次に、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
<第1実施形態>
図1〜3は、本発明の第1実施形態に係るろう付け装置及びろう付け方法を説明する図である。
本第1実施形態のろう付け装置1は、図2に示すように、ろう付け製品として例えば熱交換器を不活性ガス雰囲気ろう付け法により製造するために用いられるものであり、密封体2としての箱形(詳述すると四角箱形)の密封容器3と、2個の押さえ部材10、10と、2個の発熱体20、20などを具備している。
密封容器3の内部3aにはワーク30が収容配置される。ワーク30はろう付け予定部31を備えたものであり、本第1実施形態ではワーク30は互いにろう付け一体化される複数個の被ろう付け部材33a、33a、33bから構成されている。これらの被ろう付け部材33a、33a、33bはいずれも金属製であり、本第1実施形態ではアルミニウム製であるとする。また、被ろう付け部材の個数は例えば3個である。これらの被ろう付け部材のうち2個の部材33a、33aは略平板状であり、互いに上下に離間して平行に配置されている。各平板状部材33a、33aの大きさは例えば幅100×長さ100×肉厚10mmである。残りの1個の部材33bはコルゲートフィン状であり、両平板状部材33a、33aの間に配置されている。このコルゲートフィン状部材33bの大きさは例えば幅100×長さ100×高さ80×肉厚1.6mmである。コルゲートフィン状部材33bはブレージングシートで形成されており、図2中に拡大図で示すようにその心材33cの両面にそれぞれろう材としてのろう材層32、32がクラッドされている(両面8%クラッド)。したがって、上側の平板状部材33aとコルゲートフィン状部材33bとの相互接触部(即ち接合予定界面)間と、下側の平板状部材33aとコルゲートフィン状部材33bとの相互接触部(即ち接合予定界面)間とには、それぞれコルゲートフィン状部材33bのろう材層32(ろう材)が介在されている。そして、それぞれの相互接触部間に介在されたろう材層32が溶融されることにより、それぞれの相互接触部がろう付けされてこれらの被ろう付け部材33a、33a、33bが一体化される。すなわち、このワーク30はこのような相互接触部をろう付け予定部31として備えるとともに、相互接触部(ろう付け予定部31)にはろう材としてのろう材層32が設けられている。
ろう材層32のろう材の主なろう成分は、Al−Si系合金、Al−Si−Mg(Bi)系合金等である。ろう材の種類は、適用するろう付け方法(ろう付け条件)に応じて決定されるものであり、限定されるものではない。具体的に示すと、ろう付け方法(ろう付け条件)として例えばノコロックろう付け法(ノコロックろう付け条件)を適用する場合にはろう材にフラックスを付着供給させたものが用いられ、ろう付け方法(ろう付け条件)として例えばVAW法(VAWろう付け条件)を適用する場合にはろう材はフラックスレスのものが用いられる。さらに、ろう付け方法(ろう付け条件)として例えばノコロックろう付け法(ノコロックろう付け条件)を適用する場合には、ろう付け予定部31にフラックスを付着供給しても良い。
本第1実施形態のワーク30において、平板状部材33aの材質は例えばA1050である。コルゲートフィン状部材33bの心材33cの材質は例えばA3003であり、ろう材層32の材質(即ちろう材)は例えばAl−Si系合金のA4045である。
密封容器3は、可搬性を有するものであり、詳述すると例えばろう付け作業者の人力で運搬可能なものである。この密封容器3は、密封容器3の内部3aと密封容器3の外側(外部)とを仕切る隔壁としての外壁6によってその全体が形成されている。すなわち、密封容器3の内部3aは、密封容器3の外壁6によって密封容器3の外側(外部)から区画されて包囲されている。
密封容器3の内部3aは、ろう材(ろう材層32)を溶融する際に不活性ガス雰囲気にされるものである。ここで本第1実施形態(更には後述の第2及び第3実施形態)では、不活性ガスは例えばN2ガス(即ち窒素ガス)であるとする。ろう材を溶融する際には、密封容器3の内部3aのN2ガス圧力(即ち密封容器3の内圧)は、密封容器3の外側の圧力(即ち大気圧)と略均衡する圧力に設定され、具体的には約1気圧に設定される。また、この密封容器3は保持部材(図示せず)によって所定の高さ位置に水平状に配置されて保持されている。
次に、密封容器3の構成について以下に詳しく説明する。
密封容器3の大きさは、密封容器3の可搬性を損なわない範囲内においてワーク30の大きさ等に応じて設定されるものであり、限定されるものではない。しかしながら、本第1実施形態では、密封容器3の幅が200〜500mm、その長さが200〜500mm、その高さ(厚さ)が30〜150mm、その内部3aの容量(即ち密封容器3の内容量)が1〜25L、その重量が20kgf以下にそれぞれ設定されることが、密封容器3の可搬性を確実に確保しうる点などで特に望ましい。なお、密封容器3の重量の下限についても限定されるものではなく、通常2kgfに設定される。
密封容器3は、密封体本体としての密封容器本体4、密封容器本体4に対して開閉自在な2個の板状の蓋体5、5などを備えている。密封容器本体4と両蓋体5、5は、いずれも、ろう材を溶融する際の熱に耐えうる金属製であり、例えばSUS304等のステンレス鋼製である。
密封容器本体4は、平面視略ロ字枠状の外側壁4aを備えるとともに、外側壁4aの上面側及び下面側がそれぞれ開口されたものである。
2個の蓋体5、5のうち一方の蓋体5は、密封容器本体4の上側の開口(詳述すると密封容器本体4の外側壁4aの上側の開口)を開閉自在に気密に閉塞するものである。この蓋体5を特に「上蓋体」という。他方の蓋体5は、密封容器本体4の下側の開口(詳述すると密封容器本体4の外側壁4aの下側の開口)を開閉自在に気密に閉塞するものである。この蓋体5を特に「下蓋体」という。この下蓋体5は、密封容器本体4に対して閉じた状態(即ち密封容器本体4の下側の開口を閉塞した状態)では密封容器3の薄板状底壁を構成している。
密封容器本体4の上側及び下側の開口はそれぞれ平面視方形状である。上蓋体5及び下蓋体5はそれぞれ密封容器本体4の上側及び下側の開口に対応した形状であり、即ち平面視方形状である(図1参照)。
本第1実施形態では、密封容器本体4の外側壁4aは、密封容器3の外壁6の一部を構成しており、両蓋体5、5は、密封容器3の外壁6のその他の部分を構成している。すなわち、密封容器3の外壁6は、密封容器本体4の外側壁4aと両蓋体5、5とから構成されている。
密封容器3において、図2及び3に示すように、各蓋体5と密封容器本体4との相互シール部4d、5d間にはシール部材8が介在されている。蓋体5のシール部5dは、蓋体5の外周部5cに位置しており、詳述すると蓋体5の内面5aの外周部に位置している。密封容器本体4の各シール部4dは、外側壁4aの上下各端面からなる。シール部材8は、平面視略ロ字の環状のゴム製ガスケット(パッキンを含む。)であり、密封容器本体4の各シール部4dに形成された溝内にそれぞれ配置されている。シール部材8の断面形状は略円形状である。
2個の押さえ部材10、10のうち一方の押さえ部材10は、上蓋体5のシール部5dを密封容器本体4の上側のシール部4dに上側のシール部材8を介して密着する方向に押し付けるために、上蓋体5の外面5bの外周部を押さえるものである。この押さえ部材10を特に「上押さえ部材」という。他方の押さえ部材10は、下蓋体5のシール部5dを密封容器本体4の下側のシール部4dに下側のシール部材8を介して密着する方向に押し付けるために、下蓋体5の外面5bの外周部を押さえるものである。この押さえ部材10を特に「下押さえ部材」という。
図1に示すように、各押さえ部材10は平面視ロ字枠状のものであり、対応する蓋体5の外周部5cの外側に配置されている。押さえ部材10は、ろう材を溶融する際の熱に耐えうる金属製であり、例えばSUS304等のステンレス鋼製である。押さえ部材10の詳細な構成については後述する。
2個の発熱体20、20は、密封容器3におけるワーク配置位置を挟んだ上下両外側に一個ずつ配置されている。そして、ろう材を溶融する際には、各発熱体20の熱は、各発熱体20が密封容器3の外壁6としての蓋体5の外面5bに接触し且つ蓋体5の内面5aがワーク30に接触した状態にして、各発熱体20から蓋体5を介してワーク30に伝導伝熱により同時に伝えられてろう材を加熱溶融するものである。発熱体20は例えば電気ヒータの加熱ヘッドからなるものであり、発熱体20への電流供給量の増減等によって発熱体20の温度を制御できるように構成されている。なお、伝導伝熱は熱伝導とも呼ばれている。
ここで説明の便宜上、密封容器3におけるワーク配置位置を挟んだ両外側のうち上外側に配置された発熱体20を「上発熱体」、下外側に配置された発熱体20を「下発熱体」という。
本第1実施形態では、上発熱体20の加熱面(発熱面)20aは、密封容器3の上蓋体5の外面5bの中央部に面接触状態に接触可能な形状に形成されており、具体的には例えば平坦状に形成されている。さらに、この加熱面20aは、ワーク30の上面を覆いうる大きさに形成されており(図1参照)、例えば幅100×長さ100mmに設定されている。また同じく、下発熱体20の加熱面(発熱面)20aは、密封容器3の下蓋体5の外面5bの中央部に面接触状態に接触可能な形状に形成されており、具体的には例えば平坦状に形成されている。さらに、この加熱面20aは、ワーク30の下面を覆いうる大きさに形成されており、例えば幅100×長さ100mmに設定されている。
したがって、本第1実施形態では、密封容器3の外壁6における上発熱体20との接触部5eは上蓋体5の中央部に位置しており、密封容器3の外壁6における下発熱体20との接触部5eは下蓋体5の中央部に位置している。
さらに、ろう付け装置1は、上下両発熱体20、20のうち少なくとも一方を密封容器3の外壁6を介してワーク30に押し付けるための駆動器25を備えている。本第1実施形態では、ろう付け装置1は、両発熱体20、20をそれぞれ密封容器3の外壁6を介してワーク30に押し付けるための2個の駆動器として上駆動器25及び下駆動器25を備えている。上駆動器25は、上発熱体20を密封容器3の外壁6としての上蓋体5を介してワーク30に上側から押し付けるものである。下駆動器25は、下発熱体20を密封容器3の外壁6としての下蓋体5を介してワーク30に下側から押し付けるものである。そして、両発熱体20、20は、各駆動器25、25の駆動力によって、対応する蓋体5を介してワーク30に両発熱体20、20間でワーク30を上下両側から挟むように同時に押し付けられるように構成されている。各駆動器25は、その駆動速度、駆動量、駆動力等の駆動動作を制御可能なものである。各駆動器25としては、流体圧(例:油圧、ガス圧)式駆動シリンダ、電動駆動モータなどが用いられる。
密封容器本体4の外側壁4aの肉厚は限定されるものではなく、例えば3〜10mmに設定される。各蓋体5の肉厚についても限定されるものではないが、肉厚が増大するのに伴って蓋体5の熱容量が増大したり各発熱体20からワーク30に伝わる熱量が減少したりするため、その肉厚はなるべく薄い方が望ましく、具体的には0.1〜3mmに設定されるのが特に望ましい。こうすることにより、ワーク30の昇温速度の高速化を確実に図ることができるし、ろう材を溶融する際において密封容器3の内部3aをN2ガス雰囲気に確実に維持することができる。
また、図2に示すように、密封容器3の内部3aにワーク30が配置された状態において、密封容器3の内部3aにおける相互シール部4d、5dとワーク30との間に平面視略ロ字状の空洞12が相互シール部4d、5dの内側の全周に亘って(即ちワーク30の外側の全周に亘って)形成されている。したがって、ワーク30は、各蓋体5の内面5aにのみ接触しており外側壁4aには接触していない。
さらに、この密封容器3には、密封容器3の内部3aをN2ガス雰囲気にするために密封容器3の内部3aにN2ガスを導入するガス導入部18と、密封容器3の内部3aのガスを排出するガス排出部19とが一体的に設けられている。
ガス導入部18は、密封容器本体4の外側壁4aをその外側から内側(即ち密封容器3の内部3a側)に気密に貫通して配置されたガス導入管18aと、ガス導入管18aに設けられた第1封止弁18bと、ガス導入管18aをN2ガス供給源としてのN2ガスボンベ27から延びた供給管27aに分離可能に接続するコネクタ18cとを備えている。ガス導入管18aは、ろう材を溶融する際の熱に耐えうる耐熱金属製であり、例えばSUS304等のステンレス鋼製である。第1封止弁18bはガス導入管18a(ガス導入部18)を開閉自在に封止するものである。コネクタ18cはガス導入管18aの上流側の端部に取り付けられている。一方、N2ガスボンベ27の供給管27aの下流側の端部には、ガス導入部18のコネクタ18cに対応するコネクタ27bが取り付けられている。
ガス排出部19は、密封容器本体4の外側壁4aをその外側から内側(即ち密封容器3の内部3a側)に気密に貫通して配置されたガス排出管19aと、ガス排出管19aに設けられた第2封止弁19bと、を備えている。ガス排出管19aの排出口は密封容器3の外側近傍にて大気中に開放されている。ガス排出管19aは、ろう材を溶融する際の熱に耐えうる耐熱金属製であり、例えばSUS304等のステンレス鋼製である。第2封止弁19bはガス排出管19a(ガス排出部19)を開閉自在に封止するものである。
本第1実施形態では、ガス排出管19aには、第2封止弁19bとして、密封容器3の内部3aのガス圧(N2ガス圧等)を逃がす圧力逃がし弁19cが設けられている。圧力逃がし弁19cは、密封容器3の内部3aのガス圧が規定値よりも大きくなったとき自動的に開き動作してN2ガス圧を規定値にまで減圧し、ガス圧を規定値に一定に保持するものである。本第1実施形態では、規定値は1〜2気圧の範囲内の値に設定されている。
さらに、この密封容器3には、シール部材8と蓋体5のシール部5dと密封容器本体4のシール部4dとのうち少なくともシール部材8を冷却する冷却部11が設けられている。この冷却部11は、具体的には各押さえ部材10に設けられている。すなわち、押さえ部材10は断面ロ字状の中空材から形成されており、その内部に押さえ部材10の周方向に延びた冷却液流路11aが形成されている。そして、この冷却液流路11aに冷却液(例:冷却水)が流通することにより、対応するシール部材8と更に蓋体5のシール部5dと密封容器本体4のシール部4dとを同時に冷却するものとなされている。さらに、押さえ部材に10には、外部から冷却液流路11aに冷却液を供給する冷却液供給部(図示せず)と、冷却液流路11aから冷却液を外部へ排出する冷却液排出部(図示せず)とがそれぞれ設けられている。
さらに、この密封容器3では、図1及び2に示すように、各蓋体5のシール部5dよりも内側(即ち蓋体5の中央部側)であって各発熱体20との接触部(即ち蓋体5の中央部)5cの周囲には、吸収部7が設けられている。この吸収部7は、ろう材を溶融する際に発生する蓋体5のその外面5bと平行方向の熱膨張を吸収するための部位であり、蓋体5における発熱体20との接触部5eの周囲部分がプレス加工によって局部的に複数条の断面波状に屈曲して形成されたものである。さらに、この吸収部7は、図1に示すように、蓋体5における発熱体20との接触部5eを略四角環状に取り囲む態様にして且つ接触部5eを中心とした周方向に延びて設けられており、詳述すると接触部5eを中心とした周方向の全周に亘って連続的に延びて設けられている。
本第1実施形態では、図2に示すように、吸収部7は蛇腹状であり、すなわち吸収部7は蛇腹状に伸縮変形可能である。吸収部7の断面の屈曲形状を詳述すると略正弦波状であり、更に詳述すると、吸収部7の各波部の外側半部及び内側半部は例えばそれぞれ略半円弧状に形成されており、その曲率半径は例えばそれぞれ約1.5mmに設定されている。ただし本発明では、吸収部7の断面の屈曲形状は略正弦波状であることに限定されず、その他に例えば略三角波状(鋸波状を含む)であっても良い。
次に、本第1実施形態のろう付け装置1を用いたろう付け方法について以下に説明する。
まず、複数個の被ろう付け部材33a、33a、33bが所定形状に仮組みされたワーク30を準備する。その仮組み方法としては、例えば、複数個の被ろう付け部材33a、33a、33bを所定形状に組み付けこれらが不慮に分解しないように針金等で結束する方法が挙げられる。ワーク30はろう付けのための前処理(例:脱脂、アルカリ洗浄処理、酸化膜除去処理)が常法に従って予め施されている。さらに、ワーク30のろう材やろう付け予定部31には必要に応じてフラックスが予め供給されている。すなわち、ワーク30のろう付け予定部31を例えばノコロックろう付け条件に従ってろう付けする場合には、ワーク30のろう材やろう付け予定部31にはフラックスが塗布やスプレー等により予め付着供給される。そのフラックス供給量については、フラックスを例えば各平板状部材33aの内面やコルゲートフィン状部材33bの表面に供給する場合にはフラックス供給量は10g/m2などに設定される。一方、ワーク30のろう付け予定部31を例えばVAWろう付け条件に従ってろう付けする場合には、ワーク30のろう材にはフラックスは供給されない。
次いで、両蓋体5、5のうち少なくとも一方の蓋体として例えば上蓋体5を密封容器本体4に対して開いた状態にする。そして、密封容器本体4に形成された上側の開口を通じてワーク30を密封容器3の内部3aにおける下蓋体5の内面5aの中央部上に配置(載置)する。これにより、下蓋体5の内面5aとワーク30の下面とが接触する。次いで、上蓋体5を密封容器本体4に対して閉じた状態に配置して密封容器本体4の上側の開口を上蓋体5で閉塞し、これによりワーク30を密封容器3の内部3aに収容配置する。そして、上蓋体5の外面5bの外周部を上押さえ部材10で押さえて、上蓋体5のシール部5dを密封容器本体4の上側のシール部4dに上側のシール部材8を介して密着する方向に押し付ける。これにより、上蓋体5のシール部5dが密封容器本体4の上側のシール部4dに上側のシール部材8を介して気密状態に密着される。これと同様に、下蓋体5の外面5bの外周部を下押さえ部材10で押さえて、下蓋体5のシール部5dを密封容器本体4の下側のシール部4dに下側のシール部材8を介して密着する方向に押し付ける。これにより、下蓋体5のシール部5dが密封容器本体4の下側のシール部4dに下側のシール部材8を介して気密状態に密着される。その結果、密封容器3の内部3aが密封状態になる。この工程を「ワーク配置工程」という。
また、密封容器3の内部3aをN2ガス雰囲気にする。その方法としては、図3に二点鎖線で示すように、密封容器3のガス導入部18のコネクタ18cをN2ガスボンベ27の供給管27aのコネクタ27bに接続する。そして、第1封止弁18bを開状態にする(即ちガス導入部18を開口する)ことでN2ガスボンベ27内のN2ガスをN2ガスボンベ27からガス導入管18aを通じて密封容器3の内部3aに供給(導入)する。すると、密封容器3の内部3aのガス圧が上昇して圧力逃がし弁19c(第2封止弁19b)が自動的に開状態になり(即ちガス排出部19が開口し)、密封容器3の内部3aの空気等のガスがガス排出管19aを通じて密封容器3の外部へ排出される。その結果、密封容器3の内部3aがN2ガス雰囲気になる。このときのN2ガス雰囲気は、酸素濃度が約5ppm以下、露点が−65℃であることが特に望ましい。
次いで、第1封止弁18bを閉状態にしてガス導入管18aを封止する。また、こうして第1封止弁18bが閉状態になることにより、密封容器3の内部3aのガス圧が低下して圧力逃がし弁19cが閉状態になりガス排出管19aが封止される。そして、ガス導入部18のコネクタ18cをN2ガスボンベ27の供給管27aのコネクタ27bから分離する。
また、密封容器3の各押さえ部材10の冷却液流路11aに室温等に温度調節された冷却液を供給して流通させ、これにより、各シール部材8と各蓋体5のシール部5dと密封容器本体4の各シール部4dとを同時に冷却する。その冷却温度は100℃以下であることが、シール部材8の熱劣化を確実に防止し得て相互シール部4d、5dのシール状態を確実に良好に維持できる点で特に望ましい。
また、各発熱体20の温度を所定のろう付け温度に調整する。このろう付け温度は580〜610℃の範囲に設定されることがワーク30のろう付け予定部31を確実に良好にろう付けできる点などで特に望ましい。
そしてこの状態で、各発熱体20を、それぞれの駆動器25の駆動力によって、密封容器3の各蓋体5を介してワーク30に両発熱体20、20間でワーク30を挟むように同時に押し付ける。すると、上発熱体20(詳述すると上発熱体20の加熱面20a)と上蓋体5の外面5bとが面接触状態に密着し且つ上蓋体5の内面5aとワーク30(詳述するとワーク30の上面)とが面接触状態に密着すると同時に、下発熱体20(詳述すると下発熱体20の加熱面20a)と下蓋体5の外面5bとが面接触状態に密着し且つ下蓋体5の内面5aとワーク30(詳述するとワーク30の下面)とが面接触状態に密着する。そしてこの状態で、各発熱体20の熱が各発熱体20から各蓋体5を介してワーク30に伝導伝熱により同時に伝えられるとともに、ワーク30のろう付け予定部31が密着方向に加圧される。これにより、ワーク30の温度が室温から所定のろう付け温度に上昇してろう材(ろう材層32)が加熱溶融される。この工程を「溶融工程」という。
ワーク30の温度を所定のろう付け温度に所定時間(例えば0〜10min)保持したら、その後、各発熱体20の温度を低下させる。これにより、ろう材(ワーク30)の加熱を停止する。なお、ろう材の加熱の停止は、各発熱体20をそれぞれの駆動器25の駆動力によって各蓋体5に対して離間方向に移動させることにより、行っても良い。
ワーク30の温度が所定の温度(例えば550℃)以下に低下することでろう材が固化してワーク30のろう付け予定部31がろう材でろう付けされたら、各発熱体20を各蓋体5に対して離間方向に移動させるとともに、両押さえ部材10、10のうち少なくとも一方の押さえ部材として例えば上側の押さえ部材10を上蓋体5に対して離間方向に移動させる。次いで、両蓋体5、5のうち少なくとも一方の蓋体として例えば上蓋体5を密封容器本体4に対して開いた状態にする。そして、密封容器本体4に形成された上側の開口を通じてワーク30を密封容器3の内部3aから取り出す。これにより、所望するろう付け製品としての熱交換器が得られる。
ここで、本第1実施形態では、溶融工程は、ワーク配置工程などが行われる場所と同じ場所で行われているが、本発明では、その他に、後述するようにワーク配置工程などが行われる場所とは別の場所で行われても良い。
本第1実施形態のろう付け装置1及びろう付け方法には次の利点がある。
溶融工程では、熱源としての各発熱体20の熱を伝導伝熱によりワーク30に伝えるので、熱源の熱を放射伝熱や対流伝熱によりワーク30に伝える場合に比べて、ワーク30の温度が迅速にろう付け温度まで上昇する。そのため、ワーク30の昇温速度の高速化を図ることができる。その結果、ろう付けに要する時間(即ちろう付け時間)の短縮化を図ることができるし、不活性ガスとしてのN2ガスの使用量の削減を図ることができ、更に、ろう付けに要する熱量の削減を図ることができる。
さらに、溶融工程では、ワーク30が配置された密封容器3の内部3aはN2ガス雰囲気(即ち非酸化性ガス雰囲気)にされているから、ワーク30のろう付け予定部31を良好にろう付けできることはもとより、更に、密封容器3の内部3aのN2ガス圧を密封容器3の外側の圧力(例:大気圧)と均衡させることができる。そのため、密封容器3の外壁6(特に各蓋体5)の肉厚を薄く設定することができ、これにより、ワーク30の昇温速度の更なる高速化を図ることができる。その結果、ろう付け時間の更なる短縮化を図ることができるし、N2ガスの使用量の更なる削減を図ることができ、更に、ろう付けに要する熱量の更なる削減を図ることができる。
しかも、密封容器3は可搬性を有しているので、溶融工程が行われる場所である上下一対の発熱体20、20の設置場所(以下、「発熱体設置場所」という)とは別の場所でワーク配置工程などを行うことができ、したがって、溶融工程と並行してワーク配置工程などを行うことができる。その方法について具体的に例示すると、次のとおりである。
すなわち、複数の密封容器3を予め準備しておき、発熱体設置場所で一つの密封容器3に対して溶融工程を行いつつ、この場所とは別の場所で他の密封容器3に対してワーク配置工程などの、溶融工程に対する前準備工程を行う。そして、一つの密封容器3に対して溶融工程が終了したら当該密封容器3を発熱体設置場所から別の場所へ運び、一方、この溶融工程の間に前準備工程を終了させた密封容器3を発熱体設置場所に運んで溶融工程を行う。このような作業を連続して行うことにより、複数のワークについてそのろう付け作業効率の向上を図ることができる。
さらに、密封容器3にはガス導入部18とガス排出部19が設けられているので、密封容器3の内部3aを確実にN2ガス雰囲気にすることができる。しかも、ガス導入部18(ガス導入管18a)に第1封止弁18bが設けられるとともに、ガス排出部19(ガス排出管19a)に第2封止弁19bが設けられているので、ガス導入部18及びガス排出部19をそれぞれ必要に応じて封止したり開口したりすることができる。
さらに、本第1実施形態のろう付け方法によれば、ワーク30の昇温速度が速いので、ワーク30のろう付け予定部31を良好にろう付けするために必ずしも密封容器3の内部3aにN2ガスを導入しながらろう材を溶融することを要しない。したがって、溶融工程では、第1封止弁18bでガス導入管18aを封止し且つ第2封止弁19bでガス排出管19aを封止した状態でろう材を溶融しても、ろう付けされたワーク30のろう付け部に大きなフィレットを形成することができる。よって、ワーク30のろう付け予定部31を良好にろう付けすることができるし、N2ガスの使用量の大幅な削減を図ることができる。
さらに、第2封止弁19bとして圧力逃がし弁19cが用いられている、密封容器3の内部3aのN2ガス圧を所望する設定値に容易に且つ確実に維持することができる。
さらに、発熱体20は、密封容器3におけるワーク配置位置を挟んだ上下両外側にそれぞれ配置されているから、発熱体20が密封容器3におけるワーク配置位置を挟んだ上下両外側のうちいずれか一方側だけに配置されている場合に比べて、ワーク30の昇温速度の更なる高速化を図ることができる。その結果、ろう付け時間の更なる短縮化を図ることができるし、N2ガスの使用量の更なる削減を図ることができ、更に、ろう付けに要する熱量の更なる削減を図ることができる。
さらに、各発熱体20を密封容器3の各蓋体5を介してワーク30に押し付けるので、各発熱体20を各蓋体5の外面5bに密着状態に接触させるとともに各蓋体5の内面5aをワーク30に密着状態に接触させることができる。これにより、各発熱体20の熱を確実にワーク30に伝えることができる。
さらに、各発熱体20を各蓋体5を介してワーク30に両発熱体20、20間でワーク30を挟むように押し付けることにより、溶融工程の際にワーク30のろう付け予定部31にろう付け荷重を加えることができ、これによりワーク30のろう付け予定部31を更に良好にろう付けすることができる。
しかも、溶融工程の際には密封容器3の各蓋体5は各発熱体20の熱で加熱されることで各蓋体5の外面5bと平行方向に熱膨張するが、この熱膨張は各蓋体5の吸収部7が各蓋体5の外面5bと平行方向に収縮変形することにより吸収される。これにより、各蓋体5の熱膨張による変形を防止することができる。そのため、ろう材を溶融する際に各発熱体20と各蓋体5の外面5bとの接触状態及び各蓋体5の内面5aとワーク30との接触状態を良好に維持することができる。一方、溶融工程が終了して各蓋体5の温度がろう付け温度から低下することで各蓋体5はその外面5bと平行方向に熱収縮するが、この熱収縮は各蓋体5の吸収部7が各蓋体5の外面5bと平行方向に伸張変形することにより吸収(緩和)される。その結果、各蓋体5の吸収部7は元の形状に戻り、各蓋体5の全体形状及び寸法はろう材を溶融する前後で変化しない。したがって、密封容器3(特に各蓋体5)を繰り返し使用することができる。
さらに、密封容器3は密封容器本体4と各蓋体5とを備えているので、ワーク30を密封容器3の内部3aに入れる際やワーク30を密封容器3の内部3aから取り出す際に少なくとも一方の蓋体5を開けることにより、密封容器3の内部3aへのワーク30の出入れ作業を容易に行うことができるし、また密封容器3を確実に繰り返し使用することができる。さらに、各蓋体5と密封容器本体4との相互シール部4d、5d間にシール部材8が介在されているので、密封容器3の内部3aをN2ガス雰囲気に確実に維持することができる。
しかも、溶融工程の際にシール部材8は冷却されるので、シール部材8の熱劣化を防止することができ、そのため、相互シール部4d、5d間のシール状態を良好に維持することができる。さらに、溶融工程の際には、蓋体5のシール部5dは、冷却されたシール部材8を介して密封容器本体4のシール部4dに相対的に押し付けられることにより固定されるので、蓋体5のシール部5dの温度と蓋体5における発熱体20との接触部5eの温度との間の大きさ温度差によって蓋体5には大きな熱膨張が生じる。しかしながら、吸収部7は、蓋体5のシール部5dよりも内側であって発熱体20との接触部5eの周囲に設けられているので、このような大きな熱膨張であってもこれを吸収部7によって確実に吸収することができる。
さらに、吸収部7は蓋体5の一部が断面波状に屈曲して形成されたものであるから、熱膨張を確実に吸収することができるし、吸収部7を例えばプレス加工によって形成することにより吸収部7の形成を容易に行うことができる。
さらに、吸収部7が、蓋体5における発熱体20との接触部5eの周囲に、接触部5eを取り囲む態様にして設けられているので、熱膨張を更に確実に吸収することができる。
また、本第1実施形態のろう付け装置1では、各蓋体5における各発熱体20との接触部5eの周囲に、断面波状の吸収部7が形成されているので、ワーク30が密封容器3の内部3aに配置された状態においてもし密封容器3の各蓋体5の内面5aとワーク30との間に隙間がある場合でも、各発熱体20を各蓋体5を介してワーク30に押し付けることによって各蓋体5の吸収部7が伸張変形して各蓋体5の内面5aをワーク30に密着させることができる。これにより、各発熱体20の熱をワーク30に確実に伝えることができる。しかも、ワーク30の大きさ(厚さ)に厳格に対応した内部空間を有する密封容器3を用いる必要がなくなり、そのためワーク30に対する密封容器3の適用範囲を増大させることができる。
以上で第1実施形態について説明したが、本発明は上記第1実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で様々に変更可能である。
例えば、上記第1実施形態の密封容器3では、図1に示すように、断面波状の吸収部7は、蓋体5における発熱体20との接触部5eを取り囲む態様にして且つ接触部5eを中心とした周方向の全周に亘って連続的に延びて設けられているが、本発明では、吸収部7は、必ずしも接触部5eを中心とした周方向の全周に亘って連続的に延びて設けられていることを要しない。例えば、本発明では、吸収部7は、蓋体5における発熱体20との接触部5eを中心とした周方向に延びてはいるが部分的に分断されていても良く、すなわち蓋体5における発熱体20との接触部5eの周囲に吸収部7が設けられていない部分が部分的に存在しても良い。
さらに本発明では、図示していないが、吸収部7は、蓋体5における発熱体20との接触部5eを略円環状や略渦巻き状に取り囲む態様にして設けられたものであっても良い。
また、上記第1実施形態では、ろう付け装置1は上発熱体20及び下発熱体20を具備しているが、本発明ではろう付け装置1はこれに限定されるものではなく、その他に例えば上下両発熱体20、20のうちいずれか一方だけを備えていても良い。もしろう付け装置1が上発熱体20だけを備えている場合には、下発熱体20の代わりに下発熱体20の配置位置にワーク30を密封容器3の下蓋体5を介して下側から受ける受け部材が配置されるのが望ましい。こうすることにより、ろう材を溶融する際(即ち溶融工程の際)に上発熱体20と受け部材との間でワーク30を挟むように上発熱体20を密封容器3の上蓋体5を介してワーク30に押し付けることができる。もしろう付け装置1が下発熱体20だけを備えている場合には、上発熱体20の代わりに上発熱体20の配置位置にワーク30を上蓋体5を介して上側から受ける受け部材が配置されるのが望ましい。こうすることにより、ろう材を溶融する際に下発熱体20と受け部材との間でワーク30を挟むように下発熱体20を下蓋体5を介してワーク30に押し付けることができる。また、いずれの場合でも、受け部材は、セラミック(例:アルミナ)製や、ろう材を溶融する際の熱に耐えうる金属製であることが望ましく、特に断熱性を有するものであることが望ましく、こうすることにより、ろう材を溶融する際に受け部材から流出する熱損失量を減少させることができる。
また、上記第1実施形態では各駆動器25の駆動力によって各発熱体20が各蓋体5を介してワーク30に押し付けられるが、本発明はその他に例えば密封容器3を両発熱体20、20のうちいずれか一方に向かって移動させることで当該一方の発熱体20が蓋体5を介してワーク30に押し付けられる構成を採用しても良い。
また、上記第1実施形態では発熱体20を蓋体5を介してワーク30に押し付ける前に発熱体20の温度を予め所定のろう付け温度に調整しているが、本発明ではその他に例えば発熱体20を蓋体5を介してワーク30に押し付けた後で発熱体20の温度を所定のろう付け温度に調整しても良い。
また、上記第1実施形態では密封体2として密封容器3が用いられているが、本発明では密封体2の形状は限定されるものではなく、例えば、上記第1実施形態のように箱形であっても良いし、あるいは袋状(即ち密封袋)であっても良く、更に、丸箱形や楕円箱形などであっても良い。
また、上記第1実施形態では蓋体5の数は2個であるが、本発明ではこれに限定されるものではなく、例えば上蓋体5の1個だけであっても良い。この場合、下蓋体5は密封容器本体4の外側壁4aに一体的に固着されて密封容器3の薄板状底壁として機能するように密封容器3を構成するのが特に望ましい。
<第2実施形態>
図4及び5は、本発明の第2実施形態に係るろう付け装置及びろう付け方法を説明する図である。
本第2実施形態のろう付け装置101Aは、図4に示すように、ろう付け製品として例えば熱交換器を不活性ガス雰囲気ろう付け法により製造するために用いられるものであり、密封体102と、2個の発熱体120、120などを具備している。
密封体102の内部102aにはワーク130が収容配置される。ワーク130は、ろう付け予定部131を備えたものであり、本第2実施形態ではワーク130は互いにろう付け一体化される複数個の被ろう付け部材133a、133a、133bから構成されている。これらの被ろう付け部材133a、133a、133bはいずれも金属製であり、本第2実施形態ではアルミニウム製であるとする。また、被ろう付け部材の個数は例えば3個である。これらの被ろう付け部材133a、133a、133bのうち2個の部材133a、133aは略平板状であり、互いに上下に離間して平行に配置されている。各平板状部材133aの大きさは例えば幅20×長さ20×肉厚1mmである。残りの1個の部材133bはコルゲートフィン状であり、両平板状部材133a、133aの間に配置されている。このコルゲートフィン状部材133bの大きさは例えば幅20×長さ20×高さ8×肉厚0.2mmである。コルゲートフィン状部材133bはブレージングシートで形成されており、その心材133cの両面にはそれぞれろう材としてのろう材層132、132がクラッドされている(片面8%の両面クラッド)。したがって、上側の平板状部材133aとコルゲートフィン状部材133bとの相互接触部(即ち接合予定界面)間と、下側の平板状部材133aとコルゲートフィン状部材133bとの相互接触部(即ち接合予定界面)間とには、それぞれコルゲートフィン状部材133bのろう材層132(ろう材)が介在されている。そして、それぞれの相互接触部間に介在されたろう材層132が溶融されることにより、それぞれの相互接触部がろう付けされてこれらの被ろう付け部材が一体化される。すなわち、このワーク130はこのような相互接触部をろう付け予定部131として備えるとともに、相互接触部(ろう付け予定部121)にはろう材としてのろう材層132が設けられている。
ろう材層132のろう材の主なろう成分は、Al−Si系合金、Al−Si−Mg(Bi)系合金等である。ろう材の種類は、適用するろう付け方法(ろう付け条件)に応じて決定されるものであり、限定されるものではない。具体的に示すと、ろう付け方法(ろう付け条件)として例えばノコロックろう付け法(ノコロックろう付け条件)を適用する場合にはろう材にフラックスを付着供給させたものが用いられ、ろう付け方法(ろう付け条件)として例えばVAW法(VAWろう付け条件)を適用する場合にはろう材はフラックスレスのものが用いられる。さらに、ろう付け方法(ろう付け条件)として例えばノコロックろう付け法(ノコロックろう付け条件)を適用する場合には、ろう付け予定部131にフラックスを付着供給しても良い。
本第2実施形態のワーク130において、平板状部材133aの材質は例えばA1050である。コルゲートフィン状部材133bの心材133cの材質は例えばA3003であり、ろう材層132の材質(即ちろう材)は例えばAl−Si系合金のA4045である。
次に、密封体102の構成について以下に説明する。
密封体102は、可搬性を有するものであり、詳述すると例えばろう付け作業者の人力で運搬可能なものである。この密封体102は、筒状体104と、2個の蓋ユニットとしての2個の蓋体110、110などを備えている。
ろう材を溶融する際には、密封体102の内部102aのN2ガス圧力(即ち密封体102の内圧)は、密封体102の外側の圧力(即ち大気圧)と略均衡する圧力に設定され、具体的には約1気圧に設定される。
筒状体104はその軸方向の少なくとも一端側が開口したものであり、本第2実施形態ではその軸方向の両端側が開口している。さらに、筒状体104の断面形状は、図5において二点鎖線で示すように円筒状である。本第2実施形態では、筒状体104の周壁105が密封体102の外壁106に対応している。また、筒状体104は、ろう材(即ちろう材層)を溶融する際の熱に耐えうる金属製であり、例えばSUS304等のステンレス鋼製である。
さらに、筒状体104は横倒し状に配置されており、詳述すると筒状体104はその軸が略水平になるように配置されている。本第2実施形態では、筒状体104は例えばその軸方向が左右方向になるように配置されているとする。筒状体104の軸方向の各端側の開口、即ち筒状体104の左右各開口104a、104aは断面円形状である。そして、筒状体104の左右両開口104a、104aのうち左開口104aがワーク130の出入れ口とされる。さらに、筒状体104は水平で滑らかな載置台(図示せず)上に載置されており、これにより、筒状体104の軸方向の両端側は、それぞれ、ろう材を溶融する際に発生する筒状体104の軸方向への熱膨張に応じて軸方向に移動可能に配置されている。
各蓋体(蓋ユニット)110は、筒状体104の左右両開口104a、104aをそれぞれ開閉自在に且つ気密に閉塞するものであり、筒状体104の開口した左端部(以下、筒状体104の左開口端部104bという)と開口した右端部(以下、筒状体104の右開口端部104bという)とにそれぞれ取り付けられている。ここで説明の便宜上、2個の蓋体110、110のうち筒状体104の左開口(即ちワーク130の出入れ口とされる開口)104aを閉塞する蓋体110を特に「第1蓋体110A」、筒状体104の右開口104aを閉塞する蓋体110を特に「第2蓋体110B」という。
密封体102の大きさは、密封体102の可搬性を損なわない範囲内においてワーク130の大きさ等に応じて設定されるものであり、限定されるものではない。しかしながら、本第2実施形態では、密封体102の長さが500〜1000mm、筒状体104(周壁105)の外径が80〜150mm、密封体102の内部102aの容量(即ち密封体102の内容量)が2〜20Lにそれぞれ設定されるともに、密封体102の重量が20kgf以下に設定されることが、密封体102の可搬性を確実に確保しうる点などで特に望ましい。なお、密封体102の重量の下限についても限定されるものではなく、通常2kgfに設定される。筒状体104の外径は筒状体104の軸方向において一定に設定されている。筒状体104の周壁105の肉厚は薄く設定されており、当該肉厚の詳細については後述する。
次に、第1蓋体110Aの構成、及び、第1蓋体110Aと筒状体104との取付け構造について以下に説明する。
第1蓋体110Aは、閉止フランジ(ブラインドフランジ)111、取付けフランジ112、内リング113、環状シール部材としての複数のOリング114、複数の外リング115、押しリング116などを備えている。閉止フランジ111、取付けフランジ112、内リング113、各外リング115及び押しリング116は、いずれも剛性を有するものであり、更に、ろう材を溶融する際の熱に耐えうる金属製であり、例えばSUS304等のステンレス鋼製である。一方、Oリング114はゴム製であり、詳述すると耐熱ゴム製である。
閉止フランジ111は、第1蓋体110Aの蓋本体とされるものであり、円板状に形成されている。
取付けフランジ112は、その中央部にワーク130の出入れ孔としての円形孔112dが設けられた略円環板状のものであり、閉止フランジ111が気密に取外し可能に取り付けられるものである。詳述すると、取付けフランジ112には閉止フランジ111が複数の締結ボルト111aによって分離可能に締結される。さらに、取付けフランジ112と閉止フランジ111との接触界面には環状シール部材としてのOリング112fが介在されている。
さらに、取付けフランジ112には、その厚さ方向の片側に突出した短円筒状のソケット壁部112aが円形孔112dを包囲する状態にして一体に形成されている。ソケット壁部112aの内径は筒状体104の左開口端部104bの外径よりも少し大寸に設定されている。これにより、ソケット壁部112aの内側に筒状体104の左開口端部104bが挿入された状態において、ソケット壁部112aの内面112cと左開口端部104bの外面(即ち周壁105の左端部の外面)との間に断面円環状の隙間が開(あ)くものとなされている。ソケット壁部112aの外面には雄ねじ112bがソケット壁部112aの先端から形成されている。ソケット壁部112aの内面112cの基端部には、ソケット壁部112aの内側に突出した段差部112eがその周方向の全周に亘って一体に形成されている。
筒状体104の左開口端部104bは、取付けフランジ112のソケット壁部112aの内側に、ソケット壁部112aの内面112cと左開口端部104bの外面との間に断面円環状の隙間を開け且つ左開口端部104bの端面がソケット壁部112aの段差部112eに突き当てられた状態にして、挿入されている。
内リング113は短円筒状のものである。内リング113の長さは取付けフランジ112のソケット壁部112aの長さと略等しく設定されている。内リング113の外径は、筒状体104の左開口端部104bの内径に対応して設定されており、具体的に例示すると筒状体104の左開口端部104bの内径に対して等しい乃至約0.1mm小さく設定されている。そして、この内リング113が筒状体104の左開口端部104bに内嵌されている。この状態において、内リング113の外面は筒状体104の左開口端部104bの内面(即ち周壁105の左端部の内面)にその周方向の全周に亘って略面接触状態に接触している。これにより、内リング113は左開口端部104bの内側への変形を阻止するように左開口端部104bをその内側から支持補強している。
Oリング114は円環状のものであり、その数は2つである。Oリング114の断面形状は円形状である。そして、各Oリング114は、取付けフランジ112のソケット壁部112aの内面112cと筒状体104の左開口端部104bの外面との間に開いた上述の隙間に軸方向に所定の間隔をおいて軸方向に移動可能に配置されている。
外リング115は短円筒状のものであり、その数は3つである。そして、各外リング115は、上述の隙間における各Oリング114を挟んだ軸方向両側にそれぞれ軸方向に移動可能に配置されている。この状態において、これらの外リング115、115、115のうちソケット壁部112aの先端側に配置された外リング115は、少なくともその軸方向の端部がソケット壁部112aの先端位置よりも軸方向外側へはみ出した状態になっている。
押しリング116は、取付けフランジ112のソケット壁部112aの外径に対応した内径を有するとともに、その内面にソケット壁部112aの雄ねじ112bに対応する雌ねじ116aが形成されている。さらに、押しリング116の軸方向の一端部にはその内側に突出した押し部116bがその周方向の全周に亘って一体に形成されている。
そして、押しリング116は筒状体104の左開口端部104bに外挿されるとともに、押しリング116の雌ねじ116aがソケット壁部112aの雄ねじ112bにソケット壁部112aの先端側から基端側に向かって螺合されることにより押しリング116がソケット壁部112aに解除可能に締め付けられている。このような押しリング116のソケット壁部112aへの締付け動作に伴い、押しリング116の押し部116bが外リング115におけるソケット壁部112aの先端位置よりも軸方向外側にはみ出した部分に当接して全ての外リング115、115、115を段差部112eに向かって軸方向に押す。これにより、これらの外リング115、115、115が段差部112eと押し部116bとの間で軸方向に挟圧され、これに伴い、各Oリング114がその両側に配置された両外リング115、115の間で断面略楕円形状になるように弾性的に挟圧され、その結果、各Oリング114がソケット壁部112aの内面112cと筒状体104の左開口端部104bの外面とに気密に圧接した状態になっている。このような構造で第1蓋体110Aの取付けフランジ112が筒状体104の左開口端部104bに固定状態に取り付けられている。
ここで、筒状体104を新しいものに交換する場合などには、押しリング116をソケット壁部112aに対して緩め方向に回転させて押しリング116のソケット壁部112aへの締付けを解除することにより、このような固定状態が解除されて筒状体104の左開口端部104bから取付けフランジ112を取り外すことができるようになっている。
第2蓋体110Bは、閉止フランジ111にガス導入部118とガス排出部119が一体的に設けられている点を除いて上述した第1蓋体110Aと同じ構成である。さらに、第2蓋体110Bと筒状体104との取付け構造についても上述した第1蓋体110Aと筒状体104との取付け構造と同じである。第2蓋体110Bの構成を第1蓋体110Aとの相異点を中心に説明すると次のとおりである。
第2蓋体110Bにおいて、ガス導入部118は、密封体102の内部102aを不活性ガス雰囲気としてのN2ガス雰囲気にするために密封体102の内部102aにN2ガスを導入するものである。ガス排出部119は、密封体102の内部102aのガスを排出するものである。
ガス導入部118は、第2蓋体110Bの閉止フランジ111をその外側から内側(即ち密封体102の内部102a側)に気密に貫通して配置されたガス導入管118aと、ガス導入管118aに設けられた第1封止弁118bと、ガス導入管118aをN2ガス供給源としてのN2ガスボンベ127から延びた供給管127aに分離可能に接続するコネクタ118cとを備えている。ガス導入管118aは、ろう材を溶融する際の熱に耐えうる耐熱金属製であり、例えばSUS304等のステンレス鋼製である。第1封止弁118bはガス導入管118a(ガス導入部118)を開閉自在に封止するものである。コネクタ118cはガス導入管118aの上流側の端部に取り付けられている。一方、N2ガスボンベ127の供給管127aの下流側の端部にはガス導入部118のコネクタ118cに対応するコネクタ127bが取り付けられている。
ガス排出部119は、第2蓋体110Bの閉止フランジ111をその外側から内側(即ち密封体102の内部102a側)に気密に貫通して配置されたガス排出管119aと、ガス排出管119aに設けられた第2封止弁119bと、を備えている。ガス排出管119aの排出口は第2蓋体110B(詳述するとその閉止フランジ111)の外側近傍にて大気中に開放されている。ガス排出管119aは、ろう材を溶融する際の熱に耐えうる耐熱金属製であり、例えばSUS304等のステンレス鋼製である。第2封止弁119bはガス排出管119a(ガス排出部119)を開閉自在に封止するものである。
本第2実施形態では、ガス排出管119aには、第2封止弁119bとして密封体102の内部102aのガス圧(N2ガス圧等)を逃がす圧力逃がし弁119cが設けられている。圧力逃がし弁119cは、密封体102の内部102aのガス圧が規定値よりも大きくなったとき自動的に開き動作してN2ガス圧を規定値にまで減圧し、ガス圧を規定値に一定に保持するものである。本第2実施形態では、規定値は1〜2気圧の範囲内の値に設定されている。
2個の発熱体120、120は、密封体102の筒状体104におけるワーク配置位置を挟んだ上下両外側に一個ずつ配置されている。筒状体104におけるワーク配置位置とは、詳述すると筒状体104の周壁105の軸方向中間位置である。そして、ろう材を溶融する際には、各発熱体120の熱は、各発熱体120が筒状体104の周壁105の外面105bに接触し且つ筒状体104の周壁105の内面105aがワーク130に接触した状態にして、各発熱体120から筒状体104の周壁105を介してワーク130に伝導伝熱により同時に伝えられてろう材を加熱溶融するものである。発熱体120は例えば電気ヒータの加熱ヘッドからなるものであり、発熱体120への電流供給量の増減等によって発熱体120の温度を制御できるように構成されている。なお、伝導伝熱は「熱伝導」とも呼ばれている。
ここで説明の便宜上、筒状体104におけるワーク配置位置を挟んだ両外側のうち上外側に配置された発熱体120を「上発熱体」、下外側に配置された発熱体120を「下発熱体」という。
本第2実施形態では、上発熱体120の加熱面(発熱面)120aは、ワーク130の上面(詳述すると上側の平板状部材133aの上面)に対応した形状に形成されており、具体的には例えば平坦状に形成されている。さらに、この加熱面120aは、ワーク130の上面を覆いうる大きさに形成されており、例えば幅20×長さ20mmに設定されている。また同じく、下発熱体20の加熱面(発熱面)20aは、ワーク130の下面(詳述すると下側の平板状部材133aの下面)に対応した形状に形成されており、具体的には例えば平坦状に形成されている。さらに、この加熱面120aは、ワーク130の下面を覆いうる大きさに形成されており、例えば幅20×長さ20mmに設定されている。
さらに、ろう付け装置101Aは、上下両発熱体120、120のうち少なくとも一方を筒状体104の周壁105を介してワーク130に押し付けるための駆動器を備えている。本第2実施形態では、ろう付け装置101Aは、両発熱体120、120をそれぞれ筒状体104の周壁105を介してワーク130に押し付けるための2個の駆動器として上駆動器125及び下駆動器125を備えている。上駆動器125は、上発熱体120を筒状体104の周壁105を介してワーク130に上側から押し付けるものである。下駆動器125は、下発熱体120を筒状体104の周壁105を介してワーク130に下側から押し付けるものである。そして、両発熱体120、120は、各駆動器125、125の駆動力によって、ろう材を溶融する際に筒状体104の周壁105の軸方向中間部を介してワーク30に両発熱体120、120間でワーク130を上下両側から挟むように同時に押し付けられるように構成されている。各駆動器125は、その駆動速度、駆動量、駆動力等の駆動動作を制御可能なものである。各駆動器125としては、流体圧(例:油圧、ガス圧)式駆動シリンダ、電動駆動モータなどが用いられる。
筒状体104の周壁105は、各発熱体120のワーク130への押付け動作に追従して弾性変形可能な肉厚を有している。すなわち、各発熱体120のワーク130への押付け動作の前では、図5に二点鎖線で示すように筒状体104の周壁105の軸方向中間部は変形しておらず即ち断面円形状である。そして、各発熱体120のワーク130への押付け動作に追従して、各発熱体120が周壁105の軸方向中間部の外面105bに接触した状態から各発熱体120が周壁105の軸方向中間部を介してワーク130に押し付けられた状態になるまでの間に亘って、周壁105の軸方向中間部が断面略長円状に弾性変形しうるような肉厚に周壁105の肉厚が設定されている。周壁105の肉厚の具体的な寸法については、筒状体104の材質、その内径、ワーク30の大きさ(例:厚さ)等に応じで設定されるものであり、限定されるものではないが、本第2実施形態では、特に0.05〜0.5mmの範囲に設定されるのが、このような作用を確実に奏し得る点などで望ましい。さらに、周壁105の肉厚は軸方向及び周方向においてそれぞれ一定に設定されていることが、筒状体104を安価に製作や入手できる点などで特に望ましい。
次に、本第2実施形態のろう付け装置101Aを用いたろう付け方法について以下に説明する。
まず、複数個の被ろう付け部材133a、133a、133bが所定形状に仮組みされたワーク130を準備する。その仮組み方法は、例えば上記第1実施形態と同様に行われる。ワーク130はろう付けのための前処理(例:脱脂、アルカリ洗浄処理、酸化膜除去処理)が常法に従って予め施されている。また、ワーク130のろう材(ろう材層132)やろう付け予定部131には必要に応じてフラックスが予め供給されている。すなわち、ワーク130のろう付け予定部131を例えばノコロックろう付け条件に従ってろう付けする場合には、ワーク130のろう材やろう付け予定部131にはフラックスが塗布やスプレー等により予め付着供給される。そのフラックス供給量については、フラックスを例えば各平板状部材133aの内面やコルゲートフィン状部材133bの表面に供給する場合にはフラックス供給量は10g/m2などに設定される。一方、ワーク130のろう付け予定部131を例えばVAWろう付け条件に従ってろう付けする場合には、ワーク130のろう材やろう付け予定部131にはフラックスは供給されない。
次いで、第1蓋体110Aの閉止フランジ111を取付けフランジ112から取り外して密封体102の筒状体104の左端側を開口し、当該左開口104aを通じてワーク130を密封体102の内部102aの軸方向中間部に配置する。この際に、ワーク130を密封体102の内部102aに安定良く配置させるようにワーク130を所定の治具で保持しても良い。次いで、第1蓋体110Aの閉止フランジ111をOリング112fを介して取付けフランジ112に複数の締結ボルト111aによって締結して取り付け、これにより、筒状体104の左開口104aを第1蓋体110A(詳述するとその閉止フランジ111)で閉塞する。この工程を「ワーク配置工程」という。
また、密封体102の内部102aをN2ガス雰囲気にする。その方法としては、ガス導入部118のコネクタ118cをN2ガスボンベ127の供給管127aのコネクタ127bに接続する。そして、第1封止弁118bを開状態にする(即ちガス導入部118を開口する)ことでN2ガスボンベ127内のN2ガスをN2ガスボンベ27からガス導入管118aを通じて密封体102の内部102aに供給(導入)する。すると、密封体102の内部102aのガス圧が上昇して圧力逃がし弁119c(第2封止弁119b)が開状態になり(即ちガス排出部119が開口し)、密封体102の内部102aの空気等のガスがガス排出管119aを通じて密封体102の外部へ排出される。その結果、密封体102の内部102aがN2ガス雰囲気になる。このときのN2ガス雰囲気は、酸素濃度が約5ppm以下、露点が−65℃であることが特に望ましい。
次いで、第1封止弁118bを閉状態にしてガス導入管118aを封止する。また、こうして第1封止弁118bが閉状態になることにより、密封体102の内部102aのガス圧が低下して圧力逃がし弁119cが閉状態になりガス排出管119aが封止される。そして、ガス導入部118のコネクタ118cをN2ガスボンベ127の供給管127aのコネクタ127bから分離する。
また、各発熱体120の温度を所定のろう付け温度に調整する。このろう付け温度は580〜610℃であることがワーク130のろう付け予定部131を確実に良好にろう付けできる点などで特に望ましい。
そしてこの状態で、各発熱体120を、それぞれの駆動器125の駆動力によって、筒状体104の周壁105を介してワーク130に両発熱体120、120間でワーク130を挟むように同時に押し付ける。その途中で、各発熱体120は筒状体104の周壁105の軸方向中間部の外面105bに接触し、そして各発熱体120は周壁105を介してワーク130に押し付けられる状態になるまで周壁105の軸方向中間部を内側へ押す。このような各発熱体120のワーク130への押付け動作に追従して、周壁105の軸方向中間部は断面略長円状に弾性変形する。すなわち、この押付け動作では、各発熱体120で周壁105の軸方向中間部を断面略長円状に弾性変形させながら内側へ押して各発熱体120を周壁105を介してワーク130に同時に押し付ける。その結果、上発熱体120(詳述すると上発熱体120の加熱面120a)と周壁105の外面105bとが面接触状態に密着し且つ周壁105の内面105aとワーク130の上面とが面接触状態に密着すると同時に、下発熱体120(詳述すると下発熱体120の加熱面120a)と周壁105の外面105bとが面接触状態に密着し且つ周壁105の内面105aとワーク130の下面とが面接触状態に密着する。そしてこの状態で、各発熱体120の熱が各発熱体120から周壁105を介してワーク130に伝導伝熱により同時に伝えられるとともに、ワーク130のろう付け予定部131が密着方向に加圧される。これにより、ワーク130の温度が室温から所定のろう付け温度に上昇してろう材(ろう材層132)が加熱溶融される。この工程を「溶融工程」という。
ワーク130の温度を所定のろう付け温度に所定時間(例えば0〜10min)保持したら、その後、各発熱体120の温度を低下させる。これにより、ろう材(ワーク130)の加熱を停止する。なお、ろう材の加熱の停止は、各発熱体120をそれぞれの駆動器125の駆動力によって筒状体104の周壁105に対して離間方向に移動させることにより、行っても良い。
ワーク130の温度が所定の温度(例えば550℃)以下に低下することでろう材が固化してワーク130のろう付け予定部131がろう材でろう付けされたら、各発熱体120を筒状体104の周壁105に対して離間方向に移動させ、これにより各発熱体120のワーク130への押付けを解除する。すると、このように各発熱体120が周壁105から離間することにより(即ち、各発熱体120のワーク130への押付けを解除することにより)、周壁105の軸方向中間部は自己の弾性復元力により元の断面形状である断面円形状に戻る。
次いで、第1蓋体110Aの締結ボルト111aを解除して第1蓋体110Aの閉止フランジ111を取付けフランジ112から取り外し、筒状体104の左開口端部104bを開口させる。そして、当該左開口104aを通じてワーク30を密封体102の内部102aから取り出す。これにより、所望するろう付け製品としての熱交換器が得られる。
ここで、本第2実施形態では、溶融工程は、ワーク配置工程などが行われる場所と同じ場所で行われているが、本発明では、その他に、後述するようにワーク配置工程などが行われる場所とは別の場所で行われても良い。
本第2実施形態のろう付け方法及びろう付け装置101Aには次の利点がある。
溶融工程では、熱源としての各発熱体120の熱を伝導伝熱によりワーク130に伝えるので、熱源の熱を放射伝熱や対流伝熱によりワーク130に伝える場合に比べて、ワーク130の温度が迅速にろう付け温度まで上昇する。そのため、ワーク130の昇温速度の高速化を図ることができる。その結果、ろう付けに要する時間(即ちろう付け時間)の短縮化を図ることができるし、不活性ガスとしてのN2ガスの使用量の削減を図ることができ、更に、ろう付けに要する熱量の削減を図ることができる。
さらに、溶融工程では、ワーク130が配置された密封体102の内部102aはN2ガス雰囲気(即ち非酸化性ガス雰囲気)にされているから、ワーク130のろう付け予定部131を良好にろう付けできることはもとより、更に、密封体102の内部102aのN2ガス圧を筒状体104の外側の圧力(例:大気圧)と均衡させることができる。そのため、筒状体104の周壁105の肉厚を薄く設定することができ、これにより、ワーク130の昇温速度の更なる高速化を図ることができる。その結果、ろう付け時間の更なる短縮化を図ることができるし、N2ガスの使用量の更なる削減を図ることができ、更に、ろう付けに要する熱量の更なる削減を図ることができる。
しかも、密封体102は可搬性を有しているので、溶融工程が行われる場所である発熱体設置場所とは別の場所でワーク配置工程などを行うことができる。したがって、溶融工程と並行してワーク配置工程などを行うことができ、こうすることにより、複数のワークについてろう付け作業をする場合にその作業効率の向上を図ることができる。
さらに、各発熱体120は、溶融工程の際に筒状体104の周壁105を介してワーク130に押し付けられるから、発熱体120を筒状体104の周壁105の外面105bに密着させることができるし、周壁105の内面105aをワーク130に密着させることができる。これにより、発熱体120の熱を発熱体120から周壁105を介してワーク130に確実に伝えることができる。
しかも、筒状体104の周壁105は、発熱体120のワーク130への押付け動作に追従して弾性変形可能な肉厚を有しているので、発熱体120を周壁105を介してワーク130に確実に押し付けることができるし、また発熱体120のワーク130への押付けを解除すると筒状体104の周壁105は自己の弾性復元力で元の形状に戻るので、筒状体104を繰り返し使用することができる。しかも、ワーク130の大きさに厳格に対応した内部空間を有する筒状体104を用いる必要がなくなり、そのためワーク130に対する筒状体104の適用範囲を増大させることができる。
さらに、溶融工程の際には筒状体104の周壁105は発熱体120の熱で加熱されることで熱膨張するが、周壁105は筒状なので、熱膨張(特に周方向の熱膨張)による周壁105の塑性変形(熱塑性変形)は抑制される。そのため、溶融工程の際において発熱体120と周壁105の外面105bとの接触状態及び周壁105の内面105aとワーク130との接触状態を良好に維持することができるし、更に、筒状体104を確実に繰り返し使用することができる。その上、筒状体104の両端側はそれぞれ溶融工程の際に発生する筒状体104の軸方向への熱膨張に応じて軸方向に移動可能に配置されているので、次のような有利な効果を奏する。すなわち、溶融工程の際には筒状体104の周壁105は周方向及び軸方向に熱膨張する。このとき、周壁105は筒状であるから、周方向への熱膨張による周壁105の塑性変形(熱塑性変形)は防止されるし、更に、筒状体104の両端側はそれぞれ筒状体104の軸方向への熱膨張に応じて軸方向に移動可能に配置されているから、軸方向への熱膨張による周壁105の塑性変形(熱塑性変形)についても防止される。そのため、溶融工程の際に発熱体120と周壁105の外面105bとの接触状態及び周壁105の内面105aとワーク130との接触状態を確実に良好に維持することができるし、更に、筒状体104をより一層確実に繰り返し使用することができる。
さらに、第1蓋体110Aは、筒状体104の左右両開口104a、104aのうちワーク130の出入れ口とされる左開口104aを開閉自在に且つ気密に閉塞するものであるから、ワーク130の出入れ作業をする際には第1蓋体110Aを開けることができるし、溶融工程の際には第1蓋体110Aを閉めることで密封体102の内部102aのN2ガスの外部への漏出を阻止することができる。
一方、第2蓋体110Bには、ガス導入部118とガス排出部119が設けられているので、密封体102の内部102aをN2ガス雰囲気に容易に実現することができる。
しかも、ガス導入部118とガス排出部119は第1蓋体110Aではなく第2蓋体110Bに設けられているので、次のような利点がある。すなわち、ガス導入部118とガス排出部119がもし第1蓋体110Aに設けられている場合には、第1蓋体110Aの構造が複雑になって第1蓋体110Aの開閉作業が面倒になる。これに対して、本第2実施形態のようにガス導入部118とガス排出部119が第2蓋体110Bに設けられている場合には、第2蓋体110Bは必ずしも開閉されるものではないので、そのような問題は発生しない。したがって、本第2実施形態では第1蓋体110Aの構造を簡素化することができ、これにより第1蓋体110Aの開閉作業を容易に行うことができる。
さらに、本第2実施形態のろう付け装置101Aには次のような利点がある。すなわち、上述のように筒状体104の周壁105は発熱体120のワーク130への押付け動作に追従して弾性変形可能な肉厚を有しているが、このような筒状体104は、一般に、筒状体104と蓋体110との間をシールする際に筒状体104の開口端部104bがその内側へ変形するなどしてシール状態を実現しにくい。これに対して、本第2実施形態のろう付け装置101Aでは、各蓋体110の内リング113が筒状体104の開口端部104bに内嵌されて開口端部104bがその内側から内リング113で支持補強されているので、筒状体104の開口端部104bの内側への変形が阻止されている。そしてこの開口端部104bの外面と取付けフランジ112のソケット壁部112aの内面112cとにOリング114が気密に接触しているので、筒状体104と蓋体110との間を確実にシールすることができる。
さらに、筒状体104が円筒状であるから、筒状体104の周壁105を発熱体120のワーク130への押付け動作に追従して確実に弾性変形させることができる。さらに、筒状体104と蓋体110との間を更に確実にシールすることができる。
さらに、発熱体120は、筒状体104におけるワーク配置位置を挟んだ両外側にそれぞれ配置されているから、発熱体120が筒状体104におけるワーク配置位置を挟んだ両外側のうちいずれか一方側だけに配置されている場合に比べて、ワーク130の昇温速度の更なる高速化を図ることができ、その結果、ろう付け時間の更なる短縮化を図ることができる。
さらに、各発熱体120は、筒状体104の周壁105を介してワーク130に両発熱体120、120間でワーク130を挟むように押し付けられるものであることにより、溶融工程の際にワーク130のろう付け予定部131にろう付け荷重を加えることができ、これによりワーク130のろう付け予定部131を更に良好にろう付けすることができる。
もとより、本第2実施形態のろう付け装置101Aでは、筒状体104を長くすることにより、筒状体104と蓋体110との間をシールするOリング114(環状シール部材)に溶融工程の際の熱を容易に伝わりにくくすることができる。そのため、Oリング114を冷却する冷却手段(例:水冷式冷却器)を必ずしもろう付け装置101Aに設けることを要しないという利点がある。
<第3実施形態>
図6は、本発明の第3実施形態に係るろう付け装置101B及びろう付け方法を説明する図である。同図には上記第2実施形態と同じ要素に同一の符号が付されている。
本第3実施形態のろう付け装置101Bでは、密封体102の筒状体104はその軸方向の右端側が開口している。一方、筒状体104の左端側は開口しないでその左端部104cが偏平状に塑性変形されて気密に溶接閉塞されている。さらに、当該左端部104cが焼き鈍しされて巻回されている。同図においてクロスハッチングで図示された箇所104dは、左端部104cを気密に溶接した溶接部である。
筒状体104の右開口104aはワーク130の出入れ口とされるものであり、当該右開口104aが蓋体(蓋ユニット)110により開閉自在に且つ気密に閉塞されている。この蓋体110は、上記第2実施形態のろう付け装置101Aの第2蓋体110Bと同じ構造を有している。
本第3実施形態のろう付け装置101Bでは、密封体102の内部102aにワーク130を配置する際(即ちワーク配置工程の際)には、蓋体110の閉止フランジ111を取付けフランジ112から取り外して筒状体104の右開口端部104bを開口させる。そして、その右開口104aを通じてワーク130を密封体102の内部102aの軸方向中間部に配置する。その後、閉止フランジ111をOリング112fを介して取付けフランジ112に締結ボルト111aによって締結して取り付ける。その後は、上記第2実施形態のろう付け手順と同じ手順でろう付けが行われる。
ろう付けを終了した後でワーク130を密封体102の内部102aから取り出す場合には、閉止フランジ111を取付けフランジ112から取り外して筒状体104の右開口端部104bを開口させる。そして、その左開口104aを通じてワーク130が密封体102の内部102aから取り出される。
本第3実施形態のろう付け装置101B及びろう付け方法によれば、筒状体104の左端側が偏平状に気密に閉塞されているので、筒状体104の左端側を容易に閉塞することができるし、上記第2実施形態のろう付け装置101Aに比べて蓋体110の数を減らすことができる。
以上で第2及び第3実施形態について説明したが、本発明は上記第2及び第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で様々に変更可能である。
例えば、上記第2及び第3実施形態では、ろう付け装置は上発熱体120及び下発熱体120を具備しているが、本発明ではろう付け装置はこれに限定されるものではなく、その他に例えば両発熱体120、120のうちいずれか一方だけを備えていても良い。もしろう付け装置が上発熱体120だけを備えている場合には、下発熱体120の代わりに下発熱体120の配置位置にワーク130を筒状体104の周壁105を介して下側から受ける受け部材が配置されるのが望ましい。こうすることにより、溶融工程の際(即ちろう材を溶融する際)に上発熱体120と受け部材との間でワーク130を挟むように上発熱体120を筒状体104の周壁105を介してワーク130に押し付けることができる。もしろう付け装置が下発熱体120だけを備えている場合には、上発熱体120の代わりに上発熱体120の配置位置にワーク130を筒状体104の周壁105を介して上側から受ける受け部材が配置されるのが望ましい。こうすることにより、溶融工程の際に下発熱体120と受け部材との間でワーク130を挟むように下発熱体120を筒状体104の周壁105を介してワーク130に押し付けることができる。また、いずれの場合でも、受け部材は、セラミック(例:アルミナ)製や、溶融工程の際の熱に耐えうる金属製であることが望ましく、特に断熱性を有するものであることが望ましく、こうすることにより、溶融工程の際に受け部材から流出する熱損失量を減少させることができる。
また、上記第2及び第3実施形態では各駆動器125の駆動力によって各発熱体120が筒状体104の周壁105を介してワーク130に押し付けられるが、本発明はその他に例えば筒状体104を両発熱体120、120のうちいずれか一方に向かって移動させることで当該一方の発熱体120が筒状体104の周壁105を介してワーク130に押し付けられる構成を採用しても良い。
また、上記第2及び第3実施形態では発熱体120を周壁105を介してワーク130に押し付ける前に発熱体120の温度を予め所定のろう付け温度に調整しているが、本発明ではその他に例えば発熱体120を周壁105を介してワーク130に押し付けた後で発熱体120の温度を所定のろう付け温度に調整しても良い。
さらに本発明は、上記第1〜第3実施形態に適用された複数の技術的思想を2つ以上組み合わせて構成しても良い。
次に、本発明の具体的実施例について以下に示す。
実施例1では、図1〜3に示した第1実施形態のろう付け装置1を用いてワーク30のろう付け予定部31をろう付けした。ワーク30の各平板状部材33aの大きさは幅100×長さ100×肉厚10mmであり、その材質はA1050である。ワーク30のコルゲートフィン状部材33bの大きさは幅100×長さ100×高さ80×肉厚1.6mmであり、その心材の材質はA3003、そのろう材層の材質(即ちろう材)はA4045である。ワーク30のろう付け予定部31にはフッ化物系フラックスが10g/m2付着供給されている。密封容器3の内部3aの容量(即ち密封容器3の内容量)は14L(リットル)である。密封容器3の各蓋体5の肉厚は0.5mmである。密封容器本体4及び各蓋体5はいずれもSUS304製である。
本実施例1で適用したろう付け条件は表1に示すとおりである。
ここで、同表1における「伝熱形態」欄とは、ワーク30のろう材を溶融するために発熱体20等の熱源の熱をワーク30に伝える形態を示す欄である。同欄中の「伝導伝熱」とは発熱体20等の熱源の熱をワーク30に伝導伝熱により伝えることを意味しており、「放射及び対流伝熱」とは熱源の熱を放射伝熱及び対流伝熱によりワークに伝えることを意味している。なお、本実施例1では第1実施形態のろう付け装置1を用いているので、「伝熱形態」欄は「伝導伝熱」である。
同表1における「N2ガスの供給態様」欄とは、ワーク30のろう材を溶融する際に密封容器3等のろう付け炉の内部にN2ガスを供給する態様を示す欄である。同欄中の「N2ガス連続供給」とは、密封容器3等のろう付け炉の内部をN2ガス雰囲気にした後で当該内部にN2ガスを連続して供給しながらろう材を溶融したことを意味しており、「N2ガス供給停止」とは、密封容器3等のろう付け炉の内部をN2ガス雰囲気にした後で当該内部にN2ガスを供給するのを停止してろう材を溶融したことを意味している。「ろう付け時間」とは、ろう付けに要した時間である。「N2ガス供給量」とは、ワーク30のろう付け予定部31をろう付けするのに要したN2ガスの供給量である。
実施例2では、N2ガスの供給態様が「N2ガス供給停止」であること以外は実施例1と同様にワーク30のろう付け予定部31をろう付けした。
比較例1では、従来のろう付け装置として量産型の不活性ガス炉中ろう付け炉を用いてワークのろう付け予定部をろう付けした。本比較例1で使用したワークの大きさは実施例1と同じであり、また使用した不活性ガスは実施例1と同じくN2ガスである。
比較例2では、N2ガスの供給態様が「N2ガス供給停止」であること以外は比較例1と同様にワークのろう付け予定部をろう付けした。
以上の実施例1、2、比較例1、2でろう付けが行われたワークについて、それぞれそのろう付け部の状態を調べた。その結果を表1中の「ろう付け状態」欄に示す。同欄において、「○」はろう付け部に大きなフィレットが形成されていたことを意味しており、「△」はろう付け部にフィレットがあまり形成されてなかったことを意味している。
表1から分かるように、実施例1、2によればろう付け時間を短縮することができたし、N2ガス供給量を削減してもワーク30のろう付け予定部31を良好にろう付けすることができた。