以下、液体噴射装置をインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター」ともいう。)に具体化した一実施形態について、図を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態のプリンター11は、ターゲットの一例としての用紙STを搬送方向Yに沿って搬送する搬送部12と、用紙STに対してインクを噴射する液体噴射部13と、液体噴射部13にインクを供給する供給ユニット14とを備えている。また、プリンター11は、供給ユニット14を制御して、液体噴射部13に対するインクの供給量を変更可能な制御部15を備えている。
搬送部12は、ノズル形成面24aと対向させた位置に用紙STを搬送する際に、ノズル形成面24aの鉛直方向の下側から用紙STを支持する支持台16を有している。支持台16は、プリンター11において、用紙STの幅方向(図1では紙面と直交する方向)に延在して備えられている。また、搬送部12は、不図示の駆動源によって一方が駆動される搬送ローラー対17a,17bを有し、用紙STを挟持しながら回転することによって、支持台16の表面、および支持台16の搬送方向Yの上流側と下流側にそれぞれ備えられた案内板18aと案内板18bの各表面に沿って用紙STを搬送させる。なお、本実施形態では、用紙STは、供給リール19aにロール状態で巻かれたロール紙RSから巻き出されることによって連続紙状態で搬送される。そして、搬送される用紙STに対して液体噴射部13によってインクが噴射されることで画像が印刷された後に、用紙STは、巻取リール19bによって再びロール状に巻き取られる。
液体噴射部13は、用紙STの搬送方向Yと直交する用紙STの幅方向となる走査方向に沿って延設されたガイド軸21,22に摺接しながら、不図示の駆動源によって走査方向に往復移動可能なキャリッジ23を備えている。キャリッジ23は、インクを噴射する液体噴射ヘッド24と、液体噴射ヘッド24へ供給するインクを貯留する貯留部25と、貯留部25へ流路アダプター26を介してインクを供給する接続チューブ27とを有している。
液体噴射ヘッド24は、インクを噴射するノズルが形成されたノズル形成面24aが支持台16と対向するようにキャリッジ23の下側に取り付けられている。一方で、貯留部25は、キャリッジ23において、液体噴射ヘッド24の鉛直方向の上側に取り付けられている。また、接続チューブ27には、キャリッジ23に設けられた接続部28を介して、走査方向に往復移動するキャリッジ23対して追従変形可能とされる供給チューブ29が接続されている。
供給ユニット14は、インクを収容する液体収容体の一例としてのインク収容体31と、各チューブ27,29を介してインク収容体31に収容されたインクを液体噴射ヘッド24に加圧供給する加圧供給部40とを備えている。インク収容体31には、その下側にインクを導出させるインク導出口32が形成されている。加圧供給部40には、インク収容体31のインク導出口32に挿通可能なインク供給針41と、供給チューブ29と接続可能な接続部42が設けられている。
こうして、加圧供給部40は、インク収容体31のインク導出口32にインク供給針41を挿通し、供給チューブ29を接続部42に接続することで、インク収容体31から供給チューブ29にインクを供給可能となる。
なお、以降の説明では、インク収容体31から液体噴射ヘッド24までのインクの供給系において、インクの供給源側となるインク収容体31側を「上流側」とするとともに、インクの消費(噴射)側となる液体噴射ヘッド24側を「下流側」とする。
次に、加圧供給部40の構成について図2及び図3を参照して説明する。なお、図3は、図2における3−3線矢視断面図を併記した図となっている。
図3に示すように、加圧供給部40は、略矩形板状の第1流路形成部材43と、第1流路形成部材43に積層された弾性部材44と、弾性部材44に積層された第2流路形成部材45とを備えている。各流路形成部材43,45は樹脂や金属などの剛性を有する材料で形成され、弾性部材44は耐インク性を有するゴムなどで形成されている。
図2及び図3に示すように、こうして構成された加圧供給部40には、上流側に位置するインク収容体31と下流側に位置する供給チューブ29とを連通するインク供給流路46と、上流側から下流側にインクを加圧供給する第1加圧供給部100及び第2加圧供給部200が形成されている。
図2に示すように、インク供給流路46のうち、同インク供給流路46の最上流側に位置するインク供給針41からその下流側の分岐点までは単一流路47となり、同インク供給流路46のうち最下流側に位置する接続部42からその上流側の分岐点までは単一流路48となっている。また、インク供給流路46のうち、各単一流路47,48間は、複数(本実施形態では2本)の分岐流路110,210となっている。すなわち、一方の分岐流路110は第1加圧供給部100に形成され、他方の分岐流路210は第2加圧供給部200に形成されている。また、本実施形態では、分岐流路110,210が、インク収容体31側から、液体噴射ヘッド24側にインクを供給する複数の液体供給流路の一例に相当している。
図2及び図3に示すように、各分岐流路110,210には、上流側から、インクの流れを一方向に規制する第1方向弁120,220と、インクを断続的に下流側に供給するダイアフラムポンプ130,230と、下流側に供給するインクの圧力を調整する圧力調整部140,240と、インクの流れを一方向に規制する第2方向弁150,250と、が配置されている。また、ダイアフラムポンプ130,230には、同ダイアフラムポンプ130,230を駆動させるための負圧発生部160,260が接続されている。
各分岐流路110,210は、インク供給針41の下流側分岐点から第1方向弁120,220までを連通する第1流路111,211と、第1方向弁120,220からダイアフラムポンプ130,230までを連通する第2流路112,212とを有している。また、各分岐流路110,210は、ダイアフラムポンプ130,230から第2方向弁150,250までを連通する第3流路113,213と、第2方向弁150,250から接続部42の上流側分岐点までを連通する第4流路114,214とを有している。
次に、第1方向弁120,220について説明する。
図3に示すように、第1方向弁120,220は、積層された各流路形成部材43,45の間に形成される第1弁室121,221と、第1弁室121,221内に配置される第1弁体122,222と、第1弁体122,222を第1流路形成部材43側に向かって付勢する第1圧縮ばね123,223とを備えている。第1弁室121,221は、第1弁体122,222によって区画された、上流側の上流側第1弁室124,224と、下流側の下流側第1弁室125,225とを形成している。
第1弁体122,222は、弾性部材44の一部分によって形成され、第1弁室121,221内を各流路形成部材43,45の積層方向(以下、単に「積層方向」ともいう)に変位可能としている。また、第1圧縮ばね123,223は、下流側第1弁室125,225内に積層方向に圧縮された状態で配置されている。このため、図3に示す状態において、第1圧縮ばね123,223は、その付勢力により、第1弁体122,222を第1流路形成部材43に当接させている。
こうして、図3に示す状態では、第1方向弁120,220は、インクが第1流路111,211から第2流路112,212に流れることを規制する「閉弁状態」にある。また、第1方向弁120,220は、下流側第1弁室125,225が上流側第1弁室124,224に比べ所定の負圧状態となったときに、インクが第1流路111,211から第2流路112,212に流れることを許容する「開弁状態」となる。
次に、ダイアフラムポンプ130,230について説明する。
ダイアフラムポンプ130,230は、各流路形成部材43,45の間に配置されるダイアフラム131,231と、第1流路形成部材43とダイアフラム131,231との間に形成されるポンプ室132,232と、ダイアフラム131,231を第1流路形成部材43側に向かって付勢する圧縮ばね133,233とを備えている。ダイアフラム131,231は、弾性部材44の一部分によって形成され、積層方向に変位することで、ポンプ室132,232の容積を変更可能としている。また、圧縮ばね133,233は、第2流路形成部材45とダイアフラム131,231との間に圧縮された配置されている。このため、図3に示す状態において、圧縮ばね133,233は、その付勢力により、ダイアフラム131,231を第1流路形成部材43に当接させている。ここで、図3に示す状態では、ダイアフラム131,231は、同ダイアフラム131,231が変位する中で最も第1流路形成部材43側の「下死点」に位置している。なお、同ダイアフラム131,231が変位する中で最も第2流路形成部材45側の位置を「上死点」という。
また、各ダイアフラムポンプ130,230は、ダイアフラム131,231を上死点と下死点との間を交互に変位させることで、ダイアフラムポンプ130,230の上流側から下流側にインクを断続的に加圧供給することを可能としている。ここで、ダイアフラムポンプ130,230がインクを吸引している期間を「吸引期間」といい、同ダイアフラムポンプ130,230がインクを吐出している期間を「吐出期間」という。こうした点で、本実施形態では、ダイアフラムポンプ130,230が、インクを吸引する吸引期間とインクを吐出する吐出期間とを交互に繰り返すことでインク収容体31側から液体噴射ヘッド24側にインクを加圧供給するポンプの一例となっている。また、上述した制御部15は、これらのダイアフラムポンプ130,230における相対的な吐出タイミングを変更可能に制御することを可能としている。
次に、圧力調整部140,240について説明する。
圧力調整部140,240は、各流路形成部材43,45の間に配置された調整弁141,241と、第2流路形成部材45と調整弁141,241で区画された圧力調整室142,242と、圧力調整部140,240と第3流路113,213を連通する連通流路143,243とを備えている。調整弁141,241は、弾性部材44の一部分によって形成され、連通流路143,243が所定の正圧状態になったときに、圧力調整室142,242の容積を減少する方向に変位する。
圧力調整部140,240は、ダイアフラムポンプ130,230が下流側にインクを吐出する際に、吐出されたインクの供給圧力が、ダイアフラムポンプ130,230の圧縮ばね133,233の付勢力に応じた圧力以上となる場合などに、その供給圧力を減圧するものである。具体的には、圧力調整部140,240は、インクの供給圧力が高圧である場合に、調整弁141、241が圧力調整室142,242の容積を減少する方向に変位することで、下流側に供給されるインクを一時的に蓄えインクの減圧調整を行う。これにより、高圧のインクが下流側へ供給されることが抑制される。換言すれば、下流側へのインクの供給圧力が適切な圧力である場合には、圧力調整部140,240は動作することはない。
次に、第2方向弁150,250について説明する。
第2方向弁150,250は、積層された各流路形成部材43,45の間に形成される第2弁室151,251と、第2弁室151,251内に配置される第2弁体152,252と、第2弁体152,252を第1流路形成部材43側に向かって付勢する第2圧縮ばね153,253とを備えている。第2弁室151,251は、第2弁体152,252によって区画された、上流側の上流側第2弁室154,254と、下流側の下流側第2弁室155,255とを形成している。
第2弁体152,252は、弾性部材44の一部分によって形成され、第2弁室151,251内を積層方向に変位可能としている。また、第2圧縮ばね153,253は、下流側第2弁室155,255内に積層方向に圧縮された状態で配置されている。このため、図3に示す状態において、第2圧縮ばね153,253は、その付勢力により、第2弁体152,252を第1流路形成部材43に当接させている。
こうして、図3に示す状態では、第2方向弁150,250は、インクが第3流路113,213から第4流路114,214に流れることを規制する「閉弁状態」にある。また、第2方向弁150,250は、上流側第2弁室154,254が下流側第2弁室155,255に比べ所定の正圧状態となったときに、インクが第3流路113,213から第4流路114,214に流れることを許容する「開弁状態」となる。
次に、負圧発生部160,260について説明する。
負圧発生部160,260は、第2流路形成部材45とダイアフラム131,231との間に形成される負圧室161,261と、負圧室161,261内の空気を吸引する吸引ポンプ162,262とを備えている。また、負圧発生部160,260は、負圧室161,261と吸引ポンプ162,262とを連通する負圧供給路163,263と、吸引ポンプ162,262を駆動する電動モーター164,264とを備えている。
吸引ポンプ162,262は、例えばチューブポンプなどのロータリーポンプで構成されている。また、電動モーター164,264は、正転方向及び逆転方向に駆動可能とされ、負圧室161,261内に負圧を発生させたい場合には、電動モーター164,264を正転方向に駆動させて吸引ポンプ162,262を駆動させる。
また、負圧発生部160,260は、負圧室161,261内を大気と連通状態としたり非連通状態としたりする大気開放弁170,270と、大気開放弁170,270と負圧供給路163,263とを接続する大気開放路165,265と、大気開放弁170,270の連通状態と非連通状態とを切替可能なカム機構166,266とを備えている。
大気開放弁170,270は、大気開放孔171,271が形成された箱体172,272と、大気開放孔171,271を介して箱体172,272から突出するロッド173,273を有する弁体174,274とを備えている。また、大気開放弁170,270は、大気開放孔171,271と弁体174,274との間で箱体172,272に保持されるシール部材175,275と、シール部材175,275を圧縮する方向に弁体174,274を付勢する圧縮ばね176,276とを備えている。弁体174,274は、箱体172,272内をロッド173,273の延設方向に変位可能としている。圧縮ばね176,276は、箱体172,272内において、ロッド173,273の延設方向に圧縮された状態で配置されている。このため、図3に示す状態において、圧縮ばねによって付勢された弁体174,274は、箱体172,272に対してシール部材175,275を圧縮している。また、カム機構166,266は、電動モーター164,264の回転軸に図示しないワンウェイクラッチを介して軸支され、同電動モーター164,264が逆転方向に駆動するときに弁体174,274のロッド173,273を押圧可能としている。
なお、図3に示す状態では、大気開放弁170,270は、大気開放孔171,271が弁体174,274とシール部材175,275によって閉塞された「閉塞状態」にある。この閉塞状態から、電動モーター164,264を逆転方向に駆動させてカム機構166,266がロッド173,273を押圧することで、弁体174,274とシール部材175,275との間に隙間が形成され、大気開放弁170,270は、大気開放路165,265を大気と連通させる「開放状態」となる。
次に、本実施形態のプリンターの作用について説明する。
まず、液体噴射ヘッド24で連続的に多くのインクを噴射する場合における加圧供給部40(100,200)の第1のインク供給モードについて説明する。なお、ここでいう第1のインク供給モードでは、液体噴射ヘッド24に形成された複数のノズルのうち比較的多数(例えば、7割以上)のノズルからインクを噴射する場合などを想定している。また、ダイアフラムポンプ130,230は、下流側に適切な圧力でインクを供給するものとして、圧力調整部140,240の作用については省略する。
初期状態として、吸引ポンプ162,262の圧力はともに大気圧とされ、図3に示すように、ダイアフラム131,231は下死点に位置し、第1方向弁120,220及び第2方向弁150,250は閉弁状態にあるものとする。また、ダイアフラムポンプ130,230のポンプ室132,232にはインクは吸引されておらず、分岐流路110,210はインクで満たされているものとする。
さて、こうした図3に示す状態から、第1のインク供給モードで、インク収容体31から液体噴射ヘッド24へインクを供給する場合には、まず第2加圧供給部200の電動モーター264を正転方向に駆動させる。すると、第2加圧供給部200の吸引ポンプ262が、負圧供給路263を介して接続された負圧室261の空気を吸引して、同負圧室261を負圧状態とする。つまり、第2加圧供給部200の負圧室261は、ダイアフラム231を介して区画されたポンプ室232よりも減圧された状態となり、負圧室261とポンプ室232に圧力差が生じる。そして、第2加圧供給部200の吸引ポンプ262の駆動が継続され、この圧力差に応じた力が圧縮ばね233の付勢力よりも大きくなることで、図4に示すように、ダイアフラム231が圧縮ばね233の付勢力に抗して下死点から上死点に変位する。こうして、容積が増加するポンプ室232は負圧状態となる。
また、第2加圧供給部200のポンプ室232と第2流路212を介して連通される第1方向弁220の下流側第1弁室225も、ポンプ室232と同様に負圧状態となる。すると、第2加圧供給部200の第1方向弁220において、上流側第1弁室224と下流側第1弁室225に生じる圧力差に応じた力が、第1圧縮ばね223の付勢力よりも大きくなった時点で、第1弁体222が第1圧縮ばね223を圧縮する方向に変位する。その結果、図4に示すように、第2加圧供給部200の第1方向弁220は開弁状態となり、ダイアフラムポンプ230のポンプ室232は、インク供給針41、単一流路47、第1流路211、第1方向弁220、及び第2流路212を介してインク収容体31と連通状態となる。そして、第2加圧供給部200のダイアフラムポンプ230のダイアフラム231の変位にともなって、ポンプ室232にインク収容体31内のインクが吸引される。
なお、第2加圧供給部200の吸引ポンプ262の駆動時には、第1方向弁220の下流側第1弁室225と同様に、圧力調整部240の連通流路243と第2方向弁250の上流側第2弁室254が負圧状態となる。ここで、圧力調整部240及び第1方向弁220は、連通流路243及び上流側第2弁室254が正圧状態となったときに、機能するものである。このため、第2加圧供給部200において、圧力調整部240の調整弁241は変位せず、第2方向弁250は閉弁状態を維持する。
一方、第1加圧供給部100の吸引ポンプ162は駆動されないため、図3に示す各弁の配置態様から変動はない。
続いて、第2加圧供給部200のダイアフラムポンプ230がポンプ室232にインクが吸引し終わると、正転方向に駆動していた電動モーター264(図3参照)が逆転方向に駆動される。すると、カム機構266がロッド273を押圧することで、弁体274が圧縮ばね276を圧縮する方向に変位する。こうして、弁体274とシール部材275との間に隙間が形成され、大気開放弁270は、大気開放路265を大気と連通させる開放状態となる。そして、大気開放弁270が開放状態となることで、負圧状態にある負圧室261が負圧供給路263、大気開放路265及び大気開放弁270を介して大気と連通され、大気開放される。
図5に示すように、第2加圧供給部200の負圧室261が大気開放されると、負圧室261内に空気が流入し圧力が増大することで、負圧室261とポンプ室232との圧力差が解消される。すると、その圧力差に応じた力が圧縮ばね233の付勢力よりも小さくなることで、ダイアフラム231が上死点から下死点に変位する。すなわち、ダイアフラムポンプ230は、ダイアフラム231の上死点からの変位量に応じた量のインクをポンプ室232から吐出する。なお、このとき、第2加圧供給部200の負圧室261の容積は増加する一方、ダイアフラムポンプ230のポンプ室232の容積は減少し、同ポンプ室232は負圧状態から正圧状態となる。
そして、第2加圧供給部200のポンプ室232が正圧状態となることで、ポンプ室232の上流側に位置する第1方向弁220では、上流側第1弁室224と下流側第1弁室225に生じる圧力差が解消される。すると、その圧力差に応じた力が第1圧縮ばね223の付勢力よりも小さくなることで、第1弁体222は第1圧縮ばね223が伸張する方向に変位する。このため、第2加圧供給部200の第1方向弁220が開弁状態から閉弁状態となり、ダイアフラムポンプ230のポンプ室232とインク収容体31の連通状態が解消される。したがって、閉弁状態となった第1方向弁220により、ダイアフラムポンプ230のポンプ室232に一旦吸引されたインクがその上流側に吐出されることが抑制される。
また、第2加圧供給部200のポンプ室232が正圧状態となることで、ポンプ室232の下流側に位置する第2方向弁250では、上流側第2弁室254の圧力が増大し、上流側第2弁室254と下流側第2弁室255の圧力差が次第に大きくなる。そして、その圧力差に応じた力が第2圧縮ばね253の付勢力よりも大きくなった時点で、第2弁体252が第2圧縮ばね253を圧縮する方向に変位する。その結果、第2方向弁250は開弁状態となり、ダイアフラムポンプ230のポンプ室232は、第3流路213、第2方向弁250、第4流路214、及び単一流路48を介して供給チューブ29と連通状態となる。そして、ダイアフラムポンプ230のダイアフラム231の下死点への変位にともなって、ポンプ室232から供給チューブ29のさらに下流側に位置する液体噴射ヘッド24側に向かってインクが吐出される。
なお、このとき吐出されたインクの供給圧力は、圧力調整部140が動作するほどの圧力ではないため、圧力調整部140の調整弁141が圧力調整室142の容積を減少する方向に変位することはない。
一方で、図5に示すように、第1加圧供給部100では、第2加圧供給部200が下流側にインクを供給している間に、図4に示す第2加圧供給部200と同様にして、ダイアフラムポンプ130のポンプ室132にインク収容体31からインクを吸引する。すなわち、第1加圧供給部100において、ダイアフラムポンプ130のダイアフラム131が下死点から上死点に変位するとともに、第1方向弁120が閉弁状態から開弁状態に切り替わることで、ダイアフラムポンプ130のポンプ室132にインクが吸引される。
また、第1加圧供給部100のダイアフラムポンプ130によるインクの吸引は、図5に示すように、第2加圧供給部200のダイアフラムポンプ230が下流側にインクを吐出する最中に行われる。
続いて、図6に示すように、第1加圧供給部100のダイアフラムポンプ130は、第2加圧供給部200のダイアフラムポンプ230が下流側にインクを供給し終わる前に、下流側へのインクの供給を開始する。すなわち、第1加圧供給部100において、負圧室161が大気開放されることで、ダイアフラムポンプ130のダイアフラム131が上死点から下死点に変位を開始する。また、第1方向弁120が開弁状態から閉弁状態に切り替わるとともに、第2方向弁150が閉弁状態から開弁状態に切り替わる。これにより、ダイアフラムポンプ130のポンプ室132から下流側の貯留部25に向かってインクが吐出される。
また、双方の加圧供給部100,200がインクを加圧供給する際には、各加圧供給部100,200の第4流路114,214を流れるインクが、単一流路48(図2参照)で合流して、下流側に供給される。
次に、上記の第1のインク供給モードにおける各加圧供給部100,200の吸引期間と吐出期間の時間関係について図7に示すタイミングチャートを参照して説明する。なお、図7(a),(b)は、各加圧供給部100,200の吸引ポンプ162,262の駆動状態を示し、図7(c),(d)は各加圧供給部100,200のダイアフラム131,231の位置を示している。また、図7(e)には、本実施形態の比較例として、第2加圧供給部しか備えない場合の貯留部25での圧力変化を破線で併記している。
図7に示すように、第1のタイミングt1では、第1加圧供給部100の吸引ポンプ162が停止されたまま、第2加圧供給部200の吸引ポンプ262が駆動を開始される。すなわち、第2加圧供給部200のダイアフラムポンプ230は、インクの吸引を第1のタイミングt1から開始する。
そして、第2のタイミングt2では、第2加圧供給部200のダイアフラム131が上死点に位置し、ダイアフラムポンプ230はインクの吸引を終了する。この点で、第1のタイミングt1から第2のタイミングt2までが、第2加圧供給部200のダイアフラムポンプ230にとっての吸引期間VTに相当する。
続いて、第3のタイミングt3では、第2加圧供給部200の吸引ポンプ262が停止され、大気開放弁270が開放状態となることで、ダイアフラムポンプ230は、液体噴射ヘッド24のある下流側にインクの吐出を開始する。なお、第2加圧供給部200は、第3のタイミングt3から後述する第7のタイミングt7まで、下流側へのインクの供給を継続する。その一方で、この第3のタイミングt3から、液体噴射ヘッド24は用紙STに対して連続したインクの噴射が開始され、貯留部25では連続的なインクの消費が開始される。
そして、第4のタイミングt4では、第1加圧供給部100の吸引ポンプ162の駆動が開始され、ダイアフラムポンプ130はインクの吸引を開始する。そして、第5のタイミングt5では、第1加圧供給部100のダイアフラム131が上死点に位置し、ダイアフラムポンプ130はインクの吸引を終了する。この点で、第4のタイミングt4から第5のタイミングt5までが、第1加圧供給部100のダイアフラムポンプ130にとっての吸引期間VTに相当する。
続いて、第6のタイミングt6では、第1加圧供給部100の吸引ポンプ162が停止され、大気開放弁170が開放状態となることで、ダイアフラムポンプ130,230は、貯留部25のある下流側にインクの吐出を開始する。なお、第1加圧供給部100は、第6のタイミングt6から後述する第10のタイミングt10まで、下流側へのインクの供給を継続する。また、この第6のタイミングt6では、第2加圧供給部200は、下流側へのインクの供給を継続している。
そして、第7のタイミングt7では、第2加圧供給部200のダイアフラム231が下死点に位置し、ダイアフラムポンプ230はインクの吐出を終了する。この点で、第3のタイミングt3から第7のタイミングt7までが、第2加圧供給部200のダイアフラムポンプ230にとっての吐出期間DTに相当する。また、第7のタイミングt7において、第2加圧供給部200の吸引ポンプ262の駆動が再び開始される。
そして、第8のタイミングt8では、第2加圧供給部200のダイアフラム131が上死点に位置し、ダイアフラムポンプ230はインクの吸引を終了する。この点で、第7のタイミングt7から第8のタイミングt8までが、第2加圧供給部200のダイアフラムポンプ230にとっての吸引期間VTに相当する。
続いて、第9のタイミングt9では、第2加圧供給部200の吸引ポンプ262が停止され、大気開放弁270が開放状態となることで、ダイアフラムポンプ130,230は、貯留部25のある下流側にインクの吐出を開始する。また、この第9のタイミングt9では、第1加圧供給部100は、下流側へのインクの供給を継続している。
そして、第10のタイミングt10では、第1加圧供給部100のダイアフラム131が下死点に位置し、ダイアフラムポンプ130はインクの吐出を終了する。この点で、第6のタイミングt6から第10のタイミングt10までが、第1加圧供給部100のダイアフラムポンプ130にとっての吐出期間DTに相当する。また、第10のタイミングt10において、第1加圧供給部100の吸引ポンプ162の駆動が再び開始される。
ところで、比較例の加圧供給部は、第2加圧供給部しか有していないため、同第2加圧供給部がインクの供給を終了する第7のタイミングt7から、インクの供給を再開する第9のタイミングt9までの間では、貯留部25に対するインクの供給が停止することとなる。このため、同期間において液体噴射ヘッド24から継続してインクが噴射されると、図7(e)に破線で示すように貯留部の圧力が減少していく。そして、貯留部25の圧力が、液体噴射ヘッド24におけるインクの噴射特性に影響を与えるようになる要求圧力RP1を下回ることで、比較例の加圧供給部では第7のタイミングt7以降に安定的なインク噴射特性を得ることができなくなるおそれがある。
これに対し本実施形態の加圧供給部40は、第1加圧供給部100と第2加圧供給部200によって、何れのタイミングでもインクの供給が行われ、さらに加圧供給部100,200が切り替わる際に吐出期間DTが重複する重複吐出期間ODTが設けてある。このため、本実施形態の加圧供給部40によれば、比較例に対して、安定的にインクが液体噴射ヘッド24側(貯留部25)に供給される。
なお、図7に示すタイミングチャートにおいて、第4のタイミングt4から第5のタイミングt5までの間では、第2加圧供給部200のダイアフラムポンプ230が吐出期間DTであるときに、第1加圧供給部100のダイアフラムポンプ130がインクを吸引している。また、第7のタイミングt7から第8のタイミングt8までの間では、第1加圧供給部100のダイアフラムポンプ130が吐出期間DTであるときに、第2加圧供給部200のダイアフラムポンプ230がインクを吸引している。こうした点で、第1のインク供給モードは、複数のポンプを異なる位相で駆動させて液体を加圧供給する「第1のモード」に相当する。
また、第1のインク供給モードでは、第2加圧供給部200のダイアフラムポンプ230の吐出期間DTが終了する第7のタイミングt7よりも、第1加圧供給部100の吐出期間DTが開始する第6のタイミングt6のほうが早くなっている。また、第1加圧供給部100のダイアフラムポンプ130の吐出期間DTが終了する第10のタイミングt10よりも、第2加圧供給部200の吐出期間DTが開始する第9のタイミングt9のほうが早くなっている。すなわち、第6のタイミングt6から第7のタイミングt7までの期間と、第9のタイミングt9から第10のタイミングt10までの期間は、双方の加圧供給部100,200のダイアフラムポンプ130,230からインクが吐出される重複吐出期間ODTとなっている。
また、第1のインク供給モードは、第1加圧供給部100において、第4のタイミングt4から第5のタイミングt5までの吸引期間VTよりも、第6のタイミングt6から第10のタイミングt10までの吐出期間DTのほうが長くなっている。また、第2加圧供給部200において、第1のタイミングt1から第2のタイミングt2までの吸引期間VTよりも、第3のタイミングt3から第7のタイミングt7までの吐出期間DTのほうが長くなっている。
次に、液体噴射ヘッド24で一時的に多量のインクを噴射する場合における加圧供給部40(100,200)の第2のインク供給モードについて説明する。なお、ここでいう第2のインク供給モードとは、液体噴射ヘッド24内のインクが増粘したり、同インク中に気泡が発生したりする場合などに、そうしたインクを強制的に排出するクリーニングなどのメンテナンス時を想定している。また、ダイアフラムポンプ130,230は、下流側に適切な圧力でインクを吐出するものとして、圧力調整部140,240の作用については省略する。
初期状態として、吸引ポンプ162,262の圧力はともに大気圧とされ、図3に示すように、ダイアフラム131,231は下死点に位置し、第1方向弁120,220及び第2方向弁150,250は閉弁状態にあるとする。また、ダイアフラムポンプ130,230のポンプ室132,232にはインクは吸引されておらず、分岐流路110,210はインクで満たされているものとする。
さて、こうした図3に示す状態から、第2のインク供給モードで、インク収容体31から液体噴射ヘッド24へインクを供給する場合には、まず、各加圧供給部100,200の電動モーター164,264を正転方向に駆動させる。すると、各加圧供給部100,200の吸引ポンプ162,262が、負圧供給路163,263を介して接続された負圧室161,261内の空気を吸引して、同負圧室161,261を負圧状態とする。つまり、負圧室161,261は、ダイアフラム131,231を介して区画されたポンプ室132,232よりも減圧された状態となり、負圧室161,261とポンプ室132,232に圧力差が生じる。そして、吸引ポンプ162,262の駆動が継続され、この圧力差に応じた力が圧縮ばね133,233の付勢力よりも大きくなることで、図8に示すように、ダイアフラム131,231が圧縮ばね133,233の付勢力に抗して下死点から上死点に変位する。このとき、容積が増加するポンプ室132,232は負圧状態となる。
また、ポンプ室132,232と第2流路112,212を介して連通される第1方向弁120,220の下流側第1弁室125,225も、ポンプ室132,232と同様に負圧状態となる。すると、第1方向弁120,220において、上流側第1弁室124,224と下流側第1弁室125,225に生じる圧力差に応じた力が、第1圧縮ばね123,223の付勢力よりも大きくなった時点で、第1弁体122,222が第1圧縮ばね123,223を圧縮する方向に変位する。その結果、第1方向弁120,220は開弁状態となり、ダイアフラムポンプ130,230のポンプ室132,232は、インク供給針41、単一流路47、第1流路111,211、第1方向弁120,220、及び第2流路112,212を介してインク収容体31と連通状態となる。そして、ダイアフラムポンプ130,230のダイアフラム131,231の変位にともなって、ポンプ室132,232にインク収容体31内のインクが吸引される。
なお、各加圧供給部100,200の吸引ポンプ162,262の駆動時には、第1方向弁120,220の下流側第1弁室125,225と同様に、圧力調整部140,240の連通流路143,243と第2方向弁150,250の上流側第2弁室155,255が負圧状態となる。このため、図8に示すように、圧力調整部140,240の調整弁141,241は変位せず、第2方向弁150,250は閉弁状態を維持する。
続いて、ダイアフラムポンプ130,230がポンプ室132,232にインクが吸引し終わると、正転方向に駆動していた各加圧供給部100,200の電動モーター164,264(図3参照)が逆転方向に駆動される。すると、カム機構166,266がロッド173,273を押圧することで、弁体174,274が圧縮ばね176,276を圧縮する方向に変位する。こうして、弁体174,274とシール部材175,275との間に隙間が形成され、大気開放弁170、270は、大気開放路165,265を大気と連通させる開放状態となる。そして、大気開放弁170,270が開放状態となることで、負圧状態にある負圧室161,261が、負圧供給路163,263、大気開放路165,265、及び大気開放弁170,270とを介して、大気と連通され大気開放される。
図9に示すように、各加圧供給部100,200の負圧室161,261が大気開放されると、負圧室161,261内に空気が流入し、同負圧室161,261の圧力が増大することで、負圧室161,261とポンプ室132,232との圧力差が解消される。すると、その圧力差に応じた力が圧縮ばね133,233の付勢力よりも小さくなることで、ダイアフラム131,231が上死点から下死点に変位する。すなわち、ダイアフラムポンプ130,230は、ダイアフラム131,231の上死点からの変位量に応じた量のインクをポンプ室132,232から吐出する。なお、このとき、負圧室161,261の容積は増加する一方、ダイアフラムポンプ130,230のポンプ室132,232の容積は減少し、同ポンプ室132,232は負圧状態から正圧状態となる。
そして、ポンプ室132,232が正圧状態となることで、ポンプ室132,232の上流側に位置する第1方向弁120,220では、上流側第1弁室124,224と下流側第1弁室125,225に生じる圧力差が解消される。すると、その圧力差に応じた力が第1圧縮ばね123,223の付勢力よりも小さくなることで、第1弁体122,222は第1圧縮ばね123,223が伸張する方向に変位する。このため、第1方向弁120,220が開弁状態から閉弁状態となるため、ダイアフラムポンプ130,230のポンプ室132,232とインク収容体31の連通状態が解消される。したがって、閉弁状態となった第1方向弁120,220により、ダイアフラムポンプ130,230のポンプ室132,232に一旦吸引されたインクがその上流側に吐出されることが抑制される。
また、ポンプ室132,232が正圧状態となることで、ポンプ室132,232の下流側に位置する第2方向弁150,250では、上流側第2弁室154,254の圧力が増大し、上流側第2弁室154,254と下流側第2弁室155,255の圧力差が次第に大きくなる。そして、その圧力差に応じた力が第2圧縮ばね153,253の付勢力よりも大きくなった時点で、第2弁体152,252が第2圧縮ばね153,253を圧縮する方向に変位する。その結果、第2方向弁150,250は開弁状態となり、ダイアフラムポンプ130,230のポンプ室132,232は、第3流路113,213、第2方向弁150,250、第4流路114,214、及び単一流路48を介して供給チューブ29と連通状態となる。そして、ダイアフラムポンプ130,230のダイアフラム131,231の下死点への変位にともなって、ポンプ室132,232から下流側に位置する貯留部25に向かってインクが吐出される。すなわち、各加圧供給部100,200のダイアフラムポンプ130,230は、インクを吐出するタイミングを一致させて、液体噴射ヘッド24側にインクを加圧供給する。
なお、このとき吐出されたインクの供給圧力は、圧力調整部140,240が動作するほどの圧力ではないため、圧力調整部140,240の調整弁141,241が圧力調整室142,242の容積を減少する方向に変位することはない。
次に、上記の第2のインク供給モードにおける各加圧供給部100,200の吸引期間と吐出期間の時間関係について図10に示すタイミングチャートを参照して説明する。なお、図10(a),(b)は、各加圧供給部100,200の吸引ポンプ162,262の駆動状態を示し、図10(c),(d)は各加圧供給部100,200のダイアフラム131,231の位置を示している。また、図10(e)には、本実施形態の比較例として、第2加圧供給部しか備えない場合の貯留部25での圧力変化を破線で併記している。
図10に示すように、第1のタイミングt11では、各加圧供給部100,200の吸引ポンプ162,262は停止された状態にある。そして、第2のタイミングt12では、各加圧供給部100,200の吸引ポンプ162,262の駆動が開始され、ダイアフラムポンプ130,230はインクの吸引を開始する。
そして、第3のタイミングt13では、各加圧供給部100,200のダイアフラム131,231が上死点に位置し、ダイアフラムポンプ130,230はインクの吸引を終了する。この点で、第2のタイミングt12から第3のタイミングt13までが、各加圧供給部100,200のダイアフラムポンプ130,230にとっての吸引期間VTに相当する。
続いて、第4のタイミングt14では、各加圧供給部100,200の吸引ポンプ162,262が停止され、大気開放弁170,270が開放状態となることで、ダイアフラムポンプ130,230は、貯留部25のある下流側にインクの吐出を開始する。なお、各加圧供給部100,200は、第4のタイミングt14から後述する第6のタイミングt16まで、下流側へのインクの供給を継続する。
そして、第5のタイミングt15では、液体噴射ヘッド24からインクを強制的に吸引するクリーニングが行われ、用紙STに対してインクを噴射する場合よりも、短時間で多くのインクが貯留部25から消費される。このため、図10(e)に示すように、第5のタイミングt15からクリーニングが終了するまでの間、貯留部25の圧力が急勾配で減少する。
続いて、第6のタイミングt16では、各加圧供給部100,200のダイアフラム131,231が下死点に位置し、ダイアフラムポンプ130,230はインクの吐出を終了する。この点で、第4のタイミングt14から第6のタイミングt16までが、各加圧供給部100,200のダイアフラムポンプ130,230にとっての吐出期間DTに相当する。また、その一方で、第6のタイミングt16では、液体噴射ヘッド24のクリーニングが完了し、貯留部25でのインクの消費が終了する。
ところで、比較例の加圧供給部は、第2加圧供給部しか有していないため、クリーニングが開始される第5のタイミングでは、図10(e)に破線で示すように、貯留部の圧力が、クリーニングを行うために必要な要求圧力RP2に達していない。このため、クリーニング時に、増粘などしたインクを排出するために必要とされる量のインクを噴射することができないおそれがある。
これに対し、本実施形態の加圧供給部40は、クリーニングが開始される第5のタイミングt15では、図10(e)に実線で示すように、貯留部25の圧力が、クリーニングを行うために必要な要求圧力RP2に達している。このため、クリーニング時には、増粘などしたインクを排出するために必要とされる量のインクを適切に噴射することが可能とされる。
また、図10に示すタイミングチャートにおいて、第4のタイミングt14から第5のタイミングt15までの間では、第1加圧供給部100のダイアフラムポンプ130が吐出期間DTであるときに、第2加圧供給部200のダイアフラムポンプ230も吐出期間DTとなっている。すなわち、第1加圧供給部100のダイアフラムポンプ130が吐出期間DTであるときに、第2加圧供給部200のダイアフラムポンプ230はインクを吐出している。さらに、図10に示す第2のインク供給モードにおいて、各ダイアフラムポンプ130,230がインクを同時に吐出する期間(吐出期間DT)は、図7に示す第1のインク供給モードにおいて、各ダイアフラムポンプ130,230がインクを同時に吐出する期間(重複吐出期間ODT)よりも長くなっている。こうした点で、上記の第2のインク供給モードは、複数のポンプのうち、一つのポンプの吐出期間と他の少なくとも一つのポンプの吐出期間とによって、液体噴射ヘッド側に液体を同時に供給する期間が、第1のモードよりも長く設定されて、液体を加圧供給する「第2のモード」に相当する。
また、第2のインク供給モードでは、第4のタイミングt14において、複数のダイアフラムポンプ130,230における吐出タイミング(第4のタイミングt14)を一致させて、インクを加圧供給している。より詳細には、第2のインク供給モードでは、複数のダイアフラムポンプ130,230における、第4のタイミングt14から第6のタイミングt16までの吐出期間DTを一致させて、インクを加圧供給している。つまり、第2のインク供給モードでは、同じ位相で複数のダイアフラムポンプ130,230が駆動されている。
上記実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)液体噴射ヘッド24におけるインクの噴射状況に応じて、複数のダイアフラムポンプ130,230におけるインクの相対的な吐出タイミングを変更することで、液体噴射ヘッド24で必要とされるインク量をインク収容体31から供給することができる。したがって、液体噴射ヘッド24で噴射しようとするインク量に応じた量のインクを安定的に供給することができる。
(2)液体噴射ヘッド24で定常的にインクの噴射が継続される場合には、第1のインク供給モードでインクを加圧供給することで、液体噴射ヘッド24で必要とされる量のインクを安定的に供給することができる。その一方、液体噴射ヘッド24で多量のインクを一時的に噴射する場合には、第1のインク供給モードよりも各ダイアフラムポンプ130,230がインクを同時に吐出する期間が長い第2のインク供給モードでインクを加圧供給することで、液体噴射ヘッド24で必要とされる量のインクを供給することができる。
(3)第1のインク供給モードでインクを加圧供給する際に、一つのダイアフラムポンプ130の吐出期間DTが終了する前に、他のダイアフラムポンプ230の吐出期間DTが開始される。一方、第1のインク供給モードでインクを加圧供給する際に、一つのダイアフラムポンプ230の吐出期間DTが終了する前に、他のダイアフラムポンプ130の吐出期間DTが開始される。このため、液体噴射ヘッド24にインクを供給するダイアフラムポンプ130,230が、一つのダイアフラムポンプ130,230から他のダイアフラムポンプ130,230に切り替わる際に、インクの供給が停止することがない。したがって、液体噴射ヘッド24で定常的にインクの噴射が継続される場合に、必要とされる量のインクをより安定的に連続して供給することができる。
(4)2つのダイアフラムポンプ130,230を有する加圧供給部40において、両方のダイアフラムポンプ130,230が同時に吸引期間VTになることを回避するとともに、両方のダイアフラムポンプ130,230の吐出期間DTの一部を重複させることができる。液体噴射ヘッド24で定常的にインクの噴射が継続される場合には、必要とされる量のインクをさらに安定的に連続して供給することができる。
(5)第2のインク供給モードでインクを加圧供給させることで、一時的に多量のインクを液体噴射ヘッド24に供給することができる。このため、液体噴射ヘッド24で一時的に多量のインクを噴射する場合にも、同液体噴射ヘッド24で必要とされるインクの量を供給することができる。
(6)用紙STに対するインクの噴射や、インクの強制吐出によるメンテナンスといった、インクを噴射する目的に応じて、インクを加圧供給するインク供給モードを選択することで、目的に適したインク量を液体噴射ヘッド24に供給することができる。
(7)例えば、ピストンポンプなどの他の往復ポンプを用いた場合と比較して、ポンプを複数並設したときに省スペース化を図ることができる。
(8)第2のインク供給モードで、インクを噴射せずに貯留部25にインクを供給することで、接続チューブ27及び供給チューブ29内を高圧状態で維持できる。これによれば、例えば、プリンター11の電源をオフにする前に、接続チューブ27及び供給チューブ29内を高圧状態とすることで、インク中に含まれる気泡を各チューブ27,29の外に加圧脱泡させることができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・加圧供給部100,200(ダイアフラムポンプ130,230)は、3つ以上設けてもよい。
・ダイアフラムポンプ130,230において、吸引期間VTと吐出期間DTは等しい期間としてもよいし、吐出期間DTよりも吸引期間VTのほうが短い期間としてもよい。ただし、この場合には、加圧供給部40は、ダイアフラムポンプを3つ以上備えていることが望ましい。
・ダイアフラムポンプ130,230のポンプ室132,232の容積は同じでなくてもよい。
・インクを吸引する際に、必ずしもダイアフラムポンプ130,230のダイアフラム131,231を上死点まで変位させなくてもよいし、インクを吐出する際に、必ずしもダイアフラムポンプ130,230のダイアフラム131,231を下死点まで変位させなくてもよい。さらに、インクを吸引する際に、一方のダイアフラムポンプのダイアフラムについては上死点まで変位させるようにして、他方のダイアフラムポンプのダイアフラムについては上死点まで変位させないようにしてもよい。なお、インクを吐出する際も同様である。
・第1のインク供給モードにおいて、第1加圧供給部100のダイアフラムポンプ130の吐出期間DTと第2加圧供給部200のダイアフラムポンプ230の吐出期間DTの重複する重複吐出期間ODTを設けなくてもよい。
・液体噴射ヘッド24のノズルのうちインクを噴射するノズルの数が比較的少数である場合(例えば、3割以下)には、一方の加圧供給部(例えば、第1加圧供給部100)を使用せずに、他方の加圧供給部(例えば、第2加圧供給部200)のみでインクを供給するようにしてもよい。
・分岐流路110,210は、インク収容体31から液体噴射ヘッド24までをそれぞれ独立して連通する分岐流路であってもよい。
・第1のインク供給モード及び第2のインク供給モードの何れか一方のモードを備えなくてもよい。
・第2のインク供給モードにおいて、第1加圧供給部100のダイアフラムポンプ130の吐出タイミングと第2加圧供給部200のダイアフラムポンプ230の吐出タイミングは必ずしも一致していなくてもよい。一例として、第1加圧供給部100のダイアフラムポンプ130の吐出期間DTのうちの50%以上の期間が、第2加圧供給部200のダイアフラムポンプ230の吐出期間DTと重複していればよい。
・第1のインク供給モード及び第2のインク供給モードに対して、ダイアフラムポンプ130,230の吸引開始タイミング及び吐出開始タイミングなどの駆動タイミングが異なる第3のインク供給モードを設けてもよい。
・ダイアフラムポンプ130,230は、ピストンポンプやプランジャーポンプなどの他の往復ポンプであってもよい。
・上記実施形態において、液体噴射装置は、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置であってもよい。なお、液体噴射装置から微小量の液滴となって吐出される液体の状態としては、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体は、液体噴射装置から噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体を含むものとする。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなども含むものとする。液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造等に用いられる電極材や色材等の材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置がある。また、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置であってもよい。また、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置であってもよい。