JP5510970B2 - 炭素繊維、炭素繊維製造方法、前記炭素繊維を有する材 - Google Patents

炭素繊維、炭素繊維製造方法、前記炭素繊維を有する材 Download PDF

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Description

本発明は、特に、炭素繊維に関する。
炭素繊維(例えば、カーボンナノファイバーやカーボンナノチューブ)は、例えばリチウムイオン電池の導電助剤や導電性付与添加剤として、知られている。
炭素繊維の製法として、気相法やアーク放電法が知られている。この製法で得られた炭素繊維の繊維径は細い。例えば、1μm以下である。しかし、気相法やアーク放電法は、金属触媒(例えば、コバルト、ニッケル、鉄など)を必要とする。この為、コストが高い。更には、金属触媒の完全な除去が困難である。この為、電極材への応用には問題が有る。
炭素繊維の製法として、ピッチ(原料)を用いたメルトブロー法や静電紡糸法が知られている。例えば、炭素源(例えば、ピッチ)含有熱可塑性樹脂がメルトブロー法により紡糸された後、前記熱可塑性樹脂を熱分解し、炭化、黒鉛化する方法が提案されている(特許文献1、非特許文献1)。この製法で得られた炭素繊維の繊維径は細い。しかしながら、メルトブロー法にあっては、繊維径の制御が困難である。従って、メルトブロー法で得られた炭素繊維の繊維径はバラツキが大きい。ピッチがポリビニルアルコール中に分散した分散液を紡糸する方法が提案されている(特許文献2)。すなわち、ピッチがポリビニルアルコール中に分散した海島構造(ピッチが島状に分布)で、かつ、延伸された繊維から、溶媒によって、ポリビニルアルコール分が除去され、残された繊維状ピッチを炭化、黒鉛化する方法である。特許文献1の原理と特許文献2の原理とは同じである。従って、この方法で得られた炭素繊維の繊維径はバラツキが大きい。
メソフェーズピッチが分散した高分子溶液を、静電紡糸した後、炭化、黒鉛化する方法が提案されている(特許文献3)。この方法で得られた炭素繊維の繊維径はバラツキが小さい。しかしながら、上記特許文献3に記載の方法にあっては、静電紡糸法を用いる為、生産効率が低い。大量生産(例えば、1時間に1kg程度)が困難である。このことはコストが高いことを意味する。
H.Ono,A.Oya/Carbon 44(2006)682−686
特開2009−079346 特開2005−097792 特許第4697901
本発明が解決しようとする課題は前記問題点を解決することである。
すなわち、本発明が解決しようとする第1の課題は、繊維径が小さく、かつ、繊維径のバラツキも少なく、更には金属粉の混入が少なく、しかも生産性が高く、低廉なコストで炭素繊維が得られる技術を提供することである。
ところで、本発明者は、前記問題点を解決する為の検討を、鋭意、推し進めて行く中、次の事に気付いた。すなわち、これまでの炭素繊維は、長手方向に沿った側面が曲面であることに気付いた。例えば、長手方向に対して直交する方向での断面(縦断面)が、極論すると、円形であることに気付いた。従って、このような縦断面が略円形の炭素繊維を接触させた場合、炭素繊維同士は、極論すると、線(点)で接触しているに過ぎない。炭素繊維同士の接触が面接触では無い(接触面積が広くない)。このことは、円柱と円柱とを接触させれば理解できる。従って、炭素繊維自体の導電性が高くても、炭素繊維同士の接触部位での電気抵抗が大きく、全体としての導電性が低い。
従って、本発明が解決しようとする第2の課題は、長手方向に沿った側面にほぼ平坦な面を持つ炭素繊維を提供することである。例えば、縦断面が角形(例えば、長方形などの四角形。勿論、四角形に限られず、三角形であっても、側面には平坦面が有る。)の炭素繊維を提供することである。斯かる形状の炭素繊維が用いられると、平坦面同士が接触した場合には面接触となる。従って、接触抵抗が小さくなり、導電性の向上が期待できる。
前記第1の課題は、
炭素繊維の製造方法であって、
ポリビニルアルコール及びピッチを含む分散液が作製される分散液作製工程と、
前記分散液が用いられて、乾式紡糸または湿式紡糸により、炭素繊維前駆体が作製される紡糸工程と、
前記紡糸工程で得られた炭素繊維前駆体が炭素繊維に変性させられる変性工程
とを具備することを特徴とする炭素繊維の製造方法によって解決される。
好ましくは、前記炭素繊維の製造方法であって、前記分散液作製工程で用いられたピッチは粒径が1μm以下のものであり、前記紡糸工程で紡糸される炭素繊維前駆体の繊維径が30μm以下のものであることを特徴とする炭素繊維の製造方法によって解決される。
好ましくは、前記炭素繊維の製造方法であって、前記紡糸工程が乾式紡糸装置又は湿式紡糸装置による工程であることを特徴とする炭素繊維の製造方法によって解決される。
好ましくは、前記炭素繊維の製造方法であって、得られた炭素繊維は長手方向に沿っての側面に平坦面を有することを特徴とする炭素繊維の製造方法によって解決される。
好ましくは、前記炭素繊維の製造方法であって、前記変性工程で得られた炭素繊維がメディアレスミル法によって切断される切断工程を具備することを特徴とする炭素繊維の製造方法によって解決される。
前記の課題は、前記炭素繊維の製造方法によって得られてなることを特徴とする炭素繊維によって解決される。
前記第2の課題は、長手方向に沿っての側面に平坦面を有することを特徴とする炭素繊維によって解決される。
前記炭素繊維であって、好ましくは、長手方向に直交する方向での断面が略角形であることを特徴とする炭素繊維によって解決される。
前記炭素繊維であって、好ましくは、長手方向に直交する方向での断面が略長方形であり、前記長方形の長辺の長さが0.5〜20μm、短辺の長さが0.1〜10μm、かつ、(長辺の長さ)/(短辺の長さ)が2〜100であることを特徴とする炭素繊維によって解決される。
前記炭素繊維であって、好ましくは、長さが1〜500μmであることを特徴とする炭素繊維によって解決される。
本発明は、電気デバイスに用いられる部材であって、前記炭素繊維が用いられて構成されてなることを特徴とする電気デバイス用部材を提供する。本発明は、前記部材が蓄電池の電極であることを特徴とする電気デバイス用部材を提供する。本発明は、前記部材がリチウムイオン二次電池の電極であることを特徴とする電気デバイス用部材を提供する。
本発明は、電気デバイスであって、前記炭素繊維が用いられて構成されてなる部材を具備することを特徴とする電気デバイスを提供する。
本発明は、高分子複合材であって、前記炭素繊維を含むことを特徴とする高分子複合材を提供する。
次の特長の炭素繊維が得られる。
(1) 繊維径が小さい。
(2) 繊維径のバラツキが少ない。
(3) 金属粉の混入が少ない。
(4) 生産性が高く、コストが低廉である。
(5) 長手方向に沿った側面にほぼ平坦な面を持つ。例えば、断面が角形である。
乾式紡糸装置の概略図 SEM写真 SEM写真 SEM写真
第1の発明は炭素繊維の製造方法である。特に、長手方向に沿っての側面に平坦面を有する炭素繊維の製造方法である。例えば、長手方向に直交する方向での断面が略角形(角形は、例えば四角形)の炭素繊維の製造方法である。本方法は分散液作製工程を具備する。この分散液作製工程では、ポリビニルアルコールとピッチとを含む分散液が作製される。用いられるピッチは、好ましくは、粒径が1μm以下である。下限値は、例えば10nmである。本方法は紡糸工程を具備する。この紡糸工程では乾式または湿式紡糸装置が用いられる。例えば、乾式紡糸装置が用いられる。或いは、湿式紡糸装置が用いられる。前記紡糸工程では、前記分散液および前記紡糸装置が用いられ、炭素繊維前駆体が作製(紡糸)される。前記紡糸工程で紡糸された炭素繊維前駆体の繊維径は、好ましくは、30μm以下である。下限値は、例えば100nmである。本方法は変性工程を具備する。この変性工程では、前記炭素繊維前駆体が炭素繊維に変性させられる。この変性工程は、例えば熱処理(加熱)工程である。本方法は、好ましくは、切断工程を具備する。この切断工程において、前記変性工程で得られた炭素繊維が切断される。前記切断工程では、好ましくは、メディアレスミル法が用いられる。例えば、エアージェットミル法が用いられる。或いは、超音波照射法が用いられる。
第2の発明は炭素繊維である。例えば、前記炭素繊維の製造方法によって製造された炭素繊維である。本炭素繊維は、長手方向に沿っての側面に平坦面を有する。例えば、長手方向に直交する方向での断面が略角形である。角形としては、例えば三角形、四角形(長方形(本発明において、形は、数学的に厳密な意味合いを有するものでは無い。従って、例えば平行四辺形のような形も長方形に含まれると見做される。)、正方形)、五角形、……が挙げられる。例えば、長手方向に直交する方向での断面が略長方形である。この長方形の長辺の長さが0.5〜20μm、短辺の長さが0.1〜10μm、かつ、(長辺の長さ)/(短辺の長さ)が2〜100である。長さは1〜500μmである。本発明における角形(例えば、四角形)は、数学的に厳密な意味での角形(例えば、四角形)に限定されず、角において多少の丸味を帯びた角形(例えば、四角形)をも意味する。
第3の発明は電気デバイスに用いられる部材である。本部材は、例えば蓄電池の電極である。前記蓄電池は、例えばリチウムイオン二次電池である。前記蓄電池は、例えばキャパシタ(電気2重層キャパシタ)である。前記キャパシタは、例えばリチウムイオンキャパシタである。本部材は、前記炭素繊維が用いられて構成されてなる。
第4の発明は電気デバイスである。本デバイスは、例えば蓄電池である。本デバイスは、前記炭素繊維が用いられて構成されてなる部材を具備する。
第5の発明は高分子複合材である。本高分子複合材は前記炭素繊維を含む。
以下、更に詳しく説明する。
[分散液作製工程(工程I)]
前記分散液は、ポリビニルアルコールとピッチとを含む。
前記ポリビニルアルコールは、酢酸ビニル単独からなるホモポリマー、又はコポリマー(共重合体)が挙げられる。共重合体の具体例としては、オキシアルキレン基含有PVA
や、アリルアルコール変性PVA等が挙げられる。
ポリビニルアルコールは如何なる物性のものでも良い。しかしながら、機械的特性、耐水性、炭化工程での形状維持などの観点から、次の物性のポリビニルアルコールが好ましい。粘度平均重合度が500以上である。特に、1000以上である。ケン化度が99モル%以上である。特に、99.5モル%以上である。共重合体の場合、共重合成分が30モル%以下である。特に、10モル%以下である。
VOC(揮発性有機化合物)対策の観点から、好ましい溶媒は、水、アルコール、又はこれ等の混合物である。特に好ましい溶媒は水である。但し、後述する湿・湿式紡糸では、溶媒の揮発が起こらない。従って、この場合には、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の極性溶媒を用いることも出来る。この場合、有機溶媒は、一種単独又は二種以上を混合して使用することが出来る。但し、繊維の製造工程の簡略化の点で、少なくともDMSOを一成分として用いるのが好ましい。溶媒量は、前記ポリビニルアルコール100質量部に対して、好ましくは、100〜2000質量部である。
前記ピッチは、例えば粒径が1μm以下である。前記ピッチは、実質的に、炭素のみからなる。ピッチは前記溶媒に溶解しない。好ましいピッチは、硬ピッチ又はメソフェーズピッチである。特に、メソフェーズピッチである。本発明では、ピッチ以外の炭素粒子が併用される場合もある。前記メソフェーズピッチは、好ましくは、その固定炭素量が50〜100%(より好ましくは70〜95%。更に好ましくは80〜90%)である。前記メソフェーズピッチは、好ましくは、その融点が250〜400℃(より好ましくは280〜350℃。更に好ましくは300〜330℃)である。前記炭素粒子は、その粒径(分散液における炭素粒子の粒径)が10〜1000nm(好ましくは50nm以上。更に好ましくは100nm以上。より好ましくは500nm以下。更に好ましくは300nm以下。)である。
前記ポリビニルアルコールと前記ピッチとは、好ましくは、次の割合である。前記ポリビニルアルコールが多すぎると、炭化後に残る炭素分が少なくなる。逆に、前記ポリビニルアルコールが少なすぎると、紡糸が困難になる。従って、好ましくは、前記ポリビニルアルコール100質量部に対して、前記ピッチが0.01〜20質量部(より好ましくは、0.1質量部以上。10質量部以下。)である。
前記ピッチ分散液は、強度や導電性の観点から、必要に応じて、カーボンナノチューブを含有する。カーボンナノチューブは、例えばシングルウォールカーボンナノチューブ(SWNT)である。若しくは、マルチウォールカーボンナノチューブ(MWNT)である。又は、これ等の混合物である。実用性の観点から、マルチウォールカーボンナノチューブ(MWNT)が用いられる。カーボンナノチューブの含有には、カーボンナノチューブ粉体(又はカーボンナノチューブ分散液)がピッチ分散液に添加される方法が採用される。前記カーボンナノチューブ分散液と前記ピッチ分散液との混合は好ましい。前記カーボンナノチューブの量は、好ましくは、前記ピッチ100質量部に対して、0.01〜10質量部(より好ましくは0.1〜1質量部)である。
前記ピッチ分散液は、必要に応じて、黒鉛化助触媒を含有する。黒鉛化助触媒は黒鉛化度を促進させる作用を持つ触媒である。前記黒鉛化助触媒は、例えばホウ素類(例えば、ホウ素、ホウ酸エステル、炭化ホウ素など)やケイ素類(例えば、ケイ素、ケイ酸エステル、炭化ケイ素など)である。好ましい黒鉛化助触媒は炭化ホウ素または炭化ケイ素である。前記黒鉛化助触媒の量は、好ましくは、ピッチに対して、1〜10000質量ppm(より好ましくは10〜1000質量ppm)である。前記黒鉛化助触媒が液体の場合、前記黒鉛化助触媒と前記ピッチ分散液とが混合される。前記黒鉛化助触媒が粉体の場合、先ず、黒鉛化助触媒の分散液が作製される。そして、この分散液と前記ピッチ分散液とが混合される。
前記ピッチ分散液は、必要に応じて、分散剤を含有する。前記分散剤は、例えば界面活性剤または高分子である。前記分散剤の量は、好ましくは、ピッチ100質量部に対して、1〜200質量部(より好ましくは10〜100質量部)である。
前記分散液の作製には、好ましくは、混合工程と微細化工程とを有する。前記混合工程は、前記ポリビニルアルコールと前記ピッチとが混合される工程である。前記微細化工程は、前記ピッチが微細化される工程である。前記微細化工程は、例えば前記ピッチにせん断力が付与される工程である。これにより、ピッチが微細化される。前記混合工程と前記微細化工程とは、どちらが先でも良い。同時に行われても良い。
前記混合工程においては、前記ポリビニルアルコールと前記ピッチとの双方が粉体の場合と、一方が粉体で他方が溶液(分散液)の場合と、双方が溶液(分散液)の場合とが有る。操作性の観点から、好ましくは、前記ポリビニルアルコールおよび前記ピッチが、共に、溶液(分散液)の場合である。
前記微細化工程では、例えばメディアレスミルが用いられる。或いは、ビーズミルが用いられる。又は、超音波照射機が用いられる。異物の混入を防ぎたい場合、好ましくは、メディアレスミルが用いられる。ピッチの粒径を制御したい場合、好ましくは、ビーズミルが用いられる。簡便な操作で行いたい場合、好ましくは、超音波照射機が用いられる。本発明においては、ピッチの粒径制御が大事であるから、好ましくは、ビーズミルが用いられる。
紡糸工程(工程II)]
本工程では乾式または湿式紡糸法が用いられる。紡糸法には、固化を空気中で行う乾式紡糸法と、ポリビニルアルコールが溶けない溶媒中で行う湿式紡糸法とが有る。何れの方法も用いることが出来る。乾式紡糸装置の概略図が図1に示される。1はポリビニルアルコール/ピッチ分散液のタンクである。タンク1内のポリビニルアルコール/ピッチ分散液が紡糸ノズル2を介して紡糸される。この時、加熱空気3によって、溶媒が蒸発する。そして、糸4として巻き取られる。湿式紡糸では、加熱空気の代わりに、ポリビニルアルコールが溶けない溶剤が用いられる。延伸倍率が大きすぎると、糸が切れる。延伸倍率が小さすぎると、繊維径が細くならない。従って、延伸倍率は、好ましくは、2〜50倍である。3倍以上が更に好ましい。20倍以下が更に好ましい。本工程によって炭素繊維前駆体(炭素繊維前駆体製の繊維:糸)が得られる。前記繊維径が大き過ぎると、炭化後の繊維径が大きくなり過ぎる。前記繊維径が小さすぎると、効率が悪い。従って、前記炭素繊維前駆体の繊維径は、好ましくは、1〜30μmである。より好ましくは、2〜20μmである。
[変性工程(工程III)]
[前記前駆体の熱処理(工程III−1)]
炭素繊維が前記炭素繊維前駆体から得られる。これは、前記炭素繊維前駆体が炭素繊維に変性されることで得られる。変性処理は、例えば熱処理である。特に、酸化性ガス雰囲気下での熱処理である。この熱処理により、前記炭素繊維前駆体を構成しているポリビニルアルコールが除去される。すなわち、ピッチ以外の炭素源が除去される。かつ、前記ピッチの不融化が行われる。
本工程は、好ましくは、前記紡糸工程(工程II)の後で行われる。
本工程における酸化性ガスは、酸素原子を含有した化合物、又は電子アクセプター化合物である。前記酸化性ガスは、例えば空気、酸素、ハロゲンガス、二酸化窒素、オゾン、水蒸気、又は二酸化炭素である。これらの中でも、コスト、及び低温での速やかな不融化の観点から、好ましくは、空気である。或いは、ハロゲンガスを含むガスである。前記ハロゲンガスは、例えばフッ素、ヨウ素、臭素などである。中でもヨウ素である。又は、前記成分の混合ガスである。
前記熱処理の温度は、好ましくは、100〜400℃(より好ましくは150〜350℃)である。前記熱処理の時間は、好ましくは、3分〜24時間(より好ましくは5分〜2時間)である。
本工程で不融化炭素繊維前駆体が得られる。この不融化炭素繊維前駆体は、好ましくは、その軟化点が400℃(より好ましくは500℃)以上である。
好ましくは、本工程に先立って、前記ポリビニルアルコールは結晶化処理が施される。すなわち、好ましくは、前記ポリビニルアルコールは、ガラス転移温度以上で、融点以下の温度に、約1分〜1時間保持される。ポリビニルアルコールは、ガラス転移温度が約50〜90℃、融点が約150〜250℃である。
本工程は枚様式で行われる。或いは、ロールトゥーロールで連続的に行われる。又は、ロール状態で熱処理される。生産性の観点から、好ましくは、ロールトゥーロールでの連続的熱処理である。
[炭化処理(工程III−2)]
炭素繊維を得る為、好ましくは、炭化処理が行われる。この炭化処理は熱処理である。好ましくは、不活性ガス又は還元性ガス雰囲気下での熱処理である。本工程を経て、前記不融化炭素繊維前駆体が炭素繊維になる。本工程は、好ましくは、前記工程III−1の後に行われる。
本工程における不活性ガスは、炭化処理中に、不融化炭素繊維前駆体と化学反応しないガスである。例えば、窒素、アルゴン、クリプトン、二酸化炭素等である。還元性ガスは水素、一酸化炭素などである。これらの中でも、コストの観点から、好ましくは、窒素ガス、二酸化炭素である。
本工程の処理温度は、好ましくは、500〜2000℃(より好ましくは600〜1500℃)である。500℃未満の低い温度では、炭化が進み難い。2000℃を越えた高い温度では、黒鉛化が起きる。但し、後述の黒鉛化処理が行われる場合、2000℃を越える昇温は差し支えない。本工程の処理時間は、好ましくは、5分〜24時間(より好ましくは30分〜2時間)である。
[黒鉛化処理(工程III−3)]
好ましくは、黒鉛化処理が行われる。黒鉛化処理は、好ましくは、不活性ガス雰囲気下で行われる。本工程は、炭素繊維がリチウムイオン電池の導電助剤などに用いられる場合、大事な工程である。本工程は、好ましくは、前記工程III−2の後に行われる。
本工程において、不活性ガスは、黒鉛化処理中に、炭素繊維製前駆体と化学反応しないガスである。例えば、アルゴン、クリプトン等である。窒素ガスは、電離を起こすので、好ましくない。
本工程の処理温度は、好ましくは、2000〜3500℃(より好ましくは2300〜3200℃)である。処理時間は、好ましくは、1時間以下(より好ましくは0.1〜10分)である。但し、アチソン炉が用いられた場合には、昇温(高温)に時間が掛かる。この場合、例えば1時間以上の処理時間が掛かる。
本工程は前記温度に保持することで実施される。特に、黒鉛ルツボや黒鉛電極への通電により実施される。すなわち、通電で発生するジュール熱により前記温度に保持される。マイクロ波加熱によっても、黒鉛化が可能である。製造コストの観点から、黒鉛化処理は、好ましくは、通電加熱である。特に、好ましくは、ロールトゥーロールを用いた連続処理である。
[切断工程(工程IV)]
本切断工程は、好ましくは、メディアレスミル法による工程である。前記工程で得られた炭素繊維が本工程で切断される。これにより、炭素繊維の長さが整えられる。本工程は、例えば前記工程II(若しくは、前記工程III−1、或いは前記工程III−2、又は前記工程III−3)で得られた炭素繊維が粉砕される工程である。好ましくは、前記工程III−2,III−3で得られた炭素繊維が粉砕される工程である。炭素繊維の粉砕によって炭素繊維の長さが揃う。
切断工程にはメディアレスミル法が用いられる。メディアレスミル法は、炭素繊維同士をぶつけて粉砕する方法である。メディアレスミル法は、ボールミル法(ボール同士を擦り合わせ、そのシェアを利用する方法)、カッターミル法(カッターを対象物にぶつける方法)、ピンミル法(ピンを対象物にぶつける方法)とは異なる。メディアレスミル法が採用されると、適度な力が炭素繊維に与えられる。そして、本発明の特長が大きく奏される。メディアレスミル法には、例えば超音波照射、エアージェットミル、ウォータージェットミルなどが挙げられる。中でも、エアージェットミルは、効率が高いことから、好ましい。
[炭素繊維]
上記のようにして得られた炭素繊維は、その形状に、特徴を有する。これまでの炭素繊維は、その断面が、略円形であった。ところが、本発明の炭素繊維は、長手方向に沿った側面に平坦面を有している。このような形状であるから、炭素繊維同士が重なる(接触する)と、炭素繊維同士の接触個所は面接触である(接触面積が広い)。従って、炭素繊維と炭素繊維との接触個所における抵抗が小さい。本発明の炭素繊維は、その断面が、例えば四角形(長手方向に直交する方向での断面が四角形)である。図3のSEM写真を参照すると、本発明の炭素繊維の形状の特異性が理解される。前記四角形は、特に、長方形である。前記長方形の長辺は、好ましくは、0.5〜20μmである。より好ましくは、2μm以上である。10μm以下である。前記長方形の短辺は、好ましくは、0.1〜10μmである。より好ましくは、0.2μm以上である。3μm以下である。(前記長辺の長さ)/(前記短辺の長さ)は、好ましくは、2〜100である。より好ましくは3以上である。10以下である。これは、上記以外の寸法のものになると、形状が保持でき難いからである。前記炭素繊維の長さが長すぎると、取扱い中に、折れる恐れが有る。逆に、短すぎると、接触個所(数)が多くなる。接触数が多いことは、接触抵抗が大きくなり、導電性が低下する。このような観点から、炭素繊維の長さは、好ましくは、1〜500μmである。より好ましくは2μm以上である。100μm以下である。
[電極]
前記炭素繊維は、電気素子(電子素子も電気素子の中に含まれる)の部材に用いられる。例えば、蓄電池、キャパシタ、燃料電池などの部材に用いられる。
前記炭素繊維は、蓄電池の電極に応用される。蓄電池は、例えば鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、ナトリウム硫黄電池、レドックスフロー電池などである。中でも、リチウムイオン電池である。前記電極は、好ましくは、正極及び負極である。好ましくは導電剤である。
リチウムイオン電池は正極、負極、セパレータ、電解液などの部材からなる。正極や負極は次のようにして構成される。すなわち、活物質、導電剤、結着剤などを含む混合物が、集電体(例えば、アルミ箔や銅箔など)上に積層されることで構成される。
負極活物質として、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、又は活性炭などの炭素材料が挙げられる。リチウムと合金を形成可能な金属元素の単体、合金および化合物、並びにリチウムと合金を形成可能な半金属元素の単体、合金および化合物からなる群の中の少なくとも一種を含んでいるものが用いられる(これらを以下合金系負極活物質と称する)。
前記金属元素あるいは半金属元素としては、スズ(Sn),鉛(Pb),アルミニウム,インジウム(In),ケイ素(Si),亜鉛(Zn),アンチモン(Sb),ビスマス(Bi),カドミウム(Cd),マグネシウム(Mg),ホウ素(B),ガリウム(Ga),ゲルマニウム(Ge),ヒ素(As),銀(Ag),ジルコニウム(Zr),イットリウム(Y)またはハフニウム(Hf)が挙げられる。
具体的な化合物例としては、LiAl,AlSb,CuMgSb,SiB,SiB,MgSi,MgSn,NiSi,TiSi,MoSi,CoSi,NiSi,CaSi,CrSi,CuSi,FeSi,MnSi,NbSi,TaSi,VSi,WSi,ZnSi,SiC,Si,SiO,SiOv(0<v≦2),SnOw(0<w≦2),SnSiO,LiSiOあるいはLiSnOなどがある。
リチウムチタン複合酸化物(スピネル型、ラムステライト型等)も好ましい。
正極活物質は、リチウムイオンを吸蔵および放出できる物質であれば良い。好ましい例としては、例えばリチウム含有複合金属酸化物、オリビン型リン酸リチウムなどが挙げられる。
リチウム含有複合金属酸化物は、リチウムと遷移金属とを含む金属酸化物である。或いは、金属酸化物中の遷移金属の一部が異種元素によって置換された金属酸化物である。遷移金属元素として、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄の群の中の少なくとも一種以上を含有するものがより好ましい。
リチウム含有複合金属酸化物の具体例としては、例えばLiCoO,LiNiO,LiMnO,LiCoNi1−m,LiCo1−m,LiNi1−m,LiMn,LiMn2−mMnO(Mは、Na,Mg,Sc,Y,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Al,Cr,Pb,Sb,Bの群の中から選ばれる少なくとも一つの元素である。k=0〜1.2,m=0〜0.9,n=2.0〜2.3)などが挙げられる。
オリビン型結晶構造を有し、一般式LiFe1−yPO(Mは、Co,Ni,Cu,Zn,Al,Sn,B,Ga,Cr,V,Ti,Mg,Ca,Srの群の中から選ばれる少なくとも一つの元素である。0.9<x<1.2,0≦y<0.3)で表される化合物(リチウム鉄リン酸化物)を用いることも出来る。このようなリチウム鉄リン酸化物としては、例えばLiFePOが好適である。
リチウムチオレートとしては、ヨーロッパ特許第415856号公報に述べられている一般式X−S−R−S−(S−R−S)n−S−R−S−X′で表される化合物が用いられる。
セパレータは、合成樹脂(例えばポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン,ポリプロピレンあるいはポリエチレン等)製の多孔質膜、又はセラミック製の多孔質膜により構成される。2種以上の多孔質膜が積層されたものでも良い。
電解液は非水溶媒と電解質塩とを含有する。非水溶媒は、例えば環状炭酸エステル(炭酸プロピレン、炭酸エチレン等)、鎖状エステル(炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル等)、エーテル類(γ−ブチロラクトン、スルホラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等)である。これらは単独でも、複数種の混合物でも良い。炭酸エステルは、酸化安定性の観点から、好ましい。
電解質塩は、例えばLiBF,LiClO,LiPF,LiSbF,LiAsF,LiAlCl,LiCFSO,LiCFCO,LiSCN、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiBCl,LiB10Cl10、ハロゲン化リチウム(LiCl,LiBr,LiI等)、ホウ酸塩類(ビス(1,2−ベンゼンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,3−ナフタレンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,2’−ビフェニルジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(5−フルオロ−2−オレート−1−ベンゼンスルホン酸−O,O’)ホウ酸リチウム等)、イミド塩類(LiN(CFSO,LiN(CFSO)(CSO)等)である。LiPF,LiBFなどのリチウム塩は好ましい。LiPFは特に好ましい。
電解液として、高分子化合物に電解液が保持されたゲル状の電解質が用いられても良い。前記高分子化合物は、例えばポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとポリヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリカーボネート等である。電気化学的安定性の観点から、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイドの構造を持つ高分子化合物が好ましい。
導電剤は、例えばグラファイト(天然黒鉛、人造黒鉛など)、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等)、導電性繊維(炭素繊維、金属繊維)、金属(Al等)粉末、導電性ウィスカー(酸化亜鉛、チタン酸カリウムなど)、導電性金属酸化物(酸化チタン等)、有機導電性材料(フェニレン誘導体など)、フッ化カーボン等である。
結着剤は、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ヘキシル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ヘキシル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルホン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、変性アクリルゴム、カルボキシメチルセルロース等である。
本発明の炭素繊維は導電助剤として用いられる。リチウムイオン電池の正極は上記の正極活物質、導電材、結着剤の混合物からなる。正極活物質はコバルト酸リチウムなど導電性のない材料が使われている。前記炭素繊維が用いられた場合、内部抵抗が低減される。リチウムイオン電池において、導電性の低い合金系の負極材が用いられた場合、負極の導電助剤として前記炭素繊維が利用できる。導電助剤の量は、電極に用いる全活物質量に対して、0.1〜20質量%である。より好ましくは、0.5〜10質量%である。特に好ましくは0.5〜3質量%である。
本発明の材料は、負極活物質に用いることが出来る。この場合、炭素繊維のみで構成することが出来る。尚、従来の活物質と併用しても良い。併用の場合、全負極活物質の量に対する前記炭素繊維の量が0.1〜50質量%であることが好ましい。1〜30質量%の場合が更に好ましい。1〜10質量%の場合が特に好ましい。
[高分子複合材]
本発明の炭素繊維は高分子複合材の導電助剤として用いることが出来る。母材となる高分子には、格別な制限はない。例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ABS樹脂、ホリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)等の樹脂(硬質な樹脂)が挙げられる。又、軟質な樹脂であっても良い。例えば、ポリ塩化ビニル、天然ゴム、スチレンブタジエンゴムなどでも良い。アクリル系の粘着材であっても良い。光硬化性樹脂であっても良い。エポキシ樹脂、ポリビニルアルコールや澱粉などの接着剤であっても良い。添加量は、高分子材の種類によって異なる。炭素繊維の添加量(含有量)が多すぎると、成型が困難になる。逆に、少なすぎると、導電性が低下する。従って、炭素繊維の含有量は0.01〜80質量%が好ましい。より好ましくは0.1質量%以上である。30質量%以下である。
以下、具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明は、以下の実施例に限定されるものでは無い。
[実施例1]
1000質量部のポリビニルアルコール(重合度=1900、鹸化度=99%)と、100質量部のメソフェーズピッチ(商品名:AR:三菱ガス化学株式会社社製)と、10000質量部の水とが、ビーズミルで、混合された。これにより、ポリビニルアルコールが溶解したメソフェーズピッチ分散液が作製された。この分散液中の炭素粒子の粒径は250nm(測定装置:LA−950:株式会社堀場製作所製)であった。
上記分散液が用いられ、かつ、乾式紡糸装置(図1参照)が用いられ、40デシテックス18フィラメントの紡糸(延伸倍率=4.5倍)が行われた。この方法によれば、1時間で、黒鉛化後の重量に換算して5kg相当の紡糸を行うことが出来た。
紡糸により得られた炭素繊維前駆体のSEM写真(SEM装置:VE−8800 株式会社KEYENCE製)が図2に示される。紡糸繊維は、真ん中が多少窪んだ楕円形で、短繊維径が12μm、長繊維径が25μmであった。
上記炭素繊維前駆体に対して、空気中で、1時間の加熱(300℃)が行われた。この後、アルゴンガス雰囲気下で、加熱(900℃)が行われた。次いで、黒鉛化炉で、加熱(3000℃)が行われた。
上記のようにして得られた炭素繊維10mgをガラス瓶に入れ、水を10g投入し、超音波照射を行った。これにより、炭素繊維の切断が行われた。得られた炭素繊維分散水がフィルターで濾過され、炭素繊維が回収された。この回収された炭素繊維の平均長さは25μmであった。炭素繊維の断面におけるSEM写真が図3に示される。これによれば、縦断面(長手方向に対して直交する方向での断面)の形は略長方形(長辺の長さ=10μm、短辺の長さ=4μm、長辺の長さ/短辺の長さ=2.5)であることが判る。
[比較例1]
1000質量部のポリビニルアルコール(商品名:ポバール117:株式会社クラレ製)と、200質量部のメソフェーズピッチ(商品名:AR:三菱ガス化学株式会社社製)と、8000質量部の水とが、ビーズミルで、混合された。これにより、ポリビニルアルコールが溶解したメソフェーズピッチ分散液が作製された。
上記分散液と静電紡糸装置とが用いられ、静電紡糸が行われた。すなわち、静電紡糸装置の捕集体上に炭素繊維前駆体製の不織布が作製された。この方法によれば、1時間で、黒鉛化後の重量に換算して0.02kg相当の紡糸が行われた(不織布が得られた)。
上記不織布の積層物に対して、空気中で、10分間の加熱(150℃)が行われた。この後、1時間の加熱(300℃)が行われた。この後、アルゴンガス雰囲気下で、加熱(900℃)が行われた。次いで、黒鉛化炉で、加熱(2800℃)が行われた。このようにして得られた炭素繊維不織布が粉砕され、炭素繊維が得られた。このようにして得られた炭素繊維のSEM写真が図5に示される。図4から判る通り、本比較例1の炭素繊維の断面形状は、本発明の如きの四角形では無く、略円形である。
[比較例2]
実施例1において、ポリビニルアルコールの代わりにポリエチレンオキサイド(商品名:ポリエチレングリコール2,000,000:和光純薬工業株式会社製)が用いられた以外は同様に行われた。
その結果、空気中で加熱(150℃)時に溶融し炭素繊維が得られなかった。
[比較例3]
実施例1において、メソフェーズピッチの代わりにカーボンブラック(製品名:RCF#30 三菱化学社製)が用いられた以外は同様に行われた。
その結果、カーボンブラックの分散性が悪く紡糸できなかった。
[実施例2]
実施例1において1000質量部のポリビニルアルコール(重合度=1900、鹸化度=99%)と、5質量部のメソフェーズピッチ(商品名:AR:三菱ガス化学株式会社社製)と、10000質量部の水を用いた以外は同様に行われた。
その結果、縦断面(長手方向に対して直交する方向での断面)の形は略長方形の炭素繊維(長辺の長さ=5μm、短辺の長さ=1μm、長辺の長さ/短辺の長さ=5)が得られた。
[実施例3]
実施例1において1000質量部のポリビニルアルコール(重合度=1900、鹸化度=99%)と、300質量部のメソフェーズピッチ(商品名:AR:三菱ガス化学株式会社社製)と、10000質量部の水を用いた以外は同様に行われた。
その結果、縦断面(長手方向に対して直交する方向での断面)の形は略長方形の炭素繊維(長辺の長さ=12μm、短辺の長さ=3μm、長辺の長さ/短辺の長さ=4)が得られた。
[実施例4]
実施例1において、乾式紡糸装置の代わりに湿式紡糸装置を用いた。
その結果、縦断面(長手方向に対して直交する方向での断面)の形は略長方形の炭素繊維(長辺の長さ=10μm、短辺の長さ=5μm、長辺の長さ/短辺の長さ=2)が得られた。
1 分散液タンク
2 紡糸ノズル
3 加熱空気
4 糸

Claims (16)

  1. 炭素繊維の製造方法であって、
    ポリビニルアルコール及びピッチを含む分散液が作製される分散液作製工程と、
    前記分散液が用いられて、乾式紡糸または湿式紡糸により、炭素繊維前駆体が作製される紡糸工程と、
    前記紡糸工程で得られた炭素繊維前駆体が炭素繊維に変性させられる変性工程
    とを具備することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
  2. 紡糸工程が乾式紡糸装置による工程である
    ことを特徴とする請求項1の炭素繊維の製造方法。
  3. 紡糸工程が湿式紡糸装置による工程である
    ことを特徴とする請求項1の炭素繊維の製造方法。
  4. 前記分散液作製工程で用いられたピッチは粒径が1μm以下のものであり、
    前記紡糸工程で紡糸される炭素繊維前駆体の繊維径が30μm以下のものである
    ことを特徴とする請求項1の炭素繊維の製造方法。
  5. 得られた炭素繊維は長手方向に沿っての側面に平坦面を有する
    ことを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかの炭素繊維の製造方法。
  6. 前記変性工程で得られた炭素繊維がメディアレスミル法によって切断される切断工程
    を更に具備することを特徴とする請求項1〜請求項5いずれかの炭素繊維の製造方法。
  7. 前記請求項1〜請求項6いずれかの炭素繊維の製造方法によって得られてなることを特徴とする炭素繊維。
  8. 長手方向に沿っての側面に平坦面を有する
    ことを特徴とする炭素繊維。
  9. 長手方向に直交する方向での断面が略角形である
    ことを特徴とする請求項7又は請求項8の炭素繊維。
  10. 長手方向に直交する方向での断面が略長方形であり、
    前記長方形の長辺の長さが0.5〜20μm、短辺の長さが0.1〜10μm、かつ、(長辺の長さ)/(短辺の長さ)が2〜100である
    ことを特徴とする請求項9の炭素繊維。
  11. 長さが1〜500μmである
    ことを特徴とする請求項7〜請求項10いずれかの炭素繊維。
  12. 電気デバイスに用いられる部材であって、
    前記請求項7〜請求項11いずれかの炭素繊維が用いられて構成されてなる
    ことを特徴とする電気デバイス用部材。
  13. 前記部材が蓄電池の電極である
    ことを特徴とする請求項12の電気デバイス用部材。
  14. 前記部材がリチウムイオン二次電池の電極である
    ことを特徴とする請求項13の電気デバイス用部材。
  15. 電気デバイスであって、
    前記請求項7〜請求項11いずれかの炭素繊維が用いられて構成されてなる部材を具備する
    ことを特徴とする電気デバイス。
  16. 高分子複合材であって、
    前記請求項7〜請求項11いずれかの炭素繊維を含む
    ことを特徴とする高分子複合材。
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