JP6134102B2 - 配線基板の製造方法 - Google Patents
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Description
ITO膜の代替物として、π共役系導電性高分子を含む導電性高分子膜が検討されている。導電性高分子膜からなる配線を形成する方法としては、π共役系導電性高分子と、π共役系導電性高分子を溶媒に溶解または分散可能にする可溶化剤としてのポリアニオンとを含有する導電性高分子分散液を、所定のパターンに塗布または印刷する方法が知られている。例えば、特許文献1には、導電性高分子分散液をペースト化し、スクリーン印刷機を用いて、絶縁基材の表面に印刷する方法が記載されている。
特許文献3には、絶縁基材の表面に、導電性高分子分散液を塗布して導電性高分子塗膜を形成した後、π共役系導電性高分子を不活性化する酸化剤を含有するペーストをスクリーン印刷する方法が記載されている。
特許文献2に記載の方法では、アルカリ溶液を用いるため、通常、酸性下でπ共役系導電性高分子にドープするポリアニオンが脱ドープして、配線の導電性及び透明性を低下させることがあった。また、工程数が多く、煩雑である上に、感放射線性樹脂の乾燥、光照射条件によっては現像性が低下して良好なパターンが得られないことがあった。また、フォトリソグラフィ法による感放射線樹脂組成物のパターンの形成では、パターンの精細性を向上させるために、レジスト膜として残す部分の感放射線樹脂組成物の架橋度を高くして強固にするが、それが原因で、導電性高分子塗膜形成後の感放射線性樹脂の除去時には除去が困難になる傾向にあった。そのため、π共役系導電性高分子を含有する配線の形成は困難であった。
特許文献3に記載の方法では、スクリーン印刷を適用可能にするために、酸化剤をペースト化する必要があるが、細線形成性等の印刷性を保持したまま、酸化剤がπ共役系導電性高分子に充分に作用するようにペーストの成分を調整することは困難であった。そのため、導電性高分子膜に高精細な配線を形成することは困難であった。
本発明は、π共役系導電性高分子を含有する配線を絶縁基材の表面に簡便に且つ高精細に形成でき、しかも得られる配線の導電性及び透明性を高くできる配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
[1]絶縁基材の少なくとも一方の面に、π共役系導電性高分子、ポリアニオン及び分散媒を含有する導電性高分子分散液を塗布して導電性高分子塗膜を形成する導電性高分子塗膜形成工程と、前記導電性高分子塗膜の表面に、スクリーン印刷により所定のパターンで、レジスト膜形成用樹脂及びレジスト膜形成用溶媒を含有するレジストペーストを印刷してレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、前記レジスト膜で被覆されていない導電性高分子塗膜を、該導電性高分子塗膜を不活性化するエッチング液で処理する不活性化工程と、不活性化工程後に、除去用溶剤により前記レジスト膜を溶解または膨潤させて除去するレジスト膜除去工程とを有し、前記除去用溶剤として、レジスト膜形成用溶媒の比誘電率との差が30以下のものを用いることを特徴とする配線基板の製造方法。
[2]前記エッチング液が、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、臭素酸、臭素酸塩、過マンガン酸塩、アルカリ化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の不活性化剤を含有することを特徴とする[1]に記載の配線基板の製造方法。
[3]除去用溶剤として、比誘電率が50以下のものを用いることを特徴とする[1]または[2]に記載の配線基板の製造方法。
(配線基板)
まず、本発明の配線基板の製造方法により製造される配線基板について説明する。
本発明で製造される配線基板は、絶縁基材の少なくとも一方の面に、π共役系導電性高分子を含有する配線が形成されたものである。
なお、本発明における「絶縁」とは、電気抵抗値が1MΩ以上、好ましくは10MΩ以上のことであり、「導電」とは、電気抵抗値が1MΩ未満であることを意味する。
絶縁基材としては、樹脂フィルム、ガラス板が用いられるが、透明性により優れる配線基板が得られることから、透明樹脂フィルム、ガラス板が好ましい。
透明樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリル、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマーなどが挙げられる。これらの樹脂材料の中でも、強度等の点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
なお、本発明における「透明」とは、可視光を透過させたときの光線透過率(JIS K7105)が80%以上のことである。
ここで、表面処理としては、プライマー処理、プラズマ処理、コロナ放電処理などが挙げられる。プライマー処理としては、ポリエステル系、ポリアクリル系またはウレタン系の高分子を含み、必要に応じてシリカやチタニア等のフィラーを含むプライマー液を塗布する処理が挙げられる。
本発明における配線は、絶縁基材の片面に形成された導電性高分子塗膜の導電パターンである。ここで、導電性高分子塗膜は、π共役系導電性高分子とポリアニオンと分散媒とを含有する導電性高分子分散液が絶縁基材に塗布されて形成された膜である。
ポリチオフェン系導電性高分子の具体例としては、ポリ(チオフェン)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)などが挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子の具体例としては、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)などが挙げられる。
これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンを構成する単量体としては、−O−SO3 −X+、−SO3 −X+、−COO−X+、−O−PO4 −X+、−PO4 −X+(各式においてX+は水素イオン、アルカリ金属イオンを表す。)等の強酸基を含有する単量体が挙げられる。
これらの中でも、π共役系導電性高分子へのドーピング効果の点から、−SO3 −X+、−COO−X+が好ましい。また、このアニオン基は、隣接して又は一定間隔をあけてポリアニオンの主鎖に配置されていることが好ましい。
あるいは、ポリスチレン、ポリメチルスチレン等を重合した後、硫酸、発煙硫酸、スルファミン酸等のスルホン化剤によりスルホン化することにより本発明に用いるポリアニオンを得ることもできる。
さらに、ポリエーテルケトンのスルホン化(欧州特許出願公開第041780号明細書)、ポリエーテルエーテルケトンのスルホン化(特開2008−108535号公報)、ポリエーテルスルホンのスルホン化(特開平10−309449号公報)、ポリフェニレン、ポリフルオレン、ポリビニルカルバゾールのスルホン化(特表2010−514161号公報)、ポリフェニレンオキシドのスルホン化、ポリフェニレンスルフィドのスルホン化等により、本発明に用いるポリアニオン得ることもできる。
ポリアニオンの分子量は2万〜100万が好ましい。前記下限値以上であれば、π共役系導電性高分子が均一な分散液になりやすく、前記上限値以下であれば、充分に高い導電性が得られる。
導電性高分子分散液中のπ共役系導電性高分子とポリアニオンの合計の含有量は0.05〜5.0質量%であることが好ましい。π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計含有量が0.05質量%以上であれば、充分に高い導電性が得られ、5.0質量%以下であれば、均一な導電性塗膜を容易に得ることができる。
ドーパントとしては、π共役系導電性高分子に添加される公知のドーパントを用いることができる。具体的に、ドーパントとしては、ドナー性ドーパント、アクセプタ性ドーパントが挙げられる
ドナー性ドーパントとしては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、4級アミン塩等が挙げられる。
アクセプタ性ドーパントとしては、例えば、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸、有機シアノ化合物、有機金属化合物等が挙げられる。さらに、プロトン酸としては、無機酸(例えば、鉱酸、フッ化水素酸、過塩素酸等)、有機酸(例えば、有機カルボン酸、有機スルホン酸等)が挙げられる。
バインダ樹脂は、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のいずれであってもよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド;ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、ポリアミド11等のポリアミド;ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂;エポキシ樹脂;キシレン樹脂;アラミド樹脂;ポリイミドシリコーン;ポリウレタン;ポリウレア;メラミン樹脂;フェノール樹脂;ポリエーテル;アクリル樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。バインダ樹脂は、スルホ基やカルボキシ基を有して水分散性を有していてもよい。
バインダ樹脂の中でも、容易に混合でき、絶縁基材との密着性が高いことから、オキセタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
高導電化剤としては、例えば、窒素含有芳香族性環式化合物(例えば、ピリジン及びその誘導体、イミダゾール及びその誘導体、ピリミジン及びその誘導体、ピラジン及びその誘導体、トリアジン及びその誘導体等)、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物(例えば、多価アルコール、没食子酸エステル等の、2個以上のヒドロキシ基を有する芳香族化合物等)、2個以上のカルボキシ基を有する化合物(例えば、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等)、スルホ基とカルボキシル基を有する化合物、アミド基を有する単分子化合物、イミド基を有する単分子化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物、シランカップリング剤、水溶性有機溶媒(例えば、窒素原子または硫黄原子を含む極性溶媒、エーテル化合物、ニトリル化合物)等が挙げられる。
添加剤としてはπ共役系導電性高分子及びポリアニオンと混合しうるものであれば特に制限されず、例えば、アルカリ性化合物、界面活性剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物などを使用できる。
アルカリ性化合物としては、公知の無機アルカリ化合物や有機アルカリ化合物を使用できる。無機アルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等が挙げられる。有機アルカリ化合物としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、4級アミン、アミン以外の窒素含有化合物、金属アルコキシド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらの中でも、導電性がより高くなることから、脂肪族アミン、芳香族アミン、4級アミンよりなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。
界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等の陰イオン界面活性剤;アミン塩、4級アンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤;カルボキシベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリウムベタイン等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等の非イオン界面活性剤等が挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンレジン等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基、アミノ基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類、ビタミン類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オギザニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤が挙げられる。酸化防止剤と紫外線吸収剤は併用することが好ましい。
有機チタン化合物としては、例えば、チタンアルコキシド、チタンキレート、チタンアシレート等が挙げられる。
有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムキレート、ジルコニウムアシレート等が挙げられる。
次に、上記配線基板を製造するための配線基板の製造方法について説明する。
本発明の配線基板の製造方法は、導電性高分子塗膜形成工程とレジスト膜形成工程と不活性化工程とレジスト膜除去工程とを有する。
導電性高分子膜形成工程は、絶縁基材の少なくとも一方の面に導電性高分子分散液を塗布して導電性高分子塗膜を形成する工程である。
本工程で使用される導電性高分子分散液は、π共役系導電性高分子、ポリアニオン及び分散媒を含有するものである。
塗布後、通常は、熱風乾燥法や赤外線乾燥法により乾燥させ、また、光硬化性のバインダ樹脂を含む場合には、露光して硬化させて、導電性高分子塗膜を形成する。
導電性高分子塗膜の厚さは、目的とする導電性及び透明性に応じて適宜調整される。
レジスト膜形成工程は、前記導電性高分子塗膜の表面に、スクリーン印刷により所定のパターンでレジストペーストを印刷してレジスト膜を形成する工程である。
本工程で使用されるレジストペーストは、レジスト膜形成用樹脂及びレジスト膜形成用溶媒を含有するものであり、スクリーン印刷用に粘度が調整されたものである。
市販のポリエステル系樹脂としては、ポリエスター(日本合成化学社製)、バイロン(東洋紡績社製)、エリーテル(ユニチカ社製)、ケミット(東レ社製)などの飽和共重合ポリエステル樹脂が挙げられる。
市販のポリウレタン系樹脂としては、コロネート、ニッポラン(日本ポリウレタン工業社製)などの、各種ポリオールとジイソシアネートから形成されたポリウレタンが挙げられる。
市販のポリアミド系樹脂としては、AQナイロン(東レ社製)などが挙げられる。
市販のエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂としては、JER(三菱化学社製)、エピクロン(DIC社製)などが挙げられる。
市販のアクリル系樹脂としては、アクリディック(DIC社製)、ダイヤナール(三菱レイヨン社製)、アルマテックス(三井化学社製)などが挙げられる。
市販のポリ酢酸ビニル系樹脂としては、ソルバイン(日信化学工業社製)、ゴーセニール(日本合成化学社製)、デンカサクノール(電気化学工業社製)などが挙げられる。
市販のビニルアセタール系樹脂としては、エスレック(積水化学工業社製)などが挙げられる。
市販のポリビニルアルコール系樹脂としては、デンカポバール(電気化学工業社製)、J−ポバール(日本酢ビポバール社製)などが挙げられる。
なお、上記のカッコ内の数値は比誘電率である。比誘電率は、市販の誘電率計(例えば、日本ルフト社製液体用誘電率計Model871)を用いて20〜25℃程度の温度で測定できる。また、溶剤ポケットハンドブック(有機合成化学協会編、オーム社発行)に記載されている。比誘電率は、極性の指標となり、値が大きい程、極性が高い。
さらに具体的には、レジスト膜形成用溶媒は、比誘電率が50以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。
架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、カルボキシ基含有化合物、酸無水物、アルコール化合物、チオール化合物、アミン化合物、金属アルコキシド、有機金属化合物、シランカップリング剤などが挙げられる。
ただし、レジスト膜の架橋密度が高くなりすぎると、レジスト膜除去工程の際にレジスト膜を除去しにくくなるため、レジスト膜が後述する除去用溶剤に膨潤する程度までの架橋度とすることが好ましい。具体的には、レジスト膜を溶剤に浸漬させ、暫く放置させたときのレジスト膜の体積変化が1.5倍以上になる架橋度が好ましい。このような架橋度となる架橋剤添加量は、好ましくは、レジスト膜形成用樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部であり、より好ましくは、0.1〜10質量部である。
スクリーン印刷の際に使用されるスクリーンの材質としては、ステンレスメッシュ、ポリエステルメッシュ等を用いることができる。メッシュ数は、レジストペーストの固形分濃度とレジスト膜の目的の厚みに応じて適宜決められる。
形成されるレジスト膜の厚さは、0.1〜100μmとすることが好ましく、1〜20μmとすることがより好ましい。レジスト膜の厚さが前記下限値以上であれば、レジスト膜の欠陥が少なく、不活性化工程にて不活性化させてはならない部分にまでエッチング液が浸透することを防止でき、前記上限値以下であれば、レジスト膜除去工程にてレジスト膜を容易に除去できる。
スクリーン印刷後は、レジスト膜形成用溶媒を除去するために、乾燥することが好ましい。乾燥方法としては、熱風乾燥法や赤外線乾燥法が適用され、また、光硬化性成分を含む場合には、露光して硬化させる。
不活性化工程は、上記レジスト膜で被覆されていない導電性高分子塗膜をエッチング液で処理する工程である。
ここで、エッチング液は、導電性高分子塗膜を不活性化する、すなわち導電性を消失させる不活性化剤を含む液体である。したがって、導電性高分子塗膜において、エッチング液によって処理された部分(すなわち、レジスト膜で被覆されていない部分)は絶縁パターンとなり、エッチング液によって処理されない部分(すなわち、レジスト膜で被覆されている部分)は導電パターンとなる。よって、レジスト膜で被覆されていない導電性高分子塗膜をエッチング液で処理することにより、配線が形成される。
また、エッチング液には、必要に応じて、界面活性剤(アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤)、レベリング剤(シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤)、無機系増粘剤(シリカ、チタン、タルク等)、高分子増粘剤(ポリビニルアルコール等)が含まれてもよい。
エッチング液の粘度は、不活性化処理の適性の点から、1〜50mPa・sであることが好ましく、1〜30mPa・sであることがより好ましい。
導電性高分子塗膜が絶縁基材の両面に形成されている場合、積層体をエッチング液に浸漬する方法では、積層体の両面についてエッチングすることができ、積層体にエッチング液を噴き付ける方法では、積層体の片面のみをエッチングすることができる。
導電性高分子塗膜が絶縁基材の片面のみに形成されている場合には、積層体をエッチング液に浸漬する方法を適用しても、積層体の片面がエッチングされる。
エッチング液の温度は10〜70℃であることが好ましく、30〜50℃であることがより好ましい。エッチング液の温度が前記下限値以上であれば、エッチング時間を短縮でき、前記上限値以下であれば、エッチング液の溶媒の揮発を抑制でき、また、過度のエッチングを防止できる。
エッチング液による不活性化処理終了後には、積層体に付着したエッチング液を純水などにより洗い流し、乾燥させてもよい。
レジスト膜除去工程は、除去用溶剤により上記レジスト膜を溶解または膨潤させて除去する工程である。
除去用溶剤としては、レジスト膜を溶解または膨潤させることができるものが使用される。具体的には、除去用溶剤は、レジスト膜形成用溶媒として使用できる有機溶剤と同様の有機溶剤を1種以上含むものであり、レジスト膜形成用溶媒と同一であってもよいし、異なってもよい。
除去用溶剤においても、レジスト膜形成用溶媒と同様に低極性の有機溶媒を用いることが好ましく、具体的には、比誘電率が50以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。除去用溶剤として、比誘電率が前記範囲のものを用いれば、導電性高分子塗膜に与える影響を小さくでき、導電性及び透明性をより高めることができ、さらに、配線の寸法精度をより向上させることができる。
また、除去用溶剤としては、レジスト膜の除去性により優れることから、レジスト膜形成用溶媒の比誘電率との差が30以下のものを用いることが好ましい。すなわち、−30≦(除去用溶剤の比誘電率ε2−レジスト膜形成用溶媒の比誘電率ε1)≦30であることが好ましい。さらには、−10≦ε2−ε1≦10であることがより好ましく、ε2−ε1=0、すなわち同一種の溶媒であることが好ましい。
レジスト膜の除去性により優れると、溶解時間が短縮して生産性がより向上し、また、除去用溶剤が導電性高分子塗膜に与える影響がより小さくなる。
除去用溶剤によりレジスト膜を溶解または膨潤させて除去している最中には、除去性を高めるために、除去用溶剤を攪拌したり、除去用溶剤に超音波を照射したりしてもよい。
上記製造方法では、導電性高分子分散液をペースト状にしなくてもよく、導電に寄与せず且つ透明性を低下させる成分の配合量を少なくできる。また、導電性高分子塗膜の配線として残す部分をレジスト膜で被覆して保護するため、導電性高分子塗膜の配線として残す部分に、導電性を低下させる不活性化剤が接触しにくくなっている。したがって、得られる配線の導電性及び透明性を向上させることができる。
また、上記製造方法では、酸化剤をスクリーン印刷するためにペースト状にする必要がないため、細線形成性を維持したまま導電性高分子塗膜に充分に作用させることができる。そのため、高精細な配線を容易に形成できる。
また、上記製造方法では、レジスト膜のパターン形成にスクリーン印刷を適用し、フォトリソグラフィ法を適用しないため、工程が簡便であると共に、パターンの精細性を向上させるために、レジスト膜の架橋度を高めて強固にする必要はないため、除去用溶剤でレジスト膜を導電性高分子塗膜から容易に除去できる。したがって、π共役系導電性高分子を含有する配線を絶縁基材の表面に簡便に形成できる。
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を2時間攪拌した。
これにより得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000mlと10000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いてポリスチレンスルホン酸含有溶液の約10000ml溶液を除去し、残液に10000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約10000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。
さらに、得られたろ液に約10000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約10000ml溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
限外ろ過条件は下記の通りとした(他の例でも同様)。
限外ろ過膜の分画分子量:30K
クロスフロー式
供給液流量:3000ml/分
膜分圧:0.12Pa
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gの製造例1で得たポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、上記ろ過処理が行われた処理液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの処理液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた処理液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの処理液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.5質量%の青色のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT−PSS)水分散液を得た。
また、ヒドロキシエチルアクリレート10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート10g、イルガキュア184(BASF社製)0.1g及びジメチルスルホキシド5gをエタノール100gに添加してアクリル化合物溶液を得た。
このアクリル化合物溶液に上記PEDOT−PSS水分散液200gを混合して、導電性高分子分散液を得た。
バイロン200(東洋紡績社製、ポリエステル系樹脂)30gと、アエロジル200(日本アエロジル社製、ヒュームドシリカ)5gと、シクロヘキサノン(比誘電率2.1)60gと、エチレングリコールモノエチルエーテル(比誘電率2.1)10gとを混合し(混合溶媒の比誘電率2.1)、ロール分散、真空脱泡して、レジストペースト1を得た。
エスレックSV(積水化学工業社製、ポリビニルアセタール)30gと、アエロジル200(日本アエロジル社製、ヒュームドシリカ)5gと、シクロヘキサノン(比誘電率2.1)60gと、エチレングリコールモノエチルエーテル(比誘電率2.1)10gとを混合し(混合溶媒の比誘電率2.1)、ロール分散、真空脱泡して、レジストペースト2を得た。
AQナイロンA−90(東レ社製、ポリアミド系樹脂)30gと、アエロジル200(日本アエロジル社製、ヒュームドシリカ)5gと、水(比誘電率80)60gと、メタノール(比誘電率31.2)20gとを混合し(混合溶媒の比誘電率71.4)、ロール分散、真空脱泡して、レジストペースト3を得た。
次亜塩素酸ナトリウム2gをイオン交換水98gに溶解して、エッチング液1を得た。
ネオクロール55(四国化成社製、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム2水和物)15gをイオン交換水90に溶解して、エッチング液2を得た。
易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製A4300、全光線透過率92.0%)の片面に、製造例2で得た導電性高分子分散液を、バーコーター(#12)を用いて塗布した。次いで、120℃、1分間乾燥させた後、高圧水銀灯を用いて400mJの紫外線を照射し、導電性高分子塗膜を形成して、導電シートを得た。
得られた導電シートの導電性高分子塗膜の表面に、325メッシュのステンレススクリーン版を用いて製造例3で得たレジストペースト1をスクリーン印刷して、目的とする配線パターンのレジスト膜を印刷した。その後、130℃で5分間乾燥させた。
次いで、レジスト膜で被覆されていない導電性高分子塗膜を、製造例6で得たエッチング液1に1分間浸漬し、取り出した後、純水により水洗し、乾燥させた。
その後、トルエン(比誘電率2.2)に浸漬し、1分間超音波照射し、レジスト膜を導電性高分子塗膜から除去して、配線基板を得た。
エッチング液1の代わりに製造例7で得たエッチング液2を用い、トルエンの代わりにシクロヘキサノン(比誘電率2.1)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、配線基板を得た。
レジストペースト1の代わりに製造例4で得たレジストペースト2を用い、トルエンの代わりにジメチルスルホキシド(比誘電率45.0)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、配線基板を得た。
トルエンの代わりにN,N−ジメチルアセトアミド(比誘電率37.8)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、配線基板を得た。
レジストペースト1の代わりに製造例4で得たレジストペースト2を用い、トルエンの代わりにエタノール(比誘電率25.7)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、配線基板を得た。
レジストペースト1の代わりに製造例4で得たレジストペースト2を用い、トルエンの代わりにメチルエチルケトン(比誘電率15.5)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、配線基板を得た。
レジストペースト1の代わりに製造例5で得たレジストペースト3を用い、トルエンの代わりに水・メタノール混合溶媒(水:メタノール=3:1、比誘電率71.4)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、配線基板を得た。
得られた配線基板について、全光線透過率を測定して透明性を評価し、表面抵抗率を測定して導電性を評価した。また、導電シートの全光線透過率及び表面抵抗率についても測定した。それらの結果を表1に示す。
[全光線透過率]
日本電色工業社製ヘイズメータ測定器(NDH5000)を用い、JIS K7150に準じて全光線透過率を測定した。
[表面抵抗率]
三菱化学社製ロレスタMCP−T600を用い、JIS K 7194に準じて表面抵抗率を測定した。
Claims (3)
- 絶縁基材の少なくとも一方の面に、π共役系導電性高分子、ポリアニオン及び分散媒を含有する導電性高分子分散液を塗布して導電性高分子塗膜を形成する導電性高分子塗膜形成工程と、
前記導電性高分子塗膜の表面に、スクリーン印刷により所定のパターンで、レジスト膜形成用樹脂及びレジスト膜形成用溶媒を含有するレジストペーストを印刷してレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
前記レジスト膜で被覆されていない導電性高分子塗膜を、該導電性高分子塗膜を不活性化するエッチング液で処理する不活性化工程と、
不活性化工程後に、除去用溶剤により前記レジスト膜を溶解または膨潤させて除去するレジスト膜除去工程とを有し、
前記除去用溶剤として、レジスト膜形成用溶媒の比誘電率との差が30以下のものを用いることを特徴とする配線基板の製造方法。 - 前記エッチング液が、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、臭素酸、臭素酸塩、過マンガン酸塩、アルカリ化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の不活性化剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の配線基板の製造方法。
- 除去用溶剤として、比誘電率が50以下のものを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の配線基板の製造方法。
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