以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大又は縮小して表示している。
なお、以下の形態において、例えば「基板上に」と記載された場合、基板の上に接するように配置される場合、又は基板の上に他の構成物を介して配置される場合、又は基板の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を表すものとする。
本実施形態では、液晶装置として、薄膜トランジスター(TFT:Thin Film Transistor)を画素のスイッチング素子として備えたアクティブマトリックス型の液晶装置を例に挙げて説明する。この液晶装置は、例えば、投射型表示装置(液晶プロジェクター)の光変調素子(液晶ライトバルブ)として好適に用いることができるものである。
(第1実施形態)
<液晶装置の構成>
図1は、液晶装置の構成を示す模式平面図である。図2は、図1に示す液晶装置のH−H’線に沿う模式断面図である。図3は、液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。以下、液晶装置の構成を、図1〜図3を参照しながら説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の液晶装置100は、第一基板(本実施形態では対向基板10)と第二基板(本実施形態では素子基板20)と液晶層15とを有している。第二基板は第一基板に対向配置され、対向配置された第一基板と第二基板とによって、液晶層15が挟持されている。対向基板10を構成する第一絶縁性基板10aと素子基板20を構成する第二絶縁性基板20aとは、例えば、ガラス基板、石英基板などの透明基板が用いられている。液晶装置100は透過型であり、入射光は第一基板から液晶層に導かれ、第一基板より光出射側に配置された第二基板から出射される。
素子基板20は対向基板10よりも大きく、両基板は、対向基板10の外周に沿って配置されたシール材14を介して接合されている。平面視で環状に設けられたシール材14の内側で、素子基板20と対向基板10との間には、正又は負の誘電異方性を有する液晶材料が封入されて液晶層15を構成している。液晶材料は、例えば、フェニル、ビフェニル、ターフェニル等を骨格としており、紫外光領域から可視光領域の波長帯域の光を吸収し、短波長ほど吸収が大きい。言い換えれば、可視光領域における液晶層15の光吸収率は、所定波長(450nm程度)から短波長側になるにつれて増加する。具体的には、液晶層15をなす液晶材料は、無配向状態で、500nm以上600nm以下の波長の光に対する吸収率より、400nm以上450nm以下の波長の光に対する吸収率の方が高くなっている。尚、液晶が無配向状態にあるとは、液晶が空間形状によって配向される事も電界による配向される事も生じていない状態をさす。具体的には、液晶が配向膜で挟まれて配向される事もなく、液晶に電界が印加されて配向される事もない状態である。従って、無配向状態での吸収率とは、液晶材料が材料その物として有する吸収率を意味し、配向膜も電界もない状態で測定される光の吸収率である。液晶材料には、可視光の青色光、緑色光、赤色光のうち最も短波長である青色光の波長から短波長側に向かって徐々に光吸収率が増加する材料が使われている。
シール材14は、例えば熱硬化性又は紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤が採用されている。シール材14には、一対の基板の間隔を一定に保持するためのスペーサー(図示省略)が混入されている。
シール材14の内縁より内側には、複数の画素Pが配列した表示領域Eが設けられている。表示領域Eは、表示に寄与する複数の画素Pに加えて、複数の画素Pを囲むように配置されたダミー画素を含むとしてもよい。又、図1及び図2では図示を省略したが、表示領域Eにおいて複数の画素Pをそれぞれ平面的に区分する遮光膜(ブラックマトリックス;BM)が対向基板10に設けられている。
素子基板20の1辺部に沿ったシール材14と該1辺部との間に、データ線駆動回路22が設けられている。又、該1辺部に対向する他の1辺部に沿ったシール材14と表示領域Eとの間に、検査回路25が設けられている。さらに、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿ったシール材14と表示領域Eとの間に走査線駆動回路24が設けられている。該1辺部と対向する他の1辺部に沿ったシール材14と検査回路25との間には、2つの走査線駆動回路24を繋ぐ複数の配線29が設けられている。
対向基板10における環状に配置されたシール材14と表示領域Eとの間には、遮光膜18(見切り部)が設けられている。遮光膜18は、例えば、遮光性の金属あるいは金属酸化物などからなり、遮光膜18の内側が複数の画素Pを有する表示領域Eとなっている。なお、図1では図示を省略したが、表示領域Eにおいても複数の画素Pを平面的に区分する遮光膜が設けられている。
これらデータ線駆動回路22、走査線駆動回路24に繋がる配線は、該1辺部に沿って配列した複数の外部接続用端子61に接続されている。以降、該1辺部に沿った方向をX方向とし、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿った方向をY方向として説明する。
図2に示すように、第二絶縁性基板20aの液晶層15側には、画素Pごとに設けられた透光性の画素電極27およびスイッチング素子である薄膜トランジスター(TFT:Thin Film Transistor、以降、「TFT30」と呼称する)と、信号配線と、これらを覆う第二配向膜28とが形成されている。第二配向膜28は、後述する様に、本実施形態では、無機膜で第八透光性膜として機能している。
又、TFT30における半導体層に光が入射してスイッチング動作が不安定になることを防ぐ遮光構造が採用されている。本発明における素子基板20は、少なくとも画素電極27、TFT30、第二配向膜28を含むものである。
第一基板は、第一透光性膜と第二透光性膜と第三透光性膜とを含んでいる。第二透光性膜は、第一透光性膜と液晶層15との間に配置され、第一透光性膜より屈折率が高い導電性の膜である。第三透光性膜は、第二透光性膜と液晶層15との間に配置され、第二透光性膜より屈折率が低い膜である。本実施形態では、第一基板である対向基板10の液晶層15側の表面に、遮光膜18と、これを覆うように成膜された平坦化膜33と、対向電極31と、第一配向膜32とが設けられている。平坦化膜33は、酸化珪素膜などの透明絶縁膜からなり、その屈折率は凡そ1.46程度である。本実施形態で、平坦化膜33は第一透光性膜として機能している。対向電極31はインジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)等からなり、その屈折率は凡そ1.9程度である。対向電極31は平坦化膜33(第一透光性膜)を覆うように設けられており、導電性を有する透光性膜である。従って、対向電極31は、本実施形態では、導電性の第二透光性膜である。第一配向膜32は、対向電極31(第二透光性膜)を覆い、無機材料からなる。具体的には、第一配向膜32は、酸化珪素膜などの透明絶縁膜からなり、その屈折率は凡そ1.46程度である。本実施形態で、第一配向膜32は第三透光性膜として機能している。
遮光膜18は、図1に示すように、表示領域Eを取り囲むと共に、平面的に走査線駆動回路24、検査回路25と重なる位置に設けられている(図示簡略)。これにより対向基板10側からこれらの駆動回路を含む周辺回路に入射する光を遮蔽して、周辺回路が光によって誤動作することを防止する役目を果たしている。又、不必要である迷光が表示領域Eに入射しないように遮蔽して、表示領域Eの表示における高いコントラストを確保している。
平坦化膜33(第一透光性膜)は、例えば酸化珪素膜などの無機材料からなり、光透過性を有して遮光膜18を覆うように設けられている。このような平坦化膜33(第一透光性膜)の形成方法としては、例えばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いて成膜する方法が挙げられる。
対向電極31(第二透光性膜)は、例えばITOやインジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:IZO)などの透明導電膜からなり、平坦化膜33(第一透光性膜)を覆うと共に、図1に示すように対向基板10の四隅に設けられた上下導通部26により素子基板20側の配線に電気的に接続している。
画素電極27を覆う第二配向膜28と、対向電極31を覆う第一配向膜32とは、液晶装置100の光学設計に基づいて選定される。例えば、気相成長法を用いてSiOx(酸化珪素膜)などの無機材料を成膜して、第一配向膜32や第二配向膜28としても良い。これらの無機配向膜は、負の誘電異方性を有する液晶分子を略垂直に配向させる事ができる。
このような液晶装置100は透過型であって、電圧が印加されない時の画素Pの透過率が電圧印加時の透過率よりも大きいノーマリーホワイトや、電圧が印加されない時の画素Pの透過率が電圧印加時の透過率よりも小さいノーマリーブラックモードの光学設計が採用される。光の入射側と出射側とにそれぞれ偏光素子が光学設計に応じて配置されて用いられる。
図3に示すように、液晶装置100は、少なくとも表示領域Eにおいて互いに絶縁されて直交する複数の走査線3aおよび複数のデータ線6aと、容量線3bとを有する。走査線3aが延在する方向がX方向であり、データ線6aが延在する方向がY方向である。
走査線3aとデータ線6aの交差する領域に対応するように画素Pが設けられ、画素Pの画素回路は、画素電極27と、TFT30と、容量素子16によって構成されている。
走査線3aはTFT30のゲートに電気的に接続され、データ線6aはTFT30のデータ線側ソースドレイン領域(ソース領域)に電気的に接続されている。画素電極27は、TFT30の画素電極側ソースドレイン領域(ドレイン領域)に電気的に接続されている。
データ線6aは、データ線駆動回路22(図1参照)に接続されており、データ線駆動回路22から供給される画像信号D1,D2,…,Dnを画素Pに供給する。走査線3aは、走査線駆動回路24(図1参照)に接続されており、走査線駆動回路24から供給される走査信号SC1,SC2,…,SCmを各画素Pに供給する。
データ線駆動回路22からデータ線6aに供給される画像信号D1〜Dnは、D1〜Dnを対応するデータ線に1つずつ順に供給してもよく、互いに隣り合う複数のデータ線6aを1つのブロックとした複数のブロックに分割し、各々のブロックに対して画像信号D1〜Dnの一部を同時に供給してもよい。走査線駆動回路24は、走査線3aに対して、走査信号SC1〜SCmを所定のタイミングで供給する。
液晶装置100は、スイッチング素子であるTFT30が走査信号SC1〜SCmの入力により一定期間だけオン状態とされることで、データ線6aから供給される画像信号D1〜Dnが所定のタイミングで画素電極27に書き込まれる構成となっている。そして、画素電極27を介して液晶層15に書き込まれた所定レベルの画像信号D1〜Dnは、画素電極27と液晶層15を介して対向配置された対向電極31との間で一定期間保持される。
画素に供給された画像信号D1〜Dnの保持特性を向上させるため、画素電極27と対向電極31との間に形成される液晶容量と並列に容量素子16が接続されている。容量素子16は、TFT30の画素電極側ソースドレイン領域と容量線3bとの間に設けられている。容量素子16は、2つの容量電極の間に誘電体層を有するものである。
図4は、液晶装置の画素の構造を示す模式断面図である。以下、画素の構造を、図4を参照しながら説明する。なお、図4は、各構成要素の断面的な位置関係を示すものであり、明示可能な尺度で表されている。
図4に示すように、第二基板である素子基板20は、第四透光性膜(本実施形態では第2層間絶縁層11b)と導電性の第五透光性膜(本実施形態では第一画素電極27a)と第六透光性膜(本実施形態では第一絶縁膜27b)と導電性の第七透光性膜(本実施形態では第二画素電極27c)と第八透光性膜(本実施形態では第二配向膜28)とを含んでいる。第五透光性膜(第一画素電極27a)は、第四透光性膜(第2層間絶縁層11b)と液晶層15との間に配置され、第四透光性膜より屈折率が高い導電性の膜である。第六透光性膜(第一絶縁膜27b)は、第五透光性膜(第一画素電極27a)と液晶層15との間に配置され、第五透光性膜より屈折率が低い膜である。第七透光性膜(第二画素電極27c)は、第六透光性膜(第一絶縁膜27b)と液晶層15との間に配置され、第六透光性膜より屈折率が高い導電性の膜である。第八透光性膜(第二配向膜28)は、第七透光性膜(第二画素電極27c)と液晶層15との間に配置され、第七透光性膜より屈折率が低い膜である。画素電極27は導電性の第五透光性膜と導電性の第七透光性膜とを含んでおり、第五透光性膜と第七透光性膜とは電気的に接続されている。
第二絶縁性基板20a上には、走査線3aと、走査線3aを覆う第1層間絶縁層11aと、TFT30と、TFT30を覆う第2層間絶縁層11bと、画素電極27と、画素電極27を覆う第二配向膜28とが順に形成されている。第2層間絶縁層11bは、材料がSiO2であり、膜厚が500nmである。
走査線3aは、TFT30の半導体層30aを遮光する遮光膜を兼ねており、例えばAl、Ti、Cr、W、Ta、Moなどの金属のうちの少なくとも1つを含む金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、ナイトライド、あるいはこれらが積層されたものを用いることができる。
TFT30の半導体層30aは、例えばポリシリコンにリンなどの不純物が導入されて形成されたLDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、第1層間絶縁層11a上に形成されている。半導体層30aを覆うゲート絶縁膜を挟んだチャネル領域に対向する位置にゲート電極30gが形成されている。ゲート電極30gと走査線3aとは第1層間絶縁層11aを貫通するコンタクトホール(図示省略)を介して電気的に接続されている。
第1層間絶縁層11aとTFT30を覆う様に第2層間絶縁層11bが形成されており、第2層間絶縁層11bが、画素電極27と平面視で重なる領域にて、第四透光性膜となっている。第1層間絶縁層11aは、例えば酸化珪素膜などの無機材料からなる。第2層間絶縁層11bは、プラズマCVD法などを用いて成膜される。
半導体層30aのデータ線側ソースドレイン領域とデータ線6aとが第2層間絶縁層11bに形成されたコンタクトホールCNT11を介して電気的に接続されている。コンタクトホールCNT11内に形成された導電層がソース電極21として機能している。
半導体層30aの画素電極側ソースドレイン領域と画素電極27とが第2層間絶縁層11bに形成されたコンタクトホールCNT12を介して電気的に接続されている。
画素電極27は、導電性の第一画素電極27a(第五透光性膜)と、第一画素電極27aよりも屈折率が小さい絶縁性の第一絶縁膜27b(第六透光性膜)と、第一絶縁膜27bよりも屈折率が大きい導電性の第二画素電極27c(第七透光性膜)とが順に積層されたものである。つまり、第一絶縁膜27bは、画素電極27の間の領域にも延設され、第一画素電極27a上と隣り合う画素の第一画素電極27a上とに連続的に形成されている。
第一画素電極27a及び第二画素電極27cは、例えば、ITOやIZOなどの透明導電膜を用いて形成することができ、屈折率は1.9程度である。第一絶縁膜27bは、例えば、透光性を有する酸化珪素膜などの無機絶縁材料を用いて形成することができ、隣り合う導電性の第一画素電極27aを覆って形成されている。酸化珪素膜の屈折率は1.46程度である。このように屈折率が異なる透光性膜を積層することにより光反射防止構造が構成されている。尚、画素電極27の各層の最適な膜厚については後述する。
第二配向膜28(第八透光性膜)は、気相成長法を用いてSiOx(酸化珪素膜)などの無機材料を成膜することにより形成することができる。第二配向膜28(第八透光性膜)の膜厚は、本実施形態ではおよそ70nmであるが、これに関しても後に詳述する。
素子基板20に対向配置された対向基板10の液晶層15側には、平坦化膜33(第一透光性膜)と、対向電極31(第二透光性膜)と、無機材料からなる第一配向膜32(第三透光性膜)とが順に形成されている。平坦化膜33(第一透光性膜)は、SiO2であり、膜厚が500nmである。対向電極31(第二透光性膜)は、例えば、ITOなどの透明導電膜を用いて形成することができる。
対向電極31(第二透光性膜)の膜厚は、変調すべき光の波長帯域において透過率が最大になるように設定されている。具体的には、液晶装置100で主に変調される光の波長(以降、これを第二波長λ2と称する)対して、対向電極31(第二透光性膜)の光学膜厚は、λ2/2の自然数倍になるように設定されている。ある膜の光学膜厚とは、その膜の物理膜厚(実際の空間的距離を表す膜厚)とその膜の屈折率(複素屈折率の実数部)との積である。尚、本明細書にて単に「膜厚」と記した場合、それは物理膜厚を意味している。従って、第二透光性膜の屈折率をn2、第二透光性膜の物理膜厚をd2、とした際に、第二波長λ2に対して、1以上の整数m6を用いて、数式6の関係式を満たす事が好ましい。
こうする事で、第一透光性膜と第二透光性膜との界面での理論上の反射光と、第二透光性膜と第三透光性膜との界面での理論上の反射光と、は効率的に打ち消し合う。この結果、現実には両界面からの第二波長の光の反射が小さくなり、第二波長の光は効率的に両界面を通過する事ができる。その結果、液晶装置100から出射される第二波長の光の輝度を向上させることができる。
例えば、緑色光の変調を行う液晶装置100であれば、緑色光の波長帯域において透過率が最大になるように第二波長の光は設定される。緑色光の波長帯域は495nm〜570nm程度であるので、第二波長λ2を500nm以上600nm以下とする。好適には第二波長λ2を560nmとする。この場合、緑色光で第一基板の透過率を最大にするには(緑色の入射光を液晶層15に最も効率的に入射させるには)、第二透光性膜の光学膜厚を280nmの1以上の整数倍に設定する。一例として、対向電極31(第二透光性膜)に屈折率が2.0のITOを用いた場合、対向電極31(第二透光性膜)の物理膜厚d2は、140nmにすることで(数式6でn2=2.0、λ2=560nm、m6=1)、液晶装置100からの緑色の出射光の輝度を向上させることができる。
同様に、赤色光の変調を行う液晶装置100の場合はλ2=630nmとして対向電極31(第二透光性膜)の膜厚を設定する。白色光の変調を行う液晶装置100の場合は、緑色で人間の視感度が一番高いので、第二波長λ2を500nm以上600nm以下とする。こうすると、第二波長の光が、人間の視感度が一番高い光となるので、明るい表示がなされる液晶装置を実現する事ができる。
無機材料からなる第一配向膜32(第三透光性膜)は、素子基板20側の第二配向膜28(第八透光性膜)と同様に気相成長法を用いてSiOx(酸化珪素膜)などの無機材料を成膜することにより形成することができる。無機材料からなる第一配向膜32(第三透光性膜)の膜厚はおよそ70nmである。
このような透過型の液晶装置100において、例えば、対向基板10側から入射した光は、対向電極31(第二透光性膜)、液晶層15、画素電極27を透過して素子基板20側から出射される。
次いで、図4(b)を参照して、画素電極27を構成する各層の最適な膜厚について説明する。第五透光性膜(第一画素電極27a)の屈折率をn5、第五透光性膜の物理膜厚をd5、とし、第六透光性膜(第一絶縁膜27b)の屈折率をn6、第六透光性膜の物理膜厚をd6、とし、第七透光性膜(第二画素電極27c)の屈折率をn7、第七透光性膜の物理膜厚をd7、とした際に、第一波長λ1に対して、0以上の整数m1と0以上の整数m2とを用いて、これらの膜は、数式7の関係式を満たす様に屈折率と膜厚とを設定する。なお、プロセス誤差程度の膜厚のずれは、式を満たすものとする。
ここで、第一波長λ1は液晶装置100を代表する光の波長である。液晶装置100を代表する光とは、液晶材料の劣化を促進しやすい光としても良いし、或いは、画素電極27の透過率が低い波長の光としても良い。具体的には、第一波長λ1は400nm以上450nm以下の波長領域の光とする事ができる。400nm以上450nm以下の波長領域の光は液晶材料を劣化させやすい。加えて、単層のITOや単層のIZO等の単層透明導電膜では、400nm以上450nm以下の波長領域で、反射率が上昇し、透過率が低下する。この反射率の上昇と透過率の低下を補償する目的で、第一波長λ1を400nm以上450nm以下の波長としても良い。本実施形態では、この目的に沿い、第一波長λ1を400nm以上450nm以下の波長としている。
この他に、第一波長λ1を液晶装置100に応じて変えても良い。例えば、赤色専用の液晶装置100ならば、第一波長λ1を赤色とし、一例としてλ1=630nmとしても良い。又、液晶装置100を代表する光は、緑色専用の液晶装置100ならば、緑色とし、一例として、λ1=550nmとしても良い。又、液晶装置100を代表する光は、青色専用の液晶装置100ならば、青色とし、例えばλ1=460nmとしても良い。更に、赤色専用の液晶装置100と緑色専用の液晶装置100とで、液晶装置100を代表する光を兼用させて緑色とし、例えばλ1=550nmとしても良い。更に、白黒の液晶装置100や、赤色カラーフィルターや緑色カラーフィルターや青色カラーフィルターなどを備えたカラーの液晶装置100では、液晶装置100を代表する光として、人間の視感度が一番高い緑色とし、例えばλ1=550nmとしても良い。
数式7の関係を満たすと、液晶層15で変調された。第一波長λ1の光Lでは、反射光L1と反射光L2とが小さいので、効率的に画素電極27を透過する様になる。以下、この原理を説明する。
まず、反射光L2に関して説明する。第一波長λ1の光Lで、第一画素電極27aと第2層間絶縁層11bとの界面にて反射する反射光と、第二画素電極27cと第一絶縁膜27bとの界面にて反射する反射光と、が干渉により小さくなる。即ち、反射光L2が小さくなる。第一画素電極27aと第2層間絶縁層11bとの界面も、第二画素電極27cと第一絶縁膜27bとの界面も、屈折率が大きい媒質から屈折率の小さい媒質への界面となるので、両界面にて反射は自由端反射となり反射により位相は変わらない。一方、第一画素電極27aの光学膜厚と第一絶縁膜27bの光学膜厚との和が、(1/4+m1/2)λ1であるので、第一画素電極27aと第2層間絶縁層11bとの界面での理論上の反射光と、第一絶縁膜27bと第二画素電極27cとの界面での理論上の反射光とで、位相差はπとなり、互いに干渉して打ち消し合う。実際は、この境界条件から、第一画素電極27aと第2層間絶縁層11bとの界面及び第一絶縁膜27bと第二画素電極27cとの界面での反射が禁じられるので、反射光L2は小さくなり、その結果、第一波長λ1の光Lの透過率が高くなる。
次に、反射光L1に関して説明する。第一波長λ1の光Lで、第一画素電極27aと第一絶縁膜27bとの界面にて反射する反射光と、第二画素電極27cと第二配向膜28との界面にて反射する反射光と、が干渉により小さくなる。即ち、反射光L1が小さくなる。第一画素電極27aと第一絶縁膜27bとの界面も、第二画素電極27cと第二配向膜28との界面も、屈折率が小さい媒質から屈折率の大きい媒質への界面となるので、両界面にて反射は固定端反射となり、反射により位相はπ(180°)ずれる。一方、第二画素電極27cの光学膜厚と第一絶縁膜27bの光学膜厚との和が、(1/4+m2/2)λ1であるので、第一画素電極27aと第一絶縁膜27bとの界面での理論上の反射光と、第二画素電極27cと第二配向膜28との界面での理論上の反射光とで、位相差はπとなり、互いに干渉して打ち消し合う。実際は、この境界条件から、第一画素電極27aと第一絶縁膜27bとの界面及び第二画素電極27cと第二配向膜28との界面での反射が禁じられるので、反射光L1は小さくなり、その結果、第一波長λ1の光Lの透過率が高くなる。
第五透光性膜の屈折率n5と第五透光性膜の物理膜厚d5と第六透光性膜の屈折率n6と第六透光性膜の物理膜厚d6と第七透光性膜の屈折率n7と第七透光性膜の物理膜厚d7とは、第一波長λ1に応じて数式7を満たす様に設定する。
一例として、第一波長λ1を450nmとし、この波長で透過率が向上するようにした場合を考える。第一波長λ1が450nmとは、青色光のピーク波長より低い波長である。ITOを用いて第一画素電極27aと第二画素電極27cとを形成すると、屈折率n5及び屈折率n7はおよそ2.0となる。酸化珪素膜を用いて第一絶縁膜27bを形成すれば、屈折率n6はおよそ1.46となる。ここで、導電性の第一画素電極27aと導電性の第二画素電極27cの物理膜厚をそれぞれ20nmとすると、上記数式(6)を満たすには、m=0の場合、第一絶縁膜27bの物理膜厚はおよそ50nmとなる。なお、m=1の場合は、第一絶縁膜27bの物理膜厚はおよそ204nmとなる。
上記のような透明積層膜構成(第一画素電極27a、第一絶縁膜27b、第二画素電極27c)とされる画素電極27は、発明者による実験結果によれば、可視光波長領域(400nm〜700nm)に亘って96%以上の光の透過率を確保できることが確認されている。次にこの事を、図10を参照して、説明する。
図10は本実施形態の効果を説明する図である。図10には、上述の第一基板側の構成(平坦化膜33と、140nm厚のITOからなる対向電極31と、第一配向膜32と、が積層された構成)と、第二基板側の構成(20nm厚のITOからなる第一画素電極27aと、50nm厚の第一絶縁膜27bと、20nm厚のITOからなる第二画素電極27cと、が積層された構成)と、の透過率(縦軸)と波長(横軸)との関係が描かれている。
本実施形態では、第一基板側の構成で第二波長λ2を560nmとしているので、入射光の内で560nm付近の光の第一基板での透過率が向上している。その一方、第一基板側の構成では、ITOからなる対向電極31が単層である為に、青色光のピーク波長より低い波長(450nm程度)では透過率が低くなっている。具体的には、480nm以下の入射光に対しては透過率が90%未満となり、430nm以下の入射光に対しては透過率が80%未満となる。そのため、変調すべき光の波長帯域の光の透過率を確保しながら、液晶材料がダメージを受けやすい短波長の光が、液晶層15に到達するのを抑制することができ、液晶装置の寿命を向上させることができる。
第二基板側の構成に関しては、本実施形態では、第一波長λ1を450nmとしているので、400nmから500nmの帯域の光の透明積層膜での反射が減り、その結果、この帯域での透過率が向上し、液晶材料がダメージを受けやすい短波長の光が液晶層15に再入射するのを防ぐことができる。この様に、第一波長λ1を450nmとした透明積層膜構成を為す事で、青色光のピーク波長より低い波長から可視光波長領域にかけての広い波長領域において、画素電極27での反射率を4%未満とすることができる。このため、第一波長λ1を450nmとして短波長の光の透過率を高めて耐光性を向上させつつも、液晶装置100を代表する光の波長の輝度が低下するのを抑制できる。
次いで、本実施形態における第一画素電極27aと第二画素電極27cの電気的な接続について説明する。本実施形態において、第一画素電極27aと第二画素電極27cとは、コンタクトホールCNT17を介して電気的に接続されている。
第二画素電極27cのみがTFTの画素電極側ソースドレイン電極と電気的に接続されている構成では、第一画素電極27aがフローティング状態となり、液晶層15に適正な駆動電位が与えにくくなる。本実施形態のように、第一画素電極27aと第二画素電極27cとを電気的に接続することにより、最上層の導電膜である第二画素電極27cに画素電極側ソースドレイン電極の電位が印加され、液晶装置100を適切に駆動することができる。
<電子機器の構成>
次に、本実施形態の電子機器としての投射型表示装置について、図5を参照して説明する。図5は、上記した液晶装置を備えた投射型表示装置の構成を示す概略図である。
図5に示すように、本実施形態の投射型表示装置1000は、システム光軸Lに沿って配置された偏光照明装置1100と、光分離素子としての2つのダイクロイックミラー1104,1105と、3つの反射ミラー1106,1107,1108と、5つのリレーレンズ1201,1202,1203,1204,1205と、3つの光変調手段としての透過型の液晶ライトバルブ1210,1220,1230と、光合成素子としてのクロスダイクロイックプリズム1206と、投射レンズ1207とを備えている。
偏光照明装置1100は、超高圧水銀灯やハロゲンランプなどの白色光源からなる光源としてのランプユニット1101と、インテグレーターレンズ1102と、偏光変換素子1103とから概略構成されている。
ダイクロイックミラー1104は、偏光照明装置1100から出射された偏光光束のうち、赤色光(R)を反射させ、緑色光(G)と青色光(B)とを透過させる。もう1つのダイクロイックミラー1105は、ダイクロイックミラー1104を透過した緑色光(G)を反射させ、青色光(B)を透過させる。
ダイクロイックミラー1104で反射した赤色光(R)は、反射ミラー1106で反射した後にリレーレンズ1205を経由して液晶ライトバルブ1210に入射する。ダイクロイックミラー1105で反射した緑色光(G)は、リレーレンズ1204を経由して液晶ライトバルブ1220に入射する。ダイクロイックミラー1105を透過した青色光(B)は、3つのリレーレンズ1201,1202,1203と2つの反射ミラー1107,1108とからなる導光系を経由して液晶ライトバルブ1230に入射する。
液晶ライトバルブ1210,1220,1230は、クロスダイクロイックプリズム1206の色光ごとの入射面に対してそれぞれ対向配置されている。液晶ライトバルブ1210,1220,1230に入射した色光は、映像情報(映像信号)に基づいて変調されクロスダイクロイックプリズム1206に向けて出射される。
このプリズムは、4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が合成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ1207によってスクリーン1300上に投射され、画像が拡大されて表示される。
液晶ライトバルブ1210は、上述した液晶装置100が適用されたものである。液晶装置100は、色光の入射側と出射側とにおいてクロスニコルに配置された一対の偏光素子の間に隙間を置いて配置されている。他の液晶ライトバルブ1220,1230も同様である。
このような投射型表示装置1000によれば、液晶ライトバルブ1210,1220,1230として、明るい表示が可能な液晶装置100を用いているので、高い表示品質を実現することができる。
本実施形態では、赤色光を変調する液晶ライトバルブ1210、緑色光を変調する液晶ライトバルブ1220、青色光を変調する液晶ライトバルブ1230に上述の液晶装置100(第一波長λ1=450nm、第二波長λ2=560nm)が用いられているが、これに限られず、以下のような組み合わせなども、可能である。
(組み合わせ1)
赤色光を変調する液晶ライトバルブ1210では、第二波長λ2を600nmから660nmの範囲とし(最適にはλ2=630nm)、第一波長λ1を500nmから600nmの範囲とする(最適にはλ1=560nm)。これにより、液晶材料の劣化が抑制され、赤色光が明るく表示される。緑色光を変調する液晶ライトバルブ1220では、第二波長λ2を500nmから600nmの範囲とし(最適にはλ2=560nm)、第一波長λ1を500nmから600nmの範囲とする(最適にはλ1=560nm)。これにより、液晶材料の劣化が抑制され、緑色光が明るく表示される。青色光を変調する液晶ライトバルブ1230では、第二波長λ2を500nmから600nmの範囲とし(最適にはλ2=560nm)、第一波長λ1を400nmから500nmの範囲とする(最適にはλ1=450nm)。これにより、液晶材料の劣化が抑制され、青色光が明るく表示される。組み合わせ1では、第二基板が赤色光を変調する液晶ライトバルブ1210と緑色光を変調する液晶ライトバルブ1220とで共通とされるので、製造と製造管理が容易となる。
(組み合わせ2)
赤色光を変調する液晶ライトバルブ1210では、第二波長λ2を500nmから600nmの範囲とし(最適にはλ2=560nm)、第一波長λ1を500nmから600nmの範囲とする(最適にはλ1=560nm)。これにより、液晶材料の劣化が抑制される。緑色光を変調する液晶ライトバルブ1220では、第二波長λ2を500nmから600nmの範囲とし(最適にはλ2=560nm)、第一波長λ1を500nmから600nmの範囲とする(最適にはλ1=560nm)。これにより、液晶材料の劣化が抑制され、緑色光が明るく表示される。青色光を変調する液晶ライトバルブ1230では、第二波長λ2を500nmから600nmの範囲とし(最適にはλ2=560nm)、第一波長λ1を400nmから500nmの範囲とする(最適にはλ1=450nm)。これにより、液晶材料の劣化が抑制され、青色光が明るく表示される。組み合わせ2では、赤色光を変調する液晶ライトバルブ1210と緑色光を変調する液晶ライトバルブ1220とが共通とされるので、製造と製造管理が容易となる。
(組み合わせ3)
赤色光を変調する液晶ライトバルブ1210では、第二波長λ2を600nmから660nmの範囲とし(最適にはλ2=630nm)、第一波長λ1を600nmから660nmの範囲とする(最適にはλ1=630nm)。これにより、液晶材料の劣化が抑制され、赤色光が明るく表示される。緑色光を変調する液晶ライトバルブ1220では、第二波長λ2を500nmから600nmの範囲とし(最適にはλ2=560nm)、第一波長λ1を500nmから600nmの範囲とする(最適にはλ1=560nm)。これにより、液晶材料の劣化が抑制され、緑色光が明るく表示される。青色光を変調する液晶ライトバルブ1230では、第二波長λ2を500nmから600nmの範囲とし(最適にはλ2=560nm)、第一波長λ1を400nmから500nmの範囲とする(最適にはλ1=450nm)。これにより、液晶材料の劣化が抑制され、青色光が明るく表示される。
(組み合わせ4)
赤色光を変調する液晶ライトバルブ1210では、第二波長λ2を500nmから600nmの範囲とし(最適にはλ2=560nm)、第一波長λ1を600nmから660nmの範囲とする(最適にはλ1=630nm)。これにより、液晶材料の劣化が抑制され、赤色光が明るく表示される。緑色光を変調する液晶ライトバルブ1220では、第二波長λ2を500nmから600nmの範囲とし(最適にはλ2=560nm)、第一波長λ1を500nmから600nmの範囲とする(最適にはλ1=560nm)。これにより、液晶材料の劣化が抑制され、緑色光が明るく表示される。青色光を変調する液晶ライトバルブ1230では、第二波長λ2を500nmから600nmの範囲とし(最適にはλ2=560nm)、第一波長λ1を400nmから500nmの範囲とする(最適にはλ1=450nm)。これにより、液晶材料の劣化が抑制され、青色光が明るく表示される。組み合わせ4では、第一基板が三種類のライトバルブで共通とされるので、製造と製造管理が容易となる。
なお、液晶装置100が搭載される電子機器としては、投射型表示装置1000の他、ヘッドアップディスプレイ、スマートフォン、EVF(Electrical View Finder)、モバイルミニプロジェクター、携帯電話、モバイルコンピューター、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、ディスプレイ、車載機器、オーディオ機器、露光装置や照明機器など各種電子機器に用いることができる。
以上詳述したように、第1実施形態の液晶装置100の製造方法によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)第1実施形態の液晶装置100によれば、液晶層15の光の入射側に配置された対向基板10に、光学膜厚がλ/2の対向電極31(第二透光性膜)が設けられているので、入射光Lに含まれる液晶材料の吸収の大きい波長帯域(短波長:400nm〜450nm程度)の反射率を、画素電極27(透明積層膜)と比較して高くすることができる。つまり、対向電極31(第二透光性膜)によって、短波長の透過を抑えることが可能となり、液晶に短波長成分が入ることを抑えることができる。よって、液晶装置100の寿命を向上させることが可能となり、耐光性を向上させることができる。又、液晶層15の光の出射側に配置された素子基板20に、導電性の第二画素電極27cと、導電性の第二画素電極27cよりも屈折率が小さい絶縁性の第一絶縁膜27bと、第一絶縁膜27bよりも屈折率が大きい導電性の第一画素電極27aとからなる画素電極27が設けられているので、短波長の光の透過率を、対向電極31(第二透光性膜)と比較して高くすることができる。言い換えれば、素子基板20側で短波長成分が反射して液晶層15に再入射することを抑えることができる。これらにより、液晶層15に入射する短波長を弱くすることが可能となり、液晶層15の寿命を向上(耐光性を向上)させることができる。加えて、光の入射側にフィルターを設ける場合と比較して、部品点数を少なくすることができる。つまり、製造工程を簡略化することができる。
(2)第1実施形態の液晶装置100によれば、対向電極31(第二透光性膜)の膜厚を、緑色光の透過率が最大になるような膜厚(例えば、140nm)に設定することにより、(緑色光のピーク波長を550nm〜560nmにすることが可能となり)液晶装置100から出てくる出射光の輝度を向上させることができる。
(3)第1実施形態の液晶装置100によれば、青色光の波長帯域(例えば、500nm以下)において、対向電極31(第二透光性膜)より画素電極27(透明積層膜)の方が透過率が大きいので、光の入射側に配置された対向電極31(第二透光性膜)により青色光の透過率を小さくすることが可能となり、液晶層15に入る光を少なくできるので、液晶層15にダメージを与えることを抑えることができる。又、光の出射側に配置された画素電極27によって青色光の透過率を大きくすることが可能となり、液晶装置100から出てくる出射光の輝度を向上させることができる。
(4)第1実施形態の電子機器によれば、上記した液晶装置100を備えているので、液晶の寿命を向上させることが可能な電子機器を提供することができる。
(第2実施形態)
<液晶装置の構成>
図6は、第2実施形態の液晶装置の画素の構造を示す模式断面図である。以下、画素の構造を、図6を参照しながら説明する。なお、図6は、各構成要素の断面的な位置関係を示すものであり、明示可能な尺度で表されている。
第2実施形態の液晶装置200は、上述の第1実施形態と比べて、透明積層膜の構成が異なり、その他の構成については概ね同様である。このため第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略する。
図6に示すように、第2実施形態の液晶装置200は、第二絶縁性基板20aから第2層間絶縁層11bまでは、第1実施形態の液晶装置100と同様の構成である。又、素子基板20に対向配置された対向基板10の液晶層15側には、第1実施形態と同様に、平坦化膜33(第一透光性膜)と、対向電極31(第二透光性膜)と、無機材料からなる第一配向膜32(第三透光性膜)とが順に形成されている。対向電極31の光学膜厚は、λ/2の自然数倍になるように設定されている。
ついで、第1実施形態の液晶装置100と異なる部分について説明する。図6に示すように、第二基板(本実施形態では素子基板20)は、第四透光性膜(本実施形態では第2層間絶縁層11b)と、第九透光性膜(本実施形態では第一中間屈折率膜12a)と、導電性の第十透光性膜(本実施形態では画素電極27)と、第十一透光性膜(本実施形態では第二中間屈折率膜12b)と、第八透光性膜(本実施形態では第二配向膜28)と、を含んでいる。第九透光性膜(第一中間屈折率膜12a)は、第四透光性膜(第2層間絶縁層11b)と液晶層15との間に配置され、第四透光性膜より屈折率が高い膜である。第十透光性膜(画素電極27)は、第九透光性膜(第一中間屈折率膜12a)と液晶層15との間に配置され、第九透光性膜より屈折率が高い導電性の膜である。第十一透光性膜(第二中間屈折率膜12b)は、第十透光性膜(画素電極27)と液晶層15との間に配置され、第十透光性膜より屈折率が低い膜である。第八透光性膜(第二配向膜28)は、第十一透光性膜(第二中間屈折率膜12b)と液晶層15との間に配置され、第十一透光性膜より屈折率が低い膜である。
第四透光性膜である第2層間絶縁層11bは第1実施形態と同様で、酸化珪素膜からなり、屈折率は凡そ1.46である。この第2層間絶縁層11b上には、第2層間絶縁層11bより屈折率が高い第九透光性膜(第一中間屈折率膜12a)が形成されている。第一中間屈折率膜12aの材料は、アルミナ(Al2O3)であり、屈折率は凡そ1.76である。本実施形態において、第一中間屈折率膜12aが絶縁層で形成されているため、コンタクト等を除く表示領域の全面や素子基板20の全面に形成されている。別の形態として、第一中間屈折率膜12aは、後述する第十透光性膜と同様にパターニングされ、画素ごとで分離されていてもよい。
第一中間屈折率膜12aの上には、TFT30の画素電極側ソースドレイン領域とコンタクトホールCNT12を介して電気的に接続された、第一中間屈折率膜12aより屈折率が高い画素電極27がパターニングされて設けられている。画素電極27は第十透光性膜であり、画素電極27の材料はITOである。ITOの屈折率は、製造方法に応じて、1.9程度から2.0程度の間にある。
画素電極27及び第一中間屈折率膜12aの上には、第二配向膜28より屈折率が高く、画素電極27よりも屈折率が低い第二中間屈折率膜12b(第十一透光性膜)が形成されている。第二中間屈折率膜12bは、画素電極27のない領域では、第一中間屈折率膜12aに積層されている。第二中間屈折率膜12bの材料は、Al2O3である。本実施形態において、第二中間屈折率膜12bが絶縁層で形成されているため、コンタクト等を除く表示領域の全面や素子基板20の全面に形成されている。別の形態として、第二中間屈折率膜12bは、後述する第十透光性膜と同様にパターニングされ、画素ごとで分離されていてもよい。
第2実施形態の液晶装置200は、第九透光性膜の屈折率をn9、第九透光性膜の物理膜厚をd9、とし、第十透光性膜の屈折率をn10、第十透光性膜の物理膜厚をd10、とし、第十一透光性膜の屈折率をn11、第十一透光性膜の物理膜厚をd11、とした際に、400nm以上450nm以下の第一波長λ1に対して、0以上の整数m3と0以上の整数m4と0以上の整数m5とを用いて、以下の数式8と数式9を満たすように各透光性膜の屈折率と膜厚とを設定することで、反射光L1,L2,L3の強度を最も小さくできる。
第一波長λ1は第1実施形態と同様である。
数式8の関係を満たすと、第一波長λ1の入射光Lで、第二中間屈折率膜12bと第二配向膜28との界面にて反射する理論上の反射光と、第二中間屈折率膜12bと画素電極27との界面にて反射する理論上の反射光と、が干渉により小さくなる。これは両界面で固定端反射が生じ、第十一透光性膜(第二中間屈折率膜12b)での往復の光路長(光学膜厚の2倍)が第一波長λ1の半分の整数倍の為である。同様に、数式8の関係を満たすと、第一波長λ1の入射光Lで、画素電極27と第一中間屈折率膜12aとの界面にて反射する理論上の反射光と、第一中間屈折率膜12aと第2層間絶縁層11bとの界面にて反射する理論上の反射光と、が干渉により小さくなる。これは両界面で自由端反射が生じ、第九透光性膜(第一中間屈折率膜12a)での往復の光路長(光学膜厚の2倍)が第一波長λ1の半分の整数倍の為である。更に、数式9の関係を満たすと、第一波長λ1の入射光Lで、画素電極27と第二中間屈折率膜12bとの界面にて反射する理論上の反射光と、画素電極27と第一中間屈折率膜12aとの界面にて反射する理論上の反射光と、が干渉により小さくなる。これは画素電極27と第二中間屈折率膜12bとの界面にて固定端反射が生じ、画素電極27と第一中間屈折率膜12aとの界面にて自由端反射が生じて、反射による位相差がπ生ずると共に、第十透光性膜(画素電極27)での往復の光路長(光学膜厚の2倍)が第一波長λ1の整数倍の為である。こうして、第1実施形態と同様に、第一波長λ1の入射光の透明積層膜での透過率が向上する事となる。
上述の様に干渉によって反射光を小さくするには、干渉する二つの反射光の位相がπずれている事と二つの反射光の振幅が同程度で有る事とが肝要である。そこで、更に、第四透光性膜の屈折率をn4とし、第八透光性膜の屈折率をn8とした際に、数式10の関係式を満たす事が好ましくなる。
こうすると、第四透光性膜と第九透光性膜との界面での理論上の反射率と、第九透光性膜と第十透光性膜との界面での理論上の反射率と、がほぼ等しくなるので、両界面からの理論上の反射光は同程度の振幅となって、効率的に打ち消し合う。この結果、現実には両界面から第一波長λ1の光の反射L2が小さくなり、第一波長λ1の光は効率的に両界面を通過する事ができる。同様に、第八透光性膜と第十一透光性膜との界面での理論上の反射率と、第十一透光性膜と第十透光性膜との界面での理論上の反射率と、がほぼ等しくなるので、両界面からの理論上の反射光は同程度の振幅となって、効率的に打ち消し合う。この結果、現実には両界面から第一波長λ1の光の反射が小さくなり、第一波長λ1の光は効率的に両界面を通過する事ができる。
透明積層膜は、一例として、第二配向膜28(第八透光性膜)を屈折率n8=1.46の酸化珪素膜とし、画素電極27(第十透光性膜)を屈折率n10=2.0のITOで構成する。この場合、数式10より、第二中間屈折率膜12b(第十一透光性膜)には、屈折率n11=1.7程度の材料を用いるのが好ましい。この屈折率を満たす材料の一例として、前述したように、屈折率n1=1.76のAl2O3を用いる事ができる。同様に、第2層間絶縁層11b(第四透光性膜)を屈折率n4=1.46の酸化珪素膜とし、画素電極27(第十透光性膜)を屈折率n10=2.0のITOで構成する。この場合、数式10より、第一中間屈折率膜12a(第九透光性膜)には、屈折率n9=1.7程度の材料を用いるのが好ましい。この屈折率を満たす材料の一例として、前述したように、屈折率n1=1.76のAl2O3を用いる事ができる。
次に、第九透光性膜の物理膜厚d9と第十透光性膜の物理膜厚d10と第十一透光性膜の物理膜厚d11とが数式8と数式9との関係を満たす様にする。
第十透光性膜をITOとし、第一波長λ1=450nm、m5=0で計算すると、導電性の第十透光性膜の物理膜厚d10は、約112.5nmとなる。尚、第九透光性膜の光学膜厚と第十一透光性膜の光学膜厚とが数式8の関係を満たしていれば、第十透光性膜は数式9に記載の光学膜厚の関係を満たしていなくても良い。これは、第一中間屈折率膜12aと画素電極27との界面からの反射光が、第二中間屈折率膜12bと画素電極27との界面からの反射光と相殺しなくても(理論上の反射光L3が小さくならなくとも)、第一中間屈折率膜12aと画素電極27との界面からの反射光は、第一中間屈折率膜12aの光学膜厚が数式8の関係を満たしていれば、第一中間屈折率膜12aと第2層間絶縁層11bとの界面からの反射光と相殺し、同様に、第二中間屈折率膜12bと画素電極27との界面からの反射光は、第二中間屈折率膜12bの光学膜厚が数式8の関係を満たしていれば、第二中間屈折率膜12bと第二配向膜28との界面からの反射光と相殺するからである。従って、第十透光性膜の物理膜厚を、数式9を満たさずに、十分に小さくしてもよい。第十透光性膜にITOを用いた場合、厳密には、第十透光性膜でわずかに光の吸収が生ずる。この為、界面での反射が抑制されても、第十透光性膜での光の吸収は避けられず、それが透明積層膜の透過率を減ずる原因になりかねない。本実施形態に記載するように、第九透光性膜の光学膜厚と第十一透光性膜の光学膜厚とが数式8の関係を満たし、第十透光性膜の物理膜厚を小さくすると、界面での反射の抑制と共に、第十透光性膜での光吸収も小さくなるので、透明積層膜の透過率を十分に高くする事ができる。
なお、第一中間屈折率膜12aや第二中間屈折率膜12bを導電膜としてもよい。例えば、第一中間屈折率膜12a及び第二中間屈折率膜12bをITOとし、導電性の第十透光性膜を第一中間屈折率膜12a及び第二中間屈折率膜12bと異なる組成、成膜方法、結晶構造として第一中間屈折率膜12a及び第二中間屈折率膜12bより高屈折率としたITOやIZOを用いることができる。この場合、第一中間屈折率膜12a及び第二中間屈折率膜12bは、導電性の第十透光性膜と同様に画素ごとでパターニングされ、画素ごとで電気的に分離される。この場合、導電性の第九透光性膜と導電性の第十透光性膜と導電性の第十一透光性膜とが積層されることになるので、この積層膜の電気抵抗を低くする事ができる。
一般に、m4が0から1、2と大きくなるに従い、第十透光性膜の膜厚は大きくなる。従って、導電膜に対して低い電気抵抗が求められる場合には、上述の積層膜構造の代わりに、m4の値を大きくしても良い。例えば、m4=1とすれば、第一波長λ1=450nmで、第十透光性膜の物理膜厚d10は約225nmとなり、第十透光性膜のシート抵抗値はm4=0の場合に比べて半減する。
第九透光性膜(第一中間屈折率膜12a)を酸化アルミニウムとし、第一波長λ1=450nm、m3=0で計算すると、第九透光性膜の物理膜厚d9は、約64nmとなる。同様に、第十一透光性膜(第二中間屈折率膜12b)を酸化アルミニウムとし、第一波長λ1=450nm、m5=0で計算すると、第十一透光性膜の物理膜厚d11は、約64nmとなる。尚、0以上の整数m3と0以上の整数m4と0以上の整数m5とは互いに独立であるので、これらの値は同じであっても構わないし、異なっていても構わない。
第二中間屈折率膜12bの上には、気相成長法を用いてSiOx(酸化珪素膜)などの無機材料を成膜することにより形成された第二配向膜28(第八透光性膜)が設けられている。第二配向膜28の膜厚は、凡そ70nmである。
上述の透明積層膜(第一中間屈折率膜12a、画素電極27、第二中間屈折率膜12b)を備えた液晶装置200は、第一波長λ1=450nmとしてあるので、可視光波長領域(400nm〜700nm)に亘って96%以上の光の透過率が確保される。この様に、第1実施形態の液晶装置100と同様に、青の透過率が高く、光の利用効率がよくなっている。又、液晶層15の耐光性寿命も長い。
以上詳述したように、第2実施形態の液晶装置200によれば、上記した(2)、(3)の効果に加えて、以下に示す効果が得られる。
(5)第2実施形態の液晶装置200によれば、光の出射側である素子基板20に、第一中間屈折率膜12a(中間屈折率膜)と、画素電極27と、第二中間屈折率膜12b(中間屈折率膜)とを含む透明積層膜を備えているので、短波長の光の透過率を、対向電極31と比較して高くすることができる。言い換えれば、素子基板20側で短波長成分が反射して液晶層15に再入射することを抑えることができる。これらにより、液晶層15に入射する短波長を弱くすることが可能となり、液晶層15の寿命を向上(耐光性を向上)させることができる。
(第3実施形態)
<液晶装置の構成>
図7は、第3実施形態の液晶装置の画素の構造を示す模式断面図である。以下、画素の構造を、図7を参照しながら説明する。なお、図7は、各構成要素の断面的な位置関係を示すものであり、明示可能な尺度で表されている。
第3実施形態の液晶装置300は、上述の第1実施形態と比べて、第四透光性膜から第七透光性膜の構成が異なっており、その他の構成については概ね同様である。具体的には、本実施形態では、画素保持容量を利用して透明積層膜を構成している部分が、第1実施形態と異なっている。このため第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略する。
図7に示すように、第二基板である素子基板20は、第四透光性膜(本実施形態では第3層間絶縁層11g)と導電性の第五透光性膜(本実施形態では容量電極16a)と第六透光性膜(本実施形態では容量絶縁膜11h)と導電性の第七透光性膜(本実施形態では画素電極27)と第八透光性膜(本実施形態では第二配向膜28)とを含んでいる。第五透光性膜(容量電極16a)は、第四透光性膜(第3層間絶縁層11g)と液晶層15との間に配置され、第四透光性膜より屈折率が高い導電性の膜である。第六透光性膜(容量絶縁膜11h)は、第五透光性膜(容量電極16a)と液晶層15との間に配置され、第五透光性膜より屈折率が低い膜である。第七透光性膜(画素電極27)は、第六透光性膜(容量絶縁膜11h)と液晶層15との間に配置され、第六透光性膜より屈折率が高い導電性の膜である。第八透光性膜(第二配向膜28)は、第七透光性膜(画素電極27)と液晶層15との間に配置され、第七透光性膜より屈折率が低い膜である。
第二絶縁性基板20a上には、走査線3aが配置されている。走査線3aは、下地絶縁層11cによって覆われている。下地絶縁層11c上には、TFT30が設けられている。
データ線6aは、ゲート絶縁膜11d及び第1層間絶縁層11eに開口されたコンタクトホールCNT13を介してデータ線側ソースドレイン領域30bと電気的に接続されている。一方、画素電極側ソースドレイン領域30dは、上層に形成された画素電極27に、コンタクトホールCNT14、中継層55、コンタクトホールCNT15を介して電気的に接続されている。
データ線6a上には、第2層間絶縁層11fが積層されている。第2層間絶縁層11f上には、周辺領域から延在して設けられた電位線40が形成されている。電位線40には、周辺領域に配置された電源回路から固定電位が供給されている。電位線40と上層の容量電極16aとを電気的に接続することにより、容量電極16aを固定電位に保持している。
電位線40上には、第3層間絶縁層11gが積層されている。第3層間絶縁層11gは、画素電極27と平面視で重なる領域で、第四透光性膜として機能している。第3層間絶縁層11gの材料は、第1実施形態と同様に酸化珪素膜であり、第3層間絶縁層11gの膜厚は500nmである。
第3層間絶縁層11g上には、第3層間絶縁層11gに形成されたコンタクトホールCNT16を介して電位線40と電気的に接続された容量電極16aがパターニングされて設けられている。容量電極16aは、第3層間絶縁層11gより屈折率が高い導電性の膜で、画素電極27と平面視で重なる領域で、第五透光性膜として機能している。容量電極16aは、第1実施形態の第五透光性膜と同様に、ITOやIZOなどで形成され、その光学膜厚n5d5は第六透光性膜の光学膜厚n6d6と共に数式7を満たす関係にある。具体的に、容量電極16aの材質と膜厚とは、第1実施形態の第一画素電極27aの材質と膜厚と同じである。
容量電極16a及び第3層間絶縁層11g上には、容量電極16aより屈折率が小さい絶縁性の容量絶縁膜11hが設けられている。容量絶縁膜11hは、画素電極27と平面視で重なる領域で、第六透光性膜として機能している。容量絶縁膜11hは、第1実施形態の第六透光性膜と同様に、透光性の酸化珪素膜などの無機絶縁材料などで形成され、その光学膜厚n6d6は第五透光性膜の光学膜厚n5d5と共に数式7を満たす関係にある。具体的に、容量絶縁膜11hの材質と膜厚とは、第1実施形態の第一絶縁膜27bの材質と膜厚と同じである。
容量絶縁膜11h上には、容量絶縁膜11hより屈折率が大きい、導電性の画素電極27がパターニングされて設けられており、画素電極27は第七透光性膜として機能している。画素電極27は、第1実施形態の第七透光性膜と同様に、ITOやIZOなどで形成され、その光学膜厚n7d7は第六透光性膜の光学膜厚n6d6と共に数式7を満たす関係にある。具体的に、画素電極27の材質と膜厚とは、第1実施形態の第二画素電極27cの材質と膜厚と同じである。
なお、画素電極27及び容量電極16aは、画素保持容量(容量素子16)を構成する一対の容量電極として機能するように形成されている。即ち、画素電極27は、画素保持容量を構成する容量素子16のうち一方の容量電極を兼ねるように形成されている。
画素電極27及び容量絶縁膜11h上には、画素電極27よりも屈折率が小さい、絶縁性の第二配向膜28が設けられている。第二配向膜28は、画素電極27と平面視で重なる領域で、第八透光性膜として機能している。第二配向膜28は、第1実施形態の第八透光性膜と同様に、気相成長法を用いてSiOx(酸化珪素膜)などの無機材料を成膜することにより形成されている。具体的に、第二配向膜28の材質と膜厚とは、第1実施形態の第二配向膜28の材質と膜厚と同じである。
素子基板20に対向配置された対向基板10の構成は、第1実施形態と同様である。
以上詳述したように、第3実施形態の液晶装置300によれば、以下に示す効果が得られる。
(6)第3実施形態の液晶装置300によれば、容量電極16aと、容量絶縁膜11hと、画素電極27とによって透明積層膜を構成するので、新しい製造工程を増やすことなく、透過率を向上させることができる。
(第4実施形態)
<液晶装置の構成>
図8は、第4実施形態の液晶装置の画素の構造を示す模式断面図である。以下、画素の構造を、図8を参照しながら説明する。なお、図8は、各構成要素の断面的な位置関係を示すものであり、明示可能な尺度で表されている。
図4を用いて説明した第1実施形態では、第一基板が対向基板10であり、第一基板より光出射側に配置される第二基板が素子基板20であった。これに対して、第4実施形態の液晶装置400では、第一基板が素子基板20となり、第一基板より光出射側に配置される第二基板が対向基板10となる点が異なっている。即ち、第4実施形態では、対向基板10に透明積層膜(対向電極層31L)を設け、素子基板20側から光が入射する。その他の構成については概ね同様である。このため第4実施形態では、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略する。
第4実施形態の液晶装置400では、第一基板が素子基板20となり、第二基板が対向基板10となる。液晶装置400は透過型であり、入射光は第一基板(本実施形態では素子基板20)から液晶層に導かれ、第一基板より光出射側に配置された第二基板(本実施形態では対向基板10)から出射される。
まず、第一基板の構成を説明する。図8に示すように、第一基板(本実施形態では素子基板20)は、第一透光性膜(本実施形態では第2層間絶縁層11b)と第二透光性膜(本実施形態では画素電極27)と第三透光性膜(本実施形態では第二配向膜28)とを含んでいる。第二透光性膜(画素電極27)は、第一透光性膜(第2層間絶縁層11b)と液晶層15との間に配置され、第一透光性膜より屈折率が高い導電性の膜である。第三透光性膜(第二配向膜28)は、第二透光性膜(画素電極27)と液晶層15との間に配置され、第二透光性膜より屈折率が低い膜である。
第二絶縁性基板20aから第2層間絶縁層11bまでは、第1実施形態の液晶装置100と同様の構成である。第2層間絶縁層11bは、画素電極27と平面視で重なる領域で、第一透光性膜として機能している。第2層間絶縁層11bは、第1実施形態の第一透光性膜と同様に、透光性の酸化珪素膜などの無機絶縁材料などで形成されている。具体的に、第2層間絶縁層11bは、膜厚が500nmの酸化珪素膜からなる。
第2層間絶縁層11b上には、画素電極27がパターニングされて設けられている。画素電極27は第二透光性膜として機能している。画素電極27は、第1実施形態の第二透光性膜と同様に、ITOやIZOなどで形成され、その光学膜厚n2d2は数式6を満たす関係にある事が好ましい。具体的に、画素電極27の材質と膜厚とは、第1実施形態の対向電極31の材質と膜厚と同じである。
画素電極27及び第2層間絶縁層11b上には、気相成長法を用いてSiOx(酸化珪素膜)などの無機材料を成膜することにより形成された第二配向膜28が設けられている。第二配向膜28は、画素電極27と平面視で重なる領域で、第三透光性膜として機能している。第二配向膜28は、第1実施形態の第三透光性膜と同様であり、具体的に、第二配向膜28の材質と膜厚とは、第1実施形態の第一配向膜32の材質と膜厚と同じである。
次に、第二基板の構成を説明する。第二基板である対向基板10は、第四透光性膜(本実施形態では平坦化膜33)と導電性の第五透光性膜(本実施形態では第一対向電極31a)と第六透光性膜(本実施形態では第二絶縁膜31b)と導電性の第七透光性膜(本実施形態では第二対向電極31c)と第八透光性膜(本実施形態では第一配向膜32)とを含んでいる。第五透光性膜(第一対向電極31a)は、第四透光性膜(平坦化膜33)と液晶層15との間に配置され、第四透光性膜より屈折率が高い導電性の膜である。第六透光性膜(第二絶縁膜31b)は、第五透光性膜(第一対向電極31a)と液晶層15との間に配置され、第五透光性膜より屈折率が低い膜である。第七透光性膜(第二対向電極31c)は、第六透光性膜(第二絶縁膜31b)と液晶層15との間に配置され、第六透光性膜より屈折率が高い導電性の膜である。第八透光性膜(第一配向膜32)は、第七透光性膜(第二対向電極31c)と液晶層15との間に配置され、第七透光性膜より屈折率が低い膜である。対向電極層31Lは導電性の第五透光性膜と導電性の第七透光性膜とを含んでおり、第五透光性膜と第七透光性膜とは電気的に接続されている。より詳しくは、対向電極層31Lは、第一対向電極31aと第二絶縁膜31bと第二対向電極31cとが透明積層膜として積層形成されており、この透明積層膜が第一波長λ1の光に対する反射防止構造となっている。
平坦化膜33は、例えば酸化珪素膜などの無機材料からなり、プラズマCVD法などを用いて成膜される。
第一対向電極31a及び第二対向電極31cは、例えばITOなどの透明導電膜を用いて形成することができる。第二絶縁膜31bは、例えば酸化珪素膜などの無機絶縁材料を用いて形成することができる。第一対向電極31aの材質と膜厚とは第1実施形態の第一画素電極27aの材質と膜厚と同じであり、第二対向電極31cの材質と膜厚とは第1実施形態の第二画素電極27cの材質と膜厚と同じであり、第二絶縁膜31bの材質と膜厚とは第1実施形態の第一絶縁膜27bの材質と膜厚と同じである。
最も液晶層15に近い第二対向電極31cが所謂対向電極として機能し、前述した上下導通部26に電気的に接続されている。又、表示領域Eよりも外側において、絶縁性の第二絶縁膜31bに、例えば、コンタクトホールを設けて導電性の第一対向電極31aと第二対向電極31cとを電気的に接続させている。
無機材料からなる第一配向膜32は、素子基板20側の第二配向膜28と同様に気相成長法を用いてSiOx(酸化珪素膜)などの無機材料を成膜することにより形成することができる。第一配向膜32の材質と膜厚とは第1実施形態の第二配向膜28の材質と膜厚と同じである。
図8(b)に示す様に、第4実施形態での透明積層膜の構成は第1実施形態での透明積層膜の構成と同じになる。したがって、第五透光性膜の光学膜厚n5d5と第六透光性膜の光学膜厚n6d6と第七透光性膜の光学膜厚n7d7とは、第1実施形態と同様に、数式7の関係を満たし、第1実施形態と同じ原理で、第一波長λ1の光に対する反射光L1とL2とを抑制して、第一波長λ1の光の透過率を高める。
第一波長λ1を第1実施形態と同様に、450nmとした対向電極層31Lを備えた液晶装置400は、可視光波長領域(400nm〜700nm)に亘って96%以上の光の透過率が確保される。
以上詳述したように、第4実施形態の液晶装置400でも、第1実施形態と同じ効果が得られる。
(第5実施形態)
<液晶装置の構成>
図9は、第5実施形態の液晶装置の画素の構造を示す模式断面図である。以下、画素の構造を、図9を参照しながら説明する。なお、図9は、各構成要素の断面的な位置関係を示すものであり、明示可能な尺度で表されている。
図6を用いて説明した第2実施形態では、第一基板が対向基板10であり、第一基板より光出射側に配置される第二基板が素子基板20であった。これに対して、第5実施形態の液晶装置500では、第一基板が素子基板20となり、第一基板より光出射側に配置される第二基板が対向基板10となる点が異なっている。即ち、第5実施形態では、対向基板10に透明積層膜を設け、素子基板20側から光が入射する。その他の構成については概ね同様である。このため第5実施形態では、第2実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略する。
第5実施形態の液晶装置500では、第一基板が素子基板20となり、第二基板が対向基板10となる。液晶装置500は透過型であり、入射光は第一基板(本実施形態では素子基板20)から液晶層に導かれ、第一基板より光出射側に配置された第二基板(本実施形態では対向基板10)から出射される。
まず、第一基板の構成を説明する。図9に示すように、第一基板(本実施形態では素子基板20)は、第一透光性膜(本実施形態では第2層間絶縁層11b)と第二透光性膜(本実施形態では画素電極27)と第三透光性膜(本実施形態では第二配向膜28)とを含んでいる。第二透光性膜(画素電極27)は、第一透光性膜(第2層間絶縁層11b)と液晶層15との間に配置され、第一透光性膜より屈折率が高い導電性の膜である。第三透光性膜(第二配向膜28)は、第二透光性膜(画素電極27)と液晶層15との間に配置され、第二透光性膜より屈折率が低い膜である。
第二絶縁性基板20aから第2層間絶縁層11bまでは、第2実施形態の液晶装置100と同様の構成である。第2層間絶縁層11bは、画素電極27と平面視で重なる領域で、第一透光性膜として機能している。第2層間絶縁層11bは、第2実施形態の第一透光性膜と同様に、透光性の酸化珪素膜などの無機絶縁材料などで形成されている。具体的に、第2層間絶縁層11bは、膜厚が500nmの酸化珪素膜からなる。
第2層間絶縁層11b上には、画素電極27がパターニングされて設けられている。画素電極27は第二透光性膜として機能している。画素電極27は、第2実施形態の第二透光性膜と同様に、ITOやIZOなどで形成され、その光学膜厚n2d2は数式6を満たす関係にある事が好ましい。具体的に、画素電極27の材質と膜厚とは、第2実施形態の対向電極31の材質と膜厚と同じである。
画素電極27及び第2層間絶縁層11b上には、気相成長法を用いてSiOx(酸化珪素膜)などの無機材料を成膜することにより形成された第二配向膜28が設けられている。第二配向膜28は、画素電極27と平面視で重なる領域で、第三透光性膜として機能している。第二配向膜28は、第2実施形態の第三透光性膜と同様であり、具体的に、第二配向膜28の材質と膜厚とは、第2実施形態の第一配向膜32の材質と膜厚と同じである。
次に、第二基板の構成を説明する。第二基板である対向基板10は、第四透光性膜(本実施形態では平坦化膜33)と、第九透光性膜(本実施形態では第一中間屈折率膜12a)と、導電性の第十透光性膜(本実施形態では対向電極31)と、第十一透光性膜(本実施形態では第二中間屈折率膜12b)と、第八透光性膜(本実施形態では第一配向膜32)と、を含んでいる。第九透光性膜(第一中間屈折率膜12a)は、第四透光性膜(平坦化膜33)と液晶層15との間に配置され、第四透光性膜より屈折率が高い膜である。第十透光性膜(対向電極31)は、第九透光性膜(第一中間屈折率膜12a)と液晶層15との間に配置され、第九透光性膜より屈折率が高い導電性の膜である。第十一透光性膜(第二中間屈折率膜12b)は、第十透光性膜(対向電極31)と液晶層15との間に配置され、第十透光性膜より屈折率が低い膜である。第八透光性膜(第一配向膜32)は、第十一透光性膜(第二中間屈折率膜12b)と液晶層15との間に配置され、第十一透光性膜より屈折率が低い膜である。より詳しくは、第一中間屈折率膜12aと対向電極31と第二中間屈折率膜12bとが透明積層膜として積層形成されており、この透明積層膜が第一波長λ1の光に対する反射防止構造となっている。
平坦化膜33は、例えば酸化珪素膜などの無機材料からなり、プラズマCVD法などを用いて成膜される。
第一中間屈折率膜12a及び第二中間屈折率膜12bは、例えばアルミナなどの透明絶縁膜を用いて形成することができる。対向電極31は、例えばITOなどの透明導電材料を用いて形成することができる。第一中間屈折率膜12aの材質と膜厚とは第2実施形態の第一中間屈折率膜12aの材質と膜厚と同じであり、第二中間屈折率膜12bの材質と膜厚とは第2実施形態の第二中間屈折率膜12bの材質と膜厚と同じであり、対向電極31の材質と膜厚とは第2実施形態の画素電極27の材質と膜厚と同じである。対向電極31は、前述した上下導通部26に電気的に接続されている。
無機材料からなる第一配向膜32は、素子基板20側の第二配向膜28と同様に気相成長法を用いてSiOx(酸化珪素膜)などの無機材料を成膜することにより形成することができる。第一配向膜32の材質と膜厚とは第2実施形態の第二配向膜28の材質と膜厚と同じである。
図9(b)に示す様に、第5実施形態での透明積層膜の構成は第2実施形態での透明積層膜の構成と同じになる。したがって、第九透光性膜の光学膜厚n9d9と第十透光性膜の光学膜厚n10d10と第十一透光性膜の光学膜厚n11d11とは、第2実施形態と同様に、数式8と数式9及び数式10の関係を満たす事が好ましい。この結果、第2実施形態と同じ原理で、第一波長λ1の光に対する反射光L1とL2とL3とを抑制して、第一波長λ1の光の透過率を高める。
第一波長λ1を第2実施形態と同様に、450nmとした透明積層膜を備えた液晶装置500は、可視光波長領域(400nm〜700nm)に亘って96%以上の光の透過率が確保される。
以上詳述したように、第5実施形態の液晶装置500でも、第2実施形態と同じ効果が得られる。