JP6128017B2 - 交流電動機の制御装置 - Google Patents
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Description
Vd*=R×Id−ω×Lq×Iq
Vq*=R×Iq+ω×Ld×Id+ω×φ
(Rは電機子抵抗、ωは電気角速度、Ld、Lqは、d軸、q軸インダクタンス、φは永久磁石の電機子鎖交磁束を示す。)
特許文献1に開示された応答性向上を図った制御は、電圧方程式のωを含む項(d軸電圧方程式の第2項、q軸電圧方程式の第2項及び第3項)の演算において、実電流Id、Iqの値を指令電流Id*、Iq*で代用して演算しようとするものであり、フィードフォワード制御に近い思想である。このフィードフォワードと上記干渉フィードバック方式を組み合わせた制御が一般的に知られている。
また、そもそも従来の干渉フィードバック方式では、d軸、q軸の実電流Id、Iqが指令電流Id*、Iq*と一致し続けることは電圧方程式から考えて理論上困難である。
一般に正弦波又は過変調PWM制御モードにおいて、電圧指令値は、PWMキャリア周期(例えば200μs)又は半周期(例えば100μs)という速い周期で演算される。そのため、演算式の項の数が増えた場合、全ての項の演算を一律に同じ周期で処理しようとすると単位時間当たりの演算回数が増え、マイコンの処理負荷が増大する。その結果、従来の制御演算に対し、制御装置の大型化やコストアップを招くおそれがある。逆に、従来と同等のマイコンを使う前提では、演算周期を速くすることができない。
本発明はこのような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、処理負荷の増加を抑制しつつ、電流フィードバック制御の制御性能を向上させる交流電動機の制御装置を提供することにある。
この制御装置は、d軸電流指令値(Id*)及びq軸電流指令値(Iq*)を演算する電流指令演算部と、交流電動機の相電流検出値をdq変換し、d軸電流検出値(Id)及びq軸電流検出値(Iq)を算出するdq変換部と、d軸電流偏差(ΔId)及びq軸電流偏差(ΔIq)に基づくPI制御演算によってd軸電圧指令値(Vd*)及びq軸電圧指令値(Vq*)を演算する電圧指令演算部と、を有する。
Kid/Kiq:非干渉フィードバック方式のI(積分)制御項のゲイン、
ΔId:d軸電流偏差(ΔId=Id*−Id)、
ΔIq:q軸電流偏差(ΔIq=Iq*−Iq))
ω:電気角速度、φ:永久磁石の電機子鎖交磁束)
そして、数式3を変形した以下の数式4において、d軸電流偏差及びq軸電流偏差の各係数値についての演算周期は、d軸電圧指令値及びq軸電圧指令値の演算周期よりも長く設定される。
したがって、d軸電圧指令値及びq軸電圧指令値の演算周期に対して各係数の演算周期を例えば10〜20倍の長さに設定したとしても、要求される演算の精度に影響はない。これにより、干渉フィードバック方式に対しマイコンの処理負荷の増加を可及的に抑制しつつ、非干渉フィードバック方式を用いて制御性能を向上させることができる。よって、特に搭載スペースの制限が厳しいハイブリッド自動車に適用される場合、制御装置の大型化やコストアップを回避することができる。
抵抗(R)のみに依存する第1係数群の値は、電気角速度(ω)を含む第2係数群の値に比べてさらに変化が小さいと考えられる。したがって、第1係数群についての演算周期を第2係数群についての演算周期よりも長くすることで、想定される係数値の変化の頻度に対し、演算周期を適切に対応させることができる。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態の交流電動機の制御装置について、図1〜図4を参照して説明する。本実施形態の交流電動機の制御装置は、ハイブリッド自動車に適用される。
図1に示すハイブリッド自動車は、いわゆるシリーズパラレルハイブリッド自動車であり、車両の駆動力源として、エンジン6及び2つのモータジェネレータを備える。
本実施形態において第1MG3及び第2MG4の通電を制御するMG制御装置20が、本発明の「交流電動機の制御装置」に相当する。詳しくは後述するように、MG制御装置20は、主に電動機として機能する第2MG4の制御において、特に、本発明の特徴的な構成を有し、それによる特有の作用効果を奏するものである。
エンジン制御装置60は、図示しないクランク角センサから入力されるクランク角信号等に基づいてクランク軸15のクランク角やエンジン回転速度等の情報を取得し、エンジン6の運転を制御する。
第2MG4は、インバータ34が変換した三相交流電力を用いて、力行動作によりトルクを出力する。第2MG4による駆動力は、プロペラ軸17、デファレンシャルギア機構19、車軸13を介して車輪14に伝達される。
回転角センサ51、52は、例えばレゾルバであり、それぞれ、第1MG3及び第2MG4のロータ近傍に設けられ、第1MG3及び第2MG4の電気角を検出する。
以下の説明では第2MG4を「モータ4」と言い替え、専ら、MG制御装置20が実行するモータ4の制御に関して詳しく説明する。
ここで、例えば特開2010−88205号公報等に開示されるように、MG制御装置20は、モータ4の出力に要求される回転数及びトルクに応じて、正弦波PWM制御モード、過変調PWM制御モード及び矩形波制御モードを切り替え可能である。すなわち、図3に示すように、低回転、低トルク領域の出力が要求されるときは、電流フィードバック制御方式の正弦波PWM制御モードが用いられる。高回転、高トルク領域の出力が要求されるときは、トルクフィードバック制御方式の矩形波制御モードが用いられる。その中間の領域では、電流フィードバック制御方式の過変調PWM制御モードが用いられる。
図2に示す制御ブロックは正弦波PWM制御モードに対応する。MG制御装置20は、電流指令演算部21、減算器22、電圧指令演算部23、逆dq変換部24、PWM信号生成部25、dq変換部26、及び、角速度変換部27を有する。
なお、過変調PWM制御モードでは、電圧指令演算部23と逆dq変換部24との間に電圧振幅補正部を設け、三相電圧指令の振幅を正弦波波形から歪ませるように補正する。
減算器22は、d軸電流減算器221及びq軸電流減算器222からなる。d軸電流減算器221は、dq変換部26からフィードバックされるd軸電流検出値Idをd軸電流指令値Id*から減算してd軸電流偏差ΔIdを算出する。q軸電流減算器222は、dq変換部26からフィードバックされるq軸電流検出値Iqをq軸電流指令値Iq*から減算してq軸電流偏差ΔIqを算出する。
電圧指令演算部23は、「非干渉フィードバック方式」を用いてPI制御演算を行う。この「非干渉フィードバック方式」、及び、これと対比する従来の「干渉フィードバック方式」の意味については後述する。
また、後述するように、PI制御演算は、d軸、q軸電流偏差ΔId、ΔIqに係る各係数値を演算する段階と、d軸、q軸電流偏差ΔId、ΔIqに各係数値を乗算した項を加算してd軸、q軸電圧指令値Vd*、Vq*を算出する段階とを含む。
本実施形態では、電圧指令演算部23の中で各係数値を演算する部分を、特に「係数演算部235」という。係数演算部235には、抵抗R、インダクタンスLd、Lqの値が入力される。また、角速度変換部27から電気角速度ωを取得する。
PWM信号生成部25は、三相電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*、及び、インバータ34に印加されるシステム電圧VHに基づいて、インバータ34のスイッチング素子のオン/オフの切替えに係るPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを算出する。
PWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてインバータ34のスイッチング素子のオン/オフが制御され、所望の三相交流電圧Vu、Vv、Vwが生成される。この三相交流電圧Vu、Vv、Vwがモータ4に印加されることにより、トルク指令値Trq*に応じたトルクが出力されるように、モータ4の駆動が制御される。
dq変換部26は、回転角センサ52から取得した電気角θに基づき、三相電流検出値Iu、Iv、Iwをd軸、q軸電流検出値Id、Iqにdq変換し、減算器22にフィードバックする。
角速度変換部27は、回転角センサ52から取得した電気角θを時間微分してモータ4の電気角速度ω[deg/s]を算出する。さらに、電気角速度ωに比例定数を乗じることによりモータ4の回転数N[rpm]を算出してもよい。
実施形態の説明では、数式の見出し番号ではなく、式(1)のように式番号を記述し、「課題を解決するための手段」の数式と重複する式にもあらためて付番する。また、d軸電圧に関する式とq軸電圧に関する式とを1セットにして、式(1)等と表す。
R:電機子抵抗
Ld/Lq:d軸インダクタンス/q軸インダクタンス
ω:電気角速度
φ:永久磁石の電機子鎖交磁束
式(1)の電圧方程式において、d軸電圧Vdにはq軸電流Iqの成分が含まれ、q軸電圧Vqにはd軸電流Idの成分が含まれる。つまり、dq軸間での相互干渉が生じる。
式(1)の電圧方程式において、d軸電圧Vdにはd軸電流Idの成分とq軸電流Iqの成分とが含まれ、q軸電圧Vqにもd軸電流Idの成分とq軸電流Iqの成分とが含まれる。つまり、dq軸間での相互干渉が生じる。
R項におけるd軸、q軸電流偏差ΔId、ΔIqに係る(Kpd・R)、(Kid・R)、(Kpq・R)、(Kiq・R)の4つの係数を合わせて「第1係数群」と定義する。また、(ω・L)項におけるd軸、q軸電流偏差ΔId、ΔIqに係る(Kpd・ω・Lq)、(Kid・ω・Lq)、(Kpq・ω・Ld)、(Kiq・ω・Ld)の4つの係数を合わせて「第2係数群」と定義する。第1係数群及び第2係数群は、その一まとまりの部分を、d軸、q軸電流偏差ΔId、ΔIqに係る「ゲイン」と見ることができる。
式(6)において「R<<ω・L」のとき、「R=0」とみなしてR項を無視すると、d軸、q軸電圧指令値Vd*、Vq*は、式(7)により、ω・L項のみで表される。
図3に示すように、本実施形態では、電流フィードバック制御方式の正弦波PWM制御モード及び過変調PWM制御モードの領域において、少なくとも正弦波PWM制御モードの所定回転数A以上の回転数領域で「非干渉フィードバック方式」を用いてd軸、q軸電圧指令値Vd*、Vq*を演算する。
ただし、式(2)と式(6’)を比較してわかるように、非干渉フィードバック方式は干渉フィードバック方式に比べて演算する項の数が多いため、マイコンの処理負荷が増加する。そこで本実施形態は、非干渉フィードバック方式の制御演算において、第1係数群及び第2係数群についての演算周期を、d軸、q軸電圧指令値Vd*、Vq*の演算周期よりも長く設定することで、処理負荷の増加を可及的に抑制することを特徴とする。
図4に例示するように、インバータ34のPWMキャリアは、周波数5kHzであり、周期Tcが200μsである。PWMキャリアの山及び谷のタイミング、すなわちPWMキャリア半周期Tchである100μs毎に、電流センサ35、36によってモータ4の相電流Iv、Iwが検出(サンプリング)される。相電流検出値はdq変換部26でdq変換されて減算器22にフィードバックされ、電圧指令演算部23は、サンプリング周期と同期した100μsの演算周期でd軸、q軸電圧指令値Vd*、Vq*を「高速演算」する。
一方、干渉フィードバック方式の式(2)においては、d軸、q軸の各電圧指令演算式につき2回の乗算と1回の加算が必要であるから、本実施形態の電圧指令演算では、干渉フィードバック方式に比べ、わずかに2回の乗算と2回の加算が増加するに留まる。
本実施形態のMG制御装置20の効果として、電圧方程式を利用した非干渉フィードバック方式では、フィードバックゲインを適正に設定すれば、理論上、実電流を指令電流に一致させることができるため、干渉フィードバック方式に比べて制御性能が向上する。
これについて、dq座標上で電流及び電圧を示す図5〜図9を参照して説明する。
この部分の説明では、文脈に応じて、適宜、上記の「電流指令値」を「指令電流」、「電流検出値」を「実電流」と言い替える。また、終点の座標が(Id*、Iq*)である指令電流ベクトルを「指令電流Id*、Iq*」と表し、終点の座標が(Id、Iq)である実電流ベクトルを「実電流Id、Iq」と表す。
また、干渉フィードバック方式による制御の結果、実電流Id、Iqが動く先を白三角で示し、非干渉フィードバック方式による制御の結果、実電流Id、Iqが動く先を傾斜−45°のハッチングを付した三角で示す。
それに対し、非干渉フィードバック方式では、d軸電圧指令値Vd*をプラス方向に動かしたことにより、Vd*がプラス→ω・Lq・Iq項がマイナスとなり、q軸電流Iqがマイナス方向に動く。つまり、q軸電流Iqをマイナス方向に動かしたいという要求どおりに実電流Id、Iqを変化させ、実電流Id、Iqを指令電流Id*、Iq*に一致させることができる。
一方、非干渉フィードバック方式では、d軸電圧指令値Vd*をマイナス方向に動かすことにより、q軸電流Iqがプラス方向に動く。つまり、要求どおりに実電流Id、Iqを変化させ、実電流Id、Iqを指令電流Id*、Iq*に一致させることができる。
それに対し、非干渉フィードバック方式では、q軸電圧指令値Vq*をマイナス方向に動かしたことにより、Vq*がマイナス→ω・Ld・Id項がマイナスとなり、d軸電流Idがマイナス方向に動く。つまり、d軸電流Idをマイナス方向に動かしたいという要求どおりに実電流Id、Iqを変化させ、実電流Id、Iqを指令電流Id*、Iq*に一致させることができる。
一方、非干渉フィードバック方式では、q軸電圧指令値Vq*をプラス方向に動かすことにより、d軸電流Idがプラス方向に動く。つまり、要求どおりに実電流Id、Iqを変化させ、実電流Id、Iqを指令電流Id*、Iq*に一致させることができる。
各係数値の変化について、第2係数群の電気角速度ωは時々刻々変化するとはいえ、電圧指令値Vd*、Vq*に要求される演算周期に比べて、その変化はそれほど速くない。まして、第1係数群の抵抗R、及び第2係数群のインダクタンスLd、Lqは温度変化や経時劣化によって変化する可能性はあるものの、その変化は、電圧指令値Vd*、Vq*に要求される演算周期に比べて十分に遅い。
本発明の第2実施形態の交流電動機の制御装置について、図10を参照して説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対し、式(6’)における第1係数群(Kpd・R、Kid・R、Kpq・R、Kiq・R)についての演算周期を、第2係数群(Kpd・ω・Lq、Kid・ω・Lq、Kpq・ω・Ld、Kiq・ω・Ld)についての演算周期よりも長く設定する点が異なる。
また、例えばモータ4の特性や使用環境等によって、抵抗Rの変化が比較的大きい場合には、第2実施形態とは逆に、第1係数群についての演算周期を第2係数群についての演算周期よりも短く設定してもよい。
本発明の交流電動機の制御装置は、上記実施形態の図1で例示した2つのモータジェネレータを備えるハイブリッド自動車に限らず、それ以外のハイブリッド自動車や電気自動車、又は車両以外の各種装置において、電流フィードバック制御を行うどのような交流電動機の制御装置として適用されてもよい。
そこで、モータの回転数が所定の回転数未満の領域では干渉フィードバック方式を適用し、所定の回転数以上の領域では非干渉フィードバック方式を適用するように、回転数に応じて、電圧指令演算部の制御方式を切り替えるようにしてもよい。これにより、干渉フィードバック方式を適用する低回転領域での演算負荷をより低減することができる。
21・・・電流指令演算部、
23・・・電圧指令演算部、
26・・・dq変換部、
34・・・第2インバータ(インバータ)、
4 ・・・第2MG、モータ(交流電動機)。
Claims (5)
- 電流フィードバック制御によってインバータ(34)の駆動を制御することで交流電動機(4)への印加電圧を制御する交流電動機の制御装置(20)であって、
d軸電流指令値(Id*)及びq軸電流指令値(Iq*)を演算する電流指令演算部(21)と、
前記交流電動機の相電流検出値をdq変換し、d軸電流検出値(Id)及びq軸電流検出値(Iq)を算出するdq変換部(26)と、
d軸電流指令値(Id*)とd軸電流検出値(Id)との偏差であるd軸電流偏差(ΔId)、及び、q軸電流指令値(Iq*)とq軸電流検出値(Iq)との偏差であるq軸電流偏差(ΔIq)に基づくPI制御演算によって、d軸電圧指令値(Vd*)及びq軸電圧指令値(Vq*)を演算する電圧指令演算部(23)と、
を有し、
前記電圧指令演算部は、
以下の数式1により、前記d軸電圧指令値を前記q軸電流偏差から演算し、前記q軸電圧指令値を前記d軸電流偏差から演算する非干渉フィードバック方式を適用し、
Kid/Kiq:非干渉フィードバック方式のI(積分)制御項のゲイン、
ΔId:d軸電流偏差(ΔId=Id*−Id)、
ΔIq:q軸電流偏差(ΔIq=Iq*−Iq))
前記d軸電流偏差及び前記q軸電流偏差の各係数値についての演算周期は、前記d軸電圧指令値及びq軸電圧指令値の演算周期よりも長く設定されることを特徴とする交流電動機の制御装置。 - 前記d軸電流偏差及び前記q軸電流偏差に係る係数のうち、抵抗(R)を含む項における複数の係数を第1係数群とし、電気角速度(ω)及びインダクタンス(L)を含む項における複数の係数を第2係数群とすると、
前記第1係数群についての演算周期は、前記第2係数群についての演算周期と異なる値に設定されることを特徴とする請求項2に記載の交流電動機の制御装置。 - 前記第1係数群についての演算周期は、前記第2係数群についての演算周期よりも長く設定されることを特徴とする請求項3に記載の交流電動機の制御装置。
- 前記d軸電圧指令値及びq軸電圧指令値の演算周期は、前記インバータのPWMキャリア周期の半周期に設定され、
前記d軸電流偏差の各係数、及び、前記q軸電流偏差の各係数についての演算周期は、前記PWMキャリア周期の半周期の整数倍に設定されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
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