリペプチドの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む、核酸。
  34. キメラヒト/非ヒト動物MHC Iポリペプチドであって、該キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC Iポリペプチドのα1ドメイン、α2ドメインおよびα3ドメインを含み、該キメラポリペプチドの非ヒト部分は、非ヒト動物MHC Iポリペプチドの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む、ポリペプチド。
  35. 前記MHC Iポリペプチドは、ヒトまたはヒト化β2ミクログロブリンに非共有結合的に結合している、請求項34に記載のキメラヒト/非ヒト動物MHC Iポリペプチド。
  36. ヒトCTLエピトープを同定するための方法であって、
    請求項1〜12および18〜23のいずれか一項に記載の非ヒト動物を、推定CTLエピトープを含む抗原に曝露する工程、
    該非ヒト動物に免疫応答を惹起させる工程、
    該エピトープに結合するMHCクラスI拘束CD8+ CTLを該非ヒト動物から単離する工程、ならびに
    該MHCクラスI拘束CD8+ CTLによって結合された該エピトープを同定する工程
    を含むことにより特徴付けられる、方法。
  37. ヒト細胞によるその提示およびヒトリンパ球による結合がペプチド保有細胞の細胞傷害性をもたらす、HLAクラスI拘束ペプチドを同定するための方法であって、
    請求項1〜12および18〜23のいずれか一項に記載の非ヒト動物を、目的のペプチドを含む分子に曝露する工程、
    該目的のペプチドに結合するキメラヒト/非ヒトクラスI分子を発現する該非ヒト動物の細胞を単離する工程、
    HLAクラスI拘束細胞傷害性を導き得るヒトリンパ球に対して該細胞を曝露する工程、および
    ペプチド誘導型細胞傷害性を測定する工程
    を含むことにより特徴付けられる、方法。
  38. キメラヒト/非ヒト動物MHC Iポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むことにより特徴付けられる単離された細胞であって、該キメラポリペプチドのヒト部分は、ヒトMHC Iポリペプチドのα1ドメイン、α2ドメインおよびα3ドメインを含み、該キメラポリペプチドの非ヒト部分は、非ヒトMHC Iポリペプチドの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む、細胞。
  39. 請求項1〜12および18〜23のいずれか一項に記載の非ヒト動物に由来する組織。
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