本発明の透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料において、必須成分の基本材料となるのは、導電性高分子であるが、この導電性高分子は、高分子スルホン酸をドーパントとして3,4−エチレンジオキシチオフェンまたはそのアルキル誘導体を酸化重合して得られたものである。
上記3,4−エチレンジオキシチオフェンまたはそのアルキル誘導体は、下記の一般式(1)で表される化合物に該当する。
そして、上記一般式(1)中のRが水素の化合物が、3,4−エチレンジオキシチオフェンであり、これをIUPAC名称で表示すると、「2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2,3−Dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、この化合物は、IUPAC名称で表示されるよりも、一般名称の「3,4−エチレンジオキシチオフェン」で表示されることが多いので、本書では、この「2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン」を「3,4−エチレンジオキシチオフェン」と表示している。そして、上記一般式(1)中のRがアルキル基の場合、該アルキル基としては、炭素数1〜16のものが好ましく、その中でも、特に炭素数が1〜4のもの、つまり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましく、それらを具体的に例示すると、一般式(1)中のRがメチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−メチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Methyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、以下、これを簡略化して「メチル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。一般式(1)中のRがエチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−エチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Ethyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、以下、これを簡略化して「エチル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。一般式(1)中のRがプロピル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−プロピル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Propyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、以下、これを簡略化して「プロピル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。そして、一般式(1)中のRがブチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−ブチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Butyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、以下、これを簡略化して「ブチル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。また、「2−アルキル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン」を、以下、簡略化して「アルキル化エチレンジオキシチオフェン」で表わす。そして、これらのアルキル化エチレンジオキシチオフェンの中でも、メチル化エチレンジオキシチオフェン、エチル化エチレンジオキシチオフェン、プロピル化エチレンジオキシチオフェン、ブチル化エチレンジオキシチオフェンが好ましい。
これらのアルキル化エチレンジオキシチオフェンは、それぞれ単独で用いることができるし、また、2種類以上を併用することもできる。さらに、これらのアルキル化エチレンジオキシチオフェンと3,4−エチレンジオキシチオフェンとを併用することもできる。そして、これらのメチル化エチレンジオキシチオフェン、エチル化エチレンジオキシチオフェン、プロピル化エチレンジオキシチオフェン、ブチル化エチレンジオキシチオフェンなどの合成法は、本出願人の出願に係る国際公開第2011/068026号公報、国際公開第2011/074380号公報などに記載されている。
そして、導電性高分子は高分子スルホン酸をドーパントとして上記3,4−エチレンジオキシチオフェンまたはそのアルキル誘導体を酸化重合して得られるが、その高分子スルホン酸としては、例えば、スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体をはじめ、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエステル、フェノールスルホン酸ノボラック樹脂などが好適に用いられる。
これは、これらの高分子スルホン酸が、導電性高分子の合成時、優れた分散剤として機能し、酸化剤やモノマーとしての3,4−エチレンジオキシチオフェンまたはそのアルキル誘導体などを水中または水性液中で均一に分散させ、かつ合成されるポリマー中にドーパントとして取り込まれ、得られる導電性高分子を導電性高分子含有塗料の基本材料として用いるのに適した高い導電性を有するものにさせるからである。そして、上記高分子スルホン酸が、優れた分散剤として機能することが、得られる導電性高分子を導電性高分子含有塗料の基本材料として用いるのに適した優れた耐熱性を有させるようにするものと考えられる。
上記スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体(以下、これを「スチレンスルホン酸と非スルホン酸系モノマーとの共重合体」という場合がある)をドーパントとして、3,4−エチレンジオキシチオフェンまたはそのアルキル誘導体を酸化重合することにより得られる導電性高分子は、導電性が高く、かつ耐熱性が優れているので、表明抵抗値が低く、かつ耐熱性が優れた透明導電性パターンを得るのに適していることから、ドーパントとして用いる高分子スルホン酸の中でも特に好ましい。
上記スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体を合成するにあたって、スチレンスルホン酸と共重合させるモノマーとしては、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーを用いるが、上記メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジフェニルブチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸スルホヘキシルナトリウム、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチルグリシジル、メタクリル酸ヒドロキシアルキル、すなわち、メタクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシステアリルなどのメタクリル酸ヒドロキシアルキル、メタクリル酸ヒドロキシポリオキシエチレン、メタクリル酸メトキシヒドロキシプロピル、メタクリル酸エトキシヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジヒドロキシブチルなどを用い得るが、特にメタクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチルなどのアルキル基の炭素数が1〜4のメタクリル酸ヒドロキシアルキルが、スチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。また、メタクリル酸グリシジルやメタクリル酸メチルグリシジルのようにグリシジル基を含有するものは、グリシジル基が開環することによりヒドロキシル基を含有する構造になることから、グリシジル基を有するものも、メタクリル酸ヒドロキシアルキルと同様にスチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。それ故、本発明では、メタクリル酸グリシジルやメタクリル酸メチルグリシジルのように、グリシジル基が開環することによりヒドロキシル基を含有する構造になるものもメタクリル酸エステルの範疇に含ませている。
また、上記アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ジフェニルブチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸スルホヘキシルナトリウム、アクリル酸グリシジル、アクリル酸メチルグリシジル、アクリル酸ヒドロキシアルキル、すなわち、アクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチルなどのアクリル酸ヒドロキシルアルキルなどを用い得るが、特にアクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチルなどのアルキル基の炭素数が1〜4のアクリル酸ヒドロキシルアルキルが、スチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。また、アクリル酸グリシジルやアクリル酸メチルグリシジルのようにグリシジル基を含有するものは、グリシジル基が開環することによりヒドロキシル基を含有する構造になることから、グリシジル基を有するものも、アクリル酸ヒドロキシアルキルと同様にスチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。それ故、本発明では、アクリル酸グリシジルやアクリル酸メチルグリシジルのように、グリシジル基が開環することによりヒドロキシル基を含有する構造になるものもアクリル酸エステルの範疇に含ませている。
そして、上記不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、p−スチリルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシランなどの不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物やそれらの加水分解物を用いることができる。この不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物の加水分解物とは、例えば、不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物が上記3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの場合は、メトキシ基が加水分解されてヒドロキシル基になった構造である3−メタクリロキシトリヒドロキシシランになるか、またはシラン同士が縮合してオリゴマーを形成し、その反応に利用されていないメトキシ基がヒドロキシル基になった構造を有する化合物になる。そして、この不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどが、スチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。
このスチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体における、スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの比率としては、質量比で、1:0.01〜0.1:1であることが好ましい。
そして、上記スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体は、その分子量が、重量平均分子量で5,000〜500,000程度のものが、水溶性およびドーパントとしての特性上から好ましく、重量平均分子量で40,000〜200,000程度のものがより好ましい。
上記ポリスチレンスルホン酸としては、その重量平均分子量が10,000〜1,000,000のものが好ましい。
すなわち、上記ポリスチレンスルホン酸の重量平均分子量が10,000より小さい場合は、得られる導電性高分子の導電性が低くなるおそれがある。また、上記ポリスチレンスルホン酸の重量平均分子量が1,000,000より大きい場合は、導電性高分子の分散液の粘度が高くなり、塗料化しにくくなるおそれがある。そして、上記ポリスチレンスルホン酸としては、その重量平均分子量が上記範囲内で、20,000以上のものが好ましく、40,000以上のものがより好ましく、また、800,000以下のものが好ましく、300,000以下のものがより好ましい。
また、上記スルホン化ポリエステルは、スルホイソフタル酸エステルやスルホテレフタル酸エステルなどのジカルボキシベンゼンスルホン酸ジエステルとアルキレングリコールとを酸化アンチモンや酸化亜鉛などの触媒の存在下で縮重合させたものであり、このスルホン化ポリエステルとしては、その重量平均分子量が5,000〜300,000のものが好ましい。
すなわち、スルホン化ポリエステルの重量平均分子量が5,000より小さい場合は、得られる導電性高分子の導電性が低くなるおそれがある。また、スルホン化ポリエステルの重量平均分子量が300,000より大きい場合は、導電性高分子の分散液の粘度が高くなり、塗料化しにくくなるおそれがある。そして、このスルホン化ポリエステルとしては、その重量平均分子量が上記範囲内で、10,000以上のものが好ましく、20,000以上のものがより好ましく、また、100,000以下のものが好ましく、80,000以下のものがより好ましい。
また、上記フェノールスルホン酸ノボラック樹脂としては、下記の一般式(2)で表される繰り返し単位を有するものが好ましい。
そして、このフェノールスルホン酸ノボラック樹脂としては、その重量平均分子量が5,000〜500,000のものが好ましい。
すなわち、上記フェノールスルホン酸ノボラック樹脂の重量平均分子量が5,000より小さい場合は、得られる導電性高分子の導電性が低くなるおそれがある。また、上記フェノールスルホン酸ノボラック樹脂の重量平均分子量が500,000より大きい場合は、導電性高分子の分散液の粘度が高くなり、塗料化しにくくなるおそれがある。そして、このフェノールスルホン酸ノボラック樹脂としては、その重量平均分子量が上記範囲内で、10,000以上のものがより好ましく、また、400,000以下のものが好ましく、80,000以下のものがより好ましい。
上記スチレンスルホン酸と非スルホン酸系モノマーとの共重合体、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエステル、フェノールスルホン酸ノボラック樹脂などは、それぞれ単独で用いることができるし、また、2種類以上を併用することもできる。そして、本発明の導電性高分子含有塗料の調製にあたっては、導電性高分子は水または溶剤に分散させた分散液の状態で用いるが、その導電性高分子の分散液は、導電性高分子の合成にあたって、上記の高分子スルホン酸をあらかじめ混合して用いて合成した導電性高分子の分散液であってもよいし、また、上記高分子スルホン酸をそれぞれ別々に用いて導電性高分子を合成し、その導電性高分子の合成後に、それらの導電性高分子の分散液を混ぜ合せたものでもよい。
次に、上記高分子スルホン酸をドーパントとしてモノマー(3,4−エチレンジオキシチオフェンまたはそのアルキル誘導体)を酸化重合して導電性高分子を合成する手段について説明すると、上記スチレンスルホン酸と非スルホン酸系モノマーとの共重合体(すなわち、スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体)や、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエステル、フェノールスルホン酸ノボラック樹脂などの高分子スルホン酸は、いずれも、水や水と水混和性溶剤との混合物からなる水性液に対して溶解性を有していることから、酸化重合は水中または水性液中で行われる。
上記水性液を構成する水混和性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、アセトニトリルなどが挙げられ、これらの水混和性溶剤の水との混合割合としては、水性液全体中の50質量%以下が好ましい。
導電性高分子を合成するにあたっての酸化重合は、化学酸化重合、電解酸化重合のいずれも採用することができる。
化学酸化重合を行うにあたっての酸化剤としては、例えば、過硫酸塩が用いられるが、その過硫酸塩としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸カルシウム、過硫酸バリウムなどが用いられる。
化学酸化重合において、その重合時の条件は、特に限定されることはないが、化学酸化重合時の温度としては、5℃〜95℃が好ましく、10℃〜30℃がより好ましく、また、重合時間としては、1時間〜72時間が好ましく、8時間〜24時間がより好ましい。
電解酸化重合は、定電流でも定電圧でも行い得るが、例えば、定電流で電解酸化重合を行う場合、電流値としては0.05mA/cm2〜10mA/cm2が好ましく、0.2mA/cm2〜4mA/cm2がより好ましく、定電圧で電解酸化重合を行う場合は、電圧としては0.5V〜10Vが好ましく、1.5V〜5Vがより好ましい。電解酸化重合時の温度としては、5℃〜95℃が好ましく、特に10℃〜30℃が好ましい。また、重合時間としては、1時間〜72時間が好ましく、8時間〜24時間がより好ましい。なお、電解酸化重合にあたっては、触媒として硫酸第一鉄または硫酸第二鉄を添加してもよい。
上記のようにして得られる導電性高分子は、重合直後、水中または水性液中に分散した状態で得られ、酸化剤としての過硫酸塩や触媒として用いた硫酸鉄塩やその分解物などを含んでいる。そこで、その不純物を含んでいる導電性高分子の分散液を高圧分散機、超音波ホモジナイザー、遊星ボールミルなどの分散機にかけて不純物を分散させた後、カチオン交換樹脂で金属成分を除去する。このときの動的光散乱法で測定した導電性高分子の粒径としては、100μm以下が好ましく、特に10μm以下が好ましく、1nm以上が好ましく、10nm以上がさらに好ましい。その後、エタノール沈殿法、限外濾過法、カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂などにより、酸化剤や触媒の分解により生成した硫酸などを除去し、必要に応じ、高沸点溶剤を添加してもよい。
上記のように、導電性高分子の分散液中に高沸点溶剤を含有させておくと、乾燥して導電性高分子を得るときに、その製膜性を向上させ、それによって、導電性を向上させるので好ましい。
上記高沸点溶剤としては、沸点が150℃以上のものが好ましく、そのような高沸点溶剤の具体例としては、例えば、プロピレングリコール(沸点:210℃)、エチレングリコール(沸点:198℃)、ジメチルスルホキシド(沸点:189℃)、γ−ブチロラクトン(沸点:203℃)、スルホラン(沸点:285℃)、N−メチルピロリドン(沸点:202℃)、ジメチルスルホラン(沸点:233℃)、ブタンジオール(沸点:230℃)、ジエチレングリコール(沸点:244℃)、グリセロール(つまり、グリセリン)(沸点:290℃)、トリエチレングリコール200(沸点:288℃)などが挙げられるが、本発明においては、沸点が180℃から210℃のものが作業性や付与する特性の面から特に好ましく、具体的には、プロピレングリコール(沸点:210℃)、エチレングリコール(沸点:198℃)、ジメチルスルホキシド(沸点:189℃)、γ−ブチロラクトン(沸点:203℃)が特に好ましい。
上記のような高沸点溶剤の含有量としては、分散液中の導電性高分子に対して5〜3,000質量%(すなわち、導電性高分子100質量部に対して高沸点溶剤が5〜3,000質量部)が好ましく、上記範囲内で、20質量%以上がより好ましく、700質量%以下がより好ましい。この高沸点溶剤は、上記のように、導電性高分子の分散液に添加するのではなく、導電性高分子含有塗料の調製時に添加しても、同様に導電性向上剤としての作用を発揮する。
そして、導電性高分子含有塗料中において、この導電性高分子の含有量としては、0.3〜1.5質量%が好ましく、その範囲内で0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以下がより好ましい。これは、導電性高分子含有塗料中における導電性高分子の含有量が上記より少ない場合は、低抵抗の導電膜を得るために塗布量を増やすと、膜の均一性が損なわれるおそれがあり、また、導電性高分子の含有量が上記より多い場合は、粘度が高くなり、塗料化しにくくなる上に、高透明の導電膜を得るためには薄く均一に塗布する必要があるが、粘度が高くなると、塗布膜厚のコントロールが困難になるおそれがあるからである。
光硬化性モノマーとしては、例えば、ヒドロキシル基を有しない、2官能以上の非水溶性アクリレートまたは2官能以上の非水溶性メタクリレートが好ましい。
上記のように、ヒドロキシル基を有しない2官能以上の非水溶性アクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレートなどが用いられ、特にジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどが好ましい。
また、ヒドロキシル基を有しない2官能以上の非水溶性メタクリレートとしては、例えば、エチレンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが用いられ、特にエチレンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートが好ましい。
本発明において用いる光硬化性モノマーは、紫外線照射により光重合して硬化するが、その紫外線照射のための光源としては、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンアーク、メタルハライドランプなどが使用できる。この光硬化性モノマーにおいて、ヒドロキシル基を有しないものを好ましいとしているのは、ヒドロキシル基を有していて親水性を有していると、光硬化後の水洗でパターン部を構成する導電性高分子含有膜が基板から剥離しやすいからである。また、非水溶性モノマーが好ましいとしているのは、水とのなじみを悪くして上記のような剥離が生じないようにするためである。
そして、光硬化性モノマーに関して2官能以上のものが好ましいとしているのは、2官能以上のものは、単官能のものに比べて、形成される導電性膜が強くなるからである。
この光硬化性モノマーの使用量は、パターン部の表面抵抗値に大きく影響し、導電性高分子に対して過剰量の光硬化性モノマーを使用すると、塗膜中の絶縁物が増えるため、パターン部の低抵抗化が困難になることから、導電性高分子に対する比率で決めるのが好ましく、この光硬化性モノマーの導電性高分子に対する使用量としては、導電性高分子と光硬化性モノマーと比率が、質量比で、1:0.1〜1:5が好ましく、1:0.1〜1:3がより好ましく、1:0.1〜1:1がさらに好ましい。
すなわち、導電性高分子に対する光硬化性モノマーの使用量が、上記比率より少ない場合は、導電性高分子含有塗料の光硬化を生じさせることが難しくなり、また、導電性高分子に対する光硬化性モノマーの使用量が上記比率より多い場合は、低抵抗化が困難になるだけでなく、導電性高分子含有塗料中における光硬化性モノマーの分散が困難になるおそれがある。つまり、光硬化性モノマーは、ケトンなどの有機溶剤には溶解するが、水や水性液には溶解しないため、光硬化性モノマーの使用量が多くなると、光硬化性モノマーが凝集して均一に分散しにくくなる。
また、導電性高分子含有塗料の調製にあたっては、水溶性樹脂または水分酸性樹脂を用いるが、これらの樹脂は、光硬化性モノマーに基づくパターン部の基板への密着性を補うバインダとしての役割を果たさせるためのものである。
上記水溶性樹脂としては、例えば、スルホン化ポリエステルなどの水溶性ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルピロリドン、セルロース、アルギン酸、澱粉、寒天、多糖類などが用いられ、特にスルホン化ポリエステルなどの水溶性ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコールが好ましい。
また、上記水分酸性樹脂としては、例えば、水分散性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などが用いられ、特に水分散性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂が好ましい。
これらの水溶性樹脂または水分酸性樹脂は、それぞれ単独で用いることができるし、また、2種類以上を併用することもできる。そして、2種類以上を併用する場合において、その組み合わせが、例えば、水溶性樹脂と水分散性樹脂とであってもよい。
そして、この水溶性樹脂または水分散性樹脂の使用量も、パターン部の表面抵抗値に大きく影響することから、導電性高分子に対して過剰量の水溶性樹脂または水分散性樹脂を使用すると、塗膜中の絶縁物が増えるため、パターン部の低抵抗化が困難になることから、導電性高分子に対する比率で決めるのが好ましい。また、水溶性樹脂と水分散性樹脂とを併用する場合は、その合計で導電性高分子に対する使用量を決めるのが適しており、その導電性高分子に対する使用量としては、導電性高分子と水溶性樹脂または水分散性樹脂との比率が、質量比で、1:0.1〜1:5が好ましく、1:0.1〜1:3がより好ましく、1:0.1〜1:1がさらに好ましい。
すなわち、導電性高分子に対する水溶性樹脂または水分散性樹脂の使用量が、上記比率より少ない場合は、光硬化した導電性高分子含有膜によるパターン部が基板から剥離するのを防止する作用が充分に発揮されないおそれがあり、また、導電性高分子に対する水溶性樹脂または水分散性樹脂の使用量が上記比率より多い場合は、パターン部の低抵抗化が困難になるおそれがある。
本発明の導電性高分子含有塗料には、上記の導電性高分子、光硬化性モノマー、水溶性樹脂または水分散性樹脂以外にも、水を必須成分として必要とするが、この水は、導電性高分子含有塗料の調製にあたって、通常、導電性高分子の分散液を使用するので、その分散媒として使用されている水または水性液から充当されるが、必要であれば、さらに水を添加してもよい。
本発明の導電性高分子含有塗料には、上記必須成分(すなわち、導電性高分子、光硬化モノマー、水溶性樹脂または水分散性樹脂および水)以外にも、その特性を阻害しない範囲で他の成分を添加してもよい。
そのような任意に添加できる成分としては、例えば、光硬化性モノマーを紫外線などの照射により重合させるにあたってのラジカル型光重合開始剤として、オキシフェニル酢酸エステル〔例えば、オキシフェニル酢酸−2−(2−オキシ−2−フェニルアセトオキシエトキシ)エチルエステルとオキシフェニル酢酸−2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルとの混合物である「IRGACURE754」(商品名、BASFジャパン株式会社製)など〕、アルキルフェノン系光重合開始剤〔例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンである「IRGACURE651」(商品名、BASFジャパン株式会社製)など〕、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤〔例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドである「IRGACURE819」(商品名、BASFジャパン株式会社製)など〕などや、導電性向上剤としての1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどや、導電性高分子含有塗料を基板に塗布した際にはじくのを防止するためのメタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエチレングリコールのエステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのプロピレングリコールのエステル類などが挙げられる。
そして、透明導電性パターン形成物を製造するにあたっての基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「PETフィルム」という場合がある)、ポリカーボネートフィルム(以下、「PCフィルム」という場合がある)、ポリプロピレンフィルム(以下、「PPフィルム」という場合がある)、ポリエチレンフィルム(以下、「PEフィルム」という場合がある)、ポリスチレンフィルム(以下、「PSフィルム」という場合がある)、ポリイミドフィルム(以下、「PIフィルム」という場合がある)などが用いられ、特にPETフィルム、PPフィルムなどの透明性の高いフィルムが好適に用いられる。そして、その基板として用いるPETフィルムなどは、パターン形成物の透明性を高めるために、全光線透過率が87%以上のものが好ましい。
上記透明導電性パターン形成物における基板は、その代表的なものは、上記のようなフィルムや、あるいはシートなど、平板状のものであるが、その形状は必ずしも板状のものに限られることはない。また、その基板への導電性高分子含有塗料の塗布手段も、いわゆるハケ塗りに限られることなく、例えば、バーコーター、スピンコーター、グラビアコーターなど、基板上に導電性高分子含有塗料を均一に塗り付けることができるものであれば、その手段を問われることはない。
基板への導電性高分子含有塗料の塗布後の乾燥は、特に限定されるものでないが、通常、70〜130℃程度の温度で行われる。
その乾燥は、基板上に塗布された導電性高分子含有塗料から形成される未硬化膜がべた付かない状態になるまで行えばよく、その時間は特に限定されることはないが、通常、0.5〜5分間程度である。
そして、基板上に塗布した導電性高分子含有塗料を乾燥して得られた導電性高分子含有膜中の光硬化性モノマーを光重合させるための露光は、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンアーク、メタルハライドランプなどの紫外線照射装置から紫外線を照射することによって行われる。
その紫外線などの照射は、通常、導電性高分子含有膜にパターンマスクをかぶせて行われるので、紫外線などの照射条件は、パターンの面積、導電性高分子含有膜の厚みなどによって異なり、一概に決めれるものではないが、例えば、100〜1000mJ/cm2で行われる。
上記露光後、水洗により、未硬化部分の導電性高分子含有膜を基板から剥離する。その際、パターン部、つまり、露光により光硬化した導電性高分子含有膜は、光硬化性モノマーの光硬化に基づいて、水不溶性になっている上に、バインダとしての作用を有する水溶性樹脂または水分散性樹脂が配合されているので、水洗によって基板から剥離することがない。本発明において、パターン部は上記のように光硬化した導電性高分子含有膜で構成されるが、そのパターン部とは主として基板上における透明導電性パターンの一部をいうが、透明導電性パターンの全部をいう場合もある。
基板にパターンを形成した後、上記のように、水洗によって、パターン部以外の部分の導電性高分子含有膜(つまり、未硬化部分の導電性高分子含有膜)を除去するが、その際、バインダとして配合されている樹脂が水溶性樹脂または水分散性樹脂であるので、パターン部以外の部分の導電性高分子含有膜は容易に基板から剥離する。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に例示のもののみに限定されることはない。なお、以下の実施例などにおいて、濃度や使用量を示す際の%は、特にその基準を付記しないかぎり、質量基準による%である。
また、実施例に先立ち、導電性高分子含有塗料の調製にあたって使用する導電性高分子のドーパントとなる高分子スルホン酸の製造例および該高分子スルホン酸をドーパントとする導電性高分子の分散液の製造例を示す。
高分子スルホン酸の製造例1
〔共重合体(スチレンスルホン酸:3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン=9.5:0.5)の製造〕
この高分子スルホン酸の製造例1では、使用開始時のモノマーがスチレンスルホン酸と不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物としての3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランとであって、それらの比率が質量比で9.5:0.5の共重合体の製造について説明する。なお、以下の製造例などにおいても、共重合体の組成の表示にあたっては、使用開始時のモノマーの質量比で表示する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム212.7g(スチレンスルホン酸として190g)と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン10gを添加した。そして、その溶液に酸化剤として過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拝し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランとの共重合体について、GPC(Gel Permeation Chromatography:ゲル濾過クロマトグラフィーであるが、以下、「GPC」のみで示す)カラムを用いたHPLC(High performance liquid chromatography:高速液体クロマトグラフィーであるが、以下、「HPLC」のみで示す)システムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、80,000であった。
高分子スルホン酸の製造例2
〔共重合体(スチレンスルホン酸:3―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン=9.5:0.5)の製造〕
この高分子スルホン酸の製造例2では、スチレンスルホン酸と不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物としての3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとの比率が質量比で9.5:0.5の共重合体の製造について説明する。
3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン10gに代えて、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン10gを用いた以外は、すべて高分子スルホン酸の製造例1と同様の操作を行って、スチレンスルホン酸と3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとの質量比が9.5:0.5の共重合体を得た。
得られたスチレンスルホン酸と3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、90,000であった。
高分子スルホン酸の製造例3
〔共重合体(スチレンスルホン酸:メタクリル酸グリシジル=9.5:0.5)の製造〕
この高分子スルホン酸の製造例3では、スチレンスルホン酸とメタクリル酸エステルとしてのメタクリル酸グリシジルとの比率が質量比で9.5:0.5の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム219.4g(スチレンスルホン酸として196g)とメタクリル酸グリシジル10gとを添加した。そして、その溶液に過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とメタクリル酸グリシジルとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とメタクリル酸グリシジルとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、100,000であった。
高分子スルホン酸の製造例4
〔共重合体(スチレンスルホン酸:メタクリル酸ヒドロキシプロピル=9.8:0.2)の製造〕
この高分子スルホン酸の製造例4では、スチレンスルホン酸とメタクリル酸エステルとしてのメタクリル酸ヒドロキシプロピルとの比率が質量比で9.8:0.2の共重合体の製造について説明する。
メタクリル酸グリシジル10gに代えて、メタクリル酸ヒドロキシプロピル4gを用いた以外は、すべて高分子スルホン酸の製造例3と同様の操作を行って、スチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシプロピルとの質量比が9.8:0.2の共重合体を得た。
得られたスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシプロピルとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、110,000であった。
高分子スルホン酸の製造例5
〔共重合体(スチレンスルホン酸:アクリル酸ヒドロキシエチル=9.5:0.5)の製造〕
この高分子スルホン酸の製造例5では、スチレンスルホン酸とアクリル酸エステルとしてのアクリル酸ヒドロキシエチルとの比率が質量比で9.5:0.5の共重合体の製造について説明する。
メタクリル酸グリシジル10gに代えて、アクリル酸ヒドロキシエチル10gを用いた以外は、すべて高分子スルホン酸の製造例3と同様の操作を行って、スチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が9.5:0.5の共重合体を得た。
得られたスチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、110,000であった。
高分子スルホン酸の製造例6
〔ポリスチレンスルホン酸の製造〕
この高分子スルホン酸の製造例6では、ポリスチレンスルホン酸の製造について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム223.9g(スチレンスルホン酸として200g)を添加した。そして、その溶液に酸化剤として過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸の重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拝し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたポリスチレンスルホン酸について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記ポリスチレンスルホン酸のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、100,000であった。
導電性高分子分散液の製造例1
この導電性高分子の製造例1では、高分子スルホン酸の製造例1で得たスチレンスルホン酸と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランとの質量比が9.5:0.5の共重合体をドーパントとして導電性高分子の分散液の製造を行った。
すなわち、上記高分子スルホン酸の製造例1で得たスチレンスルホン酸と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランとの共重合体の4%水溶液600gを内容積1Lのステンレス鋼製容器に入れ、そこに触媒として硫酸第一鉄・7水和物を0.3g添加して溶解した。その中に3,4−エチレンジオキシチオフェンを4mLゆっくり滴下した。ステンレス鋼製の撹拌バネで撹拌し、容器に陽極を取り付け、撹拌バネに陰極を取り付け、1mA/cm2の定電流で18時間電解酸化重合して、導電性高分子を合成した。上記電解酸化重合後、水で4倍に希釈した後、超音波ホモジナイザー〔日本精機社製、US−T300(商品名)〕で30分間分散処理を行った。
その後、オルガノ社のカチオン交換樹脂〔アーバンライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間攪拌機で撹拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
上記処理後の液を孔径1μmのフィルターに通し、その通過液を限外濾過装置〔ザルトリウス社製Vivaflow200(商品名)、分子量分画5万〕で処理して、液中の遊離の低分子成分を除去した。この処理後の液を水で希釈して導電性高分子の濃度を1.5%に調整し、導電性高分子の濃度が1.5%の導電性高分子の分散液(1)を得た。
導電性高分子の分散液の製造例2
この導電性高分子の分散液の製造例2では、高分子スルホン酸の製造例2で得たスチレンスルホン酸と3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとの質量比が9.5:0.5の共重合体をドーパントとして導電性高分子の分散液の製造を行った。
すなわち、高分子スルホン酸の製造例1で得たスチレンスルホン酸と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランとの共重合体(以下、簡略化して、「高分子スルホン酸の製造例1で得た共重合体」という)に代えて、高分子スルホン酸の製造例2で得たスチレンスルホン酸と3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとの質量比が9.5:0.5の共重合体を用いた以外は、すべて導電性高分子の分散液の製造例1と同様の操作を行って、導電性高分子の濃度が1.5%の導電性高分子の分散液(2)を得た。
導電性高分子の分散液の製造例3
この導電性高分子の分散液の製造例3では、高分子スルホン酸の製造例3で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸グリシジルとの質量比が9.5:0.5の共重合体をドーパントとして導電性高分子の分散液の製造を行った。
すなわち、高分子スルホン酸の製造例1で得た共重合体に代えて、高分子スルホン酸の製造例3で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸グリシジルとの質量比が9.5:0.5の共重合体を用いた以外は、すべて導電性高分子の分散液の製造例1と同様の操作を行って、導電性高分子の濃度が1.5%の導電性高分子の分散液(3)を得た。
導電性高分子の分散液の製造例4
この導電性高分子の分散液の製造例4では、高分子スルホン酸の製造例4で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシルプロピルとの質量比が9.8:0.2の共重合体をドーパントとして導電性高分子の分散液の製造を行った。
すなわち、高分子スルホン酸の製造例1で得た共重合体に代えて、高分子スルホン酸の製造例4で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシプロピルとの質量比が9.8:0.2の共重合体を用いた以外は、すべて導電性高分子の分散液の製造例1と同様の操作を行って、導電性高分子の濃度が1.5%の導電性高分子の分散液(4)を得た。
導電性高分子の分散液の製造例5
この導電性高分子の分散液の製造例5では、高分子スルホン酸の製造例5で得たスチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が9.5:0.5の共重合体をドーパントとして導電性高分子の分散液の製造を行った。
すなわち、高分子スルホン酸の製造例1で得た共重合体に代えて、高分子スルホン酸の製造例5で得たスチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの質量比が9.5:0.5の共重合体を用いた以外は、すべて導電性高分子の分散液の製造例1と同様の操作を行って、導電性高分子の濃度が1.5%の導電性高分子の分散液(5)を得た。
導電性高分子の分散液の製造例6
この導電性高分子の分散液の製造例6では、高分子スルホン酸の製造例6で得たポリスチレンスルホン酸をドーパントとして導電性高分子の分散液の製造を行った。
すなわち、高分子スルホン酸の製造例1で得た共重合体に代えて、高分子スルホン酸の製造例6で得たポリスチレンスルホン酸を用いた以外は、すべて導電性高分子の分散液の製造例1と同様の操作を行って、導電性高分子の濃度が1.5%の導電性高分子の分散液(6)を得た。
実施例1
導電性高分子の分散液の製造例1で得た導電性高分子の濃度が1.5%の導電性高分子の分散液(1)40gにバインダとしてスルホン化ポリエステル〔互応化学工業社製プラスコートZ−565(商品名)〕の20%水溶液を0.57g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔日本化薬工業社製DPHA(商品名)〕を0.15g、ラジカル型光重合開始剤としてオキシフェニル酢酸エステル〔BASFジャパン社製IRGACURE754(商品名)〕を2μL、1,3-プロパンジオールを10g、メタノールを27g添加して、1時間攪拌機で撹拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。上記スルホン化ポリエステルの使用量は導電性高分子1質量部に対して0.19質量部の割合であり、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの使用量は導電性高分子1質量部に対して0.23質量部の割合であった。
実施例2
スルホン化ポリエステルに代えて、ポリビニルアルコール(分子量100,000、和光純薬工業社製)の20%水溶液を0.45g用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。
実施例3
スルホン化ポリエステルに代えて、水分散性ポリエステル樹脂[東洋紡績社製バイロナールMD-1930(商品名)]の20%水溶液を0.45g用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。
実施例4
この実施例4において、バインダとして用いるアクリル変性ポリエスル樹脂の製造を先に示す。
1Lの攪拌機付セパラブルフラスコにスルホン化ポリエステル〔互応化学工業社製プラスコートZ−565(商品名)〕の20%水溶液625gと0.3Lの純水を添加し、界面活性剤として30%ポリオキシエチレンアルキルエーテル水溶液0.5gを添加し、撹拌した。次いでメタクリル酸グリシジル62.5gと、メタクリル酸メチル62.5gを添加した。液温が80℃になるまで加熱し、40%過硫酸アンモニウム水溶液3.0gをゆっくり滴下後、80℃で6時間撹拌した。反応液を冷却し、純水を添加して、固形分20%のアクリル変性ポリエステル樹脂の水溶液を得た。
そして、スルホン化ポリエステルに代えて、上記アクリル変性ポリエステル樹脂の20%水溶液を0.45g用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。
実施例5
導電性高分子の分散液(1)に代えて、導電性高分子の分散液の製造例2で得た導電性高分子の分散液(2)を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。
実施例6
導電性高分子の分散液(1)に代えて、導電性高分子の分散液(2)を用いた以外は、すべて実施例2と同様の操作を行って、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。
実施例7
導電性高分子の分散液(1)に代えて、導電性高分子の分散液(2)を用いた以外は、すべて実施例3と同様の操作を行って、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。
実施例8
導電性高分子の分散液(1)に代えて、導電性高分子の分散液の製造例3で得た導電性高分子の分散液(3)を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。
実施例9
導電性高分子の分散液(1)に代えて、導電性高分子の分散液(3)を用いた以外は、すべて実施例2と同様の操作を行って、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。
実施例10
導電性高分子の分散液(1)に代えて、導電性高分子の分散液(3)を用いた以外は、すべて実施例3と同様の操作を行って、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。
実施例11
導電性高分子の分散液(1)に代えて、導電性高分子の分散液の製造例4で得た導電性高分子の分散液(4)を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。
実施例12
導電性高分子の分散液(1)に代えて、導電性高分子の分散液(4)を用いた以外は、すべて実施例3と同様の操作を行って、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。
実施例13
導電性高分子の分散液(1)に代えて、導電性高分子の分散液(4)を用いた以外は、すべて実施例4と同様の操作を行って、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。
実施例14
導電性高分子の分散液(1)に代えて、導電性高分子の分散液の製造例5で得た導電性高分子の分散液(5)を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。
実施例15
導電性高分子の分散液(1)に代えて、導電性高分子の分散液(5)を用いた以外は、すべて実施例2と同様の操作を行って、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。
実施例16
導電性高分子の分散液(1)に代えて、導電性高分子の分散液の製造例6で得た導電性高分子の分散液(6)を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。
実施例17
導電性高分子の分散液(1)に代えて、導電性高分子の分散液(6)を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。
実施例18
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートに代えて、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製DPEA-12)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。
実施例19
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートに代えて、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製DPEA-12)を用いた以外は、すべて実施例2と同様の操作を行って、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。
実施例20
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートに代えて、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製DPEA-12)を用いた以外は、すべて実施例3と同様の操作を行って、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。
実施例21
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートに代えて、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製DPEA-12)を用いた以外は、すべて実施例4と同様の操作を行って、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。
実施例22
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートに代えて、エチレンジメタクリレート(和光純薬社製)を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。
比較例1
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートに代えて、メタクリル酸ヒドロキシエチルを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。
比較例2
バインダとしてのスルホン化ポリエステル〔互応化学工業社製プラスコートZ−565(商品名)〕の20%水溶液を用いなかった以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。
比較例3
導電性高分子の分散液(1)40gにバインダとしてスルホン化ポリエステル〔互応化学工業社製プラスコートZ−565(商品名)〕の20%水溶液を0.57g、1,3-プロパンジオールを10g、メタノールを27g添加して、1時間攪拌機で撹拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料を調製した。
上記実施例1〜22および比較例1〜3のうち実施例1〜17の透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料の調製にあたって使用した導電性高分子の分散液の種類、光硬化性モノマーの種類、バインダとして用いた水溶性樹脂または水分酸性樹脂の種類を表1に示し、実施例18〜22および比較例1〜3の透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料の調製にあたって使用した導電性高分子の分散液の種類、光硬化性モノマーの種類、バインダとして用いた水溶性樹脂または水分酸性樹脂の種類を表2に示す。ただし、スペース上の関係で、導電性高分子の分散液の種類に関しての表1〜2への表示にあたってはその番号で示す。
上記のように調製した実施例1〜22および比較例1〜3の透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料の性能評価は、次の実施例23〜44および比較例4〜6で透明導電性パターン形成フィルムを作製し、その透明導電性パターン形成フィルムの特性を測定することによって行う。
〔透明導電性パターン形成フィルムでの評価〕
実施例23
透明導電性パターン形成フィルム作製時の基板としては、東洋紡績社製の透明ポリエステルフィルム(商品名:ルミラーS10)を用い、この透明ポリエステルフィルムに上記実施例1の透明導電性パターン形成用の導電性高分子含有塗料をバーコーターNo.08(膜厚18.32μm)で塗布し、100℃で90秒間乾燥して、透明ポリエステルフィルムからなる基板上に未硬化の導電性高分子含有膜を形成した。そして、その未硬化の導電性高分子含有膜上を所定のパターンマスク(ライン/スペース=30μm/30μmと5cm×5cmの露光部分がある2つのパターンを有するマスク)で覆い、パターン部の導電性高分子含有膜に低圧水銀灯から紫外線を500mJ/cm2照射することにより露光してパターン部の導電性高分子含有膜を光硬化させた。
上記露光後、25℃の水で洗浄し、未露光部分の導電性高分子含有膜を基板から剥離し、130℃で90秒間乾燥して、光硬化させた導電性高分子含有膜からなる所定の透明導電性パターンを形成した透明導電性パターン形成フィルムを得た。
なお、上記パターンマスクにおける「ライン/スペース=30μm/30μmの露光部分は、形成されるパターン部の解像性を評価するために、後記の30μm細線の形成の有無を調べるのに使用する透明導電性パターンを形成するためのものであり、5cm×5cmの露光部分は形成されるパターン部の初期表面抵抗値などを測定するために使用する透明導電性パターンを形成するためのものである。
実施例24〜44および比較例4〜5
実施例1の導電性高分子含有塗料に代えて、実施例2〜22および比較例1〜2の導電性高分子含有塗料をそれぞれ別々に用いた以外は、すべて実施例23と同様の操作を行って、透明導電性パターン形成フィルムを作製した。
比較例6
透明導電性パターン形成フィルム作製時の基板としては、東洋紡績社製の透明ポリエステルフィルム(商品名:ルミラーS10)を用い、この透明ポリエステルフィルムに上記比較例3の導電性高分子含有塗料をバーコーターNo.08(膜厚18.32μm)で塗布し、130℃で90秒間乾燥して、透明ポリエステルフィルムからなる基板上に未硬化の導電性高分子含有膜を形成した。
上記導電性高分子含有膜に、旭化成イーマテリアルズ社製ドライフィルムレジスト(商品名:SUNFORT AK-3021)をラミネーターを用いて導電性高分子含有膜を形成した基板に貼り付けた。
そして、上記レジスト層を実施例23と同様のパターンマスクで覆い、高圧水銀灯を使用して紫外線を500mJ/cm2照射した後、未露光部分のレジスト層を1%炭酸ナトリウム水溶液で基材から剥離した。次いで、上記未露光部分の導電性高分子含有膜を10重量%の硝酸セリウムアンモニウムと10重量%の硝酸との混合物からなるエッチング剤を用いて、30℃ にて1分間エッチング処理し、水洗して光硬化させた導電性高分子含有膜からなるパターンを形成した。次いで、上記導電性高分子含有膜上のレジスト層を3%水酸化ナトリウム水溶液で剥離した後、130℃で90秒間乾燥し、実施例23と同様のパターンを形成した透明導電性パターン形成フィルムを作製した。
上記のようにして作製した実施例および比較例の透明導電性パターン形成フィルムについて、パターンに30μmの細線が形成されているか否か(30μm細線の形成の有無)を調べ、かつ、初期表面抵抗値、全光線透過率を測定し、クロスカット剥離試験、耐環境性試験(耐湿熱性試験および耐熱性試験)を行った。30μm細線の形成の有無、初期表面抵抗値、全光線透過率の測定結果を、その透明導電性パターン形成フィルムの作製にあたって用いた導電性高分子含有塗料の種類とともに表3および表4に示す。また、クロスカット剥離試験、耐環境性試験の試験結果を表5および表6に示す。ただし、導電性高分子含有塗料の種類の表3および表4への表示にあたっては、スペース上の関係で、項目を「塗料」とし、その種類の表示は実施例番号で行う。なお、それらの測定方法や試験方法は、次の通りであり、比較例5については、水洗により、パターン部が基板から剥がれ落ちたので、それらの測定や試験は行わなかった。
30μm細線の形成の有無:
透明導電性パターン形成フィルムのパターン部(ただし、パターンマスクのライン/スペース=30μm/30μmに基づくパターン部)を、顕微鏡を用いて目視で観察して、30μmの細線が形成されているか否かを調べた。試料としては各透明導電性パターン形成フィルムとも20枚を用い、表3および表4には、次の評価基準で記号化して表示する。
○:20枚すべてで30μm細線形成
△:20枚中10枚以上で30μm細線形成
×:20枚中10枚未満で30μm細線形成
初期表面抵抗値:
三菱化学アナリテック社製ロレスターGP〔MCP−T610型、直列4探針プローブ(ASP)〕を用い、室温(25℃)にて測定した。
測定にあたっては、各透明導電性パターン形成フィルムとも、試料として5cm×5cmのパターン部を4枚用い、表3および表4に示す初期表面抵抗値は、それら4枚の平均値を求め、小数点以下を四捨五入して示したものである。この初期表面抵抗値が小さいほど、試験に供した透明導電性パターン形成フィルムのパターン部の導電性が高いことを示す。
全光線透過率:
スガ試験機株式会社製HZ−2P型〔ダブルビーム形式(C光・D65光)〕を用い、温度25℃で測定した。測定にあたっては、各透明導電性パターン形成フィルムとも、試料として5cm×5cmのパターン部を4枚用い、表3および表4に示す全光線透過率値は、それら4枚の平均値を求め、小数点以下を四捨五入して示したものである。
クロスカットテープ剥離試験:
クロスカットガイドを用いてJIS−K−5600に規定の方法により温度25℃で試験し、剥離した格子目の数を調べた。表5および表6には、クロスカットテープ剥離試験に供した全格子目数の100を分母に示し、剥離しなかった格子目の数を分子に示す態様で表示する。
耐環境性試験:
この耐環境性試験では、実施例23〜44および比較例4、6の透明導電性パターン形成フィルムの耐湿熱性評価と耐熱性評価を行う。
まず、耐湿熱性評価では、上記初期表面抵抗値や全光線透過率などの測定に使用したものとは別途作製した実施例23〜44および比較例4、6の透明導電性パターン形成フィルム(以下、この「透明導電性パターン形成フィルム」を簡略化して「パターン形成フィルム」という場合がある)について、前記の初期表面抵抗値の測定方法と同様の方法で、表面抵抗値を測定した後、それらのパターン形成フィルムを下記の(A)および(B)の条件
(A)65℃で相対湿度95%の恒温恒湿機中
(B)85℃で相対湿度85%の恒温恒湿機中
下において静置状態でそれぞれ別々に240時間貯蔵し、その貯蔵後、130℃で90秒間乾燥し、その後、前記と同様に、表面抵抗値を測定した。そして、それらの結果に基づき、次の式により、耐湿熱性試験下での貯蔵による表面抵抗値の変化率を求めた。
(表面抵抗値変化率) = (耐湿熱性試験後の表面抵抗値) ÷ (耐湿熱性試験前の表面抵
抗値)
また、耐熱性評価では、上記耐湿熱性試験に供したものとは別途作製した実施例23〜44および比較例4、6のフィルム(ただし、5cm×5cmのパターン部)を下記(C)の条件
(C)85℃のオーブン中
下において静置状態でそれぞれ別々に240時間貯蔵した後、前記と同様に、表面抵抗値を測定し、その貯蔵による表面抵抗値の変化率を次の式により求めた。
(表面抵抗値変化率) = (耐熱性試験後の表面抵抗値) ÷ (耐熱性試験前の表面抵抗値)
そして、上記のようにして求めた耐湿熱性試験および耐熱性試験によるパターン形成フィルムの表面抵抗値の変化率を表5および表6に示す。ただし、表5および表6への耐湿熱性試験や耐熱性試験の条件の表示にあたっては、スペース上の関係で、次のように簡略化して示す。
(A)の「65℃相対湿度95%の恒温恒湿機中」→「65℃/95%」
(B)の「85℃相対湿度85%の恒温恒湿機中」→「85℃/85%」
(C)の「85℃のオーブン中」→「85℃」
表3〜6に示すように、実施例23〜44のフィルムは、比較例4のフィルムや比較例6のフィルムに比べて、初期表面抵抗値が小さく(低く)、クロスカット剥離試験で剥離した格子目数が少なく(つまり、クロスカット剥離試験で剥離しなかった格子目数が多く)、耐剥離性が優れていた。
そして、実施例23〜44のフィルムは、比較例4のフィルムや比較例6のフィルムと同等の全光線透過率であるが、初期抵抗値は低かった。また、実施例23〜44のフィルムは、耐環境性試験でも、表面抵抗値の変化率が、比較例4のフィルムや比較例6のフィルムに比べて小さく、耐環境性に優れていた。
比較例4〜6のフィルムについて言及しておくと、比較例4では、メタクリル酸ヒドロキシエチルが露光により硬化し、未露光部分に比べて基板への密着性が強くなっていたが、露光部分の耐水性が不足しているため、露光部分の一部が剥離し、30μm細線が形成されず、鮮明なパターンが得られなかった。
比較例5のフィルムは、バインダとして作用する水溶性樹脂や水分酸性樹脂を用いていないため、基板への密着性が悪く、実用性に劣っていた。
そして、比較例6のフィルムは、30μmの細線が形成されたが、現像時に使用するγ-ブチロラクトンが導電性高分子含有膜を劣化させ、そのため、初期表面抵抗値が大きくなり、導電性が低くなった。