JP6138645B2 - クラッチ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、クラッチ装置に関する。
従来、クラッチ装置において、メインスプリングの押圧力によって複数のクラッチ板をクラッチ接続方向へ付勢するプレッシャプレートと、プレッシャプレートと別体に設けられ、プレッシャプレートをクラッチ切断方向へリフトするリフタープレートと、リフタープレートとプレッシャプレートとの間に配置され、リフタープレートのリフト量に応じてプレッシャプレートをクラッチ切断方向へ付勢するレリーズスプリングとを備えた多板クラッチが開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、リフタープレートは、操作部材である可動側リフターカムが回動されて、可動側リフターカムと固定側リフターカムとがボール部材を介して協働することで、クラッチ切断方向にリフトされるように構成されている。この構成では、リフタープレートのリフト量に応じてレリーズスプリングの押圧量が増加し、徐々にクラッチ容量が減少するため、クラッチの容量を、クラッチ接続とクラッチ切断との間の中間容量にし易い。この中間容量が得られるクラッチ装置は、例えば、自動変速機のクラッチとして好適である。
特開2005−249083号公報
ところで、上記従来のクラッチ装置では、上記レリーズスプリングが、多板クラッチの組立体内に配置される構造であるため、多板クラッチの構造が複雑化し、多板クラッチのサイズが大型化し易い。このため、多板クラッチの周辺部品の配置によっては、レリーズスプリングを多板クラッチに設けることが困難になる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、クラッチ装置において、中間容量を設定可能なレリーズスプリングを、多板クラッチのサイズの大型化を防ぎながら配置できるようにすることを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、スプリング(95,97)の押圧力によって複数のクラッチ板(94)をクラッチ接続方向へ付勢するプレッシャプレート(93)、及び、当該プレッシャプレート(93)をクラッチ切断方向へリフトするリフタープレート(96)を有する多板クラッチ(51)と、前記リフタープレート(96)をリフトさせる操作部材(135)とを有するクラッチ装置において、前記操作部材(135)と前記リフタープレート(96)との間に、前記操作部材(135)に対し相対変位可能な中間部材(130)が配置され、前記操作部材(135)の操作量に応じて前記リフタープレート(96)をクラッチ切断方向へ付勢するレリーズスプリング(131)が、前記操作部材(135)と前記中間部材(130)との間に配置され、前記操作部材(135)及び前記中間部材(130)には、共に軸方向に貫通する貫通孔(132d,144)と、当該貫通孔(132d,144)の内壁から径方向内側に突出する段部(132c,145)とがそれぞれ設けられ、前記操作部材(135)及び前記中間部材(130)の前記貫通孔(132d,144)に挿通され、前記操作部材(135)及び前記中間部材(130)の前記段部の一方(145)に係止されるフランジ部(140b)を有するカラー部材(140)と、前記カラー部材(140)の端に設けられ、前記操作部材(135)及び前記中間部材(130)の前記段部の他方(132c)を係止するストッパ部材(146)とを備え、前記レリーズスプリング(131)のプリロードは、前記段部の一方(145)が前記フランジ部(140b)に当接するとともに前記段部の他方(132c)が前記ストッパ部材(146)に当接することで受けていることを特徴とする。
本発明によれば、レリーズスプリングを、多板クラッチ側ではなく、操作部材側に設ける構成とすることで、クラッチの中間容量を設定可能なレリーズスプリングを、多板クラッチのサイズの大型化を防ぎながら配置することができる。また、操作部材及び中間部材の貫通孔に挿通されるカラー部材によって、操作部材と中間部材及とを簡単な構造で組むことができ、操作部材、中間部材及びレリーズスプリングを備えた組立て体を、簡単な構造で形成できる。
また、本発明は、前記操作部材(135)は、クラッチカバー(30d)側に周方向の相対変位を固定される固定側リフターカム(83)と、ボール部材(85)を介して当該固定側リフターカム(83)と協働することで前記リフタープレート(96)をリフトさせる可動側リフターカム(84)とを備え、前記可動側リフターカム(84)と前記中間部材(130)とがインロウ嵌合され、前記可動側リフターカム(84)側に設けられるカム側フランジ部(133c)と、前記中間部材(130)側に設けられる中間部材側フランジ部(143)との間に、前記レリーズスプリング(131)がコイルスプリングとして設けられることを特徴とする。
本発明によれば、インロウ嵌合によって中間部材を簡単な構成で変位可能に設けることができるとともに、レリーズスプリングを、中間部材と可動側リフターカムとの間にコイルスプリングとして簡単かつコンパクトな構成で設けることができる。
また、本発明は、前記ストッパ部材(146)、前記カラー部材(140)に形成された雌ねじに締結されるボルト(147)によって固定されることを特徴とする。
本発明によれば、操作部材、中間部材及びレリーズスプリングを備えた組立て体を、簡単な構造で形成できる。
さらに、本発明は、前記レリーズスプリング(131)には、前記操作部材(135)の回動前からプリロードがかけられているとともに、当該プリロードは、前記ストッパ部材(146)によって受け止められていることを特徴とする。
本発明によれば、操作部材が回動して移動した瞬間にプリロードは開放され、プリロード分の荷重がクラッチ切断方向に作用する。このため、クラッチ容量をプリロードに対応する分だけ一気に減少させることができ、クラッチ容量を中間容量に容易に合わせることができる。
また、本発明は、前記操作部材(135)と前記中間部材(130)とは、前記操作部材(135)が前記中間部材(130)よりも径方向外側に位置するようにインロウ嵌合され、前記操作部材(135)のインロウ嵌合部の内周面底部(149)は、前記操作部材(135)が所定量リフトした後、前記中間部材(130)のインロウ嵌合部の端部(141a)と当接するように設けられることを特徴とする。
本発明によれば、操作部材が所定量リフトした後は、操作部材で直接的にリフタープレートをリフトさせることができ、クラッチ容量を一気に減少させることができる。
また、本発明は、前記リフタープレート(96)は、前記レリーズスプリング(131)のプリロードよりも大きなプリロードが付された前記スプリング(97)の押圧力によってクラッチ接続方向に付勢されており、前記操作部材(135)が所定量だけ操作されると、前記段部の他方(132c)が前記ストッパ部材(146)から離れて前記プリロードが前記リフタープレート(96)に伝達され、前記操作部材(135)の操作量の増加に伴って圧縮される前記レリーズスプリング(131)によって前記リフタープレート(96)がクラッチ切断方向にさらに押圧され、前記操作部材(135)の操作量がさらに増加すると、前記操作部材(135)が前記中間部材(130)に直接当接し、前記中間部材(130)を介して前記リフタープレート(96)をクラッチ切断方向に押圧することを特徴とする。
本発明によれば、操作部材が所定量だけ操作された際には、クラッチ容量をプリロードの分だけ減少させることができ、操作部材の操作量が増加すると、レリーズスプリングが圧縮される分だけクラッチ容量を減少させることができ、操作部材が中間部材に直接当接すると、操作部材で直接リフタープレートをリフトさせてクラッチ容量をさらに減少させることができる。
また、本発明は、スプリング(95,97)の押圧力によって複数のクラッチ板(94)をクラッチ接続方向へ付勢するプレッシャプレート(93)、及び、当該プレッシャプレート(93)をクラッチ切断方向へリフトするリフタープレート(96)を有する多板クラッチ(51)と、クラッチカバー(30d)側に周方向の相対変位を固定される固定側リフターカム(283)と、ボール部材(85)を介して当該固定側リフターカム(283)と協働することで前記リフタープレート(96)をリフトさせる可動側リフターカム(284)とを備えるクラッチ装置において、前記クラッチカバー(30d)に対し周方向には相対変位が固定されるとともに、軸方向には相対変位が可能なアンカー部材(201)が、前記固定側リフターカム(283)と前記クラッチカバー(30d)との間に設けられ、前記可動側リフターカム(284)の回動に応じて前記固定側リフターカム(283)をクラッチ切断方向に付勢するレリーズスプリング(231)が、前記アンカー部材(201)と前記クラッチカバー(30d)との間に配置されることを特徴とする。
本発明によれば、レリーズスプリングを、多板クラッチ側ではなく、固定側リフターカムとクラッチカバーとの間に設けられるアンカー部材とクラッチカバーとの間に設ける構成とすることで、クラッチの中間容量を設定可能なレリーズスプリングを、多板クラッチのサイズの大型化を防ぎながら配置することができる。
また、本発明は、前記クラッチカバー(30d)に前記アンカー部材(201)が挿通される孔部(202)が設けられ、前記アンカー部材(201)には、前記孔部(202)を貫通する貫通カラー部(208)が設けられ、前記貫通カラー部(208)の前記クラッチカバー(30d)よりクラッチ寄りの箇所に径方向に延びるフランジ部(206)が設けられ、前記貫通カラー部(208)の前記クラッチカバー(30d)より外方に突出した箇所に、前記レリーズスプリング(231)の軸方向荷重を受ける止め輪部材(209)が設けられることを特徴とする。
本発明によれば、簡単且つコンパクトな構成で、アンカー部材をクラッチカバー周辺に、軸方向に相対変位可能かつレリーズスプリングの軸方向荷重を受けることが可能に設けることができる。
また、本発明は、前記レリーズスプリング(231)には、前記可動側リフターカム(284)の回動前からプリロードがかけられているとともに、当該プリロードは、前記止め輪部材(209)によって受け止められていることを特徴とする。
本発明によれば、クラッチ容量をプリロードに対応する分だけ一気に減少させることができ、クラッチ容量を中間容量に容易に合わせることができる。
さらに、本発明は、前記レリーズスプリング(231)は、皿ばねとして設けられることを特徴とする。
本発明によれば、レリーズスプリングは、皿ばねとして設けられるため、レリーズスプリングをコンパクトに設けることができる。
また、本発明は、前記アンカー部材(201)の前記フランジ部(206)の前記皿ばね(231)よりも径方向内側の位置に、前記クラッチカバー(30d)側に突出するクリアランス調整部(211)が設けられ、前記固定側リフターカム(283)が前記クラッチカバー(30d)側に所定量移動すると、前記クリアランス調整部(211)が前記クラッチカバー(30d)に当接することを特徴とする。
本発明によれば、可動側リフターカムの回動による皿ばねの変形量をクリアランス調整部によって規制できるとともに、クリアランス調整部の当接後は、クリアランス調整部を介してリフタープレートを直接リフトさせてクラッチ容量を減少させることができる。
また、本発明は、前記貫通カラー部(208)の前記クラッチカバー(30d)の外方への突出箇所を覆うようにキャップ部材(212)が設けられることを特徴とする。
本発明によれば、キャップ部材によって貫通カラー部の周辺からのオイル漏れを防止できる。
本発明に係るクラッチ装置では、クラッチの中間容量を設定可能なレリーズスプリングを、多板クラッチのサイズの大型化を防ぎながら配置することができる。
また、中間部材を簡単な構成で変位可能に設けることができるとともに、レリーズスプリングをコイルスプリングとして簡単かつコンパクトな構成で設けることができる。
また、可動側リフターカム、中間部材及びレリーズスプリングを備えた組立て体を、簡単な構造で形成できる。
さらに、クラッチ容量をプリロードに対応する分だけ一気に減少させることができ、クラッチ容量を中間容量に容易に合わせることができる。
また、可動側リフターカムで直接的にリフタープレートをリフトさせて、クラッチ容量を一気に減少させることができる。
また、操作部材が所定量だけ操作された際には、クラッチ容量をプリロードの分だけ減少させることができ、操作部材の操作量が増加すると、レリーズスプリングが圧縮される分だけクラッチ容量を減少させることができ、操作部材が中間部材に直接当接すると、操作部材で直接リフタープレートをリフトさせてクラッチ容量をさらに減少させることができる。
また、本発明に係るクラッチ装置では、簡単且つコンパクトな構成で、アンカー部材をクラッチカバー周辺に、軸方向に相対変位可能かつレリーズスプリングの軸方向荷重を受けることが可能に設けることができる。
また、クラッチ容量を中間容量に容易に合わせることができる。
さらに、レリーズスプリングをコンパクトに設けることができる。
また、クリアランス調整部を介してリフタープレートを直接リフトさせてクラッチ容量を減少させることができる。
また、貫通カラー部の周辺からのオイル漏れを防止できる。
本発明の第1の実施の形態に係るクラッチ装置を備えた自動二輪車の左側面図である。 パワーユニットの断面平面図である。 ギヤチェンジ機構、アクチュエータ機構、変速用クラッチ機構及びクラッチ操作機構を示す断面図である。 変速用クラッチ機構の断面図である。 クラッチ操作機構及び変速用クラッチ機構を示す断面図である。 クラッチ操作機構の拡大図である。 変速用クラッチ機構のクラッチ容量を示す図表の一例である。 第1中間容量の初期の状態のクラッチ操作機構を示す断面図である。 第2中間容量の状態のクラッチ操作機構を示す断面図である。 第2中間容量の状態に対応する変速用クラッチ機構の状態を示す断面図である。 切断容量の状態の変速用クラッチ機構を示す断面図である。 シフトアップ中のカウンタ軸トルクの推移及び対応するクラッチ容量を示す図表である。 第2の実施の形態におけるクラッチ操作機構の断面図である。 変速用クラッチ機構のクラッチ容量を示す図表の一例である。 第1中間容量の初期の状態のクラッチ操作機構を示す断面図である。 第2中間容量の状態のクラッチ操作機構を示す断面図である。
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るクラッチ装置を備えた自動二輪車10の左側面図である。
自動二輪車10は、ヘッドパイプ(不図示)に回動可能に軸支されたハンドル11と、ハンドル11により操舵される前輪12と、駆動輪である後輪13と、運転者が着座するシート14と、後輪13にチェーン15を介して駆動力を供給するパワーユニット16と、パワーユニット16の制御を行う制御ユニット17(制御部)と、バッテリ18とを有する。
自動二輪車10は不図示の車体フレームをベースに構成されており、この車体フレームは車体カバー19により覆われている。制御ユニット17及びバッテリ18はシート14の下部で、車体カバー19の内部に配置されている。パワーユニット16は、前輪12と後輪13の略中間で、シート14の下方やや前方に設けられている。運転者用のステップ20は、パワーユニット16の下部に左右一対で設けられている。
パワーユニット16は、自動変速機構T(図2)を備える。自動変速機構Tは、クラッチの接続・切断操作が自動化された変速機50を備え、この自動変速機構Tでは、変速用クラッチ機構51(図2)の切替え及び変速段(シフト)の切替えが自動で行われる。
次に、パワーユニット16の構成について説明する。
図2は、パワーユニット16の断面平面図である。図2では、左右方向が車幅方向、上方向が車両前方、下方向が車両後方に相当する。
パワーユニット16は、走行駆動力を発生するエンジン21と、発電機22と、エンジン21のクランク軸23に設けられた発進クラッチ24と、発進クラッチ24を介して出力されたクランク軸23の駆動力を変速して出力する自動変速機構Tとを備える。
パワーユニット16は、シリンダヘッド30a、シリンダ30b及びクランクケース30cが一体的に結合して構成される。クランク軸23は複数のベアリング31によって回転自在に軸支されている。エンジン21は、コンロッド32を介してクランク軸23に連結されたピストン33と、点火プラグ34と、不図示のバルブを開閉動作させて燃焼室35に対する吸排気を行う動弁機構36とを有する。動弁機構36はクランク軸23からタイミングチェーン36aを介して駆動される。
発進クラッチ24は、発進時及び停止時にクランク軸23とプライマリギア37との間を接続及び切断するものであり、クランク軸23の右端部に配置されている。この発進クラッチ24は、クランク軸23の外周に対して相対回転可能なスリーブ38の一端に固定されたカップ状のアウタケース39と、スリーブ38に設けられたプライマリギア37と、クランク軸23の右端部に固定されたアウタプレート40と、アウタプレート40の外周部にウェイト41を介して半径方向外側を向くように取り付けられたシュー42と、シュー42を半径方向内側に付勢するためのスプリング43とを有する。発進クラッチ24では、エンジン回転数が所定値以下の場合にアウタケース39とシュー42とが離間しており、クランク軸23と自動変速機構Tとの間が遮断状態(動力が伝達されない切り離し状態)となっている。エンジン回転数が上昇し所定値を超えると、遠心力によってウェイト41がスプリング43に抗して半径方向外側に移動することで、シュー42がアウタケース39の内周面に当接する。これにより、クランク軸23の回転がアウタケース39を介してプライマリギア37に伝達され、動力が伝達される接続状態となる。
クランクケース30cは、発進クラッチ24及び変速用クラッチ機構51(多板クラッチ)を覆うクラッチカバー30dを右側面に備える。クラッチカバー30dを取り外すと、発進クラッチ24及び変速用クラッチ機構51は外側に露出する。
自動変速機構Tは、前進4段の変速機50と、クランク軸23側と変速機50との間の接続を切り替える変速用クラッチ機構51と、変速用クラッチ機構51を操作するクラッチ操作機構52と、変速機50を変速するギヤチェンジ機構53と、クラッチ操作機構52及びギヤチェンジ機構53を駆動するアクチュエータ機構54(図3)とを備える。アクチュエータ機構54は、制御ユニット17(図1)によって制御される。
変速用クラッチ機構51及びクラッチ操作機構52は、クラッチ装置48を構成する。
自動変速機構Tは、自動変速(AT)モードと手動変速(MT)モードとの切り替えを行うモードスイッチ(不図示)と、シフトアップまたはシフトダウンを運転者が操作するシフトセレクトスイッチ(不図示)とに接続されている。自動変速機構Tは、制御ユニット17の制御により、各センサやモードスイッチ及びシフトセレクトスイッチの出力信号に応じてアクチュエータ機構54を制御し、変速機50の変速段を自動的または半自動的に切り換えることができるように構成されている。
すなわち、自動変速モードでは、車速等に基づいてアクチュエータ機構54の制御が行われ、変速機50が自動で変速される。手動変速モードでは、シフトセレクトスイッチが運転者によって操作されることで変速が行われる。
変速機50は、変速用クラッチ機構51から供給される回転を、制御ユニット17の指示に基づいて変速して後輪13に伝達する。この変速機50は、入力軸としてのメイン軸56(主軸)と、メイン軸56に対して平行配置されたカウンタ軸57と、メイン軸56に設けられた駆動ギア58a,58b,58c及び58dと、カウンタ軸57に設けられた従動ギア59a,59b,59c及び59dと、駆動ギア58aに係合するシフトフォーク60aと、従動ギア59cに係合するシフトフォーク60bと、シフトフォーク60a,60bを軸方向にスライド自在に保持する支持軸61と、シフトフォーク60a,60bの端部を溝62a,62bに沿わせながらスライドさせるシフトドラム63とを有する。駆動ギア58a,58b,58c及び58dは、この順に従動ギア59a,59b、59c及び59dと噛合している。駆動ギア58bは左右にスライドしたとき、隣接する駆動ギア58a又は58cに側面のドグ歯が係合し、従動ギア59cは左右にスライドしたとき、隣接する従動ギア59b又は59dに側面のドグ歯が係合する。
駆動ギア58a及び58cはメイン軸56に対して回転自在に保持され、従動ギア59b,59dはカウンタ軸57に対して回転自在に保持されている。駆動ギア58b及び従動ギア59cはメイン軸56及びカウンタ軸57に対してスプライン結合され軸方向にスライド可能である。駆動ギア58d及び従動ギア59aはメイン軸56及びカウンタ軸57に固定されている。
シフトドラム63がアクチュエータ機構54により駆動されて回転すると、シフトフォーク60a,60bはシフトドラム63の溝62a,62bに沿って軸方向に移動し、駆動ギア58b及び従動ギア59cは変速段に応じてスライドする。
変速機50では、駆動ギア58b及び従動ギア59cのスライドに応じて、メイン軸56及びカウンタ軸57間で、ニュートラル状態、または、1速〜4速の何れかの変速歯車対を選択的に用いた動力伝達が可能となる。
メイン軸56及びカウンタ軸57は、ベアリング64a,64b,66a,66bによって回転自在に保持されている。
カウンタ軸57の端部にはスプロケット67が設けられ、スプロケット67はチェーン15を介して後輪13に回転を伝達する。また、カウンタ軸57の近傍には、非接触でカウンタ軸57の回転速度を検出する車速センサ68が設けられている。車速センサ68が検出するカウンタ軸57の回転速度は車速を示すことになる。
エンジン21は、クランク軸23から変速用クラッチ機構51への入力回転速度を検出する入力回転センサ45、及び、メイン軸56の出力回転速度を検出する出力回転センサ46を備える。また、自動二輪車10は、吸気装置のスロットル開度を検出するスロットル開度センサ(不図示)を備える。車速センサ68、入力回転センサ45、出力回転センサ46及び上記スロットル開度センサは、検出値を制御ユニット17に供給する。
図3は、ギヤチェンジ機構53、アクチュエータ機構54、変速用クラッチ機構51及びクラッチ操作機構52を示す断面図である。
図2及び図3を参照し、アクチュエータ機構54は、モーター70と、クランクケース30c内を車幅方向に延びるシフトスピンドル71と、モーター70の回転を減速してシフトスピンドル71を駆動する歯車列(不図示)とを備える。
シフトスピンドル71は、クランクケース30cの左側壁30e及びクラッチカバー30dに両端を軸支されるとともに、メイン軸56のベアリング64bを支持する中間壁部30fによってもその中間部を軸支されている。クラッチカバー30dには、シフトスピンドル71の回転位置を検出する角度センサ72が設けられている。
ギヤチェンジ機構53は、シフトスピンドル71に支持されるギヤシフトアーム73と、シフトスピンドル71の回転を蓄力し、蓄力を開放してギヤシフトアーム73を回動させる蓄力機構74とを備える。
ギヤシフトアーム73は、シフトドラム63に連結されており、アクチュエータ機構54によってギヤシフトアーム73が回動することで、シフトドラム63が回転し、変速が行われる。
蓄力機構74は、シフトスピンドル71の軸上にシフトスピンドル71に対して相対回転可能に設けられる回動アーム75と、ギヤシフトアーム73を中立位置に付勢するリターンスプリング76と、シフトスピンドル71の軸上に固定され、シフトスピンドル71と一体に回転するストッパカラー77と、ストッパカラー77から軸方向に離間した位置でシフトスピンドル71の軸上に固定され、シフトスピンドル71と一体に回転する蓄力カラー78と、蓄力カラー78とストッパカラー77との間の軸上に、シフトスピンドル71に対して相対回転可能に設けられる一対のスプリングカラー79a,79bと、スプリングカラー79a,79bの外周に巻付くように設けられる蓄力スプリング80とを備える。
回動アーム75は、シフトスピンドル71の外周面に嵌合する内側円筒部75aと、内側円筒部75aの外周面から蓄力スプリング80側へ軸方向に突出するアーム側係止部75bと、内側円筒部75aの外周面からアーム側係止部75bとは反対側に軸方向へ突出する押圧部75cと、ストッパカラー77側に開放したドグ穴75dとを有する。
ギヤシフトアーム73は、回動アーム75の内側円筒部75aの外周面に嵌合する外側円筒部73aと、外側円筒部73aから周方向外側に延出されるアーム部73bとを有する。
ギヤシフトアーム73は、回動アーム75に対して相対回転可能に設けられ、回動アーム75の押圧部75cは、ギヤシフトアーム73のアーム部73bに形成された規制開口部73cに挿通される。
リターンスプリング76は、ねじりコイルバネであり、ギヤシフトアーム73の外側円筒部73aに巻付くように設けられ、押圧部75cを介してギヤシフトアーム73を中立位置の方向へ付勢する。ここで、中立位置は、変速操作を行っていない通常時の位置である。回動アーム75が所定角度だけ回動すると、押圧部75cは規制開口部73cの内縁部を押圧し、ギヤシフトアーム73を回動させる。規制開口部73cには、中間壁部30fに立設されたピン88が挿通されており、ピン88は、規制開口部73cを介してギヤシフトアーム73の回動範囲を規制する。
ストッパカラー77は、回動アーム75のドグ穴75dに挿通されるドグ歯77aを有する。シフトスピンドル71の回転に伴いストッパカラー77が所定角度だけ回転すると、ドグ歯77aはドグ穴75dの内縁を介して回動アーム75を回転方向に付勢する。
蓄力カラー78は、蓄力スプリング80側に軸方向へ突出するカラー側係止部78aと、カラー側係止部78aとは反対側へ軸方向に突出するクラッチ側ドグ歯78bとを有する。
蓄力スプリング80は、ねじりコイルバネであり、一端が回動アーム75のアーム側係止部75bに係止され、他端が蓄力カラー78のカラー側係止部78aに係止される。
ギヤシフトアーム73及び回動アーム75は、変速用クラッチ機構51が接続状態にあり、変速機50に駆動力が発生している状態では、変速機50によって拘束されており、シフトスピンドル71上で回動不能である。この状態で、アクチュエータ機構54によってシフトスピンドル71が回動させられると、蓄力カラー78は、回動アーム75に対して相対回転し、蓄力スプリング80は、一端がアーム側係止部75b側に固定されたままカラー側係止部78a側の他端が回動させられることで変形し、蓄力を開始する。その後、変速用クラッチ機構51が切断されると、ギヤシフトアーム73及び回動アーム75が回動可能となって蓄力が開放され、ギヤシフトアーム73は、蓄力スプリング80の蓄力によって回動させられた回動アーム75の押圧部75cを介して押圧されて回動する。これにより、シフトドラム63が回転し、変速が行われる。
角度センサ72の検出結果に基づいて変速の完了が検知されると、シフトスピンドル71は逆回転され、ギヤシフトアーム73は元の位置に復帰するとともに、変速用クラッチ機構51が接続される。
蓄力スプリング80は、蓄力に伴い、コイル状部の軸線がシフトスピンドル71の軸線に対して傾斜するように変形し、コイル状部の両端部80a,80bが、軸方向に2分割されたスプリングカラー79a,79bにそれぞれ当接する。詳細には、両端部80a,80bは、周方向に略180°異なる部分がスプリングカラー79a,79bにそれぞれ当接する。本第1の実施の形態では、スプリングカラー79a,79bが、軸方向に分割式であり互いに相対回転可能であるため、両端部80a,80bが当接した際には、スプリングカラー79a,79bは、力を逃がすようにそれぞれ独立して回転する。このため、蓄力スプリング80を捩じって蓄力する際のフリクションを低減でき、スムーズに蓄力できる。
クラッチ操作機構52は、シフトスピンドル71上に回動可能に軸支されるクラッチレバー81を備え、クラッチレバー81が回動することで作動して、変速用クラッチ機構51の接続及び切断を操作する。クラッチ操作機構52の詳細は後述する。
クラッチレバー81は、蓄力カラー78に隣接してシフトスピンドル71上に設けられる筒部81aと、筒部81aから径方向外側に延出するレバー部81bとを有する。筒部81aには、蓄力カラー78のクラッチ側ドグ歯78bが噛み合うクラッチ側ドグ穴81cが形成されている。
クラッチレバー81のクラッチ側ドグ穴81cは、蓄力カラー78のクラッチ側ドグ歯78bよりも周方向に大きな幅を有しており、クラッチ側ドグ歯78bは、蓄力カラー78が所定の角度だけ回転した時に初めてクラッチ側ドグ穴81cを周方向に押圧し、クラッチレバー81を回動させる。ここで、蓄力カラー78の上記所定の角度は、蓄力スプリング80が十分な力を蓄力する角度よりも大きな角度である。すなわち、本第1の実施の形態では、蓄力スプリング80の蓄力が完了した後に、クラッチレバー81が回動されて変速用クラッチ機構51が切断され、蓄力が開放される。このため、迅速に変速を行うことができる。
図4は、変速用クラッチ機構51の断面図である。
図2〜図4に示すように、メイン軸56の軸端には、クランク軸23のプライマリギア37に噛み合うプライマリドリブンギヤ69が、メイン軸56に対して相対回転可能に軸支されている。
変速用クラッチ機構51は、プライマリドリブンギヤ69に固定されるカップ状のクラッチアウタ91と、クラッチアウタ91の径方向内側に設けられ、メイン軸56に一体に固定されるクラッチセンタ92と、メイン軸56の軸方向に移動可能なプレッシャプレート93と、プレッシャプレート93とクラッチセンタ92との間に設けられるクラッチ板94と、クラッチを接続する方向にプレッシャプレート93を付勢するメインスプリング95と、クラッチを切断する方向にプレッシャプレート93を移動させるリフタープレート96と、リフタープレート96とクラッチセンタ92との間に狭持されるサブスプリング97とを備える。クラッチセンタ92及びプレッシャプレート93は組み合されて一体となり、クラッチアウタ91の内側に配置されるクラッチインナ90を構成する。
クラッチアウタ91は、プライマリドリブンギヤ69の外側面に一体に固定される円板部91aと、円板部91aの周縁部からメイン軸56と略同軸の位置関係で延びる外側円筒部91bとを備える。クラッチアウタ91は、プライマリドリブンギヤ69と一体にメイン軸56に対して相対回転可能である。
クラッチセンタ92は、メイン軸56に固定される円筒状のハブ部92aと、ハブ部92aの軸端部からクラッチアウタ91の内周面近傍まで径方向外側に延びる円板状の受け板部92bとを備える。受け板部92bには、プレッシャプレート93の一部が挿通される支持孔92cが形成されている。支持孔92cは、受け板部92bの周方向に並べて複数形成されている。また、受け板部92bは、クラッチ板94を受ける受け面92dを外周部に有し、受け面92dの反対側の面には、外周部に沿って円環状にリフタープレート96側へ突出するバネ保持凸部92eを有する。クラッチセンタ92は、スプライン嵌合及びナット89によってメイン軸56に固定されており、メイン軸56に対し、相対回転不能且つ軸方向に移動不能である。
プレッシャプレート93は、クラッチアウタ91の内側においてクラッチセンタ92の受け板部92bに対向する向きで配置される内側円板部93aと、内側円板部93aの周縁部からクラッチアウタ91の円板部91a側にメイン軸56と略同軸の位置関係で延びる内側円筒部93bと、内側円筒部93bの先端部からクラッチアウタ91の内周面近傍まで径方向外側に延びる押圧板部93cとを備える。プレッシャプレート93は、クラッチセンタ92に対し、所定の回転角度だけ相対回転可能に形成されている。
内側円板部93aには、クラッチセンタ92のハブ部92aの外周面に摺動自在に嵌合する嵌合孔93dが形成されている。また、内側円板部93aにおいて嵌合孔93dの周囲には、クラッチセンタ92の支持孔92cを貫通してリフタープレート96側へ延びるレリーズボス99が形成されている。
レリーズボス99は、内側円板部93aの周方向に略等間隔をあけて複数並べて形成されている。レリーズボス99は、支持孔92cに挿通される円柱部99aと、先端部において円柱部99aよりも小径に形成されたガイド軸部99bとを有し、ガイド軸部99bと円柱部99aとの境界部には、ガイド軸部99bよりも大径の段部99cが形成されている。
ガイド軸部99bの先端面には、ガイド軸部99bよりも大径のワッシャにより構成されるストッパ板105が設けられ、ストッパ板105は、ガイド軸部99bの先端面に螺合する固定ボルト106よってレリーズボス99に固定される。
クラッチ板94は、クラッチアウタ91に設けられる外側摩擦板94aと、クラッチセンタ92に設けられる内側摩擦板94bとを備え、外側摩擦板94a及び内側摩擦板94bは、プレッシャプレート93とクラッチセンタ92との間に交互に複数枚重ねて配置されている。各外側摩擦板94aは、クラッチアウタ91の外側円筒部91bにスプライン嵌合によって支持されており、クラッチアウタ91の軸方向に移動可能且つクラッチアウタ91に対して回転不能に設けられている。
各内側摩擦板94bは、プレッシャプレート93の内側円筒部93bの外周面にセレーション嵌合によって支持されており、プレッシャプレート93の軸方向に移動可能且つプレッシャプレート93に対して回転不能に設けられている。
プレッシャプレート93の内側円筒部93bの内側の内側円板部93aには、板状のバックトルクリミット部材101が固定されている。バックトルクリミット部材101は、固定ボルト106と同軸に設けられるボルト108によって固定される。
バックトルクリミット部材101、及び、クラッチセンタ92の受け板部92bに固定されるリフターピン120は、バックトルクリミッタ機構を構成する。バックトルクリミッタ機構は、例えば、特開平8−93786号公報に記載された公知のものであり、順方向の動力伝達とは逆方向に所定値以上のトルクが作用した場合に、クラッチを接続状態から半クラッチ状態にする機構である。
バックトルクリミット部材101は、プレッシャプレート93を貫通してリフターピンに係合するカム部101b(図3)を備えている。後輪13側から所定値以上のバックトルクが作用すると、プレッシャプレート93がクラッチセンタ92に対して相対回転することで、カム部101bがリフターピン120上を摺動し、プレッシャプレート93はクラッチ切断方向に移動する。バックトルクリミッタ機構によれば、バックトルクに起因する変速ショックを低減できる。
クラッチセンタ92のハブ部92aにおける円板部91a側の外周面には、リング状のクリップ102が嵌め込まれ、クリップ102は、メインスプリング95を受けるリング状のリテーナー103を支持する。
メインスプリング95は、リング状の皿バネであり、プレッシャプレート93側のバックトルクリミット部材101とリテーナー103との間で狭持される。詳細には、メインスプリング95は、クラッチセンタ92のハブ部92aとプレッシャプレート93の内側円筒部93bとの間に配置され、外径部がバネ受け部材101aを介してバックトルクリミット部材101に支持され、内径部がリテーナー103に支持される。
メインスプリング95は、プレッシャプレート93とクラッチセンタ92とでクラッチ板94を狭持する方向、すなわち、クラッチを接続する方向へプレッシャプレート93を付勢する。
リフタープレート96は、円板状に形成されており、クラッチセンタ92と変速用クラッチ機構51(図3)との間に配置される。リフタープレート96は、ボールベアリング87が嵌着されるベアリング支持孔部96aと、プレッシャプレート93のレリーズボス99が挿通される孔部96bとを備える。
ベアリング支持孔部96aには、ボールベアリング87の外輪が嵌着され、ボールベアリング87の内輪は、変速用クラッチ機構51に嵌着されている。このため、リフタープレート96は、変速用クラッチ機構51と共に軸方向に移動可能であるとともに変速用クラッチ機構51に対して相対回転可能である。
孔部96bは、ストッパ板105及び段部99cよりも小径の孔であり、孔部96bの周縁部には、段部99cに対し略平行な当接面96cが形成されている。
孔部96bは、リフタープレート96の中央部に設けられたベアリング支持孔部96aの周囲に複数形成されている。各孔部96bは、各レリーズボス99のガイド軸部99bに嵌合する。リフタープレート96は、各孔部96bがガイド軸部99bに嵌合された後、ストッパ板105及び固定ボルト106が固定されることでプレッシャプレート93に連結される。
リフタープレート96は、サブスプリング97を受けるサブスプリング受け部96dを、クラッチセンタ92の受け板部92bに対向する面に有する。サブスプリング受け部96dは、各孔部96bよりも径方向外側に位置する。
サブスプリング97は、リング状の皿バネであり、リフタープレート96のサブスプリング受け部96dとクラッチセンタ92の受け板部92bとの間に狭持される。詳細には、サブスプリング97は、バネ保持凸部92eの内側に配置された受け部材107aを介して外径部がクラッチセンタ92に支持され、内径部がサブスプリング受け部96dに配置された受け部材107bを介してリフタープレート96に支持される。
サブスプリング97は、メイン軸56に固定されたクラッチセンタ92をばね座として、リフタープレート96をストッパ板105に当接させる方向に付勢している。このサブスプリング97の付勢力は、リフタープレート96、ストッパ板105及び固定ボルト106を介してプレッシャプレート93に伝達され、プレッシャプレート93は、サブスプリング97側に引っ張られるようにして、クラッチ板94を押圧する。すなわち、サブスプリング97の付勢方向は、メインスプリング95の付勢方向と同一であり、クラッチ接続方向である。
リフタープレート96は、サブスプリング97を介してプレッシャプレート93をクラッチ接続方向に付勢するサブプレッシャプレートとしても機能する。
クラッチ接続状態では、メインスプリング95及びサブスプリング97の付勢力によってクラッチ板94が狭持され、プライマリギア37によって回転させられるクラッチアウタ91の回転を、クラッチ板94を介してクラッチセンタ92に伝達可能になり、メイン軸56がクラッチセンタ92と一体に回転される。
変速用クラッチ機構51を介し、メインスプリング95及びサブスプリング97の付勢力に抗してプレッシャプレート93が移動させられると、クラッチ板94の狭持が解除され、クラッチ切断状態となる。
リフタープレート96における当接面96cの部分の板厚は、ガイド軸部99bの長さよりも小さく形成されており、クラッチが接続された状態では、レリーズボス99の段部99cと当接面96cとの間には隙間Gが形成されている。
シフトスピンドル71の回転に伴いクラッチレバー81が回動されて変速用クラッチ機構51が軸方向に移動すると、リフタープレート96は、ボールベアリング87を介して押圧されてストッパ板105から離れる方向にリフトされ、隙間Gを小さくするようにクラッチセンタ92側へ移動する。
図5は、クラッチ操作機構52及び変速用クラッチ機構51を示す断面図である。図6は、クラッチ操作機構52の拡大図である。
クラッチ操作機構52は、上記クラッチレバー81と、クラッチカバー30dに固定される支持軸82と、支持軸82に固定される固定側リフターカム83とを備える。また、クラッチ操作機構52は、クラッチレバー81に連結されるとともに、固定側リフターカム83に対向して設けられる可動側リフターカム84と、可動側リフターカム84と固定側リフターカム83との間に狭持される複数のボール85(ボール部材)と、可動側リフターカム84とリフタープレート96との間に設けられる中間部材130とを備える。さらに、クラッチ操作機構52は、可動側リフターカム84と中間部材130との間で圧縮されるレリーズスプリング131と、中間部材130の軸方向の位置を規制するカラー部材140とを備える。
支持軸82は、メイン軸56と略同軸の位置関係でクラッチカバー30dの内面に立設される。支持軸82は、クラッチカバー30dの内面に当接する鍔部82aと、クラッチカバー30dの外側に突出して外面にナット82cで固定される固定部82bと、変速用クラッチ機構51側に突出して固定側リフターカム83が固定される支持軸部82dとを有する。
固定側リフターカム83は、支持軸部82dの外周に嵌合して結合されるガイド筒部83aと、ガイド筒部83aにおけるクラッチカバー30d側の端から径方向外側に突出する鍔状の受け板部83bとを有する。固定側リフターカム83は、支持軸82に固定されており、回動不能である。
可動側リフターカム84は、円筒状の筒状部132と、筒状部132における固定側リフターカム83側の端から径方向外側に突出する鍔状の受け板部133と、受け板部133の一部分から突出してシフトスピンドル71側に延びる棒状の連結部134とを有する。
可動側リフターカム84は、連結部134に設けられるピン86を介して、クラッチレバー81のレバー部81bに連結される。
可動側リフターカム84の筒状部132は、軸方向に貫通する貫通孔を中央に備え、この貫通孔は、支持軸部82dの外周面に嵌合する嵌合孔中径部132aと、中間部材130が嵌合する嵌合孔大径部132b(インロウ嵌合部)とを有する。可動側リフターカム84は、固定側リフターカム83のガイド筒部83aを中心に回動自在であるとともに、ガイド筒部83aに対して軸方向にスライド可能である。
嵌合孔中径部132aと嵌合孔大径部132bとの境界部には、嵌合孔大径部132bの内周面から径方向内側に突出するリフター側段部132cが形成されている。リフター側段部132cの内周部は、カラー部材140が挿通される貫通孔小径部132dとなっている。
嵌合孔中径部132a、嵌合孔大径部132b及び貫通孔小径部132dは、同軸に設けられ、嵌合孔大径部132bは、嵌合孔中径部132aよりも大径である。
可動側リフターカム84と固定側リフターカム83との間には、複数のボール85が狭持されている。受け板部83b及び受け板部133の互いに対向する面には、ボール85が配置されるボール支持溝83c,133aが、周方向に複数設けられている。ボール支持溝133aは、周方向に高さが変化する斜面状のカム部133bを有する。
クラッチレバー81が回動されると、可動側リフターカム84は、クラッチレバー81を介して固定側リフターカム83のガイド筒部83aを中心に回動され、カム部133bがボール85に対して滑ることで、軸方向に移動する。
可動側リフターカム84、固定側リフターカム83及びボール85は、互いに協働して変速用クラッチ機構51を操作する操作部材135を構成する。ボール85は、ボール上に限らず、例えばローラー状のコロ部材であっても良い。
レリーズスプリング131は、コイルスプリングであり、その内周部が可動側リフターカム84の筒状部132の外周部に嵌合する。レリーズスプリング131の一端は、可動側リフターカム84の受け板部133に形成されたカム側フランジ部133cに受けられる。
中間部材130は、円筒状の筒状体136と、筒状体136の一端に形成されて可動側リフターカム84の嵌合孔大径部132bに嵌合する中間部材側嵌合部141(インロウ嵌合部)と、筒状体136の他端に形成されてボールベアリング87の内輪が外周に嵌合するベアリング固定部142とを有する。筒状体136の軸方向の中間部には、径方向外側に突出する中間部材側フランジ部143が形成されている。中間部材側フランジ部143は、レリーズスプリング131の他端を受けるばね受け部143aと、ばね受け部143aの内周側で可動側リフターカム84の筒状部132の先端部に対向する平坦部143bとを有する。
中間部材130は、軸方向に貫通する貫通孔144を中央に有し、貫通孔144は、径方向内側に突出する中間部材側段部145を、中間部材側嵌合部141に対応する部分に有する。中間部材側段部145の内周部は、カラー部材140が嵌合する嵌合孔小径部144aとなっている。また、貫通孔144の残りの部分は、嵌合孔小径部144aよりも大径の孔144bとなっている。孔144bの内周部の一部には、軸方向に延びる溝144cが形成されている。
カラー部材140は、円筒状のカラー本体部140aと、カラー本体部140aの一端の外周部から径方向外側に突出するカラー側フランジ部140bと、カラー部材140を軸方向に貫通するねじ孔部140cとを有する。ねじ孔部140cには雌ねじが形成されている。
カラー本体部140aの他端の端面には、カラー本体部140aよりも大径のストッパ部材146が取り付けられている。ストッパ部材146はワッシャーであり、カラー本体部140aの他端からねじ孔部140cに挿通されるストッパ部材固定ボルト147によって狭持されて固定される。
カラー側フランジ部140bには、外側に突出して中間部材130の溝144cに嵌まる突起140dが形成されている。カラー部材140は、突起140dが溝144cに嵌まることで回り止めされている。
可動側リフターカム84、中間部材130、レリーズスプリング131、カラー部材140、ストッパ部材146及びストッパ部材固定ボルト147は、予め組み立てられて小組体148を構成する。
小組体148では、カラー部材140、ストッパ部材146及びストッパ部材固定ボルト147によって、可動側リフターカム84と中間部材130とが連結されている。
中間部材130は、中間部材側嵌合部141が可動側リフターカム84の嵌合孔大径部132bの内周部にインロウ嵌合されている。インロウ嵌合では、中間部材側嵌合部141と嵌合孔大径部132bとが互いに摺動可能に嵌合しており、可動側リフターカム84は、中間部材130に対して周方向へは相対回転が規制されるとともに、軸方向にはスライド可能である。なお、可動側リフターカム84と中間部材130との周方向の相対回転の規制は、レリーズスプリング131にかけられたプリロードにより、レリーズスプリング131の端面と座(カム側フランジ部133c及び中間部材側フランジ部143)との間に生じる摩擦力、及びレリーズスプリング131の剛性による。ここで、可動側リフターカム84と中間部材130との周方向の相対回転の規制をより確実にするため、例えば、可動側リフターカム84の嵌合孔大径部132bの内周に溝(不図示)を設け、中間部材130の外周に、この溝に係合する突起(不図示)を設けても良い。
カラー部材140は、中間部材130の孔144b側から嵌合孔小径部144aに挿通され、一端のカラー側フランジ部140bが中間部材側段部145に当接する深さまで挿通される。
中間部材130の他端は、可動側リフターカム84の貫通孔小径部132dを通って嵌合孔中径部132aまで挿通され、嵌合孔中径部132a内でストッパ部材146がストッパ部材固定ボルト147によって固定される。ストッパ部材146は、嵌合孔中径部132a側からリフター側段部132cに当接する。
小組体148では、可動側リフターカム84のカム側フランジ部133cと中間部材130のばね受け部143aとの間に、レリーズスプリング131が圧縮された状態で狭持されている。すなわち、レリーズスプリング131には、所定の大きさのプリロードが付されている。図6には、レリーズスプリング131の荷重の伝達経路が模式的に矢印で示されている。上記プリロードは、可動側リフターカム84と中間部材130とを軸方向に離間させるように作用しているが、プリロードは、カラー側フランジ部140bとストッパ部材146とによって受けられている。プリロードの大きさは、カラー側フランジ部140bとストッパ部材146との間隔を変更すること等により調整される。
小組体148に軸方向の外力が付されていない自然状態では、嵌合孔大径部132bの底部である内周面底部149と、中間部材130の中間部材側嵌合部141の先端面141aとの間には、初期隙間Fが形成されている。
図7は、変速用クラッチ機構51のクラッチ容量を示す図表の一例である。
図7に示すように、本第1の実施の形態では、変速用クラッチ機構51のクラッチ容量が、複数の段階に可変となっている。詳細には、クラッチ容量は、メインスプリング95及びサブスプリング97の付勢力によってクラッチ容量が決まる最大容量C1と、サブスプリング97の付勢力の一部が減じられた第1中間容量C2と、サブスプリング97の付勢力の全部が減じられてメインスプリング95の付勢力により決まる第2中間容量C3と、メインスプリング95の付勢力の全部が除かれた切断容量C4とを有する。
最大容量C1は、図4及び図5に示すクラッチ接続状態で得られる。クラッチ接続状態では、リフタープレート96がストッパ板105に当接しており、サブスプリング97の付勢力が、リフタープレート96及びストッパ板105を介してプレッシャプレート93に伝達されている。このため、プレッシャプレート93がクラッチ板94を押圧する付勢力は、メインスプリング95のプリロードであるメインスプリング荷重S1(図7)と、サブスプリング97のプリロードであるサブスプリング荷重S2(図7)とを足し合わせたものとなり、最大となる。
すなわち、リフタープレート96及びストッパ板105は、サブスプリング97の付勢力をプレッシャプレート93に伝達するサブスプリング荷重伝達経路K(図4)を構成している。
最大容量C1の状態においては、図6に示すように、クラッチ操作機構52では、レリーズスプリング131のプリロードは、カラー側フランジ部140b及びストッパ部材146によって受けられている。また、最大容量C1の状態では、内周面底部149と中間部材130の中間部材側嵌合部141の先端面141aとの間には、初期隙間Fが形成されている。
すなわち、最大容量C1の状態では、レリーズスプリング131のプリロードは、クラッチ容量に影響していない。ここで、レリーズスプリング131のプリロードは、レリーズスプリング初期荷重Rpとして図7に示される。
図8は、第1中間容量C2の初期の状態のクラッチ操作機構52を示す断面図である。ここで、図8には、レリーズスプリング131の荷重の伝達経路が模式的に矢印で示されている。また、図4は、第1中間容量C2の初期の状態に対応する変速用クラッチ機構51の状態を示している。
アクチュエータ機構54(図3)によるシフトスピンドル71の回転に伴い可動側リフターカム84が所定量M1まで回動すると、可動側リフターカム84は、ボール85に乗り上げて、リフタープレート96側へ、すなわち初期隙間Fを小さくする方向へ、所定量だけスライドする。これにより、可動側リフターカム84が中間部材130に対して相対移動し、リフター側段部132cがストッパ部材146から隙間Hだけ離れる。隙間Hが形成された瞬間に、図8に矢印で示すように、ストッパ部材146に受けられていたレリーズスプリング初期荷重Rpは開放され、レリーズスプリング初期荷重Rpは、中間部材130及びボールベアリング87を介してリフタープレート96に伝達される。レリーズスプリング初期荷重Rpは、サブスプリング97とは反対方向に作用する荷重であり、クラッチ切断方向に作用する。
ここで、隙間Hは、0よりも大きければ良い。
サブスプリング荷重S2は、レリーズスプリング初期荷重Rpよりも大きく設定されているため、レリーズスプリング初期荷重Rpが開放されたとしても、図4に示すように、リフタープレート96は、軸方向に変位せず、ストッパ板105に当接したままである。
レリーズスプリング初期荷重Rpが開放してもリフタープレート96は変位しないが、図7に示すように、レリーズスプリング初期荷重Rpの分だけサブスプリング荷重S2が減ぜられる。このため、隙間Hが形成された瞬間に、クラッチ容量は、一気に減少し、最大容量C1から第1中間容量C2に変化する。
アクチュエータ機構54の駆動に伴って、可動側リフターカム84はリフタープレート96側への移動を継続し、可動側リフターカム84の回動量が所定量M2に達すると、初期隙間Fが0になり、内周面底部149が中間部材130の先端面141aに当接する。
第1中間容量C2は、可動側リフターカム84の回動量が所定量M1から所定量M2まで変化する区間で得られる。
詳細には、可動側リフターカム84の軸方向の移動量の増加に伴って、レリーズスプリング131は徐々に圧縮されていき、レリーズスプリング131のレリーズスプリング荷重R(図7)は略線形に増加する。このため、所定量M1から所定量M2の間では、レリーズスプリング荷重Rの増加分だけサブスプリング荷重S2が徐々に減ぜられ、第1中間容量C2も、可動側リフターカム84の回動量に伴って徐々に減少する特性となる。本第1の実施の形態では、初期隙間Fによる遊びの区間が設けられているため、第1中間容量C2を得られる区間を長くでき、部品や制御手法を高精度にしなくとも、クラッチ容量を所定の中間容量に可変にできる。
また、レリーズスプリング荷重Rは、所定量M2に達した状態であっても、サブスプリング荷重S2を上回らないように設定されている。このため、所定量M2の状態であっても、リフタープレート96は、軸方向に変位せず、ストッパ板105に当接したままである。
図9は、第2中間容量C3の状態のクラッチ操作機構52を示す断面図である。図10は、第2中間容量C3の状態に対応する変速用クラッチ機構51の状態を示す断面図である。
可動側リフターカム84の回動量が所定量M2からさらに増加すると、可動側リフターカム84は、内周面底部149を介して中間部材130を直接押圧し、リフタープレート96をクラッチ切断方向に移動させる。
詳細には、可動側リフターカム84の回動量が所定量M2よりもわずかに大きくなるだけで、可動側リフターカム84は中間部材130を直接押し始める。この直接的な押しにより、図10に示すように、リフタープレート96は、サブスプリング97の付勢力に抗してガイド軸部99bに沿って段部99c側へリフトされ、ストッパ板105から離れる。
リフタープレート96がストッパ板105から離れることで、上記サブスプリング荷重伝達経路Kは遮断され、サブスプリング荷重S2は、プレッシャプレート93に伝達されなくなり、クラッチ容量は、メインスプリング荷重S1のみによって決定されるようになる。このため、図7に示すように、リフタープレート96がストッパ板105から離れた瞬間に、クラッチ容量は第1中間容量C2から第2中間容量C3に低下する。サブスプリング荷重伝達経路Kを遮断させるリフタープレート96の第1の所定リフト量L1は、0よりも大きければ良い。
リフタープレート96がストッパ板105から離れた後、可動側リフターカム84の移動が継続されると、可動側リフターカム84による直接的な押しも継続され、リフタープレート96は、段部99c側へさらに移動を継続する。リフタープレート96がストッパ板105から離れてから段部99cに当接するまでの区間が第2中間容量C3の区間である。この区間では、リフタープレート96は、段部99cに対して相対移動するだけであり、メインスプリング荷重S1に影響しない。このため、図7に示すように、第2中間容量C3の区間では、メインスプリング95のみよってクラッチ容量が決まり、第2中間容量C3は一定である。本第1の実施の形態では、隙間Gによる遊びが設けられているため、第2中間容量C3を得られる区間を長くでき、部品や制御手法を高精度にしなくとも、クラッチ容量を可変にできる。
図11は、切断容量C4の状態の変速用クラッチ機構51を示す断面図である。
可動側リフターカム84によってリフタープレート96が第2の所定リフト量L2だけ移動させられ、リフタープレート96が段部99cに当接すると、プレッシャプレート93は、リフタープレート96によって押圧され、メインスプリング95の付勢力に抗してクラッチ切断方向に移動する。詳細には、プレッシャプレート93がわずかにでもクラッチ切断方向に押圧されると、プレッシャプレート93とクラッチセンタ92とによるクラッチ板94の狭持は解除され、クラッチ容量は0になる。
図12は、シフトアップ中のカウンタ軸トルクの推移及び対応するクラッチ容量を示す図表である。
制御ユニット17は、自動変速する際、カウンタ軸57のトルクに基づいて、アクチュエータ機構54を駆動し、変速ショックを低減できるクラッチ容量を選択する。例えば、1速から2速にシフトアップする際、制御ユニット17は、検出した変速前のカウンタ軸57のトルクに基づいて、変速ショックを低減するように、最大容量C1、第1中間容量C2及び第2中間容量C3のいずれかのクラッチ容量Cを選択し、変速機50の歯車列を変速後、上記選択したクラッチ容量で変速用クラッチ機構51を繋ぐ。具体的には、変速用クラッチ機構51のクラッチ容量Cが、変速前のカウンタ軸トルクT1と変速後のカウンタ軸トルクT2との間やそのバンドから比較的離れない値になるようにクラッチ容量Cが選択される。
これにより、変速用クラッチ機構51によるカウンタ軸57側とクランク軸23側との間の回転差吸収を適切に行うことができ、変速ショックを低減できる。ここで、変速の前後におけるカウンタ軸57のトルクは、例えば、エンジン回転数、スロットル開度及びカウンタ軸57のトルクの関係を記憶したマップに基づいて求められる。
以上説明したように、本発明を適用した第1の実施の形態によれば、クラッチ装置48は、メインスプリング95及びサブスプリング97の押圧力によって複数のクラッチ板94をクラッチ接続方向へ付勢するプレッシャプレート93、及び、プレッシャプレート93をクラッチ切断方向へリフトするリフタープレート96を有する変速用クラッチ機構51と、リフタープレート96をリフトさせる操作部材135とを有し、操作部材135とリフタープレート96との間に、操作部材135に対し相対変位可能な中間部材130が配置され、操作部材135の操作量に応じてリフタープレート96をクラッチ切断方向へ付勢するレリーズスプリング131が、操作部材135と中間部材130との間に配置される。このように、レリーズスプリング131を、変速用クラッチ機構51側ではなく、操作部材135側に設ける構成とすることで、第1中間容量C2を設定可能なレリーズスプリング131を、変速用クラッチ機構51のサイズの大型化を防ぎながら配置することができる。
また、操作部材135は、クラッチカバー30d側に周方向の相対変位を固定される固定側リフターカム83と、ボール85を介して固定側リフターカム83と協働することでリフタープレート96をリフトさせる可動側リフターカム84とを備え、可動側リフターカム84と中間部材130とがインロウ嵌合され、可動側リフターカム84側に設けられるカム側フランジ部133cと、中間部材130側に設けられる中間部材側フランジ部143との間に、レリーズスプリング131がコイルスプリングとして設けられる。これにより、インロウ嵌合によって中間部材130を簡単な構成で変位可能に設けることができるとともに、レリーズスプリング131を、中間部材130と可動側リフターカム84との間にコイルスプリングとして簡単かつコンパクトな構成で設けることができる。
また、可動側リフターカム84及び中間部材130には、共に軸方向に貫通する貫通孔である嵌合孔中径部132a及び貫通孔144と、これら嵌合孔中径部132a及び貫通孔144の内壁から径方向内側に突出するリフター側段部132c及び中間部材側段部145とがそれぞれ設けられ、嵌合孔中径部132a及び貫通孔144に挿通され、中間部材側段部145に係止されるカラー側フランジ部140bを有するとともにねじ孔部140cを備えたカラー部材140が設けられ、リフター側段部132cに係止されるストッパ部材146が、ねじ孔部140cに締結されるストッパ部材固定ボルト147によって固定される。このため、嵌合孔中径部132a及び貫通孔144に挿通されるカラー部材140によって、可動側リフターカム84と中間部材130とを簡単な構造で組むことができ、可動側リフターカム84、中間部材130及びレリーズスプリング131を備えた小組体148を、簡単な構造で形成できる。
さらに、レリーズスプリング131には、可動側リフターカム84の回動前からレリーズスプリング初期荷重Rpがかけられているとともに、レリーズスプリング初期荷重Rpは、ストッパ部材146によって受け止められているため、可動側リフターカム84が回動して移動した瞬間にレリーズスプリング初期荷重Rpは開放され、レリーズスプリング初期荷重Rpがクラッチ切断方向に作用する。このため、クラッチ容量をレリーズスプリング初期荷重Rpに対応する分だけ一気に減少させることができ、クラッチ容量を第1中間容量C2に容易に合わせることができる。
また、可動側リフターカム84と中間部材130とは、可動側リフターカム84が中間部材130よりも径方向外側に位置するようにインロウ嵌合され、可動側リフターカム84のインロウ嵌合部の内周面底部149は、可動側リフターカム84が所定量リフトした後、中間部材130のインロウ嵌合部の先端面141aと当接するように設けられる。このため、可動側リフターカム84が所定量リフトして内周面底部149が中間部材130の先端面141aと当接すると、可動側リフターカム84と中間部材130とは相対移動せずに一体に移動するようになる。これにより、可動側リフターカム84が所定量リフトした後は、可動側リフターカム84で直接的にリフタープレート96をリフトさせることができ、クラッチ容量を一気に減少させることができる。
また、リフタープレート96は、レリーズスプリング初期荷重Rpよりも大きなサブスプリング荷重S2が付されたサブスプリング97の押圧力によってクラッチ接続方向に付勢されており、可動側リフターカム84が所定量だけ操作されるとレリーズスプリング131のレリーズスプリング初期荷重Rpが解放されて中間部材130がリフタープレート96をクラッチ切断方向に押圧し、可動側リフターカム84の操作量の増加に伴って圧縮されるレリーズスプリング131によってリフタープレート96がクラッチ切断方向にさらに押圧され、可動側リフターカム84の操作量がさらに増加すると、可動側リフターカム84が中間部材130に直接当接し、中間部材130を介してリフタープレート96をクラッチ切断方向に押圧する。このため、可動側リフターカム84が所定量だけ操作された際には、クラッチ容量をレリーズスプリング初期荷重Rpの分だけ減少させることができ、可動側リフターカム84の操作量が増加すると、レリーズスプリング131が圧縮される分だけクラッチ容量を徐々に減少させることができ、可動側リフターカム84が中間部材130に直接当接すると、可動側リフターカム84で直接リフタープレート96をリフトさせてクラッチ容量をさらに減少させることができる。
なお、上記第1の実施の形態は、本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
上記第1の実施の形態では、カラー側フランジ部140bが中間部材側段部145に係止され、ストッパ部材146がリフター側段部132cに係止されるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、カラー部材140を逆の向きで配置し、カラー側フランジ部140bがリフター側段部132cに係止され、ストッパ部材146が中間部材側段部145に係止されても良い。
[第2の実施の形態]
以下、図13〜図16を参照して、本発明を適用した第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
本第2の実施の形態は、クラッチ操作機構52とは異なる構成のクラッチ操作機構252によって変速用クラッチ機構51を操作する点が、上記第1の実施の形態と異なる。
図13は、第2の実施の形態におけるクラッチ操作機構252の断面図である。
図13に示すように、クラッチ操作機構252は、メイン軸56と略同軸の位置関係でクラッチカバー30dに挿通されるアンカー部材201と、アンカー部材201に支持されるとともにクラッチレバー81に連結される操作部材235とを備える。また、クラッチ操作機構252は、アンカー部材201をリフタープレート96側に付勢するレリーズスプリング231を備える。
クラッチ操作機構252及び変速用クラッチ機構51は、クラッチ装置248を構成する。
操作部材235は、アンカー部材201に固定される固定側リフターカム283と、固定側リフターカム283に対向して設けられる可動側リフターカム284と、可動側リフターカム284と固定側リフターカム283との間に狭持される複数のボール85とを備える。
クラッチカバー30dの板状部には、アンカー部材201が嵌合するアンカー支持孔部202(孔部)が形成されている。アンカー支持孔部202の内周の一部には、軸方向に延びる溝202aが形成されている。
アンカー部材201は、筒状のアンカー本体部203と、アンカー本体部203に挿通されるアンカー軸部204とを備える。
アンカー軸部204は、固定側リフターカム283が固定されるリフター固定部204aを一端に有し、アンカー本体部203を貫通してクラッチカバー30dの外側に突出する外側固定部204bを他端に有する。また、アンカー軸部204は、径方向に突出する鍔部204cを、リフター固定部204aに隣接する位置に有する。
アンカー本体部203は、軸方向に貫通する孔203aを中心に備える。アンカー軸部204は、鍔部204cがアンカー本体部203の一端に当接するまで孔203aに挿通されるとともに、アンカー本体部203の他端から外側に突出した外側固定部204bにナット205が締結されることで、アンカー本体部203に一体化される。
アンカー本体部203は、径方向外側に鍔状に突出するアンカー側フランジ部206を軸方向の中間部に有する。また、アンカー本体部203は、固定側リフターカム283側の端部の一部に、アンカー側フランジ部206と一体に外側に膨出する膨出部207を有し、膨出部207には、固定側リフターカム283側に開放する位置決め穴207aが形成されている。
アンカー本体部203の他端側には、アンカー支持孔部202に挿通される軸状の貫通カラー部208が設けられている。貫通カラー部208の外周面の一部には、アンカー側フランジ部206から軸方向に延びるガイド突起208aが形成されている。
貫通カラー部208は、アンカー支持孔部202を貫通してクラッチカバー30dの外側に突出する外側突出部208bを有する。外側突出部208bの外周面には、周方向に延びる環状の溝部208cが形成されており、溝部208cには、リング状の止め輪部材209が嵌め込まれて固定されている。止め輪部材209は、アンカー支持孔部202よりも大径である。
アンカー部材201は、内側からクラッチカバー30dを貫通して外側に突出するように配置されており、クラッチカバー30dの内側にはアンカー側フランジ部206を備え、クラッチカバー30dの外側には止め輪部材209を備える。
アンカー部材201は、アンカー支持孔部202に対して軸方向に移動可能に嵌合されており、軸方向の位置を、アンカー側フランジ部206及び止め輪部材209によって規制される。
アンカー側フランジ部206とクラッチカバー30dとの間の間隔は、クラッチカバー30dにおけるアンカー支持孔部202の周囲の板厚よりも大きく形成されている。このため、アンカー側フランジ部206とクラッチカバー30dのカバー内壁面210aとの間には、隙間が形成され、アンカー部材201は、この隙間の範囲内で軸方向に移動可能である。
また、アンカー部材201は、ガイド突起208aがアンカー支持孔部202の溝202aに嵌まることで、回動を規制されている。
クラッチカバー30dのカバー外壁面210bには、外側突出部208b及び止め輪部材209等を覆って密閉するキャップ部材212が、ボルト212aを介して取り付けられている。
レリーズスプリング231は、アンカー側フランジ部206とカバー内壁面210aとの間に狭持されている。レリーズスプリング231は、圧縮された状態で配置されており、アンカー部材201を操作部材235側に付勢する。すなわち、レリーズスプリング131には、所定の大きさのプリロードが付されている。図13には、レリーズスプリング231の荷重の伝達経路が模式的に矢印で示されている。上記プリロードは、アンカー部材201をカバー内壁面210aから軸方向に離間させるように作用しているが、図13の状態では、プリロードは、カバー外壁面210bに当接している止め輪部材209によって受けられている。
レリーズスプリング231は、アンカー側フランジ部206よりも大径の皿ばねであり、外周部がカバー内壁面210aに支持され、内周部がアンカー側フランジ部206に支持されている。
アンカー側フランジ部206には、レリーズスプリング231の内周部よりも内周側の位置に、カバー内壁面210a側に突出するクリアランス調整部211が設けられている。
クリアランス調整部211は、レリーズスプリング231の内周部に当接してレリーズスプリング231を位置決めする。
固定側リフターカム283は、アンカー部材201のリフター固定部204aの外周に嵌合して結合されるガイド筒部283aと、ガイド筒部283aにおけるアンカー部材201側の端から径方向外側に突出する鍔状の受け板部283bとを有する。また、固定側リフターカム283は、受け板部283bからアンカー部材201側に突出して位置決め穴207aに嵌合する棒状の位置規制部283cを有する。固定側リフターカム283は、位置規制部283cが位置決め穴207aに嵌合することで、回動不能に設けられている。
可動側リフターカム284は、固定側リフターカム283のガイド筒部283aの外周面に嵌合する筒部284aと、筒部284aの固定側リフターカム283側の端部から径方向外側に突出する鍔状の受け板部284bとを有する。また、可動側リフターカム284は、受け板部284bの一部分から突出してシフトスピンドル71側に延びる棒状の連結部284cと、ボールベアリング87の内輪が嵌合して固定されるベアリング固定部284dとを有する。可動側リフターカム284は、回動不能に固定されているガイド筒部283aに対して、軸方向に移動可能且つ回動可能に設けられている。
可動側リフターカム284は、ボールベアリング87を介してリフタープレート96に連結されている。
また、可動側リフターカム284は、連結部284cに設けられるピン(不図示)を介して、クラッチレバー81(図3)のレバー部81bに連結される。
受け板部283b及び受け板部284bの互いに対向する面には、ボール85が配置されるボール支持溝283d,284eが、周方向に複数設けられている。ボール支持溝284eは、周方向に高さが変化する斜面状のカム部284fを有する。
クラッチレバー81が回動されると、可動側リフターカム284は、クラッチレバー81を介して固定側リフターカム283のガイド筒部283aを中心に回動され、カム部284fがボール85に対して滑ることで、軸方向に移動する。
図14は、変速用クラッチ機構51のクラッチ容量を示す図表の一例である。
図14に示すように、本第2の実施の形態では、変速用クラッチ機構51のクラッチ容量が、複数の段階に可変となっている。詳細には、クラッチ容量は、メインスプリング95及びサブスプリング97の付勢力によってクラッチ容量が決まる最大容量U1と、サブスプリング97の付勢力の一部が減じられた第1中間容量U2と、サブスプリング97の付勢力の全部が減じられてメインスプリング95の付勢力により決まる第2中間容量U3と、メインスプリング95の付勢力の全部が除かれた切断容量U4とを有する。
最大容量U1は、図13に示すクラッチ接続状態で得られる。クラッチ接続状態では、リフタープレート96がストッパ板105に当接しており、サブスプリング97の付勢力が、リフタープレート96及びストッパ板105を介してプレッシャプレート93に伝達されている。このため、プレッシャプレート93がクラッチ板94を押圧する付勢力は、メインスプリング95のプリロードであるメインスプリング荷重S1(図14)と、サブスプリング97のプリロードであるサブスプリング荷重S2(図14)とを足し合わせたものとなり、最大となる。
最大容量U1の状態においては、図13に示すように、クラッチ操作機構252では、レリーズスプリング231のプリロードは、カバー内壁面210aに当接している止め輪部材209によって受けられている。また、最大容量U1の状態では、アンカー部材201のクリアランス調整部211とカバー内壁面210aとの間には、初期隙間Vが形成されている。
すなわち、最大容量U1の状態では、レリーズスプリング231のプリロードは、クラッチ容量に影響していない。ここで、レリーズスプリング231のプリロードは、レリーズスプリング初期荷重Wpとして図14に示される。
図15は、第1中間容量U2の初期の状態のクラッチ操作機構252を示す断面図である。ここで、図15には、レリーズスプリング231の荷重の伝達経路が模式的に矢印で示されている。また、図4は、第1中間容量U2の初期の状態に対応する変速用クラッチ機構51の状態を示している。
アクチュエータ機構54(図3)によるシフトスピンドル71の回転に伴い可動側リフターカム284が所定量M1まで回動すると、ボール85が可動側リフターカム284に乗り上げ、固定側リフターカム283はボール85に押されるようしにて、カバー内壁面210a側へ所定量だけスライドする。これにより、固定側リフターカム283とともにアンカー部材201がカバー内壁面210a側へ移動し、止め輪部材209がカバー内壁面210aから隙間Xだけ離れる。隙間Xが形成された瞬間に、図15に矢印で示すように、止め輪部材209に受けられていたレリーズスプリング初期荷重Wpは開放され、レリーズスプリング初期荷重Wpは、アンカー部材201、操作部材235及びボールベアリング87を介してリフタープレート96に伝達される。
レリーズスプリング初期荷重Wpは、サブスプリング97とは反対方向に作用する荷重であり、クラッチ切断方向に作用する。
ここで、隙間Xは、0よりも大きければ良い。
サブスプリング荷重S2は、レリーズスプリング初期荷重Wpよりも大きく設定されているため、レリーズスプリング初期荷重Wpが開放されたとしても、図4に示すように、リフタープレート96は、軸方向に変位せず、ストッパ板105に当接したままである。
レリーズスプリング初期荷重Wpが開放してもリフタープレート96は変位しないが、図14に示すように、レリーズスプリング初期荷重Wpの分だけサブスプリング荷重S2が減ぜられる。このため、隙間Xが形成された瞬間に、クラッチ容量は、一気に減少し、最大容量U1から第1中間容量U2に変化する。
アクチュエータ機構54の駆動に伴って、固定側リフターカム283はカバー内壁面210a側への移動を継続し、可動側リフターカム284の回動量が所定量M2に達すると、初期隙間Vが0になり、クリアランス調整部211がカバー内壁面210aに当接する。
第1中間容量U2は、可動側リフターカム284の回動量が所定量M1から所定量M2まで変化する区間で得られる。
詳細には、固定側リフターカム283の軸方向の移動量の増加に伴って、レリーズスプリング231は徐々に圧縮されていき、レリーズスプリング231のレリーズスプリング荷重W(図14)は曲線的に増加する。このため、所定量M1から所定量M2の間では、レリーズスプリング荷重Wの増加分だけサブスプリング荷重S2が徐々に減ぜられ、第1中間容量U2も、可動側リフターカム284の回動量の増加に伴って徐々に減少する特性となる。ここで、レリーズスプリング231は皿ばねであるため、レリーズスプリング荷重Wは圧縮量に対して線形ではなく曲線的に増加する。
本第2の実施の形態では、初期隙間Vによる遊びの区間が設けられているため、第1中間容量U2を得られる区間を長くでき、部品や制御手法を高精度にしなくとも、クラッチ容量を可変にできる。
また、レリーズスプリング荷重Wは、所定量M2に達した状態であっても、サブスプリング荷重S2を上回らないように設定されている。このため、所定量M2の状態であっても、リフタープレート96は、軸方向に変位せず、ストッパ板105に当接したままである。
図16は、第2中間容量U3の状態のクラッチ操作機構252を示す断面図である。図10は、第2中間容量U3の状態に対応する変速用クラッチ機構51の状態を示す断面図である。
可動側リフターカム284の回動量が所定量M2に達した状態では、クリアランス調整部211がカバー内壁面210aに当接しているため、固定側リフターカム283は、カバー内壁面210a側に移動することはできない。このため、可動側リフターカム284の回動量が所定量M2からさらに増加すると、可動側リフターカム284は、固定側リフターカム283からの反力を受ける。この反力を受けた可動側リフターカム284は、ボールベアリング87を介してリフタープレート96を直接的に押圧し、リフタープレート96をクラッチ切断方向に移動させる。
詳細には、可動側リフターカム284の回動量が所定量M2よりもわずかに大きくなるだけで、可動側リフターカム284はリフタープレート96を直接押し始める。この直接的な押しにより、図10に示すように、リフタープレート96は、サブスプリング97の付勢力に抗してガイド軸部99bに沿って段部99c側へリフトされ、ストッパ板105から離れる。
リフタープレート96がストッパ板105から離れることで、上記サブスプリング荷重伝達経路Kは遮断され、サブスプリング荷重S2は、プレッシャプレート93に伝達されなくなり、クラッチ容量は、メインスプリング荷重S1のみによって決定されるようになる。このため、図14に示すように、リフタープレート96がストッパ板105から離れた瞬間に、クラッチ容量は第1中間容量U2から第2中間容量U3に低下する。サブスプリング荷重伝達経路Kを遮断させるリフタープレート96の第1の所定リフト量L1は、0よりも大きければ良い。
リフタープレート96がストッパ板105から離れた後、可動側リフターカム284の移動が継続されると、可動側リフターカム284による直接的な押しも継続され、リフタープレート96は、段部99c側へさらに移動を継続する。リフタープレート96がストッパ板105から離れてから段部99cに当接するまでの区間が第2中間容量U3の区間である。この区間では、リフタープレート96は、段部99cに対して相対移動するだけであり、メインスプリング荷重S1に影響しない。このため、図14に示すように、第2中間容量U3の区間では、メインスプリング95のみよってクラッチ容量が決まり、第2中間容量U3は一定である。本第2の実施の形態では、隙間Gによる遊びが設けられているため、第2中間容量U3を得られる区間を長くでき、部品や制御手法を高精度にしなくとも、クラッチ容量を所定の中間容量に可変にできる。
図11は、切断容量U4の状態の変速用クラッチ機構51を示す断面図である。
可動側リフターカム284によってリフタープレート96が第2の所定リフト量L2だけ移動させられ、リフタープレート96が段部99cに当接すると、プレッシャプレート93は、リフタープレート96によって押圧され、メインスプリング95の付勢力に抗してクラッチ切断方向に移動する。詳細には、プレッシャプレート93がわずかにでもクラッチ切断方向に押圧されると、プレッシャプレート93とクラッチセンタ92とによるクラッチ板94の狭持は解除され、クラッチ容量は0になる。
以上説明したように、本発明を適用した第2の実施の形態によれば、クラッチ装置248は、メインスプリング95及びサブスプリング97の押圧力によって複数のクラッチ板94をクラッチ接続方向へ付勢するプレッシャプレート93、及び、プレッシャプレート93をクラッチ切断方向へリフトするリフタープレート96を有する変速用クラッチ機構51と、クラッチカバー30d側に周方向の相対変位を固定される固定側リフターカム283と、ボール85を介して固定側リフターカム283と協働することでリフタープレート96をリフトさせる可動側リフターカム284とを備え、クラッチカバー30dに対し周方向には相対変位が固定されるとともに、軸方向には相対変位が可能なアンカー部材201が、固定側リフターカム283とクラッチカバー30dとの間に設けられ、可動側リフターカム284の回動に応じて固定側リフターカム283をクラッチ切断方向に付勢するレリーズスプリング231が、アンカー部材201とクラッチカバー30dとの間に配置される。このように、レリーズスプリング231を、変速用クラッチ機構51側ではなく、固定側リフターカム283とクラッチカバー30dとの間に設けられるアンカー部材201とクラッチカバー30dとの間に設ける構成とすることで、クラッチの第1中間容量U2を設定可能なレリーズスプリング231を、変速用クラッチ機構51のサイズの大型化を防ぎながら配置することができる。
また、クラッチカバー30dにアンカー部材201が挿通されるアンカー支持孔部202が設けられ、アンカー部材201には、アンカー支持孔部202を貫通する貫通カラー部208が設けられ、貫通カラー部208のクラッチカバー30dより変速用クラッチ機構51寄りの箇所に径方向に延びるアンカー側フランジ部206が設けられ、貫通カラー部208のクラッチカバー30dより外方に突出した箇所である外側突出部208bに、レリーズスプリング231の軸方向荷重を受ける止め輪部材209が設けられる。このため、簡単且つコンパクトな構成で、アンカー部材201をクラッチカバー30d周辺に、軸方向に相対変位可能かつレリーズスプリング231の軸方向荷重を受けることが可能に設けることができる。
また、レリーズスプリング231には、可動側リフターカム284の回動前からレリーズスプリング初期荷重Wpがかけられているとともに、レリーズスプリング初期荷重Wpは、止め輪部材209によって受け止められているため、可動側リフターカム284が回動してアンカー部材201が移動した瞬間にレリーズスプリング初期荷重Wpは開放され、レリーズスプリング初期荷重Wp分の荷重がクラッチ切断方向に作用する。このため、クラッチ容量をレリーズスプリング初期荷重Wpに対応する分だけ一気に減少させることができ、クラッチ容量を第1中間容量U2に容易に合わせることができる。
さらに、レリーズスプリング231は、皿ばねとして設けられるため、レリーズスプリング231をコンパクトに設けることができる。
また、アンカー部材201のアンカー側フランジ部206のレリーズスプリング231よりも径方向内側の位置に、クラッチカバー30d側に突出するクリアランス調整部211が設けられ、固定側リフターカム283がクラッチカバー30d側に所定量移動すると、クリアランス調整部211がクラッチカバー30dに当接する。このため、可動側リフターカム284の回動によるレリーズスプリング231の変形量をクリアランス調整部211によって規制できるとともに、クリアランス調整部211の当接後は、クリアランス調整部211を介して荷重を伝達してリフタープレート96を直接リフトさせてクラッチ容量を減少させることができる。
また、貫通カラー部208のクラッチカバー30dの外方への突出箇所である外側突出部208bを覆うようにキャップ部材212が設けられるため、貫通カラー部208の周辺からのオイル漏れを防止できる。
30d クラッチカバー
48,248 クラッチ装置
51 変速用クラッチ機構(多板クラッチ)
83,283 固定側リフターカム
84,284 可動側リフターカム
85 ボール(ボール部材)
93 プレッシャプレート
94 クラッチ板
95 メインスプリング(スプリング)
96 リフタープレート
97 サブスプリング(スプリング)
130 中間部材
131,231 レリーズスプリング
132b 嵌合孔大径部(可動側リフターカムのインロウ嵌合部)
132c リフター側段部(段部の他方)
132d 貫通孔小径部(貫通孔)
133c カム側フランジ部
135 操作部材
140 カラー部材
140b カラー側フランジ部(フランジ部)
141 中間部材側嵌合部(中間部材のインロウ嵌合部)
141a 先端面(端部)
143 中間部材側フランジ部
144 貫通孔
145 中間部材側段部(段部の一方)
146 ストッパ部材
147 ストッパ部材固定ボルト(ボルト)
149 内周面底部
201 アンカー部材
202 アンカー支持孔部(孔部)
208 貫通カラー部
206 アンカー側フランジ部(フランジ部)
209 止め輪部材
211 クリアランス調整部
212 キャップ部材

Claims (12)

  1. スプリング(95,97)の押圧力によって複数のクラッチ板(94)をクラッチ接続方向へ付勢するプレッシャプレート(93)、及び、当該プレッシャプレート(93)をクラッチ切断方向へリフトするリフタープレート(96)を有する多板クラッチ(51)と、前記リフタープレート(96)をリフトさせる操作部材(135)とを有するクラッチ装置において、
    前記操作部材(135)と前記リフタープレート(96)との間に、前記操作部材(135)に対し相対変位可能な中間部材(130)が配置され、
    前記操作部材(135)の操作量に応じて前記リフタープレート(96)をクラッチ切断方向へ付勢するレリーズスプリング(131)が、前記操作部材(135)と前記中間部材(130)との間に配置され
    前記操作部材(135)及び前記中間部材(130)には、共に軸方向に貫通する貫通孔(132d,144)と、当該貫通孔(132d,144)の内壁から径方向内側に突出する段部(132c,145)とがそれぞれ設けられ、
    前記操作部材(135)及び前記中間部材(130)の前記貫通孔(132d,144)に挿通され、前記操作部材(135)及び前記中間部材(130)の前記段部の一方(145)に係止されるフランジ部(140b)を有するカラー部材(140)と、
    前記カラー部材(140)の端に設けられ、前記操作部材(135)及び前記中間部材(130)の前記段部の他方(132c)を係止するストッパ部材(146)とを備え、
    前記レリーズスプリング(131)のプリロードは、前記段部の一方(145)が前記フランジ部(140b)に当接するとともに前記段部の他方(132c)が前記ストッパ部材(146)に当接することで受けていることを特徴とするクラッチ装置。
  2. 前記操作部材(135)は、クラッチカバー(30d)側に周方向の相対変位を固定される固定側リフターカム(83)と、ボール部材(85)を介して当該固定側リフターカム(83)と協働することで前記リフタープレート(96)をリフトさせる可動側リフターカム(84)とを備え、前記可動側リフターカム(84)と前記中間部材(130)とがインロウ嵌合され、
    前記可動側リフターカム(84)側に設けられるカム側フランジ部(133c)と、前記中間部材(130)側に設けられる中間部材側フランジ部(143)との間に、前記レリーズスプリング(131)がコイルスプリングとして設けられることを特徴とする請求項1記載のクラッチ装置。
  3. 前記ストッパ部材(146)、前記カラー部材(140)に形成された雌ねじに締結されるボルト(147)によって固定されることを特徴とする請求項1または2記載のクラッチ装置。
  4. 前記レリーズスプリング(131)には、前記操作部材(135)の回動前からプリロードがかけられているとともに、当該プリロードは、前記ストッパ部材(146)によって受け止められていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のクラッチ装置。
  5. 前記操作部材(135)と前記中間部材(130)とは、前記操作部材(135)が前記中間部材(130)よりも径方向外側に位置するようにインロウ嵌合され、
    前記操作部材(135)のインロウ嵌合部の内周面底部(149)は、前記操作部材(135)が所定量リフトした後、前記中間部材(130)のインロウ嵌合部の端部(141a)と当接するように設けられることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のクラッチ装置。
  6. 前記リフタープレート(96)は、前記レリーズスプリング(131)のプリロードよりも大きなプリロードが付された前記スプリング(97)の押圧力によってクラッチ接続方向に付勢されており、前記操作部材(135)が所定量だけ操作されると、前記段部の他方(132c)が前記ストッパ部材(146)から離れて前記プリロードが前記リフタープレート(96)に伝達され、
    前記操作部材(135)の操作量の増加に伴って圧縮される前記レリーズスプリング(131)によって前記リフタープレート(96)がクラッチ切断方向にさらに押圧され、
    前記操作部材(135)の操作量がさらに増加すると、前記操作部材(135)が前記中間部材(130)に直接当接し、前記中間部材(130)を介して前記リフタープレート(96)をクラッチ切断方向に押圧することを特徴とする請求項1記載のクラッチ装置。
  7. スプリング(95,97)の押圧力によって複数のクラッチ板(94)をクラッチ接続方向へ付勢するプレッシャプレート(93)、及び、当該プレッシャプレート(93)をクラッチ切断方向へリフトするリフタープレート(96)を有する多板クラッチ(51)と、クラッチカバー(30d)側に周方向の相対変位を固定される固定側リフターカム(283)と、ボール部材(85)を介して当該固定側リフターカム(283)と協働することで前記リフタープレート(96)をリフトさせる可動側リフターカム(284)とを備えるクラッチ装置において、
    前記クラッチカバー(30d)に対し周方向には相対変位が固定されるとともに、軸方向には相対変位が可能なアンカー部材(201)が、前記固定側リフターカム(283)と前記クラッチカバー(30d)との間に設けられ、
    前記可動側リフターカム(284)の回動に応じて前記固定側リフターカム(283)をクラッチ切断方向に付勢するレリーズスプリング(231)が、前記アンカー部材(201)と前記クラッチカバー(30d)との間に配置されることを特徴とするクラッチ装置。
  8. 前記クラッチカバー(30d)に前記アンカー部材(201)が挿通される孔部(202)が設けられ、前記アンカー部材(201)には、前記孔部(202)を貫通する貫通カラー部(208)が設けられ、
    前記貫通カラー部(208)の前記クラッチカバー(30d)よりクラッチ寄りの箇所に径方向に延びるフランジ部(206)が設けられ、
    前記貫通カラー部(208)の前記クラッチカバー(30d)より外方に突出した箇所に、前記レリーズスプリング(231)の軸方向荷重を受ける止め輪部材(209)が設けられることを特徴とする請求項7記載のクラッチ装置。
  9. 前記レリーズスプリング(231)には、前記可動側リフターカム(284)の回動前からプリロードがかけられているとともに、当該プリロードは、前記止め輪部材(209)によって受け止められていることを特徴とする請求項8記載のクラッチ装置。
  10. 前記レリーズスプリング(231)は、皿ばねとして設けられることを特徴とする請求項8記載のクラッチ装置。
  11. 前記アンカー部材(201)の前記フランジ部(206)の前記皿ばね(231)よりも径方向内側の位置に、前記クラッチカバー(30d)側に突出するクリアランス調整部(211)が設けられ、前記固定側リフターカム(283)が前記クラッチカバー(30d)側に所定量移動すると、前記クリアランス調整部(211)が前記クラッチカバー(30d)に当接することを特徴とする請求項10記載のクラッチ装置。
  12. 前記貫通カラー部(208)の前記クラッチカバー(30d)の外方への突出箇所を覆うようにキャップ部材(212)が設けられることを特徴とする請求項8記載のクラッチ装置。
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