上記の本発明の貯血槽において、前記消泡材は連続する単一の材料からなることが好ましい。これにより、シート状の原反から切り出して消泡材を作製することができる。これは、消泡材の作製を簡単化するのに有利である。
前記消泡材は、前記消泡フレームに取り付けられている。これは、消泡フレーム内において気泡が消泡されずに異常増加するのを防止するのに有利である。
前記消泡材は、前記側壁部から上方に向かって突出した第1耳部を備える。前記第1耳部を前記消泡フレームに設けられた係止部に係止することにより、前記消泡材が前記消泡フレームに取り付けられている。これにより、接着剤を用いることなく、消泡材を消泡フレームに簡単に取り付けることができる。これは、貯血槽の組み立てを容易にするのに有利である。
上記において、前記消泡材は、前記水平部から突出した第2耳部を更に備えていてもよい。前記第2耳部は前記消泡フレームに設けられた係止部に係止されていてもよい。これにより、消泡フレームに蓋体をかぶせていなくても、水平部を水平方向と略方向に配置することができる。これは、貯血槽の組み立てを容易にするのに有利である。
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態を構成する部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。また、以下の各図では、実際の部材の寸法および各部材の寸法比率等は忠実に表されていない。
<実施形態1>
図1は本発明の実施形態1に係る貯血槽1の概略構成を示した斜視図、図2はその側面断面図である。この貯血槽1は、静脈血と心内血とを貯留させる心内血貯血槽一体型静脈血貯血槽である。以下の説明において「上」、「下」、「水平方向」は、貯血槽1の実際の使用状態を基準に定義される。
貯血槽1は、ハウジング本体11とハウジング本体11の上部に載置された蓋体16とからなるハウジング10を備える。
ハウジング本体11は、その中心から外れた一部が下方に突出した貯血部12と、貯血部12の下端に設けられた、血液が流出する血液流出ポート13とを備える。ハウジング本体11の下面には、手術室に立設された支柱の上端を挿入することで貯血槽1を保持するための固定用穴14が形成されている。
蓋体16には、貯血槽1内に血液を流入させるための複数の血液流入ポートが設けられている。血液流入ポートは、心内血が流入する複数の心内血流入ポート21と、静脈血が流入する静脈血流入ポート22とを含む。更に、蓋体16には、薬液等を血液に混入するための複数の薬液注入ポート23,24、緊急に大量の薬液を血液に混入させたり、カーディオトミー部30の心内血フィルタ31が目詰まりにより使用できなくなった場合に代替のカーディオトミー部を通過させた血液を流入させたりするためのサービスポート25、貯血槽1内の圧力を調整するための排気ポート26、貯血槽1内の圧力が異常な陽圧又は陰圧になるのを防止するための圧力調整弁27等が設けられている。静脈血流入ポート22には、静脈血の温度を測定するための温度プルーブ28が挿入されている。
静脈血流入ポート22には体外血液循環回路の脱血ラインのチューブが接続され、心内血流入ポート21には心内血吸引ラインのチューブが接続される。血液流出ポート13には体外血液循環回路の送血ラインのチューブが接続される。薬液注入ポート23,24には所定の薬液容器に接続された薬液注入ラインのチューブが接続される。薬液注入ポート23から流入した薬液はカーディオトミー部30を通過せずに貯血部12に流入し、薬液注入ポート24から流入した薬液はカーディオトミー部30を通過した後、貯血部12に流入する。サービスポート25には各種ラインのチューブが接続される。温度プルーブ28には温度計測機器と接続された電気配線が接続される。
ハウジング10内には、濾過網47を保持する消泡フレーム40が収納されている。消泡フレーム40の上部には、第1消泡材50が保持されている。図3は、第1消泡材50が取り付けられる前の消泡フレーム40を示した斜視図である。消泡フレーム40は、略升形状を有するカップ状部41と、カップ状部41の一側面に形成された格子状フレームからなる枠状部45とを備えている。枠状部45は、ハウジング本体11の貯血部12内に挿入されるように、カップ状部41よりも下方に延びている。枠状部45の側面には、枠状部45の上下方向の全範囲にわたって格子状に開口が形成されている。枠状部45の開口を塞ぐように、濾過網47が枠状部45に固定保持されている。図2、図3において多数のドットを付した領域が、濾過網47を示す。枠状部45の下端は、血液流出ポート13近傍にまで達している(図2参照)。枠状部45の上端45aは、カップ状部41の上端よりわずかに低い。一対の係止部43が、カップ状部41の上端から枠状部45の側に向かって水平方向に突出している。係止部43に対向する係止突起44が、枠状部45の上端45aから上方に向かって突出している。消泡フレーム40が、図12に示した従来の消泡フレーム940に設けられていた保持バー944と同様の保持バーを備えていてもよい。
濾過網47は、血液が濾過網47を通過する際に血液中の異物や気泡を除去するフィルターとしての機能を有している。濾過網47の構成及び材料に特に制限はなく、公知のものを適宜選択して使用することができる。例えば、濾過網47として多数の微細な開口を有するスクリーンフィルタを用いることができる。濾過網47に、消泡剤(例えばシリコーンなど)をコーティングして気泡の消泡機能を付与してもよい。
消泡フレーム40内に設けられる第1消泡材50について説明する。
図4は、第1消泡材50が装着された消泡フレーム40の斜視図である。
第1消泡材50は、枠状部45の内壁面に沿って上下方向にほぼ沿って延びる側壁部51と、側壁部51の上端に連続し水平方向にほぼ沿って延びる水平部52とを備えている。
第1消泡材50の材料としては、第1消泡材50に接触した気泡を破泡させる消泡機能を有していることが好ましく、また、外力を加えることにより容易に変形することができる可撓性及び柔軟性と、当該外力を取り除くと初期形状に復帰するクッション性(形状復帰性)とを有することが好ましい。第1消泡材50として、貯血槽に設けられる消泡材として公知の材料を用いることができる。例えば、基層としてのポリウレタンの表面に消泡剤としてのシリコーンがコーティングされた材料を用いることができる。また、基層の形態は、連続気泡を有する発泡体、織物、編み物、不織布などをであってもよい。好ましくは、軟質のポリウレタンフォームにシリコーンをコーティングした材料を用いることができる。
第1消泡材50を消泡フレーム40に装着する方法を説明する。
図5Aは、第1消泡材50を消泡フレーム40に装着する直前の状態を示した斜視図である。図5Aに示すように、最初に、消泡フレーム40(図3参照)と第1消泡材50とを用意する。
第1消泡材50は、水平方向に延びた側壁部51と、側壁部51から上方に向かって延びた水平部52とを有し、これらが略「T」字状に接続されている。側壁部51の上端縁51aから一対の第1耳部53aが上方に向かって突出している。第1耳部53aは、水平部52を挟んで配置されている。水平部52の側壁から一対の第2耳部53bが水平方向に向かって突出している。本例では、第1耳部53a及び第2耳部52bは、いずれも楔形状を有し、斜めに形成された切り込み(スリット)54を介して互いに隣接している。但し、第1耳部53a及び第2耳部52bの形状はこれに限定されず、任意である。第1消泡材50は、連続する単一の材料からなる。例えば略一定の厚さを有する原反シート(例えばポリウレタンフォーム)から所定形状に切り出すことにより第1消泡材50を作製することができる。
次に、第1消泡材50の側壁部51を枠状部45の内壁面に沿うように略「コ」字形状に折り曲げて(湾曲させて)、側壁部51を枠状部45内に上方から挿入する。そして、図5Bに示すように、側壁部51から突出した第1耳部53aを、消泡フレーム40の係止部43と枠状部45の上端45a(図3、図5A参照)との間に挿入して係止する。
次に、水平部52が水平面と略平行になるように、水平部52をカップ状部41側に折り曲げる。そして、水平部52の両側壁から突出した第2耳部53bを、消泡フレーム40の係止部43と枠状部45の上端45a(図3、図5A参照)との間に挿入して係止する。かくして、図4に示すように、第1消泡材50は消泡フレーム40に保持される。
図2にもどり、静脈血流入ポート22と静脈血導管29の上端とが蓋体16を介して接続されている。静脈血導管29は、カーディオトミー部30の下端とカップ状部41の底面との間を通ってカップ状部41から枠状部45へと消泡フレーム40の内側を案内され、その下端の開口は、貯血槽1の最低血液面レベルLよりも下側に位置している。
カーディオトミー部30が、心内血流入ポート21の下側に設けられている。
カーディオトミー部30は、略袋形状(または、コーヒー抽出の際に使用される紙製のコーヒーフィルタに類似した形状、後述する図11A参照)を有する心内血フィルタ31と、フィルタ31の内側に配置された第2消泡材32とを備える。
心内血フィルタ31は、血液(心内血)が心内血フィルタ31を通過する際に血液中の異物を捕捉して除去する機能を有している。更に、気泡を捕捉する機能を有していても良い。心内血フィルタ31としては、特に制限はないが、例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレンなどの樹脂材料からなるメッシュフィルタなど、カーディオトミー部として公知のフィルタ材を用いることができる。心内血フィルタ31の孔径は、特に制限はないが、20〜50μmが好ましい。心内血フィルタ31に消泡剤(例えばシリコーン)をコーティングして気泡の消泡機能を付与しても良い。
第2消泡材32は、略袋形状を有し、心内血フィルタ31内に配置されている。第2消泡材32としては、第2消泡材32に接触した気泡を破泡させる消泡機能を有していることが好ましく、また、外力を加えることにより容易に変形することができる可撓性及び柔軟性と、当該外力を取り除くと初期形状に復帰するクッション性(形状復帰性)とを有することが好ましい。第2消泡材32として、カーディオトミー部に使用される公知の消泡材料を任意に選択して使用することができる。例えば、基層としてのポリウレタンの表面に消泡剤としてのシリコーンがコーティングされた材料を用いることができる。また、基層の形態は、連続気泡を有する発泡体、織物、編み物、不織布などであってもよい。好ましくは、軟質のポリウレタンフォームにシリコーンをコーティングした材料を用いることができる。消泡フレーム40に装着される第1消泡材50と同じ材料であってもよい。本実施形態1では、第2消泡材32は、上側が二重構造で、下側が単層構造の、半二重構造を有している。
心内血フィルタ31の上端と第2消泡材32の上端とは、樹脂板33に固定されている。樹脂板33の材料は特に制限はないが、例えばポリウレタンなどの接着剤を用いることができる。心内血フィルタ31及び第2消泡材32を保持する樹脂板33は蓋体16の下面に固定される。樹脂板33の中央に開口(貫通穴)が形成されている。この開口に、心内血流入ポート21と連通した心内血導管36と、薬液注入ポート24と連通した薬液導管37とが挿入されている。
蓋体16を消泡フレーム40上にかぶせることにより、蓋体16に保持されたカーディオトミー部30は、消泡フレーム40内に配置される。
貯血槽1内の血液の流れを説明する。
図2において、患者の術野から吸引された心内血は、心内血流入ポート21及び心内血導管36を順に通過してカーディオトミー部30内に流入する。心内血に混入していた気泡は、血液面上に浮上するが、第2消泡材32に接触すると破泡する。カーディオトミー部30内の心内血は、第2消泡材32及び心内血フィルタ31を順に通過して、消泡フレーム40内に流入する。この際、心内血に含まれる肉片、脂肪、凝血塊などの異物や気泡は、心内血フィルタ31で捕捉される。
一方、患者の静脈から脱血された静脈血は、静脈血流入ポート22及び静脈血導管29を順に通過して、静脈血導管29の下端の開口から消泡フレーム40内に流入する。
心内血及び静脈血は、消泡フレーム40内で混合され、濾過網47を通過して、血液流出ポート13を通って貯血槽1外に流出する。
この過程で、血液は、その血液面が最低血液面レベルLより上になるように、貯血部12内に一時的に貯留される。
心内血は、相対的に多くの気泡を含む。上述したように、心内血に含まれる気泡の多くは、カーディオトミー部30内の第2消泡材32に接触して破泡する。しかしながら、その一部は、心内血とともにカーディオトミー部30外に流出することがある。また、静脈血もわずかに気泡を含む場合がある。従って、消泡フレーム40内において、血液面上に気泡が浮上し、その数が増えて、血液面上で上方に向かって気泡が盛り上がるように成長することがある。
消泡フレーム40内の上方には第1消泡材50が取り付けられている。血液面上で盛り上がった気泡のうち第1消泡材50の側壁部51に接触した気泡は、破泡される。一方、側壁部51から水平方向に離れた位置にある気泡は、側壁部51に接触することはない。ところが、第1消泡材50は、側壁部51の上端から水平方向にほぼ沿って延びた水平部52を備えている。図2から容易に理解できるように、水平部52は、枠状部45の上方の空間を塞ぐように配置されている。従って、側壁部51には接触することがない気泡のほとんどは水平部52に接触して破泡してしまう。
このように、第1消泡材50が側壁部51に加えて水平部52を備えるので、消泡フレーム40内での気泡の異常増加を防止することができる。従って、本実施形態1の貯血槽1は消泡フレーム40内の消泡特性が優れている。
また、第1消泡材50が連続する単一の材料から構成されているので、上述したように、第1消泡材50は原反シートから所定形状に切り出すことにより作製することができる。例えば、原反シートからプレス金型で第1消泡材50を打ち抜くことにより、第1消泡材50を容易に得ることができる。従って、第1消泡材50の作製が容易であり、第1消泡材50を安価に提供することができる。
第1消泡材50の耳部53a,53bを消泡フレーム40に設けられた係止部43に係止することにより、第1消泡材50は消泡フレーム40に保持される。第1消泡材50を消泡フレーム40に固定するためには、第1消泡材50を所望する形状に折り曲げて、その耳部53a,53bを係止部43に係止するだけでよい。第1消泡材50を消泡フレーム40に固定するために、接着剤は不要である。従って、第1消泡材50を消泡フレーム40に固定する作業は極めて簡単で、熟練を要さず誰でも短時間で行うことができる。
枠状部45の上端45aに、係止部43に向かって係止突起44が突出している。耳部53a,53bを、係止突起44よりもカップ状部41側で係止部43に係止する。これにより、耳部53a,53bが係止部43から意図せずに外れるのを、係止突起44が防止する。これは、貯血槽1の組み立てを容易にするのに有利である。
<実施形態2>
本発明の実施形態2に係る貯血槽は、消泡フレーム40に装着される消泡材に関して実施形態1と異なる。以下、実施形態1と異なる点を中心に、本実施形態2を説明する。
図6は、本実施形態2に係る貯血槽に使用される第1消泡材60の斜視図であって、消泡フレーム40に装着される前の状態を示す。図6に示すように、消泡フレーム40に装着される前の第1消泡材60は、略矩形形状を有している。上側の長辺の両端から対角線にほぼ沿って斜めに一対の切り込み(スリット)64が形成されている。図5Aに示した実施形態1の第1消泡材50と同様に、切り込み64を介して第1耳部63aと第2耳部63bとが隣接している。一対の切り込み64の終端(最深部)を結ぶ直線より下側の部分が側壁部61であり、一対の第2耳部63bで挟まれた部分が水平部62である。
この第1消泡材60は、図5Aに示した実施形態1の第1消泡材50と同様に、消泡フレーム40に取り付けることができる。即ち、側壁部61を略「コ」字状に折り曲げて枠状部45に挿入し、第1耳部63aを係止部43に係止する。次いで、水平部62が水平面と略平行になるように水平部62をカップ状部41側に折り曲げて、第2耳部63bを係止部43に係止する。かくして、側壁部61が枠状部45の内壁面に沿って上下方向にほぼ沿って配置され、水平部62が側壁部61の上端から水平方向にほぼ沿って配置される。
本実施形態2の第1消泡材60も、水平部62を備えているので、実施形態1と同様に、消泡フレーム40内での気泡の異常増加を防止することができる。従って、第1消泡材60を用いた本実施形態2の貯血槽は消泡フレーム40内の消泡特性が優れている。
第1消泡材60は図6に示すように略矩形形状を有するので、原反シートから切り出して第1消泡材60を作製する場合に、原反シートのうち廃棄される部分を少なくすることができる。よって、原反シートの利用効率が高まる。
本実施形態2は、上記を除いて実施形態1と同じである。
<実施形態3>
本発明の実施形態3に係る貯血槽は、消泡フレーム40に装着される消泡材に関して実施形態1と異なる。以下、実施形態1と異なる点を中心に、本実施形態3を説明する。
図7は、本実施形態4に係る貯血槽に使用される第1消泡材70の斜視図であって、消泡フレーム40に装着される前の状態を示す。図7に示すように、第1消泡材70は、側壁部71が接続部77にて環状に接続されている。即ち、第1消泡材70は、図5Aに示した実施形態1の第1消泡材50の側壁部51を水平方向に延長し、その末端同士を接続したものに相当する。接続部77での側壁部71の末端同士の接続方法は特に制限はなく、熱溶着法(いわゆるヒートシール法)、縫合法、接着法など任意の方法を用いうるが、熱溶着法が接着剤などの異物を用いることなく簡易に接続することができるので好ましい。図7では、接続部77が外側に突出することがないように、接続部77を形成した後、第1消泡材70を裏返している。
この第1消泡材70は、図5Aに示した実施形態1の第1消泡材50と同様に、消泡フレーム40に取り付けることができる。即ち、環状の側壁部71を枠状部45に挿入し、第1耳部73aを係止部43に係止する。次いで、水平部72が水平面と略平行になるように水平部72をカップ状部41側に折り曲げて、第2耳部73bを係止部43に係止する。かくして、側壁部71が枠状部45の内壁面に沿って上下方向にほぼ沿って配置され、水平部72が側壁部71の上端から水平方向にほぼ沿って配置される。
本実施形態3の第1消泡材70も、水平部72を備えているので、実施形態1と同様に、消泡フレーム40内での気泡の異常増加を防止することができる。従って、第1消泡材70を用いた本実施形態3の貯血槽は消泡フレーム40内の消泡特性が優れている。
本実施形態3は、上記を除いて実施形態1と同じである。
上記の例では側壁部71の水平方向の末端同士が接続部77で接続されていたが、末端同士を接続することなく、上方から見たとき側壁部71が略「C」字形状に湾曲して枠状部45内に配置されていてもよい。
<実施形態4>
本発明の実施形態4に係る貯血槽は、消泡フレーム40に装着される消泡材に関して実施形態1と異なる。以下、実施形態1と異なる点を中心に、本実施形態4を説明する。
図8は、本実施形態4に係る貯血槽に使用される第1消泡材80の斜視図であって、消泡フレーム40に装着される前の状態を示す。図8に示すように、第1消泡材80は、図5Aに示した実施形態1の第1消泡材50から第2耳部53bを省略した形状を有している。即ち、第1消泡材80は、水平方向に延びた略矩形状の側壁部81と、側壁部81の上端縁81aから上方に向かって突出した水平部82及び一対の耳部(第1耳部)83aとを備える。
この第1消泡材80は、側壁部81を略「コ」字状に折り曲げて枠状部45に挿入し、耳部83aを係止部43に係止することによって、消泡フレーム40に取り付けられる。側壁部81は枠状部45の内壁面に沿って上下方向にほぼ沿って配置される。図5Aに示した実施形態1の第1消泡材50と異なり、第1消泡材80の水平部82は、耳部(第2耳部)を備えていない。第1消泡材80を取り付けた消泡フレーム40に蓋体16(図2参照)をかぶせるときに、水平部82をカップ状部41側に折り曲げて水平部82を蓋体16の下面で押さえる。これにより、水平部82を水平方向にほぼ沿って配置することができる。
本実施形態4の第1消泡材80も、水平部82を備えているので、実施形態1と同様に、消泡フレーム40内での気泡の異常増加を防止することができる。従って、第1消泡材80を用いた本実施形態4の貯血槽は消泡フレーム40内の消泡特性が優れている。
本実施形態4は、上記を除いて実施形態1と同じである。
上述した実施形態2の第1消泡材60(図6参照)において、本実施形態4の第1消泡材80と同様に、水平部62から突出した第2耳部63bを省略してもよい。また、上述した実施形態3の第1消泡材70(図7参照)において、本実施形態4の第1消泡材80と同様に、水平部72から突出した第2耳部73bを省略してもよい。
<実施形態5>
実施形態1〜4では、第1消泡材50,60,70,80に設けられた第1耳部53a,63a,73a,83a及び第2耳部53b,63b,73bを消泡フレーム40の係止部43に係止することにより、第1消泡材50,60,70,80を消泡フレーム40に取り付けた。本発明の実施形態5に係る貯血槽では、第1消泡材を接着剤を用いて消泡フレームに取り付ける。以下、実施形態1と異なる点を中心に、本実施形態5を説明する。
図9Aは、本実施形態5に係る貯血槽において、第1消泡材90を消泡フレーム140に装着する直前の状態を示した斜視図である。
第1消泡材90は、水平方向に延びた側壁部91と、側壁部91から上方に向かって延びた水平部92とを有し、これらが略「T」字状に接続されている。第1消泡材90は、実施形態1の第1消泡材50(図5A参照)において第1耳部53a及び第2耳部53bを省略したのとほぼ同じである。
消泡フレーム140は、実施形態1〜4の消泡フレーム40(図3、図5A参照)において、係止部43及び係止突起44を省略し、且つ、枠状部45の上部に保持バー144が架け渡したのとほぼ同じである。図9Aにおいて、図5Aに示した部材と同じ部材には同一の符号を付して、それらの説明を省略する。
第1消泡材90は消泡フレーム140に以下のようにして取り付けられる。
最初に、第1消泡材90の側壁部91を枠状部45の内壁面に沿うように略「コ」字形状に折り曲げて(湾曲させて)、側壁部91を枠状部45と保持バー144とで囲まれた略矩形状の枠内に上方から挿入する。そして、枠状部45の内面に付与した接着剤143を用いて第1消泡材90を枠状部45に固定する。かくして、図9Bに示すように、側壁部91が枠状部45の内壁面に沿って上下方向にほぼ沿って配置される。水平部92は枠状部45から上方に突出する。
その後、実施形態4と同様に、第1消泡材90を取り付けた消泡フレーム140に蓋体16(図2参照)をかぶせるときに、水平部92をカップ状部41側に折り曲げて水平部92を蓋体16の下面で押さえる。これにより、水平部92を水平方向にほぼ沿って配置することができる。
本実施形態5の第1消泡材90も、水平部92を備えているので、実施形態1と同様に、消泡フレーム140内での気泡の異常増加を防止することができる。従って、第1消泡材90を用いた本実施形態5の貯血槽は消泡フレーム140内の消泡特性が優れている。
本実施形態5では、第1消泡材90を、接着剤143を用いて消泡フレーム140に取り付けるので、消泡フレーム140として、係止部43及び係止突起44を有しない従来の消泡フレーム(例えば図12の消泡フレーム940)を用いることができる。
上記の例において、保持バー144を省略することができる。接着剤143の付与位置は、図9Aの通りである必要はなく、任意に変更できる。
側壁部91を水平方向に延長し、枠状部45と保持バー144とで囲まれた略矩形状の枠内において、側壁部91を上方から見たときに略「C」字形状又は環状に湾曲させて配置してもよい。更に、水平方向に延長した側壁部91の両末端を実施形態4の第1消泡材80(図7参照)と同様に接続してもよい。
本実施形態5は、上記を除いて実施形態1と同じである。
<実施形態6>
実施形態1〜5では、消泡フレーム40,140に取り付けられる第1消泡材50,60,70,80,90が水平部52,62,72,82,92を備えていた。本発明の実施形態6に係る貯血槽では、カーディオトミー部内の第2消泡材が水平部を備える。以下、実施形態1と異なる点を中心に、本実施形態6を説明する。
図10は、本実施形態6に係る貯血槽2の側面断面図である。図10において、図2に示した部材と同じ部材には同一の符号を付して、それらの説明を省略する。カーディオトミー部130の心内血フィルタ31内に、第2消泡材150が収納されている。第2消泡材150は、心内血フィルタ31の内壁面に沿って上下方向にほぼ沿って延びた側壁部151と、側壁部151の上端から水平方向にほぼ沿って延びた水平部152とを備えている。
図11Aは、本実施形態6に係る貯血槽2において、第2消泡材150を心内血フィルタ31内に収納する直前の状態を示した斜視図である。
第2消泡材150は、水平方向に延びた側壁部151と、側壁部151から上方に向かって延びた水平部152とを有し、これらが略「T」字状に接続されている。水平部152は、心内血フィルタ31の上端の平面視形状と略相似な楕円形状(又は長円形状)を有している。水平部152の中央には貫通孔153が形成されている。第2消泡材150は、本発明の第1消泡材と同じ材料を用いて同じ方法で作製することができる。
心内血フィルタ31は、シート状のフィルタ材を一定ピッチで山折りと谷折りを交互に繰り返して多数のプリーツを形成し、下端31aで二つ折りし、袋状になるように両側端31bを熱溶着法(いわゆるヒートシール法)等により接合したものである(特許文献1,2参照)。但し、本発明の心内血フィルタ31は、これに限定されない。
第2消泡材150の側壁部151をフィルタ31の内壁面に沿うように環状に湾曲させて、フィルタ31内に上方から挿入する。図11Bに示すように、側壁部151がフィルタ31の内壁面に沿って略筒状に変形してフィルタ31内に収納される。側壁部151の水平方向の両末端は、フィルタ31内で互いに当接している。水平部152はフィルタ31から上方に突出する。
その後、環状の側壁部151の上方に向いた開口を塞ぐように、水平部152を折り曲げて、フィルタ31の上端、側壁部151の上端、水平部152の上面を樹脂板33(図10参照)に固定する。かくして、カーディオトミー部130が得られる。
カーディオトミー部130は、実施形態1のカーディオトミー部30と同様に、蓋体16に保持される。このとき、樹脂板33の中央の開口及び水平部152の中央の貫通孔153に、心内血導管36及び薬液導管37が挿入される。
カーディオトミー部130内に流入する心内血は多くの気泡を含む。心内血に含まれる気泡は血液上に浮上する。時間の経過とともに、血液面上の気泡の数が増え、血液面上で気泡が上方に向かって盛り上がる。血液面上で盛り上がった気泡のうち第2消泡材150の側壁部151に接触した気泡は、破泡される。一方、側壁部151から水平方向に離れた位置にある気泡は、側壁部151に接触することはない。ところが、第2消泡材150は、側壁部151の上端から水平方向にほぼ沿って延びた水平部152を備えている。図10から容易に理解できるように、水平部152は、カーディオトミー部130の上方の空間を塞ぐように配置されている。従って、側壁部151には接触することがない気泡も、水平部152に接触して破泡してしまう。
このように、第2消泡材150が側壁部151に加えて水平部152を備えるので、カーディオトミー部130内での気泡の異常増加を防止することができる。従って、本実施形態6の貯血槽2はカーディオトミー部130内の消泡特性が優れている。
水平部152に、心内血導管36及び薬液導管37が挿入される貫通孔153が形成されているので、従来のカーディオトミー部に大幅な設計変更を行うことなく第2消泡材150を適用することができる。
上記の例において、側壁部151の両末端を実施形態4の第1消泡材80(図7参照)と同様に接続してもよい。更に、このように環状に接続された側壁部151の下端を閉じて、側壁部151を略袋形状に加工してもよい。
本実施形態6の貯血槽2の、カーディオトミー部130以外の構成は任意である。例えば、貯血槽2は、第1消泡材として、図10では実施形態1の第1消泡材50を備えているが、実施形態2〜5に示した第1消泡材60,70,80,90を備えていてもよい。あるいは、従来の消泡材950(図12参照)を備えていてもよい。更には、第1消泡材を備えていなくてもよい。
本実施形態6は、上記を除いて実施形態1と同じである。
上記の実施形態1〜6は例示にすぎない。本発明は、上記の実施形態1〜6に限定されず、適宜変更することができる。
消泡フレーム40の枠状部45内に収納された第1消泡材の側壁部の平面視形状は、上記の実施形態に限定されない。例えば枠状部45の内壁面が略円筒面であれば、第1消泡材の側壁部は枠状部の当該内壁面に沿って略円弧状または略「U」字形状に湾曲され得る。同様に、心内血フィルタ31内に収納された第2消泡材の側壁部の平面視形状も、上記の実施形態に限定されない。本発明は、第1消泡材の側壁部及び第2消泡材の側壁部が様々な形状に変形した場合をも含み、その場合にも上記の実施形態と同様の効果を奏する。
第1消泡材を消泡フレームに固定するための方法は、上記の実施形態に限定されず、任意である。第1消泡材に設けられた耳部を消泡フレーム40の係止部43に係止する場合、当該係止部43の形状は任意である。例えば、耳部が意図せずに係止部43から外れるのを防止するために、係止部43の下面に下方に向かって突出した突起が形成されていてもよい。係止部43が、その弾性力によって、係止部43に係止された耳部を枠状部45の上端45aに向かって押し付けて保持してもよい。
第1耳部を係止するための係止部と、第2耳部を係止するための係止部とは、上記の実施形態のように同一部材である必要はなく、異なっていてもよい。但し、同一部材であることは、消泡フレーム40や消泡フレーム40を成形するための金型の設計が容易になるので好ましい。
枠状部45の上端45a上の係止突起44を省略してもよい。
カーディオトミー部の構成は、上記に限定されない。例えば、心内血フィルタは略袋形状を有している必要はなく、例えば円筒形状を有していてもよい。心内血フィルタの形状に応じて、第2消泡材の形状を変更することができる。
実施形態1〜5で説明した本発明の第1消泡材を備えた貯血槽は、カーディオトミー部を備えていなくてもよい。
実施形態6で説明した本発明の第2消泡材を備えた貯血槽は、消泡フレーム内に第1消泡材を備えていなくてもよい。
本発明の貯血槽は、上述した貯血槽1,2のように静脈血と心内血とが流入する心内血貯血槽一体型静脈血貯血槽に限定されず、公知の如何なる貯血槽であっても良い。例えば、静脈血が流入せず心内血が流入する心内血貯血槽であってもよく、あるいは、心内血が流入しない静せず静脈血が流入する脈血貯血槽であっても良い。