a.実施形態
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は前記実施形態に係る鍵盤装置を右から見た概略側面図であり、図2は前記鍵盤装置の概略平面図である。本願の図面においては、鍵盤装置の前後方向を左右方向とし、鍵盤装置の上下方向を上下方向とする。
この鍵盤装置は、演奏者によって押離鍵操作される複数の白鍵11w及び複数の黒鍵11bと、演奏者の押鍵操作に対して反力を付与するドーム型反力発生ユニット20とを備えている。白鍵11wは、前後方向に長尺状に形成されるとともに下方を開放させた断面コ字状に形成されて、鍵フレーム31の平板状の上板部31a上に配置されている。鍵フレーム31は、上板部31aの前端及び後端から下方に延設された平板上の脚部31b,31cを有し、脚部31b,31cの下端部分にて楽器内に設けたフレームFR上に固定されている。鍵フレーム31の上板部31aの後端部の上面上には、白鍵11wの内側にて対向する一対の板状の鍵支持部32が立設固定されている。鍵支持部32の上部には、互いに対向する位置にてそれぞれ外側に突出した突出部が設けられ、突出部を白鍵11wの両側面後端部に設けた貫通孔に内側から回転可能に侵入させている。これにより、白鍵11wは、鍵支持部32により揺動可能に支持され、前端部を上下方向に変位させる。以下の説明では、この白鍵11wの揺動中心を揺動軸Cwとする。黒鍵11bは、前部上面が高くなっている形状こそ異なるが、他の構成は白鍵11wと同様である。そして、黒鍵11bも、鍵支持部32により揺動軸Cb回りに揺動可能に支持されて、揺動により前端部を上下方向に変位させる。なお、黒鍵11bの揺動軸Cbと、白鍵11wの揺動軸Cwとは、前後方向及び上下方向において同一位置に位置する。
鍵フレーム31の上板部31aの上面には、白鍵11wの前端部の下方位置にて鍵ガイド33wが立設しており、黒鍵11bの前端部の下方位置にて鍵ガイド33bが立設している。鍵ガイド33w,33bは白鍵11w及び黒鍵11b内にそれぞれ摺動可能に侵入しており、白鍵11w及び黒鍵11bは、それらの上下方向の揺動時に左右方向に変位しないようになっている。
ドーム型反力発生ユニット20は、詳しくは後述するように、金型を用いて弾性を有するゴムにより一体成形されており、複数の白鍵用反力発生部21wと複数の黒鍵用反力発生部21bとを備えている。白鍵用反力発生部21wは白鍵11wにそれぞれ対応して設けられて、白鍵11wの押鍵操作に対して反力を与える。黒鍵用反力発生部21bは黒鍵11bにそれぞれ対応して設けられて、黒鍵11bの押鍵操作に対して反力を与える。ドーム型反力発生ユニット20は、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bが白鍵11w及び黒鍵11bの前後方向の中央部の下方に位置するように、鍵フレーム31の上板部31aの上面に固定されている。この場合、白鍵用反力発生部21wの前後方向の位置と、黒鍵用反力発生部21bの前後方向の位置は同じであり、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bは鍵盤の横方向に1列に配置されている。
ここで、ドーム型反力発生ユニット20の白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bについて説明しておく。図4(A),(B)に示すように、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bは、それぞれ、ドーム部21w1,21b1、トップ部21w2,21b2、ベース部21w3,21b3及び一対の脚部21w4,21b4とで構成されている。ドーム部21w1,21b1は、上方からの押圧により変形し易いドーム状(お椀状)であって薄肉に形成されており、上方からの押圧により圧縮された際には、図4(B)に示したように座屈変形する。これにより、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bは、上方からの押圧力の増加により弾性変形して反力を徐々に増加させるとともに、反力がピークに達した後に座屈変形によって反力を急激に減少させる(図15参照)。
トップ部21w2,21b2は、上面が解放された円筒状に形成されて、下面にてドーム部21w1,21b1の上面に接続されている。また、トップ部21w2,21b2は全周にわたって均一の高さに設定され、その上面は平面である。トップ部21w2,21b2の上部における周方向の一部には、トップ部21w2,21b2の内部と外部とを連通させる空気逃がし用の切込部が設けられている。ベース部21w3,21b3は、ドーム部21w1,21b1の下端部の外周面から外側に環状(フランジ状)に突出されて、全周にわたって厚肉に形成されている。ベース部21w3,21b3の上面及び下面も平面であるが、設置した際に白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bが傾斜するように、ベース部21w3,21b3の高さは全周に渡って連続して異なっている。なお、これらのトップ部21w2,21b2及びベース部21w3,21b3は、上方から押圧されてもほとんど変形しない。一対の脚部21w4,21b4は、鍵フレーム31の上板部31aに設けた支持部31dに固定するために、ベース部21w3,21b3の下面から下方に円柱状に突出している。この場合、支持部31dは水平である。なお、脚部21w4,21b4をなくして、ベース部21w3,21b3の下面を、鍵フレーム31の上板部31a(支持部31d)上に接着剤などにより固定するようにしてもよい。
このように構成した白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bのドーム部21w1,21b1、トップ部21w2,21b2、及びベース部21w3,21b3の上部は、軸線Yw、Ybに対して点対称形状である。逆に言えば、軸線Yw,Ybとは、本体部21w1,21b1及びトップ部21w2,21b2の中心軸線である。そして、軸線Yw,Ybは、反力ベクトルの起点を通り、ベクトル方向に延びる力の作用線でもある。また、トップ部21w2,21b2及びベース部21w3,21b3の上面の法線は、軸線Yw,Ybとそれぞれ平行である。ただし、図3に示すように、白鍵用反力発生部21wのベース部21w3の高さは黒鍵用反力発生部21bのベース部21b3の高さよりも高く、白鍵用反力発生部21wのドーム部21w1の軸線Ywの方向の長さは、黒鍵用反力発生部21bのドーム部21b1の軸線Ybの方向の長さよりも短い。また、白鍵用反力発生部21wのトップ部21w2の高さは黒鍵用反力発生部21bのトップ部21b2の高さと同じであり、設置した際の白鍵用反力発生部21wの全体の高さは黒鍵用反力発生部21bの全体の高さとほぼ同じである。また、設置した状態では、黒鍵用反力発生部21bの軸線Ybは白鍵用反力発生部21wの軸線Ywよりも水平側に僅かに大きく傾斜している。そして、両軸線Yb,Yw間の角度をθとする。
また、白鍵11w及び黒鍵11bの下面であって、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bのトップ部21w2,21b2の上面に対向する位置には、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bを上方から押圧する押圧部11w1,11b1がそれぞれ設けられている。押圧部11w1,11b1は平板状に構成され、その下面は、平面であって、白鍵11w及び黒鍵11bの下面に対して、前側にて低く後側にて高くなるように傾斜している。この押圧部11w1,11b1の傾斜は、詳しくは後述するように、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bの反力のピーク時において、押圧部11w1,11b1の下面の法線(下面に垂直な直線)が、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bの軸線Yw,Ybにそれぞれ平行になるように設定されている。また、反力発生部材21w,21bによる反力のピーク時において、反力方向は反力発生部材21w,21bの軸線Yw,Ybの方向と一致する。したがって、反力発生部材21w,21bによる反力のピーク時において、反力方向を白鍵21wと黒鍵21bとで異ならせて、反力のピーク時における反力発生部材21w,21bの押圧方向が反力発生部材21w,21bの反力方向と一致するようにしているとも捉えることができる。この場合、黒鍵11bの押圧部11b1の下面の水平(黒鍵11bの下面)に対する傾斜は、白鍵11wの押圧部11w1の下面の水平(白鍵11wの下面)に対する傾斜よりも若干量だけ大きい。なお、前記反力のピーク時において押圧部11w1,11b1の押圧点を含む下面の法線が軸線Yw,Ybにそれぞれ平行になるように設定されるならば、これらの押圧部11w1,11b1の下面は平面でなくても、球面状であってもよい。また、押圧部11w1,11b1を、白鍵11w及び黒鍵11bの内部上面から下方に突出させた十字型、H字型等のリブなどで構成してもよい。
また、この鍵盤装置は、押圧部11w1,11b1と鍵支持部32の中間位置にて、白鍵11w及び黒鍵11bと、鍵フレーム31の上板部31aとの間にそれぞれ組み込まれた白鍵11w用のスプリング34w及び黒鍵11b用のスプリング34bを備えている。スプリング34w,34bは、白鍵11w及び黒鍵11bを上板部31aに対して上方に付勢している。なお、これらのスプリング34w、34bは、コイル状でなくても、白鍵11w及び黒鍵11bを上方に付勢することができれば、板ばねのようなスプリングでもよい。
白鍵11wは、その前端部から下方に延設させた延設部11w2を備え、延設部11w2の下端には前方に突出させた係合部11w3が設けられ、係合部11w3は鍵フレーム31の上板部31aに設けた貫通孔を介して、上板部31aの下方に上方から侵入している。また、鍵フレーム31の上板部31aの前端部下面には上限ストッパ部材35wが設けられている。上限ストッパ部材35wは、フェルトのような緩衝部材により構成されており、白鍵11wの係合部11w3との当接により、白鍵11wの前端部の上方への変位を規制する。また、鍵フレーム31の上板部31aの前端部上面には下限ストッパ部材36wが設けられている。下限ストッパ部材36wも、フェルトのような緩衝部材により構成されており、白鍵11wの前端部下面との当接により、白鍵11wの前端部の下方への変位を規制する。
黒鍵11bは、その前端部から下方に延設させた延設部11b2を備え、延設部11b2の下端には後方に突出させた係合部11b3が設けられ、係合部11b3は鍵フレーム31の上板部31aに設けた貫通孔を介して、上板部31aの下方に上方から侵入している。また、鍵フレーム31の上板部31aの中間部下面には上限ストッパ部材35bが設けられている。上限ストッパ部材35bも、フェルトのような緩衝部材により構成されており、黒鍵11bの係合部11b3との当接により、黒鍵11bの前端部の上方への変位を規制する。また、鍵フレーム31の上板部31aの中間部上面には下限ストッパ部材36bが設けられている。下限ストッパ部材36bも、フェルトのような緩衝部材により構成されており、黒鍵11bの前端部下面との当接により、黒鍵11bの前端部の下方への変位を規制する。
また、鍵フレーム31の上板部31aの下面であってドーム型反力発生ユニット20の若干後方位置には、電気回路基板37が上板部31aと平行になるように固定されている。電気回路基板37の上面には、白鍵11w及び黒鍵11bのためのドーム状の鍵スイッチ38w,38bがそれぞれ固定されている。鍵スイッチ38w,38bは、白鍵11w及び黒鍵11bの押鍵時に白鍵11w及び黒鍵11bの下面から突出させた突出部の押圧によりオフ状態からオン状態に変化して、白鍵11w及び黒鍵11bの押離鍵操作を検出する。なお、この鍵スイッチ38w,38bによる押離鍵操作の検出は、楽音信号の発生制御に利用される。
次に、ドーム型反力発生ユニット20の製造及び形状について説明しておく。ドーム型反力発生ユニット20は、図5に示すように、上金型25u及び下金型25d内に液状の弾性物質であるゴムを流し込み、ゴムが固まった状態で上金型25u及び下金型25dを外して取出すことにより製造される。なお、図5においては、ドーム型反力発生ユニット20の白鍵用反力発生部21wを示している。この場合、前述のように、白鍵用反力発生部21wの軸線Ywと黒鍵用反力発生部21bの軸線Ybは平行でなく、軸線Yw,Yb間の角度はθである。したがって、上金型25u及び下金型25dの抜き取り方向を、白鍵用反力発生部21wの軸線Ywの方向ではなく、図示矢印で示すように、白鍵用反力発生部21wの軸線Ywに対して黒鍵用反力発生部21bの軸線Ybの方向側に若干傾けるようにする。
このような上金型25u及び下金型25dの抜き取り方向に関しては、次の点を考慮しなければならない。白鍵用反力発生部21wのドーム部21w1は、弾性変形(特に、座屈変形)を許容するために、薄肉に形成されている。したがって、図5の部分P1,P2に関しては、抜き取り方向を、ドーム部21w1の軸線Ywに対する最小勾配角度θw以下に設定しないと、ドーム部21w1が抜き取り時に損傷を受けてしまう。すなわち、上金型25u及び下金型25dを無理抜きすると、ドーム部21w1が損傷を受けて、白鍵用反力発生部21wの機能が果たせなくなる。この場合、前記最小勾配角度θwは、軸線Ywを含む平面とドーム部21w1の内側面及び外側面とが交差する交差線が軸線Ywに対してなす角度のうち、最小の角度である。なお、図5のP3〜P6の部分に関しては、白鍵用反力発生部21wのトップ部21w2、べース部21w3及び脚部21w4は厚肉であるので、無理抜きしても、損傷を受けない。また、黒鍵用反力発生部21bに関しても同様であり、上金型25u及び下金型25dの抜き取り方向を、ドーム部21b1の軸線Ybに対する最小勾配角度θb以下に設定する必要がある。この場合の最小勾配角度θbも、軸線Ybを含む平面とドーム部21b1の内側面及び外側面とが交差する交差線が軸線Ybに対してなす角度のうち、最小の角度である。ただし、軸線Ybに対する抜き取り方向の傾きは白鍵用反力発生部21wとは逆である。また、黒鍵用反力発生部21bにおける前記部分P1〜P6に対応した部分は、白鍵用反力発生部21wとは軸線Ybに対して左右方向が逆となる。
このような上金型25u及び下金型25dの抜き取りを考慮して、白鍵用反力発生部21wのドーム部21w1の軸線Ywに対する最小勾配角度θwと、黒鍵用反力発生部21bのドーム部21b1の軸線Ybに対する最小勾配角度θbと、白鍵用反力発生部21wの軸線Ywと黒鍵用反力発生部21bの軸線Ybの間の角度θとの関係について説明する。図6はこのための説明図であり、白鍵用反力発生部21wと黒鍵用反力発生部21bを図面では左右に並べて実線により示している。実際には、黒鍵用反力発生部21bは破線で示すように位置するが、次に説明する各種角度においては、白鍵用反力発生部21wと黒鍵用反力発生部21bを左右に並べて示しても同じであるので、以下の説明では実線で示した黒鍵用反力発生部21bを用いる。なお、図6においては、前記角度θ,θw,θbを誇張して示している。
上金型25u及び下金型25dの抜き取り方向を直線Kで表し、白鍵用反力発生部21wにおける軸線Ywに対するドーム部21w1の最小勾配の方向を直線Zwで表し、黒鍵用反力発生部21bにおける軸線Ywに対するドーム部21b1の最小勾配の方向を直線Zbで表している。この場合、直線K,Zw,Zbは互いに平行である。なお、図6においては、直線Zw,Zbをドーム部21w1,21b1の内側面に沿って示しているが、ドーム部21w1,21b1の外側面でも同じである。したがって、この状態では、上金型25u及び下金型25dを直線Kの方向に抜き取れば、薄肉のドーム部21w1,21b1に損傷を与えることなく、ドーム型反力発生ユニット20を上金型25u及び下金型25dにより一体成形できる。
そして、この図6においては、最小勾配角度θw,θbの和θw+θbが、白鍵用反力発生部21wの軸線Ywと黒鍵用反力発生部21bの軸線Ybがなす角度θに等しくなるように設定されている。その結果、軸線Yw,Yb間の角度がθであるドーム型反力発生ユニット20が成形されることになる。この図6は、前記和θw+θbが最小である状態を示しており、すなわち軸線Yw,Yb間の角度がθである場合、ドーム型反力発生ユニット20を上金型25uと下金型25dとにより一体成形可能な最小勾配角度θw,θbの和θw+θbが最も小さい例を示している。そして、直線Zw,Zbを、図示矢印で示すように設計、すなわちドーム部21w1,21b1の最小勾配角度θw,θbを軸線Yw,Ybに対して大きくなるように設計しても、上金型25uと下金型25dを用いてドーム型反力発生ユニット20を一体成形できる。したがって、この実施形態においては、上金型25uと下金型25dを用いてドーム型反力発生ユニット20を一体成形できるようにするために、最小勾配角度θw,θbの和θw+θbが、軸線Yw,Yb間の角度θ以上に設定されている。
次に、前記のように構成した実施形態に係る鍵盤装置の動作について説明する。演奏者が白鍵11w及び黒鍵11bを押し始めると、白鍵11w及び黒鍵11bはスプリング34w,34bの反力に抗して、揺動軸Cw,Cb回りにそれぞれ揺動を開始し、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部が下方に変位して係合部11w3,11b3が上限ストッパ部材35w,35bから離れ、その後、押圧部11w1,11b1が白鍵用反力発生部21wのトップ部21w2及び黒鍵用反力発生部21bのトップ部21b2の上面の後側端部に当接する。そして、白鍵11w及び黒鍵11bがさらに押されると、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部が下方に変位して、押圧部11w1,11b1の押圧により白鍵用反力発生部21wのドーム部21w1及び黒鍵用反力発生部21bのドーム部21b1が弾性変形し始める。これにより、演奏者は、スプリング34w,34bによる反力に加えて、白鍵用反力発生部21wのドーム部21w1及び黒鍵用反力発生部21bの徐々に増加する反力を感じ始める(図15参照)。
白鍵11w及び黒鍵11bがさらに押されると、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bの反力がピークに達して、その後に、ドーム部21w1,21b1が座屈変形し始める。これにより、演奏者は明確なクリック感を感じる。なお、鍵スイッチ38w,38bは、この座屈よりも若干遅れて、白鍵11w及び黒鍵11bの下面から突出させた突出部の押圧によりオフ状態からオン状態に変化する。この鍵スイッチ38w,38bのオン状態への変化に応答して、図示しない楽音信号発生回路は楽音信号を発生し始める。
さらに、白鍵11w及び黒鍵11bが押されると、白鍵11w及び黒鍵11bの前端下面が下限ストッパ部材36w,36bに当接して、白鍵11w及び黒鍵11bの揺動は終了する。この状態では、白鍵用反力発生部21wのドーム部21w1及び黒鍵用反力発生部21bのドーム部21b1の弾性変形も終了する。そして、白鍵11w及び黒鍵11bが離鍵されると、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21b及びスプリング34w,34bの反力により、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部は上方に変位する。この白鍵11w及び黒鍵11bの前端部が上方へ変位して戻る過程においては、鍵スイッチ38w,38bはオン状態からオフ状態に変化して、図示しない楽音信号発生回路は楽音信号の発生停止を制御する。さらに、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部が上方へ変位すると、係合部11w3,11b3は上限ストッパ部材35w,35bに当接して、白鍵11w及び黒鍵11bは離鍵状態に戻る。
さらに、この鍵盤装置の動作の説明を交えながら、白鍵用反力発生部21wの軸線Ywと黒鍵用反力発生部21bの軸線Ybとが平行でなく、軸線Yw,Ybの間の角度がθになる理由を詳しく説明しておく。図7(A)は、白鍵11w及び黒鍵11bが上限ストッパ部材35w,35bにより上方への変位が規制されている離鍵状態にある白鍵11w及び黒鍵11bを実線で示し、白鍵11w及び黒鍵11bが下限ストッパ部材36w,36bにより下方への変位が規制されている押鍵終了状態(以下、フルストローク状態という)にある白鍵11w及び黒鍵11bを破線で示している。図7(B)は、白鍵11wの離鍵状態(初期状態)、押鍵により、押圧部11w1が白鍵用反力発生部21wのトップ部21w2に当接した状態(以下、トップ当接状態という)、その後に白鍵用反力発生部21wの反力がピークに達した状態(以下、ピーク荷重発生状態という)、そして最終的に押鍵が終了したフルストローク状態を示している。図7(C)は、離鍵状態(初期状態)、トップ当接状態、ピーク荷重発生状態及びフルストローク状態にある黒鍵11bを示している。図7(D)は、ピーク荷重発生状態にある白鍵11w及び黒鍵11bを示している。
図8(A)〜(D)は、離鍵状態、トップ当接状態、ピーク荷重発生状態及びフルストローク状態にある白鍵11wをそれぞれ示している。図8(E)は図8(A)の白鍵用反力発生部21wの拡大図であり、図8(F)は図8(C)の白鍵用反力発生部21wの拡大図である。また、図9(A)〜(D)は、離鍵状態、トップ当接状態、ピーク荷重発生状態及びフルストローク状態にある黒鍵11bをそれぞれ示している。図9(E)は図9(A)の黒鍵用反力発生部21bの拡大図であり、図9(F)は図9(C)の黒鍵用反力発生部21bの拡大図である。なお、図9(E)においては、黒鍵用反力発生部21bの軸線Ybの方向と、白鍵用反力発生部21wの軸線Ywとを比較するために、白鍵用反力発生部21wを破線で示している。角度θは両軸線Yb,Ywがなす角度である。
この鍵盤装置においては、図7(A)に示すように、白鍵11wの前端の高さ(上面前端の高さ)と、黒鍵11bの前端の高さ(前端傾斜部の最下点の高さ)とが、離鍵状態及びフルストローク状態においてそれぞれ同じなるようにしている。すなわち、白鍵11wと黒鍵11bとで、押鍵によるフルストローク量が同じになるようにしている。しかし、黒鍵11bの前後方向の長さは白鍵11wの前後方向の長さよりも短いので、黒鍵11bの動作角度は白鍵11wの動作角度よりも大きくなる。そして、白鍵11wの揺動軸Cwと黒鍵11bの揺動軸Cbは同じ位置であり、黒鍵11bの押圧部11b1の前後方向の位置と白鍵11wの押圧部11w1の前後方向の位置は同じであるので、黒鍵11bの押圧部11b1の上下方向の移動量は白鍵11wの押圧部11w1の上下方向の移動量よりも大きい。そのために、前述のように、黒鍵用反力発生部21bのベース部21b3の高さを白鍵用反力発生部21wのベース部21w3の高さよりも低くし、黒鍵用反力発生部21bのドーム部21b1の軸線Ywの方向の長さを白鍵用反力発生部21wのドーム部21w1の軸線Ybの方向の長さより長くして、黒鍵用反力発生部21bの変形量を白鍵用反力発生部21wの変形量よりも大きくしている。
また、図7(B)及び図7(C)に示すように、トップ当接状態及びピーク荷重発生状態においては、白鍵11wの前端の高さ(上面前端の高さ)と、黒鍵11bの前端の高さ(前端傾斜部の最下点の高さ)とがほぼ同じになるようにしている。そして、前述のように、黒鍵11bの押圧部11b1の上下方向の移動量は白鍵11wの押圧部11w1の上下方向の移動量よりも大きいので、離鍵状態では、黒鍵11bの押圧部11b1を白鍵11wの押圧部11w1よりも高い位置に設定している。なお、離鍵状態においては、黒鍵11b及び白鍵11wは、水平に対して、前端部を後端部よりも若干高く傾斜させている。
このように、ピーク荷重発生状態では、前述のように、白鍵11wの前端の高さと黒鍵11bの前端の高さをほぼ同じにしているため、図7(D)に示すように、黒鍵11bの回転角度は白鍵11wの回転角度よりも大きくなり、黒鍵11bの押圧部11b1の回転方向は白鍵11wの押圧部11w1の回転方向よりも水平方向側に僅かに大きく傾斜する。すなわち、黒鍵11bの押圧部11b1の黒鍵用反力発生部21bに対する押圧方向は、白鍵11wの押圧部11w1の白鍵用反力発生部21wに対する押圧方向よりも水平側に角度φだけ傾く。この角度φは、図示直線Lb,Lwがなす角度である。直線Lbは、黒鍵11bの揺動軸Cbに直交する平面内にある直線であって、ピーク荷重発生状態における黒鍵11bによって押圧される黒鍵用反力発生部21bの押圧点と黒鍵11bの揺動軸Cbとを通る直線である。直線Lwは、白鍵11wの揺動軸Cwに直交する平面内にある直線であって、ピーク荷重発生状態における白鍵11wの押鍵によって押圧される白鍵用反力発生部21wの押圧点と白鍵11wの揺動軸Cwとを通る直線である。
一方、前述のように、黒鍵用反力発生部21bの軸線Ybは白鍵用反力発生部21wの軸線Ywよりも水平側に僅かに大きく傾斜していて、両軸線Yb,Yw間の角度はθである(図9(E)参照)。そして、この実施形態では、この両軸線Yb,Yw間の角度θが、前記直線Lb,Lw間の角度φに等しく設定されている。これにより、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bは、ピーク荷重発生状態において、白鍵11w及び黒鍵11bの揺動により軸線Yw,Yb方向に押圧される。また、白鍵用反力発生部21wのトップ部21w2の上面全体が均等な力で押されるようにするために、このピーク荷重発生状態で、白鍵11wの押圧部11w1の下面の法線(下面に対する垂直線)が白鍵用反力発生部21wの軸線Ywと平行になるように、押圧部11w1の下面の傾斜角が設定されている。また、黒鍵用反力発生部21bのトップ部21b2の上面全体が均等な力で押されるようにするために、このピーク荷重発生状態で、黒鍵11bの押圧部11b1の下面の法線(下面に対する垂直線)が黒鍵用反力発生部21bの軸線Ybと平行になるように、押圧部11b1の下面の傾斜角が設定されている。なお、白鍵11wの押圧部11w1の下面の傾斜角と、黒鍵11bの押圧部11b1の下面の傾斜角とは若干異なる。
これにより、このトップ荷重発生状態では、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bのドーム部21w1,21b1は、図8(F)及び図9(F)に示すように、軸線Yw,Ybを中心に均等に変形している。すなわち、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bのドーム部21w1,21b1は、軸線Yw,Ybの全周において、上下方向に平行に変形した状態にある。
前記説明のように、この実施形態においては、複数の白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bの軸線Yw,Ybの方向を白鍵11wと黒鍵11bとで異ならせて、反力のピーク時における押圧方向が複数の白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bの軸線方向に近づくように、複数の白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bを配置した。特に、白鍵用反力発生部21wの軸線Ywの方向と黒鍵用反力発生部の軸線Ybの方向とがなす角度θを、白鍵11w及び黒鍵11bの押圧方向を表す直線Lw,Lbがなす角度φに等しく設定した。したがって、この実施形態によれば、白鍵11w及び黒鍵11bの押鍵時に、ラバードームからなる白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bの座屈直前の反力のピーク時において、白鍵11w及び黒鍵11bに対応した白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bは共にほぼ軸線方向から押圧されることになり、白鍵11wを押鍵した場合にも、黒鍵11bを押鍵した場合にも、ほぼ同一なクリック感を伴う良好な鍵タッチ感を得ることができるようになる。
前述のように、反力発生部材21w,21bのピーク荷重発生状態時には、反力発生部材21w,21bによる反力の発生方向は軸線Yw,Ybに一致する。したがって、前記特徴を、別の観点から、次のように捉えることもできる。すなわち、反力発生部材21w,21bのピーク荷重発生状態において、反力方向を白鍵21wと黒鍵21bとで異ならせて、ピーク荷重発生状態時における反力発生部材21w,21bの押圧方向が反力発生部材21w,21bの反力発生方向に一致するようにしている。これにより、白鍵11wを押鍵した場合にも、黒鍵11bを押鍵した場合にも、ほぼ同一なクリック感を伴う良好な鍵タッチ感を得ることができるようになる。
そして、ドーム型反力発生ユニット20においては、白鍵用反力発生部21wのドーム部21w1(すなわちドーム部21w1の内側面及び外側面)の最小勾配角度θwと、黒鍵用反力発生部21bのドーム部21b1(すなわちドーム部21b1の内側面及び外側面)の最小勾配角度θbとの和θw+θbが、白鍵用反力発生部21wの軸線Ywと,黒鍵用反力発生部21bの軸線Ybとの間の角度θ以上に設定されている。したがって、上金型25u及び下金型25dの引き抜き方向を、白鍵用反力発生部21wの軸線Ywの方向と黒鍵用反力発生部21bの軸線Ybの方向との間であって、白鍵用反力発生部21wの軸線Ywの方向に対して最小勾配角度θw以下であり、かつ黒鍵用反力発生部21bの軸線Ybの方向に対して最小勾配角度θb以下である方向とすれば、ドーム部21w1,21bにはアンダーカットが生じない。したがって、スライド金型を用いなくても、単純な金型(上金型25u及び下金型25d)で軸線方向の異なる白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bを含む複数の反力発生部21w,21bを有するドーム型反力発生ユニット20を一体成形により製造できる。これにより、ドーム型反力発生ユニット20を簡単かつ安価に製造できるようになる。
b.他の鍵盤装置への適用例
次に、上記実施形態に係るドーム型反力発生ユニット20の他の鍵盤装置への適用例について説明する。
まず、第1適用例について、図10を用いて説明する。この第1適用例においては、黒鍵11bの揺動軸Cbが白鍵11wの揺動軸Cwよりも上方に位置している。なお、黒鍵11bの揺動軸Cb及び白鍵11wの揺動軸Cwの前後方向の位置は同じである。また、他の構成は、上記実施形態と同じであるので、説明を省略する。この第1適用例においても、白鍵11w及び黒鍵11bのための前述した直線Lw,Lb、並びに白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bの軸線Yw,Ybは図示のように定義されるとともに、前述した角度θ,φも図示のように定義される。
次に、第2適用例について、図11を用いて説明する。この第2適用例においては、黒鍵用反力発生部21bを白鍵用反力発生部21wよりも後方に位置させている。そして、黒鍵11bの押圧部11b1を黒鍵用反力発生部21bに対向させて位置させるとともに、白鍵11wの押圧部11w1も白鍵用反力発生部21wに対向させて位置させている。なお、黒鍵11bの揺動軸Cb及び白鍵11wの揺動軸Cwの前後方向及び上下方向の位置は同じである。また、他の構成は、上記実施形態と同じであるので、説明を省略する。この第2適用例においても、白鍵11w及び黒鍵11bのための前述した直線Lw,Lb、並びに白鍵用反力発生部21wの軸線Yw及び黒鍵用反力発生部21bの軸線Ybは図示のように定義されるとともに、前述した角度θ,φも図示のように定義される。また、この第2適用例では、図12に示すように、複数ずつの白鍵用反力発生部21wと黒鍵用反力発生部21bは前後方向に2列に配置されており、ドーム型反力発生ユニット20の前後方向の幅は上記実施形態の場合よりも広く構成されている。
次に、第3適用例について、図13を用いて説明する。この第3適用例においては、黒鍵11bの揺動軸Cbが白鍵11wの揺動軸Cwよりも前方に位置している。なお、黒鍵11bの揺動軸Cb及び白鍵11wの揺動軸Cwの上下方向の位置は同じである。また、他の構成は、上記実施形態と同じであるので、説明を省略する。この第3適用例においても、白鍵11w及び黒鍵11bのための前述した直線Lw,Lb、並びに白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bの軸線Yw,Ybは図示のように定義されるとともに、前述した角度θ,φも図示のように定義される。
また、前記第3適用例において、白鍵11wの揺動軸Cwが黒鍵11bの揺動軸Cbよりも前方に位置させるようにしてもよい。さらに、黒鍵11bの揺動軸Cbと白鍵11wの揺動軸Cwの上下方向の位置を異ならせたり、黒鍵用反力発生部21bと白鍵用反力発生部21wの前後方向の位置を異ならせたりするようにしてもよい。
このように構成した第1乃至第3適用例においても、ピーク荷重発生状態における白鍵11wの押圧部11w1と黒鍵11bの押圧部11b1の回転方向は異なり、ピーク荷重発生状態における白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bの押圧方向は異なる。そこで、図10、図11及び図13に示したように、白鍵用反力発生部21wの軸線Ywの方向と、黒鍵用反力発生部21bの軸線Ybの方向とを異ならせて、複数ずつの白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bを一体形成したドーム型反力発生ユニット20を、鍵フレーム31の上板部31aに固定する。そして、軸線Yw,Ybがなす角度θを、前述した直線Lw,Lbがなす角度φに等しく設定する。これにより、前記第1乃至第3適用形例によっても、白鍵11w及び黒鍵11bの押鍵時に、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bの座屈直前の反力のピーク時において、白鍵11w及び黒鍵11bに対応した白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bは共にほぼ軸線方向から押圧されることになり、白鍵11wを押鍵した場合にも、黒鍵11bを押鍵した場合にも、同一なクリック感を伴う良好な鍵タッチ感を得ることができるようになる。
そして、前記第1乃至第3適用例のような軸線Yw,Ybの方向を異ならせて、複数ずつの白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bを備えたドーム型反力発生ユニット20においても、上記実施形態で説明したように、スライド金型を用いなくても、単純な金型(上金型25u及び下金型25d)でドーム型反力発生ユニット20を一体成形により製造できる。すなわち、前記第1乃至第3適用例の場合も、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bのドーム部21w1,21b1の最小勾配角度θw,θbの和θw+θbを、白鍵用反力発生部21wの軸線Ywと,黒鍵用反力発生部21bの軸線Ybとの間の角度θ以上に設定しておけば、スライド金型を用いなくても、単純な金型(上金型25u及び下金型25d)でドーム型反力発生ユニット20を一体成形により製造できる。
c.鍵以外の揺動体を備えた鍵盤装置への適用例
次に、白鍵11w及び黒鍵11bの揺動により連動して揺動する揺動体が、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bを押圧する鍵盤装置への適用例について説明する。図14はこの第3実施形態に係る鍵盤装置を示しており、この鍵盤装置は前記揺動体としてのハンマー41w,41bを白鍵11w及び黒鍵11bに対応させて備えている。
ハンマー41w,41bは、白鍵11w及び黒鍵11bにそれぞれ対応したハンマー支持部材42によってそれぞれ揺動可能に支持されている。ハンマー支持部材42は、白鍵11w及び黒鍵11bの前後方向の中間位置にて、上板部31aの下面から下方に延設している。ハンマー41w,41bは、それぞれ基部41w1,41b1、連結棒41w2,41b2及び質量体41w3,41b3からなる。基部41w1,41b1は、その中間部にて、揺動軸Cw1,Cb1回りに揺動可能にハンマー支持部材42により支持され、質量体41w3,41b3を上下方向に揺動させる。基部41w1,41b1の前部は2股に分かれた脚部を備えており、脚部の間には、白鍵11w及び黒鍵11bの下面からそれぞれ垂直に延設させた延設部43w,43bに設けた駆動軸43w1,43b1が摺動可能に貫通している。延設部43w,43bは、上板部31aに設けた貫通孔を上下方向に変位可能に貫通している。これにより、白鍵11w及び黒鍵11bが押されると、基部41w1,41b1の前端が下方に変位するようになっている。連結棒41w2,41b2は前後方向に延設されて、基部41w1,41b1と質量体41w3,41b3とを連結している。質量体41w3,41b3は、その重量により、ハンマー41w,41bの前端側を上方に付勢している。
質量体41w3,41b3の下方には、質量体41w3,41b3の下方への移動を規制する上限ストッパ部材44がフレームFRに固定されている。上限ストッパ部材44も、フェルトのような緩衝部材により構成されている。これにより、離鍵状態では、質量体41w3,41b3は上限ストッパ部材44上に位置し、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部の上方への変位が規制される。したがって、この適応例では、上記実施形態の上限ストッパ部材35w,35b及び延設部11w2,11b2が存在しない。
ドーム型反力発生ユニット20は、質量体41w3,41b3に対向する位置にて上板部31aに設けた支持部31fw、31fbの下面に固定されている。質量体41w3,41b3の上面は、平面からなる押圧部41w4,41b4を構成し、押圧部41w4,41b4は離鍵状態にて白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bのトップ部21w2,21b2の下面(上記実施形態の上面に相当)に対向している。そして、押鍵時には、押圧部41w4,41b4が上方に変位してトップ部21w2,21b2の下面に当接して、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bをそれぞれ押圧する。この場合も、前記押圧により、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bのドーム部21w1,21b1は弾性変形して、反力がピークに達した後に座屈変形する。また、ハンマー41w,41bは、白鍵11w及び黒鍵11bの押鍵操作に対して反力を付与するので、上記第1実施形態のスプリング34w,34bは存在してもよいが、この適用例では省略されている。他の構成に関しては、上記実施形態と同じであるので、同一符号を付してその説明を省略する。
このように構成した適用例においては、白鍵11w及び黒鍵11bの押鍵時には、延設部43w,43bの駆動軸43w1,43b1が下方に変位し、ハンマー41w,41bは、搖動軸Cw1,Cb1を中心に反時計方向に揺動する。そして、ハンマー41w,41bの質量体41w3,41b3の押圧部41w4,41b4が白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bを押圧し、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bのドーム部21w1,21b1は弾性変形した後に座屈する。さらに、押鍵が進むと、ドーム部21w1,21b1は更に弾性変形し、白鍵11w及び黒鍵11bは、それらの前端下面の下限ストッパ部材36w,36bへの当接により、押鍵が終了する。なお、この押鍵時には、ハンマー41w,41b、並びに白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bの両者により、押鍵に対する反力が演奏者に与えられる。
一方、白鍵11w及び黒鍵11bの離鍵時には、質量体41w3,41b3の重量により、ハンマー41w,41bは時計方向に揺動して、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部は上方に変位する。そして、質量体41w3,41b3の下面が上限ストッパ部材44にと当接すると、白鍵11w及び黒鍵11bの揺動は停止し、白鍵11w及び黒鍵11bは元の離鍵状態に復帰する。
このように構成されて動作する鍵盤装置においても、白鍵用反力発生部21wの軸線Ywの方向と、黒鍵用反力発生部21bの軸線Ybの方向とを異ならせてあり、軸線Yw,Ybがなす角度θを、上記実施形態の場合と同様な直線Lw,Lbがなす角度φに等しく設定されている。なお、この場合の直線Lwは、白鍵11w用のハンマー41wの揺動軸Cw1に直交する平面内にある直線であって、ピーク荷重発生状態におけるハンマー41wの揺動によって押圧される白鍵用反力発生部21wの押圧点とハンマー41wの揺動軸Cw1とを通る直線である。また、直線Lbは、黒鍵11b用のハンマー41bの揺動軸Cb1に直交する平面内にある直線であって、ピーク荷重発生状態におけるハンマー41bの揺動によって押圧される黒鍵用反力発生部21bの押圧点とハンマー41bの揺動軸Cb1とを通る直線である。これにより、この場合も、白鍵11w及び黒鍵11bの押鍵時に、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bは、それらのドーム部21w1,21b1の座屈直前の反力のピーク時において、ハンマー41w,41bにより共に軸線Yw,Ybの方向から押圧されることになり、白鍵11wを押鍵した場合にも、黒鍵11bを押鍵した場合にも、同一なクリック感を伴う良好な鍵タッチ感を得ることができるようになる。
そして、この適用例のような軸線Yw,Ybの方向を異ならせて、複数ずつの白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bを備えたドーム型反力発生ユニット20においても、上記実施形態で説明したように、スライド金型を用いなくても、単純な金型(上金型25u及び下金型25d)でドーム型反力発生ユニット20を一体成形により製造できる。すなわち、この適用例の場合も、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bのドーム部21w1,21b1の最小勾配角度θw,θbの和θw+θbを、白鍵用反力発生部21wの軸線Ywと,黒鍵用反力発生部21bの軸線Ybとの間の角度θ以上に設定しておけば、スライド金型を用いなくても、単純な金型(上金型25u及び下金型25d)でドーム型反力発生ユニット20を一体成形により製造できる。
また、この適用例においても、上記第1乃至第3適用例の場合における白鍵11w及び黒鍵11bの場合に代えて、ハンマー41w,41bの揺動軸Cw1,Cb1の上下方向及び前後方向の位置を異ならせたり、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bの前後方向の位置を白鍵11wと黒鍵11bとで異ならせたりするようにしてもよい。
d.その他の変形例及び適用例
上記実施形態及び第1乃至第3適用例においては、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bのべース部21w3,21b3の高さ、すなわちべース部21w3,21b3の軸線Yw,Yb方向の長さを全周にわたって異ならせて、ドーム型反力発生ユニット20の組付け状態における白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bの軸線Yw,Ybを垂直に対してそれぞれ傾けるようにした。しかし、これに代えて、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bのべース部21w3,21b3の高さ、すなわちべース部21w3,21b3の軸線Yw,Yb方向の長さを全周にわたって同一にして、ドーム型反力発生ユニット20の組付け状態における白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bの軸線Yw,Ybを垂直に対してそれぞれ傾けるようにしてもよい。この場合、ドーム型反力発生ユニット20を組付ける支持部31dを適宜傾斜させるようにすればよい。なお、ハンマー41w,41bを備えた前記適用例に係る鍵盤装置においても、白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bのべース部21w3,21b3の高さ、すなわちべース部21w3,21b3の軸線Yw,Yb方向の長さを全周にわたって異ならせたり、同一したり、支持部31fw,31fbを水平にしたりして、ドーム型反力発生ユニット20の組付け状態における白鍵用反力発生部21w及び黒鍵用反力発生部21bの軸線Yw,Ybを垂直に対してそれぞれ適宜傾けることができる。
また、白鍵11w及び黒鍵11bの揺動支点については、上記実施形態及び第1乃至第3適用例において説明したような回転軸を中心として揺動するものに限らず、白鍵11w及び黒鍵11bの後端に板状の薄肉部を設け、薄肉部の後端を支持部材に支持させることにより、薄肉部の弾性変形により白鍵11w及び黒鍵11bを揺動させるようにしたヒンジ型の揺動支点を利用するものでもよい。ただし、この場合には、上述した搖動軸Cw,Cbは、僅かではあるが、白鍵11及び黒鍵11bの搖動に伴って変化、すなわち搖動軸Cw,Cbの位置は時間経過に従って変化する。
また、上記実施形態、各種適用例及び変形例においては、鍵スイッチ38w,38bとは独立して反力発生部材21w,21bを設けるようにした。しかし、これに代えて、鍵スイッチ38w,38bを反力発生部材21w,21bと同様に構成して、鍵スイッチ38w,38bを反力発生部材として利用するようにしてもよい。この場合、ドーム部21w1,21b1を内側部分と外側部分との2段構成とし、内側部分と外側部分との間に円筒状の変形量の少ないスイッチ部分を設ける。そして、外側部分の変形により押鍵に対して増加する反力を発生するとともにスイッチ部分で基板に設けた接点を開閉するようにし、かつ内側部分の変形により座屈変形を伴う押鍵に対する反力を発生するようにするとよい。
さらに、本発明に係るドーム型反力発生ユニット20は、鍵盤装置の白鍵11w及び黒鍵11b以外の操作子にも適用される。すなわち、手、足などにより操作される複数の操作子に対しても、複数の操作子によるドーム型反力発生部への押圧方向が異なっている場合には、軸線方向が異なる複数のドーム部を有する本発明によるドーム型反力発生ユニットが適用される。