以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、以下の実施形態は例示の目的で提示するものであり、本発明は、以下に示す実施形態に、何ら限定されるものではない。
<トイレットロール>
本発明のトイレットロール1は、エンボスパターンが付与された1プライのトイレットペーパー1xをロール状に巻取ったトイレットロール1であって、巻長(巻取り長さ)が105m以上210m以下、巻直径DR(ロールの外径)が107mm以上140mm以下、ロール柔らかさが0.3mm以上1.5mm以下であり、エンボスパターンの深さD1(mm)とエンボスパターンの深さD2(mm)の比{(D2/D1)×100}が45%以上100%以下である。
なお、ここで、エンボスパターンの深さD1は、トイレットロール1を巻きほぐした際の最外巻のトイレットペーパーの端縁からトイレットロール1の巻長の10%に相当する位置におけるエンボスパターンの深さであり、エンボスパターンの深さD2は、トイレットロール1を巻きほぐした際の最外巻のトイレットペーパーの端縁からトイレットロール1の巻長の90%に相当する位置におけるエンボスパターンの深さである。
また、トイレットペーパー1xの表面のうち、ロール外側に指向した表面をロール表面1a(トイレットペーパー1xの表面)と称し、ロール中心部に指向した表面をロール裏面1b(又はトイレットペーパー1xの裏面)と称する。
トイレットロール1のロール柔らかさを上記範囲に調整する方法としては、坪量及び紙厚を所定範囲に調整しつつ、ロールワインダー(特にサーフェイス式)でロールを巻く強さを調整する方法がある。
[巻長]
トイレットロール1の巻長が105m以上210m以下であることにより、トイレットロール1の省スペース性を図ることができるとともに、巻直径DRが適切な範囲に維持され、トイレットロール1がトイレットペーパーホルダーに十分に収容されるものとなる。巻長は、130m以上190m以下であることが好ましく、150m以上170m以下であることがより好ましい。
[巻直径]
トイレットロール1の巻直径DRが107mm以上140mm以下であることにより、トイレットロール1の巻長を好適な範囲に維持しつつ、トイレットロール1がトイレットペーパーホルダーに十分に収容されるものとなる。巻直径DRは、110mm以上135mm以下であることが好ましく、117mm以上125mm以下であることがより好ましい。
[ロール柔らかさ]
本願発明のように巻長の長いトイレットロール1の柔らかさを評価する場合、以下に述べるロール柔らかさを評価することで、ロールを手に持った時の柔らかさを評価することができる。
トイレットロール1のロール柔らかさは、圧縮試験機(カトーテック株式会社製のハンディー圧縮試験機KES−G5)を用いて、次のように測定する。なお、トイレットロール1の軸心と平行な方向を高さ方向、トイレットロール1の円周の接線と垂直な方向を半径方向とする。
まず、トイレットロール1のコアに、アクリルパイプを挿入する。アクリルパイプの肉厚は2mmとする。アクリルパイプの長さは、トイレットロール1のロール幅より10mm長くする(トイレットロール1のロール幅が114mmの場合、アクリルパイプの長さは124mmとする)。アクリルパイプの外径は、トイレットロール1のコアの内径よりわずかに小さく、かつ、アクリルパイプを挿入した後にトイレットロール1の軸心が垂直になるように置いたとき、トイレットロールが自重で動かない大きさとする。コアにアクリルパイプを挿入しにくく、アクリルパイプの外径をわずかに小さくする場合は、耐水ペーパー等で肉厚をわずかに削ってもよい。アクリルパイプの質量は、長さが125mm、外径が38mmの場合、31g程度である。
次に、トイレットロール1を、軸心が水平になるよう硬い台上に横に置く。そして、トイレットロール1の高さ方向の中心部に上記KES−G5の圧縮子(接触面積2.0cm2)を、速度10mm/分の条件で半径方向に上から押し込む。圧縮子がロールを押す圧力が5gf/cm2のときの押し込み深さをT0、圧力が150gf/cm2のときの押し込み深さをTmとして、(Tm−T0)をロール柔らかさとする。測定は5回行い、測定結果を平均する。なお、上記圧縮子をトイレットロール1に押し込む際の高さ方向の位置は、高さ方向の両端部を除けば、高さ方向の中心部でなくてもよい。本発明のトイレットロール1のロール柔らかさの測定においては、トイレットロール1の高さ方向の中心部と端部との中間付近に上記圧縮子を押し込んで測定する。
本発明のトイレットロール1のロール柔らかさは、0.3mm以上1.5mm以下であり、0.4mm以上1.2mm以下であることがより好ましく、0.5mm以上0.9mm以下であることが更に好ましい。
[巻密度]
本発明においては、トイレットロール1の巻密度が1.1m/cm2以上1.9m/cm2以下であることが好ましい。ここで、ロールを固く巻き過ぎると、内巻のトイレットペーパー1xに過大な押圧が加わり、内巻のトイレットペーパー1xに設けたエンボスが潰れて、使用時に美粧性が低下する。一方、ロールを弱く巻き過ぎると、エンボスは潰れないが、巻直径が大きくなって、トイレットロール1のトイレットペーパーホルダーへの装着が困難になったり、内巻の巻付け力が弱くなり過ぎて、図10の写真に示すように、ロールの内巻側が軸方向に飛び出して不良品が生じたりする。このようなことから、本明細書では、ロールの巻き強さを表すための因子として、巻密度を規定した。
巻密度は、(巻長×プライ数)÷(ロールの断面積)で表される。ロールの断面積は、{ロールの外径(巻直径DR)部分の断面積}−(コア外径部分の断面積)で表される。コア外径DIは、ロールの中心孔の直径である。
例えば、巻長150m、1プライ、巻直径117mm、コアの外径39mmの場合、巻密度=(150m×1)÷{3.14×(117mm÷2÷10)2−3.14×(39mm÷2÷10)2}=1.57m/cm2となる。なお、トイレットロール1にコアが無い場合は、中心孔の直径をコア外径とする。
巻密度が1.1m/cm2以上1.9m/cm2以下であることにより、巻直径DRが適切な範囲に位置されて、トイレットロール1が、トイレットペーパーホルダー等に収まりやすくなるとともに、内巻の巻付け力が適切なものとなり、ロールの内巻側が軸方向に飛び出して(ロールの保形性が劣り)、不良品となることがなく、シートの柔らかさも好適に維持されるほか、トイレットペーパー1xに設けたエンボスが潰れることなく、使用時の美粧性が維持される。巻密度は、1.2m/cm2以上1.8m/cm2以下であることが好ましく、1.3m/cm2以上1.6m/cm2以下であることがより好ましい。
[坪量]
トイレットペーパー1xのシート1枚あたりの坪量は、15.0g/m2以上22.0g/m2以下であることが好ましく、このときの紙厚は0.40mm/10枚以上1.10mm/10枚以下であることが好ましい。坪量及び紙厚が上記の範囲内のものであることにより、巻固さ、巻長、巻直径DR、巻密度を上述の範囲に調整しやすくなる。トイレットペーパー1x 1枚あたりの坪量及び紙厚を上記範囲に調整する方法としては、原紙ウェブのカレンダー条件(カレンダー処理後の紙厚及び比容積、カレンダー処理前後の紙厚差)及びエンボス条件を規定する方法を挙げることができる。
トイレットペーパー1xのシート1枚あたりの坪量及び紙厚が上記の範囲内のものであることにより、トイレットペーパー1xの強度や使用感(嵩高さ)が好適に維持されるとともに、トイレットロール1の巻直径DRも適切な範囲に維持されて、トイレットペーパーホルダーに収まりやすくなる。トイレットペーパー1xのシート1枚あたりの坪量は、17.0g/m2以上21.0g/m2以下であることがより好ましく、18.0g/m2以上20.0g/m2以下であることが更に好ましい。トイレットペーパー1xの紙厚は、0.55mm/10枚以上1.00mm/10枚以下であることがより好ましく、0.70mm/10枚以上0.90mm/10枚以下であることが更に好ましい。
[エンボスパターン]
本発明のトイレットロール1(トイレットペーパー1x)は、エンボス加工が施されてなるものであり、エンボスパターンを有している。本発明のトイレットペーパー1xが有するエンボスパターンとしては、シングルエンボスパターンが好ましい。1プライのトイレットペーパー1xに複数回エンボス処理を行っても良いが、この場合もシングルエンボスパターン2になる。シングルエンボスパターンは、図3に示すように、1プライのトイレットペーパー1xの一方の面からのみ、エンボスロール111のエンボス凸部を押し当てて形成される。
図3は、トイレットロール1(トイレットペーパー1x)に設けられたシングルエンボスのエンボスパターン2を示す断面図である。なお、図3の例では、トイレットペーパー1xの上側がロール表面1a側に対応する。トイレットペーパー1xのエンボスロール111を押し当てた面(図3の表面)に凹部2R、裏面に凸部2Pが現れるエンボスパターン2(シングルエンボスパターン)が形成される。エンボスロールの材質としては、金属であることが好ましい。なお、図3(a)はエンボスパターンの深さが深い場合の図であり、図3(b)はエンボスパターンの深さが浅い場合の図である。
この場合、エンボス処理後のトイレットペーパー1xの紙厚t2(この紙厚は、トイレットペーパー1xの表面の非エンボス部と、裏面のエンボスの凸部2Pの間の距離を反映する)が同一であっても、原紙をカレンダー処理で紙厚t1まで薄くしたシートを、エンボスパターンの深さD1、D2が深くなるようにエンボスを付けた図3(a)の方が、シートが柔らかく風合いに優れる。これは、エンボスの凹凸が顕著な図3(a)の方が、原紙の紙厚に対する嵩が高くなり(密度が低くなり)、変形し易くなってシートの柔らかさが向上するためと考えられる。
また、図3(a)の場合、エンボスパターンの深さD1、D2を深くするには、その分だけシート1枚あたりの紙厚t1を薄くして凹凸を顕著にする必要があることから、原紙のカレンダー処理を強く行うことに起因してシートの柔らかさが向上する。一方、トイレットペーパー1xの表面にエンボスを設けずに平滑にすると、滑らか過ぎて表面がパリパリに感じ、シートの柔らかさが劣る。なお、トイレットペーパー1xのうち、温水洗浄便座の使用時等に水が付着しやすいロール外側(ロール表面1a側)に、エンボスの凹部2Rを設けると、凹部2Rは凸部より触感が良いため、シートの柔らかさが向上する。図2は、ロール表面1a側のエンボスの凹部2Rの撮影画像を示す。
さらに、トイレットペーパー1x(シート)の柔らかさを確保する手段としては、エンボス加工に限定されず、表面に凹凸を付与するものであれば、例えば、凹凸ファブリックを用いて抄紙時にウェブに凹凸を付けてもよい。この場合、凹凸の深さは、後述するエンボスパターンの深さD1、D2に相当する範囲とすればよい。
(エンボスパターンの深さD1、D2)
本発明においては、ロールの巻き強さを表すための因子として、ロールの外巻と内巻のエンボスパターンの深さの差を規定することで、エンボスが潰れず、かつ巻直径が大きくならないようにしている。具体的には、エンボスパターンの深さD1(mm)とエンボスパターンの深さD2(mm)の比{(D2/D1)×100}を45%以上100%以下とする。上記の比は55%以上100%以下が好ましく、65%以上100%以下がより好ましい。
ここで、図11に示すように、エンボスパターンの深さD1は、トイレットロール1を巻きほぐした際の最外巻のトイレットペーパーの端縁1eからトイレットロール1の巻長の10%に相当する位置M1におけるエンボスパターン2の凹部2Rの深さであり、エンボスパターンの深さD2はトイレットロール1を巻きほぐした際の最外巻のトイレットペーパーの端縁1eからトイレットロール1の巻長の90%に相当する位置M2におけるエンボスパターン2の凹部2Rの深さである。例えば、巻長が150mの場合、位置M1は端縁1eから15mの部分であり、位置M2は端縁1eから135mの部分である。
上記の比が45%以上100%以下である場合には、内巻のトイレットペーパー1xに過大な押圧が加わることがなく、内巻のトイレットペーパー1xに設けたエンボスパターン2が潰れずに、使用時の美粧性のバランスが良好となるとともに、トイレットペーパーホルダーへの装着が容易になり、ロールの保形性が劣り、内巻側が軸方向に飛び出した不良品が生じることもない。
エンボスパターンの深さD1、D2は、マイクロスコープを用いてエンボスパターンの高低差を測定して求める。
マイクロスコープとしては、KEYENCE社製の製品名「ワンショット3D測定マクロスコープ VR−3100」を使用することができる。マイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、製品名「VR−H1A」を使用することができる。また、測定条件は、倍率12倍、視野面積24mm×18mmの条件で測定する。なお、測定倍率と視野面積は、求めるエンボスパターンの大きさによって、適宜変更してもよい。
まず、図4に示すように、エンボスパターンの周縁frの最長部aを求める。図5(a)は、マイクロスコープによるX−Y平面上の高さプロファイルを示し、トイレットペーパー1x表面の高さが濃淡で表されることがわかる。図5(a)の濃色部位が個々のエンボスパターンを示し、図5(a)から1つのエンボスパターンの最長部aを見分けることができる。この最長部aを横切る線分A−Bを引くと、図5(b)に示すようにエンボスパターンの高さ(測定断面曲線)プロファイルが得られる。ここで、X−Y平面画像の色の濃淡で、エンボスパターンの凸部(非エンボス部)と凹部がわかるので、凸部と凹部が隣接している部分を横切るように線分A−Bを決めればよい。
ここで、図5(b)の高さプロファイルは、実際のトイレットペーパー1xの試料表面の凹凸を表す(測定)断面曲線Tであるが、ノイズ(トイレットペーパー1xの表面に繊維塊があったり、繊維がヒゲ状に伸びていたり、繊維のない部分に起因した急峻なピーク)をも含んでおり、凹凸の高低差の算出に当たっては、このようなノイズピークを除去する必要がある。そこで、図6に示すように、高さプロファイルの断面曲線Tから「輪郭曲線」Uを計算し、この輪郭曲線Uのうち、上に凸となる2つの変曲点P1,P2と、変曲点P1,P2で挟まれる最小値を求め、深さの最小値Minとする。さらに、変曲点P1,P2の深さの値の平均値を深さの最大値Maxとする。
このようにして、エンボスパターンの深さD1(D2も同様)=最大値Max−最小値Minとし、変曲点P1,P2のX−Y平面上の距離(長さ)を最長部aの長さと規定する。なお、「輪郭曲線」は、断面曲線からλc:800μm(ただし、λcはJIS−B0601「3.1.1.2」に記載の「粗さ成分とうねり成分との境界を定義するフィルタ」)より短波長の表面粗さの成分を低域フィルタによって除去して得られる曲線である。なお、λcを、隣接するエンボスパターン同士のP1の間隔(これを、エンボスピッチという)以上に設定すると、ピークをノイズと認識してしまう可能性があるので、λcをエンボスピッチ未満とする。例えば、エンボスピッチが800μm以下の場合、例えばλc:250μmに設定する。隣接するエンボスパターン同士のP1の間隔は、図6の左又は右に繋がる次のエンボスパターンについて同様にP1,P2を求め、隣接するエンボスパターン同士でP1、P2、P1と並ぶときの2つのP1の間隔である。
同様にして、図5(a)において最長部aに垂直な方向での最長部bについてもエンボスパターンの深さD1、D2を測定し、最長部aとbの各エンボスパターンの深さD1、D2のうち、大きい方の値をエンボスパターンの深さD1、D2として採用する。以上の測定を、トイレットペーパー1xのロール表面1aの任意の10個のエンボスパターン2について行い、その平均値を最終的なエンボスパターンの深さD1、D2として採用する。また、最長部aと最長部bの積(a×b)をエンボスパターン2の面積Sとして求める。最長部aと最長部bは、上記したトイレットペーパー1xのロール表面1aの10個のエンボスパターン2についての個々のa、bの値を平均した値を用いる。ただし、図7に示すように、エンボスパターンが流れ方向(MD方向)につながっている場合、最長部aが巻長と同じになってしまい、高低差が得られず、凹部の深さDを測定できない。そこで、エンボスパターンが繋がる方向(MD方向)に直交する幅W方向に、エンボスパターンを跨ぐように線分A−Bを引き、凹部の深さDを測定することができる。同様に、エンボスパターンが幅W方向(CD方向)につながっている場合、流れ方向(MD方向)に、エンボスパターンを跨ぐように線分A−Bを引き、凹部の深さDを測定する。
エンボス面積Sは、0.2mm2以上9.0mm2以下であることが好ましく、1.0mm2以上7.0mm2以下であることがより好ましく、1.8mm2以上5.0mm2以下であることが更に好ましい。また、エンボスパターンの面積率(トイレットペーパーのうち、エンボスパターンのある部分の割合)は、3%以上60%以下であることが好ましく、7%以上45%以下であることがより好ましく、10%以上30%以下であることが更に好ましい。トイレットペーパーのエンボスパターンの面積率を求めることが難しい場合、エンボスロール111の凸部の面積率をエンボスパターンの面積率とすることができる。エンボス面積S及び面積率が上記の範囲内のものであることにより、エンボスパターンの大きさが適度に保たれ、エンボスパターンの美粧性とロール柔らかさが優れたものとなる。また、エンボスパターンによっては、エンボス処理後に紙厚が低くなる場合もあるので、その場合は、原紙の特性やカレンダー処理の方法を適宜調整して、トイレットロール1やトイレットペーパー1xの特性を所定の数値範囲内にすることができる。
なお、エンボスパターンの形状は、長方形、正方形、丸形、長丸形等、特に制限はない。また、上記に示したエンボスパターンの大きさ及びエンボスパターンの面積率(個数)を適宜調整して、巻直径や巻密度を調整することができる。
なお、エンボスパターンの深さD1、D2を測定する際、測定面はロール表面1a側とする。また、エンボスパターンの深さD1、D2とエンボス面積Sを求める際、任意の10個のエンボスパターン2を選定する際には、以下のようにして行う。図12に示すように、例えば、エンボスパターンの深さD1とエンボス面積Sを求める場合、トイレットロール1の最外巻のトイレットペーパー1xの端縁1eから、トイレットロール1の巻長10%に相当する所定の位置M1にあるエンボスパターン2の中から任意の10個を選ぶ。このとき、エンボスパターン2の中心が位置M1を通っている必要はなく、位置M1上にあるエンボスパターン2を上述のマイクロスコープの視野内に入れ、最長部a、bを見極めればよい。
位置M1上にエンボスパターン2が10個未満しか存在しない場合は、位置M1上のエンボスパターン2に隣接する外巻側のエンボスパターン2の群2F、又は位置M1上のエンボスパターン2に隣接する内巻側のエンボスパターン2の群2Eの中から不足する個数のエンボスを選べばよい。なお、位置M1がミシン目に当たる場合は、ミシン目に隣接する外巻側のエンボスパターン2の群を対象に測定する。
エンボスパターンの深さD1は、0.01mm以上0.35mm以下であることが好ましく、0.04mm以上0.30mm以下であることがより好ましく、0.09mm以上0.24mm以下であることが更に好ましい。エンボスパターンの深さD2は、0.01mm以上0.30mm以下であることが好ましく、0.03mm以上0.25mm以下であることがより好ましく、0.05mm以上0.20mm以下であることが更に好ましい。
エンボスパターンの深さD1、D2が上記範囲内のものであることにより、エンボスパターンの凹凸の度合いが好適に維持されて、トイレットペーパー1xの嵩が適度なものとなり、シートの柔らかさを好適に維持することができるようになるとともに、トイレットロール1をトイレットペーパーホルダーに装着しやすい状態を維持することもできる。
図9はロール巻取り加工機110の一例を示す。リール11は、カレンダー処理され、原反ロール12(シートの紙厚t1)となる。この原反ロール12は、ロール巻取り加工機110にセットされ、エンボスユニット(エンボスロール111)によってシングルエンボス処理された後、巻取り機構113によって上記の巻直径の幅広の原紙ロール13に巻取られる。その後、この原紙ロール13を所定幅(114mm等)に切り、トイレットロール1となる。
ロール巻取り加工機110は、大別するとサーフェイス方式とセンター方式の2種類がある。サーフェイス方式は巻取るロールを外側から別の複数の駆動ロールで支持しながら巻取る方法であり、巻取られたトイレットロール1は、巻き径のコントロールがし易く、生産速度がより高速となる。センター方式は巻取りロールの中心に通したシャフトの駆動により巻取る方法で、巻取られたトイレットロール1は、比較的柔らかな製品となり、デリケートなエンボスを施した製品に適している。本発明においては、いずれの方法でも巻取ることができるが、サーフェイス方式であることが好ましい。サーフェイス方式によれば、トイレットロール1を巻く強さでトイレットロール1の巻直径及びロール柔らかさを比較的容易に調整することができる。
なお、ロール巻取り加工機110にマシンワインダー100を組み込み、ロール巻取り加工機110にてカレンダー処理、エンボス処理をこの順で行ってもよい。
エンボスパターンの深さD1、D2は、エンボスロール111と対向するゴムロール112(図9参照)のニップ幅を適宜調整して制御することができる。ニップ幅は、ロールの特性によっても異なるが、20mmから50mmであることが好ましく、25mmから45mmであることがより好ましく、30mmから40mmであることが更に好ましい。ニップ幅を上記の範囲内のものとすることにより、エンボスパターンの表裏差が適切に維持されるとともに、紙厚が好適に維持されてロールの巻直径DRが適切なものとなり、シートの柔らかさについても好適に維持される。ニップ幅は、カーボン紙を用いて測定することができる。測定方法としては、まず、エンボスロール111のニップを逃がし、カーボン紙と一般的なコピー用紙を重ねてセットする。次に、エンボスロール111にニップをかける。その後、ニップを逃がし、カーボン紙とコピー用紙を取り外す。エンボスロールでニップがかかっていた部分のカーボン紙の色がコピー用紙に転写されるので、ニップ幅を測定することができる。なお、エンボスロールの材質は、金属であることが好ましい。
エンボスロールの凹凸が深ければニップ幅を狭くし、エンボスロールの凹凸が浅ければニップ幅を広くすることで、エンボスパターンの深さD1、D2を調整できる。また、エンボスパターンの深さDを確保するよう、ロールを巻く強さを調整できる。例えば、エンボスパターンの深さが大きくなると、ロールを巻く際にエンボスパターンが潰れやすくなるので、ロールを巻く強さを弱くすることで、エンボスパターンの深さDを調整できる。
ロール巻取り加工機110にて同時に、印刷、エンボス付与、ミシン目加工、テールシール、所定幅(114mm等)のカットを行うことができ、トイレットロール1を製造することができる。さらに、その後、フィルム包装加工してトイレットロール1の包装体を製造することができる。
[ロール密度、ロール質量]
ロール質量は、ロール幅W114mmあたりのトイレットロール1の質量である。ロール体積は[{ロールの外径(巻直径DR)部分の断面積}−(コア外径部分の断面積)]×ロール幅(114mmあたりに換算する)で表される。例えば、ロール幅114mmあたりのロール質量が327g、巻直径122mm、コアの外径が39mmの場合、ロール密度=327g÷[{3.14×(122mm÷2÷10)2−3.14×(39mm÷2÷10)2}×(114mm÷10)]=0.27g/cm3となる。なお、トイレットロール1にコアが無い場合は、中心孔の直径をコア外径とする。
トイレットロール1のロール密度は、0.21g/cm3以上0.37g/cm3以下であることが好ましく、0.22g/cm3以上0.34g/cm3以下であることがより好ましく、0.26g/cm3以上0.30g/cm3以下であることが最も好ましい。トイレットロール1のロール密度を上記の範囲内のものとすることにより、内巻のトイレットペーパー1xのエンボスパターンが潰れてしまうことがなく、比{(D2/D1)×100}が好適に維持されて、トイレットペーパー1xの使用時の美粧性が良好に維持される。また、ロールの柔らかさも良好に維持されるとともに、巻直径DRが適切な範囲に維持されてトイレットペーパーホルダーに収まり易くなるとともに、ロールの内巻側が軸方向に飛び出す不良品が生じることもない。
ここで、ロールの柔らかさとは、店頭でトイレットロール1を手に持ったときの触感であり、直接シートの柔らかさを反映するものではない。しかしながら、店頭でロールを巻きほぐしてシートの柔らかさを確認することができないため、仮にシート自体が柔らかくてもロールが硬いと、シートも硬いと思われてしまい、購入を促すことができない。このため、ロールの柔らかさを向上させることで、販促効果を高めることができる。
本発明のトイレットロール1については、ロール幅114mmあたりのロール質量が、芯の質量を除いた状態で、235g以上480g以下であることが好ましく、250g以上420g以下であることがより好ましく、300g以上350g以下であることが更に好ましい。ロール質量が上記の範囲内のものであることにより、トイレットロール1の巻密度が好適な範囲内に維持され、トイレットペーパー1xの柔らかさが良好なものとなるとともに、エンボスパターンが潰れてしまうことがなく、トイレットペーパー1xの美粧性が良好に維持される。
[コア外径]
また、本発明のトイレットロール1の芯の外径である、コア外径は、25mm以上48mm以下であることが好ましく、35mm以上46mm以下であることがより好ましく、37mm以上43mm以下であることが更に好ましい。コア外径が上記の範囲内のものであることにより、トイレットロール1の巻密度を好適に維持しつつ、トイレットロール1を、トイレットペーパーホルダーに収まり易くすることができる。また、トイレットロール1のコアの質量は3.2g以上6.0g以下であることが好ましく、4.0g以上5.5g以下であることがより好ましく、4.5g以上5.0g以下であることが更に好ましい。コア質量を上記の数値範囲内にすることにより、本願のような長尺のトイレットペーパーに適したコアの強度とコアのコストを良好にすることができる。コアの質量は、ロール質量と同様、ロール幅114mmの質量とする。
[比容積]
トイレットペーパー1xの比容積は、2.8cm3/g以上6.5cm3/g以下であることが好ましい。トイレットペーパー1xの比容積が上記範囲内のものであることにより、シートの柔らかさが良好なものとなり、バルク(嵩高さ)が好適に維持され、水分の吸収性が良好に維持されるとともに、巻直径DRが大きくなり過ぎることがない。上記比容積は、3.1cm3/g以上5.5cm3/g以下であることがより好ましく、3.7cm3/g以上4.8cm3/g以下であることが更に好ましい。
[DMDT、DCDT]
トイレットペーパー1x(1プライ)のJIS P 8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さをDMDT(Dry Machine Direction Tensile strength)、乾燥時の横方向の引張強さをDCDT(Dry Cross Direction Tensile strength)としたとき、DMDTが2.5N/25mm以上7.0N/25mm以下であることが好ましく、3.0N/25mm以上5.8N/25mm以下であることがより好ましく、3.5N/25mm以上4.5N/25mm以下であることが更に好ましい。また、DCDTは、0.70N/25mm以上2.2N/25mm以下であることが好ましく、0.80N/25mm以上1.8N/25mm以下であることがより好ましく、1.0N/25mm以上1.5N/25mm以下であることが更に好ましい。DMDT及びDCDTが上記値の範囲内のものであることにより、シートが破れにくくなるとともに、シートの柔らかさも好適に維持される。なお、引張強さの測定は、引張速度300mm/minの条件で行う。また、引張強さは、公知の方法で調整することができる。
なお、上記においては、トイレットペーパー1xの抄紙の流れ方向を「縦方向」とし、流れ方向に直角な方向を「横方向」とする。
[吸水度]
トイレットペーパー1xの(1プライ)の旧JIS S 3104に基づく吸水度は、7.0秒以下であることが好ましく、5.0秒以下であることがより好ましく、3.0秒以下であることが更に好ましい。吸水度は、短時間であることが好ましく、上記時間の範囲内であることにより、吸水性が良好に維持される。なお、水を滴下する際は、トイレットペーパーの表面側に滴下し、滴下量を0.01mLとする。
[ほぐれ易さ]
トイレットペーパー1xのJIS P 4501に基づくほぐれ易さは、8秒以上60秒以下であることが好ましく、15秒以上50秒以下であることがより好ましく、20秒以上40秒以下であることが更に好ましい。ほぐれ易さは、短時間であることが好ましく、上記時間の範囲内であることにより、トイレでの水解性が良好に維持され、温水洗浄便座使用におけるトイレットペーパーが水に濡れた時の耐水性も良好になる。
<トイレットペーパー>
トイレットペーパー1xは木材パルプ100質量%からなるものであってもよく、古紙パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプを含んでもよい。目標とする品質を得るためには、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)の含有率が0質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。また、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)の含有率が30質量%以上90質量%以下であることが好ましく、40質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。
また、ミルクカートン(牛乳パック)由来の古紙パルプの含有率が0質量%より多く60質量%以下であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上45質量%以下であることが更に好ましく、クラフトパルプの含有率が、40質量%以上100質量%以下であることが好ましく、50質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、55質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
ミルクカートン(牛乳パック)由来の古紙パルプは、針葉樹パルプが主体であり、トイレットペーパー1xの強度を向上させやすいというメリットがある一方で、品質的にバラツキが大きく、含有割合が高過ぎると製品の品質に影響することがある。ミルクカートン由来の古紙パルプの含有量を上記の範囲内のものとすることにより、品質のバラツキを抑えつつ、トイレットペーパー1xの強度を効果的に向上させることができる。
なお、上記のLBKPとしては、ユーカリ属グランディス及びユーカリグロビュラスに代表される、フトモモ科ユーカリ属の材種から形成されるパルプが好ましい。
本発明においては、上記のNBKP、LBKP、ミルクカートン由来の古紙のパルプ100質量部に対して、新聞や雑誌古紙等由来の脱墨パルプを25質量部以下の範囲内で配合することができる。なお、脱墨パルプを25質量部配合したときの、トイレットペーパー1x(シート)中の脱墨パルプの含有率は、25質量部/(100質量部+25質量部)×100=20質量%となる。脱墨パルプの含有率は0質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上5質量%以下であることが更に好ましく、0質量%であることが最も好ましい。脱墨パルプも古紙であるため、これをパルプ原料に配合することにより、トイレットペーパー1xの品質のバラツキが大きくなる。また、脱墨パルプは通常、蛍光染料を含んでおり、その含有率が20質量%を超えると、トイレットペーパー1xが蛍光染料を多く含むことになる場合がある。このため、脱墨パルプの含有量は20質量%以下とすることが好ましい。
なお、脱墨パルプが蛍光染料を含むと、トイレットペーパー1x(シート)のUV−in条件下での白色度の値と、UV−cut条件下での白色度の値の差Δが大きくなる。ここで、UV−inとは、CIE(国際照明委員会)が規定するC光源(紫外光を含む)をトイレットペーパー1xの表面側に照射したときのISO 2470に準拠した白色度である。UV−cutとは、波長420nm以下の紫外光をカットするフィルタを介して、C光源をトイレットペーパー1xの表面側に照射したときのISO 2470に準拠した白色度である。差Δ=(白色度UV−in)−(白色度UV−cut)である。
差Δは、0.0ポイント以上2.5ポイント以下であることが好ましく、0.0ポイント以上1.5ポイント以下であることがより好ましく、0.0ポイント以上1.0ポイント以下であることが更に好ましく、0.0ポイント以上0.5ポイント以下であることが最も好ましい。白色度は、ISO 2470に準拠して、株式会社村上色彩技術研究所社製 高速分光光度計CMS−35SPXを用いて測定することができる。
なお、トイレットペーパー1xに適正な強度を確保するために、通常の手段で原料配合し、パルプ繊維の叩解処理を行うことにより強度調整を行うことができる。目標の品質を得るための叩解としては、市販のバージンパルプに対して、JIS P 8121で測定されるカナダ標準ろ水度で、叩解前後におけるろ水度の差を0ml以上150ml以下、より好ましくは10ml以上100ml以下、更に好ましくは20ml以上70ml以下に、低減させる叩解処理を挙げることができる。
トイレットペーパー1xは、紙料にバージン系原料を使用する場合は、一定範囲の繊維長及び繊維粗度を有する針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプを特定の範囲で配合して抄紙することができる。紙料への添加剤としては最終製品の要求品質に応じ、デボンダー柔軟剤を含めた柔軟剤、嵩高剤、染料、分散剤、乾燥紙力増強剤、濾水向上剤、ピッチコントロール剤、吸収性向上剤等を用いることができる。湿潤紙力増強剤は使用しないことが好ましい。トイレットペーパー1xの紙料に古紙原料を使用する場合も、上記バージン系の場合と同様の処理を行う。
[トイレットペーパーの製造方法]
トイレットペーパー1xは、例えば以下のように、(1)抄紙及びクレーピング、(2)マシンワインダーによるカレンダー処理、(3)エンボス処理及びロール巻取り加工、の順で製造することができる。このうち、(3)については既に説明したので省略する。
(抄紙及びクレーピング)
まず、公知の抄紙機のワイヤーパート上で上記紙料からウェブを抄紙し、プレスパートのフェルトへ移動させる。ワイヤーパートの方式としては、丸網式、長網(フォードリニアー)式、サクションブレスト式、短網式、ツインワイヤー式、クレセントフォーマー式等が挙げられる。
そして、ウェブに対し、サクションプレッシャーロール又はサクションなしのプレッシャーロール又はプレスロール等で機械的に圧縮をしたり、あるいは熱風による通気乾燥等の脱水方法を採用したりして脱水を続ける。また、サクションプレッシャーロール又はサクションなしのプレッシャーロールは、プレスパートからヤンキードライヤーにウェブを移動させる手段としても使用される。
ヤンキードライヤーに移動されたウェブは、ヤンキードライヤー及びヤンキードライヤーフードで乾燥された後、クレーピングドクターによりクレーピング処理され、リールパートで巻取られる。
クレーピング(クレープと言われる波状の皺をつけること)は、紙を縦方向(抄紙機上のシート走行方向)に機械的に圧縮することである。そして、トイレットペーパー1xのウェブの製造の際、クレーピングドクターによりヤンキードライヤー上のウェブが剥がされ、リールパートで巻取られるが、ヤンキードライヤーとリールパートの速度差(リールパートの速度≦ヤンキードライヤーの速度)によりクレーピングドクターにてクレープ(皺)が形成される。
トイレットペーパー1xに必要な品質、すなわち嵩(バルク感)、柔らかさ、吸水性、表面の滑らかさ、美観(クレープの形状)等は上記速度差で左右される。上記速度差等の条件にもよるが、クレーピング後のリール上のウェブの坪量は概略16g/m2以上24g/m2以下となり、クレーピング前のヤンキードライヤー上のウェブの坪量より重くなる。上記坪量は、好ましくは18g/m2以上23g/m2以下、より好ましくは19g/m2以上22g/m2以下である。上記範囲を超えると、強度が高くなって紙がゴワゴワする場合やロール柔らかさが大きくなり過ぎる場合があり、上記範囲未満であると、強度が弱くて破れやすくなったり、使用感や嵩高さが劣ったりする場合がある。
ここで、ヤンキードライヤーとリールのスピード差に基づくクレープ率は次式により定義される。
クレープ率(%)=100×(ヤンキードライヤー速度(m/分)−リール速度(m/分))÷リール速度(m/分)
品質や操業性の良し悪しはこのクレーピングの条件で大方決まり、クレーピング条件を最適とする操業条件が当業者にとって重要な事項となる。本発明においてトイレットペーパー1xを製造する際のクレープ率は10%以上50%以下であることが好ましく、15%以上40%以下であることがより好ましく、20%以上35%以下であることが最も好ましい。
(マシンワインダーによるカレンダー処理)
図8はマシンワインダー100の一例を示す。上述のようにクレープ後にリールパートで巻取られたリール11がマシンワインダー100にセットされ、ヤンキー面が外側になるように巻き取られて、原反ロール12となる。この際、1スタック目のカレンダー機101、2スタック目のカレンダー機102の順で、2段階でカレンダー処理される。もちろん、1スタック目のカレンダー機101と2スタック目のカレンダー機102のどちらか一方で1段階のみカレンダー処理してもよい。
エンボス処理前(カレンダー処理後)のトイレットペーパー1xの紙厚を好ましくは0.50mm/10枚以上1.50mm/10枚以下、より好ましくは0.60mm/10枚以上1.30mm/10枚以下、更に好ましくは0.70mm/10枚以上1.10mm/10枚以下とする。また、エンボス処理前(カレンダー処理後)の原反ロール12におけるトイレットペーパー1xの比容積を好ましくは3.2cm3/g以上6.3cm3/g以下、より好ましくは3.5cm3/g以上5.8cm3/g以下、更に好ましくは3.8cm3/g以上5.3cm3/g以下とする。
なお、エンボス処理前のトイレットペーパー1xの紙厚は、図8ではカレンダー処理後の原反ロール12における紙厚であり、図3の紙厚t1に相当する。ただし、後述するように、紙厚は測定荷重3.7kPaで測定した値であるため、図3の紙厚t1を正確に反映したものではない。
また、表1及び表2に示したエンボス処理後のトイレットペーパー1xの紙厚は図3の紙厚t2に相当するが、測定荷重3.7kPaで測定した値であるため、紙厚t2を正確に反映したものではない。
一方、エンボスパターンの深さD1、D2はエンボスを圧縮しない生成りの状態での値を測定している。したがって、エンボスパターンの深さD1、D2は紙厚t1、t2から計算される値(この値は、エンボスを測定荷重3.7kPaで圧縮した値である)よりは大幅に大きい。
各カレンダー機101、102は、それぞれ2本の金属ロールからなることが好ましいが、2本のロールのうち、1本を弾性ロールとし、ソフトカレンダー処理を行えるようにしてもよい。
カレンダーの線圧は、2.5kgf/cm以上7.5kgf/cm以下であることが好ましく、3.0kgf/cm以上7.0kgf/cm以下であることがより好ましい。線圧が上記範囲内のものであることにより、トイレットペーパー1xの嵩高さが良好に維持され、トイレットペーパー1xの柔らかさが良好なものとなるとともに、ロールの巻直径DRも適切な範囲内に維持される。なお、線圧は、1スタック目より2スタック目を高くすることが好ましい。
カレンダー処理時、ドローを適宜調整することができる。リール11からカレンダー処理後の原反ロール12の間のドローは、100%以上110%以下とすることが好ましく、102%以上108%以下とすることがより好ましい。
カレンダー処理とドロー調整により、坪量と紙厚を管理することができる。
カレンダー処理後でエンボス処理前の原反ロール12のウェブの坪量を1枚当たり15.5g/m2以上23.5g/m2以下とすることが好ましい。後述するロール巻取り加工においてウェブは若干伸びて坪量も低くなるので、最終形態のトイレットロール1の目標坪量より若干高い17.5g/m2以上22.5g/m2以下とすることが好ましく、18.5g/m2以上21.5g/m2以下とすることがより好ましい。なお、ロール巻取り加工においてウェブが若干伸びるため、巻取り前後で坪量と同様に紙厚も低くなるが、エンボス処理によって、最終形態のトイレットロール1の目標紙厚に調整できる。
カレンダー処理後の原反ロール12を、例えば図9のロール巻取り加工機110によってエンボス処理し、トイレットロール1を得る。なお、巻密度やロール柔らかさは、図9のロール巻取り加工機110において、巻取り機構113で幅広の原紙ロール13に巻取る際、原紙ロール13を外周側から押圧してシートを順次巻くためのライダーロール114の押圧力を、所定範囲に設定することで調整できる。
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
パルプ組成の含有率が(質量%)NBKP5%、LBKP60%、ミルクカートン由来の古紙パルプ35%となるようにし、脱墨パルプは含有させず、図8、図9に示す装置により、表1、表2に示すトイレットペーパー及びトイレットロールを製造した。
以下の評価を行った。
乾燥時の縦方向引張強さDMDTと乾燥時の横方向引張強さDCDT:JIS P 8113に基づいて、トイレットペーパーにつき、破断までの最大荷重をN/25mmの単位で測定した。引張強さの測定は、引張速度300mm/minの条件で行った。
坪量:JIS P8124に基づいて測定し、シート1枚当たりに換算した。
紙厚:シックネスゲージ(尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定した。測定条件は、測定荷重3.7kPa、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取った。なお、トイレットペーパーのシートを10枚重ねたものを試料として測定を10回繰り返し、測定結果を平均した。カレンダー処理前のウェブ、カレンダー処理後のウェブについても同様にして紙厚を測定することができる。
比容積:シート1枚当たりの紙厚を1枚当たりの坪量で割り、単位gあたりの容積cm3で表した。
ロールの巻直径DR、コア外径DI:ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールールを用いて測定した。測定は、10個のロールを測定し、測定結果を平均した。
ロールの巻密度、エンボスパターンの深さD1,D2、ロール密度、ロール柔らかさは上述の方法で測定した。なお、ロールの巻密度は、ロールの巻直径DRの測定に用いた10個のロールを測定し、測定結果を平均した。なお、表中、エンボスパターンの深さが0.01mm未満の場合は、ハイフンで示した。
巻長:トイレットロールのミシン目とミシン目の間のシートについて、10シート分の長さを実測した。その後、ロールのシート数を実測し、巻長さは10シート分の長さとシート数から比例計算で求めた。例えば、10シート分の長さが2.275m、シート数が660シートの場合、2.275m×(660/10)=150mとなる。なお、ミシン目がない場合は、実測することにより巻長を求めた。
ロール質量:ロール質量は、電子天秤を用いて測定した。まず、コアを含むロール質量を測定し、その後、コアの質量を測定した。コアを含むロール質量から、コアの質量を差し引き、ロール質量とした。ロール質量は、10個のロールを測定し、測定結果を平均した。なお、ロール幅Wが114mmと異なる場合は、Wを114mmに換算してロール質量を求めた。例えば、ロール幅Wが105mmの場合、そのロール質量に係数(114/105)を乗じた質量を、Wが114mmあたりのロール質量とした。
官能評価は、モニター20人によって行った。評価基準は5点満点で行った。評価基準が3点以上であれば良好である。
なお、坪量、引張強さ、紙厚、比容積、巻直径DR、コア外径DI、ロール密度、ロール質量、巻長、ロール柔らかさ、巻密度、エンボスパターンの深さの測定は、JIS P 8111に規定する温湿度条件下(23±1℃、50±2%RH)で平衡状態に保持後に行った。
得られた結果を表1、表2に示す。なお、表2において、エンボスパターンの深さが0.01mm未満の場合は、ハイフンとした。
表1及び表2から明らかなように、トイレットロールの巻長、巻直径、ロール柔らかさ、及び比(D2/D1)が所定の範囲である各実施例の場合、坪量を下げずにシートの柔らかさを向上させつつ、エンボスによる美粧性を維持し、1ロールあたりの巻長を長くすることができた。
一方、巻長を105m未満とした比較例1の場合、適度な深さのエンボスパターンが付与されており、シートの柔らかさは優れていたが、巻直径が107mm未満となり、ロールの交換頻度が多くなった。
また、巻長が210mを超えた比較例2の場合、適度な深さのエンボスパターンが付与されてシートの柔らかさは優れていたが、巻直径が140mmを超え、ロール径が大きくなってトイレットペーパーホルダーに収まりにくくなった。
エンボスパターンの深さが0.01mm未満、ロール柔らかさが0.3mm未満の比較例3では、トイレットペーパーの嵩が低くなり、シート及びロールの柔らかさが低下した。
エンボスパターンの深さD1が0.35mmを超え、ロール柔らかさが1.5mmを超えた比較例4の場合、エンボスパターンの凹凸が顕著になり過ぎて嵩が高くなり過ぎ(密度が低くなり過ぎ)、トイレットロールの巻直径が140mmを超え、ロール径が大きくなってトイレットペーパーホルダーに収まりにくくなった。
トイレットペーパーをロール巻取り加工機で強く(硬く)巻き過ぎてロール柔らかさが0.3mm未満の比較例5の場合、ロール柔らかさが低下するとともに、比[(D2/D1)×100]が45%以下となって、エンボスロールの美粧性のバランスが低下するとともに、ロールの柔らかさが劣った。
トイレットペーパーをロール巻取り加工機で弱く(緩く)巻き過ぎた比較例6及び7の場合、ロール柔らかさが本願所定の範囲を超えるとともに、巻直径が140mmを超えて、トイレットペーパーホルダーへの装着のしやすさに劣るとともに、下巻きを特に緩く巻き過ぎた比較例7では、比[(D2/D1)×100]が100%を超え、ロールの保形性が劣った。
巻直径及びロール柔らかさを、本発明における所定の数値範囲内とした点は、比較例6と対応関係にある比較例8の場合、トイレットペーパーホルダーへの収まりは良好となったが、巻長が105mm未満となり、ロールの交換頻度が高くなった。
ロール柔らかさを、本発明における所定の数値範囲内とした点は、比較例3と対応関係にある比較例9の場合、ロールの柔らかさは良好になったが、エンボスパターンの深さDが0.01mm未満のままであったため、シートの柔らかさが劣った。
なお、市販品1及び2について同様に評価したところ、いずれも巻長が105m未満であり、ロールの交換頻度が多くなった。