これらのろう付け方法のうち真空ろう付け法では、熱源の熱が放射伝熱によりワークに伝えられてろう材が加熱溶融される。VAW法、炉中ろう付け法及びノコロックろう付け法では、熱源の熱が放射及び対流伝熱によりワークに伝えられてろう材が加熱溶融される。しかるに、これらのろう付け方法には、ワークの昇温速度などについて改良の余地があった。
本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、従来のろう付け方法及びろう付け装置を改良したろう付け方法及びろう付け装置を提供することにある。
本発明は以下の手段を提供する。
[1] ワーク真空室と、ヒータ真空室と、前記ヒータ真空室に配置され且つ加熱面を有するヒータと、前記ワーク真空室と前記ヒータ真空室との間に介在されるとともに前記ワーク真空室側に向いた第1壁面及び前記ヒータ真空室側に向いた第2壁面を有する隔壁板と、前記隔壁板の前記第1壁面側に配置されたワーク真空室形成容器と、前記隔壁板の前記第2壁面側に配置されたヒータ真空室形成容器と、を具備し、前記ワーク真空室は前記隔壁板と前記ワーク真空室形成容器とで包囲されて形成されるとともに、前記ヒータ真空室は前記隔壁板と前記ヒータ真空室形成容器とで包囲されて形成されるろう付け装置を準備する工程と、
前記ろう付け装置の前記ワーク真空室に、ろう材を有するろう付け予定部を備えたワークを配置するワーク配置工程と、
前記ワーク配置工程の後で、前記ワーク真空室及び前記ヒータ真空室をそれぞれ真空にし且つ前記ヒータの前記加熱面を前記隔壁板の前記第2壁面に接触させるとともに前記隔壁板の前記第1壁面を前記ワークに接触させた状態で、前記ヒータの熱を前記ヒータから前記隔壁板を介して前記ワークに伝導伝熱により伝えることにより、前記ろう材を溶融する溶融工程と、
を含むことを特徴とするろう付け方法。
[2] 前記隔壁板は、前記ワーク真空室形成容器及び前記ヒータ真空室形成容器のうち少なくとも前記ワーク成容器に対して分離可能なものであり、
前記ワーク真空室形成容器は、前記隔壁板が前記ワーク真空室形成容器に対して分離されることで前記ワーク真空室形成容器に形成される開口を、前記ワーク真空室形成容器における前記ワークの出入れ口とするものである前項1記載のろう付け方法。
[3] 前記溶融工程では、前記ヒータの前記加熱面を前記隔壁板を介して前記ワークに押し付けた状態で、前記ろう材を溶融する前項1又は2記載のろう付け方法。
[4] 前記ヒータは、前記加熱面を露出させた状態で断熱材で覆われている前項1〜3のいずれかに記載のろう付け方法。
[5] 前記溶融工程では、前記ワーク真空室及び前記ヒータ真空室のうち前記ワーク真空室だけを真空引きしながら前記ろう材を溶融する前項1〜4のいずれかに記載のろう付け方法。
[6] 前記溶融工程では、前記溶融工程の際に発生する前記第2壁面と平行方向の前記隔壁板の熱膨張を、前記隔壁板における前記ヒータの前記加熱面との接触部の周囲に設けられた吸収部により吸収する前項1〜5のいずれかに記載のろう付け方法。
[7] 前記ヒータ真空室は、前記ワーク真空室を挟んだ両外側にそれぞれ配置されており、
前記ヒータは、前記各ヒータ真空室にそれぞれ配置されており、
前記隔壁板は、前記ワーク真空室と前記各ヒータ真空室との間にそれぞれ介在されるものであり、
前記溶融工程では、前記各ヒータの熱を前記各ヒータから対応する前記隔壁板を介して前記ワークに伝導伝熱により伝えることにより、前記ろう材を溶融する前項1〜6のいずれかに記載のろう付け方法。
[8] 前記溶融工程では、前記各ヒータの前記加熱面を対応する前記隔壁板を介して前記ワークに前記両加熱面間で前記ワークを挟むように相対的に押し付ける前項7記載のろう付け方法。
[9] ろう材を有するろう付け予定部を備えたワークが配置されるワーク真空室と、
ヒータ真空室と、
前記ヒータ真空室に配置され且つ加熱面を有するヒータと、
前記ワーク真空室と前記ヒータ真空室との間に介在されるとともに前記ワーク真空室側に向いた第1壁面及び前記ヒータ真空室側に向いた第2壁面を有する隔壁板と、
前記隔壁板の前記第1壁面側に配置されたワーク真空室形成容器と、
前記隔壁板の前記第2壁面側に配置されたヒータ真空室形成容器と、
を具備し、
前記ワーク真空室は前記隔壁板と前記ワーク真空室形成容器とで包囲されて形成されるものであり、
前記ヒータ真空室は前記隔壁板と前記ヒータ真空室形成容器とで包囲されて形成されるものであり、
前記ワーク真空室及び前記ヒータ真空室がそれぞれ真空にされ且つ前記ヒータの加熱面が前記隔壁板の前記第2壁面に接触するとともに前記隔壁板の前記第1壁面が前記ワーク真空室に配置された前記ワークに接触した状態で、前記ヒータの熱が前記ヒータから前記隔壁板を介して前記ワークに伝導伝熱により伝えられることにより、前記ろう材を溶融するものとなされていることを特徴とするろう付け装置。
[10] 前記隔壁板は、前記ワーク真空室形成容器及び前記ヒータ真空室形成容器のうち少なくとも前記ワーク真空室形成容器に対して分離可能なものであり、
前記ワーク真空室形成容器は、前記隔壁板が前記ワーク真空室形成容器に対して分離されることで前記ワーク真空室形成容器に形成される開口を、前記ワーク真空室形成容器における前記ワークの出入れ口とするものである前項9記載のろう付け装置。
[11] 更に、前記ヒータの前記加熱面を前記隔壁板の前記第2壁面に対して接離可能に且つ前記隔壁板を介して前記ワークに押付け可能に移動させるヒータ移動機構を具備している前項9又は10記載のろう付け装置。
[12] 前記ヒータ移動機構は、
前記ヒータ真空室形成容器に設けられた螺子孔と、前記ヒータ真空室形成容器の周壁をその外側から前記ヒータ真空室側に気密に貫通した状態で前記螺子孔に螺挿された螺子棒と、を備えるとともに、前記螺子棒における前記ヒータ真空室側に配置された一端部に前記ヒータが連結され、且つ、前記螺子棒における前記ヒータ真空室形成容器の外側に配置された他端部に前記螺子棒を回転させる駆動部が設けられ、前記駆動部によって前記螺子棒を回転させることにより前記ヒータを移動させるように構成されている前項11記載のろう付け装置。
[13] 前記ヒータは、前記加熱面を露出させた状態で断熱材で覆われている前項9〜12のいずれかに記載のろう付け装置。
[14] 更に、前記ワーク真空室及び前記ヒータ真空室を真空にする真空手段を具備しており、
前記真空手段は、
前記ワーク真空室に連通するとともに前記ワーク真空室のガスを吸引する第1吸気管と、前記ヒータ真空室に連通するとともに前記ヒータ真空室のガスを吸引する第2吸気管と、前記第1吸気管及び前記第2吸気管を通じて前記ワーク真空室及び前記ヒータ真空室を真空引きするための真空ポンプと、前記第1吸気管に設けられるとともに前記第1吸気管を開閉する第1開閉弁と、前記第2吸気管に設けられるとともに前記第2吸気管を開閉する第2開閉弁と、を備えている前項9〜13のいずかに記載のろう付け装置。
[15] 前記真空手段は、前記ろう材を溶融する際に前記真空ポンプが動作した状態で前記第1開閉弁が開状態に及び前記第2開閉弁が閉状態になるように構成されている前項14記載のろう付け装置。
[16] 前記隔壁板における前記ヒータの前記加熱面との接触部の周囲に、前記ろう材を溶融する際に発生する前記第2壁面と平行方向の前記隔壁板の熱膨張を吸収する吸収部が設けられている前項9〜15のいずれかに記載のろう付け装置。
[17] 前記ワーク真空室形成容器と前記隔壁板との相互シール部間にシール部材が介在されており、
前記隔壁板のシール部は、前記隔壁板の外周部に位置しており、更に、前記ろう材を溶融する際に前記ワーク真空室形成容器のシール部に前記シール部材を介して密着する方向に相対的に押し付けられるものであり、
前記シール部材は、前記ろう材を溶融する際に冷却されるものであり、
前記隔壁板における前記ヒータの前記加熱面との前記接触部は、前記隔壁板の略中央部に位置しており、
前記吸収部は、前記隔壁板の前記シール部よりも内側であって前記ヒータの前記加熱面との前記接触部の周囲に設けられている前項16記載のろう付け装置。
[18] 前記吸収部は、前記隔壁板の一部が断面波状に屈曲して形成されたものである前項16又は17記載のろう付け装置。
[19] 前記ヒータ真空室は、前記ワーク真空室を挟んだ両外側にそれぞれ配置されており、
前記ヒータは、前記各ヒータ真空室にそれぞれ配置されており、
前記隔壁板は、前記ワーク真空室と前記各ヒータ真空室との間にそれぞれ介在されるものであり、
前記各ヒータの熱が前記各ヒータから対応する前記隔壁板を介して前記ワークに伝導伝熱により伝えられることにより、前記ろう材を溶融するものとなされている前項9〜18のいずれかに記載のろう付け装置。
[20] 前記各ヒータの前記加熱面は、対応する前記隔壁板を介して前記ワークに前記両加熱面間で前記ワークを挟むように相対的に押し付けられるものである前項19記載のろう付け装置。
本発明は以下の効果を奏する。
前項[1]のろう付け方法では、溶融工程の際に、熱源としてのヒータの熱を伝導伝熱によりワークに伝えるので、熱源の熱を放射伝熱や対流伝熱によりワークに伝える場合に比べて、ワークの昇温速度の高速化を図ることができ、その結果、ろう付けに要する時間(即ちろう付け時間)の短縮化を図ることができるし、更に、ろう付けに要する熱量の低減化を図ることができる。
さらに、溶融工程の際にワーク真空室及びヒータ真空室をそれぞれ真空にするから、隔壁板の肉厚を厚くしなくても各真空室の真空状態を維持することができる。したがって、隔壁板の肉厚を薄くすることができる。これにより、隔壁板の熱容量を小さくすることができ、その結果、ワークの昇温速度の更なる高速化を図ることができる。
もとより、ワーク真空室を真空にした状態でろう材を溶融するので、必ずしもフラックスをワークのろう付け予定部やろう材に供給しなくてもろう付け予定部を良好にろう付けすることができる。
前項[2]では、ワーク真空室形成容器は、隔壁板がワーク真空室形成容器に対して分離されることでワーク真空室形成容器に形成される開口を、ワーク真空室形成容器におけるワークの出入れ口とするものであるから、ワークをワーク真空室に容易に入れることができるし、ワークをワーク真空室から容易に取り出すことができる。
前項[3]では、ヒータの加熱面を隔壁板を介してワークに押し付けた状態で、ろう材を溶融するので、溶融工程の際にヒータの加熱面を隔壁板の第2壁面に密着させることができるし、隔壁板の第1壁面をワークに密着させることができる。これにより、ヒータの熱をヒータから隔壁板を介してワークに確実に伝えることができる。
前項[4]では、ヒータは加熱面を露出させた状態で断熱材で覆われているので、ヒータの加熱面を隔壁板の第2壁面に接触させる際に断熱材が干渉するのを防止することができ、これによりヒータの加熱面を隔壁板の第2壁面に確実に直接的に接触させることができるし、更に、ヒータの熱がヒータの加熱面以外の面から放射伝熱によりヒータ真空室形成容器に伝えられて当該容器の温度が上昇する不具合を極力抑えることができる。
前項[5]では、ワーク真空室及びヒータ真空室のうちワーク真空室だけを真空引きしながらろう材を溶融することにより、溶融工程の際にワークから発生するガスをワーク真空室から迅速に排出することができる。したがって、このガスによるろう付け部への悪影響を確実に防止することができ、その結果、ワークのろう付け予定部を確実に良好にろう付けすることができる。
前項[6]では、溶融工程の際に発生する第2壁面と平行方向の隔壁板の熱膨張を、隔壁板におけるヒータの加熱面との接触部の周囲に設けられた吸収部により吸収するので、次の効果を奏する。
すなわち、溶融工程の際には隔壁板はヒータの熱で加熱されることで第2壁面と平行な方向に熱膨張するが、この熱膨張は吸収部によって吸収される。これにより、隔壁板の熱膨張による変形を防止することができる。そのため、溶融工程の際にヒータの加熱面と隔壁板の第2壁面との接触状態及び隔壁板の第1壁面とワークとの接触状態を良好に維持することができるし、更に、隔壁板を確実に繰り返し使用することができる。
前項[7]では、各ヒータの熱を各ヒータから対応する隔壁板を介してワークに伝導伝熱により伝えることにより、ろう材を溶融するので、ヒータの数が1つである場合に比べて、ろう付けに要する時間の更なる短縮化を図ることができる。
前項[8]では、各ヒータの加熱面を対応する隔壁板を介してワークに両加熱面間でワークを挟むように相対的に押し付けることにより、溶融工程の際にワークのろう付け予定部にろう付け荷重を加えることができ、これによりワークのろう付け予定部を更に良好にろう付けすることができる。
前項[9]のろう付け装置は、前項[1]の効果と同様の効果を奏する。
前項[10]は、前項[2]の効果と同様の効果を奏する。
前項[11]では、ろう付け装置はヒータ移動機構を具備しているので、ろう材を溶融しない際にはヒータの加熱面を隔壁板の第2壁面に対して離すことができるし、ろう材を溶融する際にはヒータの加熱面を隔壁板の第2壁面に接触させることができるし、更に、ヒータの加熱面を隔壁板を介してワークに押し付けることができる。したがって、ヒータの加熱面を隔壁板の第2壁面に密着させることができるし、隔壁板の第1壁面をワークに密着させることができる。これにより、ヒータの熱をヒータから隔壁板を介してワークに確実に伝えることができる。
前項[12]では、ヒータの加熱面を確実に移動させうるヒータ移動機構を構成することができる。
前項[13]は、前項[4]の効果と同様の効果を奏する。
前項[14]では、ワーク真空室及びヒータ真空室をそれぞれ確実に真空にすることができる。
前項[15]では、真空手段は、ろう材を溶融する際に真空ポンプが動作した状態で第1開閉弁が開状態に及び第2開閉弁が閉状態になるように構成されているので、これらの真空室のうちワーク真空室だけを真空ポンプによって真空引きしながらろう材を溶融することができる。これにより、真空ポンプによるワーク真空室のガスの真空引き速度が増大し、その結果、ろう材を溶融する際にワークから発生するガスをワーク真空室から迅速に排出することができる。したがって、このガスによるろう付け部への悪影響を確実に防止することができ、その結果、ワークのろう付け予定部を確実に良好にろう付けすることができる。
前項[16]は、前項[6]の効果と同様の効果を奏する。
前項[17]では、ワーク真空室形成容器と隔壁板との相互シール部間にシール部材が介在されており、更に、隔壁板のシール部は、ろう材を溶融する際にワーク真空室形成容器のシール部にシール部材を介して密着する方向に相対的に押し付けられるものであるから、ろう材を溶融する際にワーク真空室の真空状態を確実に維持することができる。
さらに、シール部材はろう材を溶融する際に冷却されるものであるから、シール部材の熱劣化を防止することができ、その結果、相互シール部のシール状態を良好に維持することができる。さらに、隔壁板のシール部は、上述のようにろう材を溶融する際にシール部材が冷却される上、更にワーク真空室形成容器のシール部に相対的に押し付けられることで固定されているから、隔壁板のシール部の温度と隔壁板におけるヒータの加熱面との接触部の温度との間の大きな温度差によって隔壁板には大きな熱膨張が生じる。しかしながら、吸収部は、隔壁板のシール部よりも内側であってヒータの加熱面との接触部の周囲に設けられているので、このような大きな熱膨張であってもこれを吸収部によって確実に吸収することができる。
前項[18]では、吸収部は、隔壁板の一部が断面波状に屈曲して形成されたものであることにより、熱膨張を確実に吸収することができるし、吸収部をプレス加工等によって容易に形成することができる。
前項[19]は、前項[7]の効果と同様の効果を奏する。
前項[20]は、前項[8]の効果と同様の効果を奏する。
次に、本発明の一実施形態について図面を参照して以下に説明する。
本発明の一実施形態に係るろう付け装置1は、図1に示すように、ろう付け製品として例えば熱交換器を製造するために用いられるものである。
ろう付け装置1によりろう付けされるワーク20は、ろう付け予定部21を備えている。本実施形態ではワーク20は、互いにろう付け一体化される複数個の被ろう付け部材23a、23a、23bから構成されている。これらの被ろう付け部材23a、23a、23bはいずれも金属製であり、本実施形態ではアルミニウム製であるとする。また、被ろう付け部材の個数は例えば3個である。これらの被ろう付け部材23a、23a、23bのうち2個の部材23a、23aは略平板状であり、互いに上下に離間して平行に配置されている。各平板状部材23aの大きさは例えば幅80×長さ80×肉厚2mmであり、その材質は例えばA1100である。残りの1個の部材23bはコルゲートフィン状であり、両平板状部材23a、23aの間に配置されている。このコルゲートフィン状部材23bの大きさは例えば幅80×長さ80×高さ16×肉厚0.5mmである。コルゲートフィン状部材23bはブレージングシートで形成されており、図3に示すようにその心材23cの両面にそれぞれろう材としてのろう材層22、22がクラッドされている。心材23cの材質は例えばA3003であり、各ろう材層22の材質は例えばAl−Si系合金であり具体的には例えばA4004である。したがって、上側の平板状部材23aとコルゲートフィン状部材23bとの相互接触部(即ち接合予定界面)間と、下側の平板状部材23aとコルゲートフィン状部材23bとの相互接触部(即ち接合予定界面)間とには、それぞれコルゲートフィン状部材23bのろう材層22(ろう材)が介在されている。そして、それぞれの相互接触部間に介在されたろう材層22が溶融されることにより、それぞれの相互接触部がろう付けされてこれらの被ろう付け部材23a、23a、23bが一体化される。すなわち、このワーク20はこのような相互接触部をろう付け予定部21として備えるとともに、相互接触部(ろう付け予定部21)にはろう材としてのろう材層22が設けられている。
ろう付け装置1は、図1及び4に示すように、ワーク真空室2xと、2つのヒータ真空室4x、4xと、2つの隔壁板3、3と、ワーク真空室形成容器2と、2つのヒータ真空室形成容器4、4と、2つのヒータ5、5と、2つのヒータ移動機構6、6と、真空手段7と、ガス供給手段8と、冷却手段10などを具備している。
ワーク真空室2xは、ワーク20が配置されるものであり、ろう材(即ちろう材層22)を溶融する際にワーク真空室2xは真空状態にされる。
ヒータ真空室4xは、ワーク真空室2xを挟んだ両外側にそれぞれ配置されており、本実施形態ではワーク真空室2xに対して上側及び下側にそれぞれ配置されている。下側に配置されたヒータ真空室4x(以下、「下ヒータ真空室4x」という。)は、上側に配置されたヒータ真空室4x(以下、「上ヒータ真空室4x」という。)を上下反転した構成になっている。ろう材を溶融する際に各ヒータ真空室4xはそれぞれ真空状態にされるものである。
各隔壁板3は、平面視略四角形状のものであり(図2参照)、ワーク真空室2xと上下各ヒータ真空室4xとの間にそれぞれ介在されている。すなわち、ワーク真空室2xと上ヒータ真空室4xとの間には上側の隔壁板3(以下、「上隔壁板3」という。)が介在されており、ワーク真空室2xと下ヒータ真空室4xとの間には下側の隔壁板3(以下、「下隔壁板3」という。)が介在されている。下隔壁板3は、上隔壁板3を上下反転した構成になっている。
各隔壁板3は、ろう材を溶融する際の熱に耐えうる金属製であり、例えばSUS304等のステンレス鋼製である。
さらに、上隔壁板3は、ワーク真空室2x側(即ち下側)に向いた第1壁面3aと、上ヒータ真空室4x側(即ち上側)に向いた第2壁面3bとを有している。これと同じく、下隔壁板3は、ワーク真空室2x側(即ち上側)に向いた第1壁面3aと、下ヒータ真空室4x側(即ち下側)に向いた第2壁面3bとを有しており、
ワーク真空室形成容器2は、上下両隔壁板3、3の第1壁面3a、3a側に配置されるとともに両隔壁板3、3と協働してワーク真空室2xを形成するものである。すなわち、ワーク真空室形成容器2は、上隔壁板3の第1壁面3a側と下隔壁板3の第1壁面3a側との間に配置されており、ワーク真空室形成容器2と両隔壁板3、3とで気密に包囲されることでワーク真空室2xが形成される。本実施形態では、ろう付け装置1は、ワーク真空室形成容器2は、上面側及び下面側がそれぞれ開口した平面視略ロ字枠状の周側壁2aを備えている。周側壁2aの下端面は下隔壁板3の第1壁面3aの外周部に溶接によって気密に接合固着されている(W1はその溶接部)。これにより、ワーク真空室形成容器2の周側壁2aの下側の開口が下隔壁板3によって開閉不能に閉塞されている。したがって、下隔壁板3は、ワーク真空室形成容器2の底壁としての役割も有している。
ワーク真空室形成容器2(即ち周側壁2a)は、ろう材を溶融する際の熱に耐えうる金属製であり、例えばSUS304等のステンレス鋼製である。
上隔壁板3は、ワーク真空室形成容器2の周側壁2aの上側の開口を開閉可能に閉塞する蓋壁としての役割も有している。すなわち、上隔壁板3はその第1壁面3aの外周部をワーク真空室形成容器2(詳述するとその周側壁2a)とのシール部3cとするものである。一方、ワーク真空室形成容器2は、その周側壁2aの上端面を上隔壁板3とのシール部2cとするものである。そして、図4び示すように、上隔壁板3のシール部3cが周側壁2aのシール部2cに後述するシール部材12を介して押し付けられることにより、ワーク真空室形成容器2の周側壁2aの上側の開口2eが上隔壁板3によって気密に閉塞される。図1に示すように、このように上側の開口2eが上隔壁板3によって閉塞された状態において、上隔壁板3の第1壁面3a側であって且つワーク真空室形成容器2の内側には、ワーク真空室形成容器2の周側壁2aと両隔壁板3、3とで包囲された気密なワーク真空室2xが形成される。一方、上隔壁板3がワーク真空室形成容器2(詳述するとその周側壁2a)に対して分離されることにより、ワーク真空室形成容器2の周側壁2aの上面側に平面視略四角形状の開口2eが形成され、この開口2eがワーク真空室形成容器2におけるワーク20の出入れ口とされる。
各ヒータ真空室形成容器4は、対応する隔壁板3の第2壁面3b側に配置されるとともに対応する隔壁板3と協働してヒータ真空室4xを形成するものである。詳述すると、上隔壁板3の第2壁面3b側に一方のヒータ真空室形成容器4(以下、「上ヒータ真空室形成容器4」という。)が配置されており、上ヒータ真空室形成容器4と上隔壁板3とで気密に包囲されることで上ヒータ真空室4xが形成される。下隔壁板3の第2壁面3b側に他方のヒータ真空室形成容器4(以下、「下ヒータ真空室形成容器4」という。)が配置されており、下ヒータ真空室形成容器4と下隔壁板3とで気密に包囲されることで下ヒータ真空室4xが形成される。下ヒータ真空室形成容器4は、上ヒータ真空室形成容器4を上下反転した構成になっている。
各ヒータ真空室形成容器4は、ろう材を溶融する際の熱に耐えうる金属製であり、例えばSUS304等のステンレス鋼製である。
上ヒータ真空室形成容器4は、上隔壁板3の第2壁面3b側において上隔壁板3に対して略対向状に離間配置された平面視四角形状の対向壁4bと、対向壁4bの外周部に対向壁4bに対して下側に略直角をなして一体形成された平面視ロ字枠状の周側壁4aと、を備えている。対向壁4b及び周側壁4aは上ヒータ真空室形成容器4の周壁4cを構成するものである。周側壁4aの下端面は上隔壁板3の第2壁面3bの外周部に溶接によって気密に接合固着されている(W2はその溶接部)。これにより、上隔壁板3の第2壁面3b側であって且つ上ヒータ真空室形成容器4の内側には、上ヒータ真空室形成容器4(即ち対向壁4b及び周側壁4a)と上隔壁板3とで包囲された気密な上ヒータ真空室4xが形成されている。
下ヒータ真空室形成容器4についても上ヒータ真空室形成容器4と同様に構成されている。すなわち、下ヒータ真空室形成容器4は、下隔壁板3の第2壁面3b側において下隔壁板3に対して略対向状に離間配置された平面視四角形状の対向壁4bと、対向壁4bの外周部に対向壁4bに対して上側に略直角をなして一体形成された平面視ロ字枠状の周側壁4aと、を備えている。周側壁4aの上端面は下隔壁板3の第2壁面3bの外周部に溶接によって気密に接合固着されている(W3はその溶接部)。これにより、下隔壁板3の第2壁面3b側であって且つ下ヒータ真空室形成容器4の内側には、下ヒータ真空室形成容器4(即ち対向壁4b及び周側壁4a)と下隔壁板3とで包囲された気密な下ヒータ真空室4xが形成されている。
ヒータ5は、各ヒータ真空室4xにそれぞれ配置されている。詳述すると、上ヒータ真空室4xに一方のヒータ5(以下、「上ヒータ5」という。)が配置されており、下ヒータ真空室4xに他方のヒータ5(以下、「下ヒータ5」という。)が配置されている。さらに、上ヒータ5は上ヒータ真空室形成容器4の周壁4cの内面から離間して配置されており、下ヒータ5は下ヒータ真空室形成容器4の周壁4cの内面から離間して配置されている。更にまた、上ヒータ5と下ヒータ5は、ワーク真空室2xにおけるワーク配置位置を挟んだ上下両外側の位置に配置されている。下ヒータ5は、上ヒータ5を上下反転した構成になっている。
各ヒータ5は、その外周面の一部において平坦状の加熱面5aを有している。各ヒータ5は、例えば電気ヒータからなるものであり、ヒータ5への電流供給量の増減等によりヒータ5の温度(詳述するとヒータ5の加熱面5aの温度)を制御できるように構成されている。各ヒータ5の加熱面5aは、対応する隔壁板3の第2壁面3b側に向いて且つ第2壁面3bに面接触状態に接触可能に配置されている。ろう材を溶融する際には、各ヒータ5の熱は、各ヒータ5の加熱面5aが対応する隔壁板3の第2壁面3bに面接触状態に接触し且つ各隔壁板3の第1壁面3aがワーク20に面接触状態に接触した状態で、各ヒータ5から対応する隔壁板3を介してワーク20に伝導伝熱により同時に伝えられてろう材を加熱溶融するものである。なお、伝導伝熱は熱伝導とも呼ばれている。
各ヒータ5における加熱面5aを除いた外周面には断熱材5bが層状に設けられており、これにより各ヒータ5における加熱面5aを除いた外周面が断熱材5bによって覆われている。一方、各ヒータ5の加熱面5aは、対応する隔壁板3の第2壁面3bに直接的に接触可能に露出している。断熱材は、例えばアルミナ等のセラミックからなる。各ヒータ5の加熱面5aは、ろう材を溶融する際に対応する隔壁板3を介してワーク20に押し付けられる。
各ヒータ移動機構6は、対応するヒータ5の加熱面5aを対応する隔壁板3の第2壁面3bに対して接離可能に且つ対応する隔壁板3を介してワーク20に押付け可能に移動させるものであり、螺子孔6aと螺子棒6bと駆動部6cなどを備えている。
両ヒータ移動機構6、6において、上ヒータ5の加熱面5aを移動させる一方のヒータ移動機構6(以下、「上ヒータ移動機構6」という。)では、螺子孔6aは上ヒータ真空室形成容器4の周壁4cとしての対向壁4bの略中央部に設けられており、螺子棒6bは対向壁4bをその外側から上ヒータ真空室4x側に気密に貫通した状態で螺子孔6aに螺挿されている。図1において6dはシール部材であり、このシール部材6dは、対向壁4bの略中央部において螺子孔6aに隣接して配置されている。そして、このシール部材6dを介して螺子棒6bが螺子孔6aに螺挿されることにより、螺子棒6bは対向壁4bを気密に貫通した状態に配置されている。螺子棒6bにおける上ヒータ真空室4x側に配置された一端部(下端部)には上ヒータ5が連結されており、一方、螺子棒6bにおける上ヒータ真空室形成容器4の外側に配置された他端部(上端部)には駆動部6cが設けられている。駆動部6cは螺子棒6bを回転させるためのものであり、本実施形態では手動で螺子棒6bを回転させるためのものである。
そして、上ヒータ移動機構6は、駆動部6cに備えられたハンドルを手の力で一回転方向(この回転方向を説明の便宜上「正回転方向」とする。)に回転させることにより、螺子棒6bを正回転方向に回転させ、これにより上ヒータ5の加熱面5aを上隔壁板3の第2壁面3bに対して接近方向に更に上隔壁板3を介してワーク20に対して押付け方向に移動させうるように構成されるとともに、駆動部6cのハンドルを手の力で逆回転方向に回転させることにより、螺子棒6bを逆回転方向に回転させ、これにより上ヒータ5の加熱面5aを上隔壁板3の第2壁面3bに対して離間方向に移動させうるように構成されている。
なお本発明では、駆動部6cは手動で螺子棒6bを回転させるものであることに限定されるものではなく、その他に例えば電気モータ等を用いた電動で螺子棒6bを回転させるものであっても良い。
下ヒータ5の加熱面5aを移動させる他方のヒータ移動機構6(以下、「下ヒータ移動機構6」という。)は、上ヒータ移動機構6を上下反転した構造になっており、この点以外は上ヒータ移動機構6と同じ構造である。
真空手段7は、ワーク真空室2x及び両ヒータ真空室4x、4xを真空にするものであり、ワーク真空室2xのガスを吸引する第1吸気管7aと、上ヒータ真空室4xのガスを吸引する第2吸気管7b(以下、「第2上吸気管7b」という。)と、下ヒータ真空室4xのガスを吸引する第2吸気管7b(以下、「第2下吸気管7b」という。)と、真空ポンプ7dなどを備えている。
第1吸気管7aは、ワーク真空室形成容器2の周側壁2aをその外側からワーク真空室2x側に気密に貫通した状態でワーク真空室2xに連通接続されている。第2上吸気管7bは、上ヒータ真空室形成容器4の周側壁4aをその外側から上ヒータ真空室4x側に気密に貫通した状態で上ヒータ真空室4xに連通接続されている。第2下吸気管7bは、下ヒータ真空室形成容器4の周側壁4aをその外側から下ヒータ真空室4x側に気密に貫通した状態で下ヒータ真空室4xに連通接続されている。そして、これらの吸気管7a、7b、7bの下流側の端部が1つの合流管7cに接続されて合流しており、この合流管7cに1つの真空ポンプ7d(詳述すると真空ポンプ7dの吸引管)が接続されている。真空ポンプ7dは、合流管7cを通じてワーク真空室2x、上ヒータ真空室4x及び下ヒータ真空室4xを真空引きするためのものであり、すなわち、第1吸気管7a、第2上吸気管7b及び第2下吸気管7bを通じてそれぞれワーク真空室2x、上ヒータ真空室4x及び下ヒータ真空室4xを真空引きするためのものである。
第1吸気管7aには当該第1吸気管7aを開閉する第1開閉弁7eが設けられている。第2上吸気管7bには当該第2上吸気管7bを開閉する第2開閉弁7f(以下、「第2上開閉弁7f」という。)が設けられており、第2下吸気管7bには当該第2下吸気管7bを開閉する第2開閉弁7f(以下、「第2下開閉弁7f」という。)が設けられている。これらの開閉弁7e、7f、7fは、いずれも例えば電気的に制御可能な電磁弁からなるものである。なお本発明では、これらの開閉弁7e、7f、7fは電磁弁からなるものに限定されるものではなく、その他に例えば手動で開閉操作可能なものであっても良い。
ガス供給手段8は、ワーク真空室2x及び両ヒータ真空室4x、4xに所定のガスとして例えば空気を供給するものであり、ワーク真空室2xに空気を供給する第1供給管8aと、上ヒータ真空室4xに空気を供給する第2供給管8b(以下、「第2上供給管8b」という。)と、下ヒータ真空室4xに空気を供給する第2供給管8b(以下、「第2下供給管8b」という。)とを備えている。
第1供給管8aは、ワーク真空室形成容器2の周側壁2aをその外側からワーク真空室2x側に気密に貫通した状態でワーク真空室2xに連通接続されている。第2上供給管8bは、上ヒータ真空室形成容器4の周側壁4aをその外側から上ヒータ真空室4x側に気密に貫通した状態で上ヒータ真空室4xに連通接続されている。第2下供給管8bは、下ヒータ真空室形成容器4の周側壁4aをその外側から下ヒータ真空室4x側に気密に貫通した状態で下ヒータ真空室4xに連通接続されている。そして、これらの供給管8a、8b、8bの上流側の端部が1つの合流管8cに接続されて合流している。さらに、この合流管8cの上流側の端部開口が大気中に開放されている。この合流管8cには当該合流管8cを開閉する第3開閉弁8dが設けられている。第3開閉弁8dは例えば電気的に制御可能な電磁弁からなるものである。なお本発明では、第3開閉弁8dは電磁弁からなるものに限定されるものではなく、その他に例えば手動で開閉操作可能なものであっても良い。
さらに、本実施形態のろう付け装置1は、上述した開閉弁7e、7f、7f、8d、真空ポンプ7d、各ヒータ5等の動作を制御する制御器9を具備している。この制御器9は、CPU、RAM、ROM等を有するコンピュータを備えている。コンピュータにはワーク20のろう付け予定部21を良好に且つ作業効率良くろう付けできるようにするための所定のプログラムがインストールされている。そして、この制御器9によって、真空手段7は、ろう材を溶融する際に真空ポンプ7dが動作した状態で第1開閉弁7eが開状態に及び第2上下両開閉弁7f、7fが閉状態になるように構成されるとともに、ガス供給手段8は、ろう材を溶融する際に真空ポンプ7dが動作した状態で第3開閉弁8dが閉状態になるように構成されている。
ワーク真空室形成容器2と上隔壁板3との相互シール部2c、3cの間には、相互シール部2c、3c間を気密にシールするための平面視略ロ字の環状のシール部材12が介在されている。このシール部材12は例えばゴム製ガスケット(パッキンを含む。)からなるものである。ワーク真空室形成容器2のシール部2cは、上述したようにワーク真空室形成容器2の周側壁2aの上端面からなり、このシール部2cには溝が平面視略ロ字状に延びて形成されている。そして、この溝にシール部材12が配置されている。上隔壁板3のシール部3cは、上述したように上隔壁板3の第1壁面3aの外周部からなる。
冷却手段10は、ろう材を溶融する際に少なくともシール部材12を冷却するものである。本実施形態では、冷却手段10はワーク真空室形成容器2に設けられている。すなわち、冷却手段10は、ワーク真空室形成容器2の周側壁2aの内部に設けられた断面略四角形状の冷却液流路10aを備えている。この冷却液流路10aには冷却液(例:冷却水)が流通されるものであり、冷却液流路10aが周側壁2aの周方向の略全周に亘って延びて設けられている。そして、冷却手段10は、ろう材を溶融する際に冷却液流路10aに冷却液(例:冷却水)が流通することにより、ワーク真空室形成容器2のシール部2cとシール部材12と上隔壁板3のシール部3cとが冷却されるように構成されている。
本実施形態のろう付け装置1において、ワーク真空室形成容器2の大きさは、ワーク20の大きさ等に応じて設定されるものであって限定されるものではなく、例えば、ワーク真空室形成容器2の幅は300〜800mm、その長さは300〜800mm、その高さは20〜100mmに設定される。また、ワーク真空室形成容器2の周側壁2aの肉厚についても限定されるものではない。しかしながら、ワーク真空室2xが真空状態になったときの周側壁2aの保形性を確実に確保するため、周側壁2aの肉厚は4mm以上であることが特に望ましい。一方、この肉厚の上限は一般的に10mmに設定される。
各ヒータ真空室形成容器4の大きさは、ヒータ5やワーク真空室形成容器2の大きさ等に応じて設定されるものであって限定されるものではなく、例えば、ヒータ真空室形成容器4の幅は300〜800mm、その長さは300〜800mm、その高さは100〜300mmに設定される。また、各ヒータ真空室形成容器4の対向壁4b及び周側壁4aの肉厚についても限定されるものではない。しかしながら、ヒータ真空室4xが真空状態になったときの対向壁4b及び周側壁4aの保形性を確実に確保するため、この肉厚は4mm以上であることが特に望ましい。一方、この肉厚の上限は一般的に10mmに設定される。
各隔壁板3の肉厚についても限定されるものではないが、その肉厚を厚くすると各隔壁板3の熱容量が増大してワーク20の昇温速度が遅くなるので、ワーク20の昇温速度の高速化を図る上でその肉厚はなるべく薄い方が望ましい。ここで、本実施形態のろう付け装置1では、ろう材が溶融される際にワーク真空室2x及び両ヒータ真空室4x、4xがそれぞれ真空にされることから、各隔壁板3の肉厚を厚くしなくても各真空室2x、4x、4xの真空状態を維持することができる。具体的にはその肉厚を0.1〜3mmに設定することができる。本実施形態ではその肉厚は約0.2mmに設定されており、その材質はSUS304である。
本実施形態のろう付け装置1において、上隔壁板3における上ヒータ5の加熱面5aとの接触部3eは、上隔壁板3の第2壁面3bの略中央部に位置している。これと同じく、下隔壁板3における下ヒータ5の加熱面5aとの接触部3eは、下隔壁板3の第2壁面3bの略中央部に位置している。
さらに、各隔壁板3のシール部3cよりも内側(即ち各隔壁板3の中央部側)であって対応するヒータ5の加熱面5aとの接触部3eの周囲には、吸収部3dが設けられている。
吸収部3dは、ろう材を溶融する際に発生する第2壁面3bと平行方向の隔壁板3の熱膨張を吸収するための部位である。具体的に示すと、吸収部3dは、隔壁板3におけるヒータ5の加熱面5aとの接触部3eの周囲部分がプレス加工によって局部的に複数条の断面波状に屈曲して形成されたものである。さらに、吸収部3dは、図2に示すように、隔壁板3におけるヒータ5の加熱面5aとの接触部3eを略四角形状に取り囲む態様にして且つ当該接触部3eを中心とした周方向に延びて設けられており、詳述すると接触部3eを中心とした周方向の全周に亘って連続的に延びて設けられている。
本実施形態では、吸収部3dは蛇腹状であり、即ち吸収部3dは蛇腹状に伸縮変形可能なものである。吸収部3dの断面の屈曲形状を詳述すると略正弦波状であり、更に詳述すると、吸収部3dの各波部の第1壁面3a側半部及び第2壁面3b側半部は例えばそれぞれ略半円弧状に形成されており、その曲率半径は例えばそれぞれ約1.5mmに設定されている。なお本発明では、吸収部3dの断面の屈曲形状は略正弦波状であることに限定されるものではなく、その他に例えば略三角形状(鋸波状を含む)であっても良い。
次に、本実施形態のろう付け装置1を用いたろう付け方法について以下に説明する。
まず、複数個の被ろう付け部材23a、23a、23aが所定形状に仮組みされたワーク20を準備する。その仮組み方法としては、例えば、複数個の被ろう付け部材23a、23a、23bを所定形状に組み付けこれらが不慮に分解しないように針金等で結束する方法が挙げられる。ワーク20はろう付けのための前処理(例:脱脂、アルカリ洗浄処理、酸化膜除去処理)が常法に従って予め施されている。ここで、ワーク20のろう材(ろう材層22)やろう付け予定部21にはフラックスを供給しておく必要はない。
また、本実施形態のろう付け装置1を準備する。この工程を「ろう付け装置準備工程」という。
次いで、図4に示すように、ろう付け装置1の上ヒータ真空室形成容器4を上方向に移動させて上隔壁板3をワーク真空室形成容器2(詳述するとその周側壁2a)に対して分離させる。これにより、ワーク真空室形成容器2の上面側に開口2eが形成される。そして、この開口2eを通じてワーク20をワーク真空室形成容器2の内側即ちワーク真空室2xに入れて、これを下隔壁板3の第1壁面3aの略中央部上にワーク真空室形成容器2の周側壁2aの内面から離間して配置(載置)する。その後、上ヒータ真空室形成容器4を下方向に移動させることにより、上隔壁板3のシール部3cをワーク真空室形成容器2のシール部2cにシール部材12を介して密着方向に押し付ける。これにより、ワーク真空室形成容器2の開口2eを上隔壁板3で気密に閉塞する。この工程を「ワーク配置工程」という。この状態では、図1に示すように、ワーク20はワーク真空室2xにおいてワーク真空室形成容器2の周側壁2aの内面には接触しておらず、上隔壁板3の第1壁面3aと下隔壁板3の第1壁面3aとにだけ接触している。したがって、ワーク真空室2xにおけるワーク真空室形成容器2と各隔壁板3との相互シール部2c、3cと、ワーク20との間には、ワーク20を中心とした環状の空洞2dが形成されている。
また、ワーク配置工程において、ワーク真空室2x及び上下両ヒータ真空室4x、4xにはそれぞれ空気が充填されており、更にその圧力はいずれも大気圧(約1気圧)である。さらに、第1開閉弁7e、第2上下両開閉弁7f、7f及び第3開閉弁8dはいずれも閉状態又は開状態になっている。また、各ヒータ5の加熱面5aは、例えば、対応する隔壁板3の第2壁面3bに対して離間して配置されている。
また、ワーク真空室形成容器2の冷却液流路10aに室温等に温度調節された冷却液を流通させ、これにより、ワーク真空室形成容器2のシール部2c、シール部材12及び上隔壁板3のシール部3cを冷却する。その冷却温度は100℃以下であることが、シール部材12の熱劣化を確実に防止し得て相互シール部2c、3cのシール状態を確実に良好に維持できる点で特に望ましい。
次いで、第1開閉弁7e及び第2上下両開閉弁7f、7fを同時に開状態にするとともに第3開閉弁8dを閉状態にし、更に真空ポンプ7dを動作させる。これにより、ワーク真空室2x及び上下両ヒータ真空室4x、4xを同時に真空引きしてこれらの真空室2x、4x、4xの真空度(圧力)を互いに同一の所定の真空度にする。この際、第1開閉弁7e及び第2両開閉弁7f、7fは上述したようにいずれも開状態になっており且つ第3開閉弁8dは閉状態になっているので、これらの真空室2x、4x、4xを確実に真空引きすることができる。
次いで、各ヒータ5の加熱面5aの温度を所定のろう付け温度まで上昇させる。このろう付け温度は580〜610℃の範囲であることが、ワーク20のろう付け予定部21を確実に良好にろう付けできる点で特に望ましい。
ワーク真空室2xの真空度及び両ヒータ真空室4x、4xの真空度がそれぞれ所定の真空度に到達したら、第2両開閉弁2f、2fをそれぞれ閉状態にし、一方、第1開閉弁7eは閉状態にしないでそのまま開状態にしておく。これにより、これらの真空室2x、4x、4xのうちワーク真空室2xだけを真空ポンプ7dによって真空引きしている状態を維持する。そして、各ヒータ移動機構6によって各ヒータ5の加熱面5aを対応する隔壁板3の第2壁面3bに対して接近方向に移動させ、これにより、図1に示すように各ヒータ5の加熱面5aを対応する隔壁板3を介してワーク20に両加熱面5a、5a間でワーク20を挟むように同時に押し付ける。その結果、各ヒータ5の加熱面5aが対応する隔壁板3の第2壁面3bに面接触状態に圧接し且つ各隔壁板3の第1壁面3aがワーク20に面接触状態に圧接する。そしてこの状態で、各ヒータ5の熱が各ヒータ5から対応する隔壁板3を介してワーク20に伝導伝熱により同時に伝えられるとともに、ワーク20のろう付け予定部21が密着方向に加圧される。これにより、ワーク20の温度が室温から上述した所定ろう付け温度に上昇してろう材(ろう材層22)が加熱溶融される。この工程を「溶融工程」という。
この溶融工程の際(即ちろう材を溶融する際)において、ワーク真空室2xの真空度P1は1×10−3〜1×10−4Paの範囲に設定されることがワーク20のろう付け予定部21を確実に良好にろう付けできる点で特に望ましい。また、各ヒータ真空室4xの真空度P2はワーク真空室2xの真空度P1と略等しく設定されている。ただし本発明では、必ずしもこのように設定されることに限定されるものではなく、ワーク真空室2xの真空度P1と各ヒータ真空室4xの真空度P2との圧力差ΔP(=|P1−P2|)により各隔壁板3が塑性的に変形しない範囲内において、各ヒータ真空室4xの真空度P2がワーク真空室2xの真空度P1よりも低真空度であっても良い。この圧力差ΔPは特に0〜0.1Paであることが望ましい。
また、この溶融工程の際には、各隔壁板3は、対応するヒータ5の熱で加熱されて第2壁面3bと平行な方向に熱膨張するが、この熱膨張は吸収部3dによって吸収される。
ワーク20の温度を所定ろう付け温度に所定時間(例えば0〜10min)保持したら、その後、各ヒータ5の温度を低下させる。これによりろう材の加熱を停止する。なお、ろう材の加熱の停止は、各ヒータ移動機構6によって各ヒータ5の加熱面5aを対応する隔壁板3の第2壁面3bに対して離間させることにより、行っても良い。
ワーク20の温度が所定の温度(例えば550℃)以下に低下することでろう材が固化してワーク20のろう付け予定部21がろう材でろう付けされたら、第1開閉弁7eを閉状態にするとともに第3開閉弁8dを開状態にする。これにより、ワーク真空室2x及び両ヒータ真空室4x、4xに空気を同時に供給してワーク真空室2xの圧力及び両ヒータ真空室4xの圧力をそれぞれ同時に大気圧(即ち約1気圧)にする。
ワーク20の温度が十分に低下したら、上ヒータ真空室形成容器4を上方向に移動させることにより、上隔壁板3をワーク真空室形成容器2に対して分離させる。これにより、ワーク真空室形成容器2の上面側に開口2eが形成される。この開口2eを通じてワーク20をワーク真空室2xから取り出す。これにより、所望するろう付け製品としての熱交換器が得られる。その後、第3開閉弁8dを閉状態にする。
ここで、上述した一連の工程における、第1開閉弁7e、第2各開閉弁7f、第3開閉弁8d、真空ポンプ7d及び各ヒータ5の動作についての制御は、いずれも制御器9によって自動的に行われる。
本実施形態のろう付け方法及びろう付け装置1には次の利点がある。
溶融工程の際(即ちろう材を溶融する際)に、熱源としてのヒータ5の熱を伝導伝熱によりワーク20に伝えるので、熱源の熱を放射伝熱や対流伝熱によりワーク20に伝える場合に比べて、ワーク20の昇温速度の高速化を図ることができ、その結果、ろう付けに要する時間(即ちろう付け時間)の短縮化を図ることができるし、更に、ろう付けに要する熱量の低減化を図ることができる。
さらに、溶融工程の際にワーク真空室2x及び両ヒータ真空室4x、4xをそれぞれ真空にするから、各隔壁板3の肉厚を厚くしなくても各真空室2x、4x、4xの真空状態を維持することができる。したがって、各隔壁板3の肉厚を薄くすることができる。これにより、各隔壁板3の熱容量を小さくすることができ、その結果、ワーク20の昇温速度の更なる高速化を図ることができる。
もとより、ワーク真空室2xを真空にした状態でろう材が溶融されるので、必ずしもフラックスをワーク20のろう付け予定部21やろう材(ろう材層22)に供給しなくてもろう付け予定部21を良好にろう付けすることができる。すなわち、本実施形態のろう付け方法及びろう付け装置1は、ワーク20のろう付け予定部21が真空雰囲気下のもとでろう付けされる点では真空ろう付け法及び真空ろう付け装置の範疇に入る。
さらに、ワーク真空室形成容器2は、上隔壁板3がワーク真空室形成容器2に対して分離されることでワーク真空室形成容器2に形成される開口2eを、ワーク真空室形成容器2におけるワーク20の出入れ口とするものであるから、ワーク20をワーク真空室2xに容易に入れることができるし、ワーク20をワーク真空室2xから容易に取り出すことができる。
また、ろう付け装置1は各ヒータ移動機構6を具備しているので、溶融工程ではない際(即ちろう材を溶融しない際)には各ヒータ5の加熱面5aを対応する隔壁板3の第2壁面3bに対して離すことができるし、溶融工程の際(即ちろう材を溶融する際)には各ヒータ5の加熱面5aを対応する隔壁板3の第2壁面3bに接触させることができるし、更には各ヒータ5の加熱面5aを対応する隔壁板3を介してワーク20に押し付けることができる。そのため、各ヒータ5の加熱面5aを対応する隔壁板3の第2壁面3bに密着させることができるし、各隔壁板3の第1壁面3aをワーク20に密着させることができる。これにより、各ヒータ5の熱を各ヒータ5から対応する隔壁板3を介してワーク20に確実に伝えることができる。
また、ワーク真空室形成容器2と各隔壁板3との相互シール部2c、3cと、ワーク20との間に空洞2dが形成されるようにワーク20がワーク真空室2xに配置されるので、溶融工程の際にワーク20の熱がシール部材12に伝わりにくくなり、これによりシール部材12の熱劣化を確実に防止することができる。
さらに、各ヒータ5はその加熱面5aを露出させた状態で断熱材5bで覆われているので、各ヒータ5の加熱面5aを対応する隔壁板3の第2壁面3bに接触させる際に断熱材5bが干渉するのを防止することができ、これにより各ヒータ5の加熱面5aを対応する隔壁板3の第2壁面3bに確実に直接的に接触させることができるし、更に、各ヒータ5の熱が加熱面5a以外の面から放射伝熱により各ヒータ真空室形成容器4に伝えられて当該容器4の温度が上昇する不具合を極力抑えることができる。
また、ろう付け装置1は真空手段7を具備しているので、ワーク真空室2x及び両ヒータ真空室4xをそれぞれ確実に真空にすることができる。
さらに、この真空手段7は、ワーク真空室2x及び両ヒータ真空室4x、4xを真空にする際に真空ポンプ7dが動作した状態で第1開閉弁7e及び第2両開閉弁7f、7fが同時に開状態になるように構成されているので、ワーク真空室2x及び両ヒータ真空室4x、4xを同時に真空引きすることができる。これにより、これらの真空室2x、4x、4xの真空度が相異することにより発生する隔壁板3の塑性変形を防止することができ、そのため、隔壁板3を繰り返し使用することができる。
しかも、真空手段7は、溶融工程の際に真空ポンプ7dが動作した状態で第1開閉弁7eが開状態に及び第2両開閉弁7f、7fが閉状態になるように構成されているので、これらの真空室2x、4x、4xのうちワーク真空室2xだけを真空ポンプ7dによって真空引きしながらろう材を溶融することができる。これにより、真空ポンプ7dによるワーク真空室2xのガスの真空引き速度が増大し、その結果、溶融工程の際にワーク20から発生するガスをワーク真空室2xから迅速に排出することができる。したがって、このガスによるろう付け予定部21への悪影響を確実に防止することができ、その結果、ワーク20のろう付け予定部21を確実に良好にろう付けすることができる。
また、各隔壁板3における対応するヒータ5の加熱面5aとの接触部3eの周囲に、溶融工程の際(即ちろう材を溶融する際)に発生する第2壁面3bと平行方向の隔壁板3の熱膨張を吸収する吸収部3dが設けられているので、次の利点がある。
すなわち、溶融工程の際には、各隔壁板3は対応するヒータ5の熱で加熱されることで第2壁面3bと平行な方向に熱膨張するが、この熱膨張は吸収部3dが収縮変形することにより吸収される。これにより、各隔壁板3の熱膨張による変形を防止することができる。そのため、溶融工程の際にヒータ5の加熱面5aと隔壁板3の第2壁面3bとの接触状態及び隔壁板3の第1壁面3aとワーク20との接触状態を良好に維持することができる。一方、溶融工程が終了して(即ちろう材を溶融することが終了して)各隔壁板3の温度がろう付け温度から低下することで各隔壁板3は第2壁面3bと平行な方向に熱収縮するが、この熱収縮は吸収部3dが第2壁面3bと平行な方向に伸張変形することにより吸収(緩和)される。その結果、各隔壁板3の吸収部3dは元の形状に戻り、各隔壁板3の全体形状及び寸法は溶融工程の前後で変化しない。したがって、各隔壁板3を確実に繰り返し使用することができる。
さらに、ワーク真空室形成容器2と各隔壁板3の相互シール部2c、3c間にシール部材12が介在されており、更に、各隔壁板3のシール部3cは、溶融工程の際にワーク真空室形成容器2のシール部2cにシール部材12を介して密着する方向に押し付けられるものであるから、溶融工程の際にワーク真空室2xの真空状態を確実に維持することができる。
しかも、シール部材12は溶融工程の際に冷却されるものであるから、シール部材12の熱劣化を防止することができ、その結果、相互シール部2c、3cのシール状態を良好に維持することができる。さらに、各隔壁板3のシール部3cは、上述のように溶融工程の際にシール部材12が冷却される上、更にワーク真空室形成容器2のシール部2cに押し付けられることで固定されているから、隔壁板3のシール部3cの温度と隔壁板3におけるヒータ5の加熱面5aとの接触部3eの温度との間の大きな温度差によって隔壁板3には大きな熱膨張が生じる。しかしながら、吸収部3dは、隔壁板3のシール部3cよりも内側であってヒータ5の加熱面5aとの接触部3eの周囲に設けられているので、このような大きな熱膨張であってもこれを吸収部3dによって確実に吸収することができる。
しかも、吸収部3dは、隔壁板3の一部が断面波状に屈曲して形成されたものであるから、熱膨張を確実に吸収することができるし、吸収部3dをプレス加工等によって容易に形成することができる。
また、各ヒータ5の熱を各ヒータ5から対応する隔壁板3を介してワーク20に伝導伝熱により伝えることにより、ろう材を溶融することから、ヒータ5の数が1つである場合に比べて、ワーク20の昇温速度の更なる高速化を図ることができ、その結果、ろう付けに要する時間の更なる短縮化を図ることができる。
さらに、各ヒータ5の加熱面5aは、対応する隔壁板3を介してワーク20に両加熱面5a、5a間でワーク20を挟むように押し付けられるものであるから、溶融工程の際にワーク20のろう付け予定部21にろう付け荷重を加えることができ、これによりワーク20のろう付け予定部21を更に良好にろう付けすることができる。
さらに、本実施形態のろう付け装置1では、各隔壁板3における対応するヒータ5の加熱面5aとの接触部3eの周囲に、断面波状の吸収部3dが形成されているので、ワーク20がワーク真空室2xに配置された状態においてもし各隔壁板3の第1壁面3aとワーク20との間に隙間がある場合でも、各ヒータ5の加熱面5aを対応する隔壁板3を介してワーク20に押し付けることによって隔壁板3の吸収部3dが伸張変形して隔壁板3の第1壁面3aをワーク20に密着させることができる。これにより、ワーク20の大きさに厳格に対応したワーク真空室2xを形成するワーク真空室形成容器2を用いる必要がなくなり、そのためワーク真空室形成容器2の適用範囲を増大させることができる。
以上で本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で様々に変更可能である。
例えば、上記実施形態では、ろう付け装置1は、上ヒータ5と下ヒータ5を具備しているが、本発明ではろう付け装置1はこれに限定されるものではなく、その他に例えば両ヒータ5、5のうちいずれか一方だけを具備していても良い。もしろう付け装置1が上ヒータ5だけを具備している場合には、下ヒータ5の代わりに下ヒータ5の配置位置にワーク20を下隔壁板3を介して下側から受ける受け部材が配置されるのが望ましい。こうすることにより、溶融工程の際に上ヒータ5の加熱面5aと受け部材との間でワーク20を挟むように上ヒータ5の加熱面5aを上隔壁板3を介してワーク20に押し付けることができる。もしろう付け装置1が下ヒータ5だけを具備している場合には、上ヒータ5の代わりに上ヒータ5の配置位置にワーク20を上隔壁板3を介して上側から受ける受け部材が配置されるのが望ましい。こうすることにより、溶融工程の際に下ヒータ5の加熱面5aと受け部材との間でワーク20を挟むように下ヒータ5の加熱面5aを下隔壁板3を介してワーク20に押し付けることができる。また、いずれの場合でも、受け部材は、セラミック(例:アルミナ)製や、ろう材を溶融する際の熱に耐えうる金属製であることが望ましく、特にセラミック等の断熱性を有するものであることが望ましく、こうすることにより、溶融工程の際に受け部材から流出する熱損失量を減少させることができる。
また、上記実施形態では各ヒータ5の加熱面5aを対応する隔壁板3を介してワーク20に押し付ける前に各ヒータ5の加熱面5aの温度を予め所定のろう付け温度に調整しているが、本発明ではその他に例えば、各ヒータ5の加熱面5aを対応する隔壁板3を介してワーク20に押し付けた後で各ヒータ5の加熱面5aの温度を所定のろう付け温度に調整しても良い。
また、上記実施形態では、下隔壁板3はワーク真空室形成容器2に分離不能に接合固着されているが、本発明ではその他に例えば、下隔壁板3が上隔壁板3のようにワーク真空室形成容器2に対して分離できるように構成されていても良いし、両隔壁板3、3がそれぞれワーク真空室形成容器2に対して分離できるように構成されていても良い。
また、本実施形態では、各隔壁板3は対応するヒータ真空室形成容器4に分離不能に接合固着されているが、本発明ではその他に例えば、両隔壁板3、3のうち少なくとも一方が対応するヒータ真空室形成容器4に対して分離できるように構成されていても良い。
さらに、本発明に係るろう付け方法及びろう付け装置は、ヒータ真空室形成容器4(即ちヒータ真空室4x、ヒータ5)の数及び隔壁板3の数が例えば1つだけである場合を排除するものではない。
また、本発明では、ワーク真空室形成容器2及び各ヒータ真空室形成容器4の形状は限定されるものではなく、その他に例えば、本実施形態のように四角形状などの角形状であっても良いし、円形状や楕円形状であって良い。