JP6139251B2 - コーティング組成物、コーティングシート及びゴム複合体 - Google Patents

コーティング組成物、コーティングシート及びゴム複合体 Download PDF

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Description

本発明は、被着体の表面をコーティングするのに好適なコーティング組成物、該コーティング組成物からなるコーティングシート、及びゴム物品の表面が該コーティング組成物で覆われたゴム複合体に関する。
従来、タイヤ等のゴム物品や金属部材などの被着体との密着性が良好なコーティング剤が求められていたが、十分な密着性を得られる材料がなかった。被着体のなかでも、加硫ゴム物品を密着する方法として、例えば、特許文献1には、加硫ゴム用表面処理剤として、1,2−ポリブタジエン水酸基含有物、液状ポリブタジエンイソシアネート化物及びポリオレフィン樹脂を含む水性分散液を用いることが開示されている。
また、特許文献2には、少なくとも架橋性ポリマーベースと、加硫剤と、特定の界面活性剤とを含む水性エマルジョンから製造したポリマータイヤコーティングが提案されている。
さらに、特許文献3には、紫外線硬化型の熱可塑性エラストマーをタイヤの側面上に塗布し、塗布した紫外線硬化型の熱可塑性エラストマーに紫外線を照射して硬化層を形成する第1層形成工程と、形成した硬化層上に紫外線硬化型の熱可塑性エラストマーを塗布し、塗布した紫外線硬化型の熱可塑性エラストマーに紫外線を照射して硬化層を積層する積層工程と、を含み、タイヤ側面上に複数の硬化層の積層体よりなる装飾を形成することを特徴とする、タイヤ側面の装飾方法が開示されている。
特開平3−252442号公報 特開2013−505348号公報 特開2013−10295号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、ポリウレタン系の表面処理剤を用いているため、共有結合によりゴム物品に密着しているものではなく、ゴム物品との密着性は低かった。
また、特許文献2に記載の方法は、特定の界面活性剤を含む水性エマルジョンから製造したポリマータイヤコーティングをタイヤ等のゴム物品に噴霧又はブラシがけするものであるので、ゴム物品の表面の少なくとも一部をコーティング剤で覆うには不適であり、加飾性を付与するものではなかった。
そして、特許文献3に記載の方法は、(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー等の紫外線硬化型の熱可塑性エラストマーに紫外線を照射して硬化層を形成する工程を繰り返すのでコーティング剤の形成に手間がかかるものであった。
そこで、本発明は、手間をかけずに被着体に容易に付着させることができ、かつ強力に密着し得るコーティング組成物、該コーティング組成物を用いて加飾性を付与することのできるコーティングシート、及び該コーティングシートが被着体の表面の少なくとも一部に付着されたゴム複合体を提供することを課題とする。
本発明者等は、ポリチオール化合物(A)、イソシアネート基含有化合物(B)、及びラジカル発生剤(C)を特定の割合で配合することにより、本発明の課題を解決し得ることを見出して、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、下記[1]〜[8]に関する。
[1]1分子中にチオール基を2〜6個有するポリチオール化合物(A)、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及びこれらの変性体からなる群から選ばれる少なくとも1つのイソシアネート基含有化合物(B)、並びにラジカル発生剤(C)を含み、配合されるポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数に対する、配合されるイソシアネート基含有有機化合物(B)に含まれるイソシアネート基の合計モル数の比(イソシアネート基/チオール基)が0.20以上0.80以下であり、被着体の表面の少なくとも一部をコーティングするためのコーティング組成物。
[2]前記ラジカル発生剤(C)が熱ラジカル発生剤であって、前記ポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数に対する、配合される該熱ラジカル発生剤(C)の合計モル数の比(熱ラジカル発生剤(C)/チオール基)が0.025以上である、[1]に記載のコーティング組成物。
[3]前記ラジカル発生剤(C)が光ラジカル発生剤であって、前記ポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数に対する、配合される該光ラジカル発生剤(C)の合計モル数の比(光ラジカル発生剤(C)/チオール基)が0.0005以上である、[1]に記載のコーティング組成物。
[4]ウレタン化触媒(D)を配合してなる、[1]〜[3]のいずれかに記載のコーティング組成物。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載のコーティング組成物がゴム物品の表面の少なくとも一部に付着したゴム複合体。
[6][1]〜[4]のいずれかに記載のコーティング組成物を用いてなるコーティングシート。
[7][6]に記載のコーティングシートがゴム物品の表面の少なくとも一部に付着したゴム複合体。
[8]前記ゴム物品が有する炭素−炭素二重結合の炭素原子が、前記コーティング組成物が含有する前記ポリチオール化合物(A)のチオール基の硫黄原子と炭素−硫黄結合を形成している、[5]又は[7]に記載のゴム複合体。
本発明によれば、手間をかけずに被着体に容易に付着させることができ、かつ強力に密着し得るコーティング組成物、該コーティング組成物を用いて加飾性を付与することのできるコーティングシート、及び該コーティングシートが被着体の表面の少なくとも一部に付着されたゴム複合体を提供することができる。
[コーティング組成物]
本発明に係るコーティング組成物は、被着体の表面の少なくとも一部をコーティングするためのものであり、ポリチオール化合物(A)、イソシアネート基含有化合物(B)、及びラジカル発生剤(C)を含み、配合されるポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数に対する、配合されるイソシアネート基含有有機化合物(B)に含まれるイソシアネート基の合計モル数の比(イソシアネート基/チオール基)が0.20以上0.80以下である。
本発明に係るコーティング組成物によると、被着体がゴム物品の場合には、未加硫ゴムに限らず、加硫ゴムの表面に強力に密着することができる。その理由は、次のとおりであると推測される。
ポリチオール化合物(A)の一部とイソシアネート基含有化合物(B)とがウレタン化反応を起こすことにより、組成物が強固に硬化すると考えられる。また、ポリチオール化合物(A)の他の一部が、ラジカル発生剤(C)と反応してチイルラジカルが生じ、このチイルラジカルが、ゴム中に存在する炭素−炭素二重結合と反応すると考えられる。このようなチオール・エン反応により、組成物がゴムに化学的に結合することにより、組成物がゴムの表面に強力に密着すると考えられる。特に、未加硫ゴムのみならず加硫ゴムにも炭素−炭素二重結合が存在するため、本発明の組成物によると、ゴム特に加硫ゴムの表面に強力に密着することができると考えられる。
また、ゴム中に存在する炭素−炭素結合主鎖からの水素引き抜き反応により、ポリチオール化合物(A)のチオール基の硫黄原子と炭素−炭素結合の炭素原子とが化学的に結合すると考えられる。したがって、必ずしもゴム中に炭素−炭素二重結合が存在しなくても良い。
なお、本明細書において、ポリチオール化合物(A)、イソシアネート基含有化合物(B)、ラジカル発生剤(C)、ウレタン化触媒(D)及び表面調整剤(E)を、それぞれ、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)及び成分(E)ということがある。
<ポリチオール化合物(A)>
本発明において、ポリチオール化合物(A)とは、1分子中にチオール基を2つ以上有する化合物のことをいう。
ポリチオール化合物(A)には特に制限はないが、密着性を向上させる観点から、1分子中にチオール基を2〜6個有するものが好ましい。
また、ポリチオール化合物(A)には、1級、2級及び3級のものが含まれるが、密着性を向上させる観点から、1級がより好ましい。
ポリチオール化合物(A)の分子量は、密着性を向上させる観点から、好ましくは3000以下であり、より好ましくは2000以下であり、更に好ましくは1000以下であり、より更に好ましくは900以下であり、より更に好ましくは800以下である。なお、ポリチオール化合物(A)がポリマーの場合、分子量とは、スチレン換算の数平均分子量のことをいう。
ポリチオール化合物(A)としては、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族ポリチオール及びヘテロ原子を含んでいてもよい芳香族ポリチオールが挙げられ、密着性を向上させる観点から、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族ポリチオールが好ましい。
ここで、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族ポリチオールとは、1分子中にチオール基を2つ以上有する、ヘテロ原子を含んでもよい脂肪族化合物のことをいう。また、ヘテロ原子を含んでいてもよい芳香族ポリチオールとは、1分子中にチオール基を2つ以上有する、ヘテロ原子を含んでもよい芳香族化合物のことをいう。
ヘテロ原子は、密着性の向上の観点から、好ましくは酸素、窒素、硫黄、リン、ハロゲン原子、ケイ素から選択される少なくとも1種であり、より好ましくは酸素、窒素、硫黄、リン及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種であり、更に好ましくは酸素、窒素及び硫黄から選択される少なくとも1種である。
ヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族ポリチオールとしては、例えば、炭素数2〜20のアルカンジチオール等のようにチオール基以外の部分が脂肪族炭化水素であるポリチオール、アルコールのハロヒドリン付加物のハロゲン原子をチオール基で置換してなるポリチオール、ポリエポキシド化合物の硫化水素反応生成物からなるポリチオール、分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコールとチオグリコール酸とのエステル化により得られるチオグリコール酸エステル化物、分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコールとメルカプト脂肪酸とのエステル化により得られるメルカプト脂肪酸エステル化物、イソシアヌレート化合物とチオールとを反応させてなるチオールイソシアヌレート化合物、ポリスルフィド基を含有するチオール、チオール基で変性されたシリコーン、チオール基で変性されたシルセスキオキサン等が挙げられる。
なお、上記の分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコール類としては、炭素数2〜20のアルカンジオール、ポリ(オキシアルキレン)グリコール、グリセロール、ジグリセロール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
これらの中で、密着性の向上の観点から、チオール基以外の部分が脂肪族炭化水素であるポリチオール、アルコールのハロヒドリン付加物のハロゲン原子をチオール基で置換してなるポリチオール、ポリエポキシド化合物の硫化水素反応生成物からなるポリチオール、チオグリコール酸エステル化物、メルカプト脂肪酸エステル化物、及びチオールイソシアヌレート化合物がより好ましく、メルカプト脂肪酸エステル化物及びチオールイソシアヌレート化合物が更に好ましく、メルカプト脂肪酸エステル化物がより更に好ましい。同様の観点から、ポリスルフィド基やシロキサン結合を含有しないチオールがより好ましい。
(チオール基以外の部分が脂肪族炭化水素であるポリチオール)
チオール基以外の部分が脂肪族炭化水素であるポリチオールの例としては炭素数2〜20のアルカンジチオールがある。
前記炭素数2〜20のアルカンジチオールとしては、1,2−エタンジチオール、1,1−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール等が挙げられる。
(チオグリコール酸エステル化物)
チオグリコール酸エステル化物としては、1,4−ブタンジオールビスチオグリコレート、1,6−ヘキサンジオールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート等が挙げられる。
(メルカプト脂肪酸エステル化物)
メルカプト脂肪酸エステル化物としては、密着性の向上の観点から、1級チオール基を有するメルカプト脂肪酸エステル化物が好ましく、分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコールの、β−メルカプトプロピオン酸エステル化物がより好ましい。また、1級チオール基を有するメルカプト脂肪酸エステル化物は、密着性の向上の観点から、1分子中におけるチオール基の数が4〜6個であることが好ましく、4個又は5個であることが好ましく、4個であることがより好ましい。
上記の1級チオール基を有するβ−メルカプトプロピオン酸エステル化物としては、好ましくはテトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)(EGMP−4)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(TMMP)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(PEMP)、及びジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)(DPMP)が挙げられる。これらの中で、PEMP及びDPMPが好ましく、PEMPがより好ましい。
なお、2級チオール基を有するβ−メルカプトプロピオン酸エステル化物としては、分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコール類と、β−メルカプトブタン酸とのエステル化物が挙げられ、具体的には、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)等が挙げられる。
(チオールイソシアヌレート化合物)
イソシアヌレート化合物とチオールとを反応させてなるチオールイソシアヌレート化合物としては、密着性の向上の観点から、1級チオール基を有するチオールイソシアヌレート化合物が好ましい。また、1級チオール基を有するチオールイソシアヌレート化合物としては、密着性の向上の観点から、1分子中におけるチオール基の数が2〜4個であることが好ましく、3個であることがより好ましい。
上記の1級チオール基を有するチオールイソシアヌレート化合物としては、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート(TEMPIC)が好ましい。
(チオール基で変性されたシリコーン)
チオール基で変性されたシリコーンとしては、商品名KF−2001、KF−2004、X−22−167B(信越化学工業)、SMS042、SMS022(Gelest社)、PS849、PS850(UCT社)等が挙げられる。
(芳香族ポリチオール)
芳香族ポリチオールとしては、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,3−ジ(p−メトキシフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、1,3−ジフェニルプロパン−2,2−ジチオール、フェニルメタン−1,1−ジチオール、2,4−ジ(p−メルカプトフェニル)ペンタン等が挙げられる。
<イソシアネート基含有化合物(B)>
イソシアネート基含有化合物(B)としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネート、これらの変性体等が挙げられる。
芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、フェニレンジイソシアネート(PPDI)、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、メチルシクロへキサンジイソシアネート(水素化TDI)、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート(水素化MDI)、シクロへキサンジイソシアネート(水素化PPDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロへキサン(水素化XDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、へキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ブタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルへキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルへキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
配合されるポリチオール化合物(A)が、メルカプト脂肪酸エステル化物及びチオールイソシアヌレート化合物である場合、配合されるイソシアネート基含有化合物(B)は、へキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、及びジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の1種又は2種以上が好ましい。また、これらの中では、へキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロへキサン(水素化XDI)及びトリレンジイソシアネート(TDI)の1種又は2種以上がより好ましい。
また、芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートの変性体としては、トリメチロールプロパンとイソシアネートとの反応により得られるTMP(トリメチロールプロパン)アダクト型変性体、イソシアネートの3量化により得られるイソシアヌレート型変性体、ウレアとイソシアネートとの反応により得られるビューレット型変性体、ウレタンとイソシアネートとの反応により得られるアロファネート型変性体、ポリオールとの反応で得られるプレポリマー体等が挙げられ、適宜、使用することができる。
なお、TMPアダクト型変性体、イソシアヌレート型変性体、ビューレット型変性体、アロファネート型変性体としては、密着性の向上の観点から、次の変性体が好ましい。
すなわち、TMPアダクト型変性体としては、TMPとTDIとの反応により得られるTMPアダクト型変性体、TMPとXDIとの反応により得られるTMPアダクト型変性体、TMPと水添XDIとの反応により得られるTMPアダクト型変性体、TMPとIPDIとの反応により得られるTMPアダクト型変性体、TMPとHDIとの反応により得られるTMPアダクト型変性体、及びTMPとMDIとの反応により得られるTMPアダクト型変性体が好ましい。
また、イソシアヌレート型変性体としては、HDIの3量化により得られるイソシアヌレート型変性体、IPDIの3量化により得られるイソシアヌレート型変性体、TDIの3量化により得られるイソシアヌレート型変性体、及び水添XDIの3量化により得られるイソシアヌレート型変性体、が好ましい。
また、ビューレット型変性体としては、ウレアとHDIとの反応により得られるビューレット型変性体、が好ましい。
また、アロファネート型変性体としては、ウレタンとIPDIとの反応により得られるアロファネート型変性体が好ましい。
上記TMPアダクト型変性体、イソシアヌレート型変性体、ビューレット型変性体及びアロファネート型変性体の少なくとも1種と組み合せて使用されるポリチオール化合物(A)としては、好ましくは1級チオール基を有するβ−メルカプトプロピオン酸エステル化物及び1級チオール基を有するチオールイソシアヌレート化合物の1種又は2種である。
ここで、1級チオール基を有するβ−メルカプトプロピオン酸エステル化物としては、好ましくはペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(PEMP)及びジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)DPMPの少なくとも1種である。また、この1級チオール基を有するチオールイソシアヌレート化合物としては、好ましくは1分子中におけるチオール基の数が3個である1級チオール基を有するチオールイソシアヌレート化合物であり、より好ましくはトリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート(TEMPIC)である。
<ラジカル発生剤(C)>
ラジカル発生剤(C)としては、熱ラジカル発生剤及び光ラジカル発生剤の少なくとも1種を用いることができる。これらの中で、コーティング組成物を含むコーティング剤をゴム物品の表面の少なくとも一部に付着させる観点から光ラジカル発生剤が、熱ラジカル発生剤と同様に用いられ得る。また、ゴム物品との密着性をより高める観点からは、熱ラジカル発生剤が好ましく、過酸化物からなる熱ラジカル発生剤がより好ましく、有機過酸化物からなる熱ラジカル発生剤が更に好ましい。ラジカル発生剤(C)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
光ラジカル発生剤としては、公知のものを広く用いることができ、特に制限されるものではない。
例えば分子内開裂型の光ラジカル発生剤が挙げられ、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル系光ラジカル発生剤;2,2−ジエトキシアセトフェノン、4’−フェノキシ−2,2−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン系光ラジカル発生剤;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4’−ドデシル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン等のプロピオフェノン系光ラジカル発生剤;ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2−エチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン等のアントラキノン系光ラジカル発生剤;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系光ラジカル発生剤等が挙げられる。
また、その他水素引き抜き型の光ラジカル発生剤としてベンゾフェノン/アミン系光ラジカル発生剤、ミヒラーケトン/ベンゾフェノン系光ラジカル発生剤、チオキサントン/アミン系光ラジカル発生剤等を挙げることができる。また未反応光ラジカル発生剤のマイグレーションを避けるため非抽出型光ラジカル発生剤を用いることができる。例えばアセトフェノン系ラジカル発生剤を高分子化したもの、ベンゾフェノンにアクリル基の二重結合を付加したものがある。
これらの光ラジカル発生剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
有機過酸化物からなる熱ラジカル発生剤としては、例えば、t−ブチル−2−エチルペルオキシヘキサノアート、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノアート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサノン、ジ−t―ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ(t−ブチル)パーオキサイド、過酸化ベンゾイル1,1’−ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、過酸化ベンゾイル、1,1’−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、ジクミルパーオキサイド等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、t−ブチル−2−エチルペルオキシヘキサノアート、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノアート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサノン、ジ−t―ブチルパーオキサイド、及びt−ブチルクミルパーオキサイドの少なくとも1種である。有機過酸化物からなる熱ラジカル発生剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
無機過酸化物からなる熱ラジカル発生剤としては、過酸化水素と鉄(II)塩との組み合わせ、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせ、等の酸化剤と還元剤の組み合わせからなるレドックス発生剤が挙げられる。無機化酸化物からなる熱ラジカル発生剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
<任意成分>
本発明の組成物は、更に任意成分が配合されてもよい。任意成分としては、ウレタン化触媒、表面調整剤、溶剤、バインダー、フィラー、顔料分散剤、導電性付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、乾燥防止剤、浸透剤、pH調整剤、金属封鎖剤、防菌防かび剤、界面活性剤、可塑剤、ワックス、レベリング剤等が挙げられる。
(ウレタン化触媒(D))
ウレタン化触媒(D)としては、任意のウレタン化触媒を用いることができる。該ウレタン化反応用触媒としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズチオカルボキシレート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズチオカルボキシレート、オクテン酸スズ、モノブチルスズオキシド等の有機スズ化合物;塩化第一スズ等の無機スズ化合物;オクテン酸鉛等の有機鉛化合物;ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン(TEDA)、ベンジルジメチルアミン、2,2’−ジモルホリノエチルエーテル、N−メチルモルフォリン等のアミン類;p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロ硫酸等の有機スルホン酸;硫酸、リン酸、過塩素酸等の無機酸;ナトリウムアルコラート、水酸化リチウム、アルミニウムアルコラート、水酸化ナトリウム等の塩基類;テトラブチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のチタン化合物;ビスマス化合物;四級アンモニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは上記アミン類であり、より好ましくはトリエチレンジアミン(TEDA)である。これら触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
コーティング組成物中、ウレタン化触媒(D)が0.0001〜0.1質量%含まれることが好ましい。
(表面調整剤(E))
表面調整剤(E)としては、任意の表面調整剤を使用することができる。該表面調整剤としては、アクリル系、ビニル系、シリコーン系、フッ素系などが挙げられる。これらの中でも、相溶性と表面張力低下能の観点からシリコーン系が好ましい。
コーティング組成物中、表面調整剤(E)が0.001〜10質量%含まれることが好ましい。
(溶剤)
溶剤としては、他の配合成分と反応しないものであれば特に制限はなく、芳香族溶媒や脂肪族溶媒が挙げられる。
芳香族溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン等が挙げられる。脂肪族溶媒としては、ヘキサン等が挙げられる。
<各成分の配合量>
配合されるポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数に対する、配合されるイソシアネート基含有化合物(B)に含まれるイソシアネート基の合計モル数の比(イソシアネート基/チオール基)は、0.20以上0.80以下である。当該比(イソシアネート基/チオール基)が0.20未満であると、組成物が十分に強固に硬化せず、コーティング体の凝集性が低下する。また、当該比(イソシアネート基/チオール基)が0.80を超える値であると、チオール基が少ないために、チオール基とゴム部材の炭素−炭素二重結合との間でチオール・エン反応が十分に行われず、コーティング組成物をゴム部材の表面に強固に密着させることができなくなり、密着性が悪くなる。従って、当該比(イソシアネート基/チオール基)は、好ましくは0.30以上であり、好ましくは0.70以下であり、好ましくは0.40以上0.60以下である。
ここで、配合されるポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数は、配合されるポリチオール化合物(A)のモル数に、ポリチオール化合物(A)の1分子が有するチオール基数を乗じることにより算出することができる。
また、配合されるイソシアネート基含有化合物(B)に含まれるイソシアネート基の合計モル数は、JIS K1603−1 B法により測定することができる。
更に、上記モル数の比(イソシアネート基/チオール基)は、上記のようにして得られる、配合されるイソシアネート基含有化合物(B)に含まれるイソシアネート基の合計モル数を、配合されるポリチオール化物(A)に含まれるチオール基の合計モル数で除することにより求めることができる。
ラジカル発生剤が熱ラジカル発生剤を含む場合には、配合されるポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数に対する、配合される熱ラジカル発生剤(C)の合計モル数の比(熱ラジカル発生剤(C)/チオール基)は、0.025以上であることが好ましい。これにより、密着性が向上する。この観点から、当該比(熱ラジカル発生剤(C)/チオール基)は、好ましくは0.03以上であり、より好ましくは0.035以上であり、更に好ましくは0.04以上である。また、密着性の向上の観点から、当該比(熱ラジカル発生剤(C)/チオール基)は、好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.45以下であり、更に好ましくは0.4以下である。
ラジカル発生剤が光ラジカル発生剤を含む場合には、配合されるポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数に対する、配合される光ラジカル発生剤(C)の合計モル数の比(光ラジカル発生剤(C)/チオール基)は、0.0005以上であることが好ましい。これにより、密着性が向上する。この観点から、当該比(光ラジカル発生剤(C)/チオール基)は、好ましくは0.001以上であり、より好ましくは0.005以上である。
ラジカル発生剤が光ラジカル発生剤と熱ラジカル発生剤とを含むときは、ポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数に対する、光ラジカル発生剤及び熱ラジカル発生剤の合計モル数の比(光ラジカル発生剤及び熱ラジカル発生剤)/チオール基が0.025以上であることが好ましい。これにより、密着性が向上する。この観点から、当該比(光ラジカル発生剤及び熱ラジカル発生剤)/チオール基は、好ましくは0.03以上であり、より好ましくは0.035以上であり、更に好ましくは0.04以上である。また、密着性の向上の観点から、当該比{(光ラジカル発生剤及び熱ラジカル発生剤)/チオール基}は、好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.45以下であり、更に好ましくは0.4以下である。
任意成分として、炭素−炭素二重結合を含む化合物を配合してもよい。ただし、この炭素−炭素二重結合を含む化合物の配合量が多くなると、ポリチオール化合物(A)がこの炭素−炭素二重結合を含む化合物と反応してしまう。これにより、ポリチオール化合物(A)とゴム中の炭素−炭素二重結合との間のチオール・エン反応が生じ難くなり、ゴムに対する組成物の密着性が低下するおそれがある。または、これにより、ゴムの炭素−炭素結合主鎖からの水素引き抜き反応により、ポリチオール化合物(A)のチオール基の硫黄原子と炭素−炭素結合の炭素原子とが化学的に結合する反応が生じ難くなり、ゴムに対する組成物の密着性が低下するおそれがある。したがって、配合されるポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数に対する、配合される炭素−炭素二重結合を含む化合物に含まれる炭素−炭素二重結合の合計モル数の比(炭素−炭素二重結合/チオール基)が、0.4未満であることが好ましく、0.1未満であることが好ましく、0.08以下であることがより好ましく、0.05以下であることが更に好ましく、0.01以下であることがより更に好ましい。
ここで、配合される炭素−炭素二重結合を含む化合物に含まれる炭素−炭素二重結合の合計モル数は、配合される当該化合物のモル数に、当該化合物の1分子が有する炭素−炭素二重結合の数を乗じることにより求めることができる。
また、上記モル数の比(炭素−炭素二重結合/チオール基)は、上記のようにして得られる、配合されるラジカル発生剤(C)の合計モル数を、配合されるポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数で除することにより求めることができる。
上記のとおり、本発明に係るコーティング組成物は、必須成分である成分(A)〜(C)の他に、任意成分を含有してもよい。しかし、ゴム特に加硫ゴムの表面との強力な密着性を得る観点から、組成物中における成分(A)〜(C)の合計含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上である。
同様の観点から、成分(A)〜(E)の合計含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
[コーティング剤]
本発明に係るコーティング剤は、上記コーティング組成物を含む。本発明に係るコーティング剤は、本発明の目的を阻害しない範囲内において、上記の組成物以外の成分を含んでもよい。しかし、本発明の効果を良好に発現させる観点から、コーティング剤中におけるコーティング組成物の含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
[コーティング体]
本発明において、コーティング体は、コーティング組成物の塗布により得られる。コーティング体は、コーティング組成物を被着体の表面の少なくとも一部に塗布した後、該コーティング組成物に加熱及び光照射の少なくとも一方を施すことによりコーティング体とする。
[コーティングシート]
本発明に係るコーティングシートは、前述したコーティング組成物を用いて形成される。このコーティングシートは、剥離紙や剥離フィルム等の剥離シート上にコーティング組成物を塗布し、シート形状を保持することにより、好適に製造することができる。この保持により、コーティング組成物中のチオール基とイソシアネート基の少なくとも一部がチオールウレタン反応することにより、シート形状になるものと考えられる。なお、剥離紙や剥離フィルム等の剥離シート上にコーティング組成物を塗布した後、常温で放置することにより、コーティングシートを好適に製造することができる。また、塗布後、ラジカル発生剤によるラジカル反応が開始しない程度に加熱することにより、コーティングシートを製造してもよい。
保持時間は、ウレタン化触媒の量により調整することができる。シート化形成の作業性及びゴム物品などに付着させる作業時にシート形状を維持し得る程度に保形させる観点から、好ましくは1分以上であり、より好ましくは3分以上である。また、保持温度は、通常室温でシート化可能であるが、材料中のラジカル発生剤が開裂しない程度に加温することも可能である。以上の観点から好ましくは0〜60℃であり、より好ましくは15〜40℃である。
剥離シートの材料としては特に制限はないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン46、変性ナイロン6T、ナイロンMXD6、ポリフタルアミド等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルスルフォン等のケトン系樹脂、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン等のスルフォン系樹脂の他に、ポリエーテルニトリル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリビニルクロライド等の有機樹脂を主成分とする透明樹脂基板を好適に用いることができる。
コーティングシート(剥離シートを除く)の厚さは、付着する対象や要求される付着強度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、10μm〜10mmであり、好ましくは20μm〜10mmであり、より好ましくは30μm〜10mmである。
[複合体]
複合体は、前述のコーティング組成物が被着体の表面の少なくとも一部に付着してなるものである。
<ゴム複合体>
被着体がゴム物品の場合には、前述のコーティング組成物が被着体の表面の少なくとも一部に付着してなるものをゴム複合体という。本発明に係るゴム複合体は、前述のコーティング組成物がゴム物品の表面の少なくとも一部に付着してなる。または、前述のコーティングシートがゴム物品の表面の少なくとも一部に付着してなる。コーティング組成物の厚みやコーティングシートの厚みは、使用目的に応じて適宜選択することができる。
<ゴム物品>
ゴム物品は、加硫ゴムであっても未加硫ゴムであってもよい。また、ゴム物品を構成するゴムが、炭素−炭素二重結合を有することが好ましい。この場合、前記コーティング組成物又は前記コーティングシートに接するゴム物品が有する炭素−炭素二重結合の炭素原子が、前記コーティング組成物又は前記コーティングシートが有するポリチオール化合物(A)のチオール基の硫黄原子と炭素−硫黄結合を形成すると推測される。
ただし、ゴム物品を構成するゴムが、炭素−炭素二重結合を有しなくても、ゴム複合体を得ることができると推測される。この場合、ポリチオール化合物(A)による、ゴム中に存在する炭素−炭素結合主鎖からの水素引き抜き反応により、ポリチオール化合物(A)のチオール基の硫黄原子と炭素−炭素結合の炭素原子とが化学的に結合すると推測される。しかし、密着性の向上の観点からは、ゴム物品を構成するゴムが、炭素−炭素二重結合を有することが好ましい。
また、ゴム物品の材料は特に限定されないが、天然ゴム、共役ジエン系合成ゴムからなるジエン系ゴムが好ましい。ここで、共役ジエン系合成ゴムとしては、合成ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Cl−IIR、Br−IIR等)、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)、エチレン−ブタジエン共重合ゴム、プロピレン−ブタジエン共重合ゴム等が挙げられる。また、ゴム物品の材料として用いられるその他のゴムとして、ハイパロンゴム(クロロスルホルン化ポリエチレンゴム)、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPM)、ポリシロキサンゴムなどの合成ゴムが挙げられる。ゴムは、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
<ゴム複合体の製造方法(コーティング組成物を用いる場合)>
次に、コーティング組成物を用いてゴム複合体を製造する方法について説明する。
本発明に係るゴム複合体は、ゴム物品の表面の少なくとも一部にコーティング組成物を塗布することにより得ることができる。
コーティング組成物をゴム物品の表面の少なくとも一部に塗布する場合、又は剥離シート等にコーティング剤を塗布してコーティングシートを形成する場合の塗布方法は限定されない。例えば、刷毛塗り、ローラーブラシ塗り、タンポ塗り、へら塗り等の手作業又は機器作業による塗布方法;インクジェット印刷による塗布方法;スプレー塗り、ホットスプレー塗り、エアレススプレー塗り、ホットエアレススプレー塗り等のスプレーコート法;カーテンフロー塗り;流し塗り;ロールコート;グラビアコート;浸漬塗り(ディッピング);転がし塗り;スピンコート;リバースコート;バーコート;スクリーンコート;ブレードコート;エアーナイフコート;ディスペンサーによるディスペンシング;T−ダイ成形法;薄膜押出成型法;等の種々の塗布方法が包含される。
必要に応じて、塗布後に所定時間放置する。この場合の放置時間は、硬化時にコーティング組成物が漏れ出ないようにコーティング組成物を保形する観点から、好ましくは0〜30分であり、より好ましくは1〜15分である。
コーティング組成物が熱ラジカル発生剤を含んでいる場合、硬化は加熱により行うことが好ましい。加熱温度は熱ラジカル発生剤が効率よくラジカルを発生する温度を適宜選択することができるが、好ましくは熱ラジカル発生剤の1分間半減期温度±30℃付近である。
コーティング組成物が光ラジカル発生剤を含んでいる場合、硬化は光照射により行うことが好ましい。光としては、紫外線、可視光線、赤外線、X線などの電磁波;α線、γ線、電子線などの粒子線から選択される少なくとも1種を好ましく用いることができる。これらの中でも、光としては紫外線が好ましい。密着性の向上及びコスト低減の観点から、光源としては、紫外線ランプを好適に用いることができる。また、同様の観点から、光照射時間は、好ましくは数秒〜数十秒、より好ましくは1〜40秒、更に好ましくは3〜20秒である。
<ゴム複合体の製造方法(コーティングシートを用いる場合)>
次に、コーティングシートを用いて積層体を製造する方法について説明する。
本発明に係るゴム複合体は、ゴム物品の表面の少なくとも一部に前述のコーティング組成物を用いてなるコーティングシートを付着することにより得ることができる。
例えば、先ず、ゴム物品にコーティングシートを付着させて重ね合せ体を得て、必要に応じて、この重ね合せ体にその厚み方向のプレス圧を加えながら、硬化させることにより、ゴム複合体を好適に製造することができる。重ね合せ体にプレス圧を加える場合、密着性を向上させる観点から、プレス圧は、好ましくは0.1〜5.0MPaであり、より好ましくは0.4〜4.0MPaであり、更に好ましくは0.5〜3.0MPaである。
なお、それ以外のプレス条件(プレス時間)や、硬化条件(加熱温度、加熱時間、光源、及び光照射時間)は、前述したコーティング組成物を用いる場合と同様である。
<ゴム物品以外の被着体>
コーティング組成物は、ゴム物品以外に、金属や樹脂に付着して複合体を形成することができる。本発明に係るコーティング組成物及びコーティングシートによると、金属表面及び樹脂表面にも強力に密着することができる。
<複合体のその他の形態>
前述のコーティング組成物が被着体の表面の少なくとも一部に付着してなる複合体において、コーティング組成物が硬化してなるコーティング体の表面には、表面保護や加飾のための上地剤、塗料等がさらに付着されていてもよい。上地剤、塗料等として使用可能な化合物は、コーティング体との密着性が良好であれば、特に限定されない。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
[原料等]
原料等としては、次のものを用いた。
<ポリチオール化合物(A)(成分(A))>
ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(PEMP):SC有機化学株式会社製、チオール基4個
ジペンタエリスリトールヘキサキス(3―メルカプトプロピオネート)(DPMP):SC有機化学株式会社製、チオール基6個
Figure 0006139251
<イソシアネート基含有化合物(B)(成分(B))>
HDIビューレット変性型イソシアネート:住友バイエルウレタン(株)製、商品名「デスモジュールN3200」、イソシアネート基2個
HDIイソシアヌレート変性型イソシアネート:日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHXLV」、イソシアネート基2個
IPDIイソシアヌレート変性型イソシアネート:住化バイエルウレタン(株)製、商品名「デスモジュールZ4470BA」、イソシアネート基2個
IPDIアロファネート変性型イソシアネート:住化バイエルウレタン(株)製、商品名「デスモジュールXP2565」、イソシアネート基2個
TDI TMPアダクト変性型イソシアネート:住化バイエルウレタン(株)製、商品名「デスモジュールL75(C)」、イソシアネート基2個
TDIイソシアヌレート変性型イソシアネート:三井化学ポリウレタン(株)製、商品名「D−204」、イソシアネート基2個
XDI TMPアダクト変性型イソシアネート:三井化学ポリウレタン(株)製、商品名「D−110N」、イソシアネート基2個
6XDI TMPアダクト変性型イソシアネート:三井化学ポリウレタン(株)製、商品名「D−120N」、イソシアネート基2個
6XDI イソシアヌレート変性型イソシアネート:三井化学ポリウレタン(株)製、商品名「D−127N」、イソシアネート基2個
IPDI:エボニックデグサジャパン(株)製、商品名「VESTANAT IPDI」、イソシアネート基2個、官能基当量111
<ラジカル発生剤(C)(成分(C))>
t−ブチル−2−エチルペルオキシヘキサノアート:日本油脂株式会社製、商品名「パーブチルO」
ジラウロイルパーオキサイド:日本油脂株式会社製、商品名「パーロイルL」
1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノアート:日本油脂株式会社製、商品名「パーオクタO」
1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサノン:日本油脂株式会社製、商品名「パーヘキサHC」
ジ−t―ブチルパーオキサイド:日本油脂株式会社製、商品名「パーブチルD」
t−ブチルクミルパーオキサイド:日本油脂株式会社製、商品名「パーブチルC」
1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン:BASF製、商品名「IRGACURE184」
<ウレタン化触媒(D)(成分(D))>
トリエチレンジアミン(TEDA): Air Products社製、商品名「DABCO 33LV catalyst」
<表面調整剤(E)(成分(E))>
ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンとポリエーテルの混合物:ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名「BYK−307」、含有量100%
[チオール基数の測定]
配合されるポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数は、配合量を理論分子量で除し、ポリチオール化合物(A)の1分子が有するチオール基数を乗じることにより算出することにより求めた。
[イソシアネート基数の測定]
配合されるイソシアネート基含有化合物(B)に含まれるイソシアネート基の合計モル数は、JIS K1603−1 B法により測定した。
[ゴム部材の製造]
下記の表1の配合に従い、ゴム部材(縦100mm×幅25mm×厚さ10mm)を製造した。具体的には、縦50mm×幅270mm×厚み3.4mmに圧延した各シートを3枚重ね、縦150mm×幅270mm×厚み10mmのモールド中で150℃45分の条件で加硫を行った。この後、縦100mm×幅25mmにカットして、引張試験用サンプルとしての上記ゴム部材を得た。
Figure 0006139251
なお、表1中の各成分の詳細は、次のとおりである。
天然ゴム(NR):RSS#3
ポリブタジエンゴム(BR):JSR社製、商品名「JSR BRO1」
スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR):JSR社製、商品名「JSR 1500」
カーボンブラック:旭カーボン株式会社製、商品名「旭#70」
老化防止剤:N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクラック6C」
加硫促進剤1:1,3−ジフェニルグアニジン、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラーD(D−P)」
加硫促進剤2:ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラーDM−P(DM)」
[コーティング剤の塗布から得たコーティング体についての密着力の測定方法]
コーティング剤を、厚さが30μmになるようにゴム物品に塗布し、塗布面を硬化させた。硬化は、光ラジカル発生剤のみを含有するコーティング剤の場合は、200〜400mW/cm2、1000〜4000mJ/cm2の条件で紫外線照射を行った。熱ラジカル発生剤のみを含有するコーティング剤の場合は、温度150℃にて、0.05MPaのプレス圧を加えながら30分保持することにより行った。光ラジカル発生剤と熱ラジカル発生剤を含有するコーティング剤の場合は、200〜400mW/cm2、500〜1000mJ/cm2の条件で紫外線照射を行った後、温度150℃にて、0.05MPaのプレス圧を加えながら30分保持することにより行った。得られたコーティング体とゴム物品とを、JIS K5600−5−6に従い碁盤目試験(クロスカット法)で密着力を測定した。この方法はガイドを用いて塗膜に刃で切り込みを入れ、セロハンテープを貼り付けた後に60°に近い角度で剥がした際の膜の剥がれを観察する方法である。1つの試験片に付き5×5の25マス×4ヶ所で試験を行い、剥がれずに残ったマス目の数で評価を行う。
<判定基準>
◎:100/100(1マスの剥がれもない)
○:80/100〜99/100
△:50/100〜79/100
×:0/100〜49/100もしくはコーティング体が未硬化のため測定不可
[コーティングシートから得たコーティング体についての密着力の測定方法]
厚さ30μmのコーティングシートを、ゴム物品の表面の一部に付着させた後、コーティングシートを硬化させた。硬化は、コーティング剤の塗布から得たコーティング体の場合と同じである。得られたコーティング体とゴム物品とを、JIS K5600−5−6に従い碁盤目試験(クロスカット法)で密着力を測定した。この方法はガイドを用いて塗膜に刃で切り込みを入れ、セロハンテープを貼り付けた後に60°に近い角度で剥がした際の膜の剥がれを観察する方法である。1つの試験片に付き5×5の25マス×4ヶ所で試験を行い、剥がれずに残ったマス目の数で評価を行う。
<判定基準>
◎:100/100(1マスの剥がれもない)
○:80/100〜99/100
△:50/100〜79/100
×:0/100〜49/100もしくはコーティング体が未硬化のため測定不可
密着力の値としては、残ったマス目の数が80/100以上の力であれば、ゴム物品の基材から容易に剥離が起きない充分な密着力を有する。好ましくは100/100である。一方、80/100以下であれば、ゴム物品の基材とコーティング剤の反応が十分でなく界面で剥離をしている。そのような状態ではいずれも密着力は十分とは言えない。
[コーティング体の硬化性の測定方法]
コーティング体の表面を指触し、官能的にタック感の有無を評価する。
○:タック感なし
×:タック感あり
[コーティング体の加飾性の測定方法]
目視によりコーティング体中に着色粒子(アートパール:根上工業製)を添加し、加飾性を評価した。
○:コーティング体が均一に加飾されている。
×:コーティング体の加飾状態にムラがある、もしくはコーティング体が未硬化。
[実施例1〜8及び比較例1〜6並びに実施例9〜16及び比較例7〜12]
実施例1〜8及び比較例1〜6(コーティング剤の塗布から得たコーティング体)では、配合されるポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数に対する、配合されるイソシアネート基含有化合物(B)に含まれるイソシアネート基の合計モル数の比(イソシアネート基/チオール基)を変えることにより、当該比(イソシアネート基/チオール基)と、ゴム物品との密着力、硬化性及び加飾性との関係を検討した。
また、実施例9〜16及び比較例7〜12(コーティングシートから得たコーティング体)では、上記実施例1〜8及び比較例1〜6(コーティング剤の塗布から得たコーティング体)のコーティング剤をコーティングシートにしたこと以外は同様にして、当該比(イソシアネート基/チオール基)と、ゴム物品との密着力、硬化性及び加飾性との関係を検討した。
次に、これら実施例及び比較例について具体的に説明する。
<実施例1〜8及び比較例1〜6(コーティング剤の塗布から得たコーティング体)>
下記表2に示すとおり(各成分の数値は質量部を示す。)に各成分を配合してコーティング組成物を得、当該コーティング組成物をコーティング剤とした。
得られたコーティング剤を、上記のとおりに硬化し、上記のとおりにコーティング剤の硬化体についての密着力を測定した。ゴム物品としてはゴム物品1(NR/BR配合)を用いた。その結果を表5に示す。
なお、表2、3及び4において、チオール官能基濃度とは、接着剤又は接着シートの各構成成分の合計量に対するチオール基の濃度(mmol/g)のことをいう。また、NCO官能基濃度とは、接着剤又は接着シートの各構成成分の合計量に対するイソシアネート基の濃度(mmol/g)のことをいう。更に発生剤濃度とは、接着剤又は接着シートの各構成成分の合計量に対するラジカル発生剤の濃度(mmol/g)のことをいう。
但し、各構成成分は相互に反応したり分解したりすることがあるため、いずれの値も、各構成成分が反応又は分解する前において算出した値、換言すると、実際に配合する直前の各構成成分の量から算出される理論値とした。
<実施例9〜16、比較例7〜12(コーティングシートから得たコーティング体)>
表2に示すとおり、実施例9〜16及び比較例7〜12では、それぞれ、実施例1〜82及び比較例1〜6と同様のコーティング剤を用意した。
それぞれのコーティング剤をPETフィルム製剥離シート上に塗布し、室温で30分間保持することにより、縦100mm、横25mm、厚さ30μmのコーティングシートを得た。
得られたコーティングシートを、上記のとおりに硬化し、上記のとおりにコーティングシートの硬化体についての密着力を測定した。ゴム物品としては、実施例1と同様にゴム物品1(NR/BR配合)を用いた。その結果を表5に示す。
[実施例17〜24及び比較例13〜18並びに実施例25〜32及び比較例19〜24]
表3に示すとおりに、成分(C)を光ラジカル発生剤{1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン(IRGACURE184) BASF製}から熱ラジカル発生剤{t−ブチル−2−エチルペルオキシヘキサノアート(パーブチルO)}に変更した以外は同様にして、合計モル数の比(イソシアネート基/チオール基)と、ゴム物品1(NR/BR配合)との密着力、硬化性及び加飾性との関係を上記の方法で評価した。その結果を表6に示す。
[実施例33〜40及び比較例25〜31並びに実施例41〜48及び比較例32〜38]
表4に示すとおりに、成分(C)を光ラジカル発生剤{1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン(IRGACURE184) BASF製}及び熱ラジカル発生剤{ジ−t−ブチルパーオキサイド(パーブチルD)}の併用に変更した以外は同様にして、合計モル数の比(イソシアネート基/チオール基)と、ゴム物品1(NR/BR配合)との密着力、硬化性及び加飾性との関係を上記の方法で評価した。その結果を表7に示す。
[実施例49〜56及び比較例39〜44並びに実施例57〜64及び比較例45〜50]
被着体をゴム物品2(SBR配合)に変えて、実施例1〜8及び比較例1〜6並びに実施例9〜16及び比較例7〜12と同じ組成内容である表2に示す組成内容のコーティング剤及びコーティングシートを用い、合計モル数の比(イソシアネート基/チオール基)と、ゴム物品2(SBR配合)との密着力、硬化性及び加飾性との関係を上記の方法で評価した。その結果を表8に示す。
[実施例65〜72及び比較例51〜56並びに実施例73〜80及び比較例57〜62]
被着体をゴム物品2(SBR配合)に変えて、実施例17〜24及び比較例13〜18並びに実施例25〜32及び比較例19〜24と同じ組成内容である表3に示す組成内容のコーティング剤及びコーティングシートを用い、合計モル数の比(イソシアネート基/チオール基)と、ゴム物品2(SBR配合)との密着力、硬化性及び加飾性との関係を上記の方法で評価した。その結果を表9に示す。
[実施例81〜88及び比較例63〜69並びに実施例89〜96及び比較例70〜76]
被着体をゴム物品2(SBR配合)に変えて、実施例33〜40及び比較例25〜31並びに実施例34〜48及び比較例34〜38と同じ組成内容である表4に示す組成内容のコーティング剤及びコーティングシートを用い、合計モル数の比(イソシアネート基/チオール基)と、ゴム物品2(SBR配合)との密着力、硬化性及び加飾性との関係を上記の方法で評価した。その結果を表10に示す。
[実施例97〜104及び比較例77〜82並びに実施例105〜112及び比較例83〜88]
被着体をゴム物品3(NR配合)に変えて、実施例1〜8及び比較例1〜6並びに実施例9〜16及び比較例7〜12と同じ組成内容である表2に示す組成内容のコーティング剤及びコーティングシートを用い、合計モル数の比(イソシアネート基/チオール基)と、ゴム物品3(NR配合)との密着力、硬化性及び加飾性との関係を上記の方法で評価した。その結果を表11に示す。
[実施例113〜120及び比較例89〜94並びに実施例121〜128及び比較例95〜100]
被着体をゴム物品3(NR配合)に変えて、実施例17〜24及び比較例13〜18並びに実施例25〜32及び比較例19〜24と同じ組成内容である表3に示す組成内容のコーティング剤及びコーティングシートを用い、合計モル数の比(イソシアネート基/チオール基)と、ゴム物品3(NR配合)との密着力、硬化性及び加飾性との関係を上記の方法で評価した。その結果を表12に示す。
[実施例129〜136及び比較例101〜107並びに実施例137〜144及び比較例108〜114]
被着体をゴム物品3(NR配合)に変えて、実施例33〜40及び比較例25〜31並びに実施例41〜48及び比較例32〜38と同じ組成内容である表4に示す組成内容のコーティング剤及びコーティングシートを用い、合計モル数の比(イソシアネート基/チオール基)と、ゴム物品3(NR配合)との密着力、硬化性及び加飾性との関係を上記の方法で評価した。その結果を表13に示す。
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[評価]
表2〜表13に示すとおり、実施例1〜144は、成分(A)〜(C)を含み、かつ成分(A)に含まれるチオール基の合計モル数に対する、成分(B)に含まれるイソシアネート基の合計モル数の比(イソシアネート基/チオール基)が0.20以上0.80以下であるため、密着力が高かった。
一方、比較例1〜114は、(イソシアネート基/チオール基)比が本発明の範囲外であるため、密着力が低かった。
本発明のコーティング組成物及びコーティングシートは、被着体、特に加硫ゴム物品と好適に密着し、ゴム複合体を形成することができるため、特に、タイヤ、各種工業用ゴム製品、例えば、ゴムホース、防振ゴム、ゴムベルト、ラバーダム、ベルトコンベア、パッキン等のコーティングに利用できる。

Claims (8)

  1. 1分子中にチオール基を2〜6個有するポリチオール化合物(A)、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及びこれらの変性体からなる群から選ばれる少なくとも1つのイソシアネート基含有化合物(B)、並びにラジカル発生剤(C)を含み、
    配合されるポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数に対する、配合されるイソシアネート基含有有機化合物(B)に含まれるイソシアネート基の合計モル数の比(イソシアネート基/チオール基)が0.20以上0.80以下であり、被着体の表面の少なくとも一部をコーティングするためのコーティング組成物。
  2. 前記ラジカル発生剤(C)が熱ラジカル発生剤であって、
    前記ポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数に対する、配合される該熱ラジカル発生剤(C)の合計モル数の比(熱ラジカル発生剤(C)/チオール基)が0.025以上である、請求項1に記載のコーティング組成物。
  3. 前記ラジカル発生剤(C)が光ラジカル発生剤であって、
    前記ポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数に対する、配合される該光ラジカル発生剤(C)の合計モル数の比(光ラジカル発生剤(C)/チオール基)が0.0005以上である、請求項1に記載のコーティング組成物。
  4. ウレタン化触媒(D)を配合してなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のコーティング組成物を含むコーティング剤がゴム物品の表面の少なくとも一部に付着したゴム複合体。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のコーティング組成物を用いてなるコーティングシート。
  7. 請求項6に記載のコーティングシートがゴム物品の表面の少なくとも一部に付着したゴム複合体。
  8. 前記ゴム物品が有する炭素−炭素二重結合の炭素原子が、前記コーティング組成物が含有する前記ポリチオール化合物(A)のチオール基の硫黄原子と炭素−硫黄結合を形成している、請求項5又は7に記載のゴム複合体。
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