JP5245849B2 - 貯血槽 - Google Patents

貯血槽 Download PDF

Info

Publication number
JP5245849B2
JP5245849B2 JP2009007802A JP2009007802A JP5245849B2 JP 5245849 B2 JP5245849 B2 JP 5245849B2 JP 2009007802 A JP2009007802 A JP 2009007802A JP 2009007802 A JP2009007802 A JP 2009007802A JP 5245849 B2 JP5245849 B2 JP 5245849B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
blood
conduit
filter
cardiotomy section
defoaming
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2009007802A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2010162207A (ja
Inventor
佐千子 石川
稔 田中
豊 勝箆
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JMS Co Ltd
Original Assignee
JMS Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JMS Co Ltd filed Critical JMS Co Ltd
Priority to JP2009007802A priority Critical patent/JP5245849B2/ja
Publication of JP2010162207A publication Critical patent/JP2010162207A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5245849B2 publication Critical patent/JP5245849B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、心肺手術等を行う際に使用される体外血液循環回路において、体外循環中の血液を一時的に貯留する貯血槽に関する。特に、心内血を濾過するカーディオトミー部を内蔵した貯血槽に関する。
心臓手術等を行う場合、患者の心臓や肺の機能を代替するための血液ポンプや人工肺を備えた体外血液循環回路が用いられる。体外血液循環回路には、患者の静脈から脱血された静脈血を一時的に貯留して循環回路血液量を調整するための貯血槽(「静脈血貯血槽」と呼ばれることがある)や、術野に溢れた血液(心内血)を吸引して回収して一時的に貯留するための貯血槽(「心内血貯血槽」と呼ばれることがある)が設けられる。心内血は、静脈血に比べて、肉片、脂肪、凝血塊などの異物や気泡を多く含むので、心内血貯血槽には、異物を除去するためのフィルタと気泡を破泡させるための消泡材とからなるカーディオトミー部が設けられる。静脈血と心内血とを共通する貯血槽に貯留することも広く行われている。
図15は、従来のカーディオトミー部900の一例の概略構成を示した断面図である。このカーディオトミー部900は、全体として略円筒形状を有するフィルタ910と、フィルタ910の内側に配置され、略円筒形状を有する消泡材920とを備える。フィルタ910の上下の端縁には、略円板形状を有する樹脂板931,932が接着されている。消泡材920は、上側の樹脂板931に接着されて保持されている。上側の樹脂板931の中央には貫通孔933が形成されている。貫通孔933には、心内血をカーディオトミー部900内に導入する導管935が挿入されている。二点鎖線950は通常の血液面レベルを示す。消泡材920及び導管935の下端は血液面レベル950よりも高い位置に配置されている(例えば特許文献1参照)。
術野からポンプを用いて吸引された心内血は、導管935を通じてカーディオトミー部900内に流入し、フィルタ910を通過してカーディオトミー部900外に流出する。カーディオトミー部900内において、血液中に含まれていた気泡は血液面上に浮上する。血液面上に浮かんだ気泡は、その数が増えるにしたがい徐々に盛り上がるが、消泡材920に接すると破泡する。
特開2002−165878号公報(段落[0040]、図2)
しかしながら、図15に示す従来のカーディオトミー部900は、導管935を通じてカーディオトミー部900内に流入する血液の流入抵抗が増大するという問題を有していた。
この問題の原因として、以下の2つが考えられる。
第1は、血液面レベル950の変動等により導管935の下端が血液中に没するからである。導管935の下端が血液中に没すると、導管935を通じてカーディオトミー部900内に流入する血液の流入抵抗が増大してしまう。
第2は、カーディオトミー部900の消泡特性が劣るからである。これは、導管935と消泡材920との間に空間960が形成されているためである。気泡は消泡材920に接触しないと破泡しないから、血液面上の気泡は、この空間960内に盛り上がるように成長することが可能である。カーディオトミー部900内で気泡が成長すると、カーディオトミー部900内の気圧が上昇し、導管935を通じてカーディオトミー部900内に流入する血液の流入抵抗が増大する。
本発明は、従来のカーディオトミー部が有する上記の課題を解決し、カーディオトミー部内に流入する血液の流入抵抗の増大が抑制された貯血槽を提供することを目的とする。
本発明の貯血槽は、上部に心内血流入ポートを備え、下端に血液流出ポートを備えたハウジングと、前記ハウジング内に配置されたカーディオトミー部と、前記心内血流入ポートと連通し、前記心内血流入ポートからの血液を前記カーディオトミー部内に流入させる導管とを有する。前記導管が、前記カーディオトミー部内に上方から下方に向かって挿入されている。前記カーディオトミー部は、フィルタと、前記導管を取り囲むように前記フィルタの内側に配置された消泡材とを有する。前記フィルタの下端は略一直線状又は曲線状にシール又は折り曲げられている。前記消泡材は、外側層と、前記外側層の内側に配された内側層とを備え、前記内側層が上側にのみに配された半二重構造を有する。前記導管の下端から上方に向かって延びるスリットが前記導管の側面に形成されている。
本発明の貯血槽によれば、導管を取り囲む消泡材は、上側が二重で下側が一重の半二重構造を有しているので、優れた消泡特性を発揮する。従って、カーディオトミー部内に流入する血液の流入抵抗の増大を抑制することができる。また、導管の下端の側面にスリットが形成されているので、血液面レベルの変動等により導管の下端が血液中に没することがあっても、カーディオトミー部内に流入する血液の流入抵抗の増大を抑制することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る貯血槽の概略構成を示した斜視図である。 図2は、図1に示した本発明の一実施形態に係る貯血槽の側面断面図である。 図3は、図1に示した本発明の一実施形態に係る貯血槽に内装されるサポート部材の斜視図である。 図4Aは本発明の一実施形態に係る貯血槽に使用されるカーディオトミー部の側面図、図4Bは図4Aの4B−4B線に沿った矢視断面図、図4Cは図4Aの4C−4C線に沿った矢視断面図である。 図5Aは本発明の一実施形態に係るカーディオトミー部を構成するフィルタの斜視図、図5Bはその側面図、図5Cはその上面図である。 図6Aは、本発明の実施の形態1に係るカーディオトミー部を構成するフィルタを製造するための一工程を示した斜視図である。 図6Bは、本発明の実施の形態1に係るカーディオトミー部を構成するフィルタを製造するための一工程を示した斜視図である。 図7Aは、本発明の消泡材の第1の製造方法の一工程を示した斜視図である。 図7Bは、本発明の消泡材の第1の製造方法の一工程を示した斜視図である。 図7Cは、本発明の消泡材の第1の製造方法の一工程を示した斜視図である。 図7Dは、第1の製造方法で得られた本発明の消泡材をフィルタ内に挿入する工程を示した斜視図である。 図8は、本発明の消泡材の第2の製造方法の一工程を示した斜視図である。 図9Aは本発明の消泡材の第3の製造方法の一工程を示した斜視図、図9Bはその断面図である。 図10Aは本発明の消泡材の第3の製造方法の一工程を示した斜視図、図10Bはその断面図である。 図11は、第3の製造方法で得られた本発明の消泡材をフィルタ内に挿入する工程を示した斜視図である。 図12は、本発明の一実施形態に係る貯血槽に使用されるカーディオトミー部に導管が挿入された状態を示した断面図である。 図13は、本発明の一実施形態に係る貯血槽において、カーディオトミー部に心内血を流入させる導管の下端に形成されたスリットを示した斜視図である。 図14は、本発明の一実施形態に係る貯血槽において、カーディオトミー部に心内血を流入させる導管の下端が血液中に没した状態を示した断面図である。 図15は、従来のカーディオトミー部の一例の概略構成を示した断面図である。
上記の本発明の貯血槽において、前記外側層と前記内側層とが同一の厚みを有していることが好ましい。これにより、外側層と内側層とを、一定厚みの原反シートから略「T」字状の消泡材用材料を切り出すことで一体的に作成することができるので、消泡材を効率良く製造することができる。
前記内側層の下端は、前記スリットの上端と同じか又はこれより高い位置にあることが好ましい。これにより、消泡材の消泡特性が更に向上する。
前記外側層の上下方向寸法をHu、前記導管の下端と前記外側層の下端との上下方向における距離をLとしたとき、L/Hu≦0.1を満足することが好ましい。これにより、導管を通じてカーディオトミー部に流入する血液の流入抵抗を更に低減することができる。
前記導管の下端から前記スリットの上端までの長さHsが5mm以上30mm以下であることが好ましい。長さHsが長すぎると、消泡材による消泡効果が得られにくくなる。長さHsが短すぎると、スリットによって得られる上記の効果が低減する。
前記スリットの幅Wsが1mm以上5mm以下であることが好ましい。スリットの幅Wsが広すぎると、消泡材による消泡効果が得られにくくなる。スリットの幅Wsが狭すぎると、スリットによって得られる上記の効果が低減する。
以下、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下に示す実施形態に限定されない。
[貯血槽]
図1は本発明の一実施形態に係る貯血槽5の概略構成を示した斜視図、図2はその側面断面図である。この貯血槽5は、ハウジング本体31とハウジング本体31の上部に載置された蓋体36とからなるハウジング30を備える。
ハウジング本体31は、その底面の中心から外れた一部が下方に突出して形成された貯血部32と、貯血部32の下端に設けられた、血液が流出する血液流出ポート33とを備える。ハウジング本体31の下面には、手術室に立設された支柱の上端を挿入することで貯血槽5を保持するための固定用穴34が形成されている。
蓋体36には、心内血が流入する複数の心内血流入ポート50と、静脈血が流入する静脈血流入ポート51とが取り付けられている。更に、蓋体36には、薬液等を血液に混入するための複数の薬液注入ポート71,72、緊急に大量の薬液を血液に混入させたり、カーディオトミー部2のフィルタ10が目詰まりにより使用できなくなった場合に代替のカーディオトミー部を通過させた血液を流入させたりするためのサービスポート73、貯血槽5内の圧力を調整するための排気ポート74、貯血槽5内の圧力が異常な陽圧又は陰圧になるのを防止するための圧力調整弁75等が設けられている。静脈血流入ポート51には、静脈血の温度を測定するための温度プルーブ52が突き刺されている。
静脈血流入ポート51には体外血液循環回路の脱血ラインのチューブが接続され、心内血流入ポート50には心内血吸引ラインのチューブが接続される。血液流出ポート33には体外血液循環回路の送血ラインのチューブが接続される。薬液注入ポート71,72には所定の薬液パックに接続された薬液注入ラインのチューブが接続される。薬液注入ポート71から流入した薬液はカーディオトミー部2内を通過せずに貯血部32内に流入し、薬液注入ポート72から流入した薬液はカーディオトミー部2内を通過した後、貯血部32内に流入する。サービスポート73には各種ラインのチューブが接続される。温度プルーブ52には温度計測機器と接続された電気配線が接続される。
ハウジング30内には、静脈血濾過網47を保持するサポート部材40が収納されている。図3は静脈血濾過網47を保持していない状態のサポート部材40を示した斜視図である。サポート部材40は、略升形状を有するカップ状部41と、カップ状部41の一側面に形成された格子状フレームからなる枠状部45とを備えている。カップ状部41の底面には溝43が形成されている。枠状部45は、ハウジング本体31の貯血部32内に挿入されるように、カップ状部41よりも下方に延びている。枠状部45の側面に形成された開口を塞ぐように、静脈血濾過網47が枠状部45に固定保持される。枠状部45の開口は、枠状部45の上下方向のほぼ全範囲にわたって延設されている。枠状部45の下端は、血液流出ポート33近傍にまで達している。
静脈血濾過網47は、血液中の異物や気泡を除去するフィルターとしての機能を有していれば、その構成及び材料に特に制限はなく、公知のものを適宜選択して使用することができる。例えば、静脈血濾過網47として多数の微細な開口を有するスクリーンフィルタを用いることができる。
静脈血流入ポート51と静脈血導入管80の上端とが蓋体36を介して接続されている。静脈血導入管80は、カップ状部41の溝43に嵌め込まれ、カップ状部41から枠状部45へとサポート部材40の内側を案内され、その下端の開口は、貯血槽5の最低血液面レベルBよりも下側に位置している。
「カーディオトミー部]
図2に示すように、心内血流入ポート50の下側には、カーディオトミー部2がサポート部材40内に配置されている。図4Aはカーディオトミー部2の側面図、図4Bは図4Aの4B−4B線に沿った矢視断面図、図4Cは図4Aの4C−4C線に沿った矢視断面図である。
カーディオトミー部2は、全体として袋形状(または、コーヒー抽出の際に使用される紙製のコーヒーフィルタに類似した形状)を有するフィルタ10と、フィルタ10の内側に配置された消泡材20とを備える。フィルタ10の下端(折り曲げ部)11aはカップ状部41の底面に接触しており(図2参照)、これにより、カーディオトミー部2から流出した血液の泡立ちを低減している。
フィルタ10の上端及び消泡材20の上端に樹脂板60が接着されている。樹脂板60の略中央には貫通孔61が形成されている。図2に示すように、貫通孔61には、上方から導管90が挿入されている。導管90は、蓋体36に設けられた複数の心内血流入ポート50及び複数の薬液注入ポート72と連通している。導管90の側面には、その下端から上方に向かって延びる一対のスリット91が形成されている。
[フィルタ]
カーディオトミー部2を構成するフィルタ10について説明する。
図5Aはカーディオトミー部2を構成するフィルタ10の斜視図、図5Bはその側面図、図5Cはその上面図である。フィルタ10は、図5Bに示した第1方向801に沿ってプリーツ加工されたフィルタ部材11からなる。フィルタ部材11は、第1方向801と交差する第2方向802に沿って折り曲げられた折り曲げ部11aを有している。更に、フィルタ部材11は、第2方向802と交差するその一対の端縁11b,11cにてそれぞれシールされている。
フィルタ10の製造方法を以下に説明する。
最初に、図6Aに示すように、スクリーンフィルタ12の両側にサポート材13a,13bをそれぞれ重ね合わせて三層積層構造を有する長方形状のフィルタ部材11を作成する。
次に、図6Bに示すように、長方形状のフィルタ部材11の一辺と平行な第1方向801に沿って多数のプリーツを形成する。即ち、一定ピッチで、第1方向801と平行な方向に沿って山折りと谷折りとを繰り返して行う。
次に、フィルタ部材11の第1方向801における中間位置を通り、第1方向801と直交する第2方向802に平行な二点鎖線で示す折り曲げ線15に沿って、フィルタ部材11を矢印16a,16bの方向に折り曲げる。この際、例えば樹脂や金属等の硬質材料からなる治具の直線状の一端縁を折り曲げ線15に沿ってフィルタ部材11に押し付けて、治具と接触したプリーツの全ての山(尾根)を第2方向802のいずれか一方の側に変位させながら折り曲げると、容易且つ見映え良く折り曲げることができる。
次に、フィルタ部材11の第2方向802における両端縁をそれぞれシールして接合する。即ち、第2方向802において一方の側に位置する端縁11bのうち、折り曲げ線15に対して一方の側に位置する端縁部11b1と他方の側に位置する端縁部11b2とを重ね合わせてシールする。第2方向802において他方の側に位置する端縁11cも同様にシールする。シールの方法は特に制限はなく、フィルタ部材11の材料などを考慮して適宜選択すればよいが、例えばヒートシール法を用いることができる。この際、シールされる2つの部材(例えば端縁部11b1と端縁部11b2)の間に、塩化ビニルなどのシール性を向上させる材料を挟んでも良い。
かくして、図5A〜図5Cに示した、全体として袋形状(又は、コーヒー抽出の際に使用する紙製のコーヒーフィルタに類似した形状)を有するフィルタ10を得ることができる。
フィルタ10を構成するフィルタ部材11はスクリーンフィルタ12とこれを挟む一対のサポート材13a,13bとからなる三層積層構造を有している。スクリーンフィルタ12が相対的に高い機械的強度を有する一対のサポート材13a,13bで挟まれて保持されているので、スクリーンフィルタ12を所望する形状に維持することができる。また、フィルタ部材11に多数のプリーツが形成されているので、フィルタ部材11の表面積が増大し、濾過効率が向上し、フィルタ寿命を長くすることができる。
スクリーンフィルタ12は、血液が通過する際に血液中の異物を捕捉して除去する機能を有している。更に、気泡を捕捉する機能を有していても良い。このような機能を有するスクリーンフィルタ12としては、特に制限はなく、従来のカーディオトミー部に使用されていた公知のスクリーンフィルタを任意に選択して使用することができる。例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレンなどの樹脂材料からなるメッシュフィルタを用いることができる。また、その孔径は、特に制限はないが、20〜50μmが好ましい。
サポート材13a,13bは、スクリーンフィルタ12の形状を維持するために用いられる。従って、スクリーンフィルタ12よりも高い機械的強度を有している必要がある。サポート材13a,13bとしては、特に制限はなく、従来のカーディオトミー部に使用されていた公知のサポート材を任意に選択して使用することができる。例えばポリプロピレンなどのヒートシール性が良好な材料からなるメッシュ部材を用いることができる。サポート材13a,13bの孔径は、スクリーンフィルタ12の孔径よりも大きいことが好ましい。
スクリーンフィルタ12及び/又はサポート材13a,13bに消泡剤(例えばシリコーン)をコーティングして気泡の消泡機能を付与しても良い。
[樹脂板]
図4A及び図4Bに示すように、樹脂板60は、フィルタ10の折り曲げ部11aとは反対側(上側)の端縁に、全周にわたって接着されている。樹脂板60の材料は特に制限はないが、例えばポリウレタンなどの接着剤を用いることができる。樹脂板60の平面形状は、図4A及び図4Bに示した例では長円形(即ち、陸上競技場のトラック(走路)状)であるが、これに限定されず、楕円形、円形、長方形など任意の形状を選択できる。樹脂板60を設けることより、フィルタ10の形状保持特性が向上する。樹脂板60には、血液が流入するための貫通孔61が形成されている。
[消泡材]
カーディオトミー部2を構成する消泡材20について説明する。
消泡材20は、図2に示すように、カーディオトミー部2内に挿入された導管90を取り囲むように設けられている。また、図4Cに示すように、消泡材20は、フィルタ10の内側に、フィルタ10の内周面に沿って設けられている。フィルタ10がプリーツ加工されていることにより、フィルタ10と消泡材20との間には隙間28が形成されている。図4Bに示すように、消泡材20の上端が樹脂板60に接着されることで消泡材20は樹脂板60に保持されている。
消泡材20は、外側層21と、外側層21の内側に配された内側層22とを備え、内側層22が上側にのみに配された半二重構造を有している。すなわち、消泡材20は、上下方向において上側の領域に、外側層21と内側層22とが重ね合わされた二重構造を有し、下側の領域に、内側層22が存在せず、外側層21のみで構成された一重構造を有している。上側の二重構造を有する部分を二重部20D、下側の一重構造を有する部分を一重部20Sと呼ぶことにする。
外側層21及び/又は内側層22は、周方向において連続している必要はない(例えば後述する図7C参照)。また、二重部20Dにおいて、全周にわたって二重構造を有している必要はなく、例えば内側層22が存在しない部分が周方向の一部に存在していても良い。
外側層21及び内側層22の厚みは同一でも異なっていても良い。但し、同一であると、後述するように外側層21と内側層22とを、一定厚みの原反シートから略「T」字状の消泡材用材料を切り出すことで一体的に作成することができるので、消泡材20を効率良く製造することができる。
消泡材20としては、接触した気泡を破泡させる機能を有していれば特に制限はなく、従来のカーディオトミー部に使用されていた公知の消泡材料を任意に選択して使用することができる。例えば、基層としてのポリウレタンの表面に消泡剤としてのシリコーンがコーティングされた材料を用いることができる。また、形態としては、連続気泡を有する発泡体、織物、編み物、不織布などを用いることができる。消泡材20は可撓性及び柔軟性を有していることが好ましい。
消泡材20の製造方法を以下に説明する。
消泡材20の第1の製造方法を図7A〜図7Dを用いて説明する。以下の説明において、第1の製造方法で得られた消泡材を他の製造方法で得られた消泡材と特に区別する必要があるときは、「消泡材20A」と表示する。
最初に、図7Aに示すように、同一寸法の2枚の消泡材用材料200a,200bを作成する。消泡材用材料200a,200bは、略矩形の主要部201a,201bと、主要部201a,201bの対向する二辺(短辺)にそれぞれ設けられた略矩形の副部202a1,202a2;202b1,202b2とを備え、全体として略「T」字状を有している。副部202a1と副部202a2とは同一寸法である。同様に、副部202b1と副部202b2とは同一寸法である。消泡材用材料200a,200bは、例えば一定厚さのポリウレタンからなる原反シートを所定形状に切り出すことで作成することができる。
次いで、消泡材用材料200aと消泡材用材料200bとを重ね合わせて、主要部201a,201bの対向する二辺(短辺)に沿って接合する。図7Aにおいて、ドット模様を付した領域203a1,203a2;203b1,203b2は、接合予定領域を示す。接合方法は、特に制限はなく、消泡材用材料200a,200bの材料などに応じて適宜選択すればよいが、例えば熱、高周波、又は超音波により加熱して溶着する方法、接着剤を用いて接着する方法、あるいは縫合する方法などを用いることができる。
かくして、図7Bに示すように、2枚の消泡材用材料200a,200bが接合部205a,205bで環状に接合された消泡材用材料環状体207を得る。
次いで、消泡材用材料環状体207を矢印208方向に表裏を裏返して、図7Cに示す本発明の消泡材20Aを得る。消泡材用材料200a,200bは一般に柔軟な材料からなるので、消泡材用材料環状体207を裏返すことは容易である。消泡材20Aでは、副部202a1,202a2が主要部201aに重なり合うように、消泡材用材料200aが主要部201aの対向する二辺(短辺、すなわち接合部205a,205b)に沿って折り返されている。同様に、副部202b1,202b2が主要部201bに重なり合うように、消泡材用材料200bが主要部201bの対向する二辺(短辺、すなわち接合部205a,205b)に沿って折り返されている。そして、環状に接合された主要部201a,201bの内側に副部202a1,202a2;202b1,202b2が配置されている。
消泡材20Aでは、主要部201aと主要部201bとが対向する二辺(短辺)に沿った接合部205a,205bのみで接合されている。但し、本発明はこれに限定されず、例えば、主要部201aと副部202a1,202a2とを接合しても良く、同様に、主要部201bと副部202b1,202b2とを接合しても良い。この場合の接合方法は、接合部205a,205bの接合方法と同様の方法を用いることができる。
次いで、図7Dに示すように、フィルタ10内に消泡材20Aを挿入する。このとき、副部202a1,202a2;202b1,202b2が存在する側を上側にすることはいうまでもない。一般に消泡材用材料200a,200bは被圧縮性を有するので、消泡材20Aを適宜圧縮変形させてフィルタ10内に収めることができる。このとき、図7Dに示すように、副部202a1と副部202a2とが重なり合い、副部202b1と副部202b2とが重なり合うように消泡材20Aを折り曲げて挿入すると、副部202a1,202a2;202b1,202b2を用いて周方向にほとんど切れ目のない内側層22を容易に形成することができる。
その後、フィルタ10の上端及び消泡材20Aの上端に樹脂板60を接着することで、図4Bに示したカーディオトミー部2が得られる。この場合、外側層21は主要部201a,201bで構成され、内側層22は、副部202a1,202a2;202b1,202b2で構成される。
上記の消泡材20Aの製造方法において、必要に応じて消泡材用材料200a,200bの表面にシリコーンなどの消泡剤をコーティングしても良い。コーティング工程はどの段階で行っても良いが、例えば図7Cの段階、すなわち、消泡材用材料環状体207の表裏を裏返した後であって、フィルタ10内に挿入する前に行うことが好ましい。
図7Aに示す消泡材用材料200a(消泡材用材料200b)の主要部201a(主要部201b)の接合予定領域203a1と接合予定領域203a2(接合予定領域203b1と接合予定領域203b2)とを結ぶ方向(図7Aの紙面左右方向)において、主要部201a(主要部201b)の寸法をLX1、副部202a1,202a2(副部202b1,202b2)の寸法をLX2としたとき、LX1>LX2×2を満足することが好ましい。これを満足すると、図7Dに示すように消泡材20Aを折り曲げてフィルタ10内に挿入したときに、副部202a1,202a2(副部202b1,202b2)の接合部205a,205bとは反対側の端面を主要部201a(主要部201b)の内周面に接触させて、二重部20Dにおいて副部202a1,202a2(副部202b1,202b2)を効率良く配置することができる。LX1≦LX2×2であると、図7Dに示すように消泡材20Aをフィルタ10内に挿入したときに、主要部201a(主要部201b)に対して副部202a1,202a2(副部202b1,202b2)が長すぎるために、その接合部205a,205bとは反対側の端部同士が重なり合ってしまうことがある。
また、図7Aに示す消泡材用材料200a,200bの主要部201a,201bの接合予定領域203a1,203a2;203b1,203b2に沿った方向(図7Aの紙面上下方向)において、主要部201a,201bの寸法をLY1、副部202a1,202a2;202b1,202b2の寸法をLY2としたとき、LY1≒LY2×2を満足することが好ましい。これにより、シート状の材料から消泡材用材料200a,200bを無駄なく切り出すことができる。
消泡材20の第2の製造方法を図8を用いて説明する。以下の説明において、第2の製造方法で得られた消泡材を他の製造方法で得られた消泡材と特に区別する必要があるときは、「消泡材20B」と表示する。
最初に、図8に示すように、幅LY1を有する2枚の長尺の消泡材用材料帯状体210a,210bを重ね合わせる。そして、ドット模様を付した、帯状体210a,210bの幅方向に沿った接合部205a,205bで、2枚の帯状体210a,210bを接合する。接合方法は、特に制限はなく、帯状体210a,210bの材料などに応じて適宜選択すればよいが、例えば熱、高周波、又は超音波により加熱して溶着する方法、接着剤を用いて接着する方法、あるいは縫合する方法などを用いることができる。帯状体210a,210bの長手方向(図8の紙面左右方向)において、接合部205aと接合部205bとは交互に配置される。隣り合う接合部205a,205b間の間隔は、図8において、左側に接合部205aが配置され右側に接合部205bが配置された領域211では広く、左側に接合部205bが配置され右側に接合部205aが配置された領域212では狭い。
次いで、相対的に狭い領域212において、二点鎖線で示した切断線213に沿って帯状体210a,210bを階段状に切断する。切断線213は、帯状体210a,210bの幅方向(図8の紙面上下方向)と平行な切断線213a,213bと、帯状体210a,210bの長手方向と平行な切断線213cとからなる。切断線213a,213bは接合部205a,205bにほぼ沿っている。切断線213cは帯状体210a,210bの幅方向の中央に位置している。相対的に広い領域211に対してその両側の切断線213の形状は、鏡面対称である。
接合部205a,205bで互いに接合された帯状体210a,210bを切断線213で順次切断すると、図7Bに示した消泡材用材料環状体207が得られる。その後、第1の製造方法と同様の工程を経て図7Cに示した消泡材20Aと実質的に同一の消泡材20Bを得ることができる。得られた消泡材20Bを、図7Dで説明したのと同様にフィルタ10内に挿入し、フィルタ10の上端及び消泡材20Bの上端に樹脂板60を接着することで、図4Bに示したカーディオトミー部2が得られる。
第2の製造方法によれば、帯状体210a,210bから、材料の無駄をなくして、消泡材用材料環状体207を効率良く製造することができる。
上記において、切断線213cの幅方向の位置は、帯状体210a,210bの幅方向の中央である必要はない。
2枚の帯状体210a,210bの接合と、切断線213に沿った切断とをほぼ同時に行っても良い。
消泡材20の第2の製造方法は、上記以外は第1の製造方法と同様であり、第1の製造方法においてした説明は第2の製造方法にも適用することができる。
消泡材20の第3の製造方法を図9〜図11を用いて説明する。以下の説明において、第3の製造方法で得られた消泡材を他の製造方法で得られた消泡材と特に区別する必要があるときは、「消泡材20C」と表示する。
最初に、図9A及び図9Bに示すように、消泡材用材料からなる筒状体220を準備する。筒状体220は、例えば、一定厚さを有する長方形状の消泡材用材料の平行な2辺を熱融着などの方法により接合することで得ることができる。
次に、筒状体220の上端221が筒状体220の内側に入るように折り返す。かくして、図10A及び図10Bに示す消泡材20Cを得る。消泡材20Cは、上側に二重構造を有する二重部20D、下側に一重構造を有する一重部20Sを備えた半二重構造を有している。図9A及び図9Bに示した筒状体220の上端221は、消泡材20Cの二重部20Dを構成する内側層22の下端に位置している。222は消泡材20Cの上端の折り曲げ部である。
更に、図11に示すように、消泡材20Cをフィルタ10内に収納する。次いで、フィルタ10の上端及び消泡材20Cの上端222に樹脂板60を接着することで、図4Bに示したカーディオトミー部2が得られる。
上記の第1〜第3の製造方法は例示に過ぎず、本発明の消泡材20は上記の第1〜第3の方法以外の方法で製造することももちろん可能である。
[作用]
以上のように構成された本実施形態の貯血槽5の作用を説明する。
貯血槽5内の血液の流れを簡単に説明する。図2において、患者の静脈から脱血された静脈血は、静脈血流入ポート51及び静脈血導入管80を順に通過して、静脈血導入管80の下端の開口から流出し、静脈血濾過網47を通過し、血液流出ポート33から流出する。また、患者の術野から吸引された心内血は、心内血流入ポート50、導管90、及びカーディオトミー部2を順に通過して、サポート部材40内に流出し、静脈血濾過網47を通過し、血液流出ポート33から流出する。この過程で、血液は貯血部32内に一時的に貯留される。
図12は、カーディオトミー部2の樹脂板60の貫通孔61に導管90が挿入された状態を示した、導管90の中心線に沿った断面図である。二点鎖線100は、カーディオトミー部2内の血液面レベルを示し、通常、これは導管90の下端よりも下に位置している。
最初に、カーディオトミー部2に挿入された導管90の下端に形成されたスリット91の作用を説明する。図13は、導管90の下端を下方から見た斜視図である。図示したように、導管90の下端には、円筒形状の導管90の中心軸に対して対称位置に、同一の形状及び寸法の一対のスリット91が形成されている。
図12に示したように、通常は、カーディオトミー部2内の血液面レベル100は導管90の下端よりも下に位置する。ところが、この血液面レベル100が何らかの理由により上昇することがある。このような場合、導管90の下端が血液中に没することがある。このとき、導管90にスリット91が形成されていないと、導管90を通じてカーディオトミー部2内に流入する血液の流入抵抗が増大する可能性がある。これに対して、図14に示すように導管90の下端が血液101中に没しても一対のスリット91の一部が血液面上に露出していれば、導管90を通じて流入する血液(心内血)102は一対のスリット91を通じて導管90外に流出することができるので、導管90内の気圧が上昇するのを防止できる。従って、導管90を通じてカーディオトミー部2内に流入する血液の流入抵抗が増大するのを抑制できる。このように、導管90にスリット91を形成することで、血液面レベル100が導管90の下端よりも上に上昇するという予期せぬ事態にも問題なく対応することができる。
導管90が心内血流入ポート50に加えて薬液注入ポート72にも連通している本実施形態の貯血槽5では、更に以下の効果を奏する。第1に、導管90の下端が血液100中に没した場合には、カーディオトミー部2内に流入する血液の流入抵抗が増大するのを抑制できるのと同じ理由により、薬液注入ポート72から導管90を通じてカーディオトミー部2内に流入する薬液の流入抵抗が増大するのを抑制できる。第2に、心内血流入ポート50から導管90を通ってカーディオトミー部2内に血液が流入することによって発生するアスピレータ効果により導管90に接続された薬液注入ポート72内が負圧になる現象を抑制できる。従って、薬液注入ポート72を通じて注入される薬液の流量制御が困難になるなどの問題の発生を防止できる。
導管90に形成されるスリット91の長さ(導管90の下端からスリット91の上端までの距離、図13参照)HSは、特に制限はないが、5mm以上30mm以下が好ましく、10mm以上20mm以下がより好ましい。スリット91の長さHSが上記の範囲より長いと、スリット91から導管90の外に漏れ出た血液中の気泡が消泡材20と効果的に接触することなく下方に流れてしまうので、消泡特性が低下することがある。逆に、スリット91の長さHSが上記の範囲より短いと、スリット91による上記の効果が得られにくくなる。
また、導管90に形成されるスリット91の幅(導管90の周方向の寸法、図13参照)WSは、特に制限はないが、1mm以上5mm以下が好ましく、2mm以上3mm以下がより好ましい。スリット91の幅WSが上記の範囲より広いと、上述したスリット91の長さHSが長い場合と同じ理由により消泡特性が低下することがある。逆に、スリット91の幅WSが上記の範囲より狭いと、スリット91による上記の効果が得られにくくなる。
上記の説明では、導管90に形成されるスリット91の数は2本であったが、本発明はこれに限定されず、1本または3本以上であっても良い。複数本のスリット91を形成する場合には、導管90の中心軸に対して等角度間隔で配置するのが好ましい。複数本のスリット91を設ける場合、全てのスリット91間で、その長さHS及び幅WSは同一である必要はなく、異なっていても良い。
導管90の材料は、特に制限はなく、従来の導管935の材料と同じ材料、例えばポリカーボネートを使用することができる。導管90の寸法も特に制限はないが、その外径は8mm以上16mm以下、内径は6mm以上12mm以下、厚みは1.0mm以上2.0mm以下が好ましい。
次に、半二重構造の消泡材20の作用を説明する。
本発明では、フィルタ10は、紙製のコーヒーフィルタに類似した形状を有している。このようなフィルタ10内に上方から挿入された導管90の周囲を取り囲むように、消泡材20がフィルタ10内に配置されている。従って、カーディオトミー部2内の血液面レベル100から上方を見たとき、消泡材20の外側層21の下端面21b(図12参照)が導管90の回りをほぼ覆っている。更に、外側層21の下端面21bよりも上側では、導管90と外側層21との間に内側層22が存在する。従って、導管90とフィルタ10との間の空間の大部分は消泡材20によって占められている。
導管90の下端の開口からカーディオトミー部2内に流入した血液内に含まれていた気泡は、血液面100上に浮上し、その数が増加するにしたがって徐々に盛り上がるように成長する。しかしながら、血液面100の上空のほとんどは消泡材20の外側層21及び導管90で覆われているので、血液面100上のほとんどの気泡は外側層21の下端面21bに接して破泡してしまう。破泡しなかった僅かな気泡は、外側層21の下端面21bと導管90との間の隙間を通り抜けて上方に向かって成長するかも知れないが、外側層21及び内側層22が導管90に接近して配置されているので、まもなく外側層21又は内側層22に接触して破泡してしまう。
このように、本実施形態では、導管90の周囲に半二重構造の消泡材20が配置されているので、カーディオトミー部2の消泡特性が向上する。従って、気泡の成長によるカーディオトミー部2内の気圧の上昇を抑制できる。その結果、導管90を通じてカーディオトミー部2内に流入する血液や薬液の流入抵抗の増大を抑制することができる。
導管90の下端と外側層21の下端とはほぼ同一高さであることが好ましい。具体的には、図12に示すように、外側層21の上下方向寸法(即ち、樹脂板60の下面から外側層21の下端までの上下方向距離)をHu、導管90の下端と外側層21の下端との上下方向における距離をLとしたとき、L/Hu≦0.1を満足することが好ましい。
L/Hu>0.1であり、且つ、導管90の下端が外側層21の下端から下に向かって突き出していると、導管90の下端がカーディオトミー部2内に貯留した血液内に浸漬する可能性が高くなるので、導管90を通じてカーディオトミー部2に流入する血液や薬液の流入抵抗が増加することがある。
L/Hu>0.1であり、且つ、導管90の下端が外側層21の下端よりも上側に後退していると、導管90の下端の開口が外側層21で塞がれてしまう可能性があり、この場合には、導管90を通じてカーディオトミー部2に流入する血液や薬液の流入抵抗が増加する。
導管90の下端は、内側層22の下端よりも、更には外側層21の下端よりも下側に位置することが好ましい。導管90の下端の開口が内側層22や外側層21で塞がれてしまう可能性がなくなるからである。
フィルタ10の上下方向内寸法(即ち、樹脂板60の下面からフィルタ10の内壁の下端までの上下方向距離)をHfとしたとき、0.2≦Hu/Hf≦0.95、更に0.3≦Hu/Hf≦0.9を満足することが好ましい。比Hu/Hfがこの不等式の上限値よりも大きいと、外側層21の上下方向寸法Huの増大に対応するように導管90のカーディオトミー部2内への突き出し長さ(即ち、樹脂板60の下面から導管90の下端までの上下方向距離)Ltを長くする必要がある。この結果、導管90の下端がカーディオトミー部2内に貯留した血液内に浸漬する可能性が高くなるので、カーディオトミー部2に対する血液や薬液の流入抵抗が増加することがある。逆に、比Hu/Hfがこの不等式の下限値よりも小さいと、外側層21及び/又は内側層22と導管90との間の隙間が拡大したり、消泡材20の表面積が減少したりすることがあり、その結果、消泡特性が悪化することがある。
内側層22の下端は、導管90に形成されたスリット91の上端と同じか、またはこれより高い位置にあることが好ましい。内側層22の下端が、導管90に形成されたスリット91の上端よりも低い位置にあると、スリット91から導管90の外に漏れ出た血液中の気泡が消泡材20と効果的に接触することなく下方に流れてしまうので、消泡特性が低下することがある。
次に、フィルタ10の作用を説明する。
フィルタ10は、その下端が略一直線状に折り曲げられているので、全体として紙製のコーヒーフィルタに類似した形状を有している。従って、このようなフィルタ10を備える本実施形態のカーディオトミー部2は、図15に示した従来のカーディオトミー部900が有していた下側の樹脂板932は不要である。これにより、初期通液性に優れ、動的充填量および残血量を少なくすることができるという効果を奏する。ここで、初期通液性は、導管90を通じてカーディオトミー部2に最初に充填液を流入させたときに、充填液がフィルタ10外に流出し始めるまでに必要な充填液量によって判断される。初期通液性が優れることにより、体外血液循環回路を充填するのに必要な血液量、即ち回路充填量が減少する。回路充填量が減少すると、患者体内から体外へ移行する血液量が減少するので、患者負担が軽減する。動的充填量とは、循環前に存在する静的充填量と循環に必要な余分な液量との合計量であって、フィルタ10内に滞る液量等も含まれる。動的充填量が少ないことにより、回路充填量が減少するだけでなく、貯血槽内の貯血量の増減の応答性が向上し、血液面レベルの制御、調整をする上で施術者の負担が軽減される。残血とは、体外血液循環を停止後にカーディオトミー部2に残存する血液をいう。残血量が少ないことにより、患者への返血量が多くなるので、患者負担が軽減する。
上述した実施形態は一例であって、本発明はこれに限定されず、種々の変更が可能である。
上記の実施形態ではフィルタ10の下端11aは直線状に形成されていたが、本発明はこれに限定されず、例えば曲線状であっても良い。カーディオトミー部を貯血槽に搭載したときに、下端11aと貯血槽内の部材(例えばカップ状部41の底面又は静脈血導入管80)との接触領域がなるべく大きくなるように、その部材の表面形状に沿うように下端11aが形成されるのが好ましい。下端11aと貯血槽内の部材との接触領域が増大することにより、カーディオトミー部から流出した血液は下端11aからこれが接触する部材上を流れて貯血部32に至るので、カーディオトミー部から流出した血液が泡立つのを防止できる。
また、フィルタ10の下端11aを上記の実施形態のように折り曲げるのではなく、シールしても良い。シールの方法は、特に制限はなく、フィルタの材料などに応じて適宜選択すればよいが、例えば熱、高周波、又は超音波により加熱して溶着する方法、接着剤を用いて接着する方法、あるいは縫合する方法などを用いることができる。
更に、カーディオトミー部を構成するフィルタは、上記の実施形態に示したスクリーンフィルタ12を含むフィルタ部材11をプリーツ加工し袋形状に形成したフィルタ10に限定されない。例えば不織布をプリーツ加工することなく袋形状に形成したフィルタであっても良い。
上記のカーディオトミー部2では、消泡材20は樹脂板60に接着されて保持されていたが、消泡材20の保持方法はこれに限定されない。例えば、フィルタ10に対して消泡材20が下降しないように消泡材20の下端に設けられた治具で消泡材20を保持しても良い。
本発明の貯血槽は、上述した貯血槽5のように静脈血と心内血とが流入する心内血貯血槽一体型静脈血貯血槽に限定されず、公知の如何なる貯血槽であっても良い。例えば、静脈血が流入しない心内血貯血槽であっても良い。
(実施例1)
上記の実施形態で説明したカーディオトミー部2と同じ構造を有するカーディオトミー部を以下のようにして作成した。
図5A〜図5Cに示すフィルタ10を図6A〜図6Bで説明した工程を経て作成した。スクリーンフィルタ12として、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなり、孔径が40μmのメッシュフィルタを用いた。サポート材13a,13bとして、ポリプロピレンからなり、孔径が1mmのメッシュを用いた。フィルタ部材11に形成した多数のプリーツの隣り合う山折りと谷折りとの間隔は10mmとした。
図7Cに示す半二重構造の消泡材20Aを図7A〜図7Bで説明した工程を経て作成した。消泡材用材料200a,200bとして、連続気泡が形成された、厚み10mmのポリウレタン発泡体を用いた。主要部201a,201bの長辺方向寸法LX1=100mm、短辺方向寸法LY1=40mm、副部202a1,202a2;202b1,202b2の長辺方向寸法LX2=25mm、短辺方向寸法LY2=20mmとした。主要部201a,201bの短辺に沿って2枚の消泡材用材料200a,200bをヒートシール法により接合して図7Bに示す消泡材用材料環状体207を得た。消泡材用材料環状体207をシリコーン濃度10%の溶液に浸漬してポリウレタン発泡体の表面にシリコーンを塗布した。その後、環状体207の表裏を裏返して図7Cに示す消泡材20Aを得た。
次いで、図7Dに示すように、フィルタ10内に消泡材20Aを挿入した。
長円形の型内に流し込んだポリウレタン接着剤にフィルタ10の上端と消泡材20Aの上端とを浸漬し、その状態でポリウレタン接着剤を硬化させて樹脂板60を形成した。
フィルタ10の上下方向内寸法Hf=75mmであった。外側層21の上下方向寸法Hu=35mmであった。
樹脂板60に2つの貫通孔を形成した。2つの貫通孔の一方に外径が10mm、内径が8mmの円筒形状の導管90を挿入し、他方にカーディオトミー部内の圧力を測定できるように水柱圧力計を接続した。導管90のカーディオトミー部2内への突き出し長さLt=36.8mmとした。導管90の下端には一対のスリット91が形成されていた。スリット91の長さHS=20mm、幅WS=2mmとした。
L/Hu=(Lt−Hu)/Hu=0.05であった。
かくして、実施例1に係るカーディオトミー部を作成した。
(実施例2)
実施例1において、導管90の下端に形成されるスリット91の長さをHS=10mmに変更する以外は実施例1と同様にして実施例1に係るカーディオトミー部を作成した。
(比較例1)
実施例1で用いた半二重構造の消泡材20Aに代えて全二重構造の消泡材を用いた。すなわち、実施例1において、副部202a1,202a2;202b1,202b2の短辺方向寸法LY2を主要部201a,201bの短辺方向寸法LY1と同じにする(すなわち、LY2=LY1=40mm)ことで、上下方向の全領域において外側層21の内側に内側層22が配された全二重構造の消泡材を作成した。
この全二重構造の消泡材を用いる以外は実施例1と同様にして比較例1に係るカーディオトミー部を作成した。
(比較例2)
実施例1で用いた半二重構造の消泡材20Aに代えて全一重構造の消泡材を用いた。すなわち、実施例1において、副部202a1,202a2;202b1,202b2を備えない、主要部201a,201bのみからなる略矩形状の2枚の消泡材用材料を作成した。この2枚の消泡材用材料を、その短辺に沿ってヒートシール法により接合して全一重構造の消泡材を作成した。
この全一重構造の消泡材を用いる以外は実施例1と同様にして比較例2に係るカーディオトミー部を作成した。
(評価)
導管90を通じて、カーディオトミー部に、0.5×-33/分で空気(気泡)を混入した血液(新鮮クエン酸加牛血、温度:25℃)を流入させて、カーディオトミー部内の圧力変化(内圧上昇)を水柱圧力計を用いて測定した。カーディオトミー部内の圧力はカーディオトミー部の消泡特性と相関を有し、カーディオトミー部の消泡特性が悪く、気泡が血液面上に盛り上がるように成長すると、カーディオトミー部内の圧力が上昇する。
血液の流量を0.1,0.2,0.5(×-33/分)の3通りに変えた。
圧力測定は、各流量において、血液の流入開始直後と、流入開始後30分経過時の2回行った。
測定結果を表1に示す。
Figure 0005245849
表1において、内圧上昇が「−」は、カーディオトミー部内に消泡しきれないほどに泡が大量に発生したために実験を中止したことを示す。
表1に示すように、消泡材が半二重構造を有する実施例1,2では消泡特性が優れていた。
本発明は、心肺手術等を行う際に使用される体外血液循環回路中に設けられる貯血槽として広く利用することができる。
2 カーディオトミー部
5 貯血槽
10 フィルタ
11 フィルタ部材
11a フィルタの下端(折り曲げ部)
12 スクリーンフィルタ
13a,13b サポート材
20,20A,20B,20C 消泡材
20D 二重部
20S 一重部
21 外側層
21b 外側層の下端面
22 内側層
30 ハウジング
31 ハウジング本体
32 貯血部
33 血液流出ポート
36 蓋体
40 サポート部材
41 カップ状部
43 溝
45 枠状部
47 静脈血濾過網
50 心内血流入ポート
51 静脈血流入ポート
52 温度プルーブ
60 樹脂板
61 貫通孔
71,72 薬液注入ポート
73 サービスポート
74 排気ポート
75 圧力調整弁
80 静脈血導入管
90 導管
91 スリット
100 血液面
101,102 血液
200a,200b 消泡材用材料
201a,201b 主要部
202a1,202a2,202b1,202b2 副部
205a,205b 接合部
207 消泡材用材料環状体
210a,210b 消泡材用材料帯状体
213,213a,213b,213c 切断線
220 筒状体
801 第1方向
802 第2方向

Claims (6)

  1. 上部に心内血流入ポートを備え、下端に血液流出ポートを備えたハウジングと、
    前記ハウジング内に配置されたカーディオトミー部と、
    前記心内血流入ポートと連通し、前記心内血流入ポートからの血液を前記カーディオトミー部内に流入させる導管とを有し、
    前記導管が、前記カーディオトミー部内に上方から下方に向かって挿入された貯血槽であって、
    前記カーディオトミー部は、フィルタと、前記導管を取り囲むように前記フィルタの内側に配置された消泡材とを有し、
    前記フィルタの下端は略一直線状又は曲線状にシール又は折り曲げられており、
    前記消泡材は、外側層と、前記外側層の内側に配された内側層とを備え、前記内側層が上側にのみに配された半二重構造を有し、
    前記導管の下端から上方に向かって延びるスリットが前記導管の側面に形成されていることを特徴とする貯血槽。
  2. 前記外側層と前記内側層とが同一の厚みを有している請求項1に記載の貯血槽。
  3. 前記内側層の下端は、前記スリットの上端と同じか又はこれより高い位置にある請求項1又は2に記載の貯血槽。
  4. 前記外側層の上下方向寸法をHu、前記導管の下端と前記外側層の下端との上下方向における距離をLとしたとき、L/Hu≦0.1を満足する請求項1〜3のいずれかに記載の貯血槽。
  5. 前記導管の下端から前記スリットの上端までの長さHsが5mm以上30mm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の貯血槽。
  6. 前記スリットの幅Wsが1mm以上5mm以下である請求項1〜5のいずれかに記載の貯血槽。
JP2009007802A 2009-01-16 2009-01-16 貯血槽 Active JP5245849B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009007802A JP5245849B2 (ja) 2009-01-16 2009-01-16 貯血槽

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009007802A JP5245849B2 (ja) 2009-01-16 2009-01-16 貯血槽

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2010162207A JP2010162207A (ja) 2010-07-29
JP5245849B2 true JP5245849B2 (ja) 2013-07-24

Family

ID=42578887

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009007802A Active JP5245849B2 (ja) 2009-01-16 2009-01-16 貯血槽

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5245849B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5799614B2 (ja) * 2011-07-05 2015-10-28 株式会社ジェイ・エム・エス 消泡材とその製造方法
JP5999401B2 (ja) * 2011-07-05 2016-09-28 株式会社ジェイ・エム・エス カーディオトミー部及び貯血槽
JP6102396B2 (ja) * 2013-03-22 2017-03-29 株式会社ジェイ・エム・エス 消泡材とその製造方法及び貯血槽

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06102088B2 (ja) * 1988-11-04 1994-12-14 テルモ株式会社 貯血槽
US5919153A (en) * 1996-10-10 1999-07-06 Medtronic, Inc. Hardshell venous reservoir with rotatable cardiotomy section
JP2002165878A (ja) * 2000-11-30 2002-06-11 Terumo Corp 貯血槽
JP4867692B2 (ja) * 2007-02-15 2012-02-01 株式会社ジェイ・エム・エス カーディオトミーフィルタ及び貯血槽
US20110098626A1 (en) * 2007-08-27 2011-04-28 Jms Co., Ltd. Blood reservoir
JP5046062B2 (ja) * 2007-08-27 2012-10-10 株式会社ジェイ・エム・エス 貯血槽
JP5045335B2 (ja) * 2007-09-25 2012-10-10 株式会社ジェイ・エム・エス 貯血槽

Also Published As

Publication number Publication date
JP2010162207A (ja) 2010-07-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4998555B2 (ja) 貯血槽
JP4867692B2 (ja) カーディオトミーフィルタ及び貯血槽
JP5045335B2 (ja) 貯血槽
KR20130033444A (ko) 혈액 처리 필터, 및 혈액 처리 필터의 제조 방법
JP5046063B2 (ja) 貯血槽
WO2010041604A1 (ja) 貯血槽
JP4500776B2 (ja) 人工肺
JP5245849B2 (ja) 貯血槽
KR20130056281A (ko) 혈액 처리 필터, 및 혈액 처리 필터의 제조 방법
JP5293067B2 (ja) 貯血槽
JP5999401B2 (ja) カーディオトミー部及び貯血槽
JP2007135662A (ja) 血液処理器具
JP5046062B2 (ja) 貯血槽
JP4874088B2 (ja) 人工肺
JP2010162208A (ja) 消泡材とその製造方法
JP5293066B2 (ja) フィルタ部材、貯血槽
JP6307916B2 (ja) 貯血槽
JP4849337B2 (ja) カーディオトミーフィルタ及び貯血槽
JP4952232B2 (ja) 貯血槽
JP5799614B2 (ja) 消泡材とその製造方法
JP6102396B2 (ja) 消泡材とその製造方法及び貯血槽
JP6132137B2 (ja) 貯血槽
JP3321486B2 (ja) 濾過装置
WO2018092802A1 (ja) 収納容器及び収納モジュール
JP2000342680A (ja) 白血球除去器

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120105

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130312

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20130313

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130325

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5245849

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160419

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250