以下、本発明の実施の形態について説明する。
[全体構成]
図1に示すように、本実施形態に係る制御装置を備えた多段自動変速機付車両は、駆動源としてのエンジン1と、巻掛け伝動機構92を介してエンジン1のクランクシャフト2に連結された出力軸91を有するモータジェネレータ90とを備えている。
エンジン1のクランクシャフト2の一端部は、トルクコンバータ3を介して自動変速機4に連結されており、エンジン1の出力は自動変速機4により変速されて駆動輪側に伝達される。
巻掛け伝動機構92は、エンジン1のクランクシャフト2の他端部に設けられたプーリ94と、モータジェネレータ90の出力軸91の先端に設けられたプーリ96と、これらのプーリ94,96間に巻き掛けられたベルト98とを備えている。この巻掛け伝動機構92を介してクランクシャフト2と出力軸91とが連結されていることにより、クランクシャフト2と出力軸91は常時共に回転する。
なお、巻掛け伝動機構92のベルト98は、上述した2つのプーリ94,96だけでなく、例えば、空調用コンプレッサ、エンジン冷却用のウォータポンプ、ブレーキ補助用のバキュームポンプ等、エンジン1及びモータジェネレータ90以外の補機の回転軸に設けられたプーリ(図示せず)や、ベルト98の張力を調整するためのアイドルプーリ(図示せず)にも巻き掛けられるようにしてもよい。
モータジェネレータ90が電動機として駆動されると、モータジェネレータ90の動力は、巻掛け伝動機構92を介してエンジン1のクランクシャフト2に伝達される。そのため、モータジェネレータ90によって停止中のエンジン1のクランクシャフト2を回転駆動したり、駆動中のエンジン1のクランクシャフト2にモータジェネレータ90の動力が加わることで、エンジン1から駆動輪側へ出力されるトルクを増大させるトルクアシストを行ったりすることができる。
モータジェネレータ90の駆動は、例えば、停車時アイドルストップ制御中にエンジン1を再始動するとき、及び、車両の発進時や加速時にトルクアシストを行うときなどに行われるが、本実施形態では、後述するように、減速時アイドルストップ制御中にも必要に応じてモータジェネレータ90が駆動される。
一方、エンジン1の駆動中においてモータジェネレータ90の駆動が停止されているときには、エンジン1の動力によってモータジェネレータ90のロータが回転駆動されることで、モータジェネレータ90が発電機として作動する。特に、車両減速時には、モータジェネレータ90の発電によって、駆動輪側からクランクシャフト2を介してモータジェネレータ90に伝達された運動エネルギを電気エネルギに変換するエネルギ回生が行われる。
[トルクコンバータ及び自動変速機の構成]
図2の骨子図を参照しながら、トルクコンバータ3及び自動変速機4の構成について説明する。
トルクコンバータ3は、クランクシャフト2に連結されたケース3aと該ケース3a内に固設されたポンプ3bと、該ポンプ3bに対向配置されて該ポンプ3bにより作動油を介して駆動されるタービン3cと、該ポンプ3bとタービン3cとの間に介設され、かつ、変速機ケース5にワンウェイクラッチ3dを介して支持されてトルク増大作用を行うステータ3eと、ケース3aとタービン3cとの間に設けられ、該ケース3aを介してクランクシャフト2とタービン3cとを直結するロックアップクラッチ3fとを備えている。そして、タービン3cの回転は、入力軸7を介して自動変速機4に伝達されるようになっている。
自動変速機4とトルクコンバータ3との間には、該トルクコンバータ3を介してエンジン1により駆動される機械式オイルポンプ(以下、「機械ポンプ」という)6が配置されている。機械ポンプ6は、クランクシャフト2の回転によって駆動されるように設けられており、エンジン1の駆動中において、該機械ポンプ6によって、自動変速機4を制御するための油圧回路に油圧が供給される。
自動変速機4の入力軸7上には、エンジン1側(トルクコンバータ3側)から、第1、第2、第3プラネタリギヤセット(以下、「第1、第2、第3ギヤセット」という)10,20,30が配置されている。
また、入力軸7上には、ギヤセット10,20,30で構成される動力伝達経路を切り換えるための摩擦締結要素として、入力軸7からの動力をギヤセット10,20,30側へ選択的に伝達するロークラッチ40及びハイクラッチ50が配置されている。さらに、入力軸7上には、各ギヤセット10,20,30の所定の回転要素を固定するLR(ローリバース)ブレーキ60、26ブレーキ70、及び、R35ブレーキ80が、エンジン1側からこの順序で配置されている。
前記第1〜第3ギヤセット10,20,30のうち、第1ギヤセット10と第2ギヤセット20はシングルピニオン型のプラネタリギヤセットであって、サンギヤ11,21と、これらのサンギヤ11,21に噛み合った各複数のピニオン12,22と、これらのピニオン12,22をそれぞれ支持するキャリヤ13,23と、ピニオン12,22に噛み合ったリングギヤ14,24とで構成されている。
また、第3ギヤセット30はダブルピニオン型のプラネタリギヤセットであって、サンギヤ31と、該サンギヤ31に噛み合った複数の第1ピニオン32aと、該第1ピニオン32aに噛み合った第2ピニオン32bと、これらのピニオン32a,32bを支持するキャリヤ33と、第2ピニオン32bに噛み合ったリングギヤ34とで構成されている。
そして、第3ギヤセット30のサンギヤ31には入力軸7が直接連結されている。第1ギヤセット10のサンギヤ11と第2ギヤセット20のサンギヤ21とは、互いに結合されて、ロークラッチ40の出力部材41に連結されている。第2ギヤセット20のキャリヤ23にはハイクラッチ50の出力部材51が連結されている。
また、第1ギヤセット10のリングギヤ14と第2ギヤセット20のキャリヤ23とは、互いに結合されており、LRブレーキ60を介して変速機ケース5に断接可能に連結されている。第2ギヤセット20のリングギヤ24と第3ギヤセット30のリングギヤ34とは、互いに結合されており、26ブレーキ70を介して変速機ケース5に断接可能に連結されている。第3ギヤセット30のキャリヤ33は、R35ブレーキ80を介して変速機ケース5に断接可能に連結されている。そして、第1ギヤセット10のキャリヤ13には、自動変速機4の出力を駆動輪側へ出力する出力ギヤ8が連結されている。
以上の構成により、自動変速機4は、上記の摩擦締結要素(ロークラッチ40、ハイクラッチ50、LRブレーキ60、26ブレーキ70及びR35ブレーキ80)の締結状態の組み合わせにより、図3の締結表に示すように、Dレンジでの1〜6速と、Rレンジでの後退速とが形成されるようになっている。
[LRブレーキの構成]
図4(a)〜図4(c)を参照しながら、LRブレーキ60の構成について説明する。なお、図4(a)は解放状態、図4(b)は後述する締結準備状態、図4(c)は締結状態をそれぞれ示すLRブレーキ60の断面図である。
LRブレーキ60は、締結時の応答性向上のためのクラッチクリアランス調整機能を有する複動式の油圧アクチュエータ61を備えている。油圧アクチュエータ61は、変速機ケース5に設けられたシリンダ5a内に軸方向に移動可能に嵌合されたクリアランス調整用ピストン62と、該クリアランス調整用ピストン62の内側に設けられたシリンダ62a内に該クリアランス調整用ピストン62に対して軸方向に相対移動可能に嵌合された締結用ピストン63とを備えている。
変速機ケース5のシリンダ5a内におけるクリアランス調整用ピストン62の背部はクリアランス調整用油圧室(以下、「クリアランス室」という)64とされ、クリアランス調整用ピストン62のシリンダ62a内における締結用ピストン63の背部は締結用油圧室(以下、「締結室」という)65とされている。
クリアランス室64及び締結室65に油圧を供給すれば、クリアランス調整用ピストン62がスプリング66の付勢力に抗してストッパ67に当接するまで図の左側にストロークすると共に、該クリアランス調整用ピストン62のシリンダ62a内で締結用ピストン63も図の左側にストロークして、変速機ケース5と被制動回転部材(図示せず)とに交互に係合された複数の摩擦板68を押圧し、変速機ケース5に固定されたリテーナ69と締結用ピストン63との間にこれらの摩擦板68が挟み込まれて相対回転不能となることで、LRブレーキ60が締結されることになる。
図4(c)に示す締結状態で締結室65から油圧を排出すると、図4(b)に示すように、締結用ピストン63が摩擦板68に接したまま、該締結用ピストン63による押圧力が解除されて、LRブレーキ60が解放される。
さらに、図4(b)に示す状態でクリアランス室64からも油圧を排出すると、図4(a)に示すように、クリアランス調整用ピストン62がスプリング66の付勢力により右側に移動することになる。このとき、シール部材の摩擦等により、締結用ピストン63は、クリアランス調整用ピストン62との位置関係を保持したまま、該クリアランス調整用ピストン62と共に右側に移動する。
なお、図4(a)では、便宜上、最も右側の摩擦板68と締結用ピストン63との間に、LRブレーキ60のクリアランスが集中するように図示されているが、実際には、隣接する摩擦板68間や摩擦板68とリテーナ69との間にもクリアランスは分散される。
したがって、次に、LRブレーキ60を締結するときに、まずクリアランス室64に油圧を供給すれば、クリアランス調整用ピストン62及び締結用ピストン63が同じ位置関係を保持して、左側にストロークし、図4(b)に示す状態と同じ状態となる。このとき、締結用ピストン63は、摩擦板68を押圧することなく該摩擦板68に接した状態もしくはほぼ接した状態、即ち、クラッチクリアランスが小さな締結準備状態(小クリアランス状態)となっている。
そして、図4(b)に示す締結準備状態で締結室65に油圧を供給すれば、締結用ピストン63は既に締結のためのストロークがほぼ終了しているから、油圧の供給とほぼ同時に摩擦板68を押圧し、LRブレーキ60が応答性良く締結されることになる。
以上のように、LRブレーキ60としてタンデムピストン式のブレーキを採用することで、LRブレーキ60の解放状態では大クリアランス状態となることで、潤滑油の粘性による回転抵抗が抑制され、締結時には、小クリアランス状態で締結用ピストン63が作動することで、緻密で応答性の良い締結制御が可能となる。また、LRブレーキ60は、発進時に締結されるため(図3参照)、発進時の応答性向上及びショックの抑制を図ることができる。
[制御システム]
図1に戻って、エンジン1、トルクコンバータ3、自動変速機4及びモータジェネレータ90の各動作を制御する制御システムについて説明する。
これらの動作を制御する制御装置100は、例えば、エンジン1の燃料供給装置88を制御するエンジン用コントロールユニット、自動変速機4の変速制御及びトルクコンバータ3のロックアップクラッチ3fの制御(ロックアップ制御)を行う自動変速機用コントロールユニット、及び、モータジェネレータ90の電動機としての動作を制御するモータジェネレータ用コントロールユニットで構成される。
制御装置100には、車両の速度を検出する車速センサ101、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ102、ブレーキペダルの踏み込みを検出するブレーキスイッチ103、運転者によって選択されている自動変速機4のレンジを検出するレンジセンサ104、エンジン1の冷却水の温度を検出するエンジン水温センサ105、及び、エンジン1の排気通路に設置された触媒装置の温度を検出する触媒温度センサ106からの信号が入力される。
なお、これら以外にも、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転数センサ、トルクコンバータ3のタービン3cの回転数を検出するタービン回転数センサ、エンジン1の始動させるために運転者によって操作されるエンジンスイッチ、自動変速機4及びトルクコンバータ3の潤滑及び油圧制御に用いられるオイルの温度を検出する油温センサ、自動変速機4及びトルクコンバータ3の油圧制御に用いられる油圧回路の異常を検出する異常検出センサ(例えば油圧スイッチ)等の各種機器からの信号が制御装置100に入力されるようにしてもよい。
制御装置100は、各種入力信号に基づき、エンジン1の燃料供給装置88に制御信号を出力して、エンジン1の燃焼を制御する。例えば、燃料供給装置88が吸気量制御バルブを備える場合、該バルブの開度が制御されることで、吸気量と燃料噴射量とが調整され、これにより、エンジン1の燃焼が制御される。
燃料供給装置88は、所定車速よりも高車速での車両走行中にアクセルペダルが離されたとき、所定車速以下での減速走行中に減速時アイドルストップ制御が行われるとき、及び、停車時アイドルストップ制御が行われるとき、例えば吸気量制御バルブが閉じられることで燃料供給が停止(燃料カット)されるように制御され、これにより、エンジン1の燃焼が停止する。このように、駆動力が不要な車両走行中又は停車中においてエンジン1の燃焼停止が実行されることで、燃料の浪費が抑制され、燃費性能の向上が図られる。アイドルストップ制御の具体的な制御動作については後に説明する。
また、制御装置100は、アイドルストップ状態からエンジン1を再始動させるとき、エンジン1を再始動させるスタータモータとしてモータジェネレータ90を駆動させる。さらに、減速時アイドルストップ制御が行われているとき、モータジェネレータ90は、必要に応じてエンジン1のクランクシャフト2を回転駆動させるように駆動される。減速時アイドルストップ制御中におけるモータジェネレータ90の具体的な制御動作の説明は、後述するアイドルストップ制御の制御動作の説明の中で行う。
またさらに、制御装置100は、減速時及び停車時アイドルストップ制御が行われているとき、必要に応じて、電動式オイルポンプ(以下、「電動ポンプ」という)84を駆動させる。電動ポンプ84は、変速制御用の油圧回路において、1速を形成するロークラッチ40及びLRブレーキ60に油圧を供給できるように設けられている。これにより、エンジン1の停止中又はエンジン回転数が低いことにより機械ポンプ6の吐出圧が十分に立ち上がらない状況であっても、電動ポンプ84を駆動することで、1速が形成されるようにロークラッチ40及びLRブレーキ60に油圧を供給することが可能となっている。アイドルストップ制御中における電動ポンプ84の具体的な制御動作の説明は、後述するアイドルストップ制御の制御動作の説明の中で行う。
また、制御装置100は、各種入力信号に基づき、自動変速機4の摩擦締結要素40,50,60,70,80及びロックアップクラッチ3fへの油圧供給を制御するソレノイドバルブ等の油圧制御用アクチュエータ82に制御信号を出力する。油圧制御用アクチュエータ82によって、自動変速機4の各摩擦締結要素40,50,60,70,80及びロックアップクラッチ3fへの油圧供給が制御されることで、選択されたレンジや車両の走行状態に応じて、図3の締結表に従った変速制御及びロックアップ制御が行われる。
変速制御は、車両の運転状態に対応する変速段を形成するように、例えば、車速とアクセル開度に基づいて定められた変速線図(図示せず)、及びその他の種々の条件に従って行われる。その他の条件としては、例えば、冷間時か否か、変速制御用油圧回路の異常の有無又はその診断の実行の有無等が挙げられる。したがって、基本的には、車速とアクセル開度の変化に応じて、シフトアップ又はシフトダウンが行われるが、冷間時に高変速段へのシフトアップが規制されたり、油圧回路の異常時に該異常に関連する変速段への変速が規制されたり、油圧回路の異常診断中の変速が規制されたりすることがある。
変速制御に用いられる油圧は、上述のように電動ポンプ84によって供給される場合もあるが、基本的には、エンジン1のクランクシャフト2と共に回転する上記機械ポンプ6によって供給される。自動変速機4の摩擦締結要素40,50,60,70,80の動力伝達に必要な油圧は、摩擦締結要素毎に異なるとともに、同じ摩擦締結要素でも変速段毎に異なることから、変速段毎に締結又は締結準備のために各摩擦締結要素に供給すべき油圧は異なるが、いずれの変速段を形成するときも、エンジン1がアイドル回転数以上の回転数で回転している限り、機械ポンプ6によって必要な油圧が吐出される。
ロックアップ制御は、例えば、車速及びその他の種々の条件に従って行われる。その他の条件としては、例えば、冷間時か否か、ロックアップ制御用油圧回路の異常の有無又はその診断の実行の有無等が挙げられる。したがって、基本的に、ロックアップクラッチ3fは所定車速未満では解放され、所定車速以上で作動(締結又はスリップ)するように制御されるが、冷間時に作動が規制されたり、油圧回路の異常時又は異常診断中に作動が規制されたりすることがある。ロックアップ制御に用いられる油圧は、エンジン1の回転によって駆動される上記機械ポンプ6によって供給される。
[アイドルストップ制御]
本実施形態では、減速が要求された状態(例えば、ブレーキペダルが踏み込まれた状態)で所定車速以下になるまで減速され、所定の燃焼停止条件が成立したときに、減速時アイドルストップ制御が実行される。減速時アイドルストップ制御中には、エンジン1の再始動条件が成立しない限り、エンジン1の燃焼停止状態が維持される。
また、減速時アイドルストップ制御中に停車したとき、又は、アイドルストップが行われていない停車状態で車両の発進が要求されておらず(例えば、ブレーキペダルが踏み込まれており)所定の燃焼停止条件が成立したとき、停車時アイドルストップ制御が実行される。停車時アイドルストップ制御中においても、エンジン1の再始動条件が成立しない限り、エンジン1の燃焼停止状態が維持される。
燃焼停止条件は複数の条件を有し、複数の条件の全てが成立したときに初めて燃焼停止条件が成立したものとされ、1つでも成立していない条件があればエンジン1の燃焼停止は実行されない。
燃焼停止条件の具体例としては、冷間時でないこと(具体的には、例えば、エンジン1の冷却水の温度が所定温度以上であること、及び/又は、エンジン1の排気通路に設置された触媒装置の温度が所定温度以上であること)、冷間時であるか否かを検出するためのセンサ(例えば、エンジン水温センサ105及び/又は触媒温度センサ106)が正常に作動していること、エンジン1がディーゼルエンジンである場合においてDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)の再生が実行されていないこと、バッテリの残容量が所定量以上であること等が挙げられる。
エンジン1の再始動条件の具体例としては、例えば、アイドルストップ状態において、ブレーキペダルが離されること、及び、燃焼停止条件が成立しなくなることが挙げられ、これらのうちいずれか1つの条件が成立したときに、アイドルストップが解除されて、エンジン1の燃焼が再開される。
[アイドルストップ制御の制御動作]
図5に示すフローチャートを参照しながら、制御装置100によるアイドルストップ制御の制御動作の一例について説明する。
図5に示す制御動作は、所定車速以下での車両走行中又は停車中に繰り返し実行される。なお、図5に示す制御動作の実行中において、上述した変速制御及びロックアップ制御は、制御装置100によって並行して行われる。また、前記所定車速よりも高車速での車両走行中の燃料カットに関する制御は、図5に示す制御動作とは別の制御動作によって行われる。したがって、図5に示す制御動作が開始されるとき、そのような高車速での車両走行中に行われる燃料カット等によって既にエンジン1の燃焼が停止している場合もあるし、エンジン1の燃焼が通常通り行われている場合もある。
先ず、ステップS1,S2では、車両走行中における運転者による減速要求及び加速要求の有無が判定される。具体的に、ステップS1では、アクセル開度センサ102からの入力信号に基づいて、アクセルペダルが踏み込まれているか否かが判定され、ステップS2では、ブレーキスイッチ103からの入力信号に基づいて、ブレーキペダルが踏み込まれているか否かが判定される。なお、停車中の場合、ステップS1,S2によって、発進要求の有無が判定される。
所定車速以下での車両走行中において、ステップS1,S2の判定の結果、減速要求が無い場合、すなわち、アクセルペダルが踏み込まれている場合、又は、アクセルペダルは踏み込まれていないがブレーキペダルも踏み込まれていない場合は、ステップS11において、エンジン1の燃焼が続行又は再開され、アイドルストップが実行されることなく通常の走行が行われる。
ステップS11で、エンジン1の燃焼が通常通り行われているとき、特段の指令がない限り、モータジェネレータ90及び電動ポンプ84の駆動は停止するように制御されるとともに、変速制御は、車両の運転状態に応じて通常通り行われる。
一方、所定車速以下での車両走行中において、ステップS1及びステップS2の判定の結果、減速要求がある場合、すなわち、アクセルペダルが踏み込まれておらず、ブレーキペダルが踏み込まれている場合、ステップS3で、上述の燃焼停止条件が成立しているか否かが判定される。
ステップS3の判定の結果、燃焼停止条件が成立していなければ、ステップS11で、エンジン1の燃焼が続行又は再開される。
一方、ステップS3の判定の結果、燃焼停止条件が成立している場合、ステップS4で、エンジン1の燃焼停止が開始又は続行され、アイドルストップ状態となる。
ステップS4で燃焼停止が実行される場合、ステップS5で、トルクコンバータ3のロックアップクラッチ3fが解放されているか否かが判定される。ロックアップクラッチ3fが解放されると、エンジン1と駆動輪側との直結状態が解除されることで、そのままでは、機械ポンプ6によって自動変速機4の摩擦締結要素40,50,60,70,80に適切に油圧を供給できなくなる程度の回転数までエンジンの回転が急激に低下し得る回転低下状態となる。ステップS5では、エンジン1がこのような回転低下状態であるか否かが判定される。
ステップS5の判定の結果、ロックアップクラッチ3fが作動(締結又はスリップ)している場合、エンジン回転数の急激な低下が抑制されるため、そのままリターンされる。つまり、この場合、モータジェネレータ90及び電動ポンプ84の駆動が停止されたまま、エンジン1の燃焼停止が継続される。
一方、ステップS5の判定の結果、エンジン1の燃焼停止が行われている状態でロックアップクラッチ3fが解放されたことで、エンジン1が回転低下状態となる場合、この状態での変速段の形成を可能にするために、車両の走行状態に応じて、以下のステップS6〜ステップS10の処理が実行される。
先ず、ステップS6では、停車したか否かが判定される。ステップS6の判定の結果、車両走行中であれば、ステップS7において、現状の変速段が2速以上である場合には1速への変速が行われ、既に1速状態である場合には1速に維持される。具体的に、ステップS7では、1速を形成するためのロークラッチ40及びLRブレーキ60へ油圧を供給可能な回路状態となるように、油圧制御用アクチュエータ82が制御される。
また、続くステップS8において、電動ポンプ84が駆動されることで、エンジン1が回転低下状態となったことで作動できなくなった機械ポンプ6に代わって、電動ポンプ84によってロークラッチ40及びLRブレーキ60に油圧が供給され、これにより、ロークラッチ40及びLRブレーキ60は締結又は締結準備状態となる。より具体的には、例えば、ロークラッチ40は締結され、LRブレーキ60は締結準備状態(図4(b)参照)とされる。
これにより、仮に停車前に減速要求が解除されたとき、1速が直ちに形成されることになり、再加速が要求された場合には、良好な加速応答性が得られるとともに、ニュートラル状態でのアクセルペダルの踏み込みが抑制されることで、エンジン1の空吹きを抑制できる。
なお、ステップS7,S8でロークラッチ40及びLRブレーキ60が締結又は締結準備された状態において、2速以上の変速段に対応する運転状態で再加速が要求された場合には、直ちに1速での加速が開始された後、間もなく、通常の変速制御によって、運転状態に応じた変速段へのシフトアップが行われ、これにより、滑らかな加速が可能となる。
さらに、続くステップS9では、エンジン1が回転を停止しない程度の低回転数(例えば50〜100rpm)で回転するように、モータジェネレータ90が電動機として駆動される。
これにより、エンジン1の回転が完全に停止する場合に比べてクランキング抵抗が低減されることで、仮に、停車前に減速要求の解除又は再加速要求に応じてエンジン1の燃焼が再開されたとき、エンジン回転の立ち上がり応答性を高めることができる。また、このとき、極低回転数でエンジン1を回転させればよいため、モータジェネレータ90の消費電力の最小化を図ることができる。
その後、ステップ6で、停車したと判定されると、停車時アイドルストップ状態となり、ステップS10において、ステップS9で開始されたモータジェネレータ90の駆動が停止される。これにより、エンジン1の回転は完全に停止する。
ステップS10でモータジェネレータ90の駆動が停止されるとき、電動ポンプ84の駆動は継続され、1速を形成するためのロークラッチ40及びLRブレーキ60への油圧供給は継続される。これにより、例えば、ロークラッチ40が締結され、LRブレーキ60が締結準備(図4(b)参照)された状態が継続される。これにより、発進要求があった時に速やかに1速を形成することができ、良好な発進応答性が得られる。
減速時および停車時のアイドルストップ状態では、以後のルーチンにおいて、ステップS1の判定の結果、減速中において再加速が要求された場合、ステップS2の判定の結果、減速中において減速要求が解除されたり、停車中において発進が要求されたりした場合、及び、ステップS3の判定の結果、例えばバッテリの残容量が所定量未満になることなどによって燃焼停止条件が成立しなくなった場合には、ステップS11において、エンジン1の燃焼が再開され、エンジン1が再始動する。
なお、停車時アイドルストップ状態及び減速時アイドルストップ状態において、エンジン1が再始動されるときには、モータジェネレータ90がスタータモータとして駆動される。
以上の制御動作が行われることにより、減速時アイドルストップ制御中において、ロックアップクラッチ3fが解放されることでエンジン1が回転低下状態となっても、1速への変速が行われるとともに電動ポンプ84が駆動されることで、ロークラッチ40及びLRブレーキ60を締結又は締結準備することができるため、減速要求が解除されたときや再加速が要求されたときに、直ちに1速が形成される。したがって、再加速時に良好な応答性を得ることができ、1速での加速が開始された後は、通常の変速制御によって車両の運転状態に応じた変速段にシフトアップされることで、スムーズな加速を行うことができる。
また、減速時アイドルストップ制御中において電動ポンプ84によってロークラッチ40及びLRブレーキ60を締結又は締結準備状態としているとき、モータジェネレータ90は、エンジン1の回転を停止させないために必要な最低限の出力で駆動されるため、電力消費を効果的に抑制できる。
さらに、電動ポンプ84は、ロークラッチ40及びLRブレーキ60のみに油圧を供給可能な1速専用のものであるため、変速制御用の油圧回路において、電動ポンプ84から他の摩擦締結要素50,70,80への油圧供給経路を設ける必要がなく、電動ポンプ84の吐出部から延びる油路を短く簡素に構成することができ、これにより、該油圧回路の簡素化を図ることができる。また、ロークラッチ40及びLRブレーキ60への油圧供給経路が短く簡素に構成されることで、電動ポンプ84の小容量化を図ることができ、これにより、電動ポンプ84の大型化や消費電力の増大を回避することができる。
また、車両減速中に燃料カットが開始されたときから、停車時アイドルストップ制御が終了するまでの間、終始、エンジン1の燃焼を停止させ続けることができるため、ロックアップクラッチ3fが解放されたときなど、エンジン1が回転低下状態になったときにエンジン1の燃焼を再開する場合に比べて、燃費性能を効果的に向上させることができる。
以下、図6〜図8に示すタイムチャートを参照しながら、図5に示す制御動作が行われる場合における各種動作の経時的変化の具体例を説明する。
[第1の動作例]
図6は、減速時アイドルストップ制御が停車するまで継続される例を示すタイムチャートである。
図6に示す例において、時刻t0では、アクセルペダルが踏み込まれておらず、ブレーキペダルが踏み込まれていることにより車両が減速走行しており、ロークラッチ40とR35ブレーキ80が締結されることで、自動変速機4の変速段は3速となっている。このとき、燃料カットによるエンジン1の燃焼停止は既に開始されているが、ロックアップクラッチ3fは作動状態(締結状態又はスリップ状態)であり、エンジン回転数は、車速と共に緩やかに低下している。
その後、時刻t1にロックアップクラッチ3fが解放され、エンジン1と駆動輪との連結が遮断されると、符号a1に示すようにエンジン回転数が急激に低下する回転低下状態となり、これに伴って機械ポンプ6が作動しなくなることで、符号b1に示すようにR35ブレーキ80が解放され、このままでは自動変速機4がニュートラル状態となってしまう。
そこで、このとき、ニュートラル状態を回避するために、1速への変速が行われるとともに電動ポンプ84の駆動が開始されることで、電動ポンプ84によってロークラッチ40及びLRブレーキ60へ油圧が供給される。具体的には、符号c1に示すようにロークラッチ40の締結状態が維持されるとともに、符号d1に示すようにLRブレーキ60のクリアランス室64に油圧が供給されることでLRブレーキ60が締結準備状態(図4(b)参照)となる。これにより、この状態で減速要求が解除されたり再加速が要求されたりした場合に、直ちに1速を形成することが可能になる。
ただし、このとき、LRブレーキ60の締結室65にも油圧を供給することで、ロークラッチ40とLRブレーキ60の両方を締結させるようにしてもよい。また、ロークラッチ40とLRブレーキ60の両方を締結準備状態としたり、LRブレーキ60を締結してロークラッチ40を締結準備状態としたりしてもよい。
また、このとき、符号e1に示すようにモータジェネレータ90を低出力で駆動することで、符号f1に示すようにエンジン1が極低回転数で回転し続ける。これにより、エンジン1が再始動するときのクランキング抵抗が低減され、エンジン1が完全に停止する場合に比べて、再始動時におけるエンジン回転の立ち上がり応答性が向上する。
その後、減速要求が解除されることなく時刻t4に停車すると、モータジェネレータ90の駆動は停止され、これにより、エンジン1の回転は停止する。
上記のように直ちに1速を形成可能な燃焼停止状態は、車両の減速中において、2速に対応する車速域まで減速する時刻t2や、1速に対応する車速域まで減速する時刻t3を経過しても継続され、さらに、時刻t4に停車した後も継続される。
したがって、車両の減速走行中に燃料カットが開始されたときから停車するまでの間は勿論、停車してから停車時アイドルストップが終了するまでの間も、終始、燃料カットが継続されることになるため、燃費性能を効果的に向上させることができる。
また、時刻t1以降において、再加速や発進が要求された場合は、速やかに1速が形成されることで、再加速時又は発進時の良好な応答性が得られる。さらに、この間に駆動される電動ポンプ84は、ロークラッチ40及びLRブレーキ60のみに油圧供給可能な小型で小容量のものであるため、電力消費が少なくて済む。また、時刻t1から時刻t4までの減速走行中に駆動されるモータジェネレータ90の出力は非常に低いため、電力消費の最小化が図られる。
[第2の動作例]
図7は、減速時アイドルストップ制御中にブレーキペダルが離され、クリープ現象による低速走行が行われる例を示すタイムチャートである。
図7に示す例において、時刻t10では、アクセルペダルが踏み込まれておらず、ブレーキペダルが踏み込まれていることにより車両が減速走行しており、自動変速機4の変速段は3速となっている。このとき、燃料カットによるエンジン1の燃焼停止は既に開始されている。
その後、時刻t11にロックアップクラッチ3fが解放されると、符号a2に示すようにエンジン回転数が急激に低下する回転低下状態となり、これに伴って機械ポンプ6が作動しなくなることで、符号b2に示すようにR35ブレーキ80が解放される。
このとき、1速への変速が行われるとともに電動ポンプ84の駆動が開始されることで、電動ポンプ84によってロークラッチ40及びLRブレーキ60へ油圧が供給される。具体的には、符号c2に示すようにロークラッチ40の締結状態が維持されるとともに、符号d2に示すようにLRブレーキ60のクリアランス室64に油圧が供給されることでLRブレーキ60が締結準備状態(図4(b)参照)となる。
ただし、このとき、LRブレーキ60の締結室65にも油圧を供給することで、ロークラッチ40とLRブレーキ60の両方を締結させるようにしてもよい。また、ロークラッチ40とLRブレーキ60の両方を締結準備状態としたり、LRブレーキ60を締結してロークラッチ40を締結準備状態としたりしてもよい。
また、このとき、符号e2に示すようにモータジェネレータ90を低出力で駆動することで、符号f2に示すようにエンジン1が極低回転数で回転し続ける。
上記のように直ちに1速を形成可能な燃焼停止状態は、車両が2速に対応する車速域まで減速する時刻t12や、1速に対応する車速域まで減速する時刻t13を経過しても継続される。
この状態で、時刻t13にブレーキペダルが離されると、符号g2に示すようにエンジン1の燃焼が再開されるとともに、符号h2に示すようにモータジェネレータ90がスタータモータとして駆動されることで、エンジン1が再始動される。このとき、エンジン1は極低回転数で予め回転されているため、回転停止状態で再始動される場合に比べてクランキング抵抗が低減され、符号i2に示すようにエンジン1の回転を通常の回転数まで速やかに立ち上げることができる。
また、このとき、予め、ロークラッチ40は締結されており、LRブレーキ60は締結準備状態とされているため、符号j2に示すように、電動ポンプ84によってLRブレーキ60の締結室65に油圧が供給されることで、直ちに1速が形成される。これにより、1速での動力伝達状態が速やかに実現され、ニュートラル状態での走行が回避される。
ここで、仮にエンジン1が再始動した後もモータジェネレータ90の駆動を継続すると、エンジン1に回転抵抗がかかることになるため、符号k2に示すように、エンジン回転数が十分に上昇するタイミングで、モータジェネレータ90の駆動が停止される。また、エンジン回転数の上昇によって機械ポンプ6の吐出圧が立ち上がると、機械ポンプ6からの油圧供給によって通常の変速制御を再開できるため、符号l2に示すように適当なタイミングで電動ポンプ84の駆動も停止される。
以降、ブレーキペダル又はアクセルペダルが踏み込み操作されるまで、クリープ現象での低速走行が継続される。
[第3の動作例]
図8は、減速時アイドルストップ制御中にアクセルペダルが踏み込まれ、車両が再加速される例を示すタイムチャートである。
図8に示す例において、時刻t20では、アクセルペダルが踏み込まれておらず、ブレーキペダルが踏み込まれていることにより車両が減速走行しており、自動変速機4の変速段は3速となっている。このとき、燃料カットによるエンジン1の燃焼停止は既に開始されている。
その後、時刻t21にロックアップクラッチ3fが解放されると、符号a3に示すようにエンジン回転数が急激に低下する回転低下状態となり、これに伴って機械ポンプ6が作動しなくなることで、符号b3に示すようにR35ブレーキ80が解放される。
このとき、1速への変速が行われるとともに電動ポンプ84の駆動が開始されることで、電動ポンプ84によってロークラッチ40及びLRブレーキ60へ油圧が供給される。具体的には、符号c3に示すようにロークラッチ40の締結状態が維持されるとともに、符号d3に示すようにLRブレーキ60のクリアランス室64に油圧が供給されることでLRブレーキ60が締結準備状態(図4(b)参照)となる。
ただし、このとき、LRブレーキ60の締結室65にも油圧を供給することで、ロークラッチ40とLRブレーキ60の両方を締結させるようにしてもよい。また、ロークラッチ40とLRブレーキ60の両方を締結準備状態としたり、LRブレーキ60を締結してロークラッチ40を締結準備状態としたりしてもよい。
また、このとき、符号e3に示すようにモータジェネレータ90を低出力で駆動することで、符号f3に示すようにエンジン1が極低回転数で回転し続ける。
上記のように直ちに1速を形成可能な燃焼停止状態は、車両が2速に対応する車速域まで減速する時刻t22を経過しても継続される。
この状態で、時刻t23にブレーキペダルが離されるとともにアクセルペダルが踏み込まれると、符号g3に示すようにエンジン1の燃焼が再開されるとともに、符号h3に示すようにモータジェネレータ90がスタータモータとして駆動されることで、エンジン1が再始動される。このとき、エンジン1は極低回転数で予め回転されているため、回転停止状態で再始動される場合に比べてクランキング抵抗が低減され、符号i3に示すようにエンジン1の回転を通常の回転数まで速やかに立ち上げることができる。
また、このとき、予め、ロークラッチ40は締結されており、LRブレーキ60は締結準備状態とされているため、符号j3に示すように、電動ポンプ84によってLRブレーキ60の締結室65に油圧が供給されることで、直ちに1速が形成される。これにより、1速での動力伝達状態が速やかに実現されるため、再加速要求に対する良好な応答性が得られるとともに、エンジン1の空吹きが抑制される。
ここで、仮にエンジン1が再始動した後もモータジェネレータ90の駆動を継続すると、エンジン1に回転抵抗がかかることになるため、符号k3に示すように、エンジン回転数が十分に上昇するタイミングで、モータジェネレータ90の駆動が停止される。また、符号l3に示すように、機械ポンプ6の吐出圧が十分に立ち上がるような適当なタイミングで、電動ポンプ84の駆動も停止される。
上記のように、時刻t23にエンジン1の燃焼が再開されると、エンジン回転数は直ちに上昇し、これに応じて機械ポンプ6の吐出圧も直ちに立ち上がるため、運転状態に応じた通常の変速制御を速やかに再開することができる。したがって、以降、車両の加速に応じたシフトアップが円滑に行われ、2速に対応する車速域まで加速された時刻t24には2速へのシフトアップが、更に3速に対応する車速域まで加速された時刻t25には3速へのシフトアップがそれぞれ応答性よく確実に行われる。
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、図5のステップS5において、ロックアップクラッチ3fの解放の有無によって、エンジン1が上述の回転低下状態であるか否かを判定する例を説明したが、エンジン1が回転低下状態であるか否かの判定方法はこれに限定されるものでなく、例えば、エンジン回転数又はエンジン回転数の低下速度が所定値以下である場合や、機械ポンプ6による油圧供給状態を検知可能な油圧スイッチ等の検知手段を設けた上で、該検知手段がオフである場合などに、エンジン1が回転低下状態であると判定するようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、電動ポンプ84によって1速を形成するための摩擦締結要素(ロークラッチ40及びLRブレーキ60)に油圧を供給できる例を説明したが、本発明において、電動ポンプの駆動によって形成可能な「第1変速段」は、1速以外の変速段であってもよい。
さらに、本発明において、電動ポンプの駆動によって形成可能な「第1変速段」は、複数の変速段であってもよい。例えば、第1変速段が「最低変速段(1速)」と所定の「中変速段(例えば4速)」である場合、「最低変速段」付近の変速段での減速中にエンジンが燃焼停止状態かつ回転低下状態であるときは、電動ポンプを駆動させるとともに「最低変速段」への変速を行い、「中変速段」付近の変速段での減速中にエンジンが燃焼停止状態かつ回転低下状態であるときは、電動ポンプを駆動させるとともに「中変速段」への変速を行うことで、車両の運転状態に応じた変速段により近い変速段への変速が可能になる。
なお、「第1変速段」が複数の変速段である場合、これらの変速段を形成するための摩擦締結要素の少なくとも1つは共通していることが好ましい。例えば、上述の実施形態における1速と4速を「第1変速段」とした場合、図3に示すようにロークラッチ40が共通の摩擦締結要素となる。これにより、電動ポンプの油圧供給先となる摩擦締結要素の増加が抑制されるため、電動ポンプの小型化が図られる。
また、上述の実施形態では、LRブレーキ60がタンデムピストン式であり、その他の摩擦締結要素40,50,70,80はシングルピストン式である例を説明したが、本発明において、LRブレーキ60をシングルピストン式としたり、その他の摩擦締結要素をダブルピストン式としたりしてもよい。