以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態にかかる車両制御装置が適用される車両の制駆動系のシステム構成を示した図である。ここでは、前輪側を主駆動輪、後輪側を従駆動輪とする駆動形態のフロント駆動ベースの4輪駆動車に対して本発明の一実施形態となる車両制御装置を適用した場合について説明するが、後輪側を主駆動輪、前輪側を従駆動輪とする駆動形態のリア駆動ベースの4輪駆動車に対しても適用可能である。
図1に示されるように、4輪駆動車の駆動系は、エンジン1、トランスミッション2、駆動力配分制御アクチュエータ3、フロントプロペラシャフト4、リアプロペラシャフト5、フロントデファレンシャル6、フロントドライブシャフト7、リアデファレンシャル8およびリアドライブシャフト9を有した構成とされ、エンジン制御手段となるエンジンECU10などによって制御されている。
具体的には、アクセルペダル11の操作量がエンジンECU10に入力されると、エンジンECU10によってエンジン制御が行われ、そのアクセル操作量に応じた駆動力を発生させるのに必要なエンジン出力(エンジントルク)が発生させられる。そして、このエンジン出力がトランスミッション2に伝えられ、トランスミッション2で設定されたギア位置に応じたギア比で変換されたのち、駆動力配分制御手段となる駆動力配分制御アクチュエータ3に伝えられる。トランスミッション2には、変速機2aと副変速機2bが備えられており、通常走行時には変速機2aで設定されたギア位置に応じた出力が駆動力配分制御アクチュエータ3に伝えられ、オフロード走行時や坂路走行時などにおいて副変速機2bが作動させられたときには副変速機2bで設定されたギア位置に応じた出力が駆動力配分制御アクチュエータ3に伝えられる。そして、駆動力配分制御アクチュエータ3によって決められた駆動力配分にしたがって、フロントプロペラシャフト4とリアプロペラシャフト5に駆動力が伝達される。
その後、フロントプロペラシャフト4にフロントデファレンシャル6を介して接続されたフロントドライブシャフト7を通じて前輪FR、FLに前輪側の駆動力配分に応じた駆動力が付与される。また、リアプロペラシャフト5にリアデファレンシャル8を介して接続されたリアドライブシャフト9を通じて後輪RR、RLに後輪側の駆動力配分に応じた駆動力が付与される。
エンジンECU10は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従った各種演算や処理を実行することでエンジン出力(エンジントルク)を制御し、各輪FL〜RRに発生させられる駆動力を制御する。例えば、エンジンECU10は、周知の手法によりアクセル開度を入力し、アクセル開度や各種エンジン制御に基づいてエンジン出力を演算する。そして、このエンジンECU10からエンジン1に対して制御信号を出力することにより、燃料噴射量の調整などを行い、エンジン出力を制御する。エンジンECU10では、アクセル開度がアクセルオン閾値を超えている場合にアクセルペダル11がオンしていると判定できるが、本実施形態では、アクセルペダル11の操作が行われているか否かを示すアクセルスイッチ11aを備えており、このアクセルスイッチ11aの検知信号を入力することによってアクセルペダル11がオンしていることを検知している。また、エンジンECU10では、トラクション制御(以下、TRCという)も実行している。例えば、エンジンECU10は、後述するブレーキECU19から車輪速度や車体速度(推定車体速度)に関する情報を取得し、これらの偏差で表される加速スリップが抑制されるように、ブレーキECU19に制御信号を出力して制御対象輪に制動力を加えることで駆動力を低下させる。これにより、加速スリップが抑制されて、効率良く車両を加速させられるようにしている。
なお、ここでは図示していないが、トランスミッション2の制御はトランスミッションECUで行われ、駆動力配分制御については駆動力配分ECUなどで行われている。これら各ECUとエンジンECU10とは車載LAN12を通じて互いに情報交換を行っている。図1では、トランスミッション2の情報が直接エンジンECU10に入力されるようになっているが、例えばトランスミッションECUから出力されたトランスミッション2のギア位置情報が車載LAN12を通じてエンジンECU10に入力されるようになっていても良い。
一方、制動系を構成するサービスブレーキは、ブレーキペダル13、マスタシリンダ(以下、M/Cという)14、ブレーキアクチュエータ15、W/C16FL〜16RR、キャリパ17FL〜17RR、ディスクロータ18FL〜18RRなどを有した構成とされ、ブレーキ制御手段となるブレーキECU19によって制御されている。
具体的には、ブレーキペダル13が踏み込まれて操作されると、そのブレーキ操作量に応じてM/C14内にブレーキ液圧が発生させられ、それがブレーキアクチュエータ15を介してW/C16FL〜16RRに伝えられる。これにより、キャリパ17FL〜17RRによってディスクロータ18FL〜18RRが挟み込まれることで、制動力が発生させられるようになっている。このような構成のサービスブレーキは、W/C16FL〜16RRを自動加圧できる構成であればどのようなものであっても良く、ここでは油圧によりW/C圧を発生させられる油圧サービスブレーキを例に挙げているが、電気的にW/C圧を発生させるブレーキバイワイヤなどの電動サービスブレーキであっても良い。
ブレーキECU19は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従った各種演算や処理を実行することで制動力(制動トルク)を制御し、各輪FL〜RRに発生させられる制動力を制御する。具体的には、ブレーキECU19は、各車輪FL〜RRに備えられた車輪速度センサ20FL〜20RRからの検出信号を受け取って、車輪速度や車体速度などの各種物理量を演算したり、ブレーキスイッチ21の検出信号を入力し、物理量の演算結果およびブレーキ操作状態に基づいてブレーキ制御を行う。また、ブレーキECU19は、M/C圧センサ22の検出信号を受け取ってM/C圧を検出している。
また、ブレーキECU19は、制動力の制御に基づいて、オフロード等における車両制御であるDAC等も実行している。具体的には、ブレーキECU19は、ドライバがDACを要求する際に操作するDACスイッチ23や目標速度設定スイッチ24の検出信号および前後加速度を検出する加速度センサ25の検出信号を入力し、これらの検出信号に基づいてDACを実行している。DACスイッチ23は、基本的には降坂路での走行を行う場合に押下されると考えられるが、オフロードなどにおいて押下されても同様の制御が行われる。目標速度設定スイッチ24は、DACが実行されるときの目標速度を設定するために用いられ、例えば1〜5km/hの速度範囲において目標速度を設定する。なお、図1ではM/C圧センサ22と加速度センサ25の検出信号はブレーキアクチュエータ15を介して、ブレーキECU19へ入力されるようになっているが、各センサから直接ブレーキECU19へ入力される構成であっても良い。
以上のようにして、本実施形態にかかる車両制御装置が適用される車両の制駆動系のシステムが構成されている。続いて、上記のように構成された車両制御装置の作動について説明する。なお、本実施形態にかかる車両制御装置では、車両制御として通常のエンジン制御やブレーキ制御も行っているが、これらについては従来と同様であるため、ここでは本発明の特徴に関わるDACについて説明する。本実施形態の場合、DACにおけるブレーキ制御を車両制御として実行しており、ブレーキECU19がその制御を実行していることから、ブレーキECU19によって車両制御装置が構成されている。
DACは、ドライバがDACスイッチ23を押下し、かつ、目標速度設定スイッチ24で目標速度TBVを設定して、DACの実行要求があったときに実行される。本実施形態にかかる車両制御装置では、DACとして、ドライバが目標速度TBVを設定すると、車体速度V0と目標速度TBVとの偏差に基づいてブレーキ制御の制御量を設定することでフィードバック制御を行うのに加えて、坂路において車両が急加速することを抑制するための処理を行っている。目標速度TBVは、DACスイッチ23の操作に伴ってドライバが設定できるようになっており、例えば1〜5km/hの速度範囲において任意に設定可能となっている。車体速度V0は、ブレーキECU19で演算されており、各車輪FL〜RRに備えられた車輪速度センサ20FL〜20RRの検出信号から求められる車輪速度に基づいて周知の手法にて演算される。そして、目標速度TBVに基づいて設定される制御開始閾値TargetStartVを第1開始判定閾値として、車体速度V0が制御開始閾値TargetStartVを超えたときにDACによるフィードバック制御を開始する。その後、車体速度V0が目標速度TBVに近づくように、基本的には、車体速度V0と目標速度TBVとの偏差に基づき、車体速度V0が目標速度TBVよりも大きくなるほどフィードバック制御の制御量が大きくなるようにしている。
ただし、上記したように、坂路においては、単に車体速度V0と目標速度TBVとの偏差に基づいて各車輪の制動力をフィードバック制御するという手法では、ドライバのブレーキ操作に基づく停車や減速状態から車体速度V0をフィードバック制動力FBbrakeForceによって制御する状態に切り替わるような場合に問題が発生する。すなわち、ドライバのブレーキ操作が行われることによってフィードバック制御が解除されてフィードバック制動力FBbrakeForceが一旦0になるため、再び車体速度V0をフィードバック制動力FBbrakeForceによって制御する状態に切り替わっても、一旦0になったフィードバック制動力FBbrakeForceが再び発生させられるようになるのは、車体速度V0が目標速度TBVを超えてからである。このため、フィードバック制御の初期時におけるフィードバック制動力FBbrakeForceの不足による急加速や、増加した車体速度V0を目標速度TBVに追従させるまでに車体速度V0が目標速度TBVを中心として変動する速度ハンチングを発生させ、ドライバに違和感を与えてしまう。したがって、ここでは、以下に示す(1)〜(3)の各制御を実行する。なお、本明細書では、フィードバック制御によるブレーキ制御の制御量としてフィードバック制動力と記載するが、フィードバック制動力としては制動トルクを想定している。ただし、制動トルクに対応する制御量として用いられることができる他の制御量、例えばW/C圧などであっても構わない。
(1)坂路勾配SLOPEに基づいて、その坂路勾配SLOPEにおいて車両が下方にずり下がらないようにするために必要な制動力である坂路必要制動力BrakeSlopeForceを演算する。そして、この坂路必要制動力BrakeSlopeForceに応じて、車体速度V0を目標速度TBVに追従させるフィードバック制御によるブレーキ制御の開始およびその制御量であるフィードバック制動力FBbrakeForceを演算する。
具体的には、ドライバのブレーキ操作に基づいて発生させられる制動力であるドライバ制動力FOOTBRAKEが坂路必要制動力BrakeSlopeForceを基準として設定される第2開始判定閾値よりも小さいときに、フィードバック制御によるブレーキ制御を開始させる。つまり、ドライバ制動力FOOTBRAKEが坂路必要制動力BrakeSlopeForceを基準として設定される第2開始判定閾値よりも小さくなると、その坂路において車両が下方にずり下がるような状況である。そのような状況になっているのにもかかわらず、車体速度V0が第1開始判定閾値となる制御開始閾値TargetStartVを超えるまでDACによるフィードバック制御が為されないと、フィードバック制御が開始されたときに急加速してしまう可能性がある。したがって、この場合には、車体速度V0が目標速度TBVに基づいて設定される第1開始判定閾値となる制御開始閾値TargetStartVを超えるというDACにおけるフィードバック制御によるブレーキ制御の開始条件を満たしていなくても、当該制御を開始させる。
これにより、より早くからフィードバック制動力FBbrakeForceを発生させることが可能となって、車両が下方にずり下がることを抑制でき、急加速を抑制できる。また、より早くからフィードバック制動力FBbrakeForceを発生させられることから、高い昇圧能力を有していなくても、坂路において車両が急加速することを抑制することが可能となる。
また、基本的には、ドライバ制動力FOOTBRAKEが坂路必要制動力BrakeSlopeForceよりも小さい場合に、当該制御を開始させるようにすれば良いため、坂路必要制動力BrakeSlopeForceをそのまま第2開始判定閾値としても良い。しかしながら、車両重量やパッド摩耗などのバラツキによって坂路必要制動力BrakeSlopeForceにバラツキが生じることがあるため、坂路必要制動力BrakeSlopeForceからバラツキ相当の所定値αを引いた値を第2開始判定閾値とすれば、バラツキを加味して第2開始判定閾値を設定することができる。また、バラツキの影響が車体速度V0に応じて変化することから、所定値αについては車体速度V0に応じて変化させるようにしても良い。例えば図2に示す車体速度V0と所定値α[N]との関係の一例を示した特性図に示されるように、車体速度V0が大きくなるほど所定値αを徐々に小さくすることができる。これにより、車体速度V0に応じてバラツキの影響を可変に設定でき、より適切にバラツキの影響を加味した第2開始判定閾値を設定することができる。
(2)坂路において、(1)の制御が開始されたときには、そのときのフィードバック制動力FBbrakeForceを坂路必要制動力BrakeSlopeForceに基づいて設定される第2開始判定閾値を下回ったときのドライバ制動力FOOTBRAKEとし、その後は従来のフィードバック制御により徐々に目標速度TBVに近づけるフィードバック制動力FBbrakeForceを演算する。このように、(1)の制御が開始されたときの坂路必要制動力BrakeSlopeForceに基づいて設定される第2開始判定閾値を下回ったときのドライバ制動力FOOTBRAKEを初期値とすれば、坂路必要制動力BrakeSlopeForceに近い制動力から徐々にフィードバック制動力を変化させることで車体速度V0を目標速度TBVに近づけられ、ドライバのブレーキ操作から円滑にW/C圧を制御することが可能となる。
(3)坂路必要制動力BrakeSlopeForceは、車両が下方にずり下がらないようにするために必要な制動力であるため、車両の走行路面の摩擦力に基づいて演算される。しかしながら、この走行路面の摩擦力は、車両が走行中であるか停止中であるかに応じて異なる値となる。このため、坂路必要制動力BrakeSlopeForceの演算の際に用いる摩擦力を車両が走行中であるか停止中であるかに応じて変更する。具体的には、車両が走行中であれば走行路面の動摩擦力、停止中であれば走行路面の静摩擦力を用いて坂路必要制動力BrakeSlopeForceを演算する。このように、車両が走行中であるか停止中であるかに応じて演算の際に用いる摩擦力を変更することで、坂路必要制動力BrakeSlopeForceを車両の走行状態に応じた適切な値として求めることが可能となる。
以上のように、DACを実行する際には、上記した(1)〜(3)の制御を実行するようにしている。続いて、このようにして実行されるDACの詳細について説明する。図3(a)、(b)は、TRCを含めたDACの全体を示したフローチャートである。以下、この図を参照して、TRCを含めたDACの詳細について説明する。
まず、ステップ100では、各種入力処理を行う。具体的には、各車輪速度センサ20FL〜20RRの検出信号、加速度センサ25の検出信号を入力することで、各車輪FL〜RRの車輪速度VW**を演算すると共に車両の前後加速度Gxを演算する。なお、車輪速度VW**に付した添え字の**は、FL〜RRのいずれかを示しており、VW**は対応する各車輪FL〜RRの車輪速度を統括的に表記したものである。以下の説明においても、添え字の**はFL〜RRのいずれかを示しているものとする。
また、M/C圧センサ22の検出信号を入力してM/C圧を検出したり、アクセル開度、駆動力、副変速機2bのギヤ位置、すなわちH4とL4のいずれに位置しているかをエンジンECU10などから車載LAN12を通じて入力する。さらに、DACスイッチ23および目標速度設定スイッチ24の検出信号を入力し、ドライバがDACを要求していて目標速度選択を行っている状態であるか否かを検出する。
次に、ステップ105に進み、DACの実行条件を満たしているか否か、具体的には、副変速機2bのギア位置がL4、つまりオフロードなどで用いられる低速ギアのギア比が設定されており、かつ、DACスイッチ23がオンされているか否かを判定する。ここで、肯定判定されればDACの実行条件を満たしているためステップ110に進んでDAC許可を示すフラグをセットし、否定判定されればDACの実行条件を満たしていないためステップ115に進んでDAC禁止を示すフラグをセットする。
続いて、ステップ120に進み、各車輪速度VW**に基づいて車体速度V0を演算する。さらに、ステップ125に進み、坂路勾配SLOPEを演算する。まず、車体加速度DV0とステップ100で加速度センサ25の検出信号に基づいて演算した車両の前後加速度Gxとの差が重力加速度成分に相当することから、坂路勾配SLOPE=sin-1{(Gx−DV0)/9.8}の演算式を用いて、坂路勾配SLOPEを演算する。
そして、ステップ130に進み、ステップ125で演算した坂路勾配SLOPEに基づいて、その坂路勾配SLOPEにおいて車両が下方にずり下がらないようにするために必要な坂路制動力BrakeSlopeForceを演算する。例えば、坂路勾配SLOPEと車両重量とに基づいて坂路制動力BrakeSlopeForceを演算できる。このとき、(3)の制御として、車両が走行中であれば走行路面の動摩擦力、停止中であれば走行路面の静摩擦力を用いて坂路必要制動力BrakeSlopeForceを演算するようにしている。
続いて、ステップ135に進み、ドライバのブレーキ操作によるドライバ制動力FOOTBRAKEを演算する。例えば、ステップ100で入力したM/C圧に基づいて、M/C圧と対応するドライバ制動力FOOTBRAKEを演算する。M/C圧とドライバ制動力FOOTBRAKEとの関係については、予め実験などによって調べておけるため、その関係を示すマップなどを作成しておき、そのマップを用いてM/C圧に応じたドライバ制動力FOOTBRAKEを演算すれば良い。
また、ステップ140に進み、目標速度TBVを演算する。目標速度TBVは、基本的にはドライバが目標速度設定スイッチ24で設定した速度範囲(例えば1〜5km/h)内の速度とされるが、ドライバが目標速度TBVの切替えを行った場合には、切替え後の目標速度TBVに急に変化させるのではなく、切り替え前の目標速度TBVから徐々に切り替え後の目標速度TBVに変化させるようにフィルタを掛けるようにしている。例えば、切り替え前の目標速度TBVから切り替え後の目標速度TBVに一定勾配で変化させるようにしており、その勾配が目標減速度(もしくは目標加速度)となる。
このようにして、各種パラメータの演算が完了すると、ステップ145においてDACが禁止されているか否かを判定する。そして、禁止されていればステップ150においてフィードバック演算におけるフィードバック制動力FBbrakeForceを0[N]に設定すると共に、ステップ155において各輪FL〜RRのW/C圧の目標圧TargetPress**を0[MPa]に設定してDACを行わないようにし、禁止されていなければステップ160に進む。
ステップ160では、DACの制御開始および終了判定の処理を実行する。このときに、上記した(1)〜(3)の制御を行うようにしている。図4は、DACの制御開始および終了判定の処理の詳細を示したフローチャートである。この図を参照して、本処理の詳細にすいて説明する。
まず、ステップ160aでは、DAC制御外であるか否かを判定する。本ステップの処理がはじめて実行されるときであれば、DAC制御外であることを示すフラグがセットされていることから、本処理は肯定判定される。この場合、ステップ160bに進み、車体速度V0が制御開始閾値TargetStartVを超えていること、もしくは、ドライバ制動力FOOTBRAKEが坂路必要制動力BrakeSlopeForceから所定値αを引いた値(第2開始判定閾値)よりも小さいことのいずれか一方でも成り立っているか否かを判定する。
制御開始閾値TargetStartVは、従来から設定されているDACの制御開始閾値を規定するものであり、例えば目標速度TBVよりも所定値小さな値に設定される値である。従来と同様、この制御開始閾値TargetStartVを第1開始判定閾値として、車体速度V0が制御開始閾値TargetStartVを超えたときには、DACが制御開始されるようにしている。
ドライバ制動力FOOTBRAKEが0(ゼロ)Nより大きく、ドライバ制動力FOOTBRAKEが坂路必要制動力BrakeSlopeForceから所定値αを引いた値(第2開始判定閾値)よりも小さいことは、例えば、ドライバのブレーキ操作による停止状態から坂路において車両がずり下がり得る状況になったことや、ドライバのブレーキ操作による減速状態から車両が加速に転じる状態になったことを表している。このような状況になったときにも、DACを制御開始することで、(1)の制御が実行されるようにし、坂路において車両が下方にずり下がって急加速してしまうことを抑制する。
したがって、ステップ160bで肯定判定されればステップ160cに進んでDAC制御中であることを示すフラグをセットしたのち、ステップ160dに進む。そして、ドライバ制動力FOOTBRAKEと0MPaとを大小比較していずれか大きい方をフィードバック制動力FBbrakeForceに設定する。これにより、(2)の制御で示したように、坂路必要制動力BrakeSlopeForceに基づいて設定される第2開始判定閾値を下回ったときのドライバ制動力FOOTBRAKEを初期値とすることができ、坂路必要制動力BrakeSlopeForceに近い値にフィードバック制動力FBbrakeForceを設定することができる。
一方、ステップ160aで否定判定された場合、つまり上記したステップ160cにおいて既にDAC制御中のフラグがセットされていた場合には、ステップ160eに進む。そして、ステップ160eでDACの終了条件を満たすか否か、具体的には、車体速度V0が制御開始閾値TargetStartV未満になったこと、および、フィードバック制動力FBbrakeForceが0[N]以下になったことの双方が所定時間(例えば1秒間)以上成立したか否かを判定する。ここで示した双方の条件を満たせば、既にDACによるフィードバック制御が必要ではない状況になっていることから、それが所定時間以上成立したときに、DACの終了条件が成立したこととしている。その後、ステップ160fに進んでDAC制御外であることを示すフラグをセット(もしくはDAC制御中であることを示すフラグをリセット)したのち、ステップ160gに進んでフィードバック制動力FBbrakeForceを0[N]に設定して処理を終了する。
その後、図3(b)のステップ165に進み、通常の制御ゲイン設定を行う。すなわち、フィードバック制御によるブレーキ制御を実行するために通常設定しているフィードバックゲインBrakeGainの設定、例えばPID制御におけるP項、I項、D項のゲインの設定を行う。このときのゲインは、ブレーキ制御として一般的に行われている通常のゲインを設定している。
そして、ステップ170に進み、最終的なフィードバック制動力FBbrakeForceの演算を行う。具体的には、前回の制御周期のときのフィードバック制動力FBbrakeForce(前回値)を用いて、このフィードバック制動力FBbrakeForce(前回値)に対して、車体速度V0と目標速度TBVとの偏差にステップ165で設定したフィードバックゲインBrakeGainおよび制動力変換用の係数を掛けた値を足すことで、最終的なフィードバック制動力FBbrakeForceを演算している。
さらに、ステップ175に進み、ステップ170で演算したフィードバック制動力FBbrakeForceを各輪制動力に換算する。ここでは、フィードバック制動力FBbrakeForceに対して各輪FL〜RRの配分を決める各輪制動力ゲインEachBrakeGain**を掛けることで、各輪制動力BrakeForce**を演算している。各輪制動力ゲインEachBrakeGain**は、通常は4つの車輪FL〜RRで均一となるように1/4とされるが、前輪FR、FLの方の配分が後輪RR、RLよりも大きくなるように前後輪で配分を変えてあっても良い。そして、ステップ180に進み、ステップ175で演算した各輪制動力BrakeForce**に対して液圧換算値を掛けることにより、各輪FL〜RRのW/C圧の目標圧TargetPress**を演算する。
この後は、TRCを加味した制御として、ステップ185においてTRCの制御中であるか否かを判定し、制御中であればステップ190に進んでTRC要求液圧演算として、TRCにより要求されているTRC要求液圧TrcTargetPress**を演算する。そして、ステップ195に進んでステップ190で求めた各輪FL〜RRのW/C圧の目標圧TargetPress**にTRC要求液圧TrcTargetPress**を足すことで、DACおよびTRCを加味した最終的な各輪FL〜RRのW/C圧の目標圧TargetPress**が演算される。なお、TRCの制御中であるか否かやTRC要求液圧TrcTargetPress**については、TRCを実行しているECU(ブレーキECU19もしくはエンジンECU10のいずれか)より取得することができる。
以上のようにして、DACおよびTRCを加味した最終的な各輪FL〜RRのW/C圧の目標圧TargetPress**が演算されると、その目標圧TargetPress**を発生させられるように、ブレーキアクチュエータ15が制御され、W/C16FL〜16RRのW/C圧が制御される。
図5は、本実施形態で説明したDACの制御開始および終了判定の処理を実行した場合を示したタイムチャートである。なお、参考として、図中に、従来のフィードバック制御を行った場合のフィードバック制動力FBbrakeForceの変化についても記載した(図中破線参照)。
図5に示すように、下り坂において、時点T1〜T2のように、車両走行中にドライバがブレーキ操作を行うことでドライバ制動力FOOTBRAKEが発生させられたのち、ドライバがブレーキ操作を解除し、時点T3においてドライバ制動力FOOTBRAKEが0になったとする。その場合、ドライバ制動力FOOTBRAKEに基づいて車体速度V0が低下したのち、ドライバによるブレーキ操作の解除に伴い、路面勾配に基づいて車体速度V0が増加していく。そして、従来では、車体速度V0が第1開始判定閾値となる制御開始閾値TargetStartVを超えた時点T4において、DACのフィードバック制御が開始され、フィードバック制動力FBbrakeForceが発生させられて、車体速度V0が目標速度TBVに近づけられる。
しかしながら、この場合には、車体速度V0が制御開始閾値TargetStartVを超えるまでDACによるフィードバック制動力FBbrakeForceが発生させられないため、車体速度V0が大きく目標速度TBVを超えてしまい、急加速の原因になる。また、車体速度V0と目標速度TBVとの乖離が大きくなるため、増加した車体速度V0を目標速度TBVに追従させるまでに車体速度V0が目標速度TBVを中心として変動する速度ハンチングを発生させる。
これに対して、本実施形態の場合、時点T2〜T3の間となる時点Taにおいて、フィードバック制動力FBbrakeForceが坂路必要制動力BrakeSlopeForceから所定値αを引いた値(第2開始判定閾値)よりも小さくなり、この時点TaからDACのフィードバック制御によるフィードバック制動力FBbrakeForceが発生させられる。
これにより、より早くからフィードバック制動力FBbrakeForceを発生させることが可能となって、車両が下方にずり下がることを抑制でき、急加速を抑制できる。また、より早くからフィードバック制動力FBbrakeForceを発生させられることから、高い昇圧能力を有していなくても、坂路において車両が急加速することを抑制することが可能となる。さらに、車体速度V0と目標速度TBVとの乖離が小さいため、増加した車体速度V0を目標速度TBVに追従させるまでに時間を要せず、速度ハンチングもほとんど発生させないようにできる。
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、各車輪FL〜RRの制動力を制御することで車体速度を低速に保つ制御の一例としてDACを挙げた。しかしながら、これは単なる一例を示したに過ぎず、他の制御、例えばDACについても同様のことが言える。クロール制御の場合もDACと同様であり、上記した第1実施形態で説明したDACの部分をすべてクロール制御に置き換えれば良い。
なお、各図中に示したステップを含めて、ブレーキECU19中において各種処理を実行している部分が各種処理を実行する手段に対応するものである。例えば、ステップ125の処理を実行する部分が勾配取得手段、ステップ130の処理を実行する部分が坂路必要制動力演算手段、ステップ160aの処理を実行する部分が制御開始判定手段、ステップ170の処理を実行する部分がフィードバック制御手段に相当する。