しかしながら、前述した従来の鍵盤装置では、白鍵と黒鍵では、押鍵時のクリック感が異なるために、同じ鍵タッチ感を得られないという問題があった。
電子楽器の鍵盤においては、鍵盤装置の簡単化を重視するために、鍵の支点部は、白鍵と黒鍵とを区別することなく設けられていることが多く、この場合には、反力発生部材を白鍵と黒鍵とで前後方向(すなわち鍵長手方向)の同一位置に配置すると、反力発生部材に対する鍵の揺動に伴う押圧方向が白鍵と黒鍵とでは異なる。また、電子楽器の鍵盤においては、各部品の配置の制約も厳しく、白鍵と黒鍵とで構造上の制約も同一ではなく、白鍵と黒鍵とで揺動軸が上下又は前後の異なる位置に配置されていたり、白鍵と黒鍵とで反力発生部材が配置されている前後方向の位置が異なっていたりする場合もある。そして、これらの場合も、反力発生部材に対する鍵の揺動に伴う押圧方向が白鍵と黒鍵とでは異なる。
一方、上記特許文献1に示されたように、押鍵に対する反力をラバードームで付与する場合、ラバードームをその軸線方向から押圧しないと、理想的な反力特性が得られない。特に、ラバードームの座屈直前の反力のピーク時において、ラバードームをその軸線方向から押圧しないと、理想的なクリック感を伴う反力特性が得られない。したがって、前記のように白鍵と黒鍵とで押圧方向が異なる場合には、白鍵と黒鍵では、押鍵時のクリック感が異なるために同じ鍵タッチ感を得られないことになる。そして、この白鍵と黒鍵での鍵タッチ感の相違に関しては、上記特許文献1には全く示されていない。
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、その目的は、押鍵に対するクリック感を白鍵と黒鍵とでほぼ一致させることにより、白鍵と黒鍵とでほぼ同一の鍵タッチ感が得られるようにした電子楽器の鍵盤装置を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
前述した目的を達成するため、本発明の特徴は、揺動軸回りに揺動して前端を上下に変位させる白鍵(11w)及び黒鍵(11b)からなる複数の鍵と、複数の鍵にそれぞれ対応して設けられた複数の反力発生部材であって、複数の鍵の押鍵時に押圧されて、複数の鍵の押鍵操作に対して反力を発生する複数の反力発生部材(21b,21w)とを備えた電子楽器の鍵盤装置において、複数の反力発生部材を弾性体によりドーム状にそれぞれ形成し、かつ複数の反力発生部材の軸線(Yw,Yb)方向を白鍵と黒鍵とで異ならせて、反力のピーク時における押圧方向が反力発生部材の軸線方向に近づくように、複数の反力発生部材を配置したことにある。
この場合、例えば、複数の反力発生部材(21w,21b)を複数の鍵の押圧部(11w1,11b1)に対向させて配置して複数の鍵の押圧部により押圧されるように構成し、又は複数の反力発生部材(21w,21b)を複数の鍵に組付けて複数の反力発生部材に対向する位置に配置した押圧部(31ew,31eb)により押圧されるように構成する。そして、白鍵に対応した反力発生部材の軸線(Yw)方向と黒鍵に対応した反力発生部材の軸線(Yb)方向とがなす第1角度(θ)を、白鍵の揺動軸が直交する平面内にある直線であって反力のピーク時における白鍵の押鍵によって押圧される反力発生部材の押圧点と白鍵の揺動軸(Cw)とを通る直線(Lw)と、黒鍵に対応した揺動体の揺動軸が直交する平面内にある直線であって反力のピーク時における黒鍵によって押圧される反力発生部材の押圧点と黒鍵の揺動軸(Cb)とを通る直線(Lb)とがなす第2角度(φ)の2倍より小さく設定することが好ましい。また、前記第1角度を前記第2角度に等しく設定するとより好ましい。
また、例えば、複数の反力発生部材(21w,21b)を複数の鍵にそれぞれ連動する複数の揺動体(41w,41b)の押圧部(41w4,41b4)に対向させて配置して複数の揺動体の押圧部により押圧されるように構成し、又は複数の反力発生部材(21w,21b)を複数の鍵にそれぞれ連動する複数の揺動体(41w,41b)に組付けて複数の反力発生部材に対向する位置に配置した押圧部により押圧されるように構成する。そして、白鍵に対応した反力発生部材の軸線(Yw)方向と黒鍵に対応した反力発生部材の軸線(Yb)方向とがなす第1角度(θ)を、白鍵に対応した揺動体の揺動軸が直交する平面内にある直線であって反力のピーク時における白鍵に対応した揺動体によって押圧される反力発生部材の押圧点と白鍵に対応した揺動体の揺動軸(Cw1)とを通る直線(Lw)と、黒鍵に対応した揺動体の揺動軸が直交する平面内にある直線であって反力のピーク時における黒鍵に対応した揺動体によって押圧される反力発生部材の押圧点と黒鍵に対応した揺動体の揺動軸(Cb1)とを通る直線(Lb)とがなす第2角度(φ)の2倍より小さく設定すると好ましい。また、前記第1角度を前記第2角度に等しく設定するとより好ましい。
前記のように構成した本発明においては、複数の反力発生部材の軸線方向を白鍵と黒鍵とで異ならせて、反力のピーク時における押圧方向が反力発生部材の軸線方向に近づくように、複数の反力発生部材を配置した。したがって、本発明によれば、白鍵及び黒鍵の押鍵時に、反力発生部材の反力のピーク時において、白鍵及び黒鍵に対応した反力発生部材は共にほぼ軸線方向から押圧されることになり、白鍵を押鍵した場合にも、黒鍵を押鍵した場合にも、ほぼ同一なクリック感を伴う鍵タッチ感を得ることができるようになる。この場合、前記第1角度を前記第2角度の2倍より小さく設定すれば、白鍵と黒鍵とでほぼ同一の鍵タッチ感が得られて、鍵盤装置における良好な鍵タッチ感が得られる。また、前記第1角度を前記第2角度に等しく設定すれば、白鍵と黒鍵とで同一の鍵タッチ感が得られて、鍵盤装置におけるより良好な鍵タッチ感が得られる。
また、本発明の他の特徴は、前述のように、鍵の押圧部で反力発生部材を押圧する場合、又は鍵に反力発生部材を組みつけて反力発生部材に対向する位置に配置した押圧部により反力発生部材を押圧する場合には、反力のピーク時における複数の鍵の押圧部の押圧面の法線、又は反力のピーク時における複数の反力発生部材に対向する位置に配置した押圧部の押圧面の法線が、複数の反力発生部材の軸線に平行になるように、複数の鍵の押圧部、又は複数の反力発生部材に対向する位置に配置した押圧部を構成したことにある。また、前述のように、揺動体の押圧部で反力発生部材を押圧する場合、又は揺動体に反力発生部材を組みつけて反力発生部材に対向する位置に配置した押圧部により反力発生部材を押圧する場合には、反力のピーク時における複数の揺動体の押圧部の押圧面の法線、又は反力のピーク時における複数の反力発生部材に対向する位置に配置した押圧部の押圧面の法線が、複数の反力発生部材の軸線に平行になるように、複数の揺動体用の押圧部、又は複数の反力発生部材に対向する位置に配置した押圧部を構成したことにある。
この本発明の他の特徴によれば、反力のピーク時において、押圧部の押圧面の法線方向と反力発生部材の軸線方向が一致するので、反力発生部材はより的確に押圧されることになる。その結果、鍵盤装置における鍵タッチ感がさらに良好となる。
また、本発明の特徴は、他の観点から、揺動軸回りに揺動して前端を上下に変位させる白鍵(11a)及び黒鍵(11a)からなる複数の鍵と、複数の鍵にそれぞれ対応して設けられた複数の反力発生部材であって、複数の鍵の押鍵時に押圧されて、複数の鍵の押鍵操作に対して反力を発生する複数の反力発生部材(21b,21w)とを備えた電子楽器の鍵盤装置において、複数の反力発生部材を弾性体によりそれぞれ形成し、かつ複数の反力発生部材のピーク時における反力方向を白鍵と黒鍵とで異ならせて、反力のピーク時における押圧方向が反力発生部材の反力方向に近づくように、複数の反力発生部材を配置したことにもあるとして捉えることもできる。
これによっても、白鍵及び黒鍵の押鍵時に、反力のピーク時において、白鍵及び黒鍵に対応した反力発生部材は共にほぼ反力方向から押圧されることになり、白鍵を押鍵した場合にも、黒鍵を押鍵した場合にも、ほぼ同一なクリック感を伴う鍵タッチ感を得ることができるようになる。
a.第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態について図面を用いて説明する。図1は第1実施形態に係る鍵盤装置を右から見た概略側面図であり、図2は前記鍵盤装置の概略平面図である。本願の図面においては、鍵盤装置の前後方向を左右方向とし、鍵盤装置の上下方向を上下方向とする。
この鍵盤装置は、演奏者によって押離鍵操作される複数の白鍵11w及び複数の黒鍵11bと、演奏者の押鍵操作に対して反力を付与する複数の反力発生部材21w,21bとを備えている。白鍵11wは、前後方向に長尺状に形成されるとともに下方を開放させた断面コ字状に形成されて、鍵フレーム31の平板状の上板部31a上に配置されている。鍵フレーム31は、上板部31aの前端及び後端から下方に延設された平板上の脚部31b,31cを有し、脚部31b,31cの下端部分にて楽器内に設けたフレームFR上に固定されている。鍵フレーム31の上板部31aの後端部の上面上には、白鍵11wの内側にて対向する一対の板状の鍵支持部32が立設固定されている。鍵支持部32の上部には、互いに対向する位置にてそれぞれ外側に突出した突出部が設けられ、突出部を白鍵11wの両側面後端部に設けた貫通孔に内側から回転可能に侵入させている。これにより、白鍵11wは、鍵支持部32により揺動可能に支持され、前端部を上下方向に変位させる。以下の説明では、この白鍵11wの揺動中心を揺動軸Cwとする。黒鍵11bは、前部上面が高くなっている形状こそ異なるが、他の構成は白鍵11wと同様である。そして、黒鍵11bも、鍵支持部32により揺動軸Cb回りに揺動可能に支持されて、揺動により前端部を上下方向に変位させる。なお、黒鍵11bの揺動軸Cbと、白鍵11wの揺動軸Cwとは、前後方向及び上下方向において同一位置に位置する。
鍵フレーム31の上板部31aの上面には、白鍵11wの前端部の下方位置にて鍵ガイド33wが立設しており、黒鍵11bの前端部の下方位置にて鍵ガイド33bが立設している。鍵ガイド33w,33bは白鍵11w及び黒鍵11b内にそれぞれ摺動可能に侵入しており、白鍵11w及び黒鍵11bは、それらの上下方向の揺動時に左右方向に変位しないようになっている。
反力発生部材21wは各白鍵11wに対してそれぞれ設けられるとともに、反力発生部材21bは各黒鍵11bに対してそれぞれ設けられている。反力発生部材21w,21bは、白鍵11w及び黒鍵11bの前後方向の中央部の下方にて、鍵フレーム31の上板部31aの上面に固定されている。この場合、白鍵11w用の反力発生部材21wの前後方向の位置と、黒鍵11b用の反力発生部材21bの前後方向の位置は同じであり、反力発生部材21w,21bは鍵盤の横方向に1列に配置されている。そして、複数の反力発生部材21w,21bが一体成形により形成されている。
ここで、反力発生部材21w,21bについて説明しておく。各反力発生部材21w,21bは、弾性を有するゴムにより一体形成されており、図4(A),(B)に示すように、本体部21w1、21b1、トップ部21w2,21b2、ベース部21w3,21b3及び一対の脚部21w4,21b4とで構成されている。本体部21w1,21b1は、上方からの押圧により変形し易いドーム状(お椀状)であって薄肉に形成されており、上方からの押圧により圧縮された際には、図4(B)に示したように座屈変形する。これにより、反力発生部材21w,21bは、上方からの押圧力の増加により弾性変形して反力を徐々に増加させるとともに、反力がピークに達した後に座屈変形によって反力を急激に減少させる(図14参照)。
トップ部21w2,21b2は、上面が解放された円筒状に形成されて、下面にて本体部21w1,21b1の上面に接続されている。また、トップ部21w2,21b2は全周にわたって均一の高さに設定され、その上面は平面である。トップ部21w2,21b2の上部における周方向の一部には、トップ部21w2,21b2の内部と外部とを連通させる空気逃がし用の切込部が設けられている。ベース部21w3,21b3は、本体部21w1,21b1の下端部の外周面から外側に環状(フランジ状)に突出されて、全周にわたって厚肉に形成されている。ベース部21w3,21b3の上面及び下面も平面であるが、設置した際に反力発生部材21w,21bが傾斜するように、ベース部21w3,21b3の高さは全周に渡って連続して異なっている。なお、これらのトップ部21w2,21b2及びベース部21w3,21b3は、上方から押圧されてもほとんど変形しない。一対の脚部21w4,21b4は、鍵フレーム31の上板部31aに設けた支持部31dに固定するために、ベース部21w3,21b3の下面から下方に円柱状に突出している。この場合、支持部31dは水平である。なお、脚部21w4,21b4をなくして、ベース部21w3,21b3の下面を、鍵フレーム31の上板部31a(支持部31d)上に接着剤などにより固定するようにしてもよい。
このように構成した反力発生部材21w,21bの本体部21w1,21b1、トップ部21w2,21b2、及びベース部21w3,21b3の上部は、軸線Yw、Ybに対して点対称形状である。逆に言えば、軸線Yw,Ybとは、本体部21w1,21b1及びトップ部21w2,21b2の中心軸線である。そして、軸線Yw,Ybは、反力ベクトルの起点を通り、ベクトル方向に延びる力の作用線でもある。また、トップ部21w2,21b2及びベース部21w3,21b3の上面の法線は、軸線Yw,Ybとそれぞれ平行である。ただし、図3に示すように、白鍵11w用の反力発生部材21wのベース部21w3の高さは黒鍵11b用の反力発生部材21bのベース部21b3の高さよりも高く、白鍵11w用の反力発生部材21wの本体部21w1の軸線Ywの方向の長さは、黒鍵11b用の反力発生部材21bの本体部21b1の軸線Ybの方向の長さよりも短い。また、白鍵11w用の反力発生部材21wのトップ部21w2の高さは黒鍵11b用の反力発生部材21bのトップ部21b2の高さと同じであり、設置した際の白鍵11w用の反力発生部材21wの全体の高さは黒鍵11b用の反力発生部材21bの全体の高さとほぼ同じである。また、この点は本発明の特徴でもあるが、設置した状態では、黒鍵11b用の反力発生部材21bの軸線Ybは白鍵11w用の反力発生部材21wの軸線Ywよりも水平側に僅かに大きく傾斜している。そして、両軸線Yb,Yw間の角度をθとする。
また、白鍵11w及び黒鍵11bの下面であって、反力発生部材21w,21bのトップ部21w2,21b2の上面に対向する位置には、反力発生部材21w,21bを上方から押圧する押圧部11w1,11b1がそれぞれ設けられている。押圧部11w1,11b1は平板状に構成され、その下面は、平面であって、白鍵11w及び黒鍵11bの下面に対して、前側にて低く後側にて高くなるように傾斜している。この押圧部11w1,11b1の傾斜は、詳しくは後述するように、反力発生部材21w,21bの反力のピーク時において、押圧部11w1,11b1の下面の法線(下面に垂直な直線)が、反力発生部材21w、21bの軸線Yw,Ybにそれぞれ平行になるように設定されている。また、反力発生部材21w,21bによる反力のピーク時において、反力方向は反力発生部材21w,21bの軸線Yw,Ybの方向と一致する。したがって、反力発生部材21w,21bによる反力のピーク時において、反力方向を白鍵21wと黒鍵21bとで異ならせて、反力のピーク時における反力発生部材21w,21bの押圧方向が反力発生部材21w,21bの反力方向と一致するようにしているとも捉えることができる。この場合、黒鍵11bの押圧部11b1の下面の水平(黒鍵11bの下面)に対する傾斜は、白鍵11wの押圧部11w1の下面の水平(白鍵11wの下面)に対する傾斜よりも若干量だけ大きい。なお、前記反力のピーク時において押圧部11w1,11b1の押圧点を含む下面の法線が軸線Yw,Ybにそれぞれ平行になるように設定されるならば、これらの押圧部11w1,11b1の下面は平面でなくても、球面状であってもよい。また、押圧部11w1,11b1を、白鍵11w及び黒鍵11bの内部上面から下方に突出させた十字型、H字型等のリブなどで構成してもよい。
また、この鍵盤装置は、押圧部11w1,11b1と鍵支持部32の中間位置にて、白鍵11w及び黒鍵11bと、鍵フレーム31の上板部31aとの間にそれぞれ組み込まれた白鍵11w用のスプリング34w及び黒鍵11b用のスプリング34bを備えている。スプリング34w,34bは、白鍵11w及び黒鍵11bを上板部31aに対して上方に付勢している。なお、これらのスプリング34w、34bは、コイル状でなくても、白鍵11w及び黒鍵11bを上方に付勢することができれば、板ばねのようなスプリングでもよい。
白鍵11wは、その前端部から下方に延設させた延設部11w2を備え、延設部11w2の下端には前方に突出させた係合部11w3が設けられ、係合部11w3は鍵フレーム31の上板部31aに設けた貫通孔を介して、上板部31aの下方に上方から侵入している。また、鍵フレーム31の上板部31aの前端部下面には上限ストッパ部材35wが設けられている。上限ストッパ部材35wは、フェルトのような緩衝部材により構成されており、白鍵11wの係合部11w3との当接により、白鍵11wの前端部の上方への変位を規制する。また、鍵フレーム31の上板部31aの前端部上面には下限ストッパ部材36wが設けられている。下限ストッパ部材36wも、フェルトのような緩衝部材により構成されており、白鍵11wの前端部下面との当接により、白鍵11wの前端部の下方への変位を規制する。
黒鍵11bは、その前端部から下方に延設させた延設部11b2を備え、延設部11b2の下端には後方に突出させた係合部11b3が設けられ、係合部11b3は鍵フレーム31の上板部31aに設けた貫通孔を介して、上板部31aの下方に上方から侵入している。また、鍵フレーム31の上板部31aの中間部下面には上限ストッパ部材35bが設けられている。上限ストッパ部材35bも、フェルトのような緩衝部材により構成されており、黒鍵11bの係合部11b3との当接により、黒鍵11bの前端部の上方への変位を規制する。また、鍵フレーム31の上板部31aの中間部上面には下限ストッパ部材36bが設けられている。下限ストッパ部材36bも、フェルトのような緩衝部材により構成されており、黒鍵11bの前端部下面との当接により、黒鍵11bの前端部の下方への変位を規制する。
また、鍵フレーム31の上板部31aの下面であって反力発生部材21w,21bの若干後方位置には、電気回路基板37が上板部31aと平行になるように固定されている。電気回路基板37の上面には、白鍵11w及び黒鍵11bのためのドーム状の鍵スイッチ38w,38bがそれぞれ固定されている。鍵スイッチ38w,38bは、白鍵11w及び黒鍵11bの押鍵時に白鍵11w及び黒鍵11bの下面から突出させた突出部の押圧によりオフ状態からオン状態に変化して、白鍵11w及び黒鍵11bの押離鍵操作を検出する。なお、この鍵スイッチ38w,38bによる押離鍵操作の検出は、楽音信号の発生制御に利用される。
次に、前記のように構成した第1実施形態に係る鍵盤装置の動作について説明する。演奏者が白鍵11w及び黒鍵11bを押し始めると、白鍵11w及び黒鍵11bはスプリング34w,34bの反力に抗して、揺動軸Cw,Cb回りにそれぞれ揺動を開始し、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部が下方に変位して係合部11w3,11b3が上限ストッパ部材35w,35bから離れ、その後、押圧部11w1,11b1が反力発生部材21w,21bのトップ部21w2,21b2の上面の後側端部に当接する。そして、白鍵11w及び黒鍵11bがさらに押されると、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部が下方に変位して、押圧部11w1,11b1の押圧により反力発生部材21w,21bの本体部21w1,21b1が変形し始める。これにより、演奏者は、スプリング34w,34bによる反力に加えて、反力発生部材21w,21bの徐々に増加する反力を感じ始める(図14参照)。
白鍵11w及び黒鍵11bがさらに押されると、反力発生部材21w,21bの反力がピークに達して、その後に、本体部21w1,21b1が座屈変形し始める。これにより、演奏者は明確なクリック感を感じる。なお、鍵スイッチ38w,38bは、この座屈よりも若干遅れて、白鍵11w及び黒鍵11bの下面から突出した突出部の押圧によりオフ状態からオン状態に変化する。この鍵スイッチ38w,38bのオン状態への変化に応答して、図示しない楽音信号発生回路は楽音信号を発生し始める。
さらに、白鍵11w及び黒鍵11bが押されると、白鍵11w及び黒鍵11bの前端下面が下限ストッパ部材36w,36bに当接して、白鍵11w及び黒鍵11bの揺動は終了する。この状態では、反力発生部材21w,21bの弾性変形も終了する。そして、白鍵11w及び黒鍵11bが離鍵されると、反力発生部材21w,21b及びスプリング34w,34bの反力により、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部は上方に変位する。この白鍵11w及び黒鍵11bの前端部が上方へ変位して戻る過程においては、鍵スイッチ38w,38bはオン状態からオフ状態に変化して、図示しない楽音信号発生回路は楽音信号の発生停止を制御する。さらに、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部が上方へ変位すると、係合部11w3,11b3は上限ストッパ部材35w,35bに当接して、白鍵11w及び黒鍵11bは離鍵状態に戻る。
さらに、この鍵盤装置の動作の説明を交えながら、鍵盤装置の構成上の特徴も含めて説明する。図5(A)は、白鍵11w及び黒鍵11bが上限ストッパ部材35w,35bにより上方への変位が規制されている離鍵状態にある白鍵11w及び黒鍵11bを実線で示し、白鍵11w及び黒鍵11bが下限ストッパ部材36w,36bにより下方への変位が規制されている押鍵終了状態(以下、フルストローク状態という)にある白鍵11w及び黒鍵11bを破線で示している。図5(B)は、白鍵11wの離鍵状態(初期状態)、押鍵により、押圧部11w1が反力発生部材21wのトップ部21w2に当接した状態(以下、トップ当接状態という)、その後に反力発生部材21wの反力がピークに達した状態(以下、ピーク荷重発生状態という)、そして最終的に押鍵が終了したフルストローク状態を示している。図5(C)は、離鍵状態(初期状態)、トップ当接状態、ピーク荷重発生状態及びフルストローク状態にある黒鍵11bを示している。図5(D)は、ピーク荷重発生状態にある白鍵11w及び黒鍵11bを示している。
図6(A)〜(D)は、離鍵状態、トップ当接状態、ピーク荷重発生状態及びフルストローク状態にある白鍵11wをそれぞれ示している。図6(E)は図6(A)の反力発生部材21wの拡大図であり、図6(F)は図6(C)の反力発生部材21wの拡大図である。また、図7(A)〜(D)は、離鍵状態、トップ当接状態、ピーク荷重発生状態及びフルストローク状態にある黒鍵11bをそれぞれ示している。図7(E)は図7(A)の反力発生部材21bの拡大図であり、図7(F)は図7(C)の反力発生部材21bの拡大図である。なお、図7(E)においては、黒鍵11b用の反力発生部材21bの軸線Ybの方向と、白鍵11w用の反力発生部材21wの軸線Ywとを比較するために、反力発生部材21wを破線で示している。角度θは両軸線Yb,Ywがなす角度である。
この鍵盤装置においては、図5(A)に示すように、白鍵11wの前端の高さ(上面前端の高さ)と、黒鍵11bの前端の高さ(前端傾斜部の最下点の高さ)とが、離鍵状態及びフルストローク状態においてそれぞれ同じなるようにしている。すなわち、白鍵11wと黒鍵11bとで、押鍵によるフルストローク量が同じになるようにしている。しかし、黒鍵11bの前後方向の長さは白鍵11wの前後方向の長さよりも短いので、黒鍵11bの動作角度は白鍵11wの動作角度よりも大きくなる。そして、白鍵11wの揺動軸Cwと黒鍵11bの揺動軸Cbは同じ位置であり、黒鍵11bの押圧部11b1の前後方向の位置と白鍵11wの押圧部11w1の前後方向の位置は同じであるので、黒鍵11bの押圧部11b1の上下方向の移動量は白鍵11wの押圧部11w1の上下方向の移動量よりも大きい。そのために、前述のように、黒鍵11b用の反力発生部材21bのベース部21b3の高さを白鍵11w用の反力発生部材21wのベース部21w3の高さよりも低くし、黒鍵11b用の反力発生部材21bの本体部21b1の軸線Ywの方向の長さを白鍵11w用の反力発生部材21wの本体部21w1の軸線Ybの方向の長さより長くして、反力発生部材21bの変形量を反力発生部材21wの変形量よりも大きくしている。
また、図5(B)及び図5(C)に示すように、トップ状態及びピーク荷重発生状態においては、白鍵11wの前端の高さ(上面前端の高さ)と、黒鍵11bの前端の高さ(前端傾斜部の最下点の高さ)とがほぼ同じになるようにしている。そして、前述のように、黒鍵11bの押圧部11b1の上下方向の移動量は白鍵11wの押圧部11w1の上下方向の移動量よりも大きいので、離鍵状態では、黒鍵11bの押圧部11b1を白鍵11wの押圧部11w1よりも高い位置に設定している。なお、離鍵状態においては、黒鍵11b及び白鍵11は、水平に対して、前端部を後端部よりも若干高く傾斜させている。
このように、ピーク荷重発生状態では、前述のように、白鍵11wの前端の高さと黒鍵11bの前端の高さをほぼ同じにしているため、図5(D)に示すように、黒鍵11bの回転角度は白鍵11wの回転角度よりも大きくなり、黒鍵11bの押圧部11b1の回転方向は白鍵11wの押圧部11w1の回転方向よりも水平方向側に僅かに大きく傾斜する。すなわち、黒鍵11bの押圧部11b1の反力発生部材21bに対する押圧方向は、白鍵11wの押圧部11w1の反力発生部材21wに対する押圧方向よりも水平側に角度φだけ傾く。この角度φは、図示直線Lb,Lwがなす角度である。直線Lbは、黒鍵11bの揺動軸Cbに直交する平面内にある直線であって、ピーク荷重発生状態における黒鍵11bによって押圧される反力発生部材21bの押圧点と黒鍵11bの揺動軸Cbとを通る直線である。直線Lwは、白鍵11wの揺動軸Cwに直交する平面内にある直線であって、ピーク荷重発生状態における白鍵11wの押鍵によって押圧される反力発生部材21wの押圧点と白鍵11wの揺動軸Cwとを通る直線である。
一方、前述のように、黒鍵11b用の反力発生部材21bの軸線Ybは白鍵11w用の反力発生部材21wの軸線Ywよりも水平側に僅かに大きく傾斜していて、両軸線Yb,Yw間の角度はθである(図7(E)参照)。そして、この第1実施形態では、この両軸線Yb,Yw間の角度θが、前記直線Lb,Lw間の角度φに等しく設定されている。これにより、反力発生部材21w,21bは、ピーク荷重発生状態において、白鍵11w及び黒鍵11bの揺動により軸線Yw,Yb方向に押圧される。また、反力発生部材21wのトップ部21w2の上面全体が均等な力で押されるようにするために、このピーク荷重発生状態で、白鍵11wの押圧部11w1の下面の法線(下面に対する垂直線)が反力発生部材21wの軸線Ywと平行になるように、押圧部11w1の下面の傾斜角が設定されている。また、反力発生部材21bのトップ部21b2の上面全体が均等な力で押されるようにするために、このピーク荷重発生状態で、黒鍵11bの押圧部11b1の下面の法線(下面に対する垂直線)が反力発生部材21bの軸線Ybと平行になるように、押圧部11b1の下面の傾斜角が設定されている。なお、白鍵11wの押圧部11w1の下面の傾斜角と、黒鍵11bの押圧部11b1の下面の傾斜角とは若干異なる。
これにより、このトップ荷重発生状態では、反力発生部材21w,21bの本体部21w1,21b1は、図6(F)及び図7(F)に示すように、軸線Yw,Ybを中心に均等に変形している。すなわち、反力発生部材21w,21bの本体部21w1,21b1は、軸線Yw,Ybの全周において、上下方向に平行に変形した状態にある。
前記説明のように、この第1実施形態においては、複数の反力発生部材21w,21bの軸線Yw,Ybの方向を白鍵11wと黒鍵11bとで異ならせて、反力のピーク時における押圧方向が複数の反力発生部材21w,21bの軸線方向に近づくように、複数の反力発生部材21w,21bを配置した。特に、白鍵11w用の反力発生部材21wの軸線Ywの方向と黒鍵11b用の反力発生部材21bの軸線Ybの方向とがなす角度θを、白鍵11w及び黒鍵11bの押圧方向を表す直線Lw,Lbがなす角度φに等しく設定した。前記直線Lwは、前述のように、白鍵11wの揺動軸Cwが直交する平面内にある直線であってピーク荷重発生状態における白鍵11wの押鍵によって押圧される反力発生部材21wの押圧点と白鍵11wの揺動軸Cwとを通る直線である。また、直線Lbは、黒鍵11bの揺動軸Cbが直交する平面内にある直線であってピーク荷重発生状態における黒鍵11bによって押圧される反力発生部材21bの押圧点と黒鍵11bの揺動軸Cbとを通る直線である。したがって、この第1実施形態によれば、白鍵11w及び黒鍵11bの押鍵時に、ラバードームからなる反力発生部材21w,21bの座屈直前の反力のピーク時において、白鍵11w及び黒鍵11bに対応した反力発生部材21w、21bは共にほぼ軸線方向から押圧されることになり、白鍵11wを押鍵した場合にも、黒鍵11bを押鍵した場合にも、ほぼ同一なクリック感を伴う良好な鍵タッチ感を得ることができるようになる。
前述のように、反力発生部材21w,21bのピーク荷重発生状態時には、反力発生部材21w,21bによる反力の発生方向は軸線Yw,Ybに一致する。したがって、前記特徴を、別の観点から、次のように捉えることもできる。すなわち、反力発生部材21w,21bのピーク荷重発生状態において、反力方向を白鍵21wと黒鍵21bとで異ならせて、ピーク荷重発生状態時における反力発生部材21w,21bの押圧方向が反力発生部材21w,21bの反力発生方向に一致するようにしている。これにより、白鍵11wを押鍵した場合にも、黒鍵11bを押鍵した場合にも、ほぼ同一なクリック感を伴う良好な鍵タッチ感を得ることができるようになる。
また、この第1実施形態においては、ピーク荷重発生状態における白鍵11w及び黒鍵11bの押圧部11w1,11b1の押圧面の法線が、反力発生部材21w、21bの軸線Yw,Ybに平行になるようにした。これにより、反力発生部材21w,21bはより的確に押圧されることになる。その結果、鍵盤装置における鍵タッチ感がさらに良好となる。
なお、前記第1実施形態においては、前記角度θを前記角度φに等しくなるように設定した。しかし、白鍵11w及び黒鍵11bの揺動角度はそれほど大きくなく、押圧部11w1,11b1の回転角もそれほど大きくない。したがって、前記角度θは0以上かつ前記角度φの2倍の角度2φより小さな範囲内に設定すれば、ピーク荷重発生状態における反力発生部材21w,21bに対する押圧部11w1,11b1の押圧方向はほぼ同じであって、許容される範囲内である。この点に関しても、別の観点から捉えれば、前記角度θの設定は、ピーク荷重発生状態時における反力発生部材21w,21bの押圧方向を、反力発生部材21w,21bによる反力の発生方向に対して許容範囲に設定することに相当する。したがって、前記角度θを0以上かつ角度2φより小さく設定しても、良好な鍵タッチ感は得られる。また、この場合も、ピーク荷重発生状態における白鍵11w及び黒鍵11bの押圧部11w1,11b1の押圧面の法線が、反力発生部材21w、21bの軸線Yw,Ybに平行になるように、押圧部11w1,11b1の傾斜を調整して、反力発生部材21w,21bが的確に押圧されるようにするとよい。
a1.第1実施形態の変形例
次に、上記第1実施形態の第1変形例について、図8を用いて説明する。この第1変形例においては、黒鍵11bの揺動軸Cbが白鍵11wの揺動軸Cwよりも上方に位置している。なお、黒鍵11bの揺動軸Cb及び白鍵11wの揺動軸Cwの前後方向の位置は同じである。また、他の構成は、上記第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。この第1変形例においても、白鍵11w及び黒鍵11bのための前述した直線Lw,Lb、並びに反力発生部材21w,21bの軸線Yw,Ybは図示のように定義されるとともに、前述した角度θ,φも図示のように定義される。
次に、上記第1実施形態の第2変形例について、図9を用いて説明する。この第2変形例においては、黒鍵11b用の反力発生部材21bを白鍵用の反力発生部材21wよりも後方に位置させている。そして、黒鍵11bの押圧部11b1を反力発生部材21bに対向させて位置させるとともに、白鍵11wの押圧部11w1も反力発生部材21wに対向させて位置させている。なお、黒鍵11bの揺動軸Cb及び白鍵11wの揺動軸Cwの前後方向及び上下方向の位置は同じである。また、他の構成は、上記第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。この第2変形例においても、白鍵11w及び黒鍵11bのための前述した直線Lw,Lb、並びに反力発生部材21w,21bの軸線Yw,Ybは図示のように定義されるとともに、前述した角度θ,φも図示のように定義される。また、この第2変形例では、図10に示すように、複数のラバードームで形成した反力発生部材21w,21bは前後方向に2列に配置されて一体的に構成されている。
次に、上記第1実施形態の第3変形例について、図11を用いて説明する。この第3変形例においては、黒鍵11bの揺動軸Cbが白鍵11wの揺動軸Cwよりも前方に位置している。なお、黒鍵11bの揺動軸Cb及び白鍵11wの揺動軸Cwの上下方向の位置は同じである。また、他の構成は、上記第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。この第3変形例においても、白鍵11w及び黒鍵11bのための前述した直線Lw,Lb、並びに反力発生部材21w,21bの軸線Yw,Ybは図示のように定義されるとともに、前述した角度θ,φも図示のように定義される。
また、前記第3変形例において、白鍵11wの揺動軸Cwが黒鍵11bの揺動軸Cbよりも前方に位置させるようにしてもよい。さらに、黒鍵11bの揺動軸Cbと白鍵11wの揺動軸Cwの上下方向の位置を異ならせたり、黒鍵11b用の反力発生部材21bと白鍵用の反力発生部材21wの前後方向の位置を異ならせたりするようにしてもよい。
このように構成した第1乃至第3変形例においても、ピーク荷重発生状態における白鍵11wの押圧部11w1と黒鍵11bの押圧部11b1の回転方向は異なり、ピーク荷重発生状態における反力発生部材21w,21bの押圧方向は異なる。そこで、図8、図9及び図11に示したように、反力発生部材21wの軸線Ywの方向と、反力発生部材21bの軸線Ybの方向を異ならせて、鍵フレーム31の上板部31aに固定する。そして、軸線Yw,Ybがなす角度θを、前述した直線Lw,Lbがなす角度φに等しく設定する。これにより、前記第1乃至第3変形例によっても、白鍵11w及び黒鍵11bの押鍵時に、ラバードームからなる反力発生部材21w,21bの座屈直前の反力のピーク時において、白鍵11w及び黒鍵11bに対応した反力発生部材21w、21bは共にほぼ軸線方向から押圧されることになり、白鍵11wを押鍵した場合にも、黒鍵11bを押鍵した場合にも、同一なクリック感を伴う良好な鍵タッチ感を得ることができるようになる。
また、これらの第1乃至第3変形例においても、ピーク荷重発生状態における白鍵11w及び黒鍵11bの押圧部11w1,11b1の押圧面の法線が、反力発生部材21w、21bの軸線Yw,Ybに平行になるように、押圧部11w1,11b1の傾斜を調整して、反力発生部材21w,21bが的確に押圧されるようにするとよい。
さらに、これらの第1乃至第3変形例においても、白鍵11w及び黒鍵11bの揺動角度はそれほど大きくなく、押圧部11w1,11b1の回転角もそれほど大きくないので、前記角度θを0以上かつ前記角度φの2倍の角度2φより小さな範囲内に設定するようにしてもよい。これによっても、良好な鍵タッチ感は得られる。また、この場合も、ピーク荷重発生状態における白鍵11w及び黒鍵11bの押圧部11w1,11b1の押圧面の法線が、反力発生部材21w、21bの軸線Yw,Ybに平行になるように、押圧部11w1,11bの傾斜を調整して、反力発生部材21w,21bが的確に押圧されるようにするとよい。
b.第2実施形態
上記第1実施形態及びその各種変形例では、白鍵11w及び黒鍵11bに押圧部11w1,11b2をそれぞれ設けるとともに、反力発生部材21w,21bを鍵フレーム31の上板部31aに設けた支持部31dに固定した。そして、白鍵11w及び黒鍵11bの押鍵操作により、押圧部11w1,11b1で反力発生部材21w,21bのトップ部21w2,21b2を押圧するようにした。しかし、これに代えて、白鍵11w及び黒鍵11b側に反力発生部材21w,21bをそれぞれ設けるようにしてもよい。図12は、白鍵11w及び黒鍵11b側に反力発生部材21w,21bをそれぞれ設けるようにし第2実施形態に係る鍵盤装置を示している。
この鍵盤装置においては、白鍵11w及び黒鍵11bの下面に支持部11w4,11b4がそれぞれ設けられ、支持部11w4,11b4には反力発生部材21w,21bが傾斜させて設けられている。なお、支持部11w4,11b4は水平である。この場合、反力発生部材21w,21bは、上記第1実施形態と同様な本体部21w1,21b1、トップ部21w2,21b2及びベース部21w3,21b3からなる。しかし、この場合には、複数の反力発生部材21w,21bは一体的ではなく、それぞれ個別に構成されている。また、鍵フレーム31の上板部31a上の反力発生部材21w,21bに対向する位置には、反力発生部材21w、21bのトップ部21w2,21b2の下面(上記第1実施形態の上面に相当)を押圧するための押圧部31ew,31ebがそれぞれ設けられている。この場合も、反力発生部材21w,21bの軸線Yw,Ybは、上側が前方に来るように垂直に対して傾いている。押圧部31ew,31ebの上面は、前側が低くなるように水平に対して傾斜している。他の構成に関しては、上記第1実施形態と同じであるので、同一符号を付してその説明を省略する。
このように構成した第2実施形態においても、白鍵11w及び黒鍵11bが押離鍵操作された際には、白鍵11w及び黒鍵11bは上記第1実施形態と同様に動作する。異なる点は、反力発生部材21w,21bが白鍵11w及び黒鍵11b側に固定されているので、反力発生部材21w,21bは白鍵11w及び黒鍵11bと一体的に移動する。そして、この反力発生部材21w,21bの下方への移動時に、反力発生部材21w,21bは鍵フレーム31の上板部31aに設けた押圧部31ew,31ebにより押圧される。他の動作は、上記第1実施形態の場合と同様である。
そして、この第2実施形態においても、反力発生部材21wの軸線Ywの方向と、反力発生部材21bの軸線Ybの方向を異ならせてあり、軸線Yw,Ybがなす角度θを、上記第1実施形態の場合と同様な直線Lw,Lbがなす角度φに等しく設定されている。これにより、この第2実施形態においても、白鍵11w及び黒鍵11bの押鍵時に、ラバードームからなる反力発生部材21w,21bの座屈直前の反力のピーク時において、白鍵11w及び黒鍵11bに対応した反力発生部材21w、21bは共に軸線方向から押圧されることになり、白鍵11wを押鍵した場合にも、黒鍵11bを押鍵した場合にも、同一なクリック感を伴う良好な鍵タッチ感を得ることができるようになる。
また、この第2実施形態においても、ピーク荷重発生状態における押圧部31ew,31ebの押圧面の法線が、反力発生部材21w、21bの軸線Yw,Ybに平行になるように、押圧部11w1,11b1の傾斜を調整して、反力発生部材21w,21bが的確に押圧されるようになっている。
また、この第2実施形態においても、白鍵11w及び黒鍵11bの揺動角度はそれほど大きくなく、押圧部11w1,11b1の回転角もそれほど大きくないので、前記角度θを0以上かつ前記角度φの2倍の角度2φより小さな範囲内に設定するようにしてもよい。これによっても、良好な鍵タッチ感は得られる。また、この場合も、ピーク荷重発生状態における白鍵11w及び黒鍵11bの押圧部11w1,11b1の押圧面の法線が、反力発生部材21w、21bの軸線Yw,Ybに平行になるように、押圧部11w1,11bの傾斜を調整して、反力発生部材21w,21bが的確に押圧されるようにするとよい。
さらに、この第2実施形態においても、上記第1実施形態の第1乃至第3変形例と同様に、白鍵11w及び黒鍵11bの揺動軸Cw,Cbの上下方向及び前後方向の位置を異ならせたり、反力発生部材21w,21bの前後方向の位置を白鍵11wと黒鍵11bとで異ならせたりするようにしてもよい。
c.第3実施形態
次に、白鍵11w及び黒鍵11bの揺動により連動して揺動する揺動体が、反力発生部材21w,21bを押圧する第3実施形態について説明する。図13はこの第3実施形態に係る鍵盤装置を示しており、この鍵盤装置は前記揺動体としてのハンマー41w,41bを白鍵11w及び黒鍵11bに対応させて備えている。
ハンマー41w,41bは、白鍵11w及び黒鍵11bにそれぞれ対応したハンマー支持部材42によってそれぞれ揺動可能に支持されている。ハンマー支持部材42は、白鍵11w及び黒鍵11bの前後方向の中間位置にて、上板部31aの下面から下方に延設している。ハンマー41w,41bは、それぞれ基部41w1,41b1、連結棒41w2,41b2及び質量体41w3,41b3からなる。基部41w1,41b1は、その中間部にて、揺動軸Cw1,Cb1回りに揺動可能にハンマー支持部材42により支持され、質量体41w3,41b3を上下方向に揺動させる。基部41w1,41b1の前部は2股に分かれた脚部を備えており、脚部の間には、白鍵11w及び黒鍵11bの下面からそれぞれ垂直に延設させた延設部43w,43bに設けた駆動軸43w1,43b1が摺動可能に貫通している。延設部43w,43bは、上板部31aに設けた貫通孔を上下方向に変位可能に貫通している。これにより、白鍵11w及び黒鍵11bが押されると、基部41w1,41b1の前端が下方に変位するようになっている。連結棒41w2,41b2は前後方向に延設されて、基部41w1,41b1と質量体41w3,41b3とを連結している。質量体41w3,41b3は、その重量により、ハンマー41w,41bの前端側を上方に付勢している。
質量体41w3,41b3の下方には、質量体41w3,41b3の下方への移動を規制する上限ストッパ部材44がフレームFRに固定されている。上限ストッパ部材44も、フェルトのような緩衝部材により構成されている。これにより、離鍵状態では、質量体41w3,41b3は上限ストッパ部材44上に位置し、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部の上方への変位が規制される。したがって、この第3実施形態では、上記第1実施形態の上限ストッパ部材35w,35b及び延設部11w2,11b2が存在しない。
反力発生部材21w,21bは、質量体41w3,41b3に対向する位置にて上板部31aに設けた支持部31fw、31fbの下面に固定されている。質量体41w3,41b3の上面は、平面からなる押圧部41w4,41b4を構成し、押圧部41w4,41b4は離鍵状態にて反力発生部材21w,21bのトップ部21w2,21b2の下面(上記第1実施形態の上面に相当)に対向している。そして、押鍵時には、押圧部41w4,41b4が上方に変位してトップ部21w2,21b2の下面に当接して、反力発生部材21w,21bをそれぞれ押圧する。この場合も、前記押圧により、反力発生部材21w,21bは弾性変形して、反力がピークに達した後に座屈変形する。また、ハンマー41w,41bは、白鍵11w及び黒鍵11bの押鍵操作に対して反力を付与するので、上記第1実施形態のスプリング34w,34bは存在してもよいが、この第3実施形態では省略されている。他の構成に関しては、上記第1実施形態と同じであるので、同一符号を付してその説明を省略する。
このように構成した第3実施形態においては、白鍵11w及び黒鍵11bの押鍵時には、延設部43w,43bの駆動軸43w1,43b1が下方に変位し、ハンマー41w,41bは、搖動軸Cw1,Cb1を中心に反時計方向に揺動する。そして、ハンマー41w,41bの質量体41w3,41b3の押圧部41w4,41b4が反力発生部材21w、21bを押圧し、反力発生部材21w,21bは弾性変形した後に座屈する。さらに、押鍵が進むと、反力発生部材21w,21bは更に弾性変形し、白鍵11w及び黒鍵11bは、それらの前端下面の下限ストッパ部材36w,36bへの当接により、押鍵が終了する。なお、この押鍵時には、ハンマー41w,41b及び反力発生部材21w,21bの両者により、押鍵に対する反力が演奏者に与えられる。
一方、白鍵11w及び黒鍵11bの離鍵時には、質量体41w3,41b3の重量により、ハンマー41w,41bは時計方向に揺動して、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部は上方に変位する。そして、質量体41w3,41b3の下面が上限ストッパ部材44にと当接すると、白鍵11w及び黒鍵11bの揺動は停止し、白鍵11w及び黒鍵11bは元の離鍵状態に復帰する。
このように構成されて動作する第3実施形態に係る鍵盤装置においても、反力発生部材21wの軸線Ywの方向と、反力発生部材21bの軸線Ybの方向とを異ならせてあり、軸線Yw,Ybがなす角度θを、上記第1実施形態の場合と同様な直線Lw,Lbがなす角度φに等しく設定されている。なお、この場合の直線Lwは、白鍵11w用のハンマー41wの揺動軸Cw1に直交する平面内にある直線であって、ピーク荷重発生状態におけるハンマー41wの揺動によって押圧される反力発生部材21wの押圧点とハンマー41wの揺動軸Cw1とを通る直線である。また、直線Lbは、黒鍵11b用のハンマー41bの揺動軸Cb1に直交する平面内にある直線であって、ピーク荷重発生状態におけるハンマー41bの揺動によって押圧される反力発生部材21bの押圧点とハンマー41bの揺動軸Cb1とを通る直線である。これにより、この第3実施形態においても、白鍵11w及び黒鍵11bの押鍵時に、ラバードームからなる反力発生部材21w,21bの座屈直前の反力のピーク時において、白鍵11w及び黒鍵11bに対応した反力発生部材21w、21bはハンマー41w,41bにより共に軸線Yw,Ybの方向から押圧されることになり、白鍵11wを押鍵した場合にも、黒鍵11bを押鍵した場合にも、同一なクリック感を伴う良好な鍵タッチ感を得ることができるようになる。
また、この第3実施形態においても、ピーク荷重発生状態における押圧部41w4,41b4の押圧面の法線が、反力発生部材21w,21bの軸線Yw,Ybに平行になるように、押圧部11w1,11b1の傾斜を調整して、反力発生部材21w,21bが的確に押圧されるようになっている。
また、この第3実施形態においても、ハンマー41w,41bの揺動角度はそれほど大きくなく、押圧部41w4,41b4の回転角もそれほど大きくないので、前記角度θを0以上かつ前記角度φの2倍の角度2φより小さな範囲内に設定するようにしてもよい。これによっても、良好な鍵タッチ感は得られる。また、この場合も、ピーク荷重発生状態における押圧部41w4,41b4の押圧面の法線が、反力発生部材21w,21bの軸線Yw,Ybに平行になるように、押圧部11w1,11b1の傾斜を調整して、反力発生部材21w,21bが的確に押圧されるようにするとよい。
また、この第3実施形態においても、上記第1実施形態の第1乃至第3変形例の場合の白鍵11w及び黒鍵11bの場合に代えて、ハンマー41w,41bの揺動軸Cw1,Cb1の上下方向及び前後方向の位置を異ならせたり、反力発生部材21w,21bの前後方向の位置を白鍵11wと黒鍵11bとで異ならせたりするようにしてもよい。
さらに、前記のようなハンマー41w,41bを有する鍵盤装置においても、上記第2実施形態のように、反力発生部材21w,21bをハンマー41w,41bの質量体41w3,41b3の上面に固定し、かつハンマー41w,41bに対向する鍵フレーム31の上板部31aの下面に反力発生部材21w,21bのトップ部21w2,21b2の上面を押圧する押圧部を設けるようにしてもよい。
d.その他の変形例
上記第1実施形態、第2実施形態及びそれらの変形例においては、反力発生部材21w,21bのべース部21w3,21b3の高さ、すなわちべース部21w3,21b3の軸線Yw,Yb方向の長さを全周にわたって異ならせて、組付け状態における反力発生部材21w,21bの軸線Yw,Ybを垂直に対してそれぞれ傾けるようにした。しかし、これに代えて、反力発生部材21w,21bのべース部21w3,21b3の高さ、すなわちべース部21w3,21b3の軸線Yw,Yb方向の長さを全周にわたって同一にして、組付け状態における反力発生部材21w,21bの軸線Yw,Ybを垂直に対してそれぞれ傾けるようにしてもよい。この場合、反力発生部材21w,21bを組付ける支持部31d,11w4,11b4を適宜傾斜させるようにすればよい。なお、第3実施形態においても、反力発生部材21w,21bのべース部21w3,21b3の高さ、すなわちべース部21w3,21b3の軸線Yw,Yb方向の長さを全周にわたって異ならせたり、同一したり、支持部31fw,31fbを水平にしたりして、組付け状態における反力発生部材21w,21bの軸線Yw,Ybを垂直に対してそれぞれ適宜傾けることができる。
また、白鍵11w及び黒鍵11bの揺動支点については、上記第1実施形態、第2実施形態及びそれらの変形例において説明したように、回転軸を中心として揺動するものに限らず、白鍵11w及び黒鍵11bの後端に板状の薄肉部を設け、薄肉部の後端を支持部材に支持させることにより、薄肉部の弾性変形により白鍵11w及び黒鍵11bを揺動させるようにしたヒンジ型の揺動支点を利用するものでもよい。ただし、この場合には、上述した搖動軸Cw,Cbは、僅かではあるが、白鍵11及び黒鍵11bの搖動に伴って変化、すなわち搖動軸Cw,Cbの位置は時間経過に従って変化する。
さらに、上記第1乃至第3実施形態及びそれらの変形例においては、鍵スイッチ38w,38bとは独立して反力発生部材21w,21bを設けるようにした。しかし、これに代えて、鍵スイッチ38w,38bを反力発生部材21w,21bと同様に構成して、鍵スイッチ38w,38bを反力発生部材として利用するようにしてもよい。この場合、ドーム状の本体部21w1,21b1を内側部分と外側部分との2段構成とし、内側部分と外側部分との間に円筒状の変形量の少ないスイッチ部分を設ける。そして、外側部分の変形により押鍵に対して増加する反力を発生するとともにスイッチ部分で基板に設けた接点を開閉するようにし、かつ内側部分の変形により座屈変形を伴う押鍵に対する反力を発生するようにするとよい。