本発明は、着用性やファッション性といった着用者の使用感を損なうことなく、装いを手軽に変化させることができ、折り畳み収容して携帯でき、更には食事用ナプキンとして使用できるなどの多機能性、安価に生産でき商品価格を抑えることができる経済性を兼ね備えた被服として利用可能な簡易ベスト服構造を提供するものである。
特に、本発明に特徴的には、略長手帯状に形成した簡易ベスト生地の長手方向略中央部を幅方向左右側縁から襞状にしわ寄せして厚手の重ね代としこの部分を着用者の首掛け部とすると共に、簡易ベスト生地の長手方向左右半部のうち一半部の幅方向一側縁にボタンを、他半部の幅方向一側縁に前記ボタン部分に連結する連結部を設け、しかも簡易ベスト生地の左右端部は略山形状として、簡易ベスト生地を首掛け部を介して首元から折返して胸元で着用した際に簡易ベスト生地の前記左右半部の上半部がスーツの襟元から露見してベスト風の外観を呈し、かつ、食事用のナプキン機能も兼用することである。
すなわち、本発明は、略長手帯状の簡易ベスト生地と、同記簡易ベスト生地の長手方向略中央部に形成され、幅方向左右側縁から襞状にしわ寄った厚手の重ね代よりなる着用者の首掛け部と、前記簡易ベスト生地の長手方向左右半部のうち一半部の幅方向一側縁に配置されたボタン群と、前記簡易ベスト生地の長手方向左右他半部の幅方向一側縁であって前記ボタン群と対応する位置に配置された連結部群と、前記簡易ベスト生地の左右端部に形成された略山形状の剣先部と、を備え、簡易ベスト生地を首掛け部を介して首元から折返して胸元で着用した際に簡易ベスト生地の前記左右半部の上半部がスーツの襟元から露見してベスト風の外観を呈し、かつ、食事用のナプキン機能も兼用することを特徴とする簡易ベストを提供するものとも言える。
本実施形態に係る簡易ベスト服構造は、略長手帯状に形成した簡易ベスト生地1枚のみで、同簡易ベスト生地を裁断することなく折返しや襞寄せをして縫成するだけで軽量で多機能性を有する簡易ベスト服を実現し、裁断に要する手間や裁断によって生じた不要な生地の発生を防止して低コスト化やエコ化が可能な構造であるとも言える。
ここで、簡易ベスト生地(以下、単に生地とも言う。)は、略長手帯状のものを採用する。この略長手帯状の生地は、着用者の身長や胸囲に応じて幅員や長さを変えることとしてもよい。例えば子供用、大人用、S〜Lサイズ等、着用者の体系に合わせて数パターンのものを採用することができる。
また、生地の全周端縁は、端縁に沿って1回折り又は2回折りを施して縫着する折り返し縫製が施されており、生地のほつれを防止をしている。
生地の素材は、特に限定されることはなく、例えば綿、絹、アクリル、ポリエステル、ウール、ナイロン、ポリウレタン、コットン、麻、レーヨン、ニット素材、紙のいずれか又はこれらの素材を組み合わせて採用してもよい。また、ベストの表地と裏地とで素材を違えるようにしてもよい。
首掛け部は、厚みを増して肉厚部としてもよい。この肉厚部を形成するにあたっては、例えば、複数枚の生地を重ねて縫合することにより構築してもよく、また、ベストの表又は裏の生地として使用されている生地に複数のタックを形成することで構築してもよい。
ボタンは、後述する連結部と対をなして係合できるものであればよく、例えばスナップ式、磁石式、ホック式、ファスナー式などのボタンを採用することができる。
〔実施例1〕
以下、本実施例に係る簡易ベスト服構造について、図面を参照しながら説明する。図1(a)は本実施例に係る簡易ベスト服構造を備えたベストの正面図を示し、図1(b)はその背面図である。図2は、簡易ベスト生地の型紙を中心から半分に折った状態を示し、図3及び図4は、ベストの左身頃側の正面図と背面図である。図5は、首掛け部における幅方向断面図である。なお、図2〜図4において、右身頃は左身頃と左右対照形としているため、ここでは左身頃側を例に説明し、右身頃側の図面を省略して説明する。
また、以下の説明において、簡易ベスト生地のうちボタンが実線で表れている側の面を正面とし、ボタンが実線で表れていない側の面を背面とする。さらに本実施形態において、「山折り」とはその最頂部が簡易ベスト生地の正面側へ隆起する折り方を、「谷折り」とはその最底部が簡易ベスト生地の背面側へ隆起する折り方を意味する。
図1に示すように、簡易ベスト服構造を備えるベストAは、略長手帯状に形成した簡易ベスト生地10(以下、単に生地と称す。)の長手方向略中央部10aを幅方向左右側縁10d、10eから襞状にしわ寄せして厚手の重ね代として形成した首掛け部20と、生地10の長手方向左半部10bの幅方向右側縁10eに設けたボタン31と、長手方向右半部10cの幅方向右側縁10eに設けたボタン部分に連結する連結部41と、を備えている。なお、本実施例に係る生地は、幅を約18cm、長さを約135cmとしている。
すなわち、ベストAのベスト本体11は、生地10の長手方向略中央部10aを所定の厚みを有して挟幅状に形成した首掛け部20と、首掛け部20の左側端縁から伸延してなる生地10の長手方向左半部10bの左身頃30と、首掛け部20の右側端縁から伸延してなる生地10の長手方向右半部10cの右身頃40と、を備えている。特に本実施例に係るベスト本体11は、裁断処理を不要とした1枚の略帯状の生地10で形成された一体的な構造として縫製されている。
生地10には、図2に示すように、首掛け部20や左右身頃30、40を形成するための折返し線が予め定められてる。なお以下の説明において、
より具体的には、図2(a)に示すように、生地10の型紙には、正面視において、幅方向略中央部から長手方向に沿って伸延する所定長さのタック谷折線23と、タック谷折線23と所定間隔を隔ててタック谷折線23と略平行で略同じ長さのタック山折線24と、タック谷折線23やタック山折線24の外方で長手左右方向に行くに従い幅方向に漸次拡開する2つの折返線25a、25bとが型として定められている。
2つの折返線25a、25bは、それぞれ所定間隔を隔ててタック谷折線23やタック山折線24と中途位置25cまで略平行とし、中途位置25cから長手左右方向に行くに従い幅方向に漸次拡開する線である。
各線の間隔幅は、所望とする首掛け部の幅や後述するタックや襞21aの幅に合わせて適宜調整することができ、本実施形態においてはタック谷折線23とタック山折線24との間隔幅を約1〜1.5cmとし、折返線25aと折返線25bとの間隔幅(それぞれの折返線25a、25bのうち、生地の長手方向中央位置10gから中途位置25cに至るまでの互いの平行部分の間の間隔幅)を約3〜4cmとしている。
首掛け部20は、着用者の首まわりに沿ってシャツの襟台と襟の間で挟持される部位であり、襞状にしわ寄せした複数の襞を有した厚手部分としている。
首掛け部20は、具体的には次のように形成する。まず、生地10の正面視において、図2に示すように、上側の折返線25aに沿って生地10を背面側に折り返す。この折返しにより、背面側に折返片12aが形成される。
次いで、生地10をタック山折線24に沿って山折りすると共にタック谷折線23に沿って谷折りする。そして、タックの隆起部分に相当するタック山折線24を幅方向左側縁10d(着用者の背中側に相当する側)に向けて倒すことで、1つのタックが形成される。
次いで、上側の折返線25aと同様に、下側の折返線25bに沿って生地10を背面側に折り返す。この折返しにより、背面側に折返片12bが形成される。
なお、この折返片12bは、後述する首掛け部20において着用者がベストAを着用した際に着用者の首部分と接触する生地であり、折返片12aを背面側で被包して背面側全域を覆う裏生地として機能する。
また、折返線25a、25bのうちそれぞれの中途位置25cから長手左右方向の幅方向左右側縁10d、10eに行くに従い幅方向に漸次拡開する部分を背面側に折り返すことで、後述する左右身頃30、40の左右身頃上半部30a、40aが形成される。
そして、タック谷折線23、タック山折線24、折返線25a、折返線25bに沿った折り目は、アイロン等によりプレス処理を施して折り返し状態を保持する。プレス処理によりタック谷折線23、タック山折線24、折返線25aに相当する部分は、それぞれ後述する襞21aの折曲部22a、折曲部22c、襞21bの折曲部22bとなる。
首掛け部20は、生地10の正面側から背面側にかけて順にタック、折返片12a、折返片12bとを重ね合わせ、それぞれを生地10の長手方向中央位置10gで幅方向に、また、2つの折返線25a、25bの中途位置25c同士の間を幅方向に沿って縫合することで形成する。
この2つの折返線25a、25bの中途位置25c同士の間を幅方向に沿って縫合することにより、首掛け部20の左右端25L、25Rが形成される。
このように形成した首掛け部20は、図5に示すように、幅方向断面視において、その倒し方向を同じにし、正面側から順に降下する階段状とした複数の襞(本実施形態では2つ)を有している。
このように首掛け部20は、図5に示すように、生地10の長手方向略中央部10aを幅方向左右側縁から襞状にしわ寄せした生地10の長手方向に沿う2つの襞を有し、各襞は倒し方向を幅方向他側縁側とすると共に幅方向一側縁側から幅方向他側縁側にむけて順次降下する階段状とした厚手の重ね代としている。
すなわち首掛け部20は、生地10の幅方向略中央部から長手方向に沿って谷折と山折とをして形成した襞21aと、折返片12aの折返しにより形成した襞21bと、折返片12bと、を正面側から背面側にかけて順次階段状に降下するように配置して構築した重畳構造25を有している。
このように構築した重畳構造25は、空気中の水分を生地10が吸湿したり発散することで襞21a、襞21bが伸縮し、首掛け部20の厚みを変位自在とする厚み伸縮機能を首掛け部20に付与している。
重畳構造25において2つの襞21a、21bは、それぞれの倒し方向(折曲部22a、22bの方向)を幅方向左側縁10d(着用者の背中側)に向けて同じ方向とし、それぞれの折曲部22a、22b、22c(折返線25a、タック山折線24、タック谷折線23)を階段状にずらして配置している。
このような重畳構造25を有する首掛け部20の厚みは、シャツの襟台と襟の間に首掛け部20を配置した際に、首掛け部20の正面と背面とがそれぞれシャツの襟台表面と襟の裏面に面接触可能な厚みとしている。
すなわち、首掛け部20の厚みは、生地10の幅方向左右側縁10d、10eから襞状にしわ寄せして形成した分、図5に示すように、生地10を少なくとも5枚以上に重ねた肉厚に形成している。
特に本実施例の首掛け部20は、上述の重畳構造25により厚み方向への伸縮機能を備えており、厚み伸縮範囲を約1〜5mmとしている。
また、首掛け部20の長さ、すなわち首掛け部20の左右端25L、25R同士の間隔は、着用者のうなじ回りに巻き掛け可能な長さとなるようにしており、本実施例においては約15〜25cmとしている。
また、首掛け部20の幅員は、シャツの襟台の幅員と略同じ幅員としつつ、図1に示すように、首掛け部20の中央位置10g(生地10の長手方向中央位置10g)程挟幅状とし、中央位置10gから左右端25L、25Rにかけて漸次拡開するように形成している。
次に、首掛け部20の左右側に設けた左右身頃30、40について説明する。左右身頃30、40は、首掛け部20を介して着用者の左右肩部から正面側に垂下させた際に着用者の胸元を除いた正面を覆う寸法で互いに左右対称形としている。
すなわち、左右身頃30、40は、図1〜図4に示すように、首掛け部20を中心に生地10の長手方向に沿って幅方向左右側縁10d、10eに向って漸次拡開する略大剣形状としている。
左右身頃30、40は、図1及び図2に示すように、首掛け部20の左右端25L、25Rを基端とし、左右端25L、25Rからそれぞれ幅方向左右側縁10d、10eに向って漸次拡開するように形成した略三角形状の左右身頃上半部30a、40aと、左右身頃上半部30a、40aから略方形状に伸延し、先端を略三角形状とした左右身頃下半部30b、40bと、により構成している。
左右身頃上半部30a、40aは、ベスト本体11において首から胸元へのカーブを形成する部位であり、上述の如くそれぞれの折返片12a、12bを折返線25a、25bに沿って背面側に折返して縫着することにより略三角形状に形成している。
左右身頃上半部30a、40aの上部の幅方向略中央位置には、図1〜図4に示すように、左右端25L、25Rから生地10の長手方向左右端に向けて長手に沿って伸延するタック21L、21Rがそれぞれ形成されている。
すなわち、生地10の長手方向略中央部10a近傍の長手方向左右半部には、生地10の幅方向略中央部で長手方向に沿って所定長さで伸延する襞(タック)が形成されている。
タック21L、21Rは、図3及び図4に示すように、首掛け部20の襞21aにおいて左右端25L、25Rを介して左右身頃上半部30a、40aの幅方向略中央部に伸延した部分であり、その折曲部22aを幅方向左右側縁10d側に向けて形成している。
このような構成によりタック21L、21Rを中心に左右側の生地が引き寄せられることで、左右身頃上半部30a、40aは幅方向正面側に隆起した略ドーム状となり、その背面側において着用者の胸板のかたちに沿う三次元的形状となる。
特に、正面側のタック21L、21Rの倒し方向が、幅方向左側縁10d(ベストAを着用した際に着用者の両肩側になる方向)としていることから、それぞれのタック21L、21Rを構成する上側と下側の生地のうち、下側の生地が肩側に配置されることとなり、首元のラインを保ったまま左右身頃上半部30a、40aを着用者の胸板のかたちに沿うように左右方向に伸延させることを可能としている。
左右身頃下半部30b、40bは、それぞれ着用者の腹部を覆う幅広の略帯状とし、その先端を略山形状とした剣先32、42とし、左身頃下半部30bの一側縁10eにボタン31を、右身頃下半部40bの一側縁10eであってボタン31が設けられた部分に連結する位置に連結部41を設けている。
剣先32は、図3及び図4に示すように、生地10の角部10h、10iをそれぞれ背面側で突き合わせるように生地10の長手方向左右端縁10jを折り返して略山形状とし、おり返して突き合わせた端縁10j同士を縫合することで生地10を2枚以上重ねた肉厚に形成している。
ボタン31は、生地10正面側の長手方向左半部10bの幅方向一側縁10eに、所定間隔を隔てて複数縫着している。すなわち、図1(a)及び図3に示すように、右身頃下半部40bと対向する左身頃下半部30bの一側縁10eに3つのボタン31を設けている。また、ボタン31の下部には図1(b)に示すように、磁性体31aが備えられている。
ボタン31と連結する連結部41は、磁性体31aと引き合う他の磁性体41aとしており、生地10の正面側の長手方向右半部10cのボタン31と対向する幅方向一側縁10eに所定間隔を隔てて3つ設けている。すなわち、左身頃下半部30bの一側縁10eと対向する右身頃下半部40bの一側縁10eに3つの磁性体41aを設けている。
なお、このように形成した左右身頃30、40の寸法は、着用者の体型に合わせて適宜調節することができるが、本実施形態では、左右端25L、25Rから剣先32、42の先端部までの長さを約50〜70cm、幅員を10〜18cmとしている。
このように構成したベストAを使用した際には以下のような効果がある。図6及び図7は、ベストAをベスト風に着用した例を示し、図8は、ベストAを食事用ナプキンとして着用した例を示す。
ベストAを着用した際には、図6に示すように、首掛け部20は、その肉厚によりシャツ100の襟部と面接触する。すなわち、首掛け部20の正面側に配置された襞21a、21bの上面がシャツ100の襟120の裏面に、また、折返片12bの背面がシャツ100の襟台110の表面に、それぞれ面接触することで首まわりを中心に左身頃30や右身頃40が一方に引っ張られてベストAが定位置からずれてしまうことを防止できる。
特に、首掛け部20の重畳構造25の伸縮機能により、折り畳まれた生地10の伸縮性も相俟って、首掛け部20の厚み方向に伸縮することで首掛け部20の肉厚を可変可能とし、首掛け部20がシャツの襟部に確実に面接触可能な厚みを維持することを可能としている。
また、重畳構造25において2つの襞21a、21bは、それぞれの折曲部22a、22b、22cを階段状にずらして配置しているため、各折曲部の影響(折曲部の厚み)が背面側に響かず、着用者が頸部に首掛け部20を巻き掛けた際の着心地を良くしている。
さらに、襞21a、21bは、それぞれの倒し方向(折曲部22a、22bの方向)を幅方向左側縁10d(着用者の背中側)に向けて同じ方向になるように形成しているため、首掛け部20をシャツ100の襟部の間に挟持させる際には、シャツの襟部に対して階段状の襞21a、21bが滑り込みやすくなる。
一方で、シャツ100の襟部の間に挟持させた状態においては、各襞21a、21bが、それぞれの折曲部22a、22bを下側に向けた状態でシャツの襟120に対して係合することとなり、首掛け部20をシャツの襟部の間にしっかりと挟持させた状態とし首掛け部20がシャツの襟からはみ出すことを防止している。
さらには、首掛け部20の幅員をその左右端25L、25Rに向かうに従い漸次幅広に形成していることから、以下のような効果がある。
すなわち、首掛け部20の略中央位置10gを着用者のうなじに沿った略垂直位置に配置することを容易としつつ、首掛け部20の略中央位置10gと幅広の左右端25L、25Rとの位置関係において首掛け部20の背面を首筋から肩にかけて面接触状態とした自然なねじれの位置を実現する。
この結果、首掛け部20は、左右身頃30、40を肩から胴体部分にかけて着用者の正面側に面接触させつつ自然に垂下させることを可能としている。
また、左右身頃30、40の左右身頃上半部30a、40aのそれぞれのタック21L、21Rによるドーム形状や身頃左右方向への伸延作用により着用者の体型に沿わせて着用者の胴前面へ確実にフィットさせ、ベストAの着心地を向上させている。
また、左右身頃30、40の左右身頃下半部30b、40bの剣先32、42は、生地10の角部10h、10i同士を突き合わせるように背面側に折り返し、長手方向左右端縁10jでのみ縫着して肉厚に形成されていることから、左右身頃30、40の裾が正面側への反り返しを防止するとともに、背面側でポケット状に拡開することで左右身頃下半部30b、40bを正面側に隆起させてベストAに重厚な印象を付与している。
また、ボタン31を連結部41に係合する際には、右身頃40と左身頃30の対向縁同士を近接、すなわち右身頃下半部40bの正面側の一側縁10eを左身頃下半部30bの背面側の一側縁10eに近づけるだけで、それぞれの磁性体31a、41a同士が引き合い連結するため、ボタン31と連結部41との係合作業を容易とすることができる。
そして図7に示すようにスーツを着用すれば、左右身頃上半部30a、40aがシャツ100の襟元から露見してベスト風の外観を呈することとなる。更には、スーツの前側を開いた状態で着用しても、左右身頃下半部30b、40bが露見するためベスト風の外観を保持することができる。
また、ベストAを収納する際には、首掛け部20の略中央位置10gで左右身頃30、40のそれぞれの背面同士を合わせるように折ることで、上述の磁性体31a、41bにより左右身頃30、40の背面同士を綺麗に重ね合わせてベストAの折り畳み作業を容易とすることができる。
なお、ベストAは、左右身頃30、40を重ね合わせて丈を3回折ることで、生地10の長手の長さの6分の1程度の長さ約9cm、厚さを1cm程度とした紳士用ハンケチ状にしてコンパクト化した収納状態とすることができ、スーツポケットに入れることも可能である。
また、図8に示すように、ベストAはスーツを脱いだ状態で会食や立食の時の食事用ナプキンとして用いることも可能である。
食事で衣服を汚す場所は、着用者の正面の中心から上下左右に約10cm程度の範囲である。すなわち、左右身頃30、40、特に左右身頃下半部30b、40bがナプキンの本体部分として作用し、不用意な食べこぼしや飛び跳ねにより礼装が汚れることを防止できる。
また、本実施形態のように、ベストAを裏返して左右身頃30、40の背面側を食事用ナプキンとして使用してもよく、食べこぼしや飛び跳ねにより左右身頃30、40が汚れたベストAを収納する際には、上述のように互いの左右身頃30、40同士を汚れた背面側同士を合わせて折り畳むことで包み込み、汚れやシミを外側に表出させることなく鞄に清潔に収納することができる。
また、ベストAの生地10の全表面に撥水加工を施しておけば、汚れた部分のふき取りを容易にして清潔さを保ち、会食後には再びベストAの装いとして利用することも可能である。
なお、撥水加工を施すに際しては、フッ素樹脂やシリコン樹脂、またはこれらの混合物を含有する撥水剤をベストAの全表面に塗着してもよいし、生地10の裏地を撥水性の生地、例えば上述のナイロンやポリエステルなどの樹脂性生地を縫着してもよい。
〔実施例2〕
次に簡易ベスト服構造としてアスコットタイ風とした構成について図面を参照しながら説明する。なお、実施例1と構成・構造を同じくする箇所は説明を省略する。図9は、本実施例に係るベストBの左身頃側の正面図を示し、図10は、首掛け部における幅方向断面を示す。また、図11は、本実施例に係る簡易ベスト服構造を備えるベストBをアスコットタイ風に着用した例を示す。
図11に示すように、ベストBは、首掛け部20を介して生地10を首元から折返し、シャツ100の襟元内に生地10の長手左右部をまとめて収容し、生地10の一部がシャツ100の襟元から露見してアスコットタイ風の外観を呈するように構成している。
すなわち、本実施形態に係るベストBには、簡易ベスト生地の長手方向左右半部において首掛け部の長手方向左右近傍位置であって、簡易ベスト生地を幅方向略中央部で襞状に重合した2つのタックを備え、同タックは、首掛け部を介して簡易ベスト生地を首元から折返してシャツの襟元内に簡易ベスト生地の長手左右部をまとめて収容した際にシャツの襟元から露見する位置に形成されている。
ベストBを構築するための生地10の型紙には、正面視において、幅方向略中央部から長手方向に沿う所定長さのタック谷折線と、タック谷折線と所定間隔を隔ててタック谷折線と略平行で略同じ長さのタック山折線と、が2つ生地10の幅方向略中央部で所定間隔を隔てて並行している。
そして、ベストBに係る首掛け部60は、図9に示すように、生地10の長手方向略中央部10aを幅方向左右側縁から襞状にしわ寄せした生地10の長手方向に沿う2つの襞を有し、各襞は倒し方向を幅方向他側縁側とすると共に、幅方向一側縁側から幅方向他側縁側にむけて順次降下する階段状とした厚手の重ね代とする共に首掛け部60の幅員を幅広とするように形成している。なお、本実施形態の首掛け部60の幅員は、約6〜8cmとしている。
すなわち首掛け部60は、首掛け部60の幅員を幅広に形成した分、図10に示すように、幅広とした2つのタックに相当する襞51a、襞51bとを、正面側から背面側にかけて順次階段状に下がるように配置して構築した重畳構造53を有している。なお、折返片12bは、背面側で襞51aの内部側に収納している。
また、生地10の長手方向略中央部10a近傍の長手方向左右半部は、生地10の幅方向略中央部で長手方向に沿って所定間隔を隔てて所定長さで伸延する2つの襞(タック)を有している。
より具体的には、左右身頃上半部30a、40aの上部にはそれぞれ、襞51a、51bの延長部分となる2つのタック50a、50bが首掛け部60の左右端25Lから生地10の所定間隔を隔てて生地の長手方向に伸延して形成されている。
このような構成により、2つのタック50a、50bを中心として正面側への隆起高さを増し、シャツ100の襟元から外方へ向けて膨出させて露出させる部分を大きくして首元からアスコットタイ風の外観を呈する効果を向上している。
さらには、正面側に形成された2つのタック50a、50bは、ネクタイの結び目のくぼみ、すなわちディンプルとして機能させることができ、ディンプルを形成するようなタイ結びをする手間を省いて手軽にスタイリッシュな装いを呈することができる。
また、首掛け部60が幅広に形成されているため、着用者の頸部から肩部にかけての湾曲面に生地を面接触させる面積を可及的に拡大させて、ベストBが正面位置から不意にずれてしまうことを防止できると共に、首掛け部60の左右側の左右身頃30、40を自然な状態で着用者の正面側に垂下させることができる。
なお、本実施例に係るベストBでは、特にアスコットタイ風の外観を呈する効果を増幅する簡易ベスト服構造を示したが、実施例1で説明したベストAであってもアスコットタイ風の外観を呈する効果を得ることができるのは勿論である。
〔実施例3〕
次に、上述した実施例に係る簡易ベスト服構造のうち、首掛け部の形状の変形をしたベストCについて図面を参照しながら説明する。図12は、裏地を取り付けた縫製により出来上りの形状に縫成したベストCの左身頃側を示す。
図12に示すように、本実施例に係るベストCの首掛け部70は、略長手帯状に形成した生地10の長手方向略中央部10aを幅方向一側縁から襞状にしわ寄せして厚手の重ね代として形成している。特にこの首掛け部70の生地は複数枚の生地を縫着して肉厚を増している。
また、襞状にしわ寄せをする幅方向一側縁10eは、ボタン31や連結部41を備える側の側縁とし、ベストCを着用した際に左右身頃30、40の左右身頃上半部30a、40aの胸元のカーブ形状を露出させる。また、幅方向他側縁10dが略直線状であるため、スーツを着用しない場合であってもよりシックなベスト風の外観を呈することを可能としている。
なお、上述してきた実施例1〜3は互いに構成を入れ替えても実施可能であり、同一の作用・効果を有することは勿論である。
このように本実実施形態に係る簡易ベスト服構造によれば、着用性やファッション性といった着用者の快適な着心地を損なうことなく、装いを手軽に変化させることができ、折り畳み収容して携帯することができ、会食や立食の際には食事用ナプキンとして使用できるなどの多機能性、安価に生産でき商品価格を抑えることができる経済性を兼ね備えた被服を提供することができる。
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。