JP6144078B2 - 海島型複合繊維とその製造方法、およびポリビニルアルコール系極細繊維とその製造方法、ならびに極細炭素繊維 - Google Patents
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Description
近年、多岐に渡る機能性材料の要求を満たすためには、容易に機能性を付与することが可能な極細繊維の製造方法が求められている。
本発明の別の目的は、用途に応じて幅広い機能性を有しているポリビニルアルコール系極細繊維を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、導電材料として好適に用いることができる極細炭素繊維を提供することにある。
本発明の他の目的は、生産性、工程通過性に優れたこれらの繊維の製造方法を提供することにある。
この紡糸原液を、湿式紡糸または乾湿式紡糸し、機能性化合物が均一に分散した疎水性ポリビニルアルコール系ポリマーを島成分として、水溶性ポリビニルアルコール系ポリマーを海成分として備える海島型複合繊維を得る紡糸工程と、
を備える海島型複合繊維の製造方法である。
疎水性ポリビニルアルコール系ポリマーは、エチレン−ビニルアルコール共重合体であってもよい。また、機能性化合物が、易黒鉛化性炭素または易黒鉛化性有機化合物、特にメソフェーズピッチであってもよい。
前記疎水性ポリビニルアルコール系ポリマーに対して、疎水性の機能性化合物が略均一に分散している海島型複合繊維である。
前記機能性化合物は、前記疎水性ポリビニルアルコール系ポリマーに略均一に分散され、かつ
平均繊維径が0.01〜10μmであるポリビニルアルコール系極細繊維である。
前記ポリビニルアルコール系極細繊維において、疎水性ポリビニルアルコール系ポリマー100重量部に対する前記機能性化合物の割合は、3〜70重量部の範囲であってもよい。
また、疎水性ポリビニルアルコール系ポリマーと、疎水性の機能性化合物とを組み合わせることにより、用途に応じて幅広い機能性を有しているポリビニルアルコール系極細繊維を得ることができる。
さらに、前記ポリビニルアルコール系極細繊維から、導電材料として好適に用いることができる極細炭素繊維を得ることができる。
本発明の第1の実施形態は、水溶性ポリビニルアルコール系ポリマーと、疎水性ポリビニルアルコール系ポリマーと、疎水性の機能性化合物とを混合した紡糸原液を準備する準備工程と、
この紡糸原液を、湿式紡糸または乾湿式紡糸し、機能性化合物が均一に分散した疎水性ポリビニルアルコール系ポリマーを島成分として、水溶性ポリビニルアルコール系ポリマーを海成分として備える海島型複合繊維を得る紡糸工程と、
を備える海島型複合繊維の製造方法である。
本発明で用いられる水溶性ポリビニルアルコール系(以下、PVAと略する場合がある)ポリマーについて説明する。
水溶性PVA系ポリマーは、ビニルアルコールユニットを主成分とするものであり、ビニルアルコールユニットは、例えば、ビニルエステルを重合して得られるポリビニルエステルをケン化することにより得ることができる。ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニルなどを挙げることができるが、これらの中でも酢酸ビニルが生産性の観点から好ましい。
本発明に用いる疎水性PVA系ポリマーは、疎水性化合物を良好に分散させるとともに、水溶性PVA系ポリマーと溶媒中で非相溶となるものを選択する必要がある。
また、PVA系ポリマーは元来親水性であるため、疎水性PVA系ポリマーとするためには、疎水性基で変性された疎水基変性PVAでなければならない。疎水基変性PVAとしては、例えば、炭素数20以下のα−オレフィン単位を0.1〜20モル%含有するPVA系ポリマー、炭素数20以下の長鎖アルキル基を含有するビニルエーテル単位を0.1〜20モル%含有するPVA系ポリマー、炭素数4〜50の長鎖アルキル基を末端に有するPVA系ポリマーが挙げられるが、生産性の点から炭素数20以下のα−オレフィン単位を0.1〜20モル%含有するPVA系ポリマーが好ましい。このような変性ユニットの導入法は共重合による方法でも、後反応による方法でもよい。
次に、疎水性の機能性化合物について説明する。
本発明において、機能性化合物とは、繊維に対して、繊維自体では発現することのできない特殊な付加価値を発現させるために配合される化合物を意味している。
このような機能性化合物は、疎水性PVA系ポリマーに対して非相溶性であるとともに、略均一に分散することによって、得られるPVA系繊維に対して、各種機能性を付加することが可能である。
前記疎水性ポリビニルアルコール系ポリマーに対して、疎水性の機能性化合物が略均一に分散している海島型複合繊維を得ることができる。
このようにして作製した海島型複合繊維から、海成分である水溶性PVA系ポリマー(A)を水などの水系溶媒を用いて溶出して除去することによって、疎水性PVA系ポリマーと、疎水性の機能性化合物とで構成されたPVA系極細繊維であって、前記機能性化合物は、前記疎水性PVA系ポリマーに略均一に分散されているPVA系極細繊維を得ることができる。
PVA系極細繊維の平均繊維径は、例えば0.01〜10μm程度であってもよく、好ましくは0.05〜5μm程度であってもよく、より好ましくは0.1〜3μm程度であってもよい。
機能性物質としてメソフェーズピッチを使用した場合、得られた極細複合繊維を焼成することによって極細炭素繊維を得ることができる。具体的には、得られた極細複合繊維に不融化処理を施し、次いで炭化および/または黒鉛化処理を行うことによって極細炭素繊維が得られる。不融化処理は、極細炭素繊維前駆体が軟化変形しない温度条件下で行われればよいが、低温で予備不融化処理後、軟化変形以下の温度でさらに本不融化を行うこともできる。不融化は、空気、酸素、オゾン、二酸化窒素、ハロゲン等のガス気流下における熱処理によって行われるが、取り扱い性の容易さから空気もしくは酸素の単独ガスまたはこれらを含む混合ガスであることが好ましい。ガス気流下における不融化の具体的な方法としては、好ましくは100〜350℃、より好ましくは150〜300℃の温度において、0.5〜24時間程度の時間処理することが好ましい。炭化処理は、例えば不活性ガス雰囲気下において最高到達温度500℃〜1500℃処理する方法が挙げられる。炭化した繊維はさらに1200℃〜2800℃、より好ましくは1500℃〜2500℃程度の温度で黒鉛化処理することにより、黒鉛化した極細炭素繊維とすることができる。
繊維の平均繊維径が小さすぎると工程通過性や生産性に乏しいため好ましくなく、大きすぎると均一な分散性が得られない虞がある。
例えば、分散性を高める観点から、炭素繊維は、平均繊維長が10μm以下であってもよく、好ましくは7μm以下であってもよく、より好ましくは5μm以下であってもよい。ここで、平均繊維長は、後述する実施例に記載された方法により測定された値を示す。
例えば、極細炭素繊維は、ラマンスペクトルにおけるDバンドとGバンドの強度比Id/Igが例えば0.05〜0.50であってもよく、好ましくは0.08〜0.40、より好ましくは0.10〜0.30であってもよい。ここで、DバンドとGバンドの強度比Id/Igは、後述する実施例に記載された方法により測定された値を示す。
Id/Igは、次の手順に従ってレーザーラマン装置によって求めることができる。測定には、(株)堀場製作所製LabRAM ARAMIS(レーザー波長532nm、照射時間:10秒、積算回数:5回)を使用した。Id/Igは、得られたラマンスペクトルをピーク分離した後、1580cm−1のGバンド強度に対する1360cm−1のDバンド強度の比によって求められる。
結晶格子面間隔d(002)は、広角X線回折装置によって求めることができる。測定には(株)リガク製Smartlabを使用し、CuKα線をX線源として測定した。封入管電圧は45kV、電流は200mAとした。測定により得られた回折プロファイルより、回折角2θ=24〜26度付近に現れる炭素002面に対応した回折ピークより、ブラッグの式を用いて算出することができる。
黒鉛化を経たピッチ系炭素繊維を走査型電子顕微鏡を用いて観察および写真撮影を行い、無作為に選択された10箇所の繊維径の平均値を平均繊維径とした。
黒鉛化を経たピッチ系炭素繊維を走査型電子顕微鏡を用いて観察および写真撮影を行い、無作為に選択された10箇所の繊維長の平均値を平均繊維長とした。
体積固有抵抗値は、試料を直径0.5cmの円筒中で圧密し、両端に10Vの電圧をかけた際の抵抗値から、以下の式により算出した。抵抗値の測定には三和電気計器(株)製デジタルマルチメーターPM3を使用した。
体積固有抵抗値(Ωcm)=
抵抗値(Ω)×試料の断面積(cm2)/試料間の長さ(cm)
平均重合度500、けん化度98.0モル%の水溶性PVAポリマーと、エチレン変性量が44モル%、けん化度99.5モル%、のエチレン変性PVAポリマーとを、重量比が70:30、両ポリマーの合計濃度が30重量%となるようにDMSO中に添加し、窒素雰囲気105℃の窒素雰囲気下にて加熱溶解した。さらに、これに軟化点350℃のメソフェーズピッチ(分級による粒子径10〜150nm)を、ポリマー100重量部に対して10重量部となるように添加し、分散して紡糸原液とした。得られた紡糸原液を、孔径0.12mm、ホール数40のノズルを通して液温5℃のメタノール固化浴中に乾湿式紡糸した。さらに、得られた繊維に液温25℃のメタノール浴中で4倍の湿延伸を施し、120℃の熱風にて乾燥した後、140℃の熱風炉にて全延伸倍率が7倍となるように乾熱延伸を行い、単糸繊度10dtexのフィラメントを得た。得られた繊維は水溶性ポリマーを海成分とし、エチレン変性PVAポリマーとメソフェーズピッチとの混合物を島成分とする海島型複合繊維となっていた。
さらに、PVA系極細繊維を空気中において150℃×24時間保持して予備不融化した後、210℃×3時間保持することによって本不融化し、不融化繊維を得た。上記のようにして得られた不融化繊維を、窒素雰囲気下、5℃/分の昇温速度で800℃まで昇温し、同温度で1時間保持することによって炭化を行った。
実施例1と同様の方法にて紡糸原液を調整した。得られた紡糸原液を、孔径2.0mm、ホール数1のノズルを通して液温5℃のメタノール固化浴中に乾湿式紡糸した。さらに得られた繊維に液温25℃のメタノール浴中で5.5倍の湿延伸を施し、120℃の熱風にて乾燥し、単糸繊度60dtexのモノフィラメントを得た。得られた繊維は水溶性ポリマーを海成分とし、エチレン変性PVAポリマーとメソフェーズピッチとの混合物を島成分とする海島型複合繊維となっていた。
さらに、PVA系極細繊維を、実施例1と同様の方法にて不融化、炭化を行った。
平均重合度500、けん化度98.0モル%の水溶性PVAポリマーと、エチレン変性量が44モル%、けん化度99.5モル%、のエチレン変性PVAポリマーとを、重量比が70:30、両ポリマーの合計濃度が30重量%となるようにDMSO中に添加し、窒素雰囲気105℃の窒素雰囲気下にて加熱溶解した。さらに、これに導電性付与剤としてカーボンブラック(平均粒子径35nm)をポリマー100重量部に対して10重量部となるように添加し、分散して紡糸原液とした。得られた紡糸原液を実施例1と同様の方法にて紡糸、延伸し、単糸繊度10dtexのフィラメントを得た。得られた繊維は水溶性ポリマーを海成分とし、エチレン変性PVAポリマーとカーボンブラックとの混合物を島成分とする海島型複合繊維となっていた。
ついで、得られた繊維を90℃の熱水浴に通して海成分である水溶性PVAポリマーを除去し、エチレン変性PVAポリマーとカーボンブラックとの混合物からなるPVA系極細繊維を得た。PVA系極細繊維の平均繊維径は、0.7μmであった。
得られた極細繊維の体積固有抵抗値を測定したところ、2.2×105Ωcmであり、良好な導電性を有していた。
平均重合度1700、けん化度99.7モル%のPVAポリマーと、軟化点350℃のメソフェーズピッチとをPVAポリマー100重量部に対して10重量部となるように混合し、105℃の窒素雰囲気下にて加熱溶解し、紡糸原液とした。得られた紡糸原液を、孔径0.12mm、ホール数40のノズルを通して液温5℃のメタノール固化浴中に乾湿式紡糸した。さらに液温25℃のメタノール浴中で3倍の湿延伸を施し、120℃の熱風にて乾燥した後、230℃の熱風炉にて全延伸倍率が15倍となるように乾熱延伸を行い、単糸繊度2.5dtexのフィラメントを得た。
平均重合度500、けん化度98.0モル%の水溶性PVAポリマーと、重合度1700、けん化度99.7モル%のPVAポリマーとを重量比が70:30、両ポリマーの合計濃度が30重量%となるようにDMSO中に添加し、窒素雰囲気105℃の窒素雰囲気下にて加熱溶解した。
平均重合度80万のPEOを濃度80重量%の水溶液としたもの100部と平均重合度1700、けん化度99.7モル%を濃度35重量%に調整した水溶液80部とメソフェーズピッチ10部とを加熱攪拌し、紡糸原液とした。この原液を乾式紡糸し、230℃の熱風炉にて全延伸倍率が7倍となるように乾熱延伸を行い、単糸繊度40dtexの複合繊維を得た。
導電性付与剤を加えない以外は実施例3と同様にして単糸繊度10dtexのフィラメントを得た。
ついで、得られた繊維を90℃の熱水浴に通して海成分である水溶性PVAポリマーを除去し、エチレン変性PVAポリマーからなるPVA系極細繊維を得た。PVA系極細繊維の平均繊維径は、0.7μmであった。
得られた極細繊維の体積固有抵抗値を測定したところ、3.8×1012Ω・cmであり、導電性は有していなかった。
Claims (12)
- 溶媒と、水溶性ポリビニルアルコール系ポリマーと、疎水性ポリビニルアルコール系ポリマーと、疎水性の機能性化合物とを混合した紡糸原液を準備する準備工程と、
この紡糸原液を、湿式紡糸または乾湿式紡糸し、機能性化合物が均一に分散した疎水性ポリビニルアルコール系ポリマーを島成分として、水溶性ポリビニルアルコール系ポリマーを海成分として備える海島型複合繊維を得る紡糸工程と、
を備える海島型複合繊維の製造方法であって、
前記疎水性ポリビニルアルコール系ポリマー100重量部に対する前記機能性化合物の割合が1〜80重量部である製造方法。 - 請求項1の製造方法において、水溶性ポリビニルアルコール系ポリマーおよび疎水性ポリビニルアルコール系ポリマーの総量100重量部に対する機能性化合物の割合が0.1〜50重量部である製造方法。
- 請求項1または2の製造方法において、疎水性ポリビニルアルコール系ポリマーが、エチレン−ビニルアルコール共重合体である製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項の製造方法において、機能性化合物が、易黒鉛化性炭素または易黒鉛化性有機化合物である製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項の製造方法において、機能性化合物が、メソフェーズピッチである製造方法。
- 疎水性ポリビニルアルコール系ポリマーを島成分として、水溶性ポリビニルアルコール系ポリマーを海成分として備える海島型複合繊維であって、
前記疎水性ポリビニルアルコール系ポリマーに対して、疎水性の機能性化合物が略均一に分散し、前記疎水性ポリビニルアルコール系ポリマー100重量部に対する前記機能性化合物の割合が1〜80重量部である海島型複合繊維。 - 請求項6に記載の海島型複合繊維から、水系溶媒により海成分である水溶性ポリビニルアルコール系ポリマーを溶出して除去して、ポリビニルアルコール系極細繊維を得る除去工程を備えるポリビニルアルコール系極細繊維の製造方法。
- 請求項7に記載されたポリビニルアルコール系極細繊維の製造方法により製造された、ポリビニルアルコール系極細繊維。
- 請求項8に記載のポリビニルアルコール系極細繊維であって、
前記機能性化合物は、前記疎水性ポリビニルアルコール系ポリマーに略均一に分散され、かつ
平均繊維径が0.01〜10μmであるポリビニルアルコール系極細繊維。 - 請求項9のポリビニルアルコール系極細繊維において、疎水性ポリビニルアルコール系ポリマー100重量部に対する前記機能性化合物の割合が1〜80重量部 の範囲であるポリビニルアルコール系極細繊維。
- 請求項9または10に記載のポリビニルアルコール系極細繊維を焼結することによって得られる極細炭素繊維。
- 請求項11記載の極細炭素繊維で構成された導電性材料。
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