JP6130997B2 - トイレットペーパー - Google Patents

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本発明は、トイレットペーパーに関し、特に1プライのトイレットペーパーに関する。
トイレットペーパーは、排泄後の清拭を主たる用途とするため、需用者は柔らかさを重視する。しかし、需要者はその柔らかさを、単に薄く、しなやかでコシがない実際の柔らかさだけではなく、表面の滑らかさとふんわりとした質感とを含めて評価していることが多い。
トイレットペーパーにおいては、需用者が求める柔らかいと評価する質感を高めるべく、嵩高さや厚みを増加させること目的の一つとして、エンボスを付与することが行なわれる。
しかし、従来のエンボス付与態様は、嵩高さや厚みは増加するが、それが必ずしもふんわり感が向上しておらず、柔らかいと評価される質感が十分に発現していないことがあった。
特に、シングル又はシングルタイプとも称される1枚(1プライ)もののトイレットペーパーは、薄くコシがないために、従来のエンボス付与態様では、エンボス凸面にざらつきを感じ、また、反発性も小さいためふんわり感を十分に感じられず、需用者は柔らかい質感と評価しないことが多い。
特開2005−160860 特開2003−275128
そこで、本発明の主たる課題は、シングルタイプとも称される1プライでありながら、表裏滑らかで、ふんわり感が感じられて使用者が柔らかいと評価する質感のトイレットペーパーを提供することにある。
上記課題を解決するための手段及びそれらの作用効果は次記のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
1プライのトイレットペーパーであって、
坪量が15〜25g/m2であり、
紙面の一方面にエンボス凹部のみがあり、
他方面にそのエンボス凹部に対応するエンボス凸部のみがあり、
深さ0.9〜1.7mm、底部面積1.6〜2.2mm2のエンボス凹部が、エンボス密度50〜70個/inch2かつ底部面積率17〜22%で付与され、
エンボス底部の輪郭線の長さがエンボス深さの3.5〜4.5倍であり、
8枚重ねて50gf/cm 2 を圧縮の上限として圧縮したさいの仕事量である圧縮仕事量WCが1.9gf・cm/cm2以上ある、
ことを特徴とするトイレットペーパー。
(作用効果)
本発明のトイレットペーパーは、1プライのトイレットペーパーでその坪量を15〜25g/m2としたうえ、深さ0.9〜1.7mm、底部面積1.6〜2.2mm2のエンボスを、エンボス密度50〜70個/inch2かつ底部面積率17〜22%で付与されており、その圧縮仕事量WCは1.9gf・cm/cm2以上である。圧縮仕事量WCが高いとエンボスが適度な抵抗で沈みこむようになり、これにより得られる感覚がふんわり感として需用者が柔らかいと感ずる質感の評価を高める。そして、その値が1.9gf・cm/cm2以上あると十分にふんわり感が感じられると評価される。なお、1プライのトイレットペーパーでは、薄くコシがないため弾力性や反発性が得られがたい。よって、このような弾力性、反発性と柔らかいと感ずる質感との相関は得られがたい。
また、本発明のトイレットペーパーは、エンボス底部の輪郭線の長さをエンボス深さの3.5〜4.5倍とすると、エンボス深さと底部の形状のバランスがよく、エンボスが厚み方向に潰れにくくなり、よりふんわり感がより感じられやすくなる。
また、エンボス底部のMD方向の長さをCD方向の長さの40〜70%とすると、表裏ともに滑らかでかつ表裏の滑らかさに差がないものとなり、柔らかな質感が高まり、より柔らかい質感と評価されるものとなる。
以上のとおり、本発明によれば、シングルタイプとも称される1プライでありながら、表裏滑らかで、ふんわり感が感じられて使用者が柔らかいと評価する質感のトイレットペーパーが提供される。
実施形態及び実施例1のトイレットペーパーのエンボスパターンを示す一部平面図である。 実施形態のトイレットペーパーのエンボスを説明するための図であり、図1のX部分の拡大図及びその模式的な断面を示す図である。 実施例2に係るトイレットペーパーのエンボスパターンを示す平面図である。 実施例3に係るトイレットペーパーのエンボスパターンを示す平面図である。 実施例4に係るトイレットペーパーのエンボスパターンを示す平面図である。 比較例1に係るトイレットペーパーのエンボスパターンを示す平面図である。 従来品1に係るトイレットペーパーのエンボスパターンを示す平面図である。 従来品2に係るトイレットペーパーのエンボスパターンを示す平面図である。 圧縮仕事量WCを説明するためのグラフである。
次いで、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳説する。
図1は本実施形態のトイレットペーパーのエンボスパターンを示す一部平面図であり、図2は本実施形態のトイレットペーパー1のエンボス10を説明するための図である。図2は、図1のX部分の拡大図とその模式的な断面を示している。
本実施形態のトイレットペーパー1は、シングルタイプ又は単にシングルとも称される1プライのトイレットペーパーであり、クレープ紙の一方面から型押しされてエンボス10が付与されている。したがって、紙面の一方面にエンボス凹部、他方面にそのエンボス凹部対応するエンボス凸部があるものとなっている。
この本実施形態のトイレットペーパー1の各エンボス10,10…の底部11は平面又は底側凸のやや椀状をなし、その底部面積は1.6〜2.2mm2となっている。なお、この底部面積とは、エンボス凹部形成面側からの平面視の面積である。
本実施形態のトイレットペーパー1は、その底部面積のエンボス10が、密度50〜70個/inch2で付与され、かつ底部面積率が17〜22%となっている。底部面積率は、エンボス凹部側紙面の平面視の全面積に対する底部面積の総和の割合である。
このエンボス形状及びエンボス付与態様の相乗によって、ふんわり感と相関する圧縮仕事量WCを1.9gf・cm/cm2以上とすることができる。なお、圧縮仕事量WCは数値が高いと、ある程度の抵抗で肌に密着しながら深く沈みこむように感じられ、これにより得られる感覚がふんわり感として需用者が柔らかいと感ずる質感の評価を高める。上限値は、特に定められるものではないが、1プライのトイレットペーパーであれば3.0gf・cm/cm2程度である。
なお、上記エンボス10の底部面積が1.6mm2未満ではエンボスが過度に潰れ難くなってふんわり感が発現し難くなり、反対に2.2mm2を超えても過度に潰れやすくなってふんわりとした感じが発現し難くなる。また、エンボス密度が50個/inch2未満であると、エンボスが潰れやすくなりふんわり感が低下するとともに、表面のざらつきが感じられるようになる。70個/inch2を超えると、エンボスが過度に潰れ難くなって硬い感じがするようになる。このようにエンボス及びその付与態様が本実施形態の範囲外であると需用者が柔らかいと感ずる質感が得られなくなる。
他方、本実施形態に係るトイレットペーパー1は、坪量が15〜25g/m2とされている。この坪量はJIS P 8124に基づくものである。坪量がこの範囲外であると、上記エンボス10及び付与態様としても十分なふんわり感が感じられない。特に、坪量が15g/m2未満であると柔らかさの点においては好ましいが、十分なコシがなく圧縮仕事量WC1.9gf・cm/cm2以上にすることが難しくなる。また、坪量が25g/m2を超えると、トイレットペーパー1が硬くなりすぎて、肌触りが悪化して、需用者が求める柔らかい質感が高まらない。
ここで、本実施形態のトイレットペーパー1における圧縮仕事量WCは、トイレットペーパーを8枚重ねた試料を、50gf/cm2を圧縮の上限として圧縮したさいの仕事量であり、ハンディ圧縮試験器(KES−G5)を用いて測定することができる。測定は、圧縮面積2cm2の円形平面をもつ鋼板を速度0.005cm/secで、最大圧縮荷重50gf/cm2まで8枚重ねの試料を圧縮する。なお、この操作を、圧縮負荷(gf/cm2)をY軸にとり、厚み(mm)をX軸にとると、図9に示すグラフとなり、そのグラフの斜線部の面積(S)が圧縮仕事量WCである。
この圧縮仕事量WCは上述のとおりふんわりとした感覚と相関があり、特に1.9gf・cm/cm2であるとふんわり感が感じられるようになり、需用者が柔らかいと感ずる質感が確保される。
他方、本実施形態のトイレットペーパー1のエンボス10は、特に需用者が柔らかいと感ずる質感とすべく、エンボス1の平面視形状(図2中Aで示す部分の外形)とその底部11の形状とが概ね相似形とされ、特に底部11と紙面との間の壁面(以下、外郭12ともいう)がほぼ垂直からやや傾斜する程度とされて、エンボス10の平面視形状の面積(図2中Aで示す部分の面積)が、底部11の面積の1.0〜1.3倍となっている。1.3倍を超えると外郭12による底部11の支持が弱くエンボス10が潰れ易くなり、ふんわり感向上の効果が発現し難くなる。反対に1.0倍未満、すなわちほぼ同形状で同じ大きさより小さいとエンボスを付与する際のエンボスロール等から紙面が剥がれ難くなり製造が難しくなる。
なお、図1に示す本実施形態のトイレットペーパー1のエンボス10の形状は、楕円であるが、必ずしもこれに限定されない。その他に円形、角取り四角形が例示できる。但し、好ましくは円形、楕円形である。角部がなく圧縮に対して外郭全体に圧縮力が分散され、ふんわり感が感じられやく、また、表裏面が滑らかとなり、需要者が柔らかいと感ずる質感となりやすい。
また、本実施形態のトイレットペーパー1は、好ましくエンボス底部11の輪郭線の長さL1がエンボス深さL2の3.5〜4.5倍となっている。この範囲である圧縮仕事量WCが1.9gf・cm/cm2によりなりやすい。ここで、エンボス底部11の輪郭線とは、エンボス底部11の形状の周縁の総長さであり、エンボス底部の形状が円であれば円周となる。このエンボス底部11の輪郭線の長さL1がエンボス深さL2の4.5倍を超えるとエンボス底部11の中央部分の張りがなくなりへたりやすくなるおそれが高まる。また、3.5倍よりも小さくなると、エンボス底部11を支持する外郭12が低くなり、エンボス全体が圧力で潰れやすくなるおそれ高まる。
また、本実施形態のトイレットペーパー1は、特にエンボス底部11のMD方向の長さL3がCD方向の長さL4の40〜70%となっている。すなわち、底部11の形状は、MD方向の長さL3がCD方向L4より短い形状となっている。
MD方向とは、抄紙工程における流れ方向であり、トイレットペーパーを構成するクレープ紙ではそのクレープの山、谷の延在方向に対して直行する方向である。CD方向は、MD方向に直行する方向であり、クレープ紙ではそのクレープの山、谷の延在方向である。
エンボス底部11を上記構成とすると、多数のエンボス10の底部11や外郭12のエッジのうち、クレープの山、谷の延在方向であるCD方向に沿う部分の長さが適度となり、エッジによる引っかかりが適度になり、表裏面の滑らかさがより優れるようになるとともに、表裏面の滑らかさの差も小さくなる。
なお、70%を超えるとややエッジによる引っかかりが感じられるようになり、40%未満であると、細長形状となりエッジのCD方向に沿う部分が過剰に強調され、MD方向にざらつきが感じられるようになる。
他方、本実施形態のトイレットペーパー1におけるエンボス10は、金属製エンボスロールと、これを受ける弾性ロールとで構成されるスチールラバー方式のエンボス付与装置によりエンボス加工するのがよい。その際のロール間の線圧は5〜30kg/cmとするのがよい。
本実施形態のトイレットペーパー1は、既知のトイレットペーパー用のクレープ紙にエンボス加工をして形成できるが、そのクレープ紙の原料パルプは特に限定されない。好適には、柔らかさの点で、特にバージンパルプのみをパルプ原料とするのがよく、その場合、特にNBKP(針葉樹クラフトパルプ)とLBKP(広葉樹クラフトパルプ)とを配合したものがよい。その配合割合(JIS P 8120)は、NBKP:LBKP=25から40:60〜75がよい。LBKPが多いほうが柔らかさの点で望ましい。
なお、本実施形態のトイレットペーパーは、水解性を確保する必要がり、JIS P 4501で規定される、ほぐれやすさの試験方法における水解性の結果が3〜30秒であるのがよい。
なお、本実施形態のトイレットペーパー1は、紙管とも称される管芯に巻き取ったダトイレットペーパーロールとするのに適する。トイレットペーパーロール100の外形は、一般的には、直径(巻径、外径と言われることもある)が115〜125mm、ロール幅(ペーパー幅と同一である)が110〜120mm、紙管の直径が35〜50mmとなっており、本実施形態のトイレットペーパーも係る外形のトイレットロールとすることができる。なお、一般的なトイレットペーパーロールでは、トイレットペーパー1の長手方向が紙の縦方向(MD方向)であり、幅方向が横方向(CD方向)となる。
次いで、本発明の実施例のトイレットペーパーと、比較例のトイレットペーパー、さらに市販のエンボスを有する従来品のトイレットペーパーについて、圧縮仕事量WCと滑らかさの指標となるMMDを測定するとともに、厚み感、滑らかさ、柔らかさについて官能試験を行なった。各例にかかるエンボスの構成、エンボス付与態様、その他の物性値と試験結果は下記表1に示すとおりである。また、各例に係る平面視におけるエンボスパターンは、実施例2が図3、実施例3が図4、実施例4が図5のようになっており、また、比較例1が図6、従来品1が図7、従来品2が図8のようになっている。各例のエンボス深さは同一とした。
圧縮仕事量WCは、ハンディ圧縮試験器 KES−G5(カトーテック株式会社製)を用いて測定した。
MMDは、摩擦感テスター KES−SE(カトーテック株式会社製)を用いて摩擦係数を測定し、その摩擦係数を摩擦距離(移動距離=2cm)で除した値をMMD値とした。
官能試験は、普段1プライのトイレットペーパーを使用する者30人を被験者とし、普段と同様に各例に係るトイレットペーパーを使用した際の厚み感とざらつき感を5段階で評価してもらうこととした。表中の数値は、30人の平均値を四捨五入した値である。なお、評価は「5」:良い、「4」:やや良い、「3」:ふつう、「2」:あまり良くない、「1」:良くないである。
表1に示されるとおり、本発明の実施例1〜4は、従来品1、2や比較例1よりもMMDの値が低く滑らかさに優れる。また、表裏の差も小さい。さらに、官能評価については、使用者はふんわり感、滑らかさに優れ、柔らかい質感と評価しているさ。このことから、本発明の実施例は、需用者が柔らかい質感と感ずるものといえる。
また、実施例1〜4は、従来品より、エンボスの底部面積が広く、底部面積率が高い傾向となっており、エンボスが大きく、広範にエンボスが付与されている。また、エンボス密度は、従来例1より低く、従来例2とほぼ同様である。このことからエンボス構成及び付与態様の相乗により、柔らかさの評価が高くなったと推測される。
1…トイレットペーパー、10…エンボス、11…エンボス底部、12…外郭、L1…エンボス底部の輪郭線長さ、L2…エンボス深さ、L3…エンボス底部のMD方向長さ、L4…エンボス底部のCD方向長さ。

Claims (1)

  1. 1プライのトイレットペーパーであって、
    坪量が15〜25g/m2であり、
    紙面の一方面にエンボス凹部のみがあり、
    他方面にそのエンボス凹部に対応するエンボス凸部のみがあり、
    深さ0.9〜1.7mm、底部面積1.6〜2.2mm2のエンボス凹部が、エンボス密度50〜70個/inch2かつ底部面積率17〜22%で付与され、
    エンボス底部の輪郭線の長さがエンボス深さの3.5〜4.5倍であり、
    8枚重ねて50gf/cm 2 を圧縮の上限として圧縮したさいの仕事量である圧縮仕事量WCが1.9gf・cm/cm2以上ある、
    ことを特徴とするトイレットペーパー。
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