(第1実施形態)
以下、図1〜図4を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した第1実施形態について説明する。
この電子鍵盤楽器は、図1〜図3に示すように、鍵盤装置1を備えている。この鍵盤装置1は、楽器ケース(図示せず)内に組み込まれるものである。この鍵盤装置1は、並列に配列された複数の鍵2と、これら複数の鍵2の押鍵操作に応じて各鍵2それぞれにアクション荷重を付与するアクション機構3と、を備えている。
複数の鍵2は、図1〜図3に示すように、白鍵2aおよび黒鍵2bを有し、これら白鍵2aおよび黒鍵2bが例えば88個並列に配列されている。これら複数の鍵2は、その前後方向(図2では左右方向)におけるほぼ中間部がそれぞれバランスピン4a、4bによって上下方向に回転可能に支持され、この状態でベース板5上に並列に配列されている。
この場合、ベース板5上には、図2および図3に示すように、複数の鍵2の各前端部(図2では右端部)の各下面がそれぞれ接離可能に当接するクッション材6a、6bが鍵2の配列方向に沿って設けられている。また、このベース板5上には、複数の鍵2の各後端部(図2では左端部)の各下面がそれぞれ接離可能に当接するクッション材7が鍵2の配列方向に沿って設けられている。さらに、このベース板5上には、複数の鍵2がその配列方向に横振れするのを防ぐためのガイドピン8a、8bがそれぞれ起立して設けられている。
アクション機構3は、図2および図3に示すように、複数の鍵2の押鍵操作に応じてそれぞれ上下方向に回転する複数の伝達部材10と、これら複数の伝達部材10の各回転動作に応じてそれぞれ上下方向に回転して複数の鍵2それぞれにアクション荷重を付与する複数のハンマー部材11と、を備えている。この場合、複数の鍵2は、複数の伝達部材10の各重量と複数のハンマー部材11の各重量とによって、バランスピン4a、4bを中心に反時計回りに回転し、各鍵2それぞれを初期位置に押し上げて、各鍵2に初期荷重が付与されるように構成されている。
また、このアクション機構3は、図2および図3に示すように、複数の伝達部材10をそれぞれ回転自在に保持する複数の伝達保持部12と、複数のハンマー部材11をそれぞれ回転自在に保持する複数のハンマー保持部13と、を備えている。複数の伝達保持部12は、鍵2の配列方向に沿って配置された伝達支持レール14上に取り付けられている。
また、複数のハンマー保持部13は、図2および図3に示すように、鍵2の配列方向に沿って配置されたハンマー支持レール15上に取り付けられている。これら伝達支持レール14およびハンマー支持レール15は、複数の支持部材16に支持されて、複数の鍵2の上方に配置されている。
複数の支持部材16は、図1〜図3に示すように、鍵2の配列方向の全長における予め定められた複数個所にそれぞれ位置した状態で、ベース板5上に起立して取り付けられている。この場合、複数の鍵2は全体で例えば88個配列されている。これに応じて、複数の支持部材16は、複数の鍵2の配列方向における両端部と、例えば20個の鍵2ごとに位置する3箇所の各鍵2間と、の個所に配置されている。すなわち、この実施形態では、支持部材16が鍵2の配列方向の全長における5箇所に配置されている。
この支持部材16は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、図2および図3に示すように、ベース板5上に取り付けられる取付部16aと、この取付部16a上に一体に形成されたブリッジ部16bと、を有している。これにより、支持部材16は、取付部16aがベース板5上に取り付けられることにより、ブリッジ部16bが鍵2の上方に突出した状態で、複数の鍵2の後部間に配置されるように構成されている。
伝達支持レール14は、図2および図3に示すように、断面が四角形の角筒状に形成され、複数の鍵2の配列方向の全長に亘る長さに形成されている。この伝達支持レール14は、鍵2の配列方向における所定箇所が複数の支持部材16の後部に設けられた各後側レール支持部16c上に取り付けられるように構成されている。
この伝達支持レール14上には、図2および図3に示すように、複数の伝達保持部12および複数のストッパ支持部17が鍵2の配列方向に沿って取り付けられている。この場合、複数のストッパ支持部17は、金属板からなり、複数の支持部材16に対応する伝達支持レール14上の5箇所に、複数の伝達保持部12の上方に突出した状態で取り付けられている。
伝達保持部12は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、図2および図3に示すように、伝達支持レール14上に取り付けられる伝達保持本体部18と、複数の伝達部材10それぞれが回転自在に取り付けられる複数の軸支持部19と、を有している。複数の軸支持部19は、伝達保持本体部18に例えば10個程度の各鍵2に対した状態で鍵2の配列方向に沿って一体に形成されている。
この軸支持部19は、図2および図3に示すように、伝達保持本体部18の後端部(図2では左端部)に各鍵2と対応して形成された一対のガイド壁と、これら一対のガイド壁間に形成された伝達保持軸20と、を有している。一対のガイド壁は、伝達部材10の後述する伝達嵌合部22を両側から摺動可能に挟んだ状態で、伝達部材10の伝達嵌合部22を回転可能にガイドするガイド部を構成している。
伝達部材10は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、図2および図3に示すように、鍵2の押鍵操作に応じて上下方向に回転してハンマー部材11を上下方向に回転させる伝達本体部21と、この伝達本体部21に一体に形成されて伝達保持部12の伝達保持軸20に回転自在に取り付けられる伝達嵌合部22と、を有している。
伝達本体部21は、図2および図3に示すように、その全体が弾性変形可能な弾性変形部、つまりばね性を有するばね部に形成されている。すなわち、この伝達本体部21は、鍵2に当接して押し上げられる第1弾性変形部23と、ハンマー部材11に当接してハンマー部材11を押し上げる第2弾性変形部24とを有し、これらが伝達嵌合部22と共に一体に形成された構成になっている。
第1弾性変形部23は、図2および図3に示すように、伝達嵌合部22の前端部に形成された連結取付部21aの下端部から鍵2の前側に向けて前下り(図2では右下り)に傾斜して設けられている。第2弾性変形部24は、連結取付部21aの上端部からハンマー部材11の前端下部に向けて前上り(図2では右上り)に傾斜して設けられている。
この場合、第1弾性変形部23は、図2および図3に示すように、連結取付部21aの下端部から伝達支持レール14に沿ってその上方に位置し、この伝達支持レール14の前端部に対応する個所から前下り(図2では右下り)に傾斜し、この傾斜した前部が鍵2とほぼ平行に折り曲げられた構成になっている。
これにより、伝達本体部21は、図2および図3に示すように、全体がほぼ「く」の字形状に形成されている。この伝達本体部21は、鍵2の押鍵操作によって、弾性限度内において予め定められた荷重以上の荷重が加わった際に、第1弾性変形部23と第2弾性変形部24とが互いに接近する方向に弾性変形するように構成されている。
また、伝達部材10の伝達嵌合部22は、図2および図3に示すように、全体が逆C字形状に形成され、伝達本体部21の後端部に後方に突出して形成されている。すなわち、この伝達嵌合部22は、鍵2の配列方向の厚みが軸支持部19の一対のガイド壁間に設けられた伝達保持軸20とほぼ同じ長さに形成されて、一対のガイド壁間に摺動可能に挿入されるように構成されている。
また、この伝達嵌合部22は、図2および図3に示すように、その中心部に伝達保持部12の伝達保持軸20が嵌合する嵌合孔22aが形成され、この嵌合孔22aの周囲における一部、つまり嵌合孔22aの周囲における後部に伝達保持軸20が挿脱可能に挿入する挿入口22bが形成され、この挿入口22bを通して伝達保持軸20が嵌合孔22aに挿入することにより、伝達保持軸20に回転可能に取り付けられるように構成されている。
ところで、伝達本体部21の下端部、つまり第1弾性変形部23の前端下部には、図2および図3に示すように、伝達フェルト25が設けられている。この伝達フェルト25は、鍵2の後側上部に設けられたキャプスタン26が下側から当接するように構成されている。これにより、伝達部材10は、鍵2が押鍵された際に、伝達フェルト25に下側から当接する鍵2のキャプスタン26によって押し上げられて、伝達保持軸20を中心に反時計回りに回転するように構成されている。
また、この伝達本体部21の前端上部、つまり第2弾性変形部24の前端上部には、図2および図3に示すように、ハンマー部材11の後述するハンマー突起部27が上方から当接するように構成されている。これにより、伝達部材10は、鍵2が押鍵されて伝達保持軸20を中心に反時計回りに回転する際に、ハンマー部材11のハンマー突起部27を押し上げてハンマー部材11を時計回りに回転させるように構成されている。
一方、ハンマー支持レール15は、図1〜図3に示すように、伝達支持レール14と同様、断面が四角形の角筒状に形成され、複数の鍵2の配列方向の全長に亘る長さに形成されている。このハンマー支持レール15は、鍵2の配列方向における所定箇所が複数の支持部材16の各前側レール支持部16d上に取り付けられるように構成されている。このハンマー支持レール15上には、複数のハンマー保持部13が鍵2の配列方向に沿って取り付けられている。
ハンマー保持部13は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、図2および図3に示すように、上方が開放されたほぼ箱形状のレール状をなす取付本体部28と、この取付本体部28の後端部に鍵2の配列方向に沿って一体に形成された複数の軸支持部29とを有している。これら複数の軸支持部29は、例えば10個程度の各鍵2に対した状態で鍵2の配列方向に沿って配列されている。この軸支持部29は、ハンマー部材11が回転自在に取り付けられて、ハンマー部材11の横振れを防ぐように構成されている。
すなわち、このハンマー保持部13の軸支持部29は、図2および図3に示すように、取付本体部28の後端部(図2では左端部)に各伝達部材10と対応して形成された一対のガイド壁と、これら一対のガイド壁間に形成されたハンマー保持軸30と、を有している。一対のガイド壁は、ハンマー部材11の後述するハンマー嵌合部33を両側から摺動可能に挟んだ状態で、ハンマー部材11のハンマー嵌合部33を回転可能にガイドするガイド部を構成している。
ハンマー部材11は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、図2および図3に示すように、ハンマー部31とハンマーアーム32とを有し、これらが一体に形成された構成になっている。ハンマー部31は、杓子形状の縦板部31aを有し、その外周部およびその両側面に複数のリブ部31bが形成された構成になっている。この場合、ハンマー部31は、杓子形状の縦板部31aの形状および複数のリブ部31bの形成密度によって、ハンマー部材11の重量が調整されるように構成されている。
ハンマーアーム32は、図2および図3に示すように、前後方向の長さが伝達部材10とほぼ同じ長さの縦板部32aと、この縦板部32aの上下辺部および両側面に形成された複数のリブ部32bと、を有している。このハンマーアーム32の前端部(図2では右端部)には、ハンマー保持部13に回転自在に取り付けられるハンマー嵌合部33が形成されている。
このハンマー嵌合部33は、図2および図3に示すように、伝達嵌合部22と同様、全体がC字形状に形成され、ハンマーアーム32の前端部に前方に突出して形成されている。すなわち、このハンマー嵌合部33は、鍵2の配列方向の厚みが軸支持部29の一対のガイド壁間に設けられたハンマー保持軸30とほぼ同じ長さに形成されて、一対のガイド壁間に摺動可能に挿入されるように構成されている。
また、このハンマー嵌合部33は、図2および図3に示すように、その中心にハンマー保持部13のハンマー保持軸30が嵌合する嵌合孔33aが形成され、この嵌合孔33aの周囲における一部、つまり嵌合孔33aの周囲における前部にハンマー保持軸30が挿脱可能に挿入する挿入口33bが形成され、この挿入口33bを通してハンマー保持軸30が嵌合孔33aに挿入することにより、ハンマー保持軸30に回転可能に取り付けられるように構成されている。
また、ハンマーアーム32の前端下部には、図2および図3に示すように、伝達本体部21の第2弾性変形部24の前端上部に上方から当接するハンマー突起部27が設けられている。これにより、ハンマー部材11は、伝達部材10が反時計回りに回転すると、その回転に応じてハンマー突起部27が押し上げられることにより、ハンマー保持部13のハンマー保持軸30を中心に時計回りに回転するように構成されている。
また、このハンマーアーム32は、図2および図3に示すように、その後端下部が下限ストッパ34に上方から当接することにより、初期位置である下限位置に規制されるように構成されている。すなわち、この下限ストッパ34は、伝達支持レール14上に設けられた複数のストッパ支持部17に支持された下限ストッパレール35上に取り付けられている。これにより、ハンマー部材10は、ハンマーアーム32の後端下部が下限ストッパ34に上方から当接することにより、後部下がりに傾斜した状態で、初期位置に位置規制されるように構成されている。
また、このハンマーアーム32は、図2および図3に示すように、その後端上部が上限ストッパ36に下方から当接することにより、上限位置が規制されるように構成されている。すなわち、この上限ストッパ36は、複数の支持部材16の各ストッパレール支持部16eに取り付けられた上限ストッパレール37の下面に取り付けられている。
これにより、ハンマー部材11は、図2および図3に示すように、ハンマーアーム32がハンマー保持部13のハンマー保持軸30を中心に時計回りに回転した際に、ハンマーアーム32の後端上部が上限ストッパ36に下方から当接することにより、上限位置が規制されるように構成されている。
さらに、ハンマーアーム32の前端上部には、図2および図3に示すように、スイッチ押圧部38が形成されている。このハンマーアーム32のスイッチ押圧部38に対応する上方には、スイッチ基板40を搭載するための一対の基板支持レール41が配置されている。これら一対の基板支持レール41は、それぞれ断面がL字形状に形成された長板であり、鍵2の配列方向の全長に亘る長さに形成されている。
これら一対の基板支持レール41は、図1〜図3に示すように、その各水平部が複数の支持部材16の各基板レール支持部16f上に所定間隔離れた状態で取り付けられている。これら一対の基板支持レール41上には、複数のスイッチ基板40が鍵2の配列方向に沿って取り付けられている。複数のスイッチ基板40は、図1に示すように、例えば20個程度の各鍵2に対応する長さに形成され、鍵2の配列方向の全長に対して4つに分割されている。
これらスイッチ基板40の下面には、図2および図3に示すように、ゴムスイッチ42がそれぞれ設けられている。このゴムスイッチ42は、鍵2の配列方向に長いゴムシートに逆ドーム状の膨出部42aが複数のハンマーアーム32にそれぞれ対応して形成された構成になっている。この膨出部42aの内部には、スイッチ基板40の下面に設けられた複数の固定接点(図示せず)に接離可能に接触する複数の可動接点42bがハンマーアーム32の前後方向に沿って設けられている。
これにより、ゴムスイッチ42は、図3に示すように、ハンマー部材11がハンマー保持部13のハンマー保持軸30を中心に時計回りに回転して、ハンマーアーム32のスイッチ押圧部38によって下側から押圧された際に、逆ドーム状の膨出部42aが弾性変形して、複数の可動接点42bが時間差をもって順次、複数の固定接点に接触することにより、鍵2の押鍵強さに応じたスイッチ信号を出力するように構成されている。
次に、このような電子鍵盤楽器の鍵盤装置1の作用について説明する。
この鍵盤装置1では、鍵2を押鍵操作して演奏をすることができる。このときには、図3に示すように、鍵2が押鍵されると、鍵2がバランスピン4a、4bを中心に時計回りに回転し、鍵2のキャプスタン26が伝達部材10の第1弾性変形部23を押し上げる。
これにより、伝達部材10が伝達保持部12の伝達保持軸20を中心に反時計回りに回転する。すると、この伝達部材10の第2弾性変形部24がハンマー部材11のハンマー突起部27を押上げる。これにより、ハンマー部材11がハンマー保持部13のハンマー保持軸30を中心に時計回りに回転して、鍵2にアクション荷重を付与する。
このようにハンマー部材11がハンマー保持軸30を中心に時計回りに回転する際には、ハンマー部材11の慣性モーメントによって鍵2にアクション荷重が付与される。すなわち、ハンマーアーム32は、鍵2の前後方向の長さが伝達部材10とほぼ同じ長さに形成され、このハンマーハンマーアーム32の後端部にハンマー部31が形成され、この状態でハンマーアーム32の前端部のハンマー嵌合部33がハンマー保持軸30に回転可能に取り付けられている。
このため、ハンマー部材11がハンマー保持軸30を中心に時計回りに回転する際には、ハンマー部材11に慣性モーメントが発生し、この慣性モーメントによって鍵2にアクション荷重が付与される。これにより、アコースティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感が得られる。
このようにハンマー部材11がハンマー保持軸30を中心に時計回りに回転すると、ハンマーアーム32のスイッチ押圧部38がスイッチ基板40に設けられたゴムスイッチ42の逆ドーム状の膨出部42aを下側から押圧する。これにより、逆ドーム状の膨出部42aが弾性変形して、膨出部42a内の複数の可動接点42bが時間差をもって順次、複数の固定接点に接触することにより、鍵2の押鍵強さに応じたスイッチ信号を出力する。このスイッチ信号に応答してスイッチ基板40上に設けられた音源40aは楽音信号を生成し、この楽音信号に基づいてスピーカ(図示せず)から楽音を発生する。
そして、ハンマー部材11がハンマー保持軸30を中心に更に時計回りに回転すると、ハンマーアーム32の後端上部が上限ストッパ36に下側から当接して、ハンマー部材11の回転が規制される。この後、鍵2が初期位置に戻る離鍵動作を開始すると、伝達部材10がその自重で時計回りに回転して初期位置に戻ると共に、ハンマー部材11がその自重で反時計回りに回転して初期位置に戻る。
ところで、鍵2を弱い力で押鍵した際、すなわち伝達部材10の弾性変形部である伝達本体部21の第1弾性変形部23と第2弾性変形部24とが互いに接近する方向に向けて弾性変形を開始する荷重以下の荷重W1で、鍵2を押鍵した際には、伝達本体部21の第1弾性変形部23と第2弾性変形部24とが弾性変形せずに、伝達本体部21が剛体として伝達保持軸20を中心に上下方向に回転し、ハンマー部材11をその重量に抗して押し上げる。
このときには、ハンマー部材11の重量によって鍵2に加わる反力Pが、図4(a)に示すように、急激に上昇する。そして、鍵2に加わる反力Pが図4(a)に示す第1の頂点K1に到達して最大の反力P1となると、ハンマー部材11がハンマー保持軸30を中心に時計回りに回転を開始する。すると、鍵2に加わる反力Pが、図4(a)に示すように、急激に降下する。
そして、ハンマー部材11がハンマー保持軸30を中心に時計回りに回転して、スイッチ押圧部38がゴムスイッチ42を押圧して上限ストッパ36に当接する際には、図4(a)に示すように、鍵2に加わる反力Pが再び急激に上昇し、図4(a)に示す第2の頂点K2に到達して、再び最大の反力P1となる。この後、鍵2が初期位置に戻る離鍵動作を開始するので、鍵2に加わる反力Pが、図4(a)に示すように、急激に降下する。
このように、鍵2を弱い力(荷重W1)で押鍵した際には、伝達本体部10の弾性変形部である伝達本体部21の第1弾性変形部23と第2弾性変形部24とが弾性変形せずに、伝達本体部21が剛体としてハンマー部材11を回転させるので、鍵2に加わる反力Pの第1の頂点K1と第2の頂点K2との間に遅れ時間T1が生じ、この遅れ時間T1だけハンマー部材11の動作が遅れる。
一方、鍵2を強い力で押鍵した際、すなわち伝達部材10の弾性変形部である伝達本体部21の第1弾性変形部23と第2弾性変形部24とが互いに接近する方向に弾性変形を開始する荷重以上の荷重W2(>W1)で、鍵2を強く押鍵した際には、伝達本体部21の第1弾性変形部23と第2弾性変形部24とが弾性変形する。
このため、伝達本体部21の弾性変形によって、鍵2の押鍵エネルギーが極めて短い時間だけ吸収される。そして、弾性変形部である伝達本体部21が弾性変形した後に、この弾性変形した伝達本体部21の伝達部材10が伝達保持軸20を中心に反時計回りに回転し、ハンマー部材11をその重量に抗して押し上げる。
このときには、ハンマー部材11の重量によって鍵2に加わる反力Pが、図4(b)に示すように、急激に上昇する。そして、鍵2に加わる反力Pが図4(b)に示す第3の頂点K3に到達して最大の反力P2(>P1)になると、ハンマー部材11がハンマー保持軸30を中心に時計回りに回転を開始する。すると、鍵2に加わる反力Pが、図4(b)に示すように、急激に降下する。
そして、ハンマー部材11がハンマー保持軸30を中心に時計回りに回転して、スイッチ押圧部38がゴムスイッチ42を押圧して上限ストッパ36に当接する際には、図4(b)に示すように、伝達本体部21の弾性変形に応じて鍵2に加わる反力Pが遅れて上昇し、図4(b)に示す第4の頂点K4に到達して再び最大の反力P2となる。この後、鍵2が初期位置に戻る離鍵動作を開始するので、鍵2に加わる反力Pが、図4(b)に示すように、急激に降下する。
このように、鍵2を強い力(荷重W2>W1)で押鍵した際には、弾性変形部である伝達本体部21の第1弾性変形部23と第2弾性変形部24とが互いに接近する方向に向けて弾性変形し、この弾性変形に応じて伝達部材10がハンマー部材11を回転させるので、鍵2に加わる反力Pの第3の頂点K3と第4の頂点K4との間に遅れ時間T2(>T1)が生じ、この遅れ時間T2だけハンマー部材11の動作が遅れる。
このように、鍵2を弱い力(荷重W1)で押鍵したときには、弾性変形部である伝達本体部21の第1弾性変形部23と第2弾性変形部24とが弾性変形せず、鍵2を強い力(荷重W2)で押鍵したときには、弾性変形部である伝達本体部21の第1弾性変形部23と第2弾性変形部24とが互いに接近する方向に向けて弾性変形する。
このため、鍵2を強い力(荷重W2)で押鍵したときの遅れ時間T2は、鍵2を弱い力(荷重W1<W2)で押鍵したときの遅れ時間T1よりも長く(T2>T1)なり、遅れ時間差S1(=T2−T1)が生じる。この遅れ時間差S1によって、アコースティックピアノの鍵タッチ感に極めて近似した鍵タッチ感が得られる。
このように、この電子鍵盤楽器のアクション機構3によれば、並列に配列された複数の鍵2それぞれの押鍵操作に応じて変位する複数の伝達部材10と、これら複数の伝達部材10それぞれの変位に応じて回転動作して各鍵2に対してそれぞれアクション荷重を付与する複数のハンマー部材11と、を備え、複数の伝達部材10それぞれは、複数の鍵2それぞれの押鍵操作によって、弾性限度内において予め定められた荷重以上の荷重が加わった際に弾性変形する弾性変形部である伝達本体部21を有しているので、簡単な構造で、生産性が良く、かつアコ―スティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感を得ることができる。
すなわち、この電子鍵盤楽器のアクション機構3では、弾性変形部である伝達本体部21が、その弾性限度内において予め定められた荷重以上の強い力で、鍵2が押鍵されて伝達部材10を押し上げてハンマー部材11を回転させる際に、伝達本体部21が弾性変形してハンマー部材11を回転動作させることができ、このときに弾性変形部である伝達本体部21の弾性変形によってハンマー部材11の動作に遅れを生じさせることができる。
このため、弾性変形部である伝達本体部21の弾性変形によってハンマー部材11の動作に遅れが生じ、このハンマー部材11の動作の遅れ時間によってアコ―スティックピアノの鍵タッチ感に極めて近似した鍵タッチ感を得ることができる。また、伝達部材10に弾性変形部である伝達本体部21を形成するだけの構成であるから、構造が簡単で、部品点数も少なく、組み立て作業が容易にできるので、生産性の向上を図ることができ、低コスト化を図ることができる。
この場合、伝達部材10の弾性変形部である伝達本体部21は、鍵2に当接して鍵2によって押し上げられる第1弾性変形部23と、ハンマー部材11に当接してハンマー部材11を押し上げる第2弾性変形部24とを有し、第1弾性変形部23と第2弾性変形部24とが互いに接近する方向に弾性変形することにより、弾性変形部である伝達本体部21の弾性限度内において予め定められた荷重以上の強い力(荷重W2)で、鍵2を押鍵操作した際に、第1弾性変形部23と第2弾性変形部24とを互いに接近する方向に確実にかつ良好に弾性変形させることができる。
すなわち、このアクション機構3では、弾性変形部である伝達本体部21の弾性限度内において予め定められた荷重、つまり第1弾性変形部23と第2弾性変形部24とが互いに接近する方向に弾性変形を開始する荷重以上の強い力(荷重W2)で、鍵2が押鍵操作され、この押鍵された鍵2によって伝達部材10が押し上げられてハンマー部材11を回転させる際に、第1弾性変形部23と第2弾性変形部24とを互いに接近する方向に弾性変形させることができる。
このため、弾性変形部である伝達本体部21の弾性変形に応じて、ハンマー部材11の動作に遅れを生じさせることができ、この伝達本体部21の弾性変形に応じた遅れ時間によって、アコ―スティックピアノの鍵タッチ感に極めて近似した鍵タッチ感を得ることができる。
また、この電子鍵盤楽器のアクション機構3では、複数の伝達部材10それぞれが第1弾性変形部23と第2弾性変形部24とを合成樹脂によって一体に形成した構成であることにより、伝達部材10が第1弾性変形部23と第2弾性変形部24とを備えていても、部品点数が増加せず、構造が簡単で、容易に製作することができ、これにより組み立て作業性および生産性の向上を図ることができ、低コスト化を図ることができる。
(第2実施形態)
次に、図5〜図8を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した第2実施形態について説明する。なお、図1〜図4に示された第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
この電子鍵盤楽器は、図5〜図7に示すように、高音域、中音域、低音域における各伝達部材50〜52それぞれの弾性変形部である伝達本体部53〜55の各弾性係数E1〜E3がそれぞれ異なる構成であり、これ以外は第1実施形態と同じ構成になっている。
この場合、高音域の伝達部材50は、図5に示すように、鍵2の押鍵操作に応じて上下方向に回転してハンマー部材11を上下方向に回転させる伝達本体部53と、この伝達本体部53に一体に形成されて伝達保持部12の伝達保持軸20に回転自在に取り付けられる伝達嵌合部22と、を有している。この高音域の伝達本体部53は、第1実施形態と同様、全体が弾性変形可能な弾性変形部、つまりばね性を有するばね部に形成されている。
すなわち、この高音域の伝達本体部53は、図5に示すように、鍵2に当接して押し上げられる第1弾性変形部53aと、ハンマー部材11に当接してハンマー部材11を押し上げる第2弾性変形部53bとを有し、これらが伝達嵌合部22と共に一体に形成された構成になっている。この場合、伝達本体部53は、第1弾性変形部53aと第2弾性変形部53bとの各厚みが厚く形成されている。
これにより、弾性変形部である伝達本体部53は、図5に示すように、第1弾性変形部53aと第2弾性変形部53bとの各厚みに基づいて、弾性係数E1が後述する中音域、低音域の各弾性係数E2、E3よりも小さく設定され、第1弾性変形部53aと第2弾性変形部53bとが互いに接近する方向に弾性変形を開始する際の荷重が重くなるように構成されている。
また、中音域の伝達部材51は、図6に示すように、鍵2の押鍵操作に応じて上下方向に回転してハンマー部材11を上下方向に回転させる伝達本体部54と、この伝達本体部54に一体に形成されて伝達保持部12の伝達保持軸20に回転自在に取り付けられる伝達嵌合部22と、を有している。この中音域の伝達本体部54も、高音域の伝達本体部53と同様、全体が弾性変形可能な弾性変形部、つまりばね性を有するばね部に形成されている。
すなわち、この中音域の伝達本体部54も、図6に示すように、鍵2に当接して押し上げられる第1弾性変形部54aと、ハンマー部材11に当接してハンマー部材11を押し上げる第2弾性変形部54bとを有し、これらが伝達嵌合部22と共に一体に形成された構成になっている。この場合、伝達本体部54は、第1弾性変形部54aと第2弾性変形部54bとの各厚みが、高音域の第1弾性変形部53aと第2弾性変形部53bとの各厚みよりも薄く形成されている。
これにより、この弾性変形部である伝達本体部54は、図6に示すように、第1弾性変形部54aと第2弾性変形部54bとの各厚みに基づいて、弾性係数E2が高音域の伝達本体部53の弾性係数E1よりも大きく(E2>E1)設定され、第1弾性変形部54aと第2弾性変形部54bとが互いに接近する方向に弾性変形を開始する際の荷重が、高音域の荷重よりも軽くなるように構成されている。
さらに、低音域の伝達部材52は、図7に示すように、鍵2の押鍵操作に応じて上下方向に回転してハンマー部材11を上下方向に回転させる伝達本体部55と、この伝達本体部55に一体に形成されて伝達保持部12の伝達保持軸20に回転自在に取り付けられる伝達嵌合部22と、を有している。この低音域の伝達本体部55も、中音域の伝達本体部54と同様、全体が弾性変形可能な弾性変形部、つまりばね性を有するばね部に形成されている。
すなわち、この低音域の伝達本体部55も、図7に示すように、鍵2に当接して押し上げられる第1弾性変形部55aと、ハンマー部材11に当接してハンマー部材11を押し上げる第2弾性変形部55bとを有し、これらが伝達嵌合部22と共に一体に形成された構成になっている。この場合、弾性変形部である伝達本体部55は、第1弾性変形部55aと第2弾性変形部55bとの各厚みが、中音域の第1弾性変形部54aと第2弾性変形部54bとの各厚みよりも更に薄く形成されている。
これにより、この高音域の弾性変形部である伝達本体部55は、図7に示すように、第1弾性変形部55aと第2弾性変形部55bとの各厚みに基づいて、弾性係数E3が中音域の伝達本体部54の弾性係数E2よりも大きく(E3>E2>E1)設定され、第1弾性変形部55aと第2弾性変形部55bとが互いに接近する方向に弾性変形を開始する際の荷重が、中音域の荷重よりも更に軽くなるように構成されている。
次に、このような第2実施形態における電子鍵盤楽器の鍵盤装置1の作用について説明する。
まず、高音域、中音域、低音域の各鍵2それぞれを弱い力で押鍵した際、つまり高音域、中音域、低音域において、最も弾性係数E3が小さい弾性変形部である低音域の伝達本体部55が弾性変形を開始する荷重以下の荷重(W1)で、高音域、中音域、低音域の各鍵2それぞれを押鍵した際には、第1実施形態と同様、各伝達部材50〜52の各弾性変形部である各伝達本体部53〜55のいずれも、弾性変形しない。
このため、高音域、中音域、低音域の各鍵2を弱い力(荷重W1)で押鍵した際には、第1実施形態の図4(a)に示したように、高音域、中音域、低音域の各伝達本体部53〜55が剛体として、高音域、中音域、低音域の各ハンマー部材11を回転させるので、高音域、中音域、低音域の各鍵2に加わる反力Pの第1の頂点K1と第2の頂点K2との間に遅れ時間T1がそれぞれ生じ、この遅れ時間T1だけ高音域、中音域、低音域の各ハンマー部材11の動作が遅れる。
一方、高音域の鍵2を強い力で押鍵した際、すなわち高音域の伝達部材50の弾性変形部である伝達本体部53の第1弾性変形部53aと第2弾性変形部53bとが互いに接近する方向に弾性変形を開始する荷重以上の荷重W3で、鍵2を強く押鍵した際には、伝達本体部53が弾性変形する。
このため、高音域の伝達本体部53の弾性変形によって、鍵2の押鍵エネルギーが極めて短い時間だけ吸収される。そして、弾性変形部である伝達本体部53が弾性変形した後に、この弾性変形した伝達本体部21の伝達部材10が伝達保持軸20を中心に反時計回りに回転し、ハンマー部材11をその重量に抗して押し上げる。
このときには、ハンマー部材11の重量によって鍵2に加わる反力Pが、図8(a)に示すように、急激に上昇する。そして、鍵2に加わる反力Pが図8(a)に示す第3の頂点K3に到達して最大の反力P3になると、ハンマー部材11がハンマー保持軸30を中心に時計回りに回転を開始する。すると、鍵2に加わる反力Pが、図8(a)に示すように、急激に降下する。
そして、ハンマー部材11がハンマー保持軸30を中心に時計回りに回転して、スイッチ押圧部38がゴムスイッチ42を押圧して上限ストッパ36に当接する際には、図8(a)に示すように、伝達本体部53の弾性変形に応じて鍵2に加わる反力Pが遅れて上昇し、図8(a)に示す第4の頂点K4に到達して、再び最大の反力P3になる。この後、鍵2が初期位置に戻る離鍵動作を開始するので、鍵2に加わる反力Pが、図8(a)に示すように、急激に降下する。
このように、高音域の鍵2を強い力(荷重W3)で押鍵した際には、弾性変形部である伝達本体部53が弾性変形し、この弾性変形に応じて伝達部材50がハンマー部材11を回転させるので、鍵2に加わる反力Pの第3の頂点K3と第4の頂点K4との間に遅れ時間T3(>T1)が生じ、この遅れ時間T3だけハンマー部材11の動作が遅れる。
このように、高音域の鍵2を弱い力(荷重W1)で押鍵したときには、弾性変形部である伝達本体部53の第1弾性変形部53aと第2弾性変形部53bとが弾性変形せず、高音域の鍵2を強い力(荷重W3)で押鍵したときには、弾性変形部である伝達本体部53の第1弾性変形部53aと第2弾性変形部53bとが互いに接近する方向に向けて弾性変形する。
このため、高音域の鍵2を強い力(荷重W3)で押鍵したときの遅れ時間T3は、鍵2を弱い力(荷重W1)で押鍵したときの遅れ時間T1よりも長く(T3>T1)なり、遅れ時間差(T3−T1)が生じる。この遅れ時間差によって、アコースティックピアノの鍵タッチ感に極めて近似した鍵タッチ感が得られる。
また、中音域の鍵2を強い力で押鍵した際、すなわち中音域の伝達部材51の弾性変形部である伝達本体部54の第1弾性変形部54aと第2弾性変形部54bとが互いに接近する方向に弾性変形を開始する荷重以上の荷重W4、例えば高音域の鍵2と同じ荷重(W3=W4)で、鍵2を強く押鍵した際には、伝達本体部54が弾性変形し、この弾性変形した伝達本体部54の伝達部材51が伝達保持軸20を中心に反時計回りに回転し、ハンマー部材11をその重量に抗して押し上げる。
このときには、高音域の場合と同様、ハンマー部材11の重量によって鍵2に加わる反力Pが、図8(b)に示すように、急激に上昇し、鍵2に加わる反力Pが図8(b)に示す第3の頂点K3に到達して最大の反力P4(=P3)になると、ハンマー部材11がハンマー保持軸30を中心に時計回りに回転を開始し、鍵2に加わる反力Pが、図8(b)に示すように、急激に降下する。
そして、ハンマー部材11がハンマー保持軸30を中心に時計回りに回転して、スイッチ押圧部38がゴムスイッチ42を押圧して上限ストッパ36に当接する際には、図8(b)に示すように、伝達本体部54の弾性変形に応じて鍵2に加わる反力Pが遅れて上昇し、図8(b)に示す第4の頂点K4に到達して、再び最大の反力P4(=P3)になる。この後、鍵2が初期位置に戻る離鍵動作を開始するので、鍵2に加わる反力Pが、図8(b)に示すように、急激に降下する。
このように、中音域の鍵2を強い力(荷重W4=W3)で押鍵した際には、弾性変形部である伝達本体部54が弾性変形し、この弾性変形に応じて伝達部材51がハンマー部材11を回転させるので、鍵2に加わる反力Pの第3の頂点K3と第4の頂点K4との間に遅れ時間T4が生じ、この遅れ時間T4だけハンマー部材11の動作が遅れる。
このように、中音域の鍵2を弱い力(荷重W1)で押鍵したときには、弾性変形部である伝達本体部54の第1弾性変形部54aと第2弾性変形部54bとが弾性変形せず、中音域の鍵2を強い力(荷重W4=W3)で押鍵したときには、弾性変形部である伝達本体部54の第1弾性変形部54aと第2弾性変形部54bとが互いに接近する方向に向けて弾性変形する。
このため、中音域の鍵2を強い力(荷重W4=W3)で押鍵したときの遅れ時間T4も、鍵2を弱い力(荷重W1)で押鍵したときの遅れ時間T1よりも長く(T4>T1)なり、遅れ時間差(T4−T1)が生じる。このときには、中音域の伝達本体部54の弾性係数E2が高音域の伝達本体部53の弾性係数E1よりも大きいので、中音域の遅れ時間T4は高音域の遅れ時間T3よりも長く(T4>T3)なり、遅れ時間差(T4−T3)が生じる。これらの遅れ時間差によって、アコースティックピアノの鍵タッチ感に極めて近似した鍵タッチ感が得られる。
さらに、低音域の鍵2を強い力で押鍵した際、すなわち低音域の伝達部材52の弾性変形部である伝達本体部55の第1弾性変形部55aと第2弾性変形部55bとが互いに接近する方向に弾性変形を開始する荷重以上の荷重W5、例えば高音域および中音域の鍵2と同じ荷重(W3=W4=W5)で、鍵2を強く押鍵した際には、伝達本体部54が弾性変形し、この弾性変形した伝達本体部54の伝達部材52が伝達保持軸20を中心に反時計回りに回転し、ハンマー部材11をその重量に抗して押し上げる。
このときには、高音域および中音域の場合と同様、ハンマー部材11の重量によって鍵2に加わる反力Pが、図8(c)に示すように、急激に上昇し、鍵2に加わる反力Pが図8(c)に示す第3の頂点K3に到達して最大の反力P5(=P4=P3)になると、ハンマー部材11がハンマー保持軸30を中心に時計回りに回転を開始し、鍵2に加わる反力Pが、図8(c)に示すように、急激に降下する。
そして、ハンマー部材11がハンマー保持軸30を中心に時計回りに回転して、スイッチ押圧部38がゴムスイッチ42を押圧して上限ストッパ36に当接する際には、図8(c)に示すように、伝達本体部55の弾性変形に応じて鍵2に加わる反力Pが遅れて上昇し、図8(c)に示す第4の頂点K4に到達して、再び最大の反力P5になる。この後、鍵2が初期位置に戻る離鍵動作を開始するので、鍵2に加わる反力Pが、図8(c)に示すように、急激に降下する。
このように、低音域の鍵2を強い力(荷重W5=W4=W3)で押鍵した際には、弾性変形部である伝達本体部55が弾性変形し、この弾性変形に応じて伝達部材52がハンマー部材11を回転させるので、鍵2に加わる反力Pの第3の頂点K3と第4の頂点K4との間に遅れ時間T5が生じ、この遅れ時間T5だけハンマー部材11の動作が遅れる。
このように、低音域の鍵2を弱い力(荷重W1)で押鍵したときには、弾性変形部である伝達本体部55の第1弾性変形部55aと第2弾性変形部55bとが弾性変形せず、低音域の鍵2を強い力(荷重W5)で押鍵したときには、弾性変形部である伝達本体部55の第1弾性変形部55aと第2弾性変形部55bとが互いに接近する方向に向けて弾性変形する。
このため、低音域の鍵2を強い力(荷重W5)で押鍵したときの遅れ時間T5も、鍵2を弱い力(荷重W1)で押鍵したときの遅れ時間T1よりも長く(T5>T1)なり、遅れ時間差(T5−T1)が生じる。このときには、低音域の伝達本体部55の弾性係数E3が中音域の弾性係数E2および高音域の弾性係数E1よりも大きいので、低音域の遅れ時間T5は中音域の遅れ時間T4および高音域の遅れ時間T3よりも長く(T5>T4>T3)なり、遅れ時間差(T5−T4)が生じる。これらの遅れ時間差によって、アコースティックピアノの鍵タッチ感に極めて近似した鍵タッチ感が得られる。
このように、この第2実施形態のアクション機構3によれば、高音域の伝達本体部53の弾性係数E1と、中音域の伝達本体部54の弾性係数E2と、低音域の伝達本体部55の弾性係数E3とが、それぞれ異なり、高音域の弾性係数E1が最も小さく(E1<E2<E3)、中音域の弾性係数E2が高音域の弾性係数E1よりも大きく(E2>E1)、低音域の弾性係数E3が最も大きく(E3>E2>E1)設定されていることにより、高音域の遅れ時間T3を最も短くでき、中音域の遅れ時間T4を高音域の遅れ時間T3よりも長くでき、低音域の遅れ時間T5を最も長くすることができる。
このため、高音域の鍵2を強い力(W3)で押鍵操作したときには、中音域の鍵2を強い力(W4=W3)で押鍵操作したときよりも、また低音域の鍵2を強い力(W5=W4=W3)で押鍵操作したときよりも、高音域の伝達本体部53の弾性変形量を最も小さくでき、かつ遅れ時間T3を最も短く(T3<T4<T5)できるので、高音域のハンマー部材11を中音域のハンマー部材11および低音域のハンマー部材11よりも早く動作させることができ、これによりアコースティックピアノの鍵タッチ感に極めて近似した鍵タッチ感を得ることができる。
また、中音域の鍵2を強い力(W4=W3)で押鍵操作したときには、高音域の鍵2を強い力(W3)で押鍵操作したときよりも、中音域の伝達本体部54の弾性変形量を高音域の伝達本体部53の弾性変形量よりも大きくでき、かつ中音域の遅れ時間T4を低音域の遅れ時間T3よりも長く(T4>T3)できるので、中音域のハンマー部材11を高音域のハンマー部材11よりも遅く動作させることができ、これによりアコースティックピアノの鍵タッチ感に極めて近似した鍵タッチ感を得ることができる。
さらに、低音域の鍵2を強い力(W5=W4=W3)で押鍵操作したときには、中音域の鍵2を強い力(W4)で押鍵操作したときよりも、また高音域の鍵2を強い力(W3)で押鍵操作したときよりも、低音域の伝達本体部55の弾性変形量を最も大きくでき、かつ遅れ時間T5を最も長く(T5>T4>T3)できるので、低音域のハンマー部材11を中音域のハンマー部材11および高音域のハンマー部材11よりも更に遅く動作させることができ、これによりアコースティックピアノの鍵タッチ感に極めて近似した鍵タッチ感を得ることができる。
(第3実施形態)
次に、図9〜図12を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した第3実施形態について説明する。この場合には、図5〜図8に示された第2実施形態と同一部分に同一符号を付して説明する。
この電子鍵盤楽器は、図9〜図11に示すように、高音域、中音域、低音域における各ハンマー部材60〜62の重量がそれぞれ異なる構成であり、これ以外は第2実施形態とほぼ同じ構成になっている。
すなわち、高音域のハンマー部材60のハンマー部63は、図9〜図11に示すように、その形状が中音域のハンマー部材61のハンマー部64の形状よりも、また低音域のハンマー部材62のハンマー部65の形状よりも小さく形成されている。これにより、高音域のハンマー部材60は、その重量が中音域のハンマー部材61の重量よりも、また低音域のハンマー部材62の重量よりも軽く形成されている。
また、中音域のハンマー部材61のハンマー部64は、図9〜図11に示すように、その形状が低音域のハンマー部材62のハンマー部65の形状よりも小さく形成されている。これにより、中音域のハンマー部材61は、その重量が高音域のハンマー部材60の重量よりも重く、また低音域のハンマー部材62の重量よりも軽く形成されている。
さらに、低音域のハンマー部材62のハンマー部65は、図9〜図11に示すように、その形状が中音域のハンマー部材61のハンマー部64の形状よりも大きく形成されている。これにより、低音域のハンマー部材62は、その重量が中音域のハンマー部材61の重量よりも、また高音域のハンマー部材60の重量よりも重く形成されている。
この場合、高音域、中音域、低音域における各伝達部材50〜52は、第2実施形態と同様、その各伝達本体部53〜55の各弾性係数E1〜E3がそれぞれ異なった構成になっている。すなわち、高音域の伝達本体部53の弾性係数E1は、中音域の伝達本体部54の弾性係数E2よりも、また低音域の伝達本体部55の弾性係数E3よりも、小さく(E1<E2、E3)形成されている。
また、中音域の伝達本体部54の弾性係数E2は、低音域の伝達本体部54の弾性係数E3よりも、小さく(E2<E3)形成されている。さらに、低音域の伝達本体部55の弾性係数E3は、中音域の伝達本体部54の弾性係数E2よりも、また高音域の伝達本体部53の弾性係数E3よりも、大きく(E3>E2>E1)形成されている。
次に、このような第3実施形態における電子鍵盤楽器の鍵盤装置1の作用について説明する。
高音域の鍵2を弱い力(荷重W1)で押鍵したときには、第1実施形態と同様、弾性変形部である伝達本体部53が弾性変形せず、鍵2を強い力(荷重W3)で押鍵したときには、第2実施形態と同様、伝達本体部53が弾性変形する。このため、高音域の鍵2を強い力(荷重W3)で押鍵したときの遅れ時間T3は、第1実施形態と同様、鍵2を弱い力(荷重W1)で押鍵したときの遅れ時間T1よりも長く(T3>T1)なり、遅れ時間差(T3−T1)が生じる。
また、この高音域の伝達本体部53の弾性係数E1は、中音域の伝達本体部54の弾性係数E2よりも、また低音域の伝達本体部55の弾性係数E3よりも小さいので、高音域の鍵2を強い力(荷重W3)で押鍵したときの遅れ時間T3は、第2実施形態と同様、中音域の鍵2を強い力(荷重W4=W3)で押鍵したときの遅れ時間T4よりも、また低音域の鍵2を強い力(荷重W5=W3)で押鍵したときの遅れ時間T5よりも短く、高音域のハンマー部材11が中音域および低音域の各ハンマー部材11よりも早く動作する。
このときには、図9に示すように、高音域のハンマー部材60のハンマー部63の形状が、中音域のハンマー部材61のハンマー部64の形状よりも、また低音域のハンマー部材62のハンマー部65の形状よりも小さく形成され、これにより高音域のハンマー部材60の重量が中音域のハンマー部材61の重量よりも、また低音域のハンマー部材62の重量よりも軽いので、図12(a)に示すように、鍵2に加わる最大の反力P6が最も小さく(P6<P7<P8)、中音域および低音域の鍵タッチ感よりも軽い鍵タッチ感が得られる。
また、中音域の鍵2を弱い力(荷重W1)で押鍵したときには、第1実施形態と同様、弾性変形部である伝達本体部54が弾性変形せず、鍵2を強い力(荷重W4=W3)で押鍵したときには、第2実施形態と同様、伝達本体部54が弾性変形する。このため、中音域の鍵2を強い力(荷重W4)で押鍵したときの遅れ時間T4は、第2実施形態と同様、鍵2を弱い力(荷重W1)で押鍵したときの遅れ時間T1よりも長く(T4>T1)なり、遅れ時間差S3(T4−T1)が生じる。
また、この中音域の伝達本体部54の弾性係数E2は、高音域の伝達本体部53の弾性係数E1よりも大きく、また低音域の伝達本体部55の弾性係数E3よりも小さいので、中音域の鍵2を強い力(荷重W4)で押鍵したときの遅れ時間T4は、第2実施形態と同様、高音域の鍵2を強い力(荷重W3)で押鍵したときの遅れ時間T3よりも長く(T4>T3)なり、この中音域のハンマー部材11が高音域のハンマー部材11よりも遅く動作する。
このときには、図10に示すように、中音域のハンマー部材61のハンマー部64の形状が、高音域のハンマー部材60のハンマー部63の形状よりも大きく形成され、これにより中音域のハンマー部材61の重量が高音域のハンマー部材60の重量よりも重いので、図12(b)に示すように、鍵2に加わる最大の反力P7が高音域の鍵2に加わる反力P6よりも大きく(P7>P6)、高音域の鍵タッチ感よりも重い鍵タッチ感が得られる。
さらに、低音域の鍵2を弱い力(荷重W1)で押鍵したときには、第1実施形態と同様、弾性変形部である伝達本体部55が弾性変形せず、鍵2を強い力(荷重W5=W3)で押鍵したときには、第2実施形態と同様、伝達本体部55が弾性変形する。このため、低音域の鍵2を強い力(荷重W5)で押鍵したときの遅れ時間T5は、第2実施形態と同様、鍵2を弱い力(荷重W1)で押鍵したときの遅れ時間T1よりも長く(T5>T1)なり、遅れ時間差S4(T5−T1)が生じる。
また、この低音域の伝達本体部55の弾性係数E3は、中音域の伝達本体部54の弾性係数E2よりも大きいので、低音域の鍵2を強い力(荷重W5)で押鍵したときの遅れ時間T5は、第2実施形態と同様、中音域の鍵2を強い力(荷重W4)で押鍵したときの遅れ時間T4よりも長く(T5>T4)、低音域のハンマー部材11が中音域のハンマー部材11よりも更に遅く動作する。
このときには、図11に示すように、低音域のハンマー部材62のハンマー部65の形状が、中音域のハンマー部材61のハンマー部64の形状よりも大きく形成され、これにより低音域のハンマー部材62の重量が中音域のハンマー部材61の重量よりも重いので、図12(c)に示すように、鍵2に加わる最大の反力P8が最も大きくなり、中音域の鍵タッチ感よりも更に重い鍵タッチ感が得られる。
このように、この第3実施形態のアクション機構3によれば、第2実施形態と同様の作用効果があるほか、複数のハンマー部材60〜62の重量がそれぞれ異なり、高音側のハンマー部材60の重量が低音側のハンマー部材62の重量よりも軽く形成され、複数の伝達部材50〜52の各弾性係数E1〜E3がそれぞれ異なり、高音側の伝達本体部53の弾性係数E1が、低音側の伝達本体部55の弾性係数E3よりも小さく設定されていることにより、より一層、アコースティックピアノの鍵タッチ感に極めて近似した鍵タッチ感を得ることができる。
すなわち、この第3実施形態のアクション機構3では、高音域の鍵2を強い力(荷重W3)で押鍵したときの遅れ時間T3が、第2実施形態と同様、中音域の鍵2の遅れ時間T4よりも短く、高音域のハンマー部材11を中音域よりも早く動作させることができると共に、高音域のハンマー部材60の重量が中音域の重量よりも、また低音域の重量よりも軽いので、鍵2に加わる反力P6を最も小さくでき、これにより軽い鍵タッチ感が得られるので、アコースティックピアノの鍵タッチ感に極めて近似した鍵タッチ感を得ることができる。
また、中音域の鍵2を強い力(荷重W4=W3)で押鍵したときの遅れ時間T4は、第2実施形態と同様、高音域の鍵2の遅れ時間T3よりも長く、中音域のハンマー部材11を高音域よりも遅く動作させることができると共に、中音域のハンマー部材61の重量が高音域の重量よりも重いので、鍵2に加わる反力P7を高音域よりも大きくでき、これにより高音域よりも重い鍵タッチ感が得られるので、アコースティックピアノの鍵タッチ感に極めて近似した鍵タッチ感を得ることができる。
さらに、低音域の鍵2を強い力(荷重W5=W3)で押鍵したときの遅れ時間T5が、第2実施形態と同様、中音域の鍵2の遅れ時間T4よりも長く、低音域のハンマー部材11を中音域よりも更に遅く動作させることができると共に、低音域のハンマー部材62の重量が中音域のハンマー部材61の重量よりも重いので、鍵2に加わる反力P8を最も重くでき、これにより中音域よりも更に重い鍵タッチ感が得られるので、アコースティックピアノの鍵タッチ感に極めて近似した鍵タッチ感を得ることができる。
なお、上述した第1〜第3の各実施形態では、伝達部材10、50〜52の各伝達本体部21、53〜55の全体を弾性変形部に形成した場合について述べたが、これに限らず、例えば伝達本体部21、53〜55の一部、つまり鍵2が当接する個所、またはハンマー部材11、60〜62の各ハンマー突起部28が当接する個所の各一部に弾性変形部を形成した構成であっても良い。
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明は、これらに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記)
請求項1に記載の発明は、複数の鍵と、これら複数の鍵それぞれに対応して設けられ、当該複数の鍵それぞれの押鍵操作によって、予め定められた荷重以上の荷重が加わった際に弾性変形する弾性変形部を有する複数の伝達部材と、前記複数の鍵それぞれに対応して設けられ、前記押鍵操作された鍵に対応する前記伝達部材の変形に応じて回転動作することにより、前記押鍵操作されている鍵に対してアクション荷重を付与する複数のハンマー部材と、を備えていることを特徴とする鍵盤装置のアクション機構である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鍵盤装置のアクション機構において、前記弾性変形部は、前記鍵に当接して押し上げられる第1弾性変形部と、前記ハンマー部材に当接して当該ハンマー部材を押し上げる第2弾性変形部とを有し、前記第1弾性変形部と前記第2弾性変形部とが互いに接近する方向に弾性変形することを特徴とする鍵盤装置のアクション機構である。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の鍵盤装置のアクション機構において、前記複数の伝達部材それぞれは、前記弾性変形部が合成樹脂によって一体に形成されていることを特徴とする鍵盤装置のアクション機構である。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の鍵盤装置のアクション機構において、前記複数の伝達部材のうち、高音側に位置する前記伝達部材の前記弾性変形部の弾性係数が、低音側に位置する前記伝達部材の前記弾性変形部の弾性係数よりも、小さく設定されていることを特徴とする鍵盤装置のアクション機構である。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鍵盤装置のアクション機構において、前記複数のハンマー部材は、高音側の重量が低音側の重量よりも軽く形成されていることを特徴とする鍵盤装置のアクション機構である。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載された鍵盤装置のアクション機構と、前記複数のハンマー部材それぞれに対応して設けられ、当該ハンマー部材の回転動作に応答して押圧されることにより、オン信号を形成するスイッチ部材と、前記オン信号に応答して楽音信号を生成する音源と、を備えていることを特徴とする鍵盤楽器である。