JP6139270B2 - α放射能の測定システムおよびその測定方法 - Google Patents
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Description
液体を被測定対象としたα放射能の測定システムは、このような液体中のウランまたはプルトニウムなどの濃度の測定のために使用される。
特に、放射性核種を含む大量の液体を施設の外部に放出する際などは、放出される液体(以下、「被検液」ともいう)のα放射能を連続的に測定することが望まれる。
よって、α放射能の測定には、一般に、β放射能やγ放射能の測定には課されない制限がつく。
例えば、被検液全体のα線の放射能濃度を測定する際、サンプルを凝固させるなどのサンプルに応じた方法で、β線やγ線の影響を低減させる前処理を施す。
しかし、これらの方法では、前処理に時間がかかり、放出または廃棄が進行している液体をその場で測定するのは困難である。
具体的には、例えば、回転するドラムの側周面または円板の回転面に層状に成形されたサンプルから発せられるα線を検出する(例えば、特許文献2または特許文献3参照)。
これらいずれも、上述の前処理を行うことなく測定することが可能である。
すなわちサンプルが被検液を代表していない場合があり、この場合、サンプルの放射能濃度が基準値以下であっても被検液の放射能濃度が基準値以下であることが担保されない。
図1は、第1実施形態にかかるα放射能の測定システム10(以下、単に「システム10」という)の構成図である。
そして、上述のうち成形基盤19、検出部24および導出部29を備える測定部60は、第1実施形態では、さらに、検出部24で検出されたα線のパルス数を計数する計数部25と、サンプル15の流量を計測する計測部23と、を備える。
貯留槽12には、放出弁38を有する放出管16および分岐弁18を有する分岐管17が接続されている。
分岐管17は、貯留槽12で攪拌された被検液11の一部をサンプル15として分岐して成形基盤19に移送するための配管である。
不純物は、例えば、海水に起因する堆積物や事故で流出した油分などであり、攪拌を継続しても被検液11の液面への浮遊や沈殿がおこる。
そこで、除去手段13で貯留槽12に流入してくる被検液11から不純物を除去することで、攪拌によって被検液11を十分に均一することができる。
なお、除去手段13により除去される対象は、α線の検出でノイズとなるβ線またはγ線の各核種などであってもよい。
撹拌部14には、貯留槽12の内部の側面に設置されたジェット噴射器などで対流をおこすことで攪拌するものなど、従来各種の攪拌手段が適宜使用できる。
第1実施形態における成形基盤19は、サンプル15をその傾斜表面に流動させて層状に成形する傾斜体19aである。
この流量は、導出部29でα線の放射能濃度を導出するための分母となるものであり、サンプル15のうち検出部24がα線を検出する領域の流量である必要がある。
ただし、サンプル15が傾斜体19aの傾斜表面を均等の厚さで流動することが担保される場合、計測部23は、例えば分岐管17に設置され、分岐管17を流動するサンプル15を計測してもよい。
さらに、分岐管17に、分岐弁18に加えてポンプ(図示せず)を備え、計測部23にポンプをも制御する機能を備えることもできる。
第1実施形態において、物理量Rは、サンプル15から放出されるα線そのものである。
すなわち、α線の検出強度は、深さが一定値以上になるとその深さにほとんど依存しない。
そこで、サンプル15の液面からα線を直接的に検出する場合、β線やγ線に由来するノイズをキャンセルするために、サンプル15の厚さを数十μm程度の層状にし、検出部24をこの液面に近づけて設置する。
なお、各種の不要な放射線による検出におけるノイズを低減させるため、鉛などの遮蔽材で検出部24の側面などを遮蔽してもよい。
また、検出を終えたサンプル15は、成形基盤19の下流に配置された貯槽26に貯蔵される。
導出部29では、単純にパルス数を流量で割って放射能濃度とするに限らず、必要に応じ、例えばノイズに対する補正など、各種の補正が行われる。
なお、放出が開始されても、サンプル15の分岐および測定は継続されて、放射能濃度の導出が続けられる。
作業員は、導出される放射能濃度によって、被検液11の放射能濃度を監視する。
図11は第1実施形態にかかるシステム10の動作手順を示すフローチャートである。
そして、撹拌部14で被検液11を撹拌する(ステップS12)。
そして、サンプル15の流量を計測部23で計測する(ステップS14)。
計測する位置は、分岐弁18の位置でも、傾斜体19aの位置でもよく、システム10の設計に合わせて適宜決定される。
検出されたα線は、計数部25でそのパルス数が計数され、導出部29に送られる。
そして、導出部29においてパルス数および計測部23で計測された流量に基づいて被検液11のα線の放射能濃度を導出する(ステップS16)。
一方、排出弁35も開放し、サンプル15を排出し、例えば放出される被検液11に合流させる。
貯留槽12の被検液11が一定値以下の量になると放出を終了し(ステップS18;YES)、放射能濃度の導出も終了する。
また、放出されている被検液11をその場で連続して測定することで、放射能濃度が許容値を超えた場合に早急な対処ができる。
図2は、第2実施形態にかかるシステム10の構成図である。
貯槽26の底面または側面には、排出弁35を有し、排出が可能な放射能濃度のサンプル15を排出する排出管21が接続されている。
例えば、指標値Mは、一定の時間区間Γごとに導出部29で導出された放射能濃度である。
比較部31は、連続する時間区間Γに属するα線の放射能濃度を次々と比較していく。
貯留している被検液11が十分に多い場合、新たな被検液11を貯留槽12に流入させながら測定したとしても、被検液11の全体の放射能濃度に急激な変化はおこらない。
すなわち、サンプル15の放射能濃度が急激に変化した場合、サンプル15は被検液11を代表していないと考えることができるということである。
なお、判定部32の不採用判定を導出部29にフィードバックさせることもできる。
フィードバックされた不採用判定は、例えば、不採用判定がされた放射能濃度をその後の計算や出力される数値から除外するなどの処置に利用できる。
返還部33は、例えば、返還管34に設置されるポンプ28と、不採用判定の信号を受信する受信部37と、この信号の受信でポンプ28を制御する制御部39などからなる。
例えば、判定部32の閾値Fをいくつか設定しておき、これらの閾値Fと指標値Mの差異との大小関係で返還弁27および排出弁35を細かく制御することもできる。
図3に示されるように、比較部31は導出部29ではなく検出部24または計数部25などに接続されてもよい。
つまり、指標値Mは、導出部29の放射能濃度に限らず、例えば、検出部24で検出されるα線の強度や計数部25で計数されたα線のパルス数であってもよい。
図12は第2実施形態にかかるシステム10の動作手順を示すフローチャートである。
被検液11を貯留槽12に貯留するステップ(ステップS11)から放射能濃度を導出するステップ(ステップS16)までは第1実施形態と同じ動作手順であるので省略する。
前述のとおり、比較される指標値Mは、計数されたα線のパルス数やα線の強度などでもよい。
そして、不採用判定されたことが導出部29に報告され、例えば、該当する放射能濃度がその後の計算や出力される数値から除外される(ステップS24)。
指標値Mの差が閾値Fより小さい場合は(ステップS22;YES)、判定部32は、採用判定する(ステップS26)。
また、排出弁35も開放され、サンプル15が排出管21から排出される。
放出弁38および排出弁35は、判定部32の判定を確認した作業員が行ってもよいし、返還部33と同様に、判定部32の判定を基準とした自動制御がなされてもよい。
なお、放出を継続しながら新たな被検液11を貯留槽12へ流入させてもよい。
なお、測定されたα線は返還の判定のみの利用に限定されず、上述の放出弁38の開閉や記録データその他に用いることができ、その用途は多様である。
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
さらに、第1実施形態に加え、サンプル15の代表性を放射能濃度の急激な変化を定量化して継続的に監視することで、被検液11の全体の放射能濃度に対するサンプル15の代表性をさらに向上させることができる。
図4は、第3実施形態にかかるシステム10の構成図である。
そして、指標値Mは、第1検知部41および第2検知部42で同時点で測定されたγ線の強度に基づくものに変更される。
α線は上述のとおり、一定の厚み以上の被検液11からは、その強度を高い精度で検出することは困難である。
そこで、例えば、貯留槽12の側面や被検液11の液面に向けて第1検知部41を設置して、第1のγ線の強度または計数率などを検知する。
また、分岐管17またはサンプル15の液面にその検知面を向けて第2検知部42を設置し、第2のγ線の強度を検知する。
なお、第2実施形態の閾値Fと同様に、閾値Fは、指標値Mの絶対値などに依存して変動するものであってもよい。
γ線の検知は、測定部60からは独立しているため、サンプル15の代表性の確認に冗長性を持たせることができる。
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
さらに、第1実施形態または第2実施形態に加え、第1検知部41および第2検知部42を備えることで、指標値Mを測定部60から独立して取得してサンプル15の採用判定をすることができる。
図5は、第4実施形態にかかるシステム10の構成図である。
これらの微粒子がα線を放出することで、測定期間に伴ってサンプル15に見かけ上の放射能濃度が上昇して測定誤差が大きくなり、サンプル15の代表性が低下する。
そして、サンプル15が被検液11を代表しているか否かの判断が不正確なものとなる。
洗浄液51を付与する付与手段52は、例えば、図5に示されるように、成形基盤19を収納する収容部55の内壁面に開口端を有する配管である。
放射性核種を含んだ洗浄液51は貯槽26に一時的に貯蔵され、回収管54に設けられた回収弁58が開放され、回収管54から回収される。
例えば、柔軟性のあるチューブであって、外側チューブに内側チューブを通した二重構造を有するものを分岐管17とする例を挙げる。
この方法では、分岐管17に残留した微粒子も除去することができる。
洗浄液51の付与と同時に振動子53で洗浄液51を振動させると、成形基盤19などの表面を傷付けずに効果的に放射性核種を除去することができる。
なお、洗浄手段が対象とする部材は成形基盤19に限らず、分岐管17または貯槽26など、検出されるα線の強度の誤差の原因となる個所も対象となりうる。
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
図6(A)は第5実施形態にかかるシステム10の成形基盤19の斜視図、図6(B)は図6(A)の成形基盤19の変形例の側面断面図である。
ドラム19bの回転の側面に付着したサンプル15は、この側面で薄い液層65になる。
この液層65の厚さは、回転軸62を伝って付与されるドラム19bの回転速度によって調整される。
図7に示されるように、成形基盤19は、回転面を流動するサンプル15に浸漬させて回転する回転板19cであってもよい。
また、図8は、第5実施形態にかかるシステム10の測定部60(図1)の変形例を示す図である。
発生したプラズマ光72は、レンズ71で集光されて検出部24a(24)で検出される。
検出部24aは、第1実施形態のシンチレーション検出器から、光電効果型などの光検出器に替えられる。
発生したプラズマ光72は、サンプル15を構成する各種の元素によるものであり、サンプル15がどのような構成および含有率で成り立つかがわかる。
この場合、必ずしも流量の情報を用いなくともα線の放射能濃度がわかることがあり、この場合は計測部23を備えなくてもよい。
図9に示されるように、測定部60は、サンプル15を気化させる気体生成部74と、気化したサンプル15を質量分析する質量分析器69と、を備え、導出部29は、質量分析で取得されたα核種の数量に基づいて被検液11の放射能濃度を導くものに替えられてもよい。
このサンプル15は、吸引パイプ73で吸引されて質量分析器69で質量分析がされる。
この場合もプラズマ分析の場合と同様に、必ずしも流量の情報を用いなくともα線の放射能濃度がわかることがあり、この場合は計測部23を備えなくてもよい。
また、光学解析器67(図8)や質量分析器69による元素の分析では、サンプル15から放出される放射線の検出は不要となる。
すなわち、γ線またはβ線によるノイズを考慮しなくてよく、サンプル15がある程度の厚さをもたせることができる。
測定部60は、図10に示されるように、サンプル15から放射されるα線によるサンプル15およびその周辺の空気の電離で発生するイオンを利用するものであってもよい。
α線は電離する力が強く、空気やサンプル15そのものをもイオン化させる。
なお、ダクト86には吸気部85とともにサンプル15の上流から送風する送風部87が備えられてもよい。
なお、測定部60の構造、α線の放射能濃度の導出方法および物理量Rが上述のものの中から適宜選択されること以外は、第3実施形態は第1実施形態から第4実施形態のいずれかと同じ構造および動作手順となるので、重複する説明を省略する。
このように、本発明の第5実施形態にかかるシステム10によれば、システム10の構造または被検液11の状態に合わせて適宜測定部60の構成を選択することができる。
また、放出されている被検液11をその場で連続して測定することで、放射能濃度が許容値を超えた場合に早急な対処ができる。
また、サンプル15に不採用判定がなされた場合に、サンプル15を貯留槽12へ返還し、返還されたサンプル15を含めて攪拌しなおすことで被検液11の真の放射能濃度を得ることができる。
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
Claims (14)
- 放射性核種を含む被検液を一時的に貯留する貯留槽と、
前記貯留槽に貯留されている前記被検液を外部へ放出する放出管と、
前記貯留槽に設置されて前記被検液を撹拌する撹拌部と、
撹拌された前記被検液の一部を分岐したサンプルを層状に成形する成形基盤と、
層状に成形された前記サンプルから放出されるα線に基づく物理量を検出する検出部と、
前記物理量に基づいて前記被検液の放射能濃度を導出する導出部と、を備えることを特徴とするα放射能の測定システム。 - 前記成形基盤の下流に配置されて前記検出を終えた前記サンプルを貯蔵する貯槽と、
前記貯槽を前記貯留槽に接続する返還管と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のα放射能の測定システム。 - 前記被検液または前記サンプルに含まれる前記放射性核種に基づく時間的または位置的に異なる2以上の指標値どうしを比較する比較部と、
比較された2以上の前記指標値の差異が閾値を超えた場合に前記サンプルは前記被検液を代表していないとして不採用判定する判定部と、を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のα放射能の測定システム。 - 前記貯槽の前記サンプルを前記返還管から前記貯留槽に返還する返還部を備えることを特徴とする請求項2に記載のα放射能の測定システム。
- 前記指標値は、前記検出部で検出されたα線の強度に基づくものであって一定の時間区間で区切られるとともに連続した前記時間区間に属することを特徴とする請求項3に記載のα放射能の測定システム。
- 貯留された前記被検液から放出されるγ線を測定する第1検知部と、
前記サンプルから放出されるγ線を測定する第2検知部と、を備え、
前記指標値は、前記第1検知部および前記第2検知部で同時点に測定された前記γ線の強度に基づくものであることを特徴とする請求項3に記載のα放射能の測定システム。 - 前記サンプルの流量を計測する計測部を備え、
前記導出部は、前記流量および前記物理量に基づいて前記被検液の放射能濃度を導出することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のα放射能の測定システム。 - 前記成形基盤は、前記サンプルをその傾斜表面に流動させて前記層状に成形する傾斜体であり、前記傾斜表面を流動する前記サンプルの流量を調整する流量調整手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のα放射能の測定システム。
- 前記成形基盤に残留する放射性核種を除去する洗浄手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のα放射能の測定システム。
- 前記洗浄手段は、残留する放射性核種を除去する洗浄液を前記成形基盤に付与する付与手段であることを特徴とする請求項9に記載のα放射能の測定システム。
- 前記貯留槽に流入してくる前記被検液から不純物を除去する除去手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のα放射能の測定システム。
- 前記サンプルの一部をプラズマ化するプラズマ生成部と、前記プラズマ化で発生したプラズマ光をスペクトル分析する光学解析器と、を備え、
前記導出部は、前記スペクトル分析で取得されたα核種の数量に基づいて前記被検液の放射能濃度を導くことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のα放射能の測定システム。 - 前記サンプルを気化させる気体生成部と、
前記気化した前記サンプルを質量分析する質量分析器と、を備え、
前記導出部は、前記質量分析で取得されたα核種の数量に基づいて前記被検液の放射能濃度を導くことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のα放射能の測定システム。 - 放射性核種を含む被検液を一時的に貯留するステップと、
前記被検液を撹拌するステップと、
撹拌された前記被検液の一部を分岐したサンプルを層状に成形するステップと、
層状に成形された前記サンプルから放出されるα線に基づく物理量を検出するステップと、
前記物理量に基づいて前記被検液の放射能濃度を導出するステップと、
前記放射能濃度が十分低いと判断された場合に前記被検液を放出するステップと、を含むことを特徴とするα放射能の測定方法。
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