本発明の荷電制御剤(荷電制御樹脂)は、前記化学式(1)で示されるユニットAと、前記化学式(2)で示されるユニットBとの少なくとも2種類のスチレン誘導体から起因して形成される構成単位を有する共重合体であり、ユニットAが、前記共重合体中、0.1〜15mol%含まれる共重合体を、有効成分として含有しているものである。
この共重合体である荷電制御樹脂は、少なくとも2種類のスチレン誘導体から起因する構成単位、ユニットAとユニットBとを含有していればよく、その他の構成単位として、例えば、ビニル基含有単量体から起因する構成単位であるユニットCを含有していてもよい。
その機能は、用いる樹脂への分散性が良好であるほど、例えば、粒子が小さければ小さいほど、また、用いる樹脂に対して相溶性が高ければ高いほど、より好ましくは分子レベルで樹脂へ分散されることが可能なほど、最大限に発揮させることができる。
荷電制御樹脂の主構成単位となるスチレン誘導体は、用いる樹脂に対して相溶性が良好な構造部分をもたせることにより、樹脂へ分子レベルで均一に分散させることができる。このことにより、スチレン誘導体の持つ帯電能力を、最小添加量で最大限に発揮することが可能である。更に、スチレン誘導体を単量体とする共重合体やその共重合体を有するスチレン系樹脂にすることによって、用いる樹脂が、同様または類似の組成で構成されている各用途において、樹脂への相溶性が改善され、均一に分散させ、良好な組成物が得られる。
このため、荷電制御剤として用いられた場合、より格段に高く、帯電能力をいままでの荷電制御剤と比較して、大きく発揮することが可能である。また、帯電が安定し、堅牢性が向上する。
本発明の荷電制御剤の製造方法は、前記ユニットAとなるスチレン誘導体と、それとは異なるスチレン誘導体であるビニル基含有化合物との少なくとも2種類の単量体を有する反応系で重合する工程を包含する方法である。
荷電制御剤の製造方法のうち、具体的な一つの方法としては、少なくとも2種類の単量体であるビニルベンジルオキシ基含有化合物及びビニル基含有化合物を混合して、共重合させる工程を包含する方法である。
好ましくは、溶媒中で、少なくとも2種類の単量体であるビニルベンジルオキシ基含有化合物及びビニル基含有化合物と、重合開始剤とを有する反応系で溶液重合する方法が挙げられる。スチレン誘導体であるビニルベンジルオキシ基含有化合物は、荷電制御剤の有効成分である共重合体の必須構成単位のうち、ユニットAを構成するものである。同じくスチレン誘導体であるビニル基含有化合物は、荷電制御剤の有効成分である共重合体の必須構成単位のうち、ユニットBを構成するものである。
荷電制御剤の製造方法のもう一つの方法としては、ビニルフェニルハロゲン化アルキレンとその他の単量体とから重合体を得る工程と、その後、ヒドロキシ芳香族カルボン酸またはヒドロキシ芳香族カルボン酸アルキルエステルを反応して、前記化学式(1)で示される構成単位を得る工程とを少なくとも包含する方法である。
好ましくは、化学式(1)で示される構成単位となる元の単量体として、ビニルフェニルハロゲン化アルキレンと、重合開始剤とを溶媒中で混合して、その単量体を重合させて重合体を得る。その後に、ヒドロキシ芳香族カルボン酸またはヒドロキシ芳香族カルボン酸アルキルエステルを反応して、化学式(1)で示される構成単位を合成する方法が挙げられる。
ビニルフェニルハロゲン化アルキレンとしては、下記のビニルベンジルオキシ基含有化合物の合成について説明する際に例示するものと同様のものを用いることができる。またその他の単量体としては、前記例示したビニル基含有単量体と同様のものを用いることができる。
さらに、重合して共重合体を得た後、アルキルエステル化することができる。すなわち、前記化学式(1)や前記化学式(4)で示されるユニットAにおける−COOM基を、公知の方法、例えば、炭素数1〜18のアルコールと反応させることによって、アルキルエステル化する工程を包含することができる。
このスチレン誘導体は、同一分子内にビニル基を有するフェニル骨格即ちスチレン構造、及び同一分子内に−COOM基を有するフェニル骨格、即ち芳香族オキシカルボン酸の骨格構造を共に有するものである。更にこのスチレン誘導体のフェニル骨格同士が、−CH2−O−で結合されている構造である。
前記化学式(5)または化学式(9)で示されるビニルベンジルオキシ基含有化合物は、より具体的な例として、下記化学式(5−a)を用いて、表1〜表3に挙げられる。なお、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
これらのビニルベンジルオキシ基含有化合物は、公知の方法を用いて合成することができる。例えば、実験化学講座第4版(日本化学会編、丸善株式会社発行)第187頁記載のWilliamson反応を用いて、容易に合成することができる。具体的には、溶媒中で、置換基を有するまたは有しないビニルフェニルハロゲン化アルキレンと、置換基を有するまたは有しないヒドロキシ芳香族カルボン酸または特定のジヒドロキシ芳香族カルボン酸及びそのアルキルエステル、好ましくはヒドロキシ安息香酸及びそのアルキルエステルとを、反応させることによって、スチレン誘導体であるビニルベンジルオキシ基含有化合物を合成するものである。その一例を、下記反応式(I)に示す。また、置換基を有するまたは有しないビニルフェニルハロゲン化アルキレンと、置換基を有するまたは有しないジヒドロキシ芳香族カルボン酸とは、各成分を、1種類選択して反応させたり、または各成分を、2種類以上を組合せて、混合して反応させたりすることができる。更に、−COOM基のMが、水素原子またはアルカリ金属であるスチレン誘導体を、公知の方法、例えば、炭素数1〜18のアルコールと反応することによって、ビニルベンジルオキシ基含有化合物のアルキルエステルを得ることができる。炭素数1〜18のアルコールとしては、具体的に、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−エチルヘキサノール、2−エチルヘキサノール、1−ノニルアルコール、1−デシルアルコールなどを例示することができる。その中でも入手の容易な点や反応しやすい点を考慮すると、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノールが好ましい。
置換基を有するまたは有しないビニルフェニルハロゲン化アルキレンとしては、具体的に、4−(クロロメチル)スチレン、4−(ブロモメチル)スチレン、3−メトキシ−4−(クロロメチル)スチレン、3−メトキシ−4−(ブロモメチル)スチレン、2−ヒドロキシ−4−(クロロメチル)スチレン、2−ヒドロキシ−4−(ブロモメチル)スチレン、3−ブロモ−4−(クロロメチル)スチレン、3−ブロモ−4−(ブロモメチル)スチレン、2−メトキシ−4−(クロロメチル)スチレン、2−メトキシ−4−(ブロモメチル)スチレン、2−クロロ−4−(クロロメチル)スチレン、2−クロロ−4−(ブロモメチル)スチレン、3−フルオロ−4−(クロロメチル)スチレン、3−フルオロ−4−(ブロモメチル)スチレン、2−ブロモ−4−(クロロメチル)スチレン、2−ブロモ−4−(ブロモメチル)スチレン、3−tert−ブチル−4−(クロロメチル)スチレン、3−tert−ブチル−4−(ブロモメチル)スチレン、3−イソオクチル−4−(クロロメチル)スチレン、3−イソオクチル−4−(ブロモメチル)スチレン、3−イソプロピル−4−(クロロメチル)スチレン、3−イソプロピル−4−(ブロモメチル)スチレン、3−メチル−4−(クロロメチル)スチレン、3−メチル−4−(ブロモメチル)スチレン、3−エトキシ−4−(クロロメチル)スチレン、3−エトキシ−4−(ブロモメチル)スチレン、3−カルボキシ−4−(クロロメチル)スチレン、3−カルボキシ−4−(ブロモメチル)スチレンなどのp−含ハロゲンメチルスチレン誘導体;3−(クロロメチル)スチレン、3−(ブロモメチル)スチレン、5−メチル−3−(クロロメチル)スチレン、5−メチル−3−(ブロモメチル)スチレン、5−イソプロピル−3−(クロロメチル)スチレン、5−イソプロピル−3−(ブロモメチル)スチレン、5−イソオクチル−3−(クロロメチル)スチレン、5−イソオクチル−3−(ブロモメチル)スチレン、5−メトキシ−3−(クロロメチル)スチレン、5−メトキシ−3−(ブロモメチル)スチレン、4−エトキシ−3−(クロロメチル)スチレン、4−エトキシ−3−(ブロモメチル)スチレン、4−カルボキシ−3−(クロロメチル)スチレン、4−カルボキシ−3−(ブロモメチル)スチレン、5−ヒドロキシ−3−(クロロメチル)スチレン、5−ヒドロキシ−3−(ブロモメチル)スチレン、4−ヒドロキシ−3−(クロロメチル)スチレン、4−ヒドロキシ−3−(ブロモメチル)スチレン、4−メトキシ−3−(クロロメチル)スチレン、4−メトキシ−3−(ブロモメチル)スチレン、5−クロロ−3−(クロロメチル)スチレン、5−クロロ−3−(ブロモメチル)スチレン、4−ブロモ−3−(クロロメチル)スチレン、4−ブロモ−3−(ブロモメチル)スチレン、2−ブロモ−3−(クロロメチル)スチレン、2−ブロモ−3−(ブロモメチル)スチレン、5−tert−ブチル−3−(クロロメチル)スチレン、5−tert−ブチル−3−(ブロモメチル)スチレンなどのm−含ハロゲンメチルスチレン誘導体;2−(クロロメチル)スチレン、2−(ブロモメチル)スチレン、3−tert−ブチル−2−(クロロメチル)スチレン、3−tert−ブチル−2−(ブロモメチル)スチレン、4−クロロ−2−(クロロメチル)スチレン、4−クロロ−2−(ブロモメチル)スチレンなどのo−含ハロゲンメチルスチレン誘導体などが挙げられる。
置換基を有するまたは有しないヒドロキシ芳香族カルボン酸としては、具体的に、3−ヒドロキシ安息香酸、5−メチル−3−ヒドロキシ安息香酸、5−エチル−3−ヒドロキシ安息香酸、4−エチル−3−ヒドロキシ安息香酸、5−イソプロピル−3−ヒドロキシ安息香酸、6−イソプロピル−3−ヒドロキシ安息香酸、5−n−ブチル−3−ヒドロキシ安息香酸、5−tert−ブチル−3−ヒドロキシ安息香酸、5−sec−ブチル−3−ヒドロキシ安息香酸、5−イソヘプチル−3−ヒドロキシ安息香酸、5−イソヘキシル−3−ヒドロキシ安息香酸、5−イソオクチル−3−ヒドロキシ安息香酸、5−フルオロ−3−ヒドロキシ安息香酸、5−クロロ−3−ヒドロキシ安息香酸、5−ブロモ−3−ヒドロキシ安息香酸、5−フルオロ−4−メトキシ−3−ヒドロキシ安息香酸、4−メトキシ−3−ヒドロキシ安息香酸、4−エトキシ−3−ヒドロキシ安息香酸、4−フルオロ−5−メトキシ−3−ヒドロキシ安息香酸、6−ブトキシ−3−ヒドロキシ安息香酸などのm−ヒドロキシ安息香酸誘導体、及びその炭素数1〜18のアルキルエステル;4−ヒドロキシ安息香酸、6−メチル−4−ヒドロキシ安息香酸、6−エチル−4−ヒドロキシ安息香酸、6−イソプロピル−4−ヒドロキシ安息香酸、6−tert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、6−sec−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、6−イソヘキシル−4−ヒドロキシ安息香酸、6−イソヘプチル−4−ヒドロキシ安息香酸、6−イソオクチル−4−ヒドロキシ安息香酸、5−n−プロピル−4−ヒドロキシ安息香酸、5−メトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、6−ブトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、6−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、6−ブロモ−4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヨード−4−ヒドロキシ安息香酸、5−エトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、5−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、5−ブロモ−4−ヒドロキシ安息香酸、5,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−イソオクチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3−フルオロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3−ブロモ−4−ヒドロキシ安息香酸などのp−ヒドロキシ安息香酸誘導体、及びその炭素数1〜18のアルキルエステル;2−ヒドロキシ安息香酸、3−メチル−2−ヒドロキシ安息香酸、3−イソプロピル−2−ヒドロキシ安息香酸、3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ安息香酸、3−クロロ−2−ヒドロキシ安息香酸、3−ブロモ−2−ヒドロキシ安息香酸、6−メトキシ−2−ヒドロキシ安息香酸、6−エトキシ−2−ヒドロキシ安息香酸などのo−ヒドロキシ安息香酸誘導体、及びその炭素数1〜18のアルキルエステルなどが挙げられる。
置換基を有するまたは有しない特定のジヒドロキシ芳香族カルボン酸としては、具体的に、3,5−ジヒドロキシ安息香酸などの3,5−ジヒドロキシ安息香酸誘導体、及びその炭素数1〜18のアルキルエステル;3,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−クロロ−3,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−メトキシ−3,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−n−プロピル−3,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−n−ブチル−3,4−ジヒドロキシ安息香酸などの3,4−ジヒドロキシ安息香酸誘導体、及びその炭素数1〜18のアルキルエステルなどが挙げられる。
反応溶媒としては、具体的に、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、エチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのような、アルコール系、エーテル系、及びグリコール系有機溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスホキシドなどの非プロトン性極性溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル類;ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類;トリクロロエチレン、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類で例示される有機溶媒が挙げられる。
また、本発明に用いるスチレン誘導体であるビニルベンジルオキシ基含有化合物の合成反応では、反応の促進とエーテル結合形成の際に、副生するハロゲン化水素を捕捉するために、塩基を添加することが好ましい。
この合成で用いることのできる塩基としては、溶媒や基質と反応し、反応系を複雑化させないものであれば特に限定されない。例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸ルビジウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属の水素化物を挙げることができる。
このようにして得られたスチレン誘導体であるビニルベンジルオキシ基含有化合物は、共重合体の単量体として用いられるものであり、荷電制御をコントロールできるスチレンモノマーとしても有用である。このスチレン誘導体から得られた構成単位を含む共重合体は、荷電制御樹脂として働き、荷電制御剤の有効成分となる。この荷電制御樹脂は、スチレン誘導体から得られた構成単位を有するものであって、前記化学式(1)で示される構成単位の他に、前記化学式(3)で示される構成単位を有する共重合体を含有するものである。また、この共重合体は、その他の単量体と重合した共重合体であってもよい。また、これらの共重合体の他に別なスチレン系樹脂を含んでいてもよい。この構成単位は、各スチレン誘導体が重合または共重合したスチレン系樹脂が有する繰返単位であってもよい。
ビニル芳香族炭化水素としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2−プロピルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、2−イソプロピルスチレン、3−イソプロピルスチレン、4−イソプロピルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、2−メチル−α−メチルスチレン、3−メチル−α−メチルスチレン、4−メチル−α−メチルスチレン、2−エチル−α−メチルスチレン、3−エチル−α−メチルスチレン、4−エチル−α−メチルスチレン、2−プロピル−α−メチルスチレン、3−プロピル−α−メチルスチレン、4−プロピル−α−メチルスチレン、2−イソプロピル−α−メチルスチレン、3−イソプロピル−α−メチルスチレン、4−イソプロピル−α−メチルスチレン、2−クロロ−α−メチルスチレン、3−クロロ−α−メチルスチレン、4−クロロ−α−メチルスチレン、2,3−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、2,3−ジエチルスチレン、3,4−ジエチルスチレン、2,4−ジエチルスチレン、2,5−ジエチルスチレン、2−メチル−3−エチルスチレン、2−メチル−4−エチルスチレン、2−クロロ−4−メチルスチレン、2,3−ジメチル−α−メチルスチレン、3,4−ジメチル−α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチル−α−メチルスチレン、2,3−ジエチル−α−メチルスチレン、3,4−ジエチル−α−メチルスチレン、2,4−ジエチル−α−メチルスチレン、2,5−ジエチル−α−メチルスチレン、2−エチル−3−メチル−α−メチルスチレン、2−メチル−4−プロピル−α−メチルスチレン、2−クロロ−4−エチル−α−メチルスチレン、2−メトキシスチレン、3−エトキシスチレン、4−エトキシスチレン、2−イソプロキシスチレンなどが挙げられる。これらのビニル芳香族炭化水素は、ユニットBを構成する単量体として、単独で用いてもよく、2種類以上を組合せて用いてもよい。これらのビニル芳香族炭化水素のなかでも、スチレンが好ましい。
本発明の荷電制御剤(荷電制御樹脂)の製造方法は、その単量体として、前記化学式(5)で示されるビニルベンジルオキシ基含有化合物と、前記化学式(7)で示されるビニル基含有化合物との他に、それらと異なるビニル基含有単量体を有することができる。つまり、前記化学式(5)または(9)で示されるビニルベンジルオキシ基含有化合物、及び前記化学式(7)で示されるビニル基含有化合物である2種類のスチレン誘導体と、その他の異なるビニル基含有単量体とを単量体として、重合開始剤と共に混合し、それらの単量体を重合させて共重合体を得る。この反応系の一例を下記反応式(II)に示す。
本発明に用いるその他のビニル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸−3−(メチル)ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルメチルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルトルエンなどの1官能ビニル基含有単量体;ジビニルベンゼン、ジエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの2官能ビニル基含有単量体;3個以上の反応性ビニル基を有する単量体などが挙げられる。これらの単量体を単独で、または2種類以上を併用して使用することができる。なお、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸またはメタクリル酸(アクリル酸のα−メチル誘導体であるα−メチルアクリル酸)を示す。これらの酸(塩)とはこれらの遊離の酸またはこれらの酸の金属塩を示す。(メタ)アクリレートも同様にアクリレートまたはメチルアクリレートを示す。
更に本発明に用いるビニル基含有単量体として、親水性不飽和単量体が挙げられる。親水性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(塩);(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;エチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸(塩)、プロピル(メタ)アクリルアミドスルホン酸(塩)、tert−ブチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸(塩)などのアルキル(メタ)アクリルアミドスルホン酸またはそのエステル;スチレンスルホン酸(塩)、メタリルスルホン酸(塩)、アクリロイルモルホリン、アクリロニトリル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸イソブチル、イタコン酸、フマル酸などが挙げられる。これらの単量体を単独用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。これらの単量体のうち、(メタ)アクリル酸(塩)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、tert−ブチルアクリルアミドスルホン酸(塩)、スチレンスルホン酸(塩)などであることが好ましい。なお、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸またはメタクリル酸(アクリル酸のα−メチル誘導体であるα−メチルアクリル酸)を示す。これらの酸(塩)とはこれらの遊離の酸またはこれらの酸の金属塩を示す。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル類や、アクリル酸及びその塩、メタクリル酸(アクリル酸のα−メチル誘導体であるα−メチルアクリル酸)及びその塩、並びにその親水性基置換アルキルエステルをビニル基含有単量体として用いることができる。これらの化合物を、下記化学式(10)に示す。
前記化学式(10)に示される化合物から得られた構成単位を下記化学式(11)に示す。この構成単位は、本発明の荷電制御剤において、必須構成単位であるユニットA及びユニットBとともに、その有効成分である共重合体を構成するユニットCとなる。
その重合法としては、公知の溶液重合、懸濁重合、乳化重合、分散重合、沈殿重合、塊状重合などのいずれの方法を用いることも可能であり、特に限定されるものではない。
溶液重合としては、本発明に用いられるスチレン誘導体のようなビニル基をもつモノマーのラジカル重合を行う際に用いられる方法の一つである。生成するポリマーが可溶な溶媒にモノマー及び開始剤を溶解させて、加熱して重合を行う方法である。開始剤としては、モノマーまたは溶媒に可溶な過酸化ベンゾイルやアゾビスイソブチロニトリルなどが用いられる。溶液重合の特徴は、塊状重合に比べて重合度及び重合速度が小さく、重合系において発生する重合熱が、周囲の溶媒に除かれるので重合温度の調節が容易である。溶液重合は重合終了後そのままポリマー溶液として使用する場合は極めて有用であるが、ポリマーを固体として取出すには、溶媒を除去し、ポリマーを回収する必要がある。
塊状重合としては、本発明に用いられるスチレン誘導体のようなビニル基をもつモノマーのラジカル重合を行う際に用いられる方法の一つである。溶媒を用いないで、ビニルモノマー同士だけをそのまま、または少量の開始剤を加えて、加熱して重合を行う方法である。開始剤としては、モノマーに可溶な過酸化ベンゾイルやアゾビスイソブチロニトリルなどが用いられる。塊状重合の特徴は、重合速度が大きく、比較的純粋なポリマーが塊状で得られることである。この反応の問題点としては、重合熱を取り除くことが困難であるため、局部加熱が生じるなど重合温度の制御がむずかしく、また、生成ポリマーが固化して容器に付着するなど、後処理が面倒であるというような欠点がある。工業的には、本発明の様なスチレン系であるスチレンモノマーからの連続塊状重合によるポリスチレンのペレットの成形、ポリメタクリル酸メチルの有機ガラスの作製、ガラス繊維強化不飽和ポリエステルの硬化、金型の中での重合−成形(注型重合)などに塊状重合が採用されている。
沈殿重合としては、本発明に用いられるスチレン誘導体のようなビニル基をもつモノマーのラジカル重合を行う際に用いられる方法の一つである。モノマー及び開始剤が可溶で、生成するポリマーが溶解せず、膨潤し難い溶媒を使用して、加熱して重合を行う方法である。開始剤としては、モノマーまたは溶媒に可溶な過酸化ベンゾイルやアゾビスイソブチロニトリルなどが用いられる。重合が開始してポリマーが生成すると溶媒に不溶なために析出してくる。沈殿重合の特徴は、重合が開始し、析出したポリマーは本質的には塊状重合に近いので溶液重合に比べて重合度及び重合速度が大きいが、重合系において発生する重合熱が、周囲の溶媒に除かれるので重合温度の調節が比較的容易である。沈殿重合は重合終了後単離、乾燥すればポリマー単体を得ることができ、懸濁重合や乳化重合のような懸濁安定剤や乳化剤を使用しないため、純粋なポリマーを得ることができる。
懸濁重合としては、本発明に用いられるスチレン誘導体のようなビニル基をもつモノマーのラジカル重合を行う際に用いられる方法の一つである。媒体(主として水)に不溶なモノマーを媒体中で激しくかき混ぜると分散、懸濁し、0.01〜1mmの大きさの液滴となる。これにモノマーに可溶な開始剤(例:過酸化ベンゾイルやアゾビスイソブチロニトリルなど)を加えて行う重合が懸濁重合である。また、ポリウレタンのような重付加反応を懸濁状態で行う場合もある。この重合方法では、モノマーの液滴中で進行し、粒子状のポリマーが得られる。例えば、モノマーとして、酢酸ビニル、スチレン、メタクリル酸メチルなどを用いて懸濁重合させると、真球状の粒子が得られるので、このような場合はパール重合と呼ばれる。液滴内での重合は、本質的には塊状重合と同じであり、重合速度及び重合度は大きい。懸濁重合では、重合が進行すると、モノマーの液滴はモノマーを溶媒とするポリマーの濃厚な溶液となり、液滴同士が粘着しやすくなる。そのため重合は、よく分散するように激しく攪拌しながら行う必要があり、また液滴を安定化するために、ゼラチン、デンプン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースのような水溶性ポリマーや、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの不溶性粉末を加える。また、生成ポリマーの粒子の大きさは、攪拌速度によっても変化する。また、重合中に発生する重合熱は、周囲の媒体によって除かれるので局部過熱が起こらず、温度の調節が容易である。懸濁重合は、重合度の大きいポリマーが得られ、また生成ポリマーの単離が容易であるので、成形材料用のポリマー、例えばポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニルなどを得る目的で、工業的製造法として多く利用されている。本発明に用いる重合法としては、溶液重合、沈殿重合、塊状重合が好ましい。
重合反応後の後処理工程として公知の精製工程や分離抽出工程を行うことができる。例えば、有機溶剤を用いた分離や濾過して得る工程や溶剤精製、再沈殿するなどの精製工程を設けることが好ましい。また、溶媒を加えず塊状重合も例示できる。
前記単量体の各成分を重合する際に用いることのできる重合開始剤としては、過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤、レドックス系開始剤など様々なものが適宜使用できる。また、重合開始剤を加えなくとも加熱などで重合(自然重合)させてもよい。
過酸化物系重合開始剤としては、有機系として、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイドが挙げられ、無機系として、過硫酸塩、過酸化水素などが挙げられる。具体的には、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ヘキシルパーオキシアセテート、tert−ヘキシルパーオキシラウレート、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシイソブチレート、tert−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルオキシモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、ビス(tert−ブチルパーオキシ)イソフタレート、tert−ブチルパーオキシマレイックアシッド、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3、イソブチリルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;1,1−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−tert−ヘキシルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ジ−tert−ブチルパーオキシブタンなどのパーオキシケタール;ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド;その他としてtert−ブチルパーオキシアリルモノカーボネートなどが挙げられる。
アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルなどが挙げられる。
レドックス系開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩開始剤とメタ亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤との組合せ;有機過酸化物と第3級アミンとの組合せ、例えば、過酸化ベンゾイルとジメチルアニリンとの組合せ、クメンヒドロパーオキサイドとアニリン類との組合せ;有機過酸化物と遷移金属との組合せ、例えば、クメンヒドロパーオキシドとコバルトナフテートとの組合せなどが挙げられる。
これらの重合開始剤は、単独で用いてもよく、必要に応じて2種類以上を併用して用いてもよい。重合開始剤の使用量は、単量体100重量部に対し、0.1〜20重量部であることが好ましい。
重合反応に用いる溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル類;ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類;トリクロロエチレン、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類;エチルエーテル、ジメチルグリコール、トリオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;メチラール、ジエチルアセタールなどのアセタール類;メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコール、モノブチルエーテルなどのエーテルアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスホオキシドなどの非プロトン性極性溶媒、ニトロプロペン、ニトロベンゼンなどの硫黄及び/または窒素含有有機化合物類が挙げられる。これらの溶媒は、単独で、または2種類以上を混合して用いることができる。
これらの単量体から構成される共重合体について、前記化学式(1)または化学式(4)で示されるユニットAと、前記化学式(3)または化学式(8)で示されるユニットBと、更に必要に応じ加えられるビニル基含有単量体から得られた構成単位として前記化学式(11)で示されるユニットCとの各構成単位の組合せによる共重合体例を、表4に示す。ここで、前記化学式(1)または化学式(4)で示されるユニットAは、前記化学式(5)または化学式(9)で示されるスチレン誘導体から得られる。同じく、前記化学式(3)または化学式(8)で示されるユニットBは、前記化学式(7)で示されるスチレン誘導体から得られる。更に、前記化学式(11)で示されるユニットCは、前記化学式(10)で示されるビニル基含有単量体のうちそれぞれ異なる単量体αや単量体βから得られる。本発明の範囲はこれらの例に限定されるものではない。
前記表4において、単量体αと単量体βとはそれぞれ異なるビニル基含有単量体である。また、化学式(1)及び化学式(1’)と、化学式(3)及び化学式(3’)と、化学式(11)及び化学式(11’)とは、それぞれ前記化学式(1)、化学式(3)及び化学式(11)に示される化合物であって、各化学構造の置換基が異なるものを示す。
前記化学式(5)及び化学式(7)に示されるスチレン誘導体、異なるビニル基含有単量体である単量体α及び単量体β、重合開始剤、及び溶媒の各組合せによる重合反応例について具体的に表5に示す。本発明の範囲はこれらの例に限定されるものではない。
式(5)のスチレン誘導体は、前記表1〜3に例示した化合物例である。また、tert−をt−、テトラヒドロフランをTHF、N,N−ジメチルホルムアミドをDMFとして略記する。
荷電制御樹脂の共重合体は、スチレン誘導体から起因する構成単位である前記化学式(1)または化学式(4)で示されるユニットAを、0.1〜15mol%含んでいると好適である。更に帯電性を考慮すると、0.1〜9.7mol%含んでいると好ましく、2〜8mol%含んでいるとより好ましい。
荷電制御樹脂の共重合体は、ガラス転移温度が70℃〜150℃であることが好ましい。更に80℃〜130℃がより好ましい。この荷電制御樹脂を含有する静電荷像現像用トナーや高分子化合物を溶融混練にて作成する場合、荷電制御樹脂の共重合体であるスチレン系樹脂の流動性が増加するガラス転移温度以上で溶融混練することにより、バインダー樹脂、例えば、トナー用樹脂への相溶性がより高くなり、荷電制御樹脂の共重合体であるスチレン系樹脂を均一に分散させることができるため、帯電能力をより効率的に発揮させることができる。
荷電制御樹脂の共重合体の数平均分子量(Mn)は、3000〜50000、重量平均分子量(Mw)は、4000〜500000の範囲になり、更に重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除算する分子量分布としての目安となるMw/Mnは、1〜25であることが好ましい。更に、数平均分子量(Mn)が4000〜50000、重量平均分子量(Mw)が5000〜40000の範囲になり、更に分子量分布(Mw/Mn)が、1〜20であるとより好ましい。Mw/Mnの値が1.0に近ければ、より単分散であり、バインダー樹脂への相溶性がより高くなる。そのため、スチレン系樹脂を均一に分散させることができるため、帯電能力をより効率的に発揮させることができる。
荷電制御樹脂の共重合体は、示差熱熱重量分析(TG−DTA)測定において、200℃から450℃の範囲に発熱及び重量減少が測定されることが好ましい。更に250℃から400℃の範囲に発熱及び重量減少が測定されることが好ましい。発熱と重量減少とが同時に観測される温度は、スチレン系樹脂が燃焼分解する温度であり、バインダー樹脂への添加後の加熱分散処理する時の温度以上の必要がある。
荷電制御樹脂の共重合体のフローテスターによる軟化温度(Ts)と流出開始温度(Tfb)との温度差ΔT(ΔT=Tfb−Ts)は、特に制限はなく、適宜選択することができるが、40℃以下であると好ましく、特に30℃以下であると好ましい。前記ΔTが、40℃を超えると、バインダー樹脂への相溶性が悪くなる。そのため、スチレン系樹脂を均一に分散させることができなくなり、帯電能力をより効率的に発揮させることができない。
前記共重合体のフローテスターによる流出開始温度(Tfb)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、130℃〜180℃であると好ましい。流出開始温度(Tfb)がこの範囲であると、バインダー樹脂への相溶性が良くなり、スチレン系樹脂を均一に分散させることができるため、帯電能力をより効率的に発揮させることができる。
また、共重合体のフローテスターによる軟化温度(Ts)と流出開始温度(Tfb)とを前記の好ましい範囲とすることにより、帯電能力をより効率的に発揮させることができる。
本発明の荷電制御剤(荷電制御樹脂)は、静電荷像現像用トナーや粉体塗料などに含有させるものである。荷電制御剤(荷電制御樹脂)が静電荷像現像用トナーや粉体塗料に含有されることで、それらに荷電制御機能を発生させる。
荷電制御剤が、静電荷像現像用トナー中において、用いられる樹脂100重量部に対して、0.1乃至10重量部配合されたものであることが望ましい。更に荷電制御剤のより好ましい配合量は、用いられる樹脂100重量部に対して、0.5乃至7重量部である。
トナー用樹脂としては、公知のトナー用樹脂(結着樹脂)を用いることができ、例えば、スチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ビニルメチルエーテル樹脂、スチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらのトナー用樹脂は、単独で、または2種類以上を混合して用いることができる。
なお、本発明の荷電制御剤(荷電制御樹脂)は、静電粉体塗料に含有させて樹脂粉体の電荷の制御(増強)のために用いることもできる。その場合の塗料用樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などの熱可塑性樹脂、及びフェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの塗料用樹脂は、単独で、または2種類以上を混合して用いることができる。
トナーに用い得る着色剤として種々の染料や顔料を、それぞれ単独でまたは2種類以上を配合して使用することができる。用い得る着色剤としては、例えば、モノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、アゾメチンイエロー、キノフタロンイエロー、キノリンイエロー、イソインドリノンイエロー、ペリノンオレンジ、ペリノンレッド、ペリレンマルーン、ローダミン6Gレーキ、キナクリドンレッド、アンスアンスロンレッド、ローズベンガル、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、ジケトピロロピロール系顔料などの有機顔料;カーボンブラック、チタンホワイト、チタンイエロー、群青、コバルトブルー、べんがら、アルミニウム粉、ブロンズなどの無機顔料及び金属粉;アゾ染料、キノフタロン系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、インドフェノール系染料、インドアニリン系染料などの各種の油溶性染料や分散染料の他、ロジン、ロジン変性フェノール、ロジン変性マレイン酸などの樹脂により変性されたトリアリールメタン系染料及びキサンテン系染料などが挙げられる。これらの着色剤は単独で、または2種類以上を混合して用いることができる。
トナーは、一般の公知の製造方法を用いて製造することができる。例えば、静電荷像現像用トナーの製造方法は、前記のようなトナー用樹脂、着色剤、及び本発明の荷電制御剤(荷電制御樹脂)、並びに必要に応じて磁性材料(例えば、鉄、コバルト、フェライトなどの強磁性材料製の微粉体)、流動性改質剤(例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン)、オフセット防止剤(例えば、ワックス、低分子量のオレフィンワックス)、分散安定剤、光安定剤などをボールミルその他の混合機により十分混合する。その後、その混合物を加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーなどの熱混練機を用いて溶融混練する。その後、その混練物を冷却固化させた後、その固化物を粉砕及び分級することにより、所望に応じて平均粒径1〜20μmのトナーを得ることができる。
本発明の荷電制御剤(荷電制御樹脂)は、荷電制御または増強の目的で増強剤として利用することができる。さらに、この増強剤及び樹脂を含んでなる静電塗装用粉体塗料を提供することができる。静電塗装用粉体塗料は、増強剤として本発明の荷電制御剤の1種類を含むものであってもよく、複数種類を含むものであってもよい。増強剤の好ましい配合量は、樹脂100重量部に対し、0.1乃至10重量部、そのより好ましい配合量は、樹脂100重量部に対し、0.5乃至5重量部である。この静電塗装用粉体塗料に使用し得る樹脂及び着色剤は、前記トナーで記載したものを例示することができる。
この静電塗装用粉体塗料は、耐環境性と耐久性とに優れ、この粉体塗料によれば、塗着効率がほぼ100%に近く、しかも塗膜性能が向上し、塗膜欠陥のない厚膜を形成することができる。増強剤が無色または淡色であるため、塗膜の色調障害が生じ難い。
この静電塗装用粉体塗料は、一般の公知の製造方法を用いて製造できる。例えば、静電塗装用粉体塗料の製造方法は、本発明の荷電制御剤を利用した増強剤及び樹脂、並びにその用途や目的に応じ、着色剤、流動性改質剤、静電塗装用粉体塗料、充填剤、硬化剤及び可塑剤などを添加し、ボールミルその他の混合機で均一に混合する。その後、その混合物を、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーなどの熱混練機を用いて溶融混練する。その後、冷却固化後、粉砕及び分級することにより、粒度範囲10乃至250μmなどの所要粒径の静電塗装用粉体塗料を得ることができる。
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
本発明の荷電制御剤(荷電制御樹脂)について、その有効成分である共重合体の合成と共に実施例に示し、本発明の適用外である重合体を用いた荷電制御剤について比較例に示す。
(実施例1)
1−(1) 単量体の合成(式(A1)に示すビニルベンジルオキシ基含有化合物)
p−ヒドロキシ安息香酸100.0gをメタノール710mLに溶解させ、炭酸カリウム147.8gを加えて67℃に加熱した。この反応液に4−(クロロメチル)スチレン113.8gを21分間で滴下し、67℃にて12時間反応させた。この反応液を冷却後、減圧下メタノールを留去し、ヘキサンにて洗浄した。濾過後、残渣をpH=2の水1.5Lに分散させ、酢酸エチルを加えて抽出した。その後、水洗し、酢酸エチル層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。その後、メタノールに溶解させ水に滴下し、再沈殿させ析出物を濾過した。この再沈殿操作を2回繰り返し、残渣を80℃にて48時間乾燥させ、スチレン誘導体(A1)63.5gを得た(収率=35.2%)。
得られたスチレン誘導体(A1)の純度を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC 株式会社島津製作所製 検出器:SPD−M20A、カラムオーブン:CTO−20A、ポンプ:LC−20AT、デガッサー:DGU−20A3)により、以下の測定条件にて測定を行い、純度94.6%を確認した。
HPLC測定条件:サンプル3mgをテトラヒドロフラン(THF)10mLに溶解させ、30分超音波し、ポア径が0.5μmの耐溶剤性メンブランフィルターで濾過してサンプル溶液とし、以下の条件で測定した。
カラム:L−Column ODS (4.6×250mm)、カラムオーブン温度:40℃、流速:1.0mL/分、試料注入量:3μL、検出波長:254nm、
溶離液−(1):THF:0.05M−CH3COONH4水溶液=4:6
溶離液−(2):THF:0.05M−CH3COONH4水溶液=6:4
溶離液−(1):溶離液−(2)=100:0→(20分)→0:100
得られたスチレン誘導体(A1)について、1H−核磁気共鳴装置(NMR 日本電子株式会社製 FT−NMR JNM−AL300)を用い、共鳴周波数:300MHz、測定核種:1H、使用溶媒:重DMSO、測定温度:室温の条件で測定した。1H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A1)で示す構造を支持する。1H−NMRの測定結果を図1に示す。
δ(ppm)=5.17(2H、s、−CH2−)、5.26(1H、d、C−H)、5.83(1H、d、C−H)、6.73(1H、d−d、−CH=)、7.08(2H、d、Ar−H)、7.45(4H、d−d、Ar−H)、7.87(2H、d、Ar−H)。
前記1H−NMRにおいて、5.17ppm(2H、s、−CH2−)のプロトンに照射したところ、7.08(2H、d、Ar−H)の芳香族プロトンに13.5%の核オーバーハウザー効果(NOE)が観測された。NOEの測定結果を図2に示す。
得られたスチレン誘導体(A1)を、元素分析測定器(パーキンエルマー社製 2400II 全自動元素分析装置 CHNS/O分析)にて炭素(C)、水素(H)、窒素(N)の重量比率を測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:75.55 H:5.52 N:0.00
理論値C:75.57 H:5.55 N:0.00
得られたスチレン誘導体(A1)を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR 日本電子株式会社製 JIR−SPX60S)を使用し、KBr法にて測定したところ、
ν(cm−1)=3435、2981、2677、2557、1678、1628、1606、1581、1514、1431、1381、1321、1306、1246、1173、1132、1119、1045、1016、991、947、904、872、849、827、771、748、731、694、648、557、509を観測した。FT−IRの測定結果を図3に示す。
得られたスチレン誘導体(A1)を、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製 TG−DTA6200 EXSTAR6000)を用い、昇温条件:30−550℃、昇温速度:10℃/分で測定した。熱重量分析−示差熱分析(TG−DTA)の測定結果を図4に示す。その測定の結果、発熱温度:190℃、536℃、重量減少温度:273℃、516℃を観測した。
得られたスチレン誘導体(A1)を、液体クロマトグラフ質量分析装置(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 LC/3DQMSシステム M−8000)にて、以下の条件で測定した。
LC/MS測定条件:
イオン化源:ESIイオン化源(FI法により測定)
キャリア:電子工業用メタノール
試料の調整方法:
試料各1mgを電子工業用メタノールにて溶解した。完全に溶解しなかった試料に関してはTHFを溶解するまで加えた。
第一細孔温度:120℃、第二細孔温度:100℃、脱溶媒温度:150℃、補助ガス温度:150℃、フォーカス電圧:20V、ドリフト電圧:20V
液体クロマトグラフ質量分析の測定結果を、質量分析の理論値及び実測値を以下に示す。
実測値:LC/MS m/z=253.1 [M−H]−
理論値:m/z=254.09
1−(2) 共重合体の合成(共重合体(B1)の合成(化学式(A1):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み))
スチレン誘導体(A1)3.99g、スチレン31.02gをトルエン21mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン21mLとtert−ブチルパーオキシイソプピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gの混合液を13分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却し、THF150mLに溶解させた。この溶液をメタノール2Lに滴下し反応物を沈殿させ、濾過し、減圧下90℃で20時間乾燥させ、共重合体(B1)を33.4g得た。
得られた共重合体(B1)について、1H−NMR(核磁気共鳴装置:日本電子株式会社製 FT−NMR JNM−AL300)を用い、共鳴周波数:300MHz 測定核種:1H、使用溶媒:重CDCl3、測定温度:室温の条件で測定した。その1H−NMRの測定結果を図5に示す。
共重合反応前のスチレン及び前記化学式(A1)で示されるスチレン誘導体(A1)の原料としてのビニル基由来のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A1)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=5.0(−CH2−O−)のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体(B1)中に、スチレン誘導体(A1)は、ピークの積分値から4.00%含有されていることを確認した。
得られた共重合体(B1)を、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計(日本電子株式会社製、JIR−SPX60S))を使用し、KBr法にて測定したところ、
ν(cm−1)=3439、3082、3059、3026、3001、2922、2848、1732、1686、1603、1581、1510、1493、1452、1423、1373、1304、1255、1180、1167、1088、1070、1028、964、945、906、847、822、756、698、669、633、619、540、459、440を観測した。そのFT−IRの測定結果を図6に示す。
得られた共重合体(B1)は、前記化学式(1)で示されるユニットAに対応するユニット(A−1)と、前記化学式(3)で示されるユニットBに対応するユニット(B−1)とから構成されたものである。
得られた共重合体(B1)を、TG−DTA(示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、TG−DTA6200))を用い、昇温条件:30−550℃、昇温速度:10℃/分で測定した。TG−DTAの測定結果を図7に示す。その測定の結果、発熱温度:376℃、533℃、重量減少温度:308℃、515℃を観測した。
得られた共重合体(B1)の分子量分布を、GPC(株式会社島津製作所製 検出器:RID−10A、カラムオーブン:CTO−20A、ポンプ:LC−20AT、デガッサー:DGU−20A5)により、以下の測定条件にて測定を行い、分子量分布、数平均分子量、重量平均分子量を確認した。
GPC測定条件としては、測定対象サンプル25mgをTHF5mLに溶解させ30分超音波し、ポア径が0.5μmの耐溶剤性メンブランフィルターで濾過してサンプル溶液とし、以下の条件で測定した。
カラム:超高速SEC(サイズ排除)セミミクロGPCカラム
排除限界分子量:ポリスチレン 4×106(東ソー株式会社製 TSKgel SuperHM−M) 2本
また、試料の分子量の算出にあたっては、標準スチレン系樹脂(昭和電工株式会社製 Shodex STANDARD SM−105 (S−3730、S−2480、S−1230、S−579、S−197、S−551、S−31.4、S−12.8、S−3.95、S−1.20))により作成した分子量校正曲線を使用した。
前記条件により測定された共重合体(B1)の分子量分布の測定結果を図8に示す。その測定の結果、共重合体(B1)の数平均分子量(Mn)は8957、重量平均分子量(Mw)は39065、更に分子量分布(Mw/Mn)=4.4であることを確認した。
元素分析に於いては、原料モノマーの元素分析の測定結果と共重合体の元素分析の測定結果から、共重合体中の特定モノマーの存在比率を推定することができる。得られた共重合体(B1)について、元素分析を、スチレン誘導体(A1)を測定したときと同じ条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値C:90.03 H:7.76 N:0.00 O:2.15
理論値C:90.34 H:7.51 N:0.00 O:2.15
ここで、酸素(O)は、炭素(C)と水素(H)及び窒素(N)の値の合計値100%より除算して算出した。前記測定結果は、スチレン誘導体(A1)が共重合体中に5%含まれている場合の推定理論値と一致した。
得られた共重合体(B1)のガラス転移温度を、示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、DSC6200 EXSTAR6000)を用いて、以下の測定条件にて測定を行い、ガラス転移温度を確認した。
ガラス転位測定条件としては、測定対象サンプルを170℃まで加熱後、急冷した後、昇温条件:30−170℃、昇温速度:10℃/分で測定した。ガラス転移温度の測定結果を図9に示す。その測定の結果、共重合体(B1)のガラス転位温度は108.4℃だった。
得られた共重合体(B1)の体積固有抵抗率をアドバンテスト社製、デジタル超高抵抗:微少電流計R8340A型により、以下の測定条件にて測定を行い、体積固有抵抗率を確認した。
体積固有抵抗率の測定条件としては、JIS規格(K6911)に基づいて以下の条件で測定した。
印加電圧と時間:500V、1分間、電極:主電極38mmφ、荷重:2000kg、試験雰囲気:温度23±2℃、湿度50±5RH。測定の結果、共重合体(B1)の体積固有抵抗率が、1.25×1016Ωcmであることを確認した。
得られた共重合体(B1)の軟化温度(Ts)と流出温度(Tfb)とを、株式会社島津製作所社製「島津フローテスタ CFT−500D」により、以下の条件にて測定を行い、軟化温度(Ts)と流出温度(Tfb)とを確認した。
開始温度:60.0℃、昇温速度:5.0℃/分、シリンダ圧力:1.471×106Pa、予熱時間:5分間、ダイ口径:1mm、ダイ長さ:1mm、試験量:0.60g。
測定の結果、共重合体(B1)の軟化温度(Ts)が131℃であり、流出温度(Tfb)が145℃であることを確認した。
(実施例2)
2−(1) 単量体の合成(式(A2)に示すビニルベンジルオキシ基含有化合物)
3−ジヒドロキシ安息香酸281.88g(2.00mol)をメタノール2000mLに溶解した。これに炭酸カリウム414.44g(3.00mol)を加え、60℃まで加熱した。これに4−(クロロメチル)スチレン353.44g(2.20mol)を67分間で滴下した。還流下、3時間反応後、室温まで放冷した。得られた反応液を減圧下、溶媒を除去し、得られた茶色半固体を水と酢酸エチルへ分散し、塩酸でpH3に調整した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、減圧下溶媒を除去後、酢酸エチル中で再結晶を行い、60℃にて24時間乾燥させ、スチレン誘導体(A2)261.13gを得た(収率51.35%)
得られたスチレン誘導体(A2)について、HPLC純度を実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定したところ97.9%だった。
得られたスチレン誘導体(A2)について、実施例1−(1)と同様の条件及び方法で1H−NMRを測定した。1H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A2)で示す構造を支持する結果だった。
δ(ppm)=5.15(2H、s、−OCH2−)、5.26(1H、d、−C=C−H)、5.83(1H、d、−C=C−H)、6.73(1H、d−d、−CH=)、7.24(1H、d−d、Ar−H)、7.38−7.54(7H、m、Ar−H)
前記1H−NMRにおいて、5.15(2H、s、−OCH2−)のプロトンに照射したところ、7.24(1H、d−d、Ar−H)、7.44(1H、d−d、Ar−H)、7.51(1H、d−d、Ar−H)の芳香族プロトンにそれぞれ7.08%、5.99%、11.83%の核オーバーハウザー効果が観測された。
得られたスチレン誘導体(A2)について、FT−IRを実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定したところ、
ν(cm−1)=3006、2894、2856、2823、2674、2561、1697、1629、1604、1587、1513、1488、1454、1407、1380、1321、1295、1247、1203、1184、1157、1118、1078、1039、1014、991、931、912、875、829、815、781、759、678、665、651、603、563、464を観測した。
得られたスチレン誘導体(A2)について、TG−DTAを実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した。その結果、融点:148.0℃、発熱温度:160℃、452℃、574℃、重量減少温度:251℃、443℃、546℃を観測した。
得られたスチレン誘導体(A2)について、元素分析を実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:75.44 H:5.59 N:0.00
理論値C:75.57 H:5.55 N:0.00
得られたスチレン誘導体(A2)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した。質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=253.07[M−H]−
理論値:m/z=254.28
2−(2) 共重合体の合成(共重合体(B2)の合成(化学式(A2):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み))
スチレン誘導体(A2)3.99g、スチレン31.02gをトルエン42mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン42mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gの混合液を10分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。得られた反応液をメタノール1Lに滴下し、上澄み液を除去した。残渣をTHF200mLに溶解させ、この溶液をメタノール:2Lに滴下した。析出物を濾過後、メタノール200mLで洗浄し、残渣を減圧下60℃で10時間乾燥させ、共重合体(B2)を27.4g得た。
得られた共重合体(B2)は、前記化学式(1)で示されるユニットAに対応するユニット(A−2)と、前記化学式(3)で示されるユニットBに対応するユニット(B−1)とから構成されたものである。
得られた共重合体(B2)について、実施例1−(2)と同様の条件及び方法で1H−NMRを測定したところ、共重合反応前のスチレン及び前記化学式(A2)で示されるスチレン誘導体(A2)の原料としてのビニル基由来のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A2)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=5.0(−CH2−O−)のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A2)から得られる構成単位は、ピークの積分値から4.22%含有されていることを確認した。
得られた共重合体(B2)について、FT−IRを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定したところ、
ν(cm−1)=3440、3084、3061、3025、3009、2924、2850、1944、1876、1805、1735、1689、1604、1585、1511、1495、1455、1426、1371、1251、1164、1082、1030、905、845、820、751、699、538を観測した。
得られた共重合体(B2)について、TG−DTAを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、発熱温度:366℃、525℃、重量減少温度:300℃、523℃を観測した。
得られた共重合体(B2)について、GPCを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B2)の数平均分子量(Mn)は10264、重量平均分子量(Mw)は46397、更に分子量分布(Mw/Mn)=4.5であることを確認した。
得られた共重合体(B2)について、元素分析を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値C:90.16 H:7.64 N:0.00 O:2.20
理論値C:90.34 H:7.51 N:0.00 O:2.15
ここで、酸素(O)は、炭素(C)と水素(H)及び窒素(N)の値の合計値100%より除算して算出した。前記測定結果は、スチレン誘導体(A2)が共重合体中に5%含まれている場合の推定理論値と一致した。
得られた共重合体(B2)について、体積固有抵抗率を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。測定の結果、共重合体(B2)の体積固有抵抗率が、1.17×1016Ωcmであることを確認した。
得られた共重合体(B2)について、ガラス転移温度を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B2)のガラス転移温度が、103.7℃であることを確認した。
得られた共重合体(B2)について、軟化温度(Ts)と流出開始温度(Tfb)とを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B2)の軟化温度(Ts)が126℃であり、流出開始温度(Tfb)が140℃であることを確認した。
(実施例3)
3−(1) 単量体の合成(式(A3)に示すビニルベンジルオキシ基含有化合物)
4−ジヒドロキシ安息香酸50.0gをメタノール1000mLに撹拌しながら溶解させ、これに炭酸カリウム67.1gを加え、60℃で30分間撹拌した。これに、メタノール50mLに溶解したp−クロロメチルスチレンとm−クロロメチルスチレンとの混合クロロメチルスチレン(AGCセイケミカル株式会社製、商品名:CMS−P)60.2gを1時間で滴下した。還流下、5時間反応後、室温まで放冷し、析出物を濾過後、メタノールで洗浄した。得られた残渣を水1Lに加え、塩酸にてpH=1にして、30分間撹拌後、濾過、水洗した。80℃で48時間乾燥し、白色固体で下記化学式(A3)に示すスチレン誘導体の混合物23.9gを得た。
得られたスチレン誘導体(A3)について、HPLC純度を実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定したところ、混合物として96.3%だった。
得られたスチレン誘導体(A3)について、1H−NMRを実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した。1H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A3)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=5.13(2H、s、−CH2−)5.24−5.33(1H、d×2、C−H)、5.80−5.90(1H、d×2、C−H)、6.54−6.60(2H、m、Ar−H)、6.65−6.77(1H、d×2、C−H)、7.29−7.57(4H、m、Ar−H)、7.67−7.74(1H、d×2、Ar−H)
前記1H−NMRにおいて、5.13(2H、s、−OCH2−)のプロトンに照射したところ、6.54−6.60の芳香族プロトンに17.2%の核オーバーハウザー効果が観測された。
得られたスチレン誘導体(A3)についてFT−IRを実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定したところ、
ν(cm−1)=2870、2549、2357、1656、1622、1512、1460、1435、1385、1348、1252、1190、1154、1099、1034、1018、997、979、914、855、833、827、795、774、686、645、604、534、496を観測した。
得られたスチレン誘導体(A3)について、TG−DTAを実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、吸熱温度157℃、発熱温度:435℃、550℃、重量減少温度:209℃、416℃、531℃を観測した。
得られたスチレン誘導体(A3)について、元素分析を実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:74.73 H:5.26 N:0.00
理論値C:75.57 H:5.55 N:0.00
得られた化学式(A3)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した。以下に質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=253.0[M−H]−
理論値:m/z=254.09
3−(2) 共重合体の合成(共重合体(B3)の合成(化学式(A3):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み))
スチレン誘導体(A3)3.99g、スチレン31.02gをトルエン42mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン42mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gの混合液を12分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。得られた反応液をメタノール1Lに滴下し、上澄み液を除去した。残渣をTHF200mLに溶解させ、この溶液をメタノール2Lに滴下した。析出物を濾過後、メタノール200mLで洗浄し、残渣を減圧下60℃で10時間乾燥させ、共重合体(B3)を16.8g得た。
得られた共重合体(B3)は、前記化学式(1)で示されるユニットAに対応するユニット(A−1)及び(A−3)と、前記化学式(3)で示されるユニットBに対応するユニット(B−1)とから構成されたものである。
得られた共重合体(B3)について、実施例1−(2)と同様の条件及び方法で1H−NMRを測定したところ、共重合反応前のスチレン及び前記化学式(A3)で示されるスチレン誘導体(A3)の原料としてのビニル基由来のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A3)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=5.0(−CH2−O−)のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A3)から得られる構成単位は、ピークの積分値から4.44%含有されていることを確認した。
得られた共重合体(B3)について、FT−IRを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定したところ、
ν(cm−1)=3439、3082、3060、3023、3005、2922、2847、1940、1875、1806、1737、1688、1603、1585、1515、1499、1453、1422、1370、1250、1161、1085、1028、908、845、820、752、700、538を観測した。
得られた共重合体(B3)について、TG−DTAを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、発熱温度:374℃、536℃、重量減少温度:312℃、533℃を観測した。
得られた共重合体(B3)について、GPCを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B3)の数平均分子量(Mn)は11973、重量平均分子量(Mw)は49390、更に分子量分布(Mw/Mn)=4.1であることを確認した。
得られた共重合体(B3)について、元素分析を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値C:90.19 H:7.49 N:0.00 O:2.32
理論値C:90.34 H:7.51 N:0.00 O:2.15
ここで、酸素(O)は、炭素(C)と水素(H)及び窒素(N)の値の合計値100%より除算して算出した。前記測定結果は、スチレン誘導体(A3)が共重合体中に5%含まれている場合の推定理論値と一致した。
得られた共重合体(B3)について、体積固有抵抗率を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。測定の結果、共重合体(B3)の体積固有抵抗率が、1.23×1016Ωcmであることを確認した。
得られた共重合体(B3)について、ガラス転移温度を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B3)のガラス転移温度が、99.5℃であることを確認した。
得られた共重合体(B3)について、軟化温度(Ts)と流出開始温度(Tfb)とを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B2)の軟化温度(Ts)が110℃であり、流出開始温度(Tfb)が144℃であることを確認した。
(実施例4)
4−(1) 単量体の合成(式(A4)に示すビニルベンジルオキシ基含有化合物)
4−ジヒドロキシ安息香酸50.0gをメタノール1000mLに撹拌しながら溶解させ、これに炭酸カリウム67.1gを加え、65℃で1時間撹拌した。これに、メタノール100mLに溶解したp−クロロメチルスチレンとo−クロロメチルスチレンの混合クロロメチルスチレン(CHANGZHOU WUJIN LINCHUAN CHEMICAL社製、商品名:4−Chloromethyl styrene)60.2gとメタノール100mLに混合溶解させた溶解液を滴下し、65℃にて5時間反応させた。得られた反応液を室温まで放冷し、析出物を濾過後、メタノールで洗浄した。濾過残渣を水1Lに加え、塩酸にてpH=1にして、30分間撹拌後、濾過、水洗した。80℃で48時間乾燥し、白色固体で下記化学式(A4)に示すスチレン誘導体の混合物を27.3g得た。
得られたスチレン誘導体(A4)について、HPLC純度を実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定したところ、96.2%だった。
得られたスチレン誘導体(A4)について、実施例1−(1)と同様の条件及び方法で1H−NMRを測定した。1H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A4)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=5.18−5.34(1H、d×2、C−H)、5.18(2H、s、−OCH2−)、5.70−5.87(1H、d×2、C−H)、6.95−7.61(8H、m、Ar−H)、6.71−6.90(1H、d×2、C−H)
得られたスチレン誘導体(A4)について、FT−IRを実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定したところ、
ν(cm−1)=2957、2699、2624、1900、1827、1688、1778、1758、1657、1634、1622、1513、1489、1468、1425、1421、1400、1379、1364、1324、1298、1281、1199、1190、1117、968、960、908、897、835、805、781、681、657、602、523、467を観測した。
得られたスチレン誘導体(A4)について、TG−DTAを実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した結果、吸熱温度147℃、発熱温度:441℃、552℃、重量減少温度:211℃、439℃、553℃を観測した。
得られたスチレン誘導体(A4)について、元素分析を実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した。以下に、元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:74.63 H:5.49 N:0.00
理論値C:75.57 H:5.55 N:0.00
得られたスチレン誘導体(A4)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した。質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=253.86[M−H]−
理論値:m/z=254.28
4−(2) 共重合体の合成(共重合体(B4)の合成(化学式(A4):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み))
スチレン誘導体(A4)3.99g、スチレン31.02gをトルエン42mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン42mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gの混合液を11分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。得られた反応液をメタノール1.5Lに滴下し、上澄み液を除去した。残渣をTHF200mLに溶解させ、この溶液をメタノール2Lに滴下した。析出物を濾過後、メタノール200mLで洗浄し、残渣を減圧下60℃で10時間乾燥させ、共重合体(B4)を22.6g得た。
得られた共重合体(B4)は、前記化学式(1)で示されるユニットAに対応するユニット(A−1)及び(A−4)と、前記化学式(3)で示されるユニットBに対応するユニット(B−1)とから構成されたものである。
得られた共重合体(B4)について、実施例1−(2)と同様の条件及び方法で1H−NMRを測定したところ、共重合反応前のスチレン及び前記化学式(A4)で示されるスチレン誘導体(A4)の原料としてのビニル基由来のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A4)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=5.0(−CH2−O−)のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A4)から得られる構成単位は、ピークの積分値から4.37%含有されていることを確認した。
得られた共重合体(B4)について、FT−IRを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定したところ、
ν(cm−1)=3438、3082、3067、3023、2999、2927、2847、1941、1879、1808、1729、1691、1605、1580、1514、1491、1459、1421、1369、1247、1162、1080、1028、901、842、818、748、700、541を観測した。
得られた共重合体(B4)について、TG−DTAを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、発熱温度:374℃、551℃、重量減少温度:289℃、547℃を観測した。
得られた共重合体(B4)について、GPCを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B4)の数平均分子量(Mn)は11960、重量平均分子量(Mw)は47381、更に分子量分布(Mw/Mn)=3.9であることを確認した。
得られた共重合体(B4)について、元素分析を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値C:90.28 H:7.31 N:0.00 O:2.41
理論値C:90.34 H:7.51 N:0.00 O:2.15
ここで、酸素(O)は、炭素(C)と水素(H)及び窒素(N)の値の合計値100%より除算して算出した。前記測定結果は、スチレン誘導体(A4)が共重合体中に5%含まれている場合の推定理論値と一致した。
得られた共重合体(B4)について、体積固有抵抗率を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。測定の結果、共重合体(B4)の体積固有抵抗率が、1.22×1016Ωcmであることを確認した。
得られた共重合体(B4)について、ガラス転移温度を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B4)のガラス転移温度が、101.7℃であることを確認した。
(実施例5)
5−(1) 単量体の合成(式(A5)に示すビニルベンジルオキシ基含有化合物)
4−ヒドロキシ安息香酸エチル124.63g(0.75mol)をメタノール750mLに溶解した。これに炭酸カリウム103.66g(0.75mol)を加え、60℃まで加熱した。これに4−(クロロメチル)スチレン132.54g(0.83mol)を30分間で滴下した。還流下、4.5時間反応後、室温まで放冷した。得られた析出物をろ過、メタノールで洗浄した。反応液残渣を水と酢酸エチルへ分散し、塩酸でpH3に調整した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、減圧下溶媒を除去後、酢酸エチル中で再結晶を行い、60℃にて24時間乾燥させ、スチレン誘導体(A5)145.37gを得た(収率68.65%)。
得られたスチレン誘導体(A5)について、HPLC純度を実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定したところ97.00%だった。
得られたスチレン誘導体(A5)について、実施例1−(1)と同様の条件及び方法で1H−NMRを測定した。1H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A5)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=1.30(3H、s、−CH3)、4.27(2H、d−d、−CH2−)、5.18(2H、s、−OCH2−)、5.28(1H、d、−C=C−H)、5.85(1H、d、−C=C−H)、6.75(1H、d−d、−CH=)、7.12(2H、d、Ar−H)、7.43(2H、d、Ar−H)、7.50(2H、d、Ar−H)、7.91(2H、d、Ar−H)を観測した。
前記1H−NMRにおいて、5.18(2H、s、−OCH2−)のプロトンに照射したところ、7.12(2H、d、Ar−H)、7.43(2H、d、Ar−H)の芳香族プロトンにそれぞれ14.8%、7.47%の核オーバーハウザー効果が観測された。
得られたスチレン誘導体(A5)について、FT−IRを実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定したところ、
ν(cm−1)=3407、2985、2931、2877、1922、1835、1712、1627、1606、1581、1508、1465、1450、1436、1417、1405、1386、1367、1324、1313、1280、1247、1170、1105、1008、995、968、952、916、879、844、833、817、771、732、694、653、632、512、493を観測した。
得られたスチレン誘導体(A5)について、TG−DTAを実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した結果、融点:81.7℃、発熱温度:392℃、568℃、重量減少温度:186℃、351℃、555℃を観測した。
得られたスチレン誘導体(A5)について、元素分析を実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:76.62 H:6.45 N:0.00
理論値C:76.57 H:6.43 N:0.00
得られたスチレン誘導体(A5)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した。質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=253.13[M−CH2CH3−H]−
理論値:m/z=282.33
5−(2) 共重合体の合成(共重合体(B5)の合成(化学式(A5):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み))
スチレン誘導体(A5)4.28g、スチレン30.00gをトルエン42mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン42mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gの混合液を11分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。得られた反応液をメタノール1.5Lに滴下し、上澄み液を除去した。残渣をTHF200mLに溶解させ、この溶液をメタノール2Lに滴下した。析出物を濾過後、メタノール200mLで洗浄し、残渣を減圧下60℃で10時間乾燥させ、共重合体(B5)を24.9g得た。
得られた共重合体(B5)は、前記化学式(1)で示されるユニットAに対応するユニット(A−5)と、前記化学式(3)で示されるユニットBに対応するユニット(B−1)とから構成されたものである。
得られた共重合体(B5)について、実施例1−(2)と同様の条件及び方法で1H−NMRを測定したところ、共重合反応前のスチレン及び前記化学式(A5)で示されるスチレン誘導体(A5)の原料としてのビニル基由来のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A5)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=5.0(−CH2−O−)のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A5)から得られる構成単位は、ピークの積分値から4.61%含有されていることを確認した。
得られた共重合体(B5)について、FT−IRを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定したところ、
ν(cm−1)=3078、3062、3019、3001、2925、2844、1942、1880、1802、1722、1689、1609、1579、1510、1488、1461、1418、1371、1247、1161、1077、1026、899、844、819、747、699、546を観測した。
得られた共重合体(B5)について、TG−DTAを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、発熱温度:382℃、542℃、重量減少温度:299℃、554℃を観測した。
得られた共重合体(B5)について、GPCを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B5)の数平均分子量(Mn)は14389、重量平均分子量(Mw)は53781、更に分子量分布(Mw/Mn)=3.7であることを確認した。
得られた共重合体(B5)について、元素分析を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値C:90.40 H:7.63 N:0.00 O:1.97
理論値C:90.28 H:7.59 N:0.00 O:2.13
ここで、酸素(O)は、炭素(C)と水素(H)及び窒素(N)の値の合計値100%より除算して算出した。前記測定結果は、スチレン誘導体(A5)が共重合体中に5%含まれている場合の推定理論値と一致した。
得られた共重合体(B5)について、体積固有抵抗率を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。測定の結果、共重合体(B5)の体積固有抵抗率が、1.74×1016Ωcmであることを確認した。
得られた共重合体(B5)について、ガラス転移温度を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B5)のガラス転移温度が、106.6℃であることを確認した。
得られた共重合体(B5)について、軟化温度(Ts)と流出開始温度(Tfb)とを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B2)の軟化温度(Ts)が133℃であり、流出開始温度(Tfb)が153℃であることを確認した。
(実施例6)
6−(1) 単量体の合成(式(A6)に示すビニルベンジルオキシ基含有化合物)
3−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸168.15g(1.00mol)をメタノール1000mLに溶解した。これに炭酸カリウム207.32g(1.50mol)を加え、60℃まで加熱した。これに4−(クロロメチル)スチレン176.72g(1.10mol)を32分間で滴下した。還流下、4時間反応後、室温まで放冷した。得られた反応液を減圧下、溶媒を除去し、得られた茶色半固体を水と酢酸エチルへ分散し、塩酸でpH3に調整した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、減圧下溶媒を除去後、酢酸エチル中で再結晶を行い、60℃にて24時間乾燥させ、スチレン誘導体(A6)114.98gを得た(収率40.44%)。
得られたスチレン誘導体(A6)について、HPLC純度を実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定したところ、97.68%だった。
得られたスチレン誘導体(A6)について、実施例1−(1)と同様の条件及び方法で1H−NMRを測定した。1H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A6)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=3.18(3H、s、−CH3)、5.16(2H、s、−OCH2−)、5.28(1H、d、−C=C−H)、5.85(1H、d、−C=C−H)、6.75(1H、d−d、−CH=)、7.13(1H、d、Ar−H)、7.41−7.56(6H、m、Ar−H)、
前記1H−NMRにおいて、5.16(2H、s、−OCH2−)のプロトンに照射したところ、7.13(1H、d、Ar−H)、7.43(2H、d、Ar−H)の芳香族プロトンにそれぞれ7.92%、10.33%の核オーバーハウザー効果が観測された。
得られたスチレン誘導体(A6)について、FT−IRを実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定したところ、
ν(cm−1)=3430、2964、2939、2877、2832、2640、2597、2553、1851、1681、1629、1594、1585、1517、1465、1427、1409、1382、1346、1303、1274、1222、1180、1135、1114、1027、989、948、923、873、854、835、804、769、759、728、636、615561、536、516、487、447を観測した。
得られたスチレン誘導体(A6)について、TG−DTAを実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した。その結果、発熱温度:198.4℃、547.2℃、重量減少温度:262.9℃、537.0℃を観測した。
得られたスチレン誘導体(A6)について、元素分析を実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:70.94 H:5.68 N:0.00
理論値C:71.82 H:5.67 N:0.00
得られたスチレン誘導体(A6)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した。質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=283.13[M−H]−
理論値:m/z=284.31
6−(2) 共重合体の合成(共重合体(B6)の合成(化学式(A6):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み))
スチレン誘導体(A6)4.31g、スチレン30.00gをトルエン42mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン42mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gの混合液を11分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。得られた反応液をメタノール1.5Lに滴下し、上澄み液を除去した。残渣をTHF200mLに溶解させ、この溶液をメタノール2Lに滴下した。析出物を濾過後、メタノール200mLで洗浄し、残渣を減圧下60℃で10時間乾燥させ、共重合体(B6)を26.9g得た。
得られた共重合体(B6)は、前記化学式(1)で示されるユニットAに対応するユニット(A−6)と、前記化学式(3)で示されるユニットBに対応するユニット(B−1)から構成されている。
得られた共重合体(B6)について、実施例1−(2)と同様の条件及び方法で1H−NMRを測定したところ、共重合反応前のスチレン及び前記化学式(A6)で示されるスチレン誘導体(A6)の原料としてのビニル基由来のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A6)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=4.9(−CH2−O−)のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A6)から得られる構成単位は、ピークの積分値から4.55%含有されていることを確認した。
得られた共重合体(B6)について、FT−IRを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定したところ、
ν(cm−1)=3439、3082、3065、3021、3011、2926、2844、1948、1889、1810、1731、1684、1603、1591、1510、1501、1457、1429、1369、1255、1162、1081、1028、905、846、822、749、700、535を観測した。
得られた共重合体(B6)について、TG−DTAを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、発熱温度:368℃、531℃、重量減少温度:297℃、528℃を観測した。
得られた共重合体(B6)について、GPCを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B6)の数平均分子量(Mn)は11699、重量平均分子量(Mw)は47439、更に分子量分布(Mw/Mn)=4.0であることを確認した。
得られた共重合体(B6)について、元素分析を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値C:89.81 H:7.44 N:0.00 O:2.75
理論値C:89.68 H:7.50 N:0.00 O:2.83
ここで、酸素(O)は、炭素(C)と水素(H)及び窒素(N)の値の合計値100%より除算して算出した。前記測定結果は、スチレン誘導体(A6)が共重合体中に5%含まれている場合の推定理論値と一致した。
得られた共重合体(B6)について、体積固有抵抗率を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。測定の結果、共重合体(B6)の体積固有抵抗率が、1.45×1016Ωcmであることを確認した。
得られた共重合体(B6)について、ガラス転移温度を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B6)のガラス転移温度が、111.3℃であることを確認した。
(実施例7)
7−(1) 単量体の合成(式(A7)に示すビニルベンジルオキシ基含有化合物)
3,4−ジヒドロキシ安息香酸157.27g(1.00mol)をメタノール1500mLに溶解した。これに炭酸カリウム276.42g(2.00mol)を加え、60℃まで加熱した。これに4−(クロロメチル)スチレン176.72g(1.10mol)を50分間で滴下した。還流下、2時間反応後、室温まで放冷した。得られた析出物をろ過、メタノールで洗浄した。反応液残渣を水と酢酸エチルへ分散し、塩酸でpH3に調整した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、減圧下溶媒を除去後、酢酸エチル中で再結晶を行い、60℃にて24時間乾燥させ、スチレン誘導体(A7)95.5gを得た(収率44.9%)。
得られたスチレン誘導体(A7)について、HPLC純度を実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定したところ96.6%だった。
得られたスチレン誘導体(A7)について、実施例1−(1)と同様の条件及び方法で1H−NMRを測定した。1H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A7)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=5.16(2H、s、−OCH2−)、5.20(2H、s、−OCH2−)、5.26(1H、d、−C=C−H)、5.83(1H、d、−C=C−H)、6.75(1H、d−d、−CH=)、7.13(1H、d、Ar−H)、7.39−7.53(10H、m、Ar−H)
前記1H−NMRにおいて、5.16ppm(2H、s、−OCH2−)のプロトンに照射したところ、7.40(2H、d、Ar−H)、7.53(2H、d、Ar−H)の芳香族プロトンにそれぞれ3.97%、11.63%の核オーバーハウザー効果が観測された。また、5.20ppm(2H、s、−OCH2−)のプロトンに照射したところ、7.14(2H、d、Ar−H)、7.42(2H、d、Ar−H)の芳香族プロトンにそれぞれ7.33%、6.36%の核オーバーハウザー効果が観測された。
得られたスチレン誘導体(A7)について、FT−IRを実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定したところ、
ν(cm−1)=3448、3085、3006、2981、2904、2861、2624、2553、1687、1629、1598、1585、1519、1434、1407、1378、1348、1305、1276、1228、1178、1133、1108、1033、1014、987、943、902、875、856、829、775、761、646、609、541、509を観測した。
得られたスチレン誘導体(A7)について、TG−DTAを実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した。その結果、融点:182.8℃、発熱温度:225.5℃、567.9℃、重量減少温度:281.2℃、414.4℃、℃、531.8℃を観測した。
得られたスチレン誘導体(A7)について、元素分析を実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:76.11 H:5.52 N:0.00
理論値C:77.70 H:5.74 N:0.00
得られたスチレン誘導体(A7)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した。質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=385.13[M−H]−
理論値:m/z=386.15
7−(2) 共重合体の合成(共重合体(B7)の合成(化学式(A7):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み))
(化学式(A7):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(A7)5.83g、スチレン30.00gをトルエン42mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱しDMFを60mL加えた。この溶液に、トルエン42mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gの混合液を12分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。得られた反応液を減圧下、溶媒を留去し、更に130℃にて48時間乾燥し、共重合体(B7)を32.1g得た。
得られた共重合体(B7)は、前記化学式(1)で示されるユニットAに対応するユニット(A−7)と、前記化学式(3)で示されるユニットBに対応するユニット(B−1)から構成されている。
得られた共重合体(B7)は、DMF、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クロロホルム、THFのどの溶媒にも溶解しなかった。
得られた共重合体(B7)について、FT−IRを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定したところ、
ν(cm−1)=3447、3074、3059、3023、3011、2922、2849、1946、1877、1801、1729、1692、1609、1581、1509、1492、1456、1426、1369、1252、1166、1085、1028、904、848、828、745、700、532を観測した。
得られた共重合体(B7)について、TG−DTAを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、発熱温度:436℃、585℃、重量減少温度:418℃、574℃を観測した。
得られた共重合体(B7)について、元素分析を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値C:89.93 H:7.39 N:0.00 O:2.68
理論値C:89.87 H:7.43 N:0.00 O:2.71
ここで、酸素(O)は、炭素(C)と水素(H)及び窒素(N)の値の合計値100%より除算して算出した。前記測定結果は、スチレン誘導体(A7)が共重合体中に5%含まれている場合の推定理論値と一致した。
得られた共重合体(B7)について、体積固有抵抗率を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。測定の結果、共重合体(B7)の体積固有抵抗率が、0.95×1016Ωcmであることを確認した。
得られた共重合体(B7)について、ガラス転移温度を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B7)のガラス転移温度が、131.7℃であることを確認した。
(実施例8)
8−(1) 単量体の合成(式(A8)に示すビニルベンジルオキシ基含有化合物)
3,5−ジヒドロキシ安息香酸157.27g(1.00mol)をメタノール1500mLに溶解した。これに炭酸カリウム304.06g(2.20mol)を加え、60℃まで加熱した。これに4−(クロロメチル)スチレン353.44g(2.20mol)を5分間で滴下した。還流下、2時間反応後、室温まで放冷した。得られた析出物をろ過、メタノールで洗浄した。反応液残渣を水と酢酸エチルへ分散し、塩酸でpH3に調整した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、減圧下溶媒を除去後、酢酸エチル中で再結晶を行い、60℃にて24時間乾燥させ、スチレン誘導体(A8)35.89gを得た(収率9.29%)。
得られたスチレン誘導体(A8)について、HPLC純度を実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定したところ98.3%だった。
得られたスチレン誘導体(A8)について、実施例1−(1)と同様の条件及び方法で1H−NMRを測定した。1H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A8)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=5.13(4H、s、−OCH2−)、5.26(2H、d、−C=C−H)、5.83(2H、d、−C=C−H)、6.73(2H、d−d、−CH=)、6.90(1H、t、Ar−H)、7.13(2H、t、Ar−H)、7.40(4H、d、Ar−H)、7.48(4H、d、Ar−H)、
前記1H−NMRにおいて、5.13(4H、s、−OCH2−)のプロトンに照射したところ、6.90(1H、t、Ar−H)、7.13(2H、d、Ar−H)、7.40(4H、d、Ar−H)の芳香族プロトンにそれぞれ5.90%、9.40%、7.90%の核オーバーハウザー効果が観測された。
得られたスチレン誘導体(A8)について、FT−IRを実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定したところ、
ν(cm−1)=3430、3087、2979、2865、2636、1693、1627,1594、1513、1475、1459、1446、1421、1407、1375、1348、1322、1274、1213、1166、1116、1049、1016、993、919、852、827、769、728、674、534、480を観測した。
得られたスチレン誘導体(A8)について、TG−DTAを実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した結果、発熱温度:182.4℃、447.3℃、518.4℃、570.7℃、重量減少温度:282.4℃、429.3℃、560.2℃を観測した。
得られたスチレン誘導体(A8)について、元素分析を実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:77.68 H:5.69 N:0.00
理論値C:77.70 H:5.74 N:0.00
得られたスチレン誘導体(A8)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した。質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=385.20[M−H]−
理論値:m/z=386.44
8−(2) 共重合体の合成(共重合体(B8)の合成(化学式(A8):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み))
スチレン誘導体(A8)5.83g、スチレン30.00gをトルエン42mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱しDMFを60mL加えた。この溶液に、トルエン42mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gの混合液を12分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。得られた反応液を減圧下、溶媒を留去し、更に130℃にて48時間乾燥し、共重合体(B8)を29.6g得た。
得られた共重合体(B8)は、前記化学式(1)で示されるユニットAに対応するユニット(A−8)と、前記化学式(3)で示されるユニットBに対応するユニット(B−1)から構成されている。
得られた共重合体(B8)は、DMF、酢酸エチル、DMSO、クロロホルム、THFの溶媒に溶解しなかった。
得られた共重合体(B8)について、FT−IRを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定したところ、
ν(cm−1)=3451、3077、3062、3021、3010、2919、2855、1951、1879、1800、1734、1697、1611、1583、1528、1498、1454、1424、1370、1250、1167、1089、1025、902、848、822、749、697、535を観測した。
得られた共重合体(B8)について、TG−DTAを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、発熱温度:441℃、587℃、重量減少温度:424℃、581℃を観測した。
得られた共重合体(B8)について、元素分析を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値C:89.75 H:7.50 N:0.00 O:2.75
理論値C:89.87 H:7.43 N:0.00 O:2.71
ここで、酸素(O)は、炭素(C)と水素(H)及び窒素(N)の値の合計値100%より除算して算出した。前記測定結果は、スチレン誘導体(A8)が共重合体中に5%含まれている場合の推定理論値と一致した。
得られた共重合体(B8)について、体積固有抵抗率を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。測定の結果、共重合体(B8)の体積固有抵抗率が、0.89×1016Ωcmであることを確認した。
得られた共重合体(B8)について、ガラス転移温度を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B8)のガラス転移温度が、134.9℃であることを確認した。
得られた共重合体(B8)について、軟化温度(Ts)と流出開始温度(Tfb)とを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B2)の軟化温度(Ts)が140℃であり、流出開始温度(Tfb)が164℃であることを確認した。
(実施例9)
9−(1) 単量体の合成(式(A9)に示すビニルベンジルオキシ基含有化合物)
3−ヒドロキシ−3−メチル安息香酸15.0g(96.7mmol)をメタノール300mLに加え、これに炭酸カリウム20.1g(145mmol)を加え、60℃まで加熱した。これに4−(クロロメチル)スチレン18.1g(116mmol)を10分間で滴下した。還流下、4時間反応後、室温まで放冷した。得られた反応液を減圧下、溶媒を除去し、得られた茶色半固体を水と酢酸エチルへ分散し、塩酸でpH3に調整した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、減圧下溶媒を除去後、酢酸エチル中で再結晶を行い、60℃にて24時間乾燥させ、スチレン誘導体(A9)15.1gを得た(収率58.3%)。
得られたスチレン誘導体(A9)について、HPLC純度を実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定したところ96.3%だった。
得られたスチレン誘導体(A9)について、実施例1−(1)と同様の条件及び方法で1H−NMRを測定した。1H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A9)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=2.43(3H、s、−CH3)、5.21(2H、s、−OCH2−)、5.20(1H、d、−C=C−H)、5.76(1H、d、−C=C−H)、6.69(1H、d−d、−CH=)、7.14(1H、d、Ar−H)、7.35−7.82(6H、m、Ar−H)、
前記1H−NMRにおいて、5.20(2H、s、−OCH2−)のプロトンに照射したところ、7.14(1H、d、Ar−H)、7.43(2H、d、Ar−H)の芳香族プロトンにそれぞれ8.35%、14.25%の核オーバーハウザー効果が観測された。
得られたスチレン誘導体(A9)について、FT−IRを実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定したところ、
ν(cm−1)=3428、2967、2942、2836、2637、2601、2547、1849、1692、1634、1601、1577、1520、1467、1425、1384、1347、1300、1272、1228、1137、1116、1026、990、946、932、878、852、837、770、761、727、635、616、565、534、512、484、445を観測した。
得られたスチレン誘導体(A9)について、TG−DTAを実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した。その結果、発熱温度:210.3℃、552.3℃、重量減少温度:270.9℃、541.0℃を観測した。
得られたスチレン誘導体(A9)について、元素分析を実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:75.40 H:5.75 N:0.00
理論値C:76.10 H:6.01 N:0.00
得られたスチレン誘導体(A9)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例1−(1)と同様の条件及び方法で測定した。質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=267.7[M−H]−
理論値:m/z=268.31
9−(2) 共重合体の合成(共重合体(B9)の合成(化学式(A9):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み))
スチレン誘導体(A9)4.07g、スチレン30.00gをトルエン42mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン42mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gの混合液を12分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。得られた反応液をメタノール1.5Lに滴下し、上澄み液を除去した。残渣をTHF200mLに溶解させ、この溶液をメタノール2Lに滴下した。析出物を濾過後、メタノール200mLで洗浄し、残渣を減圧下60℃で10時間乾燥させ、共重合体(B9)を27.7g得た。
得られた共重合体(B9)は、前記化学式(1)で示されるユニットAに対応するユニット(A−9)と、前記化学式(3)で示されるユニットBに対応するユニット(B−1)から構成されている。
得られた共重合体(B9)について、実施例1−(2)と同様の条件及び方法で1H−NMRを測定したところ、共重合反応前のスチレン及び前記化学式(A9)で示されるスチレン誘導体(A9)の原料としてのビニル基由来のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A9)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=5.0(−CH2−O−)のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A9)から得られる構成単位は、ピークの積分値から4.25%含有されていることを確認した。
得られた共重合体(B9)について、FT−IRを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定したところ、
ν(cm−1)=3437、3092、3066、3026、3009、2927、2846、1950、1890、1812、1730、1685、1601、1594、1508、1504、1459、1423、1370、1257、1171、1088、1024、903、848、819、751、695、534を観測した。
得られた共重合体(B9)について、TG−DTAを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、発熱温度:355℃、543℃、重量減少温度:302℃、545℃を観測した。
得られた共重合体(B9)について、GPCを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B9)の数平均分子量(Mn)は12186、重量平均分子量(Mw)は51398、更に分子量分布(Mw/Mn)=4.2であることを確認した。
得られた共重合体(B9)について、元素分析を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値C:90.31 H:7.61 N:0.00 O:2.08
理論値C:90.31 H:7.55 N:0.00 O:2.14
ここで、酸素(O)は、炭素(C)と水素(H)及び窒素(N)の値の合計値100%より除算して算出した。前記測定結果は、スチレン誘導体(A9)が共重合体中に5%含まれている場合の推定理論値と一致した。
得られた共重合体(B9)について、体積固有抵抗率を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。測定の結果、共重合体(B9)の体積固有抵抗率が、1.67×1016Ωcmであることを確認した。
得られた共重合体(B9)について、ガラス転移温度を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B9)のガラス転移温度が、120.3℃であることを確認した。
(実施例10)
10−(1) 単量体の合成(式(A1)に示すビニルベンジルオキシ基含有化合物)
実施例1−(1)と同様に、スチレン誘導体(A1)を合成した。
10−(2) 共重合体の合成(共重合体(B10)の合成(化学式(A1):スチレン:アクリル酸=5.0:90:5.0のmol比の仕込み))
スチレン誘導体(A1)4.07g、スチレン30.00g、アクリル酸1,15gをトルエン42mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン42mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gの混合液を10分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。得られた反応液をメタノール1Lに滴下し、上澄み液を除去した。残渣をTHF200mLに溶解させ、この溶液をメタノール2Lに滴下した。析出物を濾過後、メタノール200mLで洗浄し、残渣を減圧下60℃で10時間乾燥させ、共重合体(B10)を28.8g得た。
得られた共重合体(B10)は、前記化学式(1)で示されるユニットAに対応するユニット(A−1)と、前記化学式(3)で示されるユニットBに対応するユニット(B−1)と、前記化学式(11)で示されるユニットCに対応するユニット(C−1)とから構成されたものである。
得られた共重合体(B10)について、実施例1−(2)と同様の条件及び方法で1H−NMRを測定したところ、共重合反応前のスチレン及び前記化学式(A1)で示されるスチレン誘導体(A1)の原料としてのビニル基由来のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A1)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=5.0(−CH2−O−)のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A1)から得られる構成単位は、ピークの積分値から4.59%含有されていることを確認した。
得られた共重合体(B10)について、FT−IRを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定したところ、
ν(cm−1)=3440、3102、3082、3061、3026、3001、2922、2850、1944、1873、1803、1743、1703、1659、1601、1583、1493、1452、1373、329、1263、1182、1155、1128、1070、1028、1003、980、964、943、906、841、756、698、621、540を観測した。
得られた共重合体(B10)について、TG−DTAを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、重量減少温度:310.6℃、515.0℃を観測した。
得られた共重合体(B10)について、GPCを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B10)の数平均分子量(Mn)は13216、重量平均分子量(Mw)は51573、更に分子量分布(Mw/Mn)=3.9であることを確認した。
得られた共重合体(B10)について、元素分析を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値C:89.08 H:7.33 N:0.00 O:3.59
理論値C:88.93 H:7.43 N:0.00 O:3.63
ここで、酸素(O)は、炭素(C)と水素(H)及び窒素(N)の値の合計値100%より除算して算出した。前記測定結果は、スチレン誘導体(A1)が共重合体中に5%含まれている場合の推定理論値と一致した。
得られた共重合体(B10)について、体積固有抵抗率を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。測定の結果、共重合体(B10)の体積固有抵抗率が、1.63×1016Ωcmであることを確認した。
得られた共重合体(B10)について、ガラス転移温度を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B10)のガラス転移温度が、117.7℃であることを確認した。
得られた共重合体(B10)について、軟化温度(Ts)と流出開始温度(Tfb)とを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B2)の軟化温度(Ts)が137℃であり、流出開始温度(Tfb)が156℃であることを確認した。
(実施例11)
11−(1) 単量体の合成(式(A2)に示すビニルベンジルオキシ基含有化合物)
実施例2−(1)と同様に、スチレン誘導体(A2)を合成した。
11−(2) 共重合体の合成(共重合体(B11)の合成(化学式(A2):スチレン:アクリル酸ブチル=5.0:90:5.0のmol比の仕込み))
スチレン誘導体(A2)4.07g、スチレン30.00g、アクリル酸ブチル2.05gをトルエン42mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン42mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gの混合液を11分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。得られた反応液をメタノール1Lに滴下し、上澄み液を除去した。残渣をTHF200mLに溶解させ、この溶液をメタノール2Lに滴下した。析出物を濾過後、メタノール200mLで洗浄し、残渣を減圧下60℃で10時間乾燥させ、共重合体(B11)を24.9g得た。
得られた共重合体(B11)は、前記化学式(1)で示されるユニットAに対応するユニット(A−2)と、前記化学式(3)で示されるユニットBに対応するユニット(B−1)と、前記化学式(11)で示されるユニットCに対応するユニット(C−2)とから構成されたものである。
得られた共重合体(B11)について、実施例1−(2)と同様の条件及び方法で1H−NMRを測定したところ、共重合反応前のスチレン及び前記化学式(A2)で示されるスチレン誘導体(A2)の原料としてのビニル基由来のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A2)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=5.0(−CH2−O−)のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A2)から得られる構成単位は、ピークの積分値から4.28%含有されていることを確認した。
得られた共重合体(B11)について、FT−IRを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定したところ、
ν(cm−1)=3529,3437、3103、3082、3061、3026、3001、2924、2848、1942、1871、1803、1730、1601、1583、1543、1493、1452、1373、1329、1311、1263、1180、1155、1068、1028、1003、980、964、943、906、841、756、698、665、621、538、457、405を観測した。
得られた共重合体(B11)について、TG−DTAを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、重量減少温度:319.0℃、514.0℃を観測した。
得られた共重合体(B11)について、GPCを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B11)の数平均分子量(Mn)は11679、重量平均分子量(Mw)は49848、更に分子量分布(Mw/Mn)=4.2であることを確認した。
得られた共重合体(B11)について、元素分析を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値C:88.96 H:7.55 N:0.00 O:3.49
理論値C:88.85 H:7.61 N:0.00 O:3.54
ここで、酸素(O)は、炭素(C)と水素(H)及び窒素(N)の値の合計値100%より除算して算出した。前記測定結果は、スチレン誘導体(A2)が共重合体中に5%含まれている場合の推定理論値と一致した。
得られた共重合体(B11)について、体積固有抵抗率を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。測定の結果、共重合体(B11)の体積固有抵抗率が、1.93×1016Ωcmであることを確認した。
得られた共重合体(B11)について、ガラス転移温度を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B11)のガラス転移温度が、109.7℃であることを確認した。
(実施例12)
12−(1) 単量体の合成(式(A1)に示すビニルベンジルオキシ基含有化合物)
実施例1−(1)と同様に、スチレン誘導体(A1)を合成した。
12−(2) 共重合体の合成(共重合体(B12)の合成(化学式(A1):スチレン:アクリル酸:アクリル酸ブチル=5.0:85.0:5.0:5.0のmol比の仕込み))
スチレン誘導体(A1)4.31g、スチレン30.00g、アクリル酸1.22g、アクリル酸ブチル2.17をトルエン42mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン42mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gの混合液を12分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。得られた反応液をメタノール1Lに滴下し、上澄み液を除去した。残渣をTHF200mLに溶解させ、この溶液をメタノール2Lに滴下した。析出物を濾過後、メタノール200mLで洗浄し、残渣を減圧下60℃で10時間乾燥させ、共重合体(B12)を24.2g得た。
得られた共重合体(B12)は、前記化学式(1)で示されるユニットAに対応するユニット(A−1)と、前記化学式(3)で示されるユニットBに対応するユニット(B−1)と、前記化学式(11)で示されるユニットCに対応するユニット(C−1)及び(C−2)とから構成されたものである。
得られた共重合体(B12)について、実施例1−(2)と同様の条件及び方法で1H−NMRを測定したところ、共重合反応前のスチレン及び前記化学式(A1)で示されるスチレン誘導体(A1)の原料としてのビニル基由来のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A1)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=5.0(−CH2−O−)のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A1)から得られる構成単位は、ピークの積分値から4.31%含有されていることを確認した。
得られた共重合体(B12)について、FT−IRを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定したところ、
ν(cm−1)=3529,3082、3061、3026、3001、2924、2850、1942、1873、1799、1730、1682、1603、1583、1539、1514、1493、1452、1437、1392、1363、1309、1273、1200、1180、1155、1101、1030、964、906、843、800、758、698、540を観測した。
得られた共重合体(B12)について、TG−DTAを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、発熱温度:355.5℃、532.2℃、重量減少温度:245.7℃、341.1℃、512.4℃を観測した。
得られた共重合体(B12)について、GPCを実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B12)の数平均分子量(Mn)は10698、重量平均分子量(Mw)は46989、更に分子量分布(Mw/Mn)=4.4であることを確認した。
得られた共重合体(B12)について、元素分析を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値C:87.41 H:7.63 N:0.00 O:4.96
理論値C:87.43 H:7.53 N:0.00 O:5.03
ここで、酸素(O)は、炭素(C)と水素(H)及び窒素(N)の値の合計値100%より除算して算出した。前記測定結果は、スチレン誘導体(A1)が共重合体中に5%含まれている場合の推定理論値と一致した。
得られた共重合体(B12)について、体積固有抵抗率を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B12)の体積固有抵抗率が、1.48×1016Ωcmであることを確認した。
得られた共重合体(B12)について、ガラス転移温度を実施例1−(2)と同様の条件及び方法で測定した。その測定の結果、共重合体(B12)のガラス転移温度が、118.7℃であることを確認した。
(比較例1)
(1)下記化学式(X1)に示すスチレン誘導体の合成
2,5−ジヒドロキシ安息香酸90.0gをメタノール1200mLに溶解させ、炭酸カリウム159.0gを加えて50℃に加熱した。この反応液に4−(クロロメチル)スチレン72.6gを90分間で滴下し、60℃にて12時間反応させた。この反応液を冷却後、減圧下メタノールを留去し、ヘキサンにて洗浄した。濾過後、残渣をpH=2の水3Lに分散させ、酢酸エチルを加えて抽出した。その後、水洗し、酢酸エチル層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。そのメタノールに溶解させ水に滴下し、再沈殿させ析出物を濾過した。この再沈殿操作を2回繰り返し、残渣を80℃にて48時間乾燥させ、下記化学式(X1)に示すスチレン誘導体を26.5g(収率=23.8%)得た。
(2)スチレン誘導体(X1)とスチレンとの2種類の共重合体(Y1)の合成(化学式(X1):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(X1)4.68g、スチレン60.09gをトルエン39mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン39mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日本油脂株式会社製、商品名:パーブチルI)4.27gの混合液を25分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却し、THF150mLに溶解させた。この溶液をメタノール滴下し反応物を沈殿させ、濾過し、減圧下90℃で20時間乾燥させ、共重合体(Y1)を47.3g得た。
得られた共重合体(Y1)は、前記スチレン誘導体(X1)から得られ、ユニットAに非対応であるユニット(L)、及び前記化学式(3)で示されるユニットBに対応するユニット(B−1)から構成されている。
(比較例2)
(1)下記化学式(X2)に示すスチレン誘導体の合成
p−クレゾール50.0gをアセトン450mLに溶解させ、炭酸カリウム94.5gを加えて、56℃に加熱した。この反応液に4−(クロロメチル)スチレン72.7gを30分間で滴下し、56℃にて12時間反応させた。この反応液を冷却後、濾過し、濾液のアセトンを減圧下留去し、出てきた残渣をヘキサンにて洗浄した。濾過後、残渣をトルエンにて再結晶した。濾過後、残渣を80℃にて48時間乾燥させ、下記化学式(X2)に示すスチレン誘導体を43.2g(収率=42.5%)得た。
(2)スチレン誘導体(X2)とスチレンとの2種類の共重合体(Y2)の合成(化学式(X2):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(X2)3.56g、スチレン31.44gをトルエン21mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン21mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gの混合液を17分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却し、THF150mLに溶解させた。この溶液をメタノール滴下し反応物を沈殿させ、濾過し、減圧下90℃で20時間乾燥させ、共重合体(Y2)を27.9g得た。
得られた共重合体(Y2)は、前記スチレン誘導体(X2)から得られ、ユニットAに非対応であるユニット(M)、及び前記化学式(3)で示されるユニットBに対応するユニット(B−1)から構成されている。
(比較例3)
特開平06−95435号公報記載の化合物例No.1−4である下記化学式で示される市販品のビニルフェノールとスチレンとの共重合体(Y3)(丸善石油化学株式会社製、商品名:マルカリンカーCST、Mw=3000〜5000、Mn=1900〜3300)を用いた。
前記市販の共重合体(マルカリンカーCST、Y3)は、下記構成単位であるユニット(N)及び前記化学式(3)で示されるユニットBに対応するユニット(B−1)から構成されている。
前記実施例1〜12及び比較例1〜3で得られた各共重合体を用いた帯電性能評価試験について、実施例A〜Dに示す。
(実施例A) 荷電制御剤の帯電性試験Aにおける荷電制御特性の評価
前記実施例1で得られた共重合体(B1)1重量部、スチレン−アクリル共重合樹脂(三井化学株式会社製、商品名:CPR−100)100重量部を予備混合したのち、加熱ロール(株式会社栗本鐵工所製、商品名:S−1、KRCニーダ)で溶融混練した。冷却後、超遠心粉砕機(株式会社Retsch製、商品名:ULTRA
CENTRIFUGAL MILL、スクリーン目開き1.5mm)で粗粉砕し、分級機付きエアージェットミル(株式会社セイシン企業製、商品名:CO−JET)により、平均粒径をレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名:Partica
LA−950)にて測定し、9.5〜10.5μmになるよう微粉砕を行った。この樹脂粒子2.5重量部と、鉄粉キャリア(パウダーテック株式会社製、商品名:TEFV200/300)50.0重量部とを100mLの軟膏瓶にいれ、ボールミル回転架台(株式会社アサヒ理化製作所製、商品名:小型ボールミル回転架台AV−1)で100rpmにて回転させながら、設定した時間毎に得られる混合物を採取し、ブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル株式会社製、商品名:TB−200)を使用して、以下の条件にて帯電量を測定した。得られた負帯電性確認データの結果を表6及び図10に示した。
測定条件:金属メッシュ目開き34μm 圧力10.0kPa 吸引力10.0kPa 吸引時間10.0秒
更に、前記実施例で得られた共重合体B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9、B10、B11、B12と前記比較例で得られた共重合体Y1、Y2、Y3とを、それぞれ前記共重合体B1と同様に帯電性試験Aを行った。その結果を表6〜8及び図10に示した。
(実施例B) 実施例Aで得られた樹脂粒子である荷電制御剤の環境安定性評価
前記共重合体B1〜B12及び比較共重合体Y1〜Y3を用い前記実施例Aで得られた各樹脂粒子について、下記の環境安定性評価を行った。その結果を表9に示した。
鉄粉キャリア(パウダーテック株式会社製、商品名:TEFV200/300)50.0重量部と前記帯電性試験Aの条件にて作成した各樹脂粒子を100mL軟膏瓶にいれ、中央に1cmの穴の空いた蓋をした。これを恒温恒湿器(東京理化機械株式会社製、商品名:エンビロスKCL−2000W)中のボールミル機(株式会社アサヒ理化製作所製、ボールミル回転架台)にセットし、各設定された温度と湿度の環境下で24時間放置した。24時間後、100mL軟膏瓶を100rpmにて回転させながら、15分間撹拌後、混合物を採取し、ブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル株式会社製、商品名:TB−200)を使用して、以下の条件にて帯電量を測定した。
測定条件:金属メッシュ目開き34μm 圧力10.0kPa 吸引力10.0kPa 吸引時間10.0秒
ここで、LLは低温低湿、HHは高温高湿を示すものとする。
(実施例C) 荷電制御剤の帯電性試験Bにおける荷電制御特性の評価
前記実施例1で得られた共重合体(B1)1重量部、ポリエステル樹脂(三菱レーヨン株式会社製 商品名:ER−508)100重量部を予備混合したのち、加熱ロール(株式会社栗本鐵工所製、商品名:S−1、KRCニーダ)で溶融混練した。冷却後、超遠心粉砕機(株式会社Retsch製、商品名:ULTRA
CENTRIFUGAL MILL、スクリーン目開き1.5mm)で粗粉砕し、分級機付きエアージェットミル(株式会社セイシン企業製、商品名:CO−JET)により、平均粒径をレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名:Partica
LA−950)にて測定し、9.5〜10.5μmになるよう微粉砕を行った。この樹脂粒子2.5重量部と、鉄粉キャリア(パウダーテック株式会社製、商品名:TEFV200/300)50.0重量部とを100mLの軟膏瓶にいれ、ボールミル回転架台(株式会社アサヒ理化製作所製、商品名:小型ボールミル回転架台AV−1)で100rpmにて回転させながら、設定した時間毎に得られる混合物を採取し、ブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル株式会社製、商品名:TB−200)を使用して、以下の条件にて帯電量を測定した。得られた負帯電性確認データの結果を表10及び図11に示した。
測定条件:金属メッシュ目開き34μm 圧力10.0kPa 吸引力10.0kPa 吸引時間10.0秒
更に、前記実施例で得られた共重合体B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9、B10、B11、B12と前記比較例で得られた共重合体Y1、Y2、Y3とを、それぞれ前記共重合体B1と同様に帯電性試験Bを行った。その結果を表10〜12と図11に示した。
(実施例D) 実施例Cで得られた樹脂粒子である荷電制御剤の環境安定性評価
前記共重合体B1〜B12及び比較共重合体Y1〜Y3を用い前記実施例Cで得られた各樹脂粒子について、前記実施例Bと同様に環境安定性評価を行った。その結果を表13に示した。
ここで、LLは低温低湿、HHは高温高湿を示すものとする。
図から明らかなとおり、本発明の荷電制御剤は、高速回転であるか低速回転であるかに関わらず、帯電の立ち上がりが速く、更に荷電量が高かった。